説明

バッテリ冷却装置

【課題】バッテリケースの水密性を確保しながら、バッテリを冷却する際に生じるエバポレータの凝結水をバッテリケース内から除去することができるようにした、バッテリ冷却装置を提供する。
【解決手段】バッテリ12を収容するバッテリケース11と、バッテリケース11内に配設され、バッテリケース11内の空気を冷却するエバポレータユニット20とを備える。
エバポレータ22の下方の底面21aに電源回路28に接続された陽極電極26及び陰極電極27が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを収容するバッテリケース内に設けられたバッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、バッテリは使用される温度によって放電特性が変化する。例えば、バッテリは高温状態で使用されると、自己放電が増加するため残容量が低下しやすくなることが知られている。また、高温状態での使用は、バッテリの劣化が進行しやすく、バッテリの寿命低下を招く。しかし、バッテリは充放電によって熱を発生するため、温度上昇が避けられない。そのため、バッテリを使用する場合は、適切に冷却することが必要とされている。
【0003】
バッテリを冷却する手法として、例えばバッテリを空冷することが考えられる。しかし、バッテリを空冷する場合は、バッテリの周囲に空気を流す必要があるため、例えばバッテリがケース内に収容されて車両に搭載されているような場合は、バッテリケース内に空気の流れを生成してバッテリを冷却しなければならない。バッテリケース内に空気を流す方法としては、バッテリを収容するバッテリケース内と車室内とを連通し、車室内の冷えた空気をバッテリケース内に送るという技術が知られている。
【0004】
しかし、車室内とバッテリケース内とを連通させるこの手法では、バッテリを冷却するための空気の温度が車室内の空気の温度に左右されてしまう。言い換えると、車室内の空気が暖かい場合(冷えていない場合)、その空気をバッテリケース内に送風しても、十分にバッテリを冷却することができない。
【0005】
これに対して、バッテリのみを独立して(すなわち、車室内の空気の温度に左右されずに)冷却する技術として、例えば特許文献1のように、バッテリケース内にエバポレータとブロアファンとを内蔵したものがある。これは、エバポレータの内部を流れる冷媒とエバポレータの周囲の空気との熱交換により空気を冷却し、冷却した空気をブロアファンによりバッテリへ向けて流すことでバッテリを冷却するものである。
【0006】
このようにエバポレータを用いて空気を冷却すれば、バッテリのみを独立して冷却することができる。しかし、エバポレータを使用する場合、冷媒と空気との熱交換によりエバポレータに凝結水(凝縮水や結露水ともいう)が発生しバッテリケース内の底部に滴下してしまうため、この凝結水をバッテリケース外へ排出する必要がある。上記の特許文献1では、バッテリケースに排水ドレンを設けて、この排水ドレンから凝結水をバッテリケースの外部へ排出している。
【0007】
しかし、特許文献1のバッテリケースの構成では、車両の床下にバッテリケースが搭載された場合(言い換えると、車室外にバッテリケースが搭載された場合)、バッテリケースが水没したり水にさらされたりする可能性があり、このとき排水ドレンからバッテリケース内に水が逆流してしまうおそれがある。つまり、車室外にバッテリケースが搭載される場合を想定し、バッテリケースが水没してしまうような場合に備えてバッテリケースの水密性(すなわち、外部からの水の浸入を防ぐ性能)を高くしておくことが好ましい。
【0008】
なお、エバポレータに関する技術ではないものの、溜まった水を外部へ排出する技術として、例えば特許文献2のような技術が知られている。これは、室内機ユニットの筐体内に配置されたドレンパンに溜まった水(ドレン水)を完全に除去するために、ドレンパンに電気ヒータを設け、ドレン水を加熱して蒸発させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−54379号公報
【特許文献2】特開2004−340523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献2の技術を上記のエバポレータに発生する水の除去に適用することが考えられる。この場合、バッテリケースに設けられている気体のみが通過する呼吸プラグと呼ばれる微小な孔から、エバポレータの凝結水を水蒸気にしてバッテリケースの外部へ排出することが期待できる。
