説明

バランサーの緊急停止機構

【課題】 バランサーのワイアが切れたり、ゼンマイ等が破損しても障子が落下しないようにしたバランサーの緊急停止機構を提供する。
【解決手段】 ゼンマイケース3と基板9との間に間隙12を設け、この間隙内における基板側に、支軸8と同軸のリング状で、内側に向って低くなる傾斜面を有する環堤部13を形成し、一方、ゼンマイケースの環堤部に対向する側に、環堤部に近接して制御板を一体的に設け、この制御板の外周部に半径方向に延在する少なくとも1本の遊動溝を形成すると共に、この遊動溝にクラッチボール16を移動可能に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上げ下げ窓用バランサーの緊急停止機構(以下単に緊急停止機構という)に係り、特に、2個で1枚の障子を指示する形式のバランサーにおいて、1個のバランサーのワイアが切れたり、ゼンマイ等が破損しても障子が落下しないようにした緊急停止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
バランサー窓は、建物の壁に嵌め込まれた窓枠(図示せず)に、見込み方向に連設された内側及び外側窓を夫々上下方向に移動可能に案内してなる。
【0003】
そして、バランサー5は、図1乃至図3に示すように、ゼンマイばね2を内蔵したゼンマイケース3と、このゼンマイケース3に一体に連結された全体の形状が例えば円錐台状のワイアドラム4とを有してなる。
【0004】
上記ワイアドラム4には、図示しない螺旋溝が形成されていて、この螺旋溝のゼンマイケース3に近い大径部から吊りワイア5が巻き掛けられ、小径部から巻き解れて、アイドルプーリー11を経て垂下し、その下端が窓2、3の側端縁に結合されるている(図3参照)。
【0005】
上記螺旋溝の立体形状は、例えば渦巻き蚊取り厚さ方向に引き伸ばしたような形状であり、吊りワイア5をワイアドラム4から巻き解していくと、ゼンマイばね2が巻き締められてゼンマイケース3の出力トルクが線形的に増加する一方、ワイアドラムの中心と吊りワイア5との距離が連続的かつ線形的に減少していく。
【0006】
そのため、各部材の寸法及び形状を適切に設定すると、ゼンマイケース3の出力トルクが増大しても吊りワイア7の張力を一定にすることができ、したがって障子を夫々独立に、かつ任意の上下位置に停止させることができる。
【0007】
なお、上記したバランサー窓の構成は例えば下記特許文献1に記載されているように従来周知であるから、更に詳細な説明は省略する。
【特許文献1】特開2005−299189
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかして、通常、バランサー窓においては1枚の障子につき2個のバランサーが装着され、障子が傾かないように、つまり障子が円滑に上下できるように構成されている。
【0009】
そのため、一方のバランサーの吊りワイアが切れたり、ゼンマイばねが折れたり、或いは他の金具が破損したりして作動しなくなると、他方のバランサーに障子の負荷が余分にかかり、そのため障子を支持しきれなくて障子が落下する、等未だ改良の余地がある。
【0010】
そこで、この発明は、2個で1枚の障子を支持する形式のバランサーにおいて、1個のバランサーのワイアが切れたり、ゼンマイ等が破損しても障子が落下しないようにした緊急停止機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、この発明は、基板に垂直な相対関係位置で固定された支軸と、この支軸に回動可能に支承されたゼンマイケースと、このゼンマイケースと支軸との間に弾装されたゼンマイばねと、上記ゼンマイケースに同軸かつ一体的に連結され、全体の形状が円錐台形をなすと共に、その外面に螺旋溝を形成したワイアドラムと、一端部をこの螺旋溝に巻き掛けられ、他端を上げ下げ窓の障子に連結された吊りワイアとを有し、ゼンマイばねを適切に撓めて吊りワイアの張力を一定に保つようにしたものにおいて、ゼンマイケースと基板との間に間隙を設け、この間隙内における基板側に、支軸と同軸のリング状で、内側に向って低くなる傾斜面を有する環堤部を形成し、一方、ゼンマイケースの環堤部に対向する側に、環堤部に近接して制御板を一体的に設け、この制御板の外周部に半径方向に延在する少なくとも1本の遊動溝を形成すると共に、この遊動溝にクラッチボールを移動可能に収納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成された請求項1に記載の発明は、例えば一方のバランサーの吊りワイアが切れるなどして他方のバランサーに2倍の負荷が掛かったときには、他方のバランサーの制御板が急激に回転する結果、遊動溝に収納されたクラッチボールが遠心力により半径方向外方に移動する。
【0013】
