説明

バリの発生を防止するパンチ

【課題】多層基板やフレキシブル基板におけるパンチングマシンを使用した穴明けの作業において、基板の穴に発生するバリや穴径の変化による不良を最小限に防ぎ、精度の高い穴を明け、より高い生産性を実現する。
【解決手段】第1のパンチ部10と第2のパンチ部20が、先端部から順に軸方向に連続して形成されており、第1のパンチ部と第2のパンチ部の間には第1の凹部1aが設けられ、第2のパンチ部の後部には第2の凹部2aが設けられ、第1のパンチ部は被加工物に穴明け作業を行う機能を持ち、第2のパンチ部は第1のパンチ部により明けられた穴の中に発生するバリを除去する機能を持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリの発生を防止し正確な穴径の穴を明けることが出来るパンチに関するものである。
本発明のバリの発生を防止するパンチは、プリント配線板の多層板やフレキ基板等のパンチによる穴明け加工によりバリの発生しやすい材質の被加工物に発生するバリ等を防止するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、板厚の薄いプリント基板やフレキシブル基板などに、以後の加工工程で使用される基準の穴を明ける場合に、パンチングマシンを使用してパンチによる穴明け加工が広く行われている。
パンチングマシンにおける穴明け加工では、異なる材料が積層された板厚の薄い多層基板やフレキシブル基板においてはパンチにより明けた穴の中に、図5の穴の写真に示すようなバリが発生することが多い。また厚板の場合は上面と下面の穴径が変わってしまうなどの問題がある。
このような現象は、板厚の薄い多層基板やフレキシブル基板の材料に延性があって、材料の切断面の縁部がきれいに切断されないために発生することが原因である。
【0003】
【特許文献1】特開2002−192254号公報,
【特許文献2】特開2004−10618号公報,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多層基板やフレキシブル基板においては、パンチによる穴明け加工した穴の中にバリが発生すると、以後の加工工程で、この穴を露光工程などにおける基準穴としてその位置を光学的に自動検出する場合に、CCDカメラ等がバリや穴径の影響を受けて基準の位置を正しく検出することができない。また、加工装置に基板を固定するためのピンの基準穴として使用する場合には、ピンが基準穴にうまく挿入できないという問題がある。
また厚板の場合は上面と下面の穴径が変わってしまうなどの問題もある。
穴明け加工で発生したバリや、上面と下面の穴径の変化を手作業で修正しようとした場合、工数がかかるだけでなく基準穴が変形する場合もある。
このような問題を解決するために、多層基板やフレキシブル基板に正確な穴を明けることが出来るパンチの実現が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、夫々同一の形状を有する第1のパンチ部と第2のパンチ部が、先端部から順に軸方向に連続して形成されており、第1のパンチ部と第2のパンチ部の間には、第1の凹部が設けられ、第2のパンチ部の後部には第2の凹部が設けられ、第1のパンチ部は被加工物に穴明け作業を行う機能を持ち、第2のパンチ部は第1のパンチ部により明けられた穴の中に発生するバリを除去する機能をもっているバリの発生を防止するパンチを実現することにより、従来の問題を解決したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバリの発生を防止するパンチを使用することにより、多層基板やフレキシブル基板におけるパンチングマシンを使用した穴明けの作業において、基板の穴に発生するバリや穴径の変化による不良を最小限に防ぐことが出来るので、精度の高い穴を明けることができより高い生産性が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のバリの発生を防止するパンチの実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のバリの発生を防止するパンチの一実施例の構成を説明する図である。
図1において、1は、本発明のバリの発生を防止するパンチである。
10、20は、夫々バリの発生を防止するパンチ1のパンチ部で、10は第1のパンチ部、20は第2パンチ部である。
1a、2aは夫々穴抜きパンチ1に設けられた凹部である。
パンチ1は、その先端部から順に軸方向に第1のパンチ部10、第2のパンチとが連続して形成されている。第1のパンチ部10と第2のパンチ部20の間には第1の凹部1aが設けられ、第2のパンチ部20の後部には第2の凹部2aが設けられている。
尚、第2の凹部2aは被加工物の板厚や構成と材質により省略して、第1の凹部1aだけとすることも可能である。
第1のパンチ部10、第2のパンチ部20は夫々断面円形に形成されており、同一直径を有している。
