説明

バッテリ状態検知装置

【課題】周辺環境からの影響を受けることなくバッテリの状態量を正確に測定可能なバッテリ状態検知装置を提供する。
【解決手段】本実施形態のバッテリ状態検知装置10は、センサ部11とデータ処理部12がともに上記の端子カバー25の内部に取り付けられているのを特徴としている。すなわち、センサ部11が端子カバー25の内部の上蓋部25bの内表面に取り付けられ、データ処理部12が上蓋部25bの内部に内包されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリの状態量を検知するバッテリ状態検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されているバッテリは、エンジン始動に不可欠のものであり、車両の走行にとって特に重要な機器である。そのため、バッテリの放電や劣化等の不具合を早期に発見できるよう、バッテリ状態検知装置が設置されている。バッテリ状態検知装置は、バッテリの温度や電圧等を測定するためのセンサと、該センサで測定されたデータを処理するデータ処理部を備えている。
バッテリセンサは、バッテリの状態量が測定可能なバッテリ周辺に設置する必要があり、バッテリセンサの設置方法に関する従来技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1では、複数のセンサを1つの統合された構成ユニットにまとめた固定装置に関する技術が開示されている。該固定装置は、バッテリの1つの端子に固定できる構造とされている。
【特許文献1】特表2003−517613号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両用電源システムでは、以下のような問題があった。通常、車両用バッテリは、エンジンルームなどの厳しい環境の場所に設置されることが多い。そのため、エンジンからの放熱やラジエータファンからの熱風などの影響を受け、温度測定には好ましくない環境となっている。
【0005】
また、バッテリ温度を測定するためのセンサは、現状、バッテリケースやバッテリユニット内の基板上に取付けられている。このように、温度センサがバッテリに直に接触するように取り付けられていないため、バッテリ温度を正確に測定するのが困難であるといった問題もある。
【0006】
特許文献1に記載のバッテリセンサの取り付け方法では、バッテリ端子にセンサが直接取り付けられるようにしているが、エンジンからの放熱やラジエータファンからの熱風などの影響を直接受ける状態で取り付けられている。そのため、特許文献1に記載のセンサの取り付け方法によっても、バッテリの温度を正確に測定するのが極めて困難である。
【0007】
一方、データ処理部は通常、バッテリセンサから離れた場所に設置され、データ処理部とセンサ間はケーブルで接続されている。しかしながら、前記ケーブルは、周辺からノイズを受けやすく、その影響でバッテリ状態量が正確に測定できなくなるといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、周辺環境からの影響を受けることなくバッテリの状態量を正確に測定可能なバッテリ状態検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のバッテリ状態検知装置の第1の態様は、センサ部とデータ処理部を備え、車両用バッテリの状態量を検知するバッテリ状態検知装置であって、前記データ処理部が前記バッテリの端子に近接して固定され、前記センサ部が前記バッテリの端子カバーの内部に取り付けられていることを特徴とするバッテリ状態検知装置である。
【0010】
第2の態様は、前記端子カバーが、前記端子の全周または一部を円周方向に囲む側筒部と、該側筒部の上端部に設けられた上蓋部とからなるものであって、前記データ処理部が前記上蓋部の内部に内包されていることを特徴とするバッテリ状態検知装置である。
【0011】
第3の態様は、前記センサ部が前記上蓋部の内表面に設置されており、前記端子カバーが前記バッテリ端子に設置されると、前記センサ部が前記バッテリ端子の上端または前記バッテリのバッテリポストの上端に接触することを特徴とするバッテリ状態検知装置である。
【0012】
第4の態様は、前記センサ部が前記側筒部の内表面に設置されており、前記端子カバーが前記バッテリ端子に設置されると、前記センサ部が前記バッテリ端子の外周部に接触することを特徴とするバッテリ状態検知装置である。
【0013】
