説明

バリアブル印刷検品装置及びバリアブル印刷検品方法

【課題】バリアブル印刷の検品を適切に実行することができるバリアブル印刷検品装置及びバリアブル印刷検品方法を提供する。
【解決手段】バリアブル印刷の印刷物を検品するバリアブル印刷検品装置であって、バリアブル印刷の固定領域及びバリアブル領域にオブジェクトを合成して合成画像を生成する画像合成部と、前記合成画像を用紙に印刷して印刷物を作成する印刷部と、前記印刷物を読み取ってスキャン画像を出力する画像読取部と、前記合成画像と前記スキャン画像とを比較した結果に基づいて、前記印刷物の良否を判定する検品部と、を備え、前記検品部は、前記固定領域に合成されたオブジェクトを比較の対象とし、当該固定領域を第1の判定基準に従って比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアブル印刷の印刷物を検品するバリアブル印刷検品装置及びバリアブル印刷検品方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、月次の請求書や利用明細書のドキュメントに取引情報とプロモーション広告を組み合わせて印刷し郵送する手法(Transaction Mail Promotion:いわゆるトランスプロモ)が普及してきている。このトランスプロモにはバリアブル印刷が用いられており、バリアブル印刷では、再利用オブジェクトをキャッシュメモリ内で保持し、再利用することで処理効率を上げている。
【0003】
このようにバリアブル印刷では、ユーザ毎に出力される印刷物の構成が異なるため、ユーザ毎に適切な画像が適切な位置に配置されているか、各印刷物が適切に印刷されているかを検品する必要があり、この検品作業に膨大な手間がかかってしまう。このような背景から、バリアブル印刷の検品に関して様々な方法が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、ユーザデータに基づいて印刷物毎に識別情報を生成する第1の識別情報生成手段と、前記識別情報を印刷可能な識別画像に変換する識別情報変換手段と、前記ユーザデータとフォームとを用いて、前記識別画像を付した前記印刷物をオーバレイ印刷するための処理を行うバリアブル印刷手段と、前記ユーザデータと前記識別情報とを関連付けたリストを生成して印刷出力するための処理を行うリスト印刷手段とを具備する画像形成装置と、前記識別画像を読み取る識別画像読み取り手段と、前記識別画像を識別情報に変換して検品を行う検品処理手段と、を具備する検品装置と、を備える印刷物検品システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−109117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の方法は、ユーザ毎に適切な画像が適切な位置に配置されているかを検品するための方法であるが、各印刷物が適切に印刷されているかを検品するためには、用紙に印刷された画像を比較して良否を判定する必要がある。
【0007】
ここで、バリアブル印刷は、全てのユーザに共通する領域(固定領域と呼ぶ。)とユーザ毎に変化する領域(バリアブル領域と呼ぶ。)とその他の領域(余白領域と呼ぶ。)とで構成されるが、各々の領域はバリアブル印刷における役割が異なるため、各々の領域に配置される文字や画像に求められる画質も異なる。
【0008】
例えば、固定領域に合成される文字や画像は、全ての印刷物に印刷されるものであり、基準となる画像があるため、画質の良し悪しがバリアブル印刷の見栄えに大きく影響すると考えられる。一方、バリアブル領域に合成される文字や画像は、各ユーザの印刷物のみに印刷されるものであり、基準となる画像がないか、若しくは、基準となる画像が多数となるため、画質の良し悪しはバリアブル印刷の見栄えにあまり影響しないと考えられる。また、固定領域に合成される文字は、ビットずれがあると見栄えが著しく悪化するが、固定領域に合成される画像は、ビットずれがあっても見栄えはあまり悪化しないと考えられる。
【0009】
このように、領域の種類やその領域に合成されるオブジェクトの種類に応じて、見栄えに対する影響の程度が異なるため、領域の種類やオブジェクトの種類に応じた適切な基準で良否を判定することが好ましい。
【0010】
