説明

バッテリー端子

【課題】部品点数を増やすことなく、ナットの緩みをしっかり抑えることが可能なバッテリー端子を提供する。
【解決手段】バッテリー端子10は、両突出部12、13にボルト80の軸部82を貫通させ、両突出部12、13のうち、頭部側突出部12の外側にボルト80の頭部81を配置させ、ナット側突出部13の外側にナット90を配置させ、その状態で、ボルト80の軸部82にナット90を締め付けることにより、締め付け部11を縮径させてバッテリーポスト70に固定される。突出部12、13が、締め付け部11の端部から離れる方向に延びる第1片部21と、第1片部21の突出端に連なりつつ締め付け部11側に折り返される折り返し部23と、折り返し部23の折り返し端から締め付け部11側に延びる第2片部22とからなり、さらに、折り返し部23の内側には、クリアランス25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー端子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のバッテリー端子は、バッテリーポストの周りを取り囲む弧状の締め付け部と、締め付け部の両端から互いに対向して突出する一対の突出部とを備えている。両突出部には貫通孔が形成され、貫通孔にはボルトの軸部が挿入される。貫通孔に挿入された軸部にはナットが取り付けられ、ナットが回転されると、ナットとボルトの頭部とに両突出部が押圧されて互いに接近する方向に変位される。両突出部が接近するに伴い、締め付け部が縮径されてバッテリーポストに固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−33783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のバッテリー端子では、ナットの緩みに起因して締め付け力が低下するおそれがあった。この場合、例えば、ナットと突出部との間にワッシャを介在させることも可能であったが、ワッシャを用意する分、部品点数が増加して管理が煩雑になるという事情があった。また、周知のワッシャでは充分なばね力を得ることができず、ナットの緩みをしっかり抑えることができない場合もあった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、部品点数を増やすことなく、ナットの緩みをしっかり抑えることが可能なバッテリー端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、導電性の金属板材からなり、バッテリーポストの周りを取り囲む弧状の締め付け部と、前記締め付け部の両端から互いに対向して突出する一対の突出部とを備え、前記両突出部にボルトの軸部を貫通させ、前記両突出部のうち、一方の突出部の外側にボルトの頭部を配置させ、他方の突出部の外側にナットを配置させ、その状態で、前記ボルトの軸部に前記ナットを締め付けることにより、前記締め付け部を縮径させて前記バッテリーポストに固定されるバッテリー端子であって、前記突出部が、前記締め付け部の端部から離れる方向に延びる第1片部と、前記第1片部の突出端に連なりつつ前記締め付け部側に折り返される折り返し部と、前記折り返し部の折り返し端から前記締め付け部側に延びる第2片部とからなり、前記ナットが締め付けられた状態で、前記ボルトの頭部と前記ナットとの間に前記第1、第2片部が弾性的に挟持されるものであり、前記折り返し部の内側に、クリアランスが形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ナットが締め付けられた状態で前記折り返し部の前記クリアランスが形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記第1、第2片部及び前記折り返し部が、前記両突出部のいずれにも設けられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記第2片部が、前記第1片部の内外両側のうち、前記ナット又は前記ボルトの頭部が位置する側となる外側に配置されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
ボルトの頭部とナットとの間に第1、第2片部が弾性的に挟持されるため、第1、第2片部のばね力によってナットの緩みが防止される。この場合に、ワッシャ等の別部材が不要とされるため、部品点数が増加するのが回避される。しかも、第1、第2片部間における折り返し部の内側にクリアランスが形成されているため、折り返し部がクリアランスの範囲で弾性変位可能となり、第1、第2片部のばね力が高められる結果、ナットの緩みが確実に防止される。
【0011】
<請求項2の発明>
ナットが締め付けられた状態でも折り返し部のクリアランスが形成されているため、ナットの緩みがより確実に防止される。
【0012】
<請求項3の発明>
第1、第2片部及び折り返し部が両突出部のいずれにも設けられているため、第1、第2片部のばね力がボルトの頭部とナットの双方に均等に付与される。その結果、ナットの緩みがより確実に防止される。
【0013】
<請求項4の発明>
第2片部が、第1片部の内外両側のうち、ナット又はボルトの頭部が位置する側となる外側に配置されているため、折り返し部を支点とする第2片部のばね力がナット又はボルトの頭部に直接的に付与される。その結果、ナットの緩みがより確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係るバッテリー端子の締め付け前の平面図である。
【図2】バッテリー端子の締め付け前の正面図である。
【図3】バッテリー端子の締め付け後の平面図である。
【図4】バッテリー端子の締め付け後の正面図である。
