説明

バリスタの製造方法

【課題】良好なバリスタ特性を維持しつつ、外部電極や抵抗体のサイズが十分に微細化されたバリスタを容易に製造する方法を提供すること。
【解決手段】バリスタ素体10の一面10a上に、互いに対向する外部電極32,34からなる外部電極対30を複数形成する工程と、複数の外部電極対30同士及び外部電極32と外部電極34とが連結されるようにバリスタ素体10の一面10a上に抵抗体を形成する工程と、隣り合う外部電極対30の間の領域に形成された抵抗体をレーザ光照射により除去して接続体20を形成する工程とを有する。バリスタ素体10は、主成分としてZnO、副成分としてCa酸化物とSi酸化物と希土類金属の酸化物とを含み、主成分全体に対してCa酸化物をCa原子に換算した比率Xが2〜80原子%、Si酸化物をSi原子に換算した比率Yが1〜40原子%であり、1≦X/Y<3を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バリスタは、各種制御機器、通信機器、及びこれらの部品を静電気などの外来サージ(異常電圧)やノイズから保護するために使用されている。
【0003】
このバリスタと抵抗体の両方を実装する場合、バリスタと抵抗体とを直列接続して実装すると、プリント基板に2つの素子が別々に実装されることになるため、大きな実装スペースが必要となる。このため、各素子をできるだけ狭いスペースに実装する、いわゆる高密度実装に対応することが困難となる。そこで、高密度実装を実現するため、バリスタ素体と抵抗体とを一体化したバリスタが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このように、バリスタ素体と抵抗体とを一体化したバリスタでは、バリスタ素体の組成や外部電極の組成を調整することによって、良好なバリスタ特性を維持しつつバリスタ素体と外部電極との接着強度を改善することが試みられている。
【特許文献1】特開2006−287029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなバリスタでは、バリスタ素体の一面上に設けられる外部電極及び抵抗体は、外部電極及び抵抗体形成用のペーストをそれぞれ印刷し、焼付けを行うことによって形成される。最近、これらの外部電極の回路数が増加するに伴って、外部電極及び抵抗体の形状が小さくなり、また、隣接する外部電極及び抵抗体の間のスペースも小さくなっている。このため、上述のような印刷及び焼付けを行う製造方法では、外部電極や抵抗体の幅、及び隣接する外部電極及び抵抗体の間隔が小さくなるほど、精密な印刷技術が必要である。
【0006】
一方、電子回路は、一層の微細化が要求されており、バリスタについても良好なバリスタ特性を有することに加えて、構造を微細化することが求められている。しかしながら、構造を微細化した場合、印刷技術を用いた従来の抵抗体の形成方法では、ライン性に優れた形状を作製することは困難であり、外部電極間の抵抗値のバラつきや表面絶縁抵抗の低下が懸念される。このため、外部電極や抵抗体の幅、及び隣接する外部電極間の間隔が100μm以下であるような微細構造を形成する場合でも、十分な信頼性で外部電極間に抵抗体を形成できる方法を確立することが求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好なバリスタ特性を維持しつつ、外部電極や抵抗体のサイズが十分に微細化されたバリスタを容易に製造可能なバリスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、バリスタ素体の一面上に、第1の外部電極と第1の外部電極に対向するように設けられる第2の外部電極とからなる外部電極対を、所定方向に配列するように複数形成する外部電極形成工程と、複数の外部電極対が互いに連結されるとともに、当該外部電極対における第1の外部電極と第2の外部電極とが互いに連結されるように、バリスタ素体の一面上に抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、前記抵抗体のうち、隣り合う前記外部電極対の間の領域に形成された部分をレーザ光の照射により除去して、第1の外部電極と第2の外部電極と第1の外部電極及び第2の外部電極を連結する抵抗体とを有する接続体を形成する除去工程とを有しており、バリスタ素体が、主成分として酸化亜鉛を含み、副成分としてカルシウム酸化物とケイ素酸化物と希土類金属の酸化物とを含んでおり、主成分全体に対するカルシウム酸化物のカルシウム原子換算の比率Xが2〜80原子%、主成分全体に対するケイ素酸化物のケイ素原子換算の比率Yが1〜40原子%であり、Yに対するXの比率(X/Y)が下記式(1)を満たすバリスタの製造方法を提供する。
