説明

バランス測定器

【課題】 被験者が変っても高さ調整を行うことなく連続して測定が可能なバランス測定器を提供すると共に、全体としてコンパクト且つ移動や持ち運びが簡単なバランス測定器を提供する。
【解決手段】 垂直な取付面Wに固定される固定部材10と、固定部材10に着脱可能に取り付けられる本体3と、を有し、本体3は、固定部材10に着脱可能に取り付けられるベースプレート20と、ベースプレート20に設けられ、取付面Wに沿って水平方向に移動可能なスライド部材30と、ベースプレート20に対して垂直方向に突出するようにしてスライド部材30に立設された支持部材40と、被験者が手を伸ばした状態で傾倒姿勢を深めながらスライド部材30を水平移動させるために支持部材40に取着された押し板50であって、異なる身長の被験者にも使用できるように上下方向に所定の長さを有して形成された押し板50と、押し板50の移動距離を測定するスケール60とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランス測定器に関し、さらに詳しくは、被験者が上体をどの程度まで前傾させたときにその姿勢を保持できなくなるかを測定するためのバランス測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会の進展に伴い、介護施設やリハビリテーションセンターの役割がますます重要となってきている。高齢者の運動機能の低下は、自らの運動を自重させ、ますます運動機能の低下を促進してしまうという悪循環を生じさせる。そして、そのような運動機能の低下によって日常生活に支障をきたすようになると介護やリハビリといった対応が余儀なくされる。
【0003】
高齢者の運動機能の維持・回復を図るために各施設においては被験者ごとに種々のプログラムを組み、それが実行されている。
しかし、これまでは、被験者が与えられたプログラムに従ってリハビリを行った結果、どの程度の機能回復が図られたのかという治療効果は医者やリハビリの指導者の感覚的な判断が主であり、具体的な数値等で把握することができないという問題があった。
【0004】
そのため、例えば、リハビリの効果等を知るために、前傾姿勢をどこまで保持することができるかを数値的に測定することにより足腰の筋力の回復状況を知ることができるバランス測定器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、人の立位状態を保持可能な限度に係るバランスを測定した測定値は人の健康状態を示す指標としても有益である。
【0005】
特許文献1に開示されたバランス測定器は、概略として、ベース(2)と、ベース(2)に立設された垂直フレーム(3)と、垂直フレーム(3)に関連して設けられた水平部材(4)と、水平部材(4)に関連して、被測定者の手により移動容易に水平部材(4)に設けられた水平移動部材(5)とにより成り、水平部材(4)と床(38)面間の高さを調節自在に構成し、定位置に立つ被測定者が、水平移動部材(5)に沿って水平挙上した手で立位姿勢のバランスを崩す直前まで水平移動部材(5)を前方に移動させ、その移動距離からバランスが測定されることを特徴としている。尚、ここに示した符号は特許文献1に記載されたものをそのまま引用したものであり、以下に示す本願発明に関する「発明を実施するための最良の形態」に記載のものとは異なるものである。
【0006】
【特許文献1】特開2003−299635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1に示されたバランス測定器にあっては、被測定者が水平移動部材(5)を移動させるための押し部材(11)の高さ幅が狭く、特に図4〜図10に示された押し部材(11)は丸棒となっている。そのため、被測定者が測定をするために両腕を体の前方に水平に伸ばしたときの高さ位置に押し部材(11)が正しく位置するようにするには垂直フレーム(3)を伸縮させることによって高さ調整を行う必要がある。従って、被測定者が変るたびごとに被測定者の身長にあわせて垂直フレーム(3)の高さ調整を行わなければならず、極めて煩雑かつ面倒である。
【0008】
また、引用文献1に示されたバランス測定器は、自立式で、床面に設置されるベース(2)と、前述した垂直フレーム(3)を有して構成されている。従って、機器全体も大きくなり持ち運びも大変である。特に、図4に示された第3実施例及び図9に示された第4実施例にあっては板状ベース(26)や着脱式板状ベース30を備えて構成されており、バランス測定器全体の重量がさらに増加することが容易に予測される。