しかしながら、従来は画一的な基準で判定していたため、例えば、単純な1ビットずれや人間の目では差異のない濃度差など、実際上は問題のない印刷物がNGと判定されてしまったり、逆に、問題のある印刷物がOKと判定されてしまう場合があり、バリアブル印刷の検品を適切に実行することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、バリアブル印刷の検品を適切に実行することができるバリアブル印刷検品装置及びバリアブル印刷検品方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、バリアブル印刷の印刷物を検品するバリアブル印刷検品装置であって、バリアブル印刷の固定領域及びバリアブル領域にオブジェクトを合成して合成画像を生成する画像合成部と、前記合成画像を用紙に印刷して印刷物を作成する印刷部と、前記印刷物を読み取ってスキャン画像を出力する画像読取部と、前記合成画像と前記スキャン画像とを比較した結果に基づいて、前記印刷物の良否を判定する検品部と、を備え、前記検品部は、前記固定領域に合成されたオブジェクトを比較の対象とし、当該固定領域を第1の判定基準に従って比較、若しくは、前記固定領域は、第1の判定基準に従って比較し、前記バリアブル領域は、前記第1の判定基準とは異なる第2の判定基準に従って比較するものである。
【0013】
また、本発明は、バリアブル印刷の印刷物を検品するバリアブル印刷検品方法であって、バリアブル印刷の固定領域及びバリアブル領域にオブジェクトの画像を合成して合成画像を生成する画像合成ステップと、前記合成画像を用紙に印刷して印刷物を作成する印刷ステップと、前記印刷物を読み取ってスキャン画像を出力する画像読取ステップと、前記合成画像と前記スキャン画像とを比較した結果に基づいて、前記印刷物の良否を判定する検品ステップと、を有し、前記検品ステップでは、前記固定領域に合成されたオブジェクトを比較の対象とし、当該固定領域を第1の判定基準に従って比較、若しくは、前記固定領域は、第1の判定基準に従って比較し、前記バリアブル領域は、前記第1の判定基準とは異なる第2の判定基準に従って比較するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバリアブル印刷検品装置及びバリアブル印刷検品方法によれば、バリアブル印刷の検品を適切に実行することができる。
【0015】
その理由は、バリアブル印刷データに基づいて各領域に各オブジェクトを合成した合成画像と、合成画像を印刷した印刷物から読み取ったスキャン画像と、を比較した結果に基づいて、印刷物の良否を判定する際に、固定領域を比較の対象とし、バリアブル領域を比較の対象から外すからである。また、固定領域とバリアブル領域とを異なる判定基準に従って比較するからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係るバリアブル印刷システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例に係るバリアブル印刷データ生成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係るバリアブル印刷検品装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施例に係る正解印刷レイアウトの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係るバリアブル印刷検品装置の処理(検品処理の概要)を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の一実施例に係るバリアブル印刷検品装置の処理(図5の正解画像登録処理)を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の一実施例に係るバリアブル印刷検品装置の処理(図5の検品画像登録処理)を示すフローチャート図である。
【図8】本発明の一実施例に係るバリアブル印刷検品装置の処理(図5の検品処理)を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
背景技術で示したように、バリアブル印刷では、領域の種類やその領域に合成されるオブジェクトの種類に応じて、見栄えに対する影響の程度が異なるため、領域の種類やオブジェクトの種類に応じた適切な基準で良否を判定することが求められるが、従来は画一的な基準で判定していたため、バリアブル印刷の検品を適切に実行することができないという問題があった。