1≦X/Y<3 (1)
【0009】
本発明のバリスタの製造方法によれば、外部電極や抵抗体のサイズや間隔が微細化されても、優れた表面絶縁抵抗を有するとともに外部電極間の抵抗値のばらつきが十分に抑制されたバリスタ、すなわち良好なバリスタ特性を有するバリスタを容易に製造することができる。このような効果が得られる理由は以下の通りである。本発明のバリスタの製造方法は、初期表面絶縁抵抗の大きなバリスタ素体上に形成された一対の外部電極、すなわち第1の外部電極と第2の外部電極とを連結する抵抗体を、レーザ光を照射することによって形成している。ここで、上述の組成を有するバリスタ素体を用いることにより、レーザ照射によりバリスタ素体が多少変質しても、バリスタ素体の表面絶縁抵抗を十分高いレベルに維持することができる。このため、外部電極の幅や間隔が微細化しても、良好なバリスタ特性を維持しつつライン性に優れた抵抗体を形成することが可能となる。
【0010】
本発明の製造方法によれば、従来のスクリーン印刷で、一対の外部電極を個別に抵抗体で連結する方法に比べて、隣接する抵抗体同士の間隔を狭くすることができる。その結果、抵抗体の幅を広くすることが可能となり、接続体が微細化されても、マイクロクラックの発生が抑制され、抵抗体の抵抗値調整、すなわちレーザ光によるトリミングを容易に行うことができる。したがって、外部電極間の抵抗値のバラつきが十分に抑制されたバリスタを得ることができる。
【0011】
本発明では、除去工程で形成された接続体における抵抗体の一部をレーザ光でトリミングするトリミング工程をさらに有することが好ましい。
【0012】
これによって、外部電極間の抵抗値のばらつきが一層抑制されたバリスタを得ることができる。
【0013】
また、本発明では、レーザ光の照射を複数回繰り返して行うことが好ましい。
【0014】
このような製造方法では、1回のみのレーザ光の照射によって抵抗体を除去する方法に比べて、1回当たりにおけるレーザ光のバリスタ素体の単位面積当たりの照射量を小さくすることができる。これによって、バリスタ素体の表面の変質や損傷を防止することができる。また、隣接する接続体間の領域に形成された抵抗体を十分に除去することができる。したがって、一層優れた表面絶縁抵抗を有するバリスタを製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好なバリスタ特性を維持しつつ、外部電極や抵抗体のサイズが十分に微細化されたバリスタを容易に製造可能なバリスタの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態のバリスタの製造方法は、バリスタ素体の内部に設けられた内部電極の引き出し線が露出している面(以下、「主面」という。)上に、第1の外部電極と第1の外部電極に対向するように設けられる第2の外部電極とからなる複数の外部電極対を、一方向に配列するように形成する外部電極形成工程と、上記一面上に設けられた全ての外部電極が連結するように、バリスタ素体の一面上に抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、隣り合う外部電極対の間の領域に形成された抵抗体をレーザ光の照射により除去して、隣り合う外部電極対同士を絶縁させるとともに、第1の外部電極と第2の外部電極と第1の外部電極及び第2の外部電極を連結する抵抗体とを有する接続体を形成する除去工程と、除去工程で形成された接続体における抵抗体の一部をレーザ光でトリミングするトリミング工程とを有する。以下、各工程の詳細について説明する。
【0018】
(外部電極形成工程)
図1は、本実施形態のバリスタの製造方法における外部電極形成工程を示す工程図である。外部電極形成工程では、バリスタ素体10の主面10a上の所定の位置に、互いに対向する第1の外部電極32と第2の外部電極34とからなる複数の外部電極対30を形成する。複数の外部電極対30は所定の間隔Lで配列している。また、第1の外部電極32及び第2の外部電極34は、それぞれバリスタ素体10の内部電極の引き出し線に対応する位置に配置されており、所定の間隔Sで対向するように主面10a上に設けられている。
