説明

バラスト水を用いた防汚システム及びその制御方法

【課題】本発明は、防汚システムを構築する費用を低減できる、バラスト水を用いた防汚システム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】本発明による防汚システムは、船舶に備えられ、バラスト水を貯蔵するバラストタンクと、上記バラストタンクに流入されるバラスト水に含まれている海洋生物を殺菌するための殺菌物質を発生するバラスト水処理装置と、上記バラストタンクから排出されるバラスト水を上記船舶の船体表面に噴射する噴射装置と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋生物が船舶の船体に付着することを防止する、バラスト水を用いた防汚システム及びその制御方法に関し、より詳細には、バラストタンクに貯蔵された海水(以下‘バラスト水’という)を用いる防汚システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の航海時に船舶の船体には、フジツボ、ほや及び貝類など様々な海洋生物が付着する。上記海洋生物が船体に付着すると、船舶の重量が増加して船舶に積むことができる貨物の量が減少する。
また、船体に付着した海洋生物は、船舶の航海時に抵抗として作用して船舶の速度を低減させ、船舶の燃料消費を増加させるだけでなく、操縦を困難にさせて船舶の性能及び効率を低下させる。
このように、海洋生物が船体表面に付着することを防止するために防汚システム(anti−fouling system)が登場した。
【0003】
大韓民国公開特許第10−2008−0087091号には、船内に次亜塩素酸ナトリウム発生装置を設置し、上記次亜塩素酸ナトリウム発生装置で生成された次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を海洋に排出することにより、船体表面に海洋生物が付着することを防止する防汚システムの一例が開示されている。
上記防汚システムは、船内に次亜塩素酸ナトリウム発生装置を別途に設置して制御することになっている。また次亜塩素酸ナトリウム発生装置で生成された次亜塩素酸ナトリウムを貯蔵するための別途の貯蔵容器を備えなければならない。すなわち、上記防汚システムを構成するためには、次亜塩素酸ナトリウム発生装置と貯蔵容器のような別途の装置とを備えなければならないため、防汚システムを構成するのに多くの費用が必要となる。
また、上記防汚システムは、船体外部に複数の開口を有する配管部材を配置し、上記開口を介して次亜塩素酸ナトリウムのような防汚組成物が排出されるようになっている。しかし、船体外部に配置された配管部材は船舶の航海時に抵抗として作用することになり、外力が加えられる場合には、変形や損傷が発生して各開口ごとに一定量の防汚組成物を排出し難くなるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、防汚システムを構成することの費用を節減できる、バラスト水を用いた防汚システム及びその制御方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、船舶の航海時に防汚システムが抵抗として作用しないようにする、バラスト水を用いた防汚システム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるバラスト水を用いた防汚システムは、船舶に備えられ、バラスト水(ballast water)を貯蔵するバラストタンクと、上記バラストタンクに流入されたバラスト水に含まれている海洋生物を殺菌するために殺菌物質を発生するバラスト水処理装置と、上記バラストタンクから排出されるバラスト水を上記船舶の船体表面に噴射する噴射装置と、を含む。
【0006】
また、上記バラストタンクから排出されるバラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を低下させる中和装置と、上記バラストタンクに流入されたバラスト水に含まれている海洋生物を濾過する濾過装置と、をさらに含むことができる。
また、上記バラスト水処理装置で発生された殺菌物質を上記濾過装置へ供給するための供給管をさらに含むことができる。
また、上記船舶で発生された汚水を膜濾過して浄水する膜濾過装置と、上記バラスト水処理装置で発生された殺菌物質を上記膜濾過装置へ供給するための供給管とをさらに含むことができる。
【0007】
また、上記噴射装置は、上記バラストタンクに連結され、上記船舶の前後方向及び左右方向に延びる延長管と、上記延長管から分岐する複数の分岐管と、上記バラストタンクから排出されるバラスト水を上記船舶の表面に等しく噴射させるために、上記各分岐管上に設けられた複数のノズルとを備えることができる。
また、上記延長管上には、バラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を測定する濃度センサー、上記延長管を流れるバラスト水の流量を測定する流量計、および上記延長管を流れるバラスト水の圧力を測定する圧力計のうちの少なくとも一つが設けられてもよい。
【0008】
