説明

バッテリ電極のためのナノ構造化ケイ素−炭素複合材料

本発明は、(A)少なくとも以下の成分;(a1)モノヒドロキシ芳香族化合物および/またはポリヒドロキシ芳香族化合物、および(a2)アルデヒド、および(a3)触媒を反応器中に導入し、その際、反応温度Tが75〜200℃であり、かつ、圧力が80〜2400kPaであり、かつ、0.001〜1.000.000sの時間tの間に、これらの成分を触媒の存在下で互いに反応させて組成物を得て、その際、前ゲル生成物が得られ、かつ、(B)少なくとも以下の成分;(b1)結晶またはアモルファスの形のサブミクロンのケイ素粉末を、工程(A)中または工程(A)後に得られた生成物中に導入し、かつ引き続いて、(C)工程(B)後に得られた生成物を、(a3)塩基性触媒の場合には酸から選択された中和剤中に導入するか、あるいは(a3)酸性触媒の場合にはアルカリから選択された中和剤中に導入し、その際、微粒子状の生成物が得られ、かつ、(D)工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物を乾燥させ、かつ、引き続いて(E)工程(D)後に得られた生成物を500〜1200℃の温度で炭化する工程を含む、ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を製造するための方法、その複合材料自体、リチウムイオンセルおよびバッテリのためのアノード材料としてのその使用、ならびにそのリチウムイオンセルおよびバッテリに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を製造するための方法、前記複合材料ならびにそのリチウムイオンバッテリのためのアノード材料としての使用に関する。
【0002】
商習慣上のリチウムイオンバッテリでは、現在、主にグラファイトをアノード材料として使用している。グラファイトのインターカレーション位置をすべて使用する場合(LiC)には372mAh/gの理論容量を提供するが、しかしながら、これは実際の有効な可逆容量はそれを下回る。このようなアノードと、リチウム−遷移金属ベースのカソードとの組合せは、150〜200Wh/kgないし410〜500Wh/lのエネルギー密度を提供する。
【0003】
増加したエネルギー密度の要求は、特にグラファイトを、その他の同じくLiイオンによりインターカレーション可能な材料によって置き換えることによって遂行される。ここで特に重要であるのは、錫またはケイ素による金属間相である。最大の理論比容量は、Li22Snに関しては〜900mAh/gであり、かつLi22Siに関しては〜4200mAh/gである。特に、リチウム−吸蔵/リチウム−放出の際の大きい体積膨張は、これら金属間アノードの破滅的なサイクル挙動を生じさせる。さらに当業者は、現在まだ、相対的に小さい比容量を有するがまさに高いサイクル安定性を有するグラファイトと、全く不十分なサイクル安定性を有する新規材料との間における可能性を選択できるに過ぎない。
【0004】
リチウムイオンバッテリ中でケイ素を活性成分として使用する際の困難を克服するための原因および種々の手がかりに関する包括的な概要は、Kasavajjula、WangおよびAppleby(Journal of Power Sources 163 (2007), 1003-1039)により提供されている。
【0005】
本質的な原因として、ここでは、純粋なケイ素と完全にリチウム化されたLi22Siとの間の〜400%の高い体積変化およびそれによりもたらされるケイ素粒子と使用された導電性添加剤との間の乏しい電子的接触が挙げられる。
【0006】
従来技術では、体積膨張によりもたらされる問題点を解決するための以下の手段が知られている:
1.μmまたはnmスケールの粉末形状の純粋なケイ素からなるアノード;
2.不活性マトリックス中に分散されたSi;
3.活性マトリックス中に分散されたSi;
4.種々のバインダを有するケイ素アノード;
5.Siから成る薄層。
【0007】
1に関して:サブミクロンの範囲で使用されるケイ素粒子の還元は、さらにリチウム化および脱リチウム化の際の粒子の絶対的な体積変化を減少させるが、しかしながら粒子と分流器(Stromableiter)との間の電子的接触が失われることが、Guo、Wange、Liu、Dou(J.Power Sources 146 (2005) 448)により報告されている。
【0008】
2に関して:ケイ素または錫と導電性添加剤、たとえば遷移金属の窒化物、ホウ化物および遷移金属のケイ化物ならびにBおよびCa、さらには金属性添加剤、たとえばFe、Co、Ni、Cuとの高エネルギー混合物は、許容できない不可逆容量を示し、これは先ずグラファイトまたは炭素ベースコーティングの添加によって減少させることができる。〜30%の高い容量を有する錫−コバルト−炭素ベースのアノードを備えたリチウムイオンバッテリは、特許出願EP 1 643 572 Al(Sony 社)で開示されている。
【0009】
3に関して:活性マトリックスは、金属、さらに炭素から構成することができる。たとえば、MgSiを3段階でLiによりインターカレーションし、その際、大きな体積膨張がアノードの崩壊を招くことが、Kimら(J. Electrochem. Soc. 146 (1999) 4401)により報告されている。Dahnら(J. Electrochem. Soc. 150 (2003) A149)は、SiSnの場合の高い可逆容量について報告しているが、しかしながらサイクルデータについては何ら触れていない。
【0010】
ケイ素と活性金属Sn、Zn、Alまたは不活性金属、たとえばCu、Co、Ni、B、Ti、Sbからなる合金が、EP 1 463 131 Al(Canon Kabushiki Kaisha)で開示されている。これらの合金は30サイクルに関して1000mAh/gを上回る容量を示す。Si−Sn−Ni−合金は、100サイクル後にLiCoOカソードを備えた全セル中でなおも75%の出発容量を示すことがUS 2004/0248011(Canon Kabushiki Kaisha)において開示されている。
【0011】
活性の炭素マトリックスは、種々の技術を用いて製造することができる:
熱分解/CVD/TVD−方法