【0019】
外部電極対30を形成するため、まず導電性ペーストを準備する。導電性ペーストとしては、公知のものを用いることができ、例えば、金属酸化物、Ag粒子、Pd粒子などの金属粉末、ガラスフリット、有機バインダ及び有機溶剤を混合したものが用いられる。
【0020】
次に、バリスタ素体10の一方の主面10a上に、導電性ペーストをスクリーン印刷法にて所定の位置に印刷する。この際、導電性ペーストは、バリスタ素体10の内部に配置される内部電極(図示しない)の引き出し線に対応する位置に印刷する。
【0021】
導電性ペーストを印刷した後、乾燥させ、500〜850℃で焼き付けて、外部電極対30を形成する。これによって、バリスタ素体10の主面10a上には、一方向に所定の間隔Lで配列した幅Tを有する外部電極対30が得られる。すなわち、外部電極対30は、互いに対向するように、所定の間隔Sで配置された第1の外部電極32と第2の外部電極34とから構成される。
【0022】
(抵抗体形成工程)
図2は、本実施形態のバリスタの製造方法における抵抗体形成工程を示す工程図である。抵抗体形成工程では、主面10a上に形成された複数の第1の外部電極32及び複数の第2の外部電極34の全てを連結するように、抵抗体60を形成する。
【0023】
抵抗体60を形成するためは、まず、抵抗ペーストを準備する。抵抗ペーストは公知の物を用いることができる。例えば、ガラス粉末に、一般に市販されている有機バインダ及び有機溶剤を混合したものが用いられる。ガラス粉末としては、RuOにAl−B−SiO等のガラスを混合したものを用いることができる。Sn系の抵抗ペーストとしては、SnOにAl−B−SiO等のガラスを混合したものを用いることができる。La系の抵抗ペーストとしては、LaBにAl−B−SiO等のガラスを混合したものを用いることができる。
【0024】
抵抗ペーストに用いられる有機バインダは特に限定されず、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等、各種バインダから適宜選択することができる。有機溶剤としては、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等、各種有機溶剤から適宜選択することができる。抵抗ペーストの配合比に特に制限はなく、例えば金属及び酸化物粉末の総量100質量部に対して、上記有機バインダを1〜20質量部、上記有機溶剤を1〜40質量部配合することができる。これらの配合比は、抵抗ペーストの流動性を調整するために適宜変更することができる。
【0025】
次に、複数の第1の外部電極32と複数の第2の外部電極34とを掛け渡すように、抵抗ペーストをスクリーン印刷法にて印刷する。抵抗ペースト印刷後、乾燥させ、例えば800〜900℃で焼き付けて、抵抗体60を形成する。抵抗体60は、第1の外部電極32と第2の外部電極34との間の領域と、第1の外部電極32の第2の外部電極34側の端部と、第2の外部電極34の第1の外部電極32側の端部とを覆うように形成されている。これによって、主面10a上に設けられた複数の外部電極対30が抵抗体60によって連結されている。
【0026】
本実施形態のバリスタの製造方法によれば、一つの外部電極対30を個別に連結するように抵抗ペーストを印刷して抵抗体を形成する場合に比べて、形成する抵抗体60のサイズを十分に大きくすることができる。このため、本実施形態の抵抗体形成工程では、抵抗ペーストのスクリーン印刷において、それ程高い位置精度を必要としない。したがって、本実施形態のバリスタの製造方法は、第1の外部電極32及び第2の外部電極34の幅Tや、隣接する外部電極対30の間隔Lが小さくなっても(例えば100μm以下)、第1の外部電極32と第2の外部電極34との間の抵抗値のばらつきが十分に低減されたバリスタを得ることができる。
【0027】
(除去工程)
図3は、本実施形態のバリスタの製造方法における抵抗体の除去工程を示す工程図である。除去工程では、抵抗体60のうち、隣接する外部電極対30の間の領域部分の抵抗体にレーザ光を照射して、抵抗体60の一部を除去する。
【0028】