【0011】
しかしながら、凝結水をヒータで加熱して水蒸気にした場合、エバポレータからバッテリケースの外部へ排出されなかった水蒸気は、バッテリケース内で冷えて水へ戻り、バッテリケース内に溜まってしまう。言い換えると、エバポレータ内で水蒸気となった凝結水は、空気とともにダクトを通じてバッテリケース内へ送られる。そして、ブロアファンによりバッテリケース内を流れる。このとき、呼吸プラグからバッテリケースの外部へ排出されなかった水蒸気は、バッテリケース内の温度の低い部分で水へ戻ってしまう。
そのため、バッテリケースの水密性を確保したとしても、エバポレータ内の凝結水がバッテリケース内に溜まってしまうという事態が生じるおそれがある。また、バッテリケース内に溜まった水を排出するための装置も必要となってきてしまう。
【0012】
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、バッテリケースの水密性を確保しながら、バッテリを冷却する際に生じるエバポレータの凝結水をバッテリケース内から除去することができるようにした、バッテリ冷却装置を提供することを目的の一つとする。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)ここで開示するバッテリ冷却装置は、バッテリを収容するバッテリケース内に設けられ、前記バッテリを冷却するバッテリ冷却装置であって、前記バッテリケース内に配設され、前記バッテリケース内の空気を冷却するエバポレータを備え、前記エバポレータの下方の底面に電源回路に接続された陽極電極及び陰極電極が配設されていることを特徴とする。
【0014】
(2)前記エバポレータの底部にトレイ部を有し、前記陽極電極及び前記陰極電極は、前記トレイ部の底面に配設されることが好ましい。
(3)前記陽極電極及び前記陰極電極は、前記トレイ部の前記底面の最深部に配置されることが好ましい。
【0015】
(4)前記バッテリケース内に配設され、前記バッテリケース内の前記空気の流れを生成する電動ファンを備え、前記陽極電極及び陰極電極は、前記電動ファンの作動に連動して通電されることが好ましい。
(5)前記バッテリケースが車両の床下に搭載されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
開示のバッテリ冷却装置によれば、エバポレータの下方の底面に配設された陽極電極及び陰極電極に、電気回路を通じて電気を流す(すなわち、通電する)ことで、エバポレータの下方の底面に溜まった凝結水を電気分解してバッテリケースの外部へ排出することができる。これにより、エバポレータ内に凝結水が溜まることを防ぐことができるとともに、凝結水をバッテリケース外に排出するため装置(例えば、排水ドレンのようなもの)を設ける必要がないため、バッテリケースの水密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係るバッテリ冷却装置を示す模式図であり、(a)は図2(a)のA−A矢視断面図であってエバポレータユニットの内部構成を示す図、(b)はエバポレータユニットの部分断面斜視図である。
【図2】一実施形態に係るバッテリ冷却装置の模式的な全体構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】一実施形態に係るバッテリ冷却装置を有するバッテリユニットの搭載構造を示す模式的な分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
本実施形態に係るバッテリ冷却装置の構成について、図1〜図3を用いて説明する。本バッテリ冷却装置は、大きな駆動力を要する電気自動車やハイブリッド車等に搭載されるバッテリに用いて好適であり、ここでは電気自動車の駆動源として適用したものを例として説明する。以下、電気自動車に対するバッテリの取り付け状態や配置を説明する上での方向の基準として、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。
【0019】
[1.構成]
[1−1.全体構成]
図3に示すように、電気自動車(車両)1は、車体2の後方に配置される走行用のモータ及び充電装置(いずれも図示略)と、車体2の床下に配置されるバッテリユニット10等とを備えている。また、バッテリユニット10の上方には、フロアパネル3が設けられ、フロアパネル3の上方、すなわち車室内には、フロントシート4F及びリヤシート4Rが配置されている。