種々のポリシロキサン、たとえばポリメチルフェニルシロキサン(PMPS)およびポリフェニルセスキシロキサン(PPSSO)の熱分解は、不活性化された炭化ケイ素に対しては1300℃を上回る温度で、たとえばC2.9SiOH(式中、y=0〜1)に対しては約1000℃で実施する。これらの材料はアモルファスであり、450mAh/gの可逆容量で、約300mAh/gの不可逆的損失を示すことが、Dahnら(Solid State lonics 74 (1994) 249)により開示されている。
【0012】
同様の結果は、Dahnら(J. Mat. Sci. Lett 19 (2000) 53)による他のSi含有ポリマーの熱分解によってか、あるいはHayesら(J. Electrochem. Soc. 146 (1999) 2435)によるポリメタクリロニトリル/ジビニルベンゼンとテトラメチルシランまたはテトラビニルシランとの同時の熱分解によって見出され、かつ、残存する酸素含量に起因する。
【0013】
グラファイト、たとえばMCMB上のテトラヒドロシランのような、炭素上のケイ素のTVD堆積は、290mAh/gから462mAh/gへの容量の増加を示し、その際、クーロン効率は45%に過ぎない。SEI−形成、不可逆的Li−結合および活性材料の損失は、本質的な原因としてXie(Mater. Chem. Phys. 88 (2003) 295)により指摘されている。
【0014】
ケイ素堆積のための支持体としてTimcal KS-6を使用する場合には、不可逆容量は26%に過ぎない。これに関して、Xieと同様の理由が報告される。改善されたサイクル挙動が、結合作用を有するLiOから成る上層によって説明され、この場合、これは、リチウムと、堆積したケイ素表面の酸素との反応によって形成されることが、Holzapfelら(Chem. Commun. (2005), 1566)により報告される。
【0015】
気相堆積法による炭素のケイ素上への堆積は、相対的に小さい不可逆容量を示すが、しかしながら、炭素被覆物は膨張するケイ素の圧力に徐々に屈し、かつその容量は急速に低下する(Dimovら(J.Power Sources 114 (2003) 88))。
【0016】
さらに、制限された充電容量(Ladekapazitaet)の場合には、このような低下が100サイクル未満で生じる。Liuらは、これに関して論文J. Electrochem. Soc. 152 (2005) A 171中で説明しており、これによれば、当初の充電容量および放電容量はほぼ同じであるが、しかしながら、炭素被覆物が薄い場合には、粒子は先ず放電の際に電気的接触を喪失し、かつ放電容量が減少し、その後に、粒子の接触は充電の際に崩壊する。
【0017】
ケイ素−炭素結合材料は、さらに、ボールミル中でのエネルギー導入によって純粋に機械的に製造することができる。Wangらは、J Electrochemical Soc 145 (1998), 2751中において、強力な粉砕が、単に混合された成分に対して可逆容量を増加させ、その際、不可逆容量はケイ素含量と共に増加することを示す。
【0018】
ボールミルと熱分解との組合せは、Liuら(Solid State lonics 168 (2004), 61, sowie Electrochem Solid State Lett 7 (2004), A369)によれば、サイクル挙動と同様に可逆容量も改善させる。粉砕によって、先ずケイ素と炭素前駆体を混合させ、この混合物を熱分解し、かつ得られた大きい孔構造物をその後に粉砕によってさらに破壊する。後続の熱分解での炭素前駆体の再度の混合導入は、クーロン効率を80%に増加させる。
【0019】
Si−炭素結合材料を製造するための他の可能性は、熱分解のための前駆体としての炭素ゲルの使用である。
【0020】
第一の変法において、Niuら(Anal. Commun. 36 (1999), 81)によれば、小板状のグラファイトをメチルトリメトキシシラン中に懸濁し、かつ懸濁液をRTでゾル−ゲル−グラファイト(SGG)にゲル化する。このようにして得られた粉末は、パーコレートするグラファイト粒子を有する開放系の三次元ネットワークを示す。ケイ素粉末を含むSGG粉末の粉砕およびこの混合物の電極への加工は、80%のクーロン効率および12%のフェーディングを有するアノードを、12サイクルを上回って生じる。
【0021】
さらなる変法はWangらによる、ナノ結晶化Si−粉末の、ゲル化レゾルシン−ホルムアルデヒド−混合物への添加であり、これは10時間に亘って85℃で硬化されることが、Electrochem. Commun. 6 (2004), 689に開示されている。この混合物は、緻密なブロックであり、650℃で40%の炭素を有するケイ素−炭素結合材料に変換される。さらなる試料の製造および電極の構成ならびに製造は、この文献から引き出されるものではないが、しかしながら得られた複合材料は、NMP中のPVDFを結合材料として備えたものであり、アルミニウム箔上に被覆され、Li−金属に対する半セルに加工し、かつ0.02〜2.0VのC/10により電気化学的に特徴付けられる。第1サイクル中での不可逆的損失は、結合材料中での許容されるケイ素含量が60%であるにもかかわらず、25%を下回る。
【0022】
導入されたケイ素の一部分のみがサイクルに関与することは明らかであるにもかかわらず、50サイクルを上回る場合には良好な安定性が立証される。リチウムに対する半セルにおいて、アルミニウム箔の電流捕集器(Stromsammler)としての使用が可能であるが、しかしながら全セルでは、カソード側に新たな種類の電流コレクタが要求される。リチウムによるアルミニウム−電流捕集器のインターカレーションに関しては、何ら報告されていない。
【0023】
4に関して:Holzapfelら(Electrochem Solid State Lett 8 (2005), A516,)によるエラストマー、たとえばポリイソブテンでの、あるいはIshihara ら(J. Power Sources 146 (2005), 161)によるEDPMでの、熱可塑性PVDFの置換は、同様に高い不可逆的損失ならびに強化されたフェーディングを生じる。
【0024】