本実施形態では、バリスタ素体10の主面10a上に形成された抵抗体60の一部を、レーザ光を照射することによって除去する。具体的には、図3のレーザ光照射線40に沿って、例えば、図3の左側のレーザ光照射線40から順番にレーザ光を照射することによって、隣り合う外部電極対30の間の領域に形成された抵抗体60の一部を削り取る。これによって、抵抗体と該抵抗体で連結された一対の外部電極とからなる接続体を形成することができる。
【0029】
レーザ光の発振装置としては、市販のレーザ光照射装置を用いることができる。レーザ光の光源は、特に限定されず、各種固体レーザ、液体レーザ、ガスレーザを用いることができる。これらのうち、YAGレーザ、またはYVO4レーザを好ましく用いることができる。また、レーザ光の出力も、形成する抵抗体の材質や厚さに応じて適宜調整することができる。
【0030】
図4は、本発明の製造方法によって得られるバリスタの一例を示す上面図である。すなわち、図4は、隣り合う外部電極対30の間の領域に形成された抵抗体60の一部を除去した後のバリスタの上面図である。バリスタ100は、バリスタ素体10と、当該バリスタ素体10の主面10a上に形成された、一対の外部電極32,34と当該一対の外部電極32,34を連結する抵抗体62とからなる複数の接続体20と、隣接する接続体20の間の領域に点在するように形成された抵抗体64とを備える。
【0031】
図5は、図4に示すバリスタ100の表面における領域Aを拡大して示す一部拡大図である。上述の通り、外部電極対30の間の領域における抵抗体60の一部を除去することによって、抵抗体62と抵抗体62によって連結される外部電極対30とからなる接続体20が形成される。接続体20における第1の外部電極32と第2の外部電極34とは、抵抗体62によって電気的に接続されている。
【0032】
隣接する接続体20同士が電気的に絶縁されていれば、図5に示すように、隣接する接続体20の間の領域Pには、抵抗体64が点在していてもよい。抵抗体64は、隣接する接続体20(抵抗体62)同士を電気的に接続しないように形成されているため、隣接する接続体20同士は、バリスタ素体10の主面10a上において電気的に絶縁されている。
【0033】
レーザ光を照射して、抵抗体60のうち、隣接する接続体20の間の領域に形成された部分を除去する際、バリスタ素体10の主面10aに直接レーザ光が照射されると、バリスタ素体10の表面が削られたり、変質層が形成されたりする傾向がある。十分に高い表面絶縁抵抗を有するバリスタ100を得るためには、レーザ光の照射に伴うバリスタ素体の変質を十分に抑制することが好ましい。このため、隣接する接続体20同士の絶縁性が維持できる範囲で、主面10aの単位面積当たりのレーザ光の照射量をできるだけ低くすることが好ましい。レーザ光の照射量は、例えば、0.1〜5.0kJ/cmとすることができる。
【0034】
除去工程では、図3に示すレーザ光照射線40に沿って、レーザ光を照射しているが、このレーザ光の照射は複数回繰り返して行うことが好ましい。これによって、1回当たりのレーザの照射量が低減され、バリスタ素体10の変質及び損傷を一層低減することができる。
【0035】
また、レーザ光照射を複数回繰り返して行う場合、単位面積あたりにおける2回目以降のレーザ光の照射量を、1回目のレーザ光の照射量よりも小さくすることが好ましい。このような方法では、1回目のレーザ光の照射は、主に領域Pにおける抵抗体60の一部を削り取るために行われ、2回目以降のレーザ光の照射は、それ以前の照射によって発生した削り残しや、削りによって生じた破片等を除去するために行うことができる。したがって、バリスタ素体10の変質や損傷をより一層低減することができる。
【0036】
本実施形態では、一対の外部電極を連結する抵抗体62を、スクリーン印刷法によって形成された大きなサイズの抵抗体60をレーザ光の照射により加工して形成している。このため、個々の外部電極対30を連結する抵抗体62をスクリーン印刷法で形成する必要がない。したがって、隣接する外部電極の間隔Lや第1の外部電極32及び第2の外部電極34の幅Tが、例えば100μm以下の小さいサイズとなった場合でも、ライン性に優れた抵抗体62を形成することができる。したがって、第1の外部電極32及び第2の外部電極34や抵抗体62のサイズ及び間隔が微細化しても、接続体20における抵抗値のばらつきを低減することができる。