【0018】
そこで、本発明の一実施の形態では、バリアブル印刷データに基づいて各領域に各オブジェクトを合成した画像(正解画像)と、合成画像を印刷した印刷物をスキャンした画像(検品画像)と、を比較した結果に基づいて、印刷物の良否を判定する際に、固定領域を比較の対象とし、バリアブル領域を比較の対象から外して、当該固定領域を第1の判定基準に従って比較したり、固定領域を第1の判定基準に従って比較すると共に、バリアブル領域を第1の判定基準とは異なる第2の判定基準に従って比較したりする。また、印刷物の良否判定を行った結果の傾向を統計的に解析し、各判定基準の設定値を再調整するようにフィードバックする。
【0019】
これらにより、バリアブル印刷の検品を適切に実行することができ、自動検品する結果をより人間の感覚に近づかせることが可能となる。
【実施例】
【0020】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係るバリアブル印刷検品装置及びバリアブル印刷検品方法について、図1乃至図8を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例に係るバリアブル印刷システムの構成を模式的に示すブロック図であり、図2は、バリアブル印刷データ生成装置の構成を示すブロック図、図3は、バリアブル印刷検品装置の構成を示すブロック図である。また、図4は、正解印刷レイアウトの一例を示す図であり、図5乃至図8は、本実施例のバリアブル印刷検品装置の処理を示すフローチャート図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例のバリアブル印刷システム10は、バリアブル言語の印刷データを生成するバリアブル印刷データ生成装置20と、バリアブル言語の印刷データを解析して印刷物を出力すると共に、印刷物の検品を行うバリアブル印刷検品装置30(バリアブル印刷装置)とから構成され、バリアブル印刷データ生成装置20とバリアブル印刷検品装置30はLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークで接続されている。
【0022】
なお、本実施例では、バリアブル印刷検品装置30で印刷物の出力及び検品を行う構成とするが、印刷物を出力する装置と印刷物を検品する装置とを別々の装置として構成してもよい。また、本実施例では、バリアブル印刷検品装置30でバリアブル言語の印刷データを解析してページ毎のイメージデータを生成し、ページ毎のイメージデータに基づいて印刷を実行する構成とするが、バリアブル言語の印刷データを解析してページ毎のイメージデータを生成する印刷制御装置(コントローラ)を設け、印刷制御装置からバリアブル印刷検品装置30にページ毎のイメージデータを送信する構成としてもよい。以下、各装置について詳細に説明する。
【0023】
[バリアブル印刷データ生成装置]
バリアブル印刷データ生成装置20は、制御部21、レイアウト制御編集部22、バリアブル印刷制御部23、内部DB操作部24、バリアブル印刷データ生成部25、通信インターフェース部26などを備える。
【0024】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などで構成され、ROMやHDDに記憶されたプログラムをRAMに展開し、CPUで実行する。また、HDDには、バリアブル印刷におけるオブジェクトの配置を規定するレイアウトデータとラスタライズ前の画像データとユーザ情報を含む顧客データベースと後述するページイメージ内部DBなどが記憶される。
【0025】
レイアウト制御編集部22は、レイアウトデータを作成・編集し、HDDに保存する。レイアウトデータには、バリアブル印刷データの部品を埋め込むレイアウト枠と画像データをそのレイアウト枠に埋め込むための制御情報とが含まれている。
【0026】
バリアブル印刷制御部23は、HDDにある顧客データベースの項目と指定されたレイアウトデータのレイアウト枠とのリンクを行い、ページイメージ内部DBを作成する。
【0027】
内部DB操作部24は、ページイメージ内部DBをソート/ループ化するなどのDB操作をする。このページイメージ内部DBを基にバリアブル印刷データは生成される。
【0028】
バリアブル印刷データ生成部25は、内部DB操作部24で処理されたページイメージ内部DBを使いバリアブル印刷データを生成する。
【0029】
