説明

バッテリー端子

【課題】ボルト・ナットの緩みを確実に防止する。
【解決手段】バッテリー端子10は、第1突出部13の外側面にワッシャ60を挟んでナット90があてがわれ、ワッシャ60及び両突出部13、14を貫通するボルト80の軸部81にナット90が締め付けられることにより、両突出部13、14が互いに接近するとともに、締め付け部12が縮径されてバッテリーポスト50に固定される。ワッシャ60は、平板材を折り曲げた形状とされていて、締め付け時には第1突出部13とナット90との間に挟持されることで両者にばね力を付与しつつ弾性的に拡開させられる。第1突出部13の外側面には、締め付け時にワッシャ60の端部とその拡開方向で当接可能な当て止め部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー端子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のバッテリー端子が開示されている。このものは、導電性の金属板材からなり、バッテリーポストの周りを取り囲む弧状の締め付け部と、締め付け部の両端から互いに対向して突出する一対の突出部とを備えている。両突出部には貫通孔が同軸で形成されている。両突出部のうち一方の突出部の外側面にはナットがあてがわれ、両貫通孔に挿入されたボルトの軸部にナットが締め付けられることにより、両突出部が互いに接近し、それに伴い締め付け部が縮径されてバッテリーポストに固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−33783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のバッテリー端子において、ボルト・ナットの緩みを防止するために、ナットと突出部との間にワッシャを介在させることも可能である。この場合、例えば、ワッシャを断面山型に屈曲する形状となし、ナットと突出部との間にワッシャが拡開状態で挟持されるようにすると、ワッシャの弾性反力をより高めることができ、緩み止めの効果をより確実に奏することができる。しかるにこの場合、仮に、ワッシャがナットと突出部との間にフラットな状態になるまで拡開されると、ワッシャの弾性反力が減退して、緩み止めの効果が持続できないおそれがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ボルト・ナットの緩みを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、導電性の金属板材からなり、バッテリーポストの周りを取り囲む弧状の締め付け部と、前記締め付け部の両端から互いに対向して突出する一対の突出部と、前記両突出部のうち、少なくとも一方の突出部の外側面に当接して配置されるワッシャとを備え、前記一方の突出部の外側に前記ワッシャを挟んでナット又はボルトの頭部があてがわれ、前記ワッシャと前記両突出部とを貫通する前記ボルトの軸部に前記ナットが締め付けられることにより、前記両突出部が互いに接近するとともに、前記締め付け部が縮径されて前記バッテリーポストに固定されるバッテリー端子であって、前記ワッシャは、屈曲部を介して屈曲する形状の板材からなり、前記締め付け時には前記一方の突出部と前記ナット又はボルトの頭部との間に挟持されることで両者にばね力を付与しつつ弾性的に拡開させられ、前記一方の突出部の外側面には、前記締め付け時に前記ワッシャの端部とその拡開方向で当接可能な当て止め部が設けられているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ワッシャが平面視矩形でかつ断面山型に屈曲する形状とされ、前記当て止め部が前記ワッシャの両裾の端部と当接可能なように対をなして設けられているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記締め付け前の状態では、前記ワッシャの端部と前記当て止め部との間に隙間があけられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
ナットがボルトに締め付けられると、ワッシャが一方の突出部とナット又はボルトの頭部との間に拡開状態で挟持されるため、ボルト・ナットの緩みが防止される。この場合に、ワッシャの端部がその拡開方向で当て止め部と当接することにより、ワッシャのそれ以上の拡開動作が規制されるため、ワッシャのばね力が減退するのが防止され、ひいては緩み止めの効果が減退するのが防止される。