また、上記各ノズルの端部が上記船舶の表面と同一面上に位置するかあるいは船舶の表面よりも内側に位置するように、上記船舶の表面に上記ノズルを収容する収容溝が形成されることが好ましい。
また、上記ノズルは上記収容溝に固定され、上記収容溝と上記ノズルとの間にはバラスト水が噴射される噴射空間が形成されてもよい。
また、上記分岐管は延長可能であり、上記ノズルが上記収容溝に出入りすることも可能である。
そして、上記分岐管上には上記複数のノズルから噴射されるバラスト水の圧力を調整する圧力調整手段が備えられることが好ましい。
【0009】
本発明による防汚システムの制御方法は、バラストタンクに流入されたバラスト水に上記殺菌物質を投入する段階と、バラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を低下させる段階と、上記低濃度の殺菌物質が含まれたバラスト水を船体の表面に噴射する段階と、を含む。
また、上記発生された殺菌物質を、上記バラストタンクに流入されたバラスト水に含まれている海洋生物を濾過する濾過装置へ供給する段階をさらに含む。
また、上記発生された殺菌物質を、上記船舶で発生された汚水を膜濾過して浄水する膜濾過装置へ供給する段階をさらに含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるバラスト水を用いた防汚システムによれば、 バラスト水処理装置で発生された殺菌物質を防汚システムに用いることができるので、防汚システムを構築する費用を低減できる。また、バラスト水を用いた防汚システムに備えられたノズルを船体の外部に露出しないようにすることができるので、 バラスト水を用いた防汚システムが船舶の航海時に抵抗として作用することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係るバラスト水を用いる防汚システムを備えた船舶に設けられる各種装置を示す図面である。
【図2】本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムを示す平面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムのノズルを示す図面である。
【図4】本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムのノズルの他の例を示す図面である。
【図5】本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムのノズルの他の例を示す図面である。
【図6】本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施例を添付される図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るバラスト水を用いる防汚システムを備えた船舶に設けられる各種装置を示し、 図2は、本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムを示すものである。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施例に係るバラスト水を用いる防汚システムを備えた船舶は、船舶の安全性及び均衡確保のために、船舶に設けられたバラストタンク100を有する。
船舶に積まれる貨物量に合わせて船舶の均衡を維持するために、上記バラストタンク100に一定量の海水が流入される。上記バラストタンク100の内部に流入される海水の量は船舶の大きさに基づいて設定されるが、船舶が大型の場合は1万トン以上の海水が流入されることもある。
【0014】
上記バラストタンク100に海水が流入される過程で、海洋生物が海水とともにバラストタンク100の内部に流入されることを防止するために、バラストタンク100の内部に流入される海水に含まれている海洋生物を濾過する濾過装置110が備えられる。
このように、濾過装置110を用いてバラストタンク100の内部に流入される海洋生物を濾過する理由は、バラストタンク100の内部に貯蔵されたバラスト水を介して海洋生物が他地域に移動されることを防止するためである。
【0015】
上記のバラストタンク100の内部に貯蔵されるバラスト水とともに海洋生物が他地域に移動されて海洋に排出されると、その地域における代表生物種の変動、赤潮発生などの深刻な生態系撹乱現象を生じさせることもあるので、濾過装置110を設けて海洋生物がバラストタンク100に流入されることを防止する。
上記濾過装置110は、所定大きさのメッシュ(mesh)を有するフィルターを用いてバラストタンク100の内部に流入される海洋生物を濾過する。しかし、上記フィルターのメッシュの大きさをプランクトンのような微小海洋生物よりも小さくすることは困難であるため、上記濾過装置110のみを用いて海洋生物がバラストタンク100の内部に流入されることを防止することには限界がある。
よって、上記濾過装置110を用いて海洋生物を濾過する方式以外にバラストタンク100の内部に存在する海洋生物を死滅させるためのバラスト水処理装置120をさらに備える。
【0016】