通信インターフェース部26は、NIC(Network Interface Card)やモデムなどであり、バリアブル印刷データ生成装置20を通信ネットワークに接続し、バリアブル印刷検品装置30との通信処理を行う。
【0030】
[バリアブル印刷検品装置]
バリアブル印刷検品装置30は、ネットワークプリンタや複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)などの画像形成装置であり、制御部31、オブジェクト管理部32、バリアブル言語解析部33、画像RIP(Raster Image Processor)部34、画像合成部35、印刷部36、画像読取部37、検品部38、表示操作部39、通信インターフェース部40などを備える。
【0031】
制御部31は、CPU、ROMやRAMなどのメモリ、HDDなどで構成され、ROMやHDDに記憶されたプログラムをRAMに展開し、CPUで実行する。RAMには、再利用オブジェクトを格納するキャッシュメモリと再利用オブジェクト名を管理する再利用オブジェクト管理テーブルを格納する領域、画像合成を行う作業領域、及び合成した画像を格納するフレームバッファ領域がある。
【0032】
オブジェクト管理部32は、再利用オブジェクトをキャッシュメモリに保存し、オブジェクト名を再利用オブジェクト管理テーブルに登録する。また、登録されている再利用オブジェクトを再利用オブジェクト名で取り出す機能を備えている。
【0033】
バリアブル言語解析部33は、バリアブル印刷データ生成装置20から送信されたバリアブル印刷データを解析し、各レイアウト枠に各オブジェクトを合成するための情報(ページ合成情報と呼ぶ。)を生成する。
【0034】
画像RIP部34は、オブジェクトとして指定された画像データなどをラスタライズする。
【0035】
画像合成部35は、バリアブル言語解析部33にて生成したページ合成情報に基づいて、各レイアウト枠に各オブジェクトを合成して合成画像データを生成する。その際、再利用オブジェクトが指定されている場合は、オブジェクト管理部32にオブジェクトの取り出し要求を出し、受け取ったオブジェクトを使い合成する。また、画像合成部35は、合成画像の各画素のオブジェクトが文字であるか画像であるかを示すタグビットデータを生成する。
【0036】
印刷部36は、電子写真方式や静電記録方式等の作像プロセスを利用した画像形成のために必要な要素、すなわち、帯電装置、感光体ドラム、露光装置、転写ローラ、転写ベルト、定着装置などで構成される。具体的には、帯電装置により一様に帯電された感光体ドラムに露光装置から画像データに応じた光を照射して静電潜像を形成し、現像装置で静電潜像にトナーを付着させてトナー像として顕像化し、そのトナー像を中間転写ベルトを介して感光体ドラム上から用紙に転写し、その後、定着装置で加熱及び加圧することによりトナー像を用紙上に定着させる処理を行う。
【0037】
画像読取部37は、印刷部36で印刷した印刷物から画像を光学的に読み取る部分であり、印刷物を走査する光源と、印刷物で反射された光を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Devices)等のイメージセンサと、電気信号をA/D変換するA/D変換器等により構成される。
【0038】
検品部38は、画像合成部35で合成した合成画像(正解画像と呼ぶ。)と、合成画像に基づいて印刷した印刷物を画像読取部37で読み取ったスキャン画像(検品画像と呼ぶ。)と、を比較し、その比較結果に基づいて、印刷物の良否を判定する際に、固定領域を比較の対象とし、バリアブル領域を比較の対象から外したり、固定領域とバリアブル領域とを異なる判定基準に従って比較したりする。
【0039】
表示操作部39は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(electroluminescence)ディスプレイ上に、透明電極が格子状に配置された感圧式の操作部(タッチパネル)を設けて構成され、固定領域/バリアブル領域/余白領域、文字/画像の各々に対する判定基準を設定する。
【0040】
通信インターフェース部40は、NICやモデムなどであり、バリアブル印刷検品装置30を通信ネットワークに接続し、バリアブル印刷データ生成装置20との通信処理を行う。
【0041】