【0010】
<請求項2の発明>
ワッシャが平面視矩形でかつ断面山型に屈曲する形状とされ、当て止め部がワッシャの両裾の端部と当接可能なように対をなして設けられているため、一方の突出部とナット又はボルトの頭部とにワッシャのばね力がバランス良く作用することになる。その結果、ナットによる締め付け動作の円滑性が確保される。
【0011】
<請求項3の発明>
締め付け前の状態ではワッシャの端部と当て止め部との間に隙間があけられているため、締め付けの初期段階で操作力が急上昇するのが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るバッテリー端子の締め付け前の平面図である。
【図2】バッテリー端子の締め付け前の正面図である。
【図3】バッテリー端子の締め付け後の平面図である。
【図4】バッテリー端子の締め付け後の正面図である。
【図5】ワッシャの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。本実施形態に係るバッテリー端子10は、導電性の金属板材からなり、端子本体11とワッシャ60とを備えている。また、バッテリー端子10には、ボルト80及びナット90が取り付けられる。ボルト80は六角ボルトからなり、ナット90は六角ナットからなる。
【0014】
端子本体11は、金属板材を曲げ加工して一体に成形され、図1に示すように、電線(図示せず)が接続される電線接続部(図示せず)と、バッテリーポスト50に取り付けられる締め付け部12と、ボルト80が貫通して装着される一対の突出部13、14とからなる。なお、バッテリーポスト50は、図2に示すように、バッテリー本体100の上面から突出する円錐台形状をなしている。
【0015】
締め付け部12は、図1に示すように、バッテリーポスト50を包囲するように円弧状に回曲する形状とされ、図4に示すように、バッテリーポスト50と対応する円錐台形をなしている。締め付け部12は、縮径変形可能とされ、図1及び図3に示すように、バッテリーポスト50に遊嵌された状態から縮径されることにより、バッテリーポスト50に固定される。
【0016】
両突出部13、14は、締め付け部12の周方向の両端(両端開口縁)から互いに対向して突出する平板状の形態とされている。そして、両突出部13、14は、締め付け部12と一体に形成されている。このため、両突出部13、14が互いに接近すると、締め付け部12が縮径変形されるようになっている。本実施形態の場合、両突出部13、14は、上下方向にほぼ沿って配置されている。
【0017】
また、両突出部13、14には、図2に示すように、板厚方向に同軸で貫通する貫通孔15が形成されている。貫通孔15には図示向かって左側からボルト80の軸部81が挿入されるようになっている。そして、貫通孔15は、両突出部13、14に円形に開口する形態とされ、ボルト80の軸部81と対応する開口径を有している。
【0018】
図2に示すように、両突出部13、14のうち、一方の突出部は、その外側面(両突出部13、14が互いに向き合う面(対向面)とは反対側の面)にワッシャ60を介してナット90があてがわれる第1突出部13とされ、他方の突出部は、その外側面にボルト80の頭部82があてがわれる第2突出部14とされている。図2及び図4に示すように、両突出部13、14とワッシャ60とを貫通したボルト80の軸部81にナット90が締め付けられると、ナット90と頭部82とに押圧されて第1、第2突出部13、14が互いに接近するようになっている。
【0019】
第1突出部13の下端部には、図2に示すように、第2突出部14の内側面(対向面)に向けて突出する第1ストッパ16が形成されている。第2突出部14の上端部には、第1突出部13の内側面(対向面)に向けて突出する第2ストッパ17が形成されている。第1、第2ストッパ16、17は、第1、第2突出部13、14の突出方向先端部に起立する突片部分を内側へほぼ直角に折り曲げた形状とされている。両突出部13、14が過度に接近しようとしたときに、第1ストッパ16が第2突出部14の対向面(内側面)に当接し、かつ第2ストッパ17が第1突出部13の対向面(内側面)に当接して、それ以上の過度締めが規制されるようになっている。
【0020】