従って、移動や持ち運びが大変であるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述のような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、被験者が変っても高さ調整を行うことなく連続して測定が可能なバランス測定器を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、全体としてコンパクト且つ移動や持ち運びが簡単なバランス測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、被験者が上体をどの程度まで傾倒させたときにその姿勢を保持できなくなるかを測定するためのバランス測定器において、壁面等の垂直な取付面に固定される固定部材と、固定部材に着脱可能に取り付けられる本体と、を有し、本体は、固定部材に着脱可能に取り付けられるベースプレートと、ベースプレートに設けられ、取付面に沿って水平方向に移動可能なスライド部材と、ベースプレートに対して垂直方向に突出するようにしてスライド部材に立設された支持部材と、被験者が手を伸ばした状態で傾倒姿勢を深めながらスライド部材を水平移動させるために支持部材に取着された押し板であって、異なる身長の被験者にも使用できるように上下方向に所定の長さを有して形成された押し板と、押し板の移動距離を測定するスケールとを備えて構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るバランス測定器は、ベースプレートと、スライド部材と、支持部材と、押し板と、スケールとを有して形成される本体を、壁面やつい立等の取付面に固定した固定部材に着脱可能に構成したのでスタンド等が不要で全体としてコンパクトであり、簡単に移動や持ち運びが可能となる。また、被験者が手で押し動かす押し板が上下方向に所定の長さを有して形成されているので被験者の身長に合わせた高さ調整が不要である。
【0013】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のバランス測定器において、固定部材の上部側には、固定部材を所定の場所に固定した際に取付面との間に上部が開口した隙間を形成させるための屈曲部を備える一方、ベースプレートには、隙間に挿嵌される挿入部が設けられ、挿入部を屈曲部と取付面との間に形成される隙間に挿嵌することによりベースプレートが固定部材に固定され、挿入部を引き抜けば取り外せるようにされたことを特徴とする。
【0014】
ベースプレートに設けられた挿入部を固定部材の上部に設けられた屈曲部により形成された壁面等の取付面との隙間に挿嵌することによりベースプレートが固定される。挿入部は、ベースプレートと、スライド部材と、支持部材と、押し板と、スケールとを有して形成される測定器の本体の自重により隙間にしっかりと挿嵌されるので測定器の本体が落下することはない。尚、安全のために挿入部が隙間から抜けてしまうことがないように抜け止め機構を設けてもよい。
【0015】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のバランス測定器において、固定部材は、取付面に対して着脱可能に形成されていることを特徴とする。
【0016】
固定部材が取付面であるつい立やパーテーション、あるいは移動可能な白板又は黒板等に着脱可能とされているので屋外のように壁面のない場所でもバランス測定器を使用することができる。
【0017】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバランス測定器において、ベースプレートの下部側には、固定部材に密着して固定部材との固定を補強する補強部材をさらに備えて構成されていることを特徴とする。
【0018】
ベースプレートは、挿入部が固定部材の上部側に挿嵌されて固定されているが、ベースプレートの下部側も固定部材に密着させることによりベースプレートを固定部材に対してガタつきなくしっかりと固定させる。
【0019】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバランス測定器において、支持部材は、押し板の取り付け位置を取付面に対して垂直方向に調整可能とされていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るバランス測定器は、取付面に取り付けられた状態で使用に供される。すなわち、被験者が取付面に正対した状態から正面を90°回転させて押し板と正対した状態、すなわち、被験者の正面が取付面と平行となるようにして立ち、そして、両腕を前方に水平に伸ばした状態で上体を前傾させながら押し板を押すことにより測定が行なわれる。従って、被験者が測定位置に立ち、腕を前方に伸ばし、被験者の指先が正しく押し板に触れる状態すなわち測定可能状態において、被験者の肩が壁面に触れて測定を阻害しないように押し板50の位置調整を行うことができるようになっている。
【0021】
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバランス測定器において、スケールは、スライド部材がどちらの方向から移動してもその移動距離の測定が可能に形成されていることを特徴とする。