第1のパンチ部10は被加工物に穴明け作業を行う機能を持ち、第2のパンチ部20は第1のパンチ部10により明けられた穴の中に発生するバリを除去し正確な穴を明ける機能をもっている。なお、前記パンチ部10、パンチ部20の軸方向各長さおよび位置と数は、被加工物の板厚や構成と材質に合わせて決定することになる。
【0008】
図2は、本発明のバリの発生を防止するパンチによる穴加工工程の動作の説明図ある。
図2において、1は、図1に示した構成を持ったバリの発生を防止するパンチ、2は前記穴抜きパンチ1と協働して貫通穴を加工するためダイスである。
3は穴抜き加工の行われる多層基板やフレキシブル基板の被加工物である。
バリの発生を防止するパンチ1はプレス機械の治具(図示しない)を介して摺動自在に保持されており、パンチ1が前進する過程で、後述する如くダイス2と協働して前筒体3に対して貫通穴を形成することができる。
ダイス2は被加工物3に明けられる穴の中心部に配置され穴明け作業時に穴抜きパンチと協働して被加工物に穴を成形する機能を有している。
このため図2に示すように、ダイス2には前述のパンチ1の刃先と対応する位置に第1のパンチ部10の外径よりやや大きい径の穴が設けられ、この穴内に第1のパンチ部10の刃先が挿入できるようになっている。
このような構成のパンチによる穴の成形工程について以下に説明する。
【0009】
図2は被加工物3に穴を成形するための説明図であり、(a)は第1のパンチ部10による穴明け状態を、(b)は(a)で成形された被加工物の穴をガイドにして第2のパンチ部20が第1のパンチ部10の穴加工時に穴外周縁に形成されたバリを削除する状態を示している。
先ず、図2の(a)に示すように、バリの発生を防止するパンチの第1のパンチ部10により被加工物に穴を明ける作業を行うと、被加工物3が塑性変形しながら第1のパンチ部10とダイス2の間にある僅かな隙間5に入りこみバリbを発生する。このバリbは第1のパンチ部10が被加工物3を貫通した後、第1のパンチ部10と第2のパンチ部20との間にある凹部1aの間に伸びだして来るので、この時明けられた穴の内周面は図2の(a)に示すようなバリが発生する。
次いで図2の(b)に示すように第1のパンチ部10により明けられた穴をガイドにして該穴の直径と同一の直径を有する第2のパンチ部20パンチによりバリを取り除く加工が行われる。
凹部1aの間に伸びだしたバリbは、第2のパンチ部20がダイス2を通過する際に第2のパンチ部20とダイス2の角部6によって剪断される。この第2のパンチ部20のバリを取り除く加工により穴内面のバリがある程度取り除かれた穴の内面が形成される。
【0010】
第2のパンチ部20によっても、十分に剪断されずにバリbが残った状態となっていると、この残ったバリbは第2のパンチ部20が被加工物3を貫通した後、第2のパンチ部20の後にある凹部2aの間に再び伸びだして来る。
第2のパンチ部20よっても剪断されずに残ったバリbがある場合には、図2の(c)に示すように第2のパンチ部20が被加工物3を貫通した後、第2のパンチ部20の後部にある凹部2aの間に伸びだして来るが、このバリbは、パンチ1をダイス2から引き抜く時に、上記と同様の動作により、順次、第2のパンチ部20、第1のパンチ部10が被加工物3を通過する際に各パンチ部20.10の角部によって剪断され完全に除去される。
図5に示した従来のパンチにより明けられた穴の写真と同一の加工物に、本発明のパンチにより明けた穴の状態を図4に示す。図4より明らかなようにバリはよく除去されきれいな穴が形成されている。
本発明のパンチは、先端に複数の凹みを介して複数のパンチ部10.20を設けたために被加物の厚さが厚くなってもパンチ推力を大きくする必要がなくきれいな穴を明けることが可能になった。
【0011】
図3は、本発明のバリの発生を防止するパンチの他の実施例の構成を説明する図である。
図3において、図1と同一の部分には同一の符号を付けてある。
図3の実施例はパンチ1の製作方法に関するものであり、第1のパンチ部10、第2のパンチ部20を夫々独立に分離して製作しこれを組み合わせることによりパンチ1を実現するようにした点に特徴があるものである。
図3の(a)は、第1のパンチ部10、第2のパンチ部20に使用されるパンチ部ユニットの構成を説明する図である。
図3の(a)において、30は、本発明のバリの発生を防止するパンチ部で、図1に示した本発明のバリの発生を防止するパンチ1のパンチ部10、第2のパンチ部20に使用される部分である。
40は、本発明のバリの発生を防止するパンチの凹部に相当する部分で、図1に示した本発明のバリの発生を防止するパンチ1の第1の凹部1aと第2の凹部2に使用される部分である。
50は、雄螺子の構成を持ったパンチ部ユニットの結合部である。60はパンチ部30の先端の平面部に設けられた雌螺子で、結合部50の雄螺子と勘合する構成となっている。