【0020】
フロアパネル3は、例えば板金により形成され、車体2の前後方向及び左右方向に延び、車体2の床部を構成する。フロアパネル3は、車体2を構成する図示しないサイドメンバを含むフレーム構体の所定位置に溶接等によって固定されている。バッテリユニット10は、このフロアパネル3の下方、すなわち、車体の外部である床下に、フロアパネル3から離隔して配置される。また、バッテリユニット10の下方には、アンダーカバー5が配置され、フレーム構体等に固定される。
【0021】
図2(a)及び(b)に示すように、バッテリユニット10は、バッテリケース11の内部に、複数のバッテリモジュール(以下、単にバッテリという)12と、冷却装置14と、図示しない電子部品等とを収容して構成されている。バッテリケース11は、トレイ11aと蓋11bとから構成されている(図1(a)参照)。また、バッテリケース11は、対向する側面の上方に、呼吸プラグ13が複数個(図2(b)では三個)設けられている。
【0022】
この呼吸プラグ13には、気体は通過することができるが、液体は通過することができない膜が設けられており、この呼吸プラグ13を空気が流通することによりバッテリケース11内の気圧が調節される。バッテリ12は、容器内に複数のバッテリセル(セル電池)が内蔵されて構成されたものであり、ここでは十二個のバッテリ12がバッテリケース11内に互いに隙間を有して配設されている。また、ここでのバッテリ12は車両1の駆動源となる電力や電気エネルギを蓄える駆動用バッテリである。
【0023】
冷却装置14は、バッテリケース11の長手方向一端に設けられ、バッテリケース11内の空気を冷却するエバポレータ22を備えたエバポレータユニット20と、エバポレータ22で冷却された空気をバッテリケース11内へ流す電動ファン19と、エバポレータユニット20と電動ファン19とを連通するダクト18とから構成されている。なお、バッテリケース11内に配設されるバッテリ12の数や、バッテリケース11内における冷却装置14の位置は図2に示すものに限られない。
【0024】
[1−2.冷却装置の構成]
図1(a)に示すように、バッテリケース11内に配設されたエバポレータユニット20は、エバポレータケース21(以下、単にケース21という)内に、複数のフィンを有するエバポレータ22と、凝結水が溜まるトレイ部23と、エバポレータ22へ液状或いは気液混合状態の冷媒を送り込む導入流路24と、エバポレータ22から冷媒を送り出す排出流路25とを有している。
【0025】
エバポレータ22は、ケース21の長手方向に適当な間隔をあけて互いに平行に配置された複数の伝熱管素子と、隣り合う伝熱管素子の間に挟持された複数のコルゲート型のフィンとを有する周知の構成である。エバポレータ22には、導入流路24及び排出流路25が接続されている。エバポレータ22の伝熱管素子内には冷媒が流通する流路が形成されており、導入流路24から送り込まれた冷媒は、伝熱管素子内の流路を流通し、排出流路25から送り出される。
【0026】
この冷媒は、伝熱管素子内の流路を流通する間に周囲の熱を奪って蒸発する。これにより、エバポレータ22の温度が低下し、エバポレータ22を構成するフィンの間を流れる空気を冷却する。すなわち、エバポレータ22において、冷媒と空気との間で熱交換が行われる。なお、ケース21には、エバポレータ22のフィンに対向する位置に、バッテリケース11内の空気をエバポレータ22へ導入するための複数の孔部21gが設けられている。
【0027】
トレイ部23は、エバポレータユニット20のケース21の底部に設けられ、上記のエバポレータ22での熱交換時に生じる凝結水を貯留する部分である。トレイ部23は、ここではケース21の底面21aの一部に傾斜部21bが形成されることにより凝結水がケース21下方の底面21aに溜まるようになっている。つまり、図1(b)に示すように、トレイ部23は、水平な底面21aと、ケース21の底面21aに対して(言い換えると、水平方向に対して)斜め上方に傾斜して形成された傾斜部21bと、傾斜部21bに対向するケース21の側面21cと、底面21a,傾斜部21b及び側面21cに対してそれぞれ垂直な面である一対の側面21d,21eとで囲まれて形成される部分である。
【0028】