【0022】
上述のように、被験者は押し板と正対するように立って前屈しながら両手で押し板を押して測定する他、片方の手だけで押し板を押して測定する場合もある。この場合、被験者の利き腕が左右のいずれであってもその利き腕で押し板を押すことができるように、スケールは、被験者がバランス測定器に対して右又は左のいずれの側にして立った場合でも測定ができるようにスライド部材が左右どちらの方向から移動してもその移動距離を測定できるように形成されている。また、スケールがこのように形成されているので被験者が取付面と正対した状態で手を伸ばし、背骨の上部を真横に曲げるようにして片手で押し板を押して測定することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るバランス測定器によれば、壁面等の垂直な取付面に固定される固定部材と、固定部材に着脱可能に取り付けられる本体とを有し、本体は、固定部材に着脱可能に取り付けられるベースプレートと、ベースプレートに設けられ、取付面に沿って水平方向に移動可能なスライド部材と、ベースプレートに対して垂直方向に突出するようにしてスライド部材に立設された支持部材と、被験者が手を伸ばした状態で傾倒姿勢を深めながらスライド部材を水平移動させるために支持部材に取着された押し板であって、異なる身長の被験者にも使用できるように上下方向に所定の長さを有して形成された押し板と、押し板の移動距離を測定するスケールとを備えて構成したので、全体としてコンパクトとなり、且つ移動の際は本体のみを持ち運べば足りるので簡単に移動や持ち運びができるという効果がある。
【0024】
また、被験者が変っても高さ調整を行うことなく連続して測定することができるという効果がある。
さらに、本発明に係るバランス測定器によれば、スライド部材がどちらの方向から移動してもその移動距離の測定ができるようにスケールが形成されているので、被験者が壁面を右又は左のいずれの側にして立った場合でもバランスの測定を行うことができるという効果がある。その結果、被験者が片方の利き腕だけで測定したり、身体を横に曲げながら測定したりすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係るバランス測定器について図面を参照しながら以下詳細に説明する。
初めに、図1は、本発明に係るバランス測定器の一実施形態における正面図、図2はその平面図、図3は壁面等の取付面に取り付けた状態を示す側面図である。
図示されたバランス測定器1は、概略として、壁面等の垂直な取付面Wに固定される固定部材である固定板10と、固定板10に着脱可能に取り付けられる本体3とを有しており、本体3は、固定板10に着脱可能に取り付けられるベースプレート20と、取付面Wに沿って水平方向に移動可能にベースプレート20に設けられたスライド部材30と、取付面Wに対して垂直方向に突出するようにしてスライド部材30に立設された支持部材40と、被験者が手を伸ばした状態で傾倒姿勢を深めながらスライド部材30を水平移動させるために支持部材40に取着された押し板50と、押し板50の移動距離を測定するスケール60とを備えて構成されている。
【0026】
固定板10は、図4に示すように、壁面等の取付面Wに密着して固定される基部11と、固定板10の上部側には形成された屈曲部15と、屈曲部15の上部側で取付面Wとは接触することなく隙間部13aを形成する掛止部13とを有して形成されている。基部11には、固定板10を取付面Wに固定するためのネジ10bを受け入れるネジ止め用のネジ穴10aが穿設されている。尚、固定板10の取付面Wへの固定はこれに限るものではなく取付面Wの材質や構造等に応じて接着剤による接着、または接着とネジ止め等の適宜の方法やその組合せを採用することができる。
【0027】
固定板10の屈曲部15は、固定板10を取付面Wに固定した際に屈曲部15の上部側の掛止部13と取付面Wとの間に上部が開口した幅hを有する隙間部13aを形成させる(図4参照)。そして、後述するようなベースプレート20に設けられた挿入部21aを隙間部13aに挿嵌することによりベースプレート20を固定板10の掛止部13に掛止固定する。そして、ベースプレート20を上方に引き上げれば挿入部21aが隙間部13aから引き抜かれベースプレート20を取り外せるようになっている。このように、固定板10はベースプレート20以下の部材を取付面Wに保持固定するものであるので例えば、金属製のような頑丈な素材で形成することが好ましい。そして、固定板10を測定を行いたい場所、例えば、プール、球技室、体操室等一定の場所に予め固定しておけば本体3を適宜固定板10に取り付けることですぐに使用することが可能となる。また、本体3を固定板10から取り外し可能としたので歩行や運動する人が接触して怪我をする等の危険を避けることができる。
【0028】
