説明

バラ状発泡体成形用樹脂組成物及びバラ状発泡体

【課題】組成物大分部分が生分解性材料であり、コスト的にも有利な発泡性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】この発泡性樹脂組成物は、澱粉100質量部に対し、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂10質量部未満、水10〜30質量部、無機質フィラー0.01〜5質量部を含むものである。
生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂としてはMFRが5g/(190℃、10分)以上のものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは生分解性であり、かつ低コストの発泡性樹脂組成物及びそれを発泡させた発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性樹脂成形体は包装材、緩衝材、断熱材等に用いられている。これらの材料として環境問題やコストの点から、ポリスチレンに代えて生分解性樹脂や澱粉が用いられるようになってきている。
澱粉を発泡材料に用いたものとして特許文献1に水を含む澱粉とエチレン−酢酸ビニル共重合体、界面活性剤等からなる材料が記載されている。これにはエチレン−酢酸ビニル共重合体が含まれているので、環境上はなお不十分である。
生分解性材料を主たる成分とするものとしては、例えば特許文献2に澱粉とポリビニルアルコールと水を含む生分解性樹脂発泡体が記載されている。
特許文献3には熱可塑性樹脂、澱粉、相溶化剤を含む樹脂複合材料が記載されている。樹脂としては脂肪族ポリエステルも挙げられている。
【特許文献1】特開平6−87969号公報
【特許文献2】特開平11−124456号公報
【特許文献3】特開2004−2613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献2に記載の生分解性樹脂発泡体は主たる材料が澱粉とポリビニルアルコールであり、生分解性なので、環境上は問題がない。発泡体の材料として澱粉は安価であり、できるだけこれを多く含有させることがコスト上は望ましい。
上記特許文献2では澱粉60〜80重量部、ポリビニルアルコール10〜30重量部となっている。コスト改善の意味からはさらに検討の余地がある。
特許文献3も澱粉は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、50〜1000質量部が好ましいとされており、さらにコスト改善が要求される。
本発明は加工澱粉と生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂を用いた発泡性樹脂組成物において、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂を極力減らし、コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、澱粉、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂、無機質フィラー及び水を含む発泡性組成物について研究した結果、澱粉として加工澱粉を用いることにより、従来のものより一層生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂を減らしても発泡体として使用可能であり、特にバラ状の発泡体には好適であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の各項からなる。
【0005】
(1)加工澱粉100質量部に対し、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂10質量部未満、水10〜30質量部、無機質フィラー0.01〜5質量部を含む発泡性樹脂組成物。
(2)生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が、0.5〜8質量部である上記(1)に記載の発泡性樹脂組成物。
(3)生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が、2〜6質量部である上記(1)または(2)に記載の発泡性樹脂組成物。
(4)生分解樹脂が、脂肪族ポリエステル又はポリビニルアルコールである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【0006】
(5)生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂のMFRが5g/(190℃、10分)以上である上記(1)〜(4)のずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
(6)加工澱粉が、酸化澱粉、エステル化澱粉、アセチル化澱粉、カチオン化澱粉の少なくとも1種である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物を発泡させた発泡体。
(8)発泡体が、バラ状である上記(7)に記載の発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発泡性樹脂組成物は生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が加工澱粉100質量部に対し、10質量部未満と極端に少なく、残りは主に加工澱粉なので、無機質フィラーを除いて、天然由来の材料比率が90質量%を超え、環境にやさしい材料であり、炭酸ガス排出量が低く、コスト的にも有利である。従来はこのように澱粉が多いものは実用的に問題があったが、本発明の発泡性樹脂組成物は、澱粉として加工澱粉を用いること、さらに無機質フィラーを含ませることで澱粉を多くしても発泡体の強度等を実用可能な程度に維持でき、特にバラ状の発泡体には好適なものが得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の発泡性樹脂組成物は生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が加工澱粉100質量部に対し、10質量部未満であり、残りは主に澱粉である。本発明において、この10質量部未満とはゼロを含む。即ち、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が存在しない場合も含む。本発明の発泡性樹脂組成物は、澱粉として加工澱粉を用いること、さらに無機質フィラーを含ませることで生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂を大幅に減らすことを可能としたものである。
本発明の発泡性樹脂組成物に用いられる生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂としてはメルトフローインデックス(MFR)が5g/(190℃、10分)以上のものが好ましく、さらに好ましくは8g/(190℃、10分)以上である。なお、MFRはJIS K7210に準じて190℃、2.16kg荷重で行なった。
本発明における生分解樹脂としては脂肪族ポリエステル、ポリビニルアルコールが好ましい。これらは混合して用いることもできる。
【0009】
本発明で用いられる脂肪族ポリエステルはエチレングリコール、1,4−ブタンジオ−ル、1,6ヘキサンジオール等の多価アルコールとコハク酸、アジピン酸などの多塩基酸から合成される。また多価アルコールとして1,4シクロヘキサンジメタノールなどを用いた環状脂肪族ポリエステルや1−4ブタンジオール、テレフタル酸、アジピン酸を用いた脂肪族芳香族ポリエステルも含まれる。
本発明の発泡性樹脂組成物に用いられるポリビニルアルコールは鹸化度が90%以上のものが好ましく、さらに好ましくは95%以上である。
本発明の発泡性樹脂組成物に用いられるポリオレフィン樹脂としてはポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
【0010】