なお、図3では、オブジェクト管理部32、バリアブル言語解析部33、画像RIP部34、画像合成部35、検品部38などをハードウェアとして構成したが、バリアブル印刷検品装置30を上記手段として機能させるプログラムとして構成し、当該プログラムを制御部31上で動作させる構成としてもよい。
【0042】
次に、バリアブル印刷データ生成装置20の動作について説明する。
【0043】
バリアブル印刷データ生成装置20は、ユーザの印刷指示によりレイアウトを特定し、特定したレイアウトにそれぞれ画像を割り当てるために、顧客データベースからレコードを1件取り出し、レイアウト枠に適用する。次に、画像をレイアウトの指示されたフィールドにマッピングし、バリアブル印刷データを生成する。そして、この処理を1ページの合成が完了するまで繰り返す。
【0044】
1ページの合成が完了したら、印刷物を識別するための識別情報や各フィールドにマッピングした画像のファイル名などをバーコード化し、そのページに合成するようにバリアブル印刷データに追加する。そして、この処理を顧客データベースが終了するまで繰り返し、顧客データベースが終了したら、生成したバリアブル印刷データをバリアブル印刷検品装置30へ転送する。
【0045】
上記手順で作成されたバリアブル印刷のレイアウト(正解印刷レイアウト)は図4のようになり、バリアブル領域には、バリアブルオブジェクトとして登録された文字や画像が挿入され、固定文字領域には、再利用オブジェクトとして登録された文字が挿入され、固定画像領域には、再利用オブジェクトとして登録された画像が挿入され、その他の領域が余白領域となる。
【0046】
次に、バリアブル印刷検品装置30の動作について説明する。
【0047】
バリアブル印刷検品装置30は、バリアブル印刷データ生成装置20からバリアブル印刷データを受信し、バリアブル言語解析部33はバリアブル印刷データを解析し、画像RIP部34はオブジェクトとして指定された画像データをRIPする。バリアブル印刷データの解析が1ページ分終了したら、画像合成部35で1ページ分の画像合成を行い、この処理を繰り返す。
【0048】
次に、バリアブル印刷検品装置30は、図5乃至図8のフローチャート図に従って、印刷物の検品処理を行う。
【0049】
図5に示すように、バリアブル印刷検品装置30は、正解画像登録処理を行う(S110)。図6は、この正解画像登録処理の詳細を示しており、まず、画像合成部35で合成した各ページの合成画像を正解画像としてRAMやHDDに記憶する(S111)。
【0050】
その際、バリアブル言語解析部33で解析した結果に基づいて、正解画像中の固定領域とバリアブル領域と余白領域を判別すると共に、バリアブル領域に合成される文字列や画像データを特定する。また、画像合成部35で合成画像と共に生成されるタグビットデータに基づいて、各々の固定領域及びバリアブル領域に合成されたオブジェクトが文字であるか画像であるかを判別する。そして、各領域の種別とその領域の位置情報(例えば、座標)とその領域に合成されるオブジェクトの種別、文字列、画像データのファイル名などの情報(これらを総称して領域情報と呼ぶ。)をRAMやHDDに記憶する(S112)。
【0051】
なお、本実施例では、正解画像として画像合成部35で合成した合成画像を使用するが、検品対象となる印刷物の中から選択した1つを試し印刷し、その試し印刷の印刷物を画像読取部37でスキャンしたスキャン画像を使用することもできる。その場合は、各印刷物のバリアブル領域に合成される画像を判別するために、領域情報として、画像RIP部34でバリアブルオブジェクトをラスタライズした画像データなどをRAMやHDDに記憶する必要がある。
【0052】
図5に戻って、バリアブル印刷検品装置30は、検品画像登録処理を行う(S120)。図7は、この検品画像登録処理の詳細を示しており、まず、検品対象となるバリアブル印刷物を印刷部46で印刷する(S121)。次に、画像読取部37を用いて印刷物をスキャンし(S122)、読み取った画像を検品画像としてRAMやHDDに記憶する(S123)。
【0053】
その際、バリアブル領域の文字をOCR(Optical Character Reader)で読み取った文字列やバリアブル領域の画像の情報(例えば、印刷物に印刷されたバーコードから読み取った画像のファイル名)などもRAMやHDDに記憶する(S124)。
【0054】
再び、図5に戻って、バリアブル印刷検品装置30は、検品処理を行う(S130)。図8は、この検品処理の詳細を示しており、まず、バーコードから識別番号を読み取って印刷物を特定し、その印刷物のレイアウトを認識する(S131)。次に、領域を選択し、予め記憶した領域情報に基づいて、その領域が余白領域であるか、固定領域であるか、バリアブル領域であるかを判断する(S132)。