【0037】
また、隣接する接続体20の間隔が小さい場合(例えば100μm以下)でも、レーザ光のスポット径が十分に小さい(25〜50μm)ため、確実に隣接する接続体同士を絶縁させることができる。このため、隣接する接続体20の抵抗値のばらつきを十分に低減することができる。
【0038】
(トリミング工程)
図6は、本実施形態のバリスタの製造方法におけるトリミング工程を示す工程図である。トリミング工程では、第1の外部電極32と第2の外部電極34とを連結する抵抗体62の一部をトリミングして、接続体20の抵抗値を調整する。すなわち、抵抗体62の一部にレーザ光を照射して、抵抗体62の一部分をトリミングにより除去してトリミング部分50を形成する。
【0039】
本実施形態におけるバリスタの製造方法では、抵抗体62をレーザ光の照射によって形成している。このため、抵抗体62をスクリーン印刷法で形成する場合に比べて、抵抗体62の幅Rを十分に大きくすることができる。したがって、トリミングによるマイクロクラックの発生を十分に抑制することができる。また、抵抗体62のトリミングを容易に行うことができ、接続体20の抵抗値のばらつきを一層低減することができる。
【0040】
上述の通り、従来のバリスタの製造方法では、一対の外部電極を連結する抵抗体62をスクリーン印刷法によって形成していた。このような製造方法では、抵抗ペーストの印刷精度の都合上、隣接する接続体同士の短絡を防止するために、隣接する抵抗体の間隔をある程度のサイズ以上に維持する必要があった。このため、抵抗体の幅Rを大きくすることができず、トリミングの位置あわせが困難であり、接続体の抵抗値の微調整ができなかった。また、トリミング時に抵抗体にマイクロクラックが発生しやすいという問題があった。本実施形態によるバリスタの製造方法を採用することによって、そのような問題を解消することができる。
【0041】
抵抗体62のトリミングに用いるレーザ光及びその光源は、上述の抵抗体除去工程と同じものを用いることができる。また、レーザの周波数、照射強度及び照射量は、抵抗体62の材質や厚みなどに応じて任意に調製可能である。
【0042】
図7は、図6のバリスタにおけるVII−VII線の断面を示す走査型電子顕微鏡写真(1000倍)である。図7に示すとおり、バリスタ素体の一面上に抵抗体が形成されている。図7の写真の両端側には、接続体を構成する抵抗体が形成されている。なお、図7に示すように、隣接する接続体(抵抗体)の間の領域(バリスタ素体の主面上)には、点状の抵抗体が形成されていてもよい。
【0043】
本実施形態のバリスタの製造方法では、トリミング工程後に、バリスタ素体10の主面10a及び接続体20を覆うように保護層(オーバーグレーズ層)を形成してもよい。保護層は、グレーズガラス(例えば、SiO、ZnO、B、Al等からなるガラス等)を印刷し、500〜700℃にて焼き付けることにより形成することができる。なお、バリスタが、接続体(抵抗体)の間に点在する抵抗体64を有していれば、アンカー効果によって、保護層とバリスタ素体との密着性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態のバリスタの製造方法は、外部電極形成工程の前に特定の組成を有するバリスタ素体を製造するバリスタ素体形成工程を有していてもよい。以下、バリスタ素体形成工程について説明する。
【0045】
(バリスタ素体形成工程)
バリスタ素体形成工程では、まず、バリスタ素体が後述する組成を満足するように、主成分である酸化亜鉛と、副成分である希土類金属の酸化物、カルシウム酸化物、ケイ素酸化物、その他の成分とを各々秤量し、各成分を混合してバリスタ原料を調製する。
【0046】
バリスタ層形成用の塗料(スラリー)としては、有機系の塗料や、水溶系の塗料を用いることができる。有機系の塗料はバリスタ原料と有機ビヒクルとを混練したものである。有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダは、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、このとき用いられる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、バリスタ層を形成する方法に応じてテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等から適宜選択することができる。