このトレイ部23の底面23B(すなわち、ケース21の底面21a)には、電源回路28に接続された陽極電極26及び陰極電極27が、互いに間隔を有して配置されている。なお、この電源回路28は、図示しない電源に接続されており、電動ファン19の作動に連動して通電される。
【0029】
陽極電極26は、トレイ部23の底面23Bに接する第一部分26aと、第一部分26aの一端から上方に屈曲して連続に形成された第二部分26bとから構成されている。言い換えると、陽極電極26は、第一部分26aが底面23Bに沿って設けられ、第二部分26bが底面23Bに対して略垂直に設けられた略L字型(すなわち、略直角に上方に折れ曲がった形状)に形成されている。
【0030】
陰極電極27は、陽極電極26の形状と同様に形成されている。すなわち、陰極電極27は、トレイ部23の底面23Bに接する第一部分27aと、第一部分27aの一端から上方に屈曲して連続に形成された第二部分27bとから構成されている。言い換えれば、陰極電極27は、第一部分27aが底面23Bに沿って設けられ、第二部分27bが底面23Bに対して略垂直に設けられた略L字型(すなわち、略直角に上方に折れ曲がった形状)に形成されている。これら陽極電極26及び陰極電極27は、それぞれ一つで一対の電極を構成する。
【0031】
ここでは、一対の陽極電極26及び陰極電極27が、底面23Bの長手方向略中央且つ短手方向略中央(すなわち、底面23Bの略中心)に配置されている。陽極電極26及び陰極電極27のそれぞれの第一部分26a及び27aは、底面23Bの長手方向に延設され、第一部分26a及び27a全体が底面23Bに接している。また、陽極電極26及び陰極電極27のそれぞれの第二部分26b及び27bは、トレイ部23の高さ(深さ)と略同じ長さに設けられ、その先端に電源回路28が接続されている。なお、トレイ部23の上方には、エバポレータ22と導入流路24及び排出流路25とが配置されるため、陽極電極26及び陰極電極27の第二部分26b及び27bの長さは、これらに接触しない程度に設定されていればよい。
【0032】
導入流路24は、エバポレータ22の下方に接続され、エバポレータ22へ冷媒を送り込むための配管である。また、排出流路25は、エバポレータ22の上方に接続され、エバポレータ22から冷媒を送り出すための配管である。なお、これら導入流路24及び排出流路25の接続位置はこれに限られない。
【0033】
エバポレータユニット20のケース21の上面21fには、エバポレータ22によって冷却された空気をバッテリケース11内へ送るためのダクト18が接続されている。ダクト18の下流側には電動ファン19が接続されている。電動ファン19は、ダクト18を流通してきた冷風をバッテリ12へ向けて流す。すなわち、電動ファン19は、バッテリケース11内に空気の流れを生成するものである。電動ファン19は、ここでは電源回路28が接続されている電源と同じ電源に接続されている。
【0034】
[2.作用,効果]
本実施形態にかかるバッテリ冷却装置14は上述のように構成されているので、バッテリ12は以下のように冷却される。
バッテリケース11内に収容され互いに隙間を有して配設されたバッテリ12は、この隙間を流通する空気により冷却される。この空気は、バッテリ12間の隙間を流通してバッテリ12の熱を吸収することでバッテリ12を冷却し、温度が上昇する。この温度上昇した空気は、電動ファン19により生成された空気の流れに乗ってエバポレータ22へ導入される(図1(a)中の白抜き矢印)。エバポレータ22へ導入された空気は、エバポレータ22のフィン間を流通して冷却され、ダクト18を通って電動ファン19へ流れる(図1(a)中の黒矢印)。そして、電動ファン19により冷えた空気がバッテリ12へ向けて流されることにより、バッテリ12を冷却する。
【0035】
また、エバポレータ22では、冷媒と空気との間の熱交換により凝結水が発生し、この凝結水は徐々に下方に落ちて傾斜部21bを伝ってトレイ部23の底面23B(すなわち、ケース21の内部の底面21a)に溜まる。この溜まった凝結水は、底面23Bに設けられた一対の電極に電気を流すことにより、電気分解される。言い換えると、一対の陽極電極26及び陰極電極27を通電することによって、凝結水に接触する陽極電極26及び陰極電極27の第一部分26a及び27aにおいて凝結水を酸素ガスと水素ガスとに分解する。
【0036】
電気分解により発生した酸素ガスと水素ガスは、バッテリケース11に設けられた呼吸プラグ13からバッテリケース11の外部へ排出される。なお、陽極電極26及び陰極電極27による電気分解は、長い時間をかけて徐々に行われるものであるため、短時間で見れば発生する酸素ガスと水素ガスは極微量であり、徐々に呼吸プラグ13から排出される。