固定板10の他の実施形態を図5(a)に示す。図示された固定板10は、基部11の上部側に略「Γ(ガンマ)」字状に折り曲げられた引掛部17を有して形成され、そして、引掛部17が形成された面とは反対側の面には掛止部13が取り付けられている。引掛部17は、隙間部17aを有しており、この隙間部17aを利用して、例えば、つい立やパーテーション、あるいは移動可能な白板又は黒板等に引っ掛けることができるようになっている。そして、引掛部17の表面側には固定ネジ18が設けられており、固定ネジ18を締め付けることによって固定板10を、図示されているように、移動可能な白板Pに固定するようになっている。また、図5(b)に示すように、固定ネジ18の先端側には当接板18aが配設されており、固定される白板Pを面でしっかりと挟持するようになっている。これにより、壁面のない場所や屋外であっても白板Pを用いてバランス測定器1使用することが可能となる。尚、掛止部13には、図4に示した固定板10と同様に、屈曲部15と隙間部13aが形成されており、同様の機能が発揮されるようになっている。
【0029】
一方、ベースプレート20は、横長の板状部材で、その表面にはスライド部材30を水平移動させるためのスライドレール23が配設されていると共に、スライド部材30の移動距離を計測するためのスケール60が設けられている。
スライドレール23は、断面形状が略「コ」の字状をした長尺の部材で、ベースプレート20の表面のほぼ中央付近を長手方向に沿って配設され、ネジ部材23eにてベースプレート20に締着されている。図7に示すように、スライドレール23の対向する内側面23a、23bには、それぞれ後述するスライド部材30が備えるホイール部材35の外周面の形状に即した形状を有する凹部23c、23dが形成されている。
【0030】
また、スライドレール23の上部側の天面と背面に密接するようにして略「L」字状の調整板25が取り付けられている。そして、スライド部材30に設けられたアジャスタネジ33aを締めたり緩めたりすることによってスライドレール23上部を撓ませ、ホイール部材35に接する内側面23aの押圧力を変化させることができるようになっている。これにより、被験者が押し板50を押圧した際のスライド部材30の動きの軽重を調整することが可能となる。
【0031】
ベースプレート20の裏面には、図6に示すように、取付板21が取着されている。取付板21はネジ穴21eが穿設された取付部21bによりベースプレート20裏面の上部に配置され、ネジ部材21fによってしっかりと締着されている。取付板21は、上述の固定板10と同様に、屈曲部21cが形成されると共に、屈曲部21cに連続して挿入部21aが設けられている。ベースプレート20の裏面と挿入部21aの内表面との間には幅Hの隙間部21dが形成されている。そして、この挿入部21aを固定板10の掛止部13と取付面Wとの間に形成される隙間部13aに挿嵌することにより固定板10にベースプレート20が固定される。尚、隙間部13aの幅hと隙間部21dの幅Hとは、挿入部21aを隙間部13aに挿嵌した際、隙間なく挿嵌されるように形成されている。尚、安全のために挿入部21aが隙間部13aから抜けてしまうことがないように、例えば、ベースプレート20の横から固定板10に架け渡される図示しない閂(かんぬき)状の抜け止め機構を設けてもよい。
【0032】
一方、ベースプレート20の下部側には、図3に示すように、さらに、固定板10への固定を確実にするために固定板10に密着して補強する補強部材29を備えている。図示された補強部材29はマグネットにより形成され、ベースプレート20の裏面の下部側に配設されている。これにより、ベースプレート20の下部側も固定板10に密着されることになるのでベースプレート20を固定板10に対してガタつきなくしっかりと固定させることか可能となる。尚、補強部材29は単なるマグネットの他、電流を流すことにより磁力を発生する電磁石を用い、スイッチのON/OFFにより動作させるものであってもよく、あるいは、吸盤等によるものであってもよい。
【0033】
スライド部材30は、図7に示すように、スライド本体31にスライドレール23に移動可能に内装されるホイール部材35を有して形成されている。ホイール部材35は、スライド本体31から突出するようにして取着された軸39に図示しないボールベアリングを介して回転可能に取り付けられている。また、スライド本体31の両側部にはスケール60の目盛りを読むためのカーソル37が配設されている。また、スライド本体31の図における上部側にはアジャスタネジ33aを取り付けるためのアジャスタネジ取付板33がネジ部材33bによって取り付けられている。このようにして構成されたスライド部材30はスライドレール23を水平方向に左右いずれの方向からでも自由に移動可能とされている。
【0034】