第5の態様は、前記センサ部が前記バッテリの2種類の状態量を測定する2つのセンサを有しており、一方の前記センサが前記上蓋部の内表面に設置されており、他方の前記センサが前記側筒部の内表面に設置されており、前記端子カバーが前記バッテリ端子に設置されると、前記一方のセンサが前記バッテリ端子の上端または前記バッテリポストの上端に接触するとともに、前記他方のセンサが前記バッテリ端子の上外周部に接触することを特徴とするバッテリ状態検知装置である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、センサを端子カバー内に設置することで、周辺環境からの影響を受けることなくバッテリの状態量を正確に測定可能なバッテリ状態検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面を参照して本発明の好ましい実施の形態におけるバッテリ状態検知装置の構成について詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るバッテリ状態検知装置がバッテリに設置された状態を示す模式図である。本実施形態のバッテリ状態検知装置10は、センサ部11とデータ処理部12から構成されている。
【0017】
バッテリ21は、バッテリポスト22に端子23が固定されており、端子23に接続されたケーブル24を通して電力を供給している。端子23は、端子カバー25で覆われる構造となっており、本実施形態の端子カバー25は、固定点26を支点に開閉できる構造となっている。
【0018】
端子カバー25は、さらに端子23の全周または一部を円周方向に囲む側筒部25aと、側筒部25aの上端部に設けられた上蓋部25bとから形成されている。端子カバー25は、側筒部25aと上蓋部25bで端子23を覆う構造のものであって、端子23に金属等の導電体が接触したり、埃で汚れるのを防止している。
【0019】
本実施形態のバッテリ状態検知装置10は、センサ部11とデータ処理部12がともに上記の端子カバー25の内部に取り付けられているのを特徴としている。すなわち、センサ部11が端子カバー25の内部の上蓋部25bの内表面に取り付けられ、データ処理部12が上蓋部25bの内部に内包されている。
【0020】
センサ部11を上蓋部25bの内表面に取り付けることで、図1(b)に示すように、端子カバー25を端子23に覆い被せたときに、センサ部11がバッテリポスト22または端子23の先端に接触させることができる。これにより、センサ部11はバッテリポスト22または端子23を経由して所定のバッテリ状態量を測定することが可能となる。前記バッテリ状態量として、バッテリ電圧であってもよいし、あるいはバッテリ温度であってもよい。
【0021】
また、データ処理部12が上蓋部25bの内部に内包されるようにすることにより、上蓋部25bの内表面に取り付けられたセンサ部11との距離を極めて短くすることが可能となる。その結果、センサ部11とデータ処理部12とを接続する配線体(図示せず)の長さを極めて短くすることができ、前記配線体にノイズが加わるのを回避することが可能となる。
【0022】
本実施形態のバッテリ状態検知装置10を取り付ける端子カバー25は、固定点26でバッテリ筐体等に固定されており、センサ部11やデータ処理部12を保守する場合等には、固定部26を支点として端子カバー25を上方に持ち上げてセンサ部11及びデータ処理部12を扱えるようにしている。
【0023】
本発明の別の実施の形態に係るバッテリ状態検知装置がバッテリに設置された状態を図2に示す。本実施形態のバッテリ状態検知装置30は、センサ部11が2つのセンサ31と32を有しているものである。
【0024】
本実施形態では、一方のセンサ31が、図1に示した実施形態と同様に、上蓋部25bの内表面に取り付けられており、他方のセンサ32が側筒部25aに取り付けられている。側筒部25aに取り付けられたセンサ32は、端子カバー25が端子23に覆い被せられたときに、端子23の側面に接触するように形成されている。センサ31、32として、例えばセンサ31を電圧測定用センサとし、センサ32を温度測定用センサとすることができる。
【0025】
上記のセンサ31と32のように、2つ以上の複数のセンサを端子カバー25の上蓋部25bと側筒部25aに分けて取り付けるようにすることにより、端子カバー25内部の狭い空間に複数のセンサを取り付けることが可能となる。なお、端子カバー25の内部に取り付けるセンサが1つの場合であっても、該1つのセンサを側筒部25aに取り付けてもよい。
【0026】
上記実施形態のバッテリ状態検知装置10あるいは30は、固定点26を支点に開閉可能な構造の端子カバー25に取り付けるようにしていた。バッテリ状態検知装置10あるいは30を取り付け可能な端子カバーは、図1及び図2に示した端子カバー25に限られるものではなく、例えば図3に示すような端子カバー41に取り付けることも可能である。
【0027】
図3に示す端子カバー41は、バッテリポスト22を完全に覆う構造のものである。端子カバー25と同様に、端子カバー41も側筒部41aと上蓋部41bから構成されている。そして、図1に示したバッテリ状態検知装置10と同様に、センサ部11を上蓋部41bの内表面に取り付け、データ処理部12を上蓋部41bの内部に内包させている。