【0055】
S132で余白領域と判断した場合は、余白領域に対して予め設定された判定基準に従って、正解画像と検品画像の誤差を算出する。例えば、余白領域は濃度差やノイズが目立つと考えられることから、正解画像及び検品画像に対して、その余白領域の平均濃度差・RGB各濃度差、余白領域のノイズ(ゴミ・汚れ)のサイズ、数、平均濃度差・RGB各濃度差などを算出して比較し(S133)、その誤差をポイントとして加算する(S142)。
【0056】
S132で固定領域と判断した場合は、予め記憶した領域情報に基づいて、その固定領域に合成されたオブジェクトが文字であるか画像であるかを判断し(S134)、文字であれば、固定領域の文字に対して予め設定された判定基準に従って、正解画像と検品画像の誤差を算出する。例えば、固定文字領域は、ビットずれや濃度差、ノイズが目立つと考えられることから、正解画像及び検品画像に対して、その領域内の文字のビットずれ数(上下、左右)、文字部の平均濃度差・RGB各濃度差、背景部の平均濃度差・RGB各濃度差、背景部のノイズ(ゴミ・汚れ)のサイズ、数、平均濃度差・RGB各濃度差などを算出して比較し(S135)、その誤差をポイントとして加算する(S142)。
【0057】
固定領域に合成されたオブジェクトが画像の場合は、固定領域の画像に対して予め設定された判定基準に従って、正解画像と検品画像の誤差を算出する。例えば、固定画像領域は、ビットずれは目立たないが、濃度差やノイズは目立つと考えられることから、正解画像及び検品画像に対して、その領域内の、画像の平均濃度差・RGB各濃度差、画像部のノイズ(ゴミ・汚れ)のサイズ、数、平均濃度差・RGB各濃度差などを算出して比較し(S136)、その誤差をポイントとして加算する(S142)。
【0058】
S132でバリアブル領域と判断した場合は、予め記憶した領域情報に基づいて、そのバリアブル領域に合成されたオブジェクトが文字であるか画像であるかを判断し(S137)、文字であれば、領域情報に基づいて、文字列を特定し(S138)、バリアブル領域の文字に対して予め設定された判定基準に従って、正解画像と検品画像の誤差を算出する。例えば、バリアブル領域の文字は、ビットずれや濃度差、ノイズは目立たないと考えられることから、正解画像及び検品画像に対して、文字列の正否、文字部のフォントの種類・サイズ・色などを比較し(S139)、その誤差をポイントとして加算する(S142)。
【0059】
バリアブル領域に合成されたオブジェクトが画像の場合は、予め記憶した領域情報に基づいて、画像を特定し(S140)、バリアブル領域の画像に対して予め設定された判定基準に従って、正解画像と検品画像の誤差を算出する。例えば、バリアブル領域の画像は、ビットずれやノイズは目立たないと考えられることから、正解画像及び検品画像に対して、画像の正否、画像の平均濃度差・RGB各濃度差などを算出して比較し(S141)、その誤差をポイントとして加算する(S142)。
【0060】
なお、ここでは、バリアブル領域に対しても正解画像と検品画像とを比較しているが、上述したように、バリアブル領域に合成される文字や画像は、各ユーザの印刷物のみに印刷されるものであり、基準となる画像がないか、若しくは、基準となる画像が多数となるため、画質の良し悪しはバリアブル印刷の見栄えにあまり影響しないと考えられることから、バリアブル領域を比較の対象から外すこともできる。また、余白領域も、面積が小さい場合や全面が白色(用紙色)の場合は、画質の良し悪しはバリアブル印刷の見栄えにあまり影響しないと考えられることから、余白領域を比較の対象から外すこともできる。
【0061】
次に、全領域に対して、S132〜S142の処理を繰り返した後、上記誤差ポイントに基づいて検品結果がOKかNGかを判断する。そして、判断結果(OK/NG)を登録し(S143)、検品対象印刷物の検品処理を終了する。
【0062】
上記検品の判定に際して、各算出値の合計限界値を予め定義することができ、各算出値の合計が合計限界値を超えた場合は、検品結果をNGと判定する。この合計限界値は、任意の領域の組み合わせにより、それぞれ限界値を設定してもよいし、各算出値をパラメータに応じて重み付けを行った上で合計してもよい。また、特定の算出値のみを対象とした限界値、または、算出値をパラメータとした任意の演算結果を設定してもよい。例えば、余白領域に対して、ノイズのサイズ×数の合計が一定値を超えた場合のみNGとするように定義することもできる。