支持部材40は、図8に示すように、ベース部47から立ち上がるようにして略円柱状の立設部41が配設されており、立設部41の頂部にはさらに円柱を半割状にしたような形状の押し板取付部43が設けられている。そして、押し板取付部43には長手方向に沿って開口部45が形成されており、この開口部45に沿って止めネジ40aとナット40bにより押し板50を適宜の位置で固定することができるようになっている。これにより、押し板50取り付け位置を取付面Wに対して垂直方向に調整可能となり、従って、被験者が測定位置に立ち、両腕を前方に伸ばした状態で被験者の指先が正しく押し板に触れるように押し板50の位置の調整を行うことができる。
また、ベース部47にはその四隅にネジ穴47aが穿設されており、これにより、図7に示すように、ネジ部材47bにより支持部材40をスライド部材30に取り付けるようになっている。
【0035】
押し板50は、被験者が手を伸ばした状態で前傾姿勢や横傾姿勢を深めながらスライド部材30を水平移動させるための部材であり、図3に示すように、縦長に形成された板状部材である。そして、押し板50の略中央には止めネジ40aが挿通される穴50a(図8参照)が穿設されている。
このように、バランス測定器1の使用状態において、上下方向に縦長になるようにしたのは、被験者異の身長が異なる場合の高さ位置の調整を不要にするためである。尚、押し板の高さ幅は、各被験者の身長の分布に応じて適宜決定すればよい。例えば、日本人の成年男女の身長を概略145〜185cmの範囲にあるものと考え、その身長差からみて押し板50の長さは50〜90cm程度あればよいと考えられる。また、その幅は約5〜15cmが好ましい。
【0036】
スケール60、上述したように、ベースプレート20の表面上に設けられているが、図1に示すように、スライド部材30が左右のどちらの方向から移動したとしてもその移動距離を容易に測定できるように左右の両端側からそれぞれ開始される目盛りが設けられている。すなわち、図1に示されたスケール60のうち、上部側の目盛りは押し板50を図上左から右へ移動させたときにその移動距離を容易に読み出すことができるようにされ、一方、下部側の目盛りは押し板50を図上右から左へ移動させたときにその移動距離を容易に読み出すことができるようにされている。これにより、被験者がバランス測定器1の取り付けられた取付面Wを右又は左のいずれの側にして立った場合でもバランスの測定ができるようになっている。そのため、例えば、リハビリ施設の室内に設置するような場合でも壁の角部の近くに設置することもできるので取り付ける場所を制限されることはない。また、被験者が片方の利き腕だけで測定したり、身体を横に曲げながら測定したりすることもできる。
【0037】
次に、これまで説明してきたバランス測定器1の動作について使用方法と共に説明する。
初めに、バランス測定器1を取り付けたい取付面Wの高さ位置にネジ10bにて固定板10を固定する。一方、図5に示す固定板10の場合には移動可能な白板Pに引っ掛け、固定ネジ18を締めて固定する。そして、本体3のベースプレート20の挿入部21aを固定板10の掛止部13と取付面Wとの間に形成される隙間部13aに挿嵌して固定する。このとき、ベースプレート20の下部に設けられた補強部材29によってベースプレート20の下部側も固定板10に固定される。尚、必要があれば図示しない抜け止め機構を機能させてもよい。
【0038】
そして、押し板50の取付面Wからの位置を調整し、止めネジ40aにより押し板50を押し板取付部43の所定の位置に固定する。また、アジャスタネジ33aを調整してスライド部材30の移動状態を調整する。あまり軽いと押し板50を押圧した時の勢いでスライド部材30が正しい位置で停止しなくなるおそれがある。一方、あまり重いと被験者に負担をかけるので適正に作動するように調整する。
【0039】
バランス測定器1の設置及び調整ができたら、実際の測定を行う。実際の測定は、図9(a)に示すように、まず、カーソル37をスケール60の目盛り0の位置に合わせる。そして、被験者Aは、取付面Wに対して平行に立ち、両腕を正面に水平に伸ばし、指先が押し板50に触れる程度の位置になるように立ち位置を調整する。
【0040】
被験者Aの立ち位置が決まったら、前傾姿勢を取り、その体勢をさらに深めつつ押し板50を押す(図9(b)参照)。被験者Aの前傾に伴って押し板50はスライドレール23上を水平移動する。被験者Aが体勢を保持できなくなると思う位置に達したら押し板50から手を離し、押し板50の移動距離をカーソル37によりスケール60から読み取る。また、他の測定方法として図9(c)(d)に示すように、被験者Aは身体を横に倒す方向での測定を行うこともできる。
このように、押し板50の移動距離によってその被験者Aの下半身の筋力の状態を客観的な数値により把握することができる。測定を繰り返し行ってそのデータを記録しておけば、これまで被験者が行ってきた運動やリハビリの効果を具体的な数値等で把握することができる。