端子カバー41は、バッテリポスト22を完全に覆って取り付けられることから、周辺環境からの影響をさらに低減することができ、エンジン等からの放熱や埃等からセンサ部11を保護することができる。なお、端子カバー25あるいは41に用いられる材質は、プラスチックであってもよいし、あるいはゴム系樹脂であってもよい。
【0028】
上記説明の通り、本発明のバッテリ状態検知装置は、センサ部及びデータ処理部を端子カバーの内部に取り付けられることから、エンジンの放熱やラジエータファンからの熱風等の影響を受けることなくバッテリの温度を正確に測定することが可能となる。
【0029】
また、前記センサ部と前記データ処理部とを接続する配線体の長さを短くすることができ、前記配線体にノイズが加わる可能性を大幅に低減することが可能となる。さらに、本発明のバッテリ状態検知装置は、前記端子カバーと一体に取り付け、取り外しされることから、センサの保守等の作業性が大幅に高まるといった効果も得られる。
【0030】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るバッテリ状態検知装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるバッテリ状態検知装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るバッテリ状態検知装置がバッテリに設置された状態を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施の形態に係るバッテリ状態検知装置がバッテリに設置された状態を示す模式図である。
【図3】図3は、バッテリポストを完全に覆う構造の端子カバーに取り付けられた本発明のバッテリ状態検知装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
10、30・・・バッテリ状態検知装置
11・・・センサ部
12・・・データ処理部
21・・・バッテリ
22・・・バッテリポスト
23・・・端子
24・・・ケーブル
25、41・・・端子カバー
26・・・固定点
31、32・・・センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ部とデータ処理部を備え、車両用バッテリの状態量を検知するバッテリ状態検知装置であって、
前記データ処理部が前記バッテリの端子に近接して固定され、
前記センサ部が前記バッテリの端子カバーの内部に取り付けられている
ことを特徴とするバッテリ状態検知装置。
【請求項2】
前記端子カバーは、前記端子の全周または一部を円周方向に囲む側筒部と、該側筒部の上端部に設けられた上蓋部とからなるものであって、
前記データ処理部が前記上蓋部の内部に内包されている
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ状態検知装置。
【請求項3】
前記センサ部が前記上蓋部の内表面に設置されており、
前記端子カバーが前記バッテリ端子に設置されると、前記センサ部が前記バッテリ端子の上端または前記バッテリのバッテリポストの上端に接触する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリ状態検知装置。
【請求項4】
前記センサ部が前記側筒部の内表面に設置されており、
前記端子カバーが前記バッテリ端子に設置されると、前記センサ部が前記バッテリ端子の外周部に接触する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリ状態検知装置。
【請求項5】
前記センサ部は前記バッテリの2種類の状態量を測定する2つのセンサを有しており、
一方の前記センサが前記上蓋部の内表面に設置されており、
他方の前記センサが前記側筒部の内表面に設置されており、
前記端子カバーが前記バッテリ端子に設置されると、前記一方のセンサが前記バッテリ端子の上端または前記バッテリポストの上端に接触するとともに、前記他方のセンサが前記バッテリ端子の上外周部に接触する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリ状態検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−263817(P2007−263817A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90515(P2006−90515)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】