さらに、粘度改良剤としてナトリウム−カルボキシメチルセルロース(NaCMC)を有するたとえばスチレン−ブタジエン−ゴム(SBR)からなる水性エマルションに対する溶解性エラストマーの置換は、Liu ら(ElectrochemSolid State Lett 8 (2005), A100)により報告されており、600mAh/gの容量に制限する場合には、かろうじて50サイクルが要求されるにすぎない。
【0025】
5に関して:サイクルの際の、ケイ素の絶対的体積膨張を最小限にすることを考慮して、結合剤不含のナノ結晶層またはナノアモルファス層を、電流捕集器上に製造するための試みをおこなう。異なる研究者、たとえばDahnら(J. Electrochem. Soc. 151 (2004) A838)は、サイクルの際に生じる結晶相およびアモルファス相を特徴付ける。したがって、リチウム化の際に、リチウム化されたアモルファス相の他に機械的圧力が導入された結晶相Li15Siの共存を回避するために、0.05Vの電圧を下回るべきではない。さらにSi−層の厚さの影響が、Yoshimura(J Power Sources 146 (2005) 445)により報告され、かつ析出速度は、Ohara(J Power Sources 119 (2005) 591)により、サイクル耐性に関する好適な作用が分析されることがなかった。
【0026】
これらの技術的教示すべては、高い不可逆容量、ならびに充電および放電プロセスの際のサイクル数を減少させるその実際の使用の点において、リチウムイオンバッテリ中のアノード材料としての使用に関する公知の結合材料の欠点を共通して持ちあわせるものである。
【0027】
したがって本発明の課題は、リチウムイオンバッテリ中での十分な容量およびサイクル安定性を備えたアノード材料として使用するのに適した、ケイ素−炭素−複合材料の製造方法、ならびに予め提供されたケイ素−炭素−複合材料自体を提供することである。
【0028】
本発明の対象は、ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を製造する方法であり、この場合、この方法は、以下の工程:
(A)少なくとも以下の成分
(a1)モノヒドロキシ芳香族化合物および/またはポリヒドロキシ芳香族化合物、および
(a2)アルデヒド、および
(a3)触媒、
を反応器中に装入して、その際、75〜200℃の反応温度T、および80〜2400kPaの圧力、および0.001〜1000000sの時間tで、前記成分を触媒の存在下で互いに反応させて組成物を得られ、その際、前ゲル生成物(Vorgelat)が得られ、かつ、
(B)少なくとも以下の成分
(b1)結晶またはアモルファスのサブミクロンのケイ素粉末を、工程(A)中または工程(A)後に得られた組成物に導入し、かつ、引き続いて、
(C)工程(B)により得られた生成物を、(a3)塩基性触媒の場合には酸、あるいは(a3)酸性触媒の場合にはアルカリから選択された中和剤中に導入し、その際、微粒子状の生成物が得られ、かつ、
(D)工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物を乾燥させ、かつ、引き続いて
(E)工程(D)後に得られた生成物を、500〜1200℃の温度で炭化する、
ことを含む。
【0029】
請求された方法は、この方法を、同程度に、連続的または回分的に実施することができるといった利点を有する。
【0030】
本発明による方法は、一定量のケイ素粒子を、ケイ素−炭素−複合材料中に均一に分散することを可能にする。このような分散は同様に、このようにして得られたアノード材料のエネルギー貯蔵系、たとえばリチウムイオンバッテリのために高い容量を可能にする。
【0031】
本発明による方法は、この方法により電極材料へのさらなる加工のために改善された粒子の微細性を示す生成物が得られ、当業者に公知の機械的処理を不必要とするといった利点を有する。電極材料への機械的加工は、複合材料構造の割れ目形成および破壊といった技術水準でよく知られたリスクをもたらすものである。
【0032】
したがって、本発明の対象は同様に<40μmの平均粒度、0.005〜3cm/gのメソ孔容積、20〜99質量%の炭素含量、および1〜80質量%の無機相の割合を有する、ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料である。
【0033】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料は以下の利点を有する。
【0034】
− この複合材料は、炭素マトリックス中における極めて良好なケイ素−粒子−分散を示す。
【0035】
− 本発明による複合材料の炭素マトリックスは、ケイ素−粒子形態に最適化された孔構造を有する。最適化された孔構造は、充電プロセス/放電プロセス(リチウム化/脱リチウム化と同じ意味である)の際に生じる体積変化を、炭素マトリックスの機械的要求なしに理想的に補うことが可能である。
【0036】
− 体積膨張または体積収縮によって、リチウム化または脱リチウム化の際に生じた機械的応力は、炭素マトリックス中で孔中で消失する。
【0037】
− 本発明による複合材料は、ケイ素粒子の炭素マトリックスに対する極めて良好な電気的接触を示し、これによって、アノード材料としての使用の際に、高いサイクル耐性を達成する。これは、高い可逆容量を保証する。
【0038】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料の他の利点は、さらなる処理工程を用いて、あるいはこれを用いることなしに、アノードスラリーを製造するために使用可能であることからなる。このようなアノードスラリーは、溶剤ベースまたは水ベースであってもよく、かつ当業者に公知の方法によって製造される。
【0039】
本発明による複合材料をエネルギー貯蔵系で、たとえばバッテリまたはセル中で使用する場合には、顕著に高い容量が示され、さらにグラファイト電極の場合には、高いサイクル耐性を示すバッテリまたはセルが得られる。
【0040】
サイクルまたは充電プロセス/放電プロセスの際に、イオン−インターカレーション粒子の結晶相および/またはアモルファス相中で大きな体積変化が生じるにもかかわらず、本発明による複合材料の場合には、これら粒子の炭素マトリックス内での包囲が変わらず達成される。それによって、本発明による複合材料の場合には電子的接触が保持される。
【0041】