測定が終ったら、上記と逆の手順によって本体3を固定板10から取り外し、所定の収納場所に移動する。このように、バランス測定器1は本体3のみを移動すれば足りるので使用・収納も極めて簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るバランス測定器の一実施形態における正面図である。
【図2】図1のバランス測定器の平面図である。
【図3】図1のバランス測定器を壁面等の取付面に取り付けた状態を示す側面図である。
【図4】固定板の一部を示す斜視図である。
【図5】(a)は固定板の他の実施形態を示す斜視図、(b)はその使用状態の断面図である。
【図6】ベースプレートの裏面の一部を示す斜視図である。
【図7】ベースプレートとスライド部材を示す側面図である。
【図8】支持部材の斜視図である。
【図9】図1のバランス測定器の使用状態を示す図であり(a)は測定直前の状態、(b)は測定中の状態を示すと共に、(c)は横向きでの測定直前の状態、(d)は測定中の状態を示している。
【符号の説明】
【0042】
W 取付面
A 被験者
P 白板
1 バランス測定器
3 本体
10 固定板
11 基部
13 掛止部
13a 隙間部
17 引掛部
17a 隙間部
18 固定ネジ
18a 当接板
15 屈曲部
20 ベースプレート
21 取付板
21a 挿入部
21b 取付部
21c 屈曲部
21d 隙間部
21e ネジ穴
21f ネジ部材
23 スライドレール
23a 内側面
23b 内側面
23c 凹部
23d 凹部
23e ネジ部材
25 調整板
29 補強部材
30 スライド部材
31 スライド本体
33 アジャスタネジ取付板
33a アジャスタネジ
33b ネジ部材
35 ホイール部材
37 カーソル
39 軸
40 支持部材
40a 止めネジ
41 立設部
43 押し板取付部
45 開口部
47 ベース部
47a ネジ穴
47b ネジ部材
50 押し板
50a 穴
60 スケール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が上体をどの程度まで傾倒させたときにその姿勢を保持できなくなるかを測定するためのバランス測定器において、
壁面等の垂直な取付面に固定される固定部材と、前記固定部材に着脱可能に取り付けられる本体と、を有し、
前記本体は、
前記固定部材に着脱可能に取り付けられるベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられ、前記取付面に沿って水平方向に移動可能なスライド部材と、
前記ベースプレートに対して垂直方向に突出するようにして前記スライド部材に立設された支持部材と、
前記被験者が手を伸ばした状態で傾倒姿勢を深めながら前記スライド部材を水平移動させるために前記支持部材に取着された押し板であって、異なる身長の被験者にも使用できるように上下方向に所定の長さを有して形成された押し板と、
前記押し板の移動距離を測定するスケールと、
を備えて構成されてなることを特徴とするバランス測定器。
【請求項2】
請求項1に記載のバランス測定器において、
前記固定部材の上部側には、当該固定部材を所定の場所に固定した際に前記取付面との間に上部が開口した隙間を形成させるための屈曲部を備える一方、前記ベースプレートには、前記隙間に挿嵌される挿入部が設けられ、前記挿入部を前記屈曲部と前記取付面との間に形成される前記隙間に挿嵌することにより前記ベースプレートが前記固定部材に固定され、前記挿入部を引き抜けば取り外せるようにされたことを特徴とするバランス測定器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバランス測定器において、
前記固定部材は、前記取付面に対して着脱可能に形成されてなることを特徴とするバランス測定器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のバランス測定器において、
前記ベースプレートの下部側には、前記固定部材に密着して当該固定部材との固定を補強する補強部材をさらに備えて構成されてなることを特徴とするバランス測定器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバランス測定器において、
前記支持部材は、前記押し板の取り付け位置を前記取付面に対して垂直方向に調整可能とされてなることを特徴とするバランス測定器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバランス測定器において、
前記スケールは、前記スライド部材がどちらの方向から移動してもその移動距離の測定が可能に形成されてなることを特徴とするバランス測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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