【図5】バッテリー端子の締め付け後の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。実施形態1に係るバッテリー端子10は、導電性の金属板材を曲げ加工等して一体に成形されている。バッテリー端子10には、ボルト80及びナット90が取り付けられる。ボルト80は六角ボルトからなり、ナット90は六角ナットからなる。
【0016】
そして、バッテリー端子10は、図1に示すように、電線(図示せず)が接続される電線接続部(図示せず)と、バッテリーポスト70に取り付けられる締め付け部11と、ボルト80が貫通して装着される一対の突出部12、13とからなる。なお、バッテリーポスト70は、図5に示すように、バッテリー本体60の上面から突出する円錐台形状をなしている。
【0017】
締め付け部11は、図1に示すように、バッテリーポスト70を包囲するように円弧状に回曲する形状とされ、図4に示すように、バッテリーポスト70と対応する円錐台形状をなしている。この締め付け部11は、後述する両突出部12、13の接近動作に伴って縮径変形させられ、図1及び図3に示すように、バッテリーポスト70に遊嵌された状態から縮径されることにより、バッテリーポスト70に固定される。
【0018】
両突出部12、13は、締め付け部11と一体に成形され、締め付け部11の周方向の両端(両端開口縁)から互いに対向して突出する平板状の形態とされている。本実施形態の場合、両突出部12、13は、図4に示すように、上下方向にほぼ沿って配置されている。そして、両突出部12、13には、図1に示すように、ボルト80の軸部82が挿入される貫通孔14が形成されている。
【0019】
両突出部12、13のうち、一方の突出部はその外側面(両突出部12、13が互いに向き合う面(対向面)とは反対側の面)にボルト80の頭部81が配置される頭部側突出部12とされ、他方の突出部はその外側面にナット90が配置されるナット側突出部13とされている。ボルト80の軸部82にナット90が締め付けられると、ナット側突出部13がナット90で押圧されて頭部側突出部12に接近するとともに、頭部側突出部12がボルト80の頭部81で押圧されてナット側突出部13側に接近するようになっている。
【0020】
図2に示すように、ナット側突出部13の下端部の先端側には、頭部側突出部12の内側面(対向面)に向けて突出するナット側ストッパ15が形成されている。頭部側突出部12の上端部の先端側には、ナット側突出部13の内側面に向けて突出する頭部側ストッパ16が形成されている。ナット側ストッパ15及び頭部側ストッパ16は、ナット側突出部13及び頭部側突出部12の端部を折り曲げてなるものである。ナット側突出部13及び頭部側突出部12が過度に接近しようとすると、ナット側ストッパ15が頭部側突出部12の内側面に当接し、かつ頭部側ストッパ16がナット側突出部13の内側面に当接して、ナット90による過度締めが阻止されるようになっている。
【0021】
また、図1及び図2に示すように、ナット側突出部13及び頭部側突出部12の上下両端部の基端側には、規制片17が外側に張り出して形成されている。各規制片17は、ナット側突出部13及び頭部側突出部12の各基端側から締め付け部11側に跨って屈曲しつつ延びる形状とされている。ボルト80の頭部81及びナット90が各規制片17に内側から当接することにより、これらの回転動作が規制されるようになっている。
【0022】
さて、両突出部12、13は、図1に示すように、第1片部21と、第1片部21に対してボルト80の挿入方向で並列に配置される第2片部22と、第1、第2片部21、22同士をつなげる折り返し部23とからなる。第1片部21は、締め付け部11の端部から外側(締め付け部11から離れる側であって締め付け部11の径方向外側)にほぼ真直ぐ延びる平板形状とされている。上記のナット側ストッパ15、頭部側ストッパ16、及び各規制片17は、第1片部21に形成されている。
【0023】
第2片部22は、第1片部21の突出端側から折り返し部23を介して折り返されて締め付け部11側にほぼ真直ぐ延びる平板形状とされている。図5に示すように、第2片部22の板幅(上下寸法)は、第1片部21の板幅より小さくされている。図1に示すように、第2片部22の先端は、第1片部21の基端とほぼ同じ位置に配置され、締め付け部11の外周面の近傍に配置されている。また、第2片部22は、第1片部21の外側(ボルト80の頭部81又はナット90の位置する側)に配置され、図1に示すように、締め付け前の状態では第1片部21とほぼ平行に配置されている。なお、貫通孔14は、第1、第2片部21、22を同軸で貫通する形態とされ、図2に示すように、第1片部21の内側面における貫通孔14の孔周りには、周方向の全周に亘ってボス部24が立ち上げ形成されている。
【0024】
折り返し部23は、図1に示すように、断面U字形に回曲する形状とされ、第1片部21の先端と第2片部22の基端とに連なる形状とされている。そして、折り返し部23の内側には、断面U字形状のクリアランス25が形成されている。折り返し部23のクリアランス25は、図1及び図3に示すように、締め付け前の状態から締め付け後にかけて徐々に減少するものの、締め付け後においても残存している。つまり、折り返し部23は、締め付け前後でその回曲形状(アール形状)を維持している。このため、締め付け前後において、第1片部21の先端と第2片部22の基端とが互いに当たり合うことはない。
【0025】
次に、本実施形態に係るバッテリー端子10の作用を説明する。
バッテリー端子10の組み立てに際し、図1及び図2に示すように、ボルト80の軸部82が貫通孔14に貫通させられ、ボルト80の頭部81が頭部側突出部12の外側面に当接させられるとともに、ボルト80の軸部82にナット90が緩くねじ込まれることで、ナット90がナット側突出部13の外側面に当接させられる。このとき、第2片部22には頭部81及びナット90が当接するものの、ナット90の締め付け力は未だ付与されていない。したがって、折り返し部23はほぼ自然状態に保たれ、第1、第2片部21、22は互いにほぼ平行した状態を維持する。また、締め付け部11は、バッテリーポスト70に外嵌された状態となる。