したがって、技術水準を凌駕するケイ素またはイオン−インターカレーション物質の炭素による包囲は、導入されたケイ素または物質の高い利用効率を実現し、エネルギー貯蔵系の使用可能容量を持続的に維持する。
【0042】
したがって、同様に本発明の対象は、本発明によるナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料の、エネルギー貯蔵系中でのアノード材料としての使用、ならびに請求された方法によって得られたケイ素−炭素−複合材料のエネルギー貯蔵系における使用である。
【0043】
同様に本発明の対象は、本発明によるナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を有するリチウム−イオンセルである。
【0044】
さらに本発明の対象は、本発明による方法によって製造されたケイ素−炭素−複合材料を有するリチウム−イオンセルである。
【0045】
同様に本発明の対象は、本発明によるナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を有するリチウム−イオンバッテリである。
【0046】
さらに本発明の対象は、本発明による方法によって製造されたケイ素−炭素−複合材料を有するリチウム−イオンバッテリである。
【0047】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0048】
本発明による方法の工程(A)において、成分(a1)は、モノヒドロキシベンゾール、ジヒドロキシベンゾール、たとえばレゾルシノール、ヒドロキノン、および/またはカテコールから選択するか、あるいはトリヒドロキシベンゾール、たとえばフロログルシノール、またはこれら化合物の混合物から選択することが有利であってもよい。
【0049】
特に好ましくは、(a1)は、カテコール、レゾルシノール、フロログルシノール、ヒドロキノン、フェノールまたはこれら化合物の混合物から選択することができる。とりわけ好ましくはフェノールを使用することができる。フェノールは、高い炭素含量およびコストのかからない出発材料である点において際だっている。
【0050】
成分(a2)は、ホルムアルデヒド、グリオキサル、グルタルデヒド、フルフラール、またはこれらアルデヒドの混合物から選択することができる。特に好ましくは、ホルムアルデヒドを使用することができる。使用されたアルデヒドを水性溶液として、あるいは溶剤中で使用することはさらに有利であってもよい。溶剤は、水、アルコール、ケトン、またはこれら溶剤の混合物から選択することができる。さらに好ましくは、(a2)はホルムアルデヒド、水および安定化剤、たとえばメタノールからなる溶液であってもよい。
【0051】
本発明による方法の工程(A)において、モノヒドロキシベンゾールおよび/またはポリヒドロキシベンゾールおよびアルデヒド、たとえばレゾールおよびノボラックをベースとする有利な予備縮合物を使用することができる。
【0052】
(a1)または(a2)として、モノヒドロキシベンゾールおよび/またはポリヒドロキシベンゾールであるか、あるいはアルデヒドを使用する場合には、反応混合物中でのモノヒドロキシベンゾールおよび/またはポリヒドロキシベンゾール、ならびにアルデヒドの濃度は10〜60質量%、好ましくは20〜40質量%、特に好ましくは20〜30質量%であってもよい。
【0053】
さらに好ましくは、モノヒドロキシベンゾールおよび/またはポリヒドロキシベンゾールとアルデヒドとのモル比は、これらの成分を使用する場合には1:1〜1:4、特に好ましくは1:2〜1:3である。
【0054】
工程(A)中で使用される触媒は、酸または塩基から選択される。好ましくは、塩基を使用することができる。
【0055】
酸は、本発明による方法の成分(a3)として、それぞれ十分な溶解性を有する有機酸または無機酸から選択することができる。したがって、十分な溶解性は、工程(A)の実施の際に、溶剤およびその量を選択することによってpH値を調整できることと同じ効果である。特に好ましくは、酸は、HCl、ギ酸、酢酸から選択することができる。
【0056】
塩基性成分(a3)は、たとえばアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物であってもよく、これは、溶剤中での十分な溶解性を有するものである。したがって、十分な溶解性は、工程(A)の実施の際に、溶剤およびその量を選択することによってpH値を調整できることと同じ効果である。好ましくは、(a3)は、NaOH、KOH、NaCO、KCO、NHから選択することができる。特に好ましくは、NaOHを使用することができる。
【0057】
(a1)または(a2)として、モノヒドロキシベンゾールおよび/またはポリヒドロキシベンゾール、あるいはアルデヒド、ならびに成分(a3)として、NaOHを使用する場合には、使用されたモノヒドロキシベンゾールおよび/またはポリヒドロキシベンゾールとNaOHとのモル比は、好ましくは0.1〜100、特に好ましくは0.5〜50、とりわけ好ましくは0.7〜20であってもよい。この範囲からのモル比の選択は、均一にゲル化された前ゲル生成物を得て、かつ本発明による方法の実施後に一定の孔構造を得ることが可能であるといった利点を有する。
【0058】
本発明による工程(A)において、さらなる成分(a4)は、孔形成剤を使用することができる。孔形成剤は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、モノエタノールアミンまたはN−メチル−2ピロリジノン、あるいは前記物質から成る混合物を選択することができる。
【0059】
成分(a3)が塩基から選択される場合には、本発明による方法の工程(A)中の組成物のpH値は7.5〜13、好ましくは8.5〜12.0、特に好ましくは9.0〜9.7を選択することが有利であってもよい。
【0060】
工程(A)中で成分(a1)〜(a3)を別個の容器中で、これらを反応器に導入する前に混合することは有利であってよい。混合は、室温Tとは異なる温度で実施することができる。これにより、反応速度に関する付加的な影響を与えることができる。
【0061】
反応温度Tは、好ましくは80〜150℃、特に好ましくは85〜140℃である。工程(A)中で使用された反応器中の圧力は、好ましくは100〜700kPa、特に好ましくは125〜500kPaを選択することができる。