第1突出部13の上下両端部には、図1及び図2に示すように、第2突出部14から離れる向きとなる外側に突出する一対の第1当て止め部21が形成されている。また、第2突出部14の上下両端部には、第1突出部13から離れる向きとなる外側に突出する一対の第2当て止め部22が形成されている。第1、第2当て止め部21、22は、第1、第2突出部13、14の突出方向基端部に起立する突片部分を外側へほぼ直角に折り曲げた形状とされ、かつ、第1、第2突出部13、14の突出方向基端部から締め付け部12の両端部に跨って屈曲しつつ延びる形状とされている。また、第1、第2当て止め部21、22は、相互の中間位置を境としてほぼ対称とされている。
【0021】
ここで、図2に示すように、第1突出部13の外側面にワッシャ60が当接した状態では、上下一対の第1当て止め部21にワッシャ60の両端部が対向して配置される。一方、第2突出部14の外側面にボルト80の頭部82が当接した状態では、上下一対の第2当て止め部22に頭部82の端面が対向して配置される。なお、第1、第2当て止め部21、22と第1、第2ストッパ16、17との間には隙間があけられている。
【0022】
続いてワッシャ60について説明すると、ワッシャ60は、金属製の平板材からなり、図5に示すように、全体として、平面視矩形状、詳しくは平面視正方形状をなしている。ワッシャ60の中央部には、ボルト80の軸部81が挿入される通し孔61が形成されている。通し孔61は、ワッシャ60に円形に開口する形態とされ、ワッシャ60が第1突出部13の外側面に装着されたときに、貫通孔15に連通して配置される。
【0023】
そして、ワッシャ60の上下方向中央部には、幅方向に沿って延びる屈曲部62が形成されている。ワッシャ60は、図2に示すように、屈曲部62を頂部として上半部及び下半部がそれぞれ上下方向に対して傾斜する断面山型の形状とされている。かかるワッシャ60は、その屈曲形状を保つ自然状態(図2を参照)と、屈曲部62が押圧されて高さ方向に沿ってほぼフラットな形状となる拡開状態(図4を参照)とに、屈曲部62を境として弾性的に変形可能とされている。自然状態では、ワッシャ60の上下両端部が、上下一対の第1当て止め部21との間に隙間をあけて配置され、拡開状態では、ワッシャ60の上下両端部が、上下一対の第1当て止め部21と当接した状態になる。
【0024】
次に、本実施形態に係るバッテリー端子10の作用を説明する。
バッテリー端子10の組み立てに際し、ワッシャ60が第1突出部13の外側面にあてがわれ、その状態で、ボルト80の軸部81が第2突出部14側から貫通孔15及び通し孔61に貫通させられる。そして、図1及び図2に示すように、ボルト80の軸部81の先端部にナット90がねじ込まれる。このとき、ワッシャ60は自然状態にあって第1当て止め部21とは非接触状態に保たれ、かつ、第1、第2突出部13、14はその基端側から先端側(突出端側)にかけて互いに拡開された形状となる。そして、締め付け部12は、バッテリーポスト50に外嵌される。
【0025】
続いて、ナット90がボルト80の軸部81周りに回転させられる。ナット90の回転が進むと、第1突出部13がナット90で押圧されて第2突出部14側に変位するとともに、第2突出部14がボルト80の頭部82で押圧されて第1突出部13側に変位する。こうして第1、第2突出部13、14が互いに接近し、それに伴って締め付け部12が縮径変形させられる。このとき、頭部82は、第2当て止め部22に当接することにより、ナット90に連れ回りするのが回避される。
【0026】
また、ボルト80の軸部81にナット90が締め付けられると、屈曲部62がナット90で押圧されてワッシャ60が拡開状態となり、ナット90と第1突出部13との間にワッシャ60が弾性的に挟持させられる。さらにナット90の回転が進むと、ワッシャ60の上下両端部が上下一対の第1当て止め部21に内側から当接し、ワッシャ60のそれ以上の拡開動作が停止させられる。そして、図3及び図4に示すように、第1、第2突出部13、14がほぼ平行に配置される位置に至ると、締め付け部12が適宜寸法に縮径されてバッテリーポストの外周面に密着させられる。これにより、バッテリー端子10がバッテリーポスト50の導通可能に接続された状態で固定される。
【0027】