上記バラスト水処理装置120によりバラストタンク100の内部に貯蔵されたバラスト水に含まれている海洋生物を処理する方法として、 オゾンを用いるオゾン処理方法、過酸化水素(H)のような化学薬品をバラストタンク100に投入する化学薬品方法、及び海水が電気分解される際に発生される次亜塩素酸ナトリウムを用いる電解処理方法などを用いることができる。本実施例では、上記バラスト水処理装置120が電解処理方法を用いて海洋生物を処理することを例に挙げて説明する。
【0017】
次亜塩素酸ナトリウムを用いる電解処理方法は、電気分解により海水中に含まれている塩化ナトリウム(NaCl)を次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)に変換させて海洋生物を死滅させる方法である。次亜塩素酸ナトリウムは殺菌効果が高くて広範囲な微生物に対して殺菌効果を有する。
上記バラスト水処理装置120は、海水を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを発生させるために電気分解ユニット(図示せず)を備える。
上記バラスト水処理装置120は、バラストタンク100の内部に海水が流入される流入管路101上に設けられ、バラストタンク100に流入されるバラスト水を電気分解することにより、次亜塩素酸ナトリウムを発生することができる。または海水の一部が供給されて次亜塩素酸ナトリウムを発生させた後、発生された次亜塩素酸ナトリウムを流入管路101へ供給することもできる。
【0018】
上記バラスト水処理装置120で発生された次亜塩素酸ナトリウムのような殺菌物質を濾過装置110へ供給することにより、濾過装置110を清潔に維持することができる。濾過装置110は、海水に含まれている各種海洋生物を濾過するが、濾過装置110により濾過された海洋生物が濾過装置110に付着された状態のまま繁殖することもある。よって、バラスト水処理装置120で発生された殺菌物質を濾過装置110へ供給することにより、濾過装置110内での海洋生物の繁殖を防止できる。
バラスト水処理装置120で発生された殺菌物質を濾過装置110へ供給するために、バラスト水処理装置120と濾過装置110とを連結する供給管121が備えられる。そして上記供給管121を介して供給された殺菌物質は、濾過装置110に入って海洋生物を死滅させ、その後、濾過装置110の排出管111を介して排出される。
【0019】
本発明の一実施例に係るバラスト水を用いる防汚システムを備えた船舶は、船舶で発生した糞尿を始めとする各種生活汚水を生物化学的方式で処理する汚水処理装置130を備えることができる。
上記汚水処理装置130により処理された水は、膜濾過装置131を経ながら浄水された後に、食器などを洗浄する際に使用される洗浄用水、トイレを使用する際に使用されるトイレ用水、掃除する際に使用される掃除用水などとして用いられる。
上記膜濾過装置131は、汚水処理装置130により生物化学的方式で1次処理された水を膜濾過により2次処理することにより、浄水される。このとき、バラスト水処理装置120で発生された次亜塩素酸ナトリウムのような殺菌物質を膜濾過装置131へ供給することにより、膜濾過装置131に備えられた膜の表面を清潔に維持することができる。また、殺菌物質で膜濾過装置131内の浄水された水を殺菌することにより、細菌や微生物の繁殖を抑制することができる。
【0020】
バラスト水処理装置120で発生された殺菌物質を膜濾過装置131へ供給するために、バラスト水処理装置120と膜濾過装置131とを連結する供給管122が備えられる。
一方、上記バラスト水処理装置120で発生された次亜塩素酸ナトリウムのような殺菌物質は海水とともにバラストタンク100の内部に流入されて、バラストタンク100の内部に存在する海洋生物を死滅させる。上記バラストタンク100の内部に存在する海洋生物を死滅させるために、上記バラストタンク100の内部の次亜塩素酸ナトリウムの濃度を5乃至10ppm内外に維持することが好ましい。
【0021】
上記バラストタンク100の内部に貯蔵された殺菌物質の混入されているバラスト水を海洋にそのまま排出すると、バラスト水が排出された海域の海洋生物が死滅されることもある。よって、バラストタンク100の内部に貯蔵されていたバラスト水を海洋に排出する前に、バラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を低下させるための中和装置140が備えられる。
上記中和装置140は、バラストタンク100から排出されるバラスト水に含まれた次亜塩素酸ナトリウムのような殺菌物質の濃度を0.5ppm以下に維持することが好ましい。
そして、フジツボ、ほや及び貝類などの海洋生物が船体に付着することを防止するための防汚システムを構築するために、上記バラストタンク100から排出されるバラスト水を使用する。
【0022】
このように本発明の一実施例は、バラストタンク100から排出されるバラスト水を防汚システムに使用するために、上記バラストタンク100から排出されるバラスト水を船体の表面に噴射する噴射装置150を備える。