【0062】
工程(A)で使用される圧力は、外部から適用され、閉鎖系における温度上昇によって、あるいは双方の組み合わせにより生成することができる。
【0063】
時間tは工程(A)中で、反応温度Tが達成された時点から測定される。好ましくは、tは1〜36000s、特に好ましくは60〜3600sであってもよい。
【0064】
工程(A)における反応は、撹拌しながら行うことができる。
【0065】
本発明による方法の工程(B)は、好ましくは、工程(A)の実施において反応器中の成分が反応する間に実施される。工程(A)中または工程(A)後に得られた組成物中に、成分(b1)を導入する時点を、光透過率を測定することにより定めることができる。(b1)導入の時点に関する光透過率の値は、475nmの波長で、出発透過率の80%未満、好ましくは0.01%〜50%、特に好ましくは0.1%〜50%であってよい。出発透過率は、成分(a1)〜(a3)を反応器中に導入する場合、その時点で測定される。
【0066】
光透過率の測定は、in−situで、光度計E616(Metrohm社)によって実施することができる。
【0067】
工程(A)中または工程(A)後に得られた組成物中への、成分(b1)の導入時点は、混合物の伝導率を測定することによって定めることができる。
【0068】
さらに好ましくは、工程(B)および(A)の実施を、同じ時点で開始することができる。
【0069】
さらに好ましくは、工程(A)中で得られた前ゲル生成物を、工程(B)の実施前に0.001〜3600s、好ましくは1〜3600sの時間tの間に冷却することができる。特に好ましくは、この前ゲル生成物を、工程(B)の実施前に急冷することができる。
【0070】
冷却された前ゲル生成物の温度は、工程(B)の実施前に25〜95℃、好ましくは30〜80℃、特に好ましくは35〜70℃に選択することができる。
【0071】
本発明の範囲において、用語「サブミクロン」は、1nm〜999nmの長さおよび大きさの範囲であると理解される。たとえば、サブミクロンの粉末とは1nm〜999nmの範囲の粒径を有する粉末と同じ意味である。本発明の範囲内で、無機相により特徴付けられる成分(b1)は、結晶またはアモルファスのサブミクロンのケイ素粉末を含有するか、あるいはこれにより構成される。特に好ましくは、無機相は、サブミクロンの結晶のケイ素粉末であるか、あるいはサブミクロンのアモルファスのケイ素粉末である。
【0072】
本発明による方法の工程(B)において、成分(b1)は1〜80質量%、好ましくは3〜60質量%、特に好ましくは5〜20質量%、およびとりわけ好ましくは10〜40質量%の量で導入され、その際、この量は、工程(E)によって得られた複合材料の質量に対する量である。
【0073】
本発明による方法の工程(B)において導入された成分(b1)は、ケイ素の他、少なくとも他の成分を有する場合には、この成分が、本発明の範囲内において第2の無機相により特徴付けられることが有利であってよい。
【0074】
第2の無機相は、好ましくはサブミクロンの粒子および/またはサブミクロンの複合材料であってもよい。特に好ましくは、これらの無機相は無機粒子を有するか、あるいはそれ自体であってもよく、これはさらに特に好ましくは、結晶、アモルファスおよび/または表面改質化されていてもよい。特に好ましくは、第二の無機相は、表面改質化された粒子を有するか、あるいはそれ自体であってもよい。表面改質化は、本発明による複合材料または本発明によって得られた複合材料の分散性および/または伝導性を改善する。
【0075】
さらに、ケイ素粒子も表面改質化されていてもよい。
【0076】
無機粒子および/またはケイ素粒子は、凝集した一次粒子を有するか、あるいはこれから構成されるものであってもよい。平均一次粒径は5〜200nm、好ましくは10〜150nm、特に好ましくは30〜100nmであってもよい。
【0077】
一次粒子の大きさの測定は、当業者に公知のTEM、SEMまたはREMによって実施することができる。
【0078】
さらに、第2の無機相を金属元素および/または金属イオン、好ましくはリチウム、錫、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、アンチモン、またはこれら金属元素および/または金属イオンの混合物から選択されるか、および/または前記物質とホウ素および/または窒素、リン、酸素および/または非金属物質、たとえばカーボンブラック、カーボンエーロゲル、カーボンナノチューブ、カーボンナノロッド、グラファイト、グラフェン、グラファイト様構造物、あるいは前記物質の混合物との化合物から選択される。
【0079】
好ましくは第2の無機相を、サブミクロンの結晶および/またはアモルファスのケイ素粉末の導入中および/または導入後に、特に好ましくはこれらのケイ素粉末の導入中に、導入することができる。
【0080】
さらに、工程(B)の実施前に成分(b1)を、分散剤中に分散することは有利であってもよい。分散剤としては、たとえば水、アルコールまたはこれらの混合物を使用することができる。
【0081】
成分(b1)は、攪拌装置、ローターステーター系、高圧ホモジナイザまたは超音波を用いて、工程(B)中に前駆体(Vorgelat)中に導入することができる。
【0082】
本発明による方法の工程(C)中で、工程(B)により得られた生成物を、吹き付けにより、あるいは強力に攪拌しながら導入することは有利であってよい。
【0083】
工程(C)中で得られた生成物の微細度合いは、レーザー回折測定技術によって測定することができる。
【0084】
特に好ましくは、本発明による方法の工程(C)は、時間t後に実施することができ、この時間は、成分(b1)の導入開始から工程(C)の実施開始との間である。
【0085】
時間tは好ましくは0.01〜3600s、特に好ましくは0.1〜1800s、とりわけ好ましくは1〜900sを選択することができる。
【0086】
中和剤が酸である場合には、これは溶液、蒸気またはガスとして使用することができる。この酸は、好ましくは濃縮または希釈して使用することができる。
【0087】
工程(C)中で酸を使用する場合には、これは無機酸、たとえば鉱酸であるか、あるいは有機酸であってもよい。鉱酸は、塩酸、硝酸、リン酸または硫酸から選択することができる。有機酸は、酢酸、ギ酸またはシュウ酸から選択することができる。蒸気またはガス状の酸として、特に好ましくはHClを使用することができる。