【0047】
塗料中の有機ビヒクルやバリスタ原料の含有量は、特に限定されない。例えば、塗料全体に対して、バインダが1〜10質量%程度、有機溶剤が10〜50質量%程度となるように有機ビヒクルを配合することができる。また、塗料中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含まれていてもよい。
【0048】
水溶系の塗料としては、水に水溶性バインダ、分散剤等を溶解させたものが挙げられる。水溶系バインダは、特に限定されず、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョン等から適宜選択することができる。
【0049】
上述のバリスタ層形成用の塗料(スラリー)は、上述のバリスタ原料、バインダ、溶媒(有機溶剤や水)、各種添加物等の材料を、ボールミル等を用いて混合・粉砕し、調製することができる。スラリーを作製する際の原材料の配合比は、スラリーの流動性を調整するために適宜変更することができる。
【0050】
このスラリーを、ドクターブレード法等の公知の方法により、例えばポリエチレンテレフタレートからなるフィルム上に塗布した後、乾燥して厚さ30μm程度の膜を形成する。こうして得られた膜をフィルムから剥離してグリーンシートを得る。このようなグリーンシートを複数枚作製する。
【0051】
作製したグリーンシートに、内部電極となる所定の形状の電極部分を形成する。電極部分は、例えば、酸化物、Ag粒子、Pd粒子等の金属粉末、ガラスフリット、有機バインダ及び有機溶剤を混合した導電性ペーストを、スクリーン印刷等の印刷法にて印刷し、乾燥させることにより形成することができる。
【0052】
内部電極用の導電性ペーストに用いられる有機バインダは特に限定されず、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等、各種バインダから適宜選択すればよい。有機溶剤としては、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等、各種有機溶剤から適宜選択することができる。導電性ペーストの配合比に特に制限はなく、例えば金属及び酸化物粉末の総量100質量部に対して、上記有機バインダを1〜20質量部、上記有機溶剤を1〜40質量部配合することができる。これらの配合比は、導電性ペーストの流動性を調整するために適宜変更することができる。
【0053】
図8は、シート積層体を形成する工程を示す工程図である。電極部分EL2,EL3,EL4がそれぞれ形成されたグリーンシートGS11,GS12,GS13と、電極部分が形成されていないグリーンシートGS11とを所定の順序で重ねてシート積層体であるグリーン体LS2を形成する。
【0054】
次に、グリーン体LS2に、180〜400℃、0.5〜24時間程度の加熱処理を施して脱バインダを行った後、850〜1400℃、0.5〜8時間程度の焼成を行うことによって、バリスタ素体10を得ることができる。この焼成によって、グリーン体LS2におけるグリーンシートGS11〜GS14がバリスタ層となり、電極部分EL2,EL3,EL4が内部電極となる。
【0055】
得られたバリスタ素体10の内部電極が引き出された面(主面10a)上に、上述の方法で外部電極及び抵抗体を形成することによってバリスタ100を得ることができる。
【0056】
図9は、本発明のバリスタの製造方法によって得られるバリスタ100の一例を示す模式断面図である。バリスタ素体10の主面10a上には、一対の外部電極32,34が設けられている。また、当該主面10aに接するように抵抗体62が設けられており、この抵抗体62は、該一対の外部電極32,34を連結するように設けられている。バリスタ100は、最外層に保護層(オーバーグレーズ)14を有する。保護層14は、バリスタ素体10、一対の外部電極32,34、抵抗体62を覆うように設けられている。
【0057】
本実施形態におけるバリスタ素体10は、酸化亜鉛(ZnO)を主成分として含むと共に、副成分として希土類金属の酸化物、カルシウム酸化物及びケイ素酸化物を含有する。バリスタ素体10全体に対するZnOの含有量は、優れたバリスタ特性を得る観点から、Zn換算で70〜99原子%であることが好ましい。これによって、優れたバリスタ特性と大きなサージ耐性とを高水準で両立することができる。