上記のように、バッテリー端子10がバッテリーポスト50に固定された状態では、ワッシャ60がナット90と第1突出部13との間に拡開状態に弾性変形されるものの、ワッシャ60の上下両端部が上下一対の第1当て止め部21に当て止めされるため、ナット90と第1突出部13とにはワッシャ60から大きな弾性反力(ばね力)が作用することになる。したがって、ワッシャ60がナット90と第1突出部13とに緊密に当接し、ナット90がボルト80の軸部81に強固に螺着される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、ナット90がボルト80に締め付けられると、ワッシャ60が第1突出部13とナット90との間に拡開状態で挟持されるため、ナット90の緩みが防止される。この場合に、ワッシャ60の端部がその拡開方向で第1当て止め部21と当接することにより、ワッシャ60のそれ以上の拡開動作が規制されるため、ワッシャ60の弾性反力が減退するのが防止され、ひいては緩み止めの効果が減退するのが防止される。
【0029】
また、ワッシャ60が平面視矩形でかつ断面山型に屈曲する形状とされ、第1当て止め部21がワッシャ60の両裾の端部と当接可能なように対をなして設けられているため、第1突出部13とナット90とにワッシャ60の弾性反力がバランス良く作用することになる。その結果、ナット90による締め付け動作の円滑性が確保される。しかも、締め付け前の状態ではワッシャ60の端部と第1当て止め部21との間に隙間があけられているため、締め付けの初期段階で操作力が急上昇するのが回避される。
【0030】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)ワッシャがボルトの頭部と第2突出部との間に弾性的に挟持されるものであってもよい。また、この場合においても、ナットと第1突出部との間にワッシャが弾性的に挟持されるものであってもよい。
(2)第1、第2突出部が上下方向に対して斜めに配置されるものであってもよい。
(3)屈曲部が高さ方向に沿って形成され、ワッシャが屈曲部を介して幅方向に拡開可能とされるものであってもよい。
(4)第1当て止め部が第1突出部の突出方向の全長に亘って形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…バッテリー端子
12…締め付け部
13…第1突出部(一方の突出部)
14…第2突出部(他方の突出部)
15…貫通孔
21…第1当て止め部(当て止め部)
60…ワッシャ
61…通し孔
62…屈曲部
80…ボルト
81…軸部
82…頭部
90…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の金属板材からなり、
バッテリーポストの周りを取り囲む弧状の締め付け部と、
前記締め付け部の両端から互いに対向して突出する一対の突出部と、
前記両突出部のうち、少なくとも一方の突出部の外側面に当接して配置されるワッシャとを備え、
前記一方の突出部の外側に前記ワッシャを挟んでナット又はボルトの頭部があてがわれ、前記ワッシャと前記両突出部とを貫通する前記ボルトの軸部に前記ナットが締め付けられることにより、前記両突出部が互いに接近するとともに、前記締め付け部が縮径されて前記バッテリーポストに固定されるバッテリー端子であって、
前記ワッシャは、屈曲部を介して屈曲する形状の板材からなり、前記締め付け時には前記一方の突出部と前記ナット又はボルトの頭部との間に挟持されることで両者にばね力を付与しつつ弾性的に拡開させられ、
前記一方の突出部の外側面には、前記締め付け時に前記ワッシャの端部とその拡開方向で当接可能な当て止め部が設けられていることを特徴とするバッテリー端子。
【請求項2】
前記ワッシャが平面視矩形でかつ断面山型に屈曲する形状とされ、前記当て止め部が前記ワッシャの両裾の端部と当接可能なように対をなして設けられていることを特徴とする請求項1記載のバッテリー端子。
【請求項3】
前記締め付け前の状態では、前記ワッシャの端部と前記当て止め部との間に隙間があけられていることを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリー端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8588(P2013−8588A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141067(P2011−141067)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】