【0088】
工程(C)中でガス状の酸を使用する場合には、これは好ましくは10〜300℃、さらに好ましくは50〜200℃、特に好ましくは70〜180℃である。
【0089】
使用される酸は、pH値が2.0未満、好ましくは0.5〜1.5、特に好ましくは0.5〜1.0であってよい。
【0090】
工程(C)中で使用された中和剤が塩基である場合には、これを溶液として使用する。工程(C)中で使用された中和剤は、好ましくは濃縮または希釈して使用することができる。
【0091】
工程(C)中で塩基を使用する場合には、たとえば溶剤中における十分な溶解性を有するアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を使用することができる。好ましくは、塩基はNaOH、KOH、NaCO、KCO、NH、またはそれぞれ他の塩基から選択することができる。特に好ましくは、NaOHを使用することができる。
【0092】
使用された塩基は、pH値が9.0を上回り、好ましくは9.5〜14、特に好ましくは9.5〜13を示すものであってもよい。
【0093】
使用された中和剤の体積量は、工程(B)により得られた生成物の少なくとも1倍、好ましくは少なくとも4倍である。
【0094】
中和剤は、好ましくは0〜200℃、特に好ましくは10〜90℃、とりわけ好ましくは15〜50℃の温度を有していてもよい。
【0095】
好ましくは、工程(C)中で中和剤を攪拌することができる。
【0096】
工程(B)により得られた生成物を、工程(C)中に攪拌導入する場合には、吹き付けはノズルを介して実施することができる。好ましくは、このノズルの開口は0.01〜8mm、特に好ましくは0.05〜5mm、とりわけ好ましくは0.1〜3mmの大きさであってもよい。
【0097】
ノズルとして、一成分系または多成分系ノズルを使用することができる。同様にノズルとしては、充円錐ノズル、空円錐ノズル、平面スプレーノズル(Flachstrahlduesen)、及び潤滑スプレーノズル(Glattstrahlduesen)を使用することができる。さらに好ましくは、工程(C)中で回転スプレー装置、振動スプレー装置またはベンチュリノズルを使用することができる。
【0098】
工程(B)で吹き付けにより生成する滴の大きさは、50nm〜3mm、好ましくは100nm〜1mm、特に好ましくは200nm〜0.5mmであってよい。
【0099】
さらに(b1)を、多成分系ノズルを介して直接、工程(A)からの前ゲル生成物と混合し、かつ中和剤を導入することによって、工程(C)を実施することは有利であってもよい。
【0100】
(B)から得られた生成物を、工程(C)中で吹き付けによって導入する場合には、スプレー媒体としてガス状材料、好ましくは空気、窒素、CO、アルゴンおよび/または蒸気状またはガス状の酸、好ましくはHClを選択することができる。
【0101】
工程(C)の実施中における中和剤中への吹き付けは、外部領域によって支持され、これは好ましくは電気的または音響的領域、たとえば超音波であってもよい。
【0102】
工程(C)中における、工程(B)により得られた生成物の中和剤中への導入後に、この工程中で、付加的な剪断エネルギーを導入することができ、これにより微粒子状の生成物が得られる。
【0103】
これに関して剪断エネルギーは、攪拌装置、ローターステーター系、超音波または高圧ホモジナイザにより導入することができる。
【0104】
工程(C)中における中和剤中の滞留時間は0.01〜100.000s、好ましくは1〜10000s、特に好ましくは10〜5000sを選択することができる。
【0105】
工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物を、濃縮、精製および/または乾燥することができる。
【0106】
同様に、工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物は、好ましくは複数回の洗浄によって、蒸留水を用いて、濃縮の間に精製することができ、これにより好ましくはイオン性成分を除去する。
【0107】
工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物の濃縮は、遠心分離、沈澱、濾過または熱処理により実施することができる。
【0108】
同様に、工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物を、好ましくは蒸留水を用いての複数回洗浄することができ、この場合、濾過によって濃縮される。
【0109】
さらに好ましくは、工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物を、電気透析により精製することができる。
【0110】
工程(C)中での乾燥は、対流的に、超臨界的に、凍結乾燥、赤外線照射、マイクロ波照射を用いて、またはこれらの乾燥方法の組み合わせとして行うことができる。
【0111】
工程(C)中におけるガス状の酸を使用する場合には、工程(D)は工程(C)の間に実施することができる。
【0112】
本発明による方法の工程(D)において、対流式乾燥または凍結乾燥を実施することは、有利であってもよい。対流式乾燥の際に、好ましくは、温度は10〜300℃、特に好ましくは50〜200℃を選択することができる。凍結乾燥を実施する場合には、温度は−50℃〜0℃、特に好ましくは−20℃〜0℃を選択することができる。
【0113】
対流式乾燥は、特に好ましくは噴霧乾燥として行うことができる。噴霧乾燥の使用によって、粒子の散発的な乾燥によって、有利には微粒子状の生成物が得られる。
【0114】
工程(D)中で噴霧乾燥を実施する場合には、工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物は、有利にはさらに濃縮なしに乾燥することができる。噴霧乾燥は、好ましくは80〜300℃、特に好ましくは80〜250℃で実施することができる。
【0115】
工程(D)の実施後に得られた生成物は、残留湿分を有していてもよい。
【0116】