以下では、図2を参照して本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムのバラストタンク100及び噴射装置150についてより詳細に説明する。
【0023】
海水を取水してバラスト水をバラストタンク100に満たすときには、バラストポンプ105を用いて取水部102から海水を吸いこんで流入管路101を介して各バラストタンク100に送る。 このとき、船舶に積まれる貨物量に合わせて船舶の均衡を取るために、各バラストタンク100の内部には相互異なる量のバラスト水が満たされることが可能である。
上記流入管路101上には上述した濾過装置110及びバラスト水処理装置120 などが設けられる。そして上記濾過装置110及びバラスト水処理装置120が設けられた流入管路101を迂回するバイパス管路103が備えられる。上述した中和装置140は、上記バイパス管路103を流れるバラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を低下させることができる。
上記流入管路101とバイパス管路103とが互いに交差する部分には流路転換バルブ104が設けられる。上記流路転換バルブ104は、バラスト水がバラストタンク100に流入される場合は、濾過装置110及びバラスト水処理装置120の設けられた流入管路101を介して流入されるようにし、バラスト水がバラストタンク100から排出される場合は、バイパス管路103を介して排出されるように流路を変更する。
【0024】
よって、海水がバラストタンク100へ流入されるときには、濾過装置110及びバラスト水処理装置120により海水に含まれていた海洋生物が濾過されると同時に次亜塩素酸ナトリウムのような殺菌物質がバラストタンク100の内部に流入されることになり、バラストタンク100からバラスト水が排出されるときには、中和装置140により殺菌物質の濃度が低くなる。
そして、上記流入管路101から各バラストタンク100に分岐する分岐管106には、各バラストタンク100に流入されるバラスト水の量を調整できる開閉バルブ107が設けられる。
【0025】
バラストタンク100から排出されるバラスト水を防汚システムで使用するための噴射装置150は、上記バラストタンク100に連結され、上記船舶の前後方向及び左右方向にそれぞれ延びる延長管151と、上記バラスト水を上記船舶の表面に等しく噴射するために上記延長管151に連結された複数のノズル152と、を含む。
【0026】
図2は、船体の側部に設けられたノズル152のみ示されているが、上記複数のノズル152は船体の喫水線(船舶が水に浮かんでいるとき、水に浸る部分)下の表面、 具体的に、船体の下部と側部とにバラスト水を噴射するように設けられる。
バラストポンプ105の吸入力により吸入されるバラスト水の移動経路を転換するために、流入管101には第1流路転換バルブ108が設けられ、延長管151には第2流路転換バルブ109が設けられる。
【0027】
バラストタンク100の内部に海水を流入させる場合は、第1流路転換バルブ108を開放し、第2流路転換バルブ109を閉鎖した後、バラスト水がバラストタンク100に流入される方向にバラストポンプ105を回転させる。そして、バラストタンク100に貯蔵されていたバラスト水を噴射装置150へ供給する場合は、第1流路転換バルブ108を閉鎖し、第2流路転換バルブ109を開放した後、バラスト水がバラストタンク100から排出される方向にバラストポンプ105を回転させる。
【0028】
上記延長管151上にはバラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を測定するための濃度センサー161と、上記延長管151を流れるバラスト水の流量を測定する流量計162と、上記延長管151を流れるバラスト水の圧力を測定する圧力計163が設けられる。
上記延長管151上に濃度センサー161を設けて、上記延長管151を流れるバラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を測定することにより、バラスト水に含まれた殺菌物質の濃度が0.5ppm以下の場合にのみ上記延長管151を介してバラスト水が排出されるようにすることができる。
【0029】
バラストタンク100から排出されるバラスト水を複数のノズル152を介して噴射するとき、複数のノズル152のうちの一部ノズルを介してのみバラスト水が噴射されるようにすることができる。例えば、先ず船舶の船首から奇数番目のバラストタンク100に対応する位置に設けられたノズルを介してバラスト水を先に噴射し、その後、船舶の船首から偶数番目のバラストタンク100に対応する位置に設けられたノズルを介してバラスト水を噴射することができる。
【0030】
このように複数のノズル152のうち一部ノズルを介してバラスト水を噴射する場合、過度な量のバラスト水がノズル152側へ供給されると、ノズル152に過負荷がかかることもある。上記流量計162及び圧力計163は、延長管151を流れるバラスト水の流量と圧力をチェックすることにより、あまりにも多い量のバラスト水がノズル152側へ供給されることを防止できる。
【0031】