本発明の発泡性樹脂組成物に用いられる加工澱粉は、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉などの天然澱粉(未加工澱粉)を加工したものである。加工方法としては酸化、エステル化、エーテル化、架橋化、カチオン化などがあり、具体的な加工澱粉としては、ジカルボン酸澱粉のような酸化澱粉、アセチル化澱粉、カルボキシメチル化澱粉のようなエステル化澱粉、澱粉をアトアルデヒドやリン酸で処理した架橋化澱粉、澱粉を2−ジメチルアミノエチルクロライドで第3級アミノ化したもののようなカチオン化澱粉、などが挙げられる。これらの中ではカチオン化澱粉が好ましい。
【0011】
本発明の発泡性樹脂組成物には無機質フィラーを含む。無機質フィラーの役割は発泡セルを微細化して発泡体の強度を改善する。無機化合物としては具体的には、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、卵殻、シリカ等が挙げられる。
【0012】
本発明の発泡性樹脂組成物は、加工澱粉、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂、無機質フィラーと水を混合したものである。その混合割合は加工澱粉100質量部に対し、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂10質量部未満、無機質フィラー0.01〜5質量部、水10〜30質量部である。
加工澱粉100質量部に対し、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂はコストを引き下げるため10質量部未満とした。コストと物性面から好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは2〜6質量部である。
【0013】
無機質フィラーは発泡体の発泡セルを微細化し、発泡体の強度を上げる作用すする。そのため、加工澱粉100質量部に対し0.01質量部以上必要である。反面あまり多過ぎると発泡体の重量が増すので5質量部までとした。そして好ましくは0.02〜3質量部である。無機質フィラーの粒子径は特に限定されず、樹脂組成物に通常用いられる粒子径のものでよい。
水は発泡性樹脂組成物を発泡させるもので、良好な発泡体とするには10質量部以上必要である。水が多すぎると発泡のセルが崩壊して発泡倍率が上がらなくなるので、30質量部までとした。
なお、本発明において、この水の量は加工澱粉に含まれる量と添加した水の量の合量である。したがって澱粉100質量部とは加工澱粉に含まれる水の量を除いた量である。
【0014】
本発明における加工澱粉、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂、無機質フィラー、水の混合方法は、特に限定されない。
通常、あらかじめ、ヘンシェルミキサー等で加工澱粉、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂、水、無機質フィラーを混合した後、押出機により加熱、加圧溶融して所望の形状のダイスより発泡させながら押出し、直接に発泡体を得、切断してバラ状の発泡体とすることができる。またヘンシェルミキサー等で加工澱粉、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂、水、無機質フィラーを混合した後、押出器により、発泡しない条件で加熱、加圧溶融し、ダイスよりストランドを得、切断してペレット化する。このペレットを例えば別の場所で押出機に投入して、高温で加熱加圧溶融して所望の形状のダイスより押し出して発泡体を得るか、あるいは生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂、無機質フィラーをヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で混練する際に水を押出機中に注入して、所望の形状のダイスより発泡させながら押出し、発泡体を得ることができる。したがって、本発明の発泡樹脂組成物には予め水を加えて組成物としたものの他、押出機で混練中に水を添加するものも含まれる。さらに、水を含まないペレットを得、これに水を含浸させ、これを発泡させて発泡ペレットとしたり、あるいは水を含むが発泡しない条件で得たペレットや水を後から含浸したペレットから金型を用いて種々の発泡成形体とすることができる。本発明の発泡樹脂組成物にはこのように水をペレットに後から含浸したものも含むものとする。本発明の発泡樹脂組成物は発泡成形体とすることも可能であるが、バラ状の緩衝材として一層好適である。
【実施例】
【0015】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例に用いた原料は以下の通り。
澱粉
生のコーンスターチ(王子コーンスターチ(株)製、商品名コーンスターチの未加工澱粉)。水分含有量約8.5質量%。
酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)
水分含有量 9質量%
エステル化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースP130)
水分含有量 9.5質量%
アセチル化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースOSA1100)
水分含有量 9質量%
カチオン化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースK100)
水分含有量 10質量%
【0016】
脂肪族ポリエステル
昭和高分子(株)製 商品名 ビオノーレ #1010
MFR10g/190℃10分
ポリプロピレン
サンアロマー(株)製 商品名 PM600A
MFR7.5g/190℃10分
ポリビニルアルコール
日本合成化学(株)製 ゴーセノールNM-11
無機質フィラー
タルク。
平均粒径(レーザー法で測定)で約10ミクロンである。
【0017】
これらの原料を表1に示す割合にヘンシェルミキサーで混合し、その混合物を同方向2軸押出機により、発泡成形を行った。表中の水分の量は澱粉に含まれる水分と添加水分の合計である。押し出し成形後、切断して円柱状の発泡成形体を得た。このときのシリンダー温度は190℃である。(表中の数字は質量部)。
【0018】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の発泡樹脂組成物は大分部分が生分解性なので環境問題を配慮した製品とすることができる。そして澱粉が非常に多いのでコストが低く、緩衝材、包装材、断熱材等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工澱粉100質量部に対し、生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂10質量部未満、水10〜30質量部、無機質フィラー0.01〜5質量部を含む発泡性樹脂組成物。
【請求項2】
生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が、0.5〜8質量部である請求項1に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項3】
生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂が、2〜6質量部である請求項1または2に記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項4】
生分解樹脂が、脂肪族ポリエステル又はポリビニルアルコールである請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項5】
生分解樹脂及び/又はポリオレフィン樹脂のMFRが5g/(190℃、10分)以上である請求項1〜4のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項6】
加工澱粉が、酸化澱粉、エステル化澱粉、アセチル化澱粉、カチオン化澱粉の少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物を発泡させた発泡体。
【請求項8】
発泡体が、バラ状である請求項7に記載の発泡体。

【公開番号】特開2009−292891(P2009−292891A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145811(P2008−145811)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【Fターム(参考)】