【0063】
また、各領域のRGB各色要素をCMYKに変化し、正解画像との濃度差に対して、例えば、K+C×0.8+M×0.5+Y×0.2をその領域の誤差として定義してもよい。これにより、濃度差の各色要素が人間の目に影響を与える度合いに応じて誤差を定義することが可能となる。
【0064】
また、各パラメータに対する限界値は、初期値を設定することができ、任意に修正することができる。
【0065】
また、検品の品質に応じて、限界値を別途設定することができる。例えば、高品質を要求される高価な印刷物を対象とした検品であれば限界値を厳しく(低く)設定し、低品質で良い安価な印刷物の場合は、限界値を緩く(高く)設定することができる。同様に、検品する対象に従って各パラメータの限界値を変えて設定することができる。例えば、写真の画像を対象とした印刷物では、濃度差に対する限界値を厳しくし、文字を主とする印刷物では、濃度差の限界値を甘くすることができる。
【0066】
また、領域の大きさや位置によって、限界値を設定することができる。
【0067】
このように、領域毎に正解画像と検品画像の誤差を算出し、領域に応じて異なる判定基準で良否を判定することにより、実際上は問題のない印刷物がNGと判定されたり、逆に、問題のある印刷物がOKと判定されたりすることがなくなり、バリアブル印刷物を適正に検品することができる。
【0068】
以上、バリアブル印刷検品装置30における検品の基本動作について説明したが、検品判定を行った結果を人間が再チェックし、その結果の傾向を統計的に解析し、各限界値の設定値を再調整するようにフィードバックすることもできる。このフィードバックの方法としては、以下のような例が考えられる。
【0069】
スキャン画像を表示操作部39などの画面に表示し、合否判定結果と共に、スキャン画像上に、合否判定の主要因となった領域と理由(領域とパラメータの種別)を図示する。検品担当者は画面表示を元に結果確認を行い(必要に応じて、実際の印刷物を確認し)、再判定を行う。再判定により、合否結果が変更された場合は、どの領域のパラメータが主要因であるかを入力する。入力された領域とパラメータを元に、ベイズ理論等の統計的解析手法による演算処理を用いて、領域ごとに各限界値をフィードバックする。そして、検品担当者の判定が領域の大きさや位置によってどのような傾向があるかを学習し、その学習結果を判定時の重み付けにフィードバックする。例えば、面積が大きい領域や用紙の中央に位置する領域は、判定基準をより厳しくするなどの処理を行う。
【0070】
さらに、判定基準の似通った領域を学習し、それらを自動的に合成、分割する。つまり、ある領域Aに対する判定の傾向が、領域Aに隣接する任意の領域Bに対する判定傾向とほぼ同一であることを検出した場合、自動的に、領域Aと任意の領域Bを合成して、ひとつの領域A’として扱うことが可能となる。
【0071】
上記の繰り返しにより、限界値の設定値を、より検品担当者の人間的感覚に近づけることができ、バリアブル印刷物を適正に検品することができる。
【0072】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成や制御は適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、バリアブル印刷データに基づいて印刷する機能と印刷物を読み取る機能とを備えたバリアブル印刷検査装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 バリアブル印刷システム
20 バリアブル印刷データ生成装置
21 制御部
22 レイアウト制御編集部
23 バリアブル印刷制御部
24 内部DB操作部
25 バリアブル印刷データ生成部
26 通信インターフェース部
30 バリアブル印刷検品装置
31 制御部
32 オブジェクト管理部
33 バリアブル言語解析部
34 画像RIP部
35 画像合成部
36 印刷部
37 画像読取部
38 検品部
39 表示操作部
40 通信インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアブル印刷の印刷物を検品するバリアブル印刷検品装置であって、
バリアブル印刷の固定領域及びバリアブル領域にオブジェクトを合成して合成画像を生成する画像合成部と、