図3の(b)は、図3の(a)に示すようなパンチ部ユニットを複数個結合することにより構成された、本発明のバリの発生を防止するパンチを示したものである。
【0012】
図3の(b)のバリの発生を防止するパンチも、その先端部から順に軸方向に第1のパンチ部10、第2のパンチ部パンチ部20とが連続して形成されており、第1のパンチ部10と第2のパンチ部パンチ部20の間には第1の凹部1aが設けられ、第2のパンチ部20の後部には第2の凹部2aが設けられている。図1の実施例と同様に、第1のパンチ部10は被加工物に穴明け作業を行う機能を持ち、第2のパンチ部20は第1のパンチ部10により明けられた穴の中に発生するバリを除去し精密な穴を明ける機能をもっている。
図3の実施の形態は、第1のパンチ部10、第2のパンチ部20、を夫々独立に分離して製作しこれを組み合わせることによりパンチ1を実現するようにした点に特徴があるものであり、第1のパンチ部10が使用により消耗や変形した場合等には、ユニットの順番交換することにより使用期間の延長をすることが可能になりパンチのコストを削減できる特徴をもっている。
尚、上記の説明では、第1のパンチ部10と第2のパンチ部20を持った2段のパンチの例について説明したが、パンチ部の数は2個に限定されるものではなく必要に応じてその数を決定することも可能である。
又、パンチの断面は円形の例について説明したが、パンチの断面形状は円形に限定されるものではなく、必要に応じて任意の形状に構成することが可能である。
本発明はその精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形状で実施することができる。
以上詳細に述べた如く、本発明のバリの発生を防止するパンチを使用することにより、多層基板やフレキシブル基板におけるパンチングマシンを使用した穴明けの作業において、基板の穴に発生するバリや穴径の変化による不良を最小限に防ぐことが出来るので、精度の高い穴を明けることができより高い生産性が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、電子産業やプリント基板を使用する各種の産業で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のバリの発生を防止するパンチの一実施例の構成を説明する図である。
【図2】本発明のバリの発生を防止するパンチによる穴加工工程の動作の説明図ある。
【図3】本発明のバリの発生を防止するパンチの他の実施例の構成を説明する図である。
【図4】本発明のバリの発生を防止するパンチにより明けられた穴の写真を示す。
【図5】従来のパンチにより明けられた穴の写真を示す。
【符号の説明】
【0015】
1・・・本発明のバリの発生を防止するパンチ
2・・・ダイス
3・・・被加工物
10・・・第1のパンチ部
20・・・第2パンチ部
1a・・・第2の凹部
2a・・・第1の凹部
30・・・本発明のバリの発生を防止するパンチ部
40・・・本発明のバリの発生を防止するパンチの凹部
50・・・雄螺子の構成を持ったパンチ部ユニットの結合部
60・・・パンチ部30の先端の平面部に設けられた雌螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々同一の形状を有している第1のパンチ部と第2のパンチ部が、先端部から順に軸方向に連続して形成されており、第1のパンチ部と第2のパンチ部の間には凹部が設けられた構成を有することを特徴とするバリの発生を防止するパンチ。
【請求項2】
夫々同一の形状を有している第1のパンチ部と第2のパンチ部が、先端部から順に軸方向に連続して形成されており、第1のパンチ部と第2のパンチ部の間には第1の凹部が設けられ、第2のパンチ部の後部には第2の凹部が設けられた構成を有することを特徴とするバリの発生を防止するパンチ。
【請求項3】
夫々断面円形に形成された同一の形状を有している第1のパンチ部と第2のパンチ部が、先端部から順に軸方向に連続して形成されており、第1のパンチ部と第2のパンチ部の間には第1の凹部が設けられ、第2のパンチ部の後部には第2の凹部が設けられた構成を有することを特徴とするバリの発生を防止するパンチ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3において、第1のパンチ部、第2のパンチ部を夫々共通の独立ユニットとして製作し、これを組み合わせて結合することによりパンチを構成することを特徴とするバリの発生を防止するパンチ。
【請求項5】
請求項4における独立ユニットは、パンチ先端の平面部に設けられた雌螺子と、凹部の先端に設けられた雌螺子と勘合する構成を持った雄螺子の結合部を持った構成であることを特徴とするバリの発生を防止するパンチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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