【0037】
したがって、本バッテリ冷却装置14によれば、エバポレータユニット20の内部(エバポレータ22の下方)の底面21aに配置された陽極電極26及び陰極電極27に、電気回路28を通じて電気を流す(すなわち、通電する)ことで、エバポレータユニット20内の底面21aに溜まった凝結水を電気分解して酸素ガスと水素ガスに変え、バッテリケース11の外部へ排出することができる。これにより、エバポレータユニット20内に凝結水が溜まることを防ぐことができるとともに、凝結水をバッテリケース11外に排出するため装置(例えば、排水ドレンのようなもの)を設ける必要がないため、バッテリケース11の水密性を確保することができる。
【0038】
また、電気分解により凝結水をガス化させるため、水蒸気にしてバッテリケース11外へ排出する場合に比べて、バッテリケース11内で再び水へ戻るようなことはなく、バッテリケース11内に水が溜まることを防ぐことができる。また、電気分解により凝結水がガス化するには(すなわち、酸素ガスと水素ガスとに分解されるには)相当な時間がかかり、短時間で見れば発生する酸素ガスと水素ガスは極微量であるため、安全性を損なうことはない。
【0039】
また、エバポレータユニット20には、傾斜部21bを有するトレイ部23が設けられているため、トレイ部23の底面23B(すなわち、ケース21の底面21a)に凝結水を溜めることができ、このトレイ部23の底面23Bに陽極電極26及び陰極電極27を配置することにより効率よく凝結水を電気分解することができる。また、傾斜部21bを形成することにより、エバポレータ22に干渉せずに電極を配設することができるため、電極の設置自由度を高めることができる。さらに、陽極電極26及び陰極電極27は略L字型に形成されており、第二部分26b及び27bが底面23Bに対して略垂直に設けられているため、第二部分26b及び27bの先端に接続された電源回路28が凝結水に接触することがなく安全である。
【0040】
また、電動ファン19によりバッテリケース11内に空気の流れが生成されるため、バッテリケース11内のバッテリ12を積極的に冷却することができる。このとき、電動ファン19の作動に連動して、すなわち、エバポレータ22による空気の冷却が行われているときに、陽極電極26及び陰極電極27に通電して凝結水の電気分解を行うため、凝結水がエバポレータユニット20内に溜まってしまうことを確実に防ぐことができる。
【0041】
また、本バッテリ冷却装置14は、車両1の床下にバッテリユニット10(すなわち、バッテリケース11)が搭載されるものに適用されており、バッテリケース11が水没したり水にさらされたりする可能性があるため、より高い水密性が要求される。これに対して、エバポレータ22で発生する凝結水を電気分解によりガス化して排出する本バッテリ冷却装置14であれば、排水ドレン等を設ける必要がないため、水が外部から浸入してくる経路がなく、高い水密性を確保することができ、より有効である。
また、バッテリユニット10を構成するバッテリ12が車両1の駆動源となる駆動用バッテリの場合は、駆動用バッテリは大容量のため車両1の床下に搭載されることが多いため、本バッテリ冷却装置14は、駆動用バッテリに適用することが特に有効である。
【0042】
[3.変形例]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上記実施形態では、エバポレータユニット20のケース21の底部にトレイ部23が設けられているが、このトレイ部23の形状は上記したものに限られない。例えば、底面21aに対して傾斜した面が二つ設けられた形状(すなわち、底面23Bの短手方向中央部が最も深くなるような形状)のトレイ部にしてもよい。
【0043】
この場合、トレイ部の底面の最深部に陽極電極26及び陰極電極27が設けられていることが好ましい。エバポレータ22から発生する凝結水は、傾斜面を伝ってトレイ部の最も深い部分(最深部)に溜まるため、このような構成ならば凝結水の量が少ない段階でも電気分解することができ、凝結水の貯留量を減らすことができる。
また、トレイ部23は、ケース21と一体で形成されていなくてもよい。すなわち、ケース21とは別体でトレイ部が設けられ、ケース21の底部に結合される構成であってもよい。
【0044】