船舶に設けられたすべてのノズル152を介してバラスト水を噴射する場合、バラストポンプ105から近い位置に設けられたノズル152には強い水圧がかかる一方、バラストポンプ105から遠い位置に設けられたノズル152には弱い水圧がかかることになる。
この場合、各ノズル152を介して噴射されるバラスト水の圧力が一定になるように、延長管151から分岐する分岐管153上にはノズル152から噴射されるバラスト水の圧力を調整する圧力調整手段155が設けられる。上記圧力調整手段155としては、バラスト水の圧力を高めるための昇圧装置またはバラスト水の圧力を低下させるための減圧バルブなどが使用可能である。
【0032】
図3は、本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムのノズル152が船体の表面に設けられた状態を示している。
図3に示すように、各ノズル152を船体に設けるとき、各ノズル152の端部は船体の表面と同一面上に位置するかあるいは船体の表面よりも内側に位置することが好ましい。このように各ノズル152の端部が船体の表面と同一面上あるいは船体の表面よりも内側に位置するように、船体の表面にはノズル152を収容する収容溝170が形成される。
【0033】
上記収容溝170は略台形状を有し、上記ノズル152の両端には切開部152aが形成される。そして、上記ノズル152は収容溝170に固定される。上記収容溝170と上記ノズル152との間には噴射空間171が形成され、上記噴射空間171を介してバラスト水を噴射することができる。
このように、ノズル152を収容溝170に設けてノズル152が船体の表面から外側に突出しないようにすることにより、船舶の航海時にノズル152が抵抗として作用しないようにできる。
【0034】
図4及び図5は、本発明の一実施例に係るバラスト水を用いる防汚システムに適用可能なノズルの他の例を示すものである。
ここで、図3に基づいて説明した内容と異なる点は、ノズル152が、船体の表面に形成された収容溝170に出入りできるように設置されるということである。このために、ノズル152が収容溝170に出入りできるように分岐管153を移動させる装置(図示せず)が備えられてもよい。そして、 分岐管153は延長可能に形成される。
【0035】
船舶の航海時には、図4のように上記ノズル152が収容溝170の内部に収容されるようにし、バラストタンク100からバラスト水が排出されるときには、図5のように、上記ノズル152が収容溝170から突出するようにできる。よって、船舶の航海時にはノズル152が抵抗として作用することを防止でき、バラスト水を噴射するときにはバラスト水が効果的に船体の表面に噴射されるようにすることができる。
【0036】
図6は、本発明の一実施例に係るバラスト水を用いた防汚システムの制御方法を示すフローチャートである。
先ず、バラスト水処理装置120で次亜塩素酸ナトリウムのような殺菌物質を発生させる(S110)。上記次亜塩素酸ナトリウムは、海水を電気分解するなどのような方法により発生させることができる。
【0037】
バラスト水処理装置120で発生された殺菌物質をバラストタンク100の内部に投入してバラストタンク100の内部の海洋生物を死滅させる(S120)。
そして、バラスト水処理装置120で発生された殺菌物質を濾過装置110へ供給して、濾過装置110で濾過された海洋生物を死滅させたり(S130)、バラスト処理装置120で発生された殺菌物質を膜濾過装置131へ供給して(S140)膜濾過装置131に備えられた膜の表面を清潔に維持させ、膜濾過装置131内の浄水された水を殺菌して細菌や微生物の繁殖を抑制する。
【0038】
バラストタンク100内部に貯蔵されていたバラスト水は海洋に排出されるので、 バラスト水が海洋に排出される前にバラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を低下させる(S150)。
そして、低濃度の殺菌物質が含まれたバラスト水を船体の表面へ噴射すること(S160)により、船体の表面にフジツボ、ほや及び貝類などの海洋生物が付着することを防止する。
【0039】
以上で説明したように、バラスト水処理装置120で発生された殺菌物質を防汚システムに用いることができるので、防汚システムを構築する費用を低減できる。また、防汚システムを構成するノズル152が船体の外部に露出しないようにすることで防汚システムが船舶の航海時に抵抗として作用することを防止できる。
【0040】
以上で、本発明の実施例に係るバラスト水を用いた防汚システム及びその制御方法について説明したが、本発明の思想は本明細書に提示された実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などにより他の実施例を容易に提案することができ、これも本発明の思想範囲内に属するといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に備えられ、バラスト水を貯蔵するバラストタンクと、
前記バラストタンクに流入されたバラスト水に含まれている海洋生物を殺菌する殺菌物質を発生させるバラスト水処理装置と、
前記バラストタンクから排出されるバラスト水を前記船舶の船体表面に噴射する噴射装置と、