【0026】
続いて、ナット90がボルト80の軸周りに回転させられる。ナット90の回転が進むと、ナット側突出部13がナット90で押圧されて頭部側突出部12側に変位するとともに、頭部側突出部12が頭部81で押圧されてナット側突出部13側に変位する。こうしてナット側突出部13及び頭部側突出部12が互いに接近すると、それに伴って締め付け部11が縮径変形させられ、バッテリー端子10がバッテリーポスト70に導通可能に固定される。
【0027】
また、ナット90の回転に伴い、ナット側突出部13及び頭部側突出部12がそれぞれ押圧されると、クリアランス25が減少しつつ第2片部22が第1片部21に近づく方向に弾性的に変形させられる。したがって、図3に示すように、ナット90の締め付け後、ボルト80の頭部81及びナット90には、折り返し部23を撓み支点とする第2片部22からの弾性反力(ばね力)が付与され、頭部81と第2片部22との間及びナット90と第2片部22との間が緊密に当接させられる。したがって、ボルト80に対するナット90の緩みが確実に防止されることになる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、ボルト80の頭部81とナット90との間に第1、第2片部21、22が弾性的に挟持されるため、第1、第2片部21、22のばね力によってナット90の緩みが防止される。この場合に、ワッシャ等の別部材が不要とされるため、部品点数が増加するのが回避される。しかも、第1、第2片部21、22間における折り返し部23の内側にクリアランス25が形成されているため、折り返し部23がクリアランス25の範囲で弾性変位可能となり、第1、第2片部21、22のばね力が高められる結果、ナット90の緩みが確実に防止される。
【0029】
また、ナット90が締め付けられた状態でも折り返し部23のクリアランス25が形成されているため、ナット90の緩みがより確実に防止される。さらに、第1、第2片部21、22及び折り返し部23が両突出部12、13のいずれにも設けられているため、第1、第2片部21、22のばね力がボルト80の頭部81とナット90の双方に均等に付与される。その結果、ナット90の緩みがより確実に防止される。
【0030】
さらにまた、第2片部22が、第1片部21の内外両側のうち、ナット90又はボルト80の頭部81が位置する側となる外側に配置されているため、折り返し部23を支点とする第2片部22のばね力がナット90又はボルト80の頭部81に直接的に付与される。その結果、ナット90の緩みがより確実に防止される。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)両突出部のうちのいずれか一方の突出部から折り返し部及び第2片部を省略することができる。
(2)第2片部が、第1片部の内外両側のうち、ボルトの頭部及びナットの位置する側とは反対側となる内側に配置されるものであってもよい。
(3)ボルトの頭部と頭部側突出部との間に、又はナットとナット側突出部との間に、ワッシャが介在するものであってもよい。
(4)第1、第2突出部が上下方向に対して斜めに配置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…バッテリー端子
11…締め付け部
12…頭部側突出部(一方の突出部)
13…ナット側突出部(他方の突出部)
14…貫通孔
21…第1片部
22…第2片部
23…折り返し部
25…クリアランス
70…バッテリーポスト
80…ボルト
81…頭部
90…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の金属板材からなり、
バッテリーポストの周りを取り囲む弧状の締め付け部と、
前記締め付け部の両端から互いに対向して突出する一対の突出部とを備え、
前記両突出部にボルトの軸部を貫通させ、前記両突出部のうち、一方の突出部の外側にボルトの頭部を配置させ、他方の突出部の外側にナットを配置させ、その状態で、前記ボルトの軸部に前記ナットを締め付けることにより、前記締め付け部を縮径させて前記バッテリーポストに固定されるバッテリー端子であって、
前記突出部が、前記締め付け部の端部から離れる方向に延びる第1片部と、前記第1片部の突出端に連なりつつ前記締め付け部側に折り返される折り返し部と、前記折り返し部の折り返し端から前記締め付け部側に延びる第2片部とからなり、前記ナットが締め付けられた状態で、前記ボルトの頭部と前記ナットとの間に前記第1、第2片部が弾性的に挟持されるものであり、前記折り返し部の内側に、クリアランスが形成されていることを特徴とするバッテリー端子。
【請求項2】
前記ナットが締め付けられた状態で、前記折り返し部の前記クリアランスが形成されていることを特徴とする請求項1記載のバッテリー端子。
【請求項3】
前記第1、第2片部及び前記折り返し部が、前記両突出部のいずれにも設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリー端子。
【請求項4】
前記第2片部が、前記第1片部の内外両側のうち、前記ナット又は前記ボルトの頭部が位置する側となる外側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のバッテリー端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8589(P2013−8589A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141069(P2011−141069)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】