そのため、クラッチボールが基板上の環堤部の傾斜面に沿って上昇するように移動するので、ついにはクラッチボールが傾斜面と制御板の遊動溝底面との間に強く挟まれ、ゼンマイケース及びこれと一体のワイアドラムに制動が掛かってワイアドラムが停止し、障子の落下を防止する、という所期の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ゼンマイケースと基板との間に間隙を設け、この間隙内における基板側に、支軸と同軸のリング状で、内側に向って低くなる傾斜面を有する環堤部を形成し、一方、ゼンマイケースの環堤部に対向する側に、環堤部に近接して制御板を一体的に設け、この制御板の外周部に半径方向に延在する少なくとも1本の遊動溝を形成すると共に、この遊動溝にクラッチボールを移動可能に収納する、という簡単な構成で、一方のバランサーが故障しても、他方のバランサーにブレーキが掛かるようにして障子の落下を防止することができた。
【実施例1】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
なお、バランサーの構造そのものについては、前に説明したし、また、周知であるから、以下に簡単に説明する。
【0016】
図1乃至図3において符号8は支軸を示し、この支軸8は基板9と垂直な関係位置を保って、上端を投影形状が横向きY字形(図1参照)の傘カバー11によって支持されている。
【0017】
上記支軸8に回動可能に支承されたゼンマイケース3と基板9との間には間隙12(図2参照)が設けられている。
【0018】
この間隙12内における基板9側に、支軸8と同軸のリング状で、内側に向って低くなる傾斜面を有する環堤部13(図2及び図4参照)が形成されている。
【0019】
図示の実施例では、この環堤部を例えば基板9をプレスにより形成するものとしたが、環堤部13を直接基板9に形成する必然性はなく、環堤部を旋削により形成した部品を例えばねじ止めにより基板9に装着しても良い。
【0020】
これに対応して、図2に示すように、ゼンマイケース3の環堤部13に対向する側に、環堤部に近接して制御板14(図4参照)が一体的に設けられており、この制御板の外周部に半径方向に延在する少なくとも1本(図示の実施例では4本)の遊動溝15が形成されている。
【0021】
そして、各遊動溝15にはクラッチボール16が制御盤14の半径方向に移動可能に収納されている。
【0022】
ちなみに、このクラッチボール16は例えば鋼球とか、硬質プラスチックの球体等を採用することができる。
【0023】
上記のように構成されたこの発明の一実施例による緊急停止機構は、バランサーの通常の使用時には、制御板14の回転は準静的に近いから、クラッチボール16は環堤部13の内側にあってなるべく制御盤14の回転の邪魔にならないように転がる。
【0024】
一方、相手方のバランサー1の吊りワイアが切れるなどして吊りワイア5の張力が増大したときには、制御板14が急激に増速され、その結果、各クラッチボール16が遠心力により外方、すなわち遊動溝から脱出する方向に加速され、環堤部の傾斜面を駆け上がるように移動するに至る。
【0025】
その結果、図5及び図6に示すように、クラッチボール16が環堤部の傾斜面と遊動溝15の底面の間に噛み込まれ、制御板14及びこれと一体のゼンマイケースにブレーキが掛かかるので、障子の落下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施例によるバランサーの平面図。
【図2】その側面図。。
【図3】その正面図。
【図4】制御板と環堤部との相対位置関係を示す線図。
【図5】図2と同様の側面図で、ゼンマイケースにブレーキが掛かった状態を示す。
【図6】図4と同様の線図で、ゼンマイケースにブレーキが掛かった状態を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 バランサー
2 ゼンマイばね
3 ゼンマイケース
4 ワイアドラム
5 吊りワイア
6 アイドルプーリー
7 障子
8 支軸
9 基板
11傘カバー
12 間隙
13 環堤部布施
14 制御板
15 遊動溝
16 クラッチボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に垂直な相対関係位置で固定された支軸と、この支軸に回動可能に支承されたゼンマイケースと、このゼンマイケースと支軸との間に弾装されたゼンマイばねと、上記ゼンマイケースに同軸かつ一体的に連結され、全体の形状が円錐台形をなすと共に、その外面に螺旋溝を形成したワイアドラムと、一端部をこの螺旋溝に巻き掛けられ、他端を上げ下げ窓の障子に連結された吊りワイアとを有し、ゼンマイばねを適切に撓めて吊りワイアの張力を一定に保つようにしたものにおいて、ゼンマイケースと基板との間に間隙を設け、この間隙内における基板側に、支軸と同軸のリング状で、内側に向って低くなる傾斜面を有する環堤部を形成し、一方、ゼンマイケースの環堤部に対向する側に、環堤部に近接して制御板を一体的に設け、この制御板の外周部に半径方向に延在する少なくとも1本の遊動溝を形成すると共に、この遊動溝にクラッチボールを移動可能に収納したことを特徴とするバランサーの緊急停止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−248576(P2008−248576A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91630(P2007−91630)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】