これらの残留湿分は、工程(A)からの反応混合物中での溶剤の質量に対して0〜90質量%、好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは65〜75質量%であってもよい。
【0117】
残留湿分の質量割合の測定は、質量測定的に行う。
【0118】
工程(D)により得られた生成物は、工程(E)の前に粉砕することが有利であってもよい。さらなる乾燥工程を続けることができる。有利には、極めて小さい孔を粉砕することが有利であり、これによりその後に完全に乾燥することができる。
【0119】
本発明による方法の工程(E)中で、炭化を600〜900℃、特に好ましくは650〜800℃で実施することが有利であってもよい。さらに好ましくは、炭化を酸素の排除下で、好ましくは保護ガス下で、特に好ましくは窒素またはアルゴン下で、さらに好ましくは真空中で実施することができる。炭化は赤外線、マイクロ波の照射によって、プラズマ下で、あるいは電気的または熱的加熱によって実施することができる。
【0120】
工程(E)により得られたケイ素−炭素−複合材料は造粒することができ、本発明による複合材料が粒子である場合には、その平均粒度は10μmよりも小さい。これらの後処理の利点は、複合材料のさらなる取り扱いの際に障害となるダストの発生を回避することにある。
【0121】
さらに、本発明によるケイ素−炭素−複合材料であるか、あるいは本発明によって得られたケイ素−炭素−複合材料は、それぞれ当業者に公知の方法で後処理することができる。
【0122】
本発明による方法によって、ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料が得られる。
【0123】
本発明による複合材料の粒子の範囲内の1個またはそれ以上の無機相は、好ましくは、粒子内部であるか、および/または粒子の表面上で分散する。
【0124】
したがって、本発明の対象は同様に、ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料であり、これは<40μmの平均粒度、0.005〜3cm/gのメソ孔容積、20〜99質量%の炭素含量、および1〜80質量%の無機相の割合を示す。
【0125】
好ましくは、本発明による複合材料は1〜25μm、特に好ましくは5〜20μmの平均粒度を示すものであってもよい。
【0126】
この際に、平均粒度の測定は、ISO 13320-1(1999)に従ってレーザー回折によって行う。測定された回折スペクトルの評価のために、フラウンフォーファー理論を採用する。使用されるレーザー回折装置は、HORIBA LA-920である。
【0127】
測定のために、ケイ素−炭素−複合材料をまず、0.1MのNaOHでpH値を9〜10に調整した蒸留水中に、マグネチックスターラを用いて、室温で導入する。この際に、固体濃度は、1質量%である。分散は、水冷した30mlの蓋付きガラス容器中で、超音波装置(Ultraschallfingers(Bandelin社、70W、80パルス))を用いて4.5分間行う。さらなる工程で、分散された懸濁液を、測定装置内の湿ったセル内に存在する分散液体(0.1MのNaOHでpHを9〜10に調整した蒸留水)に、レーザー濃淡が5〜10%に達するまで滴加する。そして測定装置内に存在する懸濁液の測定セルへの返送は、測定装置内に組み込まれた撹拌機を用いて行う。
【0128】
回折スペクトルの評価は、フラウンフォーファー理論により実施する。粒度分布の表示、相応する体積分布からの換算による、数分散Q0として行う。ここで平均粒度とは、ISO 13320-1に従ってQ0分布のx50と呼称される。
【0129】
さらに好ましくは、本発明による複合材料は、40〜97質量%、特に好ましくは50〜95質量%、およびとりわけ好ましくは60〜90質量%の炭素含量を有するものであってもよい。
【0130】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料中のケイ素またはケイ素および他の無機相の量は、複合材料の質量に対して好ましくは3〜60質量%、特に好ましくは5〜50質量%、とりわけ好ましくは10〜40質量%である。
【0131】
さらなる無機相は、好ましくはサブミクロンの粉末および/またはサブミクロンの複合材料であってもよい。
【0132】
本発明による複合材料は、好ましくは0.01〜3cm/g、さらに好ましくは0.05〜3cm/g、特に好ましくは0.1〜2cm/gのメソ孔容積を示すものであってもよい。
【0133】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料が、1.8〜50nm、好ましくは5〜45nm、特に好ましくは10〜35nmの平均メソ孔直径を有することは、有利であってもよい。
【0134】
メソ孔容積及び孔半径分布の測定は、DIN 66134 (1998)に従って、取得された等温線の脱着データからBJH法により、0.99〜0.34の相対圧力範囲p/p0で行う。
【0135】
さらに、本発明によるケイ素−炭素−複合材料は、0.01−1.0cm/g、好ましくは0.05−0.5cm/g、特に好ましくは0.1−0.35cm/gを有していてもよい。
【0136】
メソ孔容積の測定は、DIN 66135-1、66135-2、66135-3 (2001)に従ってt−プロット法で行う。この際に、t−プロットの評価は、de Boer式に従って行う。
【0137】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料が、平均フラクタル次元が1.0〜2.7、好適には1.1〜2.5、特に好ましくは1.2〜2.3を示すことは有利であってよい。
【0138】
カーボンエアロゲルの平均フラクタル次元は、Rogakら(Aerosol Science and Technology, Vol. 18, 1993, p. 25−47)に従って、透過型電子顕微鏡撮像の画像分析を用いて測定する。
【0139】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料は以下の利点を有する。
【0140】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料は、20〜1300m/g、好ましくは30〜1000m/g、特に好ましくは50〜800m/gのSTSA値を有していてもよい。