【0058】
バリスタ素体10に副成分として含まれる希土類金属の酸化物は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類金属を含む酸化物であることが好ましい。希土類金属の酸化物の含有量は、主成分である酸化亜鉛に対して、希土類金属元素換算で0.01〜10原子%であることが好ましい。希土類金属の酸化物の含有量が低すぎると、電圧非直線特性が発現し難くなる傾向にあり、当該含有量が高すぎると、バリスタ電圧が急激に高くなる傾向にある。上記の希土類の酸化物は、Prの酸化物であることがより好ましい。
【0059】
バリスタ素体10におけるカルシウム酸化物の含有量は、バリスタ素体10の主成分(酸化亜鉛)全体に対し、カルシウム原子換算で2〜80原子%である。また、バリスタ素体10におけるケイ素酸化物の含有量は、該主成分全体に対し、ケイ素原子換算で1〜40原子%である。また、ケイ素酸化物に対するカルシウム酸化物の比率は、それぞれケイ素原子及びカルシウム原子に換算した原子比率(Ca/Si)換算で、1以上且つ3未満である。
【0060】
上記組成を有するバリスタ素体10は、除去工程やトリミング工程において、レーザ光がバリスタ素体10の表面に照射されて変質しても、十分に高いバリスタ特性を維持することができる。本実施形態の製造方法では、初期表面絶縁抵抗の高いバリスタを用いるとともに、レーザ照射で抵抗体を除去する方法を採用しているため、構造が微細化されても、優れた表面絶縁抵抗が維持されたバリスタを容易に製造することができる。バリスタ素体10の表面絶縁抵抗は、1MΩ以上であることが好ましく、10MΩ以上であることがより好ましい。
【0061】
バリスタ素体10に含まれるカルシウム酸化物としては、CaOや、カルシウムとケイ素と酸素とを含むCaSiO,CaSiO等の複合酸化物等が挙げられる。バリスタ素体に含まれるケイ素酸化物としては、SiOや、カルシウムとケイ素と酸素とを含むCaSiO、CaSiO、ZnSiOなどの複合酸化物等が挙げられる。
【0062】
バリスタ素体10は、上述の副成分の他に、Coの酸化物、またはIIIB族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物を含有することが好ましい。好ましいIIIB族元素としては、B、Al、Ga、又はInを挙げることができる。
【0063】
Coの酸化物の含有量は、主成分全体に対し、Co元素換算で0.05〜10原子%であることが好ましい。当該含有量が0.05原子%未満の場合、所望のバリスタ電圧を得ることが困難になる傾向があり、当該含有量が10原子%を超えると、バリスタ電圧が増大すると共に電圧非直線特性が低下する傾向にある。
【0064】
IIIB族元素から選ばれる少なくとも1種の酸化物の含有量は、主成分全体に対し、選ばれたIIIB族元素に換算して、0.0005〜0.5原子%であることが好ましい。当該含有量が0.0005原子%未満である場合、バリスタ電圧が増大する傾向があり、当該含有量が0.5原子%を超えると、絶縁抵抗が低く且つバリスタ電圧が得られない傾向にある。
【0065】
バリスタ素体10は、他の副成分として、IA族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物を含有することが好ましい。好ましいIA族元素としては、Na、K、Rb、又はCsを挙げることができる。
【0066】
IA族元素から選ばれる少なくとも1種の酸化物の含有量は、主成分全体に対し、選ばれたIA族元素に換算して、5原子%未満であることが好ましい。当該含有量が5原子%以上の場合、セラミックとしての融点が下がり、焼成時に溶融してしまう傾向にある。
【0067】
バリスタ素体10は、他の副成分として、Caを除くIIA族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物を含有することが好ましい。好ましいIIA族元素としては、Mg、Sr、又はBaを挙げることができる。
【0068】
Caを除くIIA族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物の含