前記合成画像を用紙に印刷して印刷物を作成する印刷部と、
前記印刷物を読み取ってスキャン画像を出力する画像読取部と、
前記合成画像と前記スキャン画像とを比較した結果に基づいて、前記印刷物の良否を判定する検品部と、を備え、
前記検品部は、前記固定領域を比較の対象とし、当該固定領域を第1の判定基準に従って比較する、ことを特徴とするバリアブル印刷検品装置。
【請求項2】
バリアブル印刷の印刷物を検品するバリアブル印刷検品装置であって、
バリアブル印刷の固定領域及びバリアブル領域にオブジェクトの画像を合成して合成画像を生成する画像合成部と、
前記合成画像に基づいて印刷物を作成する印刷部と、
前記印刷物を読み取ってスキャン画像を出力する画像読取部と、
前記合成画像と前記スキャン画像とを比較した結果に基づいて、前記印刷物の良否を判定する検品部と、を備え、
前記検品部は、前記固定領域は、第1の判定基準に従って比較し、前記バリアブル領域は、前記第1の判定基準とは異なる第2の判定基準に従って比較する、ことを特徴とするバリアブル印刷検品装置。
【請求項3】
前記第2の判定基準は、前記バリアブル領域に合成されたオブジェクトが文字か画像かに応じて異なる、ことを特徴とする請求項2に記載のバリアブル印刷検品装置。
【請求項4】
前記第1の判定基準は、前記固定領域に合成されたオブジェクトが文字か画像かに応じて異なる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のバリアブル印刷検品装置。
【請求項5】
前記検品部は、更に、前記固定領域及び前記バリアブル領域以外の余白領域を比較の対象とし、当該余白領域を第3の判定基準に従って比較する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のバリアブル印刷検品装置。
【請求項6】
バリアブル印刷の印刷物を検品するバリアブル印刷検品方法であって、
バリアブル印刷の固定領域及びバリアブル領域にオブジェクトの画像を合成して合成画像を生成する画像合成ステップと、
前記合成画像を用紙に印刷して印刷物を作成する印刷ステップと、
前記印刷物を読み取ってスキャン画像を出力する画像読取ステップと、
前記合成画像と前記スキャン画像とを比較した結果に基づいて、前記印刷物の良否を判定する検品ステップと、を有し、
前記検品ステップでは、前記固定領域を比較の対象とし、当該固定領域を第1の判定基準に従って比較する、ことを特徴とするバリアブル印刷検品方法。
【請求項7】
バリアブル印刷の印刷物を検品するバリアブル印刷検品方法であって、
バリアブル印刷の固定領域及びバリアブル領域にオブジェクトの画像を合成して合成画像を生成する画像合成ステップと、
前記合成画像に基づいて印刷物を作成する印刷ステップと、
前記印刷物を読み取ってスキャン画像を出力する画像読取ステップと、
前記合成画像と前記スキャン画像とを比較した結果に基づいて、前記印刷物の良否を判定する検品ステップと、を有し、
前記検品ステップでは、前記固定領域は、第1の判定基準に従って比較し、前記バリアブル領域は、前記第1の判定基準とは異なる第2の判定基準に従って比較する、ことを特徴とするバリアブル印刷検品方法。
【請求項8】
前記検品ステップでは、前記バリアブル領域に合成されたオブジェクトが文字か画像かに応じて、前記第2の判定基準を変更する、ことを特徴とする請求項7に記載のバリアブル印刷検品方法。
【請求項9】
前記検品ステップでは、前記固定領域に合成されたオブジェクトが文字か画像かに応じて、前記第1の判定基準を変更する、ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一に記載のバリアブル印刷検品方法。
【請求項10】
前記検品ステップでは、更に、前記固定領域及び前記バリアブル領域以外の余白領域を比較の対象とし、当該余白領域を第3の判定基準に従って比較する、ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一に記載のバリアブル印刷検品方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−876(P2012−876A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138094(P2010−138094)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】