を含むバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項2】
前記バラストタンクから排出されるバラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を低下させる中和装置をさらに含む請求項1に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項3】
前記バラストタンクに流入されたバラスト水に含まれている海洋生物を濾過する濾過装置をさらに含む請求項1または請求項2に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項4】
前記バラスト水処理装置で発生された殺菌物質を前記濾過装置へ供給する供給管をさらに含む請求項3に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項5】
前記船舶で発生された汚水を膜濾過して浄水する膜濾過装置と、
前記バラスト水処理装置で発生された殺菌物質を前記膜濾過装置へ供給する供給管と、をさらに含む請求項1に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項6】
前記噴射装置は、前記バラストタンクに連結され、前記船舶の前後方向及び左右方向に延びる延長管と、
前記延長管から分岐する複数の分岐管と、
前記バラストタンクから排出されるバラスト水を前記船舶の表面に等しく噴射するために前記各分岐管上に備えられる複数のノズルと、を備える請求項1に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項7】
前記延長管上には、バラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を測定する濃度センサー、前記延長管を流れるバラスト水の流量を測定する流量計および前記延長管を流れるバラスト水の圧力を測定する圧力計のうちの少なくとも一つを設けることを特徴とする請求項6に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項8】
前記各ノズルの端部が、前記船舶の表面と同一面上に位置するかあるいは船舶の表面よりも内側に位置するように、前記船舶の表面には前記ノズルを収容する収容溝が形成されることを特徴とする請求項6に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項9】
前記ノズルは、前記収容溝に固定されており、前記収容溝と前記ノズルとの間にはバラスト水が噴射される噴射空間が形成されることを特徴とする請求項8に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項10】
前記分岐管は、延長可能であり、前記ノズルが前記収容溝に出入りできることを特徴とする請求項8に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項11】
前記分岐管上には、前記複数のノズルから噴射されるバラスト水の圧力を調整する圧力調整手段が備えられることを特徴とする請求項6に記載のバラスト水を用いた防汚システム。
【請求項12】
殺菌物質を発生させる段階と、
バラストタンクに流入されるバラスト水に前記殺菌物質を投入する段階と、
バラスト水に含まれた殺菌物質の濃度を低下させる段階と、
前記低濃度の殺菌物質が含まれたバラスト水を船体の表面に噴射する段階と、
を含むバラスト水を用いた防汚システムの制御方法。
【請求項13】
前記発生された殺菌物質を、前記バラストタンクに流入されるバラスト水に含まれている海洋生物を濾過する濾過装置へ供給する段階をさらに含む請求項12に記載のバラスト水を用いた防汚システムの制御方法。
【請求項14】
前記発生された殺菌物質を、前記船舶で発生された汚水を膜濾過して浄水する膜濾過装置へ供給する段階をさらに含む請求項12に記載のバラスト水を用いた防汚システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−510930(P2012−510930A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540615(P2011−540615)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007553
【国際公開番号】WO2010/074454
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(507375487)サムスン ヘヴィ インダストリーズ カンパニー リミテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Heavy Industries Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】1321−15 Seocho−Dong, Seocho−Ku, Seoul, Korea
【Fターム(参考)】