【0141】
STSA測定は、DIN ISO 9277(1995)に従って行う。
【0142】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料は、20〜1500m/g、好ましくは100〜1200m/g、特に好ましくは400〜900m/gのBET値を有していてもよい。BET表面の測定は、DIN ISO 9277 (1995)に従って、QUANTACHROME社の吸着測定装置NOVA e2000で行う。吸着ガスとしては、窒素を使用する。この際、測定前に試料を350℃の温度、及び<13.3Paの圧力で、12時間を上回って加熱する。BET表面を測定するための吸着等温線の評価は、0.01〜0.1の相対圧力範囲p/p0で行う。
【0143】
本発明によるケイ素−炭素−複合材料は、揮発性成分の含量が<15.0質量%、好ましくは<5.0質量%、特に好ましくは<1.5質量%、とりわけ好ましくは<0.5質量%であってもよい。
【0144】
少なくとも950℃の温度で液体の成分の測定は、DIN 53552(1977)により実施する。このために、試料を、まず105℃で、乾燥容器で恒量まで乾燥させ、そしてデシケータ内で冷却する。引き続いてこの試料を、DIN 53552とは異なるが、石英るつぼ(13ml)内に満たし、そして中央に約2mmの孔を有する蓋で覆う。最後に、マッフル炉内で7分に亘って950℃に加熱する。冷却は再度、デシケータ内で行う。揮発性含分は、質量損失から求められる。
【0145】
本発明による複合材料中の結晶またはアモルファスのサブミクロンのケイ素粒子は、表面処理されてもよく、かつ、この粒子の周囲に湿式製造による中間段階を介して製造された炭素成形体中に、均一に分散した形で存在することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を製造するための方法において、
(A)少なくとも以下の成分
(a1)モノヒドロキシ芳香族化合物および/またはポリヒドロキシ芳香族化合物、および
(a2)アルデヒド、および
(a3)触媒、
を反応器中に導入し、その際、反応温度Tが75〜200℃であり、かつ、圧力が80〜2400kPaであり、かつ、0.001〜1.000.000sの時間tの間に、これらの成分を触媒の存在下で互いに反応させて組成物が得られ、その際、前ゲル生成物が得られ、かつ、
(B)少なくとも以下の成分
(b1)結晶またはアモルファスの形のサブミクロンのケイ素粉末、
を、工程(A)中または工程(A)後に得られた生成物中に導入し、かつ引き続いて、
(C)工程(B)後に得られた生成物を、(a3)塩基性触媒の場合には酸から選択された中和剤中に導入するか、あるいは(a3)酸性触媒の場合にはアルカリから選択された中和剤中に導入し、その際、微粒子状の生成物が得られ、かつ、
(D)工程(C)中または工程(C)後に得られた生成物を乾燥させ、かつ、引き続いて
(E)工程(D)後に得られた生成物を500〜1200℃の温度で炭化する、
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
工程(A)中で、成分(a1)をモノヒドロキシベンゾール、ジヒドロキシベンゾール、トリヒドロキシベンゾールまたはこれら化合物の混合物から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(B)中で、成分(b1)を、工程(E)後に得られる複合材料の質量に対して1〜80質量%の量で導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
無機相(b1)の粒子が表面変性されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(C)中に、工程(B)後に得られた生成物を、吹き付けによってか、あるいは強力な攪拌下で導入する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(A)中で、さらなる成分である
(a4)孔成形剤、この場合、これはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、モノエタノールアミン、N−メチル−2−ピロリジノン、またはこれらの混合物から選択されるもの、を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(E)後に得られたナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を造粒し、この複合材料が粒子である場合には、その平均粒度は10μm未満である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法によって得られた、ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料。
【請求項9】
平均粒度<40μm、
メソ孔容積0.005〜3cm/g、
炭素含量20〜99質量%、
無機相の割合1〜80質量%、
を有する、ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料。
【請求項10】
エネルギー貯蔵系におけるアノード材料としての、請求項8または9に記載のナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料の使用。
【請求項11】
ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を有する、リチウムイオンセル。
【請求項12】
ナノ構造化ケイ素−炭素−複合材料を有する、リチウムイオンバッテリ。

【公表番号】特表2012−533498(P2012−533498A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519944(P2012−519944)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056780
【国際公開番号】WO2011/006698
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】