また、エバポレータユニット20の下方の底面に傾斜部21bを有していない構成であってもよい。すなわち、ケース21の底面21aが水平面に形成され、凝結水を溜める構成となっていなくてもよい。この場合、凝結水が底面21a全体に広がることが予想されるため、複数の電極(すなわち、陽極電極26及び陰極電極27)を底面21aに設ければ、底面21aのどの部分においても電気分解することができる。
【0045】
また、陽極電極26及び陰極電極27の形状や配置も上記実施形態に記載したものに限られない。例えば、第二部分26b及び27bの長さがトレイ部23の高さと異なっていてもよいし、陽極電極26と陰極電極27との間隔は、互いが接触しない程度の長さがあればよく、図1(b)に示すものに限られない。また、上記実施形態では、陽極電極26及び陰極電極27の第一部分26a及び27aがいずれも底面23Bの長手方向に延設されているが、短手方向に延設されていてもよい。さらに、陽極電極26及び陰極電極27の数は一対に限られず、複数の対が設けられていてもよい。
【0046】
また、ダクト18は、ケース21の上面21fではなく、ケース21の側面に接続されていてもよい。
また、電極にのみ単独で電流を流すような構成としてもよい。つまり、陽極電極26及び陰極電極27への通電は、電動ファン19の作動と連動して実施されなくてもよく、例えば常時通電状態としてもよいし、通電するタイミングを図示しない車載電子制御装置により制御されるような構成としてもよい。
【0047】
また、本バッテリ冷却装置14は、車両1の床下に搭載される駆動用のバッテリユニット10に適用されるものに限られず、車室内に搭載されるバッテリユニットに適用されるものであってもよい。また、本バッテリ冷却装置14は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されるバッテリユニットに適用されるものに限られず、バッテリケース内にバッテリを収容する構成のものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
10 バッテリユニット
11 バッテリケース
12 バッテリモジュール(バッテリ)
13 呼吸プラグ
14 冷却装置
18 ダクト
19 電動ファン
20 エバポレータユニット
21 エバポレータケース
22 エバポレータ
23 トレイ部
23B 底面(最深部)
24 導入流路
25 排出流路
26 陽極電極
27 陰極電極
28 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを収容するバッテリケース内に設けられ、前記バッテリを冷却するバッテリ冷却装置であって、
前記バッテリケース内に配設され、前記バッテリケース内の空気を冷却するエバポレータを備え、
前記エバポレータの下方の底面に電源回路に接続された陽極電極及び陰極電極が配設されている
ことを特徴とする、バッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記エバポレータの底部にトレイ部を有し、
前記陽極電極及び前記陰極電極は、前記トレイ部の底面に配設される
ことを特徴とする、請求項1記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記陽極電極及び前記陰極電極は、前記トレイ部の前記底面の最深部に配設される
ことを特徴とする、請求項2記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記バッテリケース内に配設され、前記バッテリケース内の前記空気の流れを生成する電動ファンを備え、
前記陽極電極及び陰極電極は、前記電動ファンの作動に連動して通電される
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項5】
前記バッテリケースが車両の床下に搭載される
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバッテリ冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−67198(P2013−67198A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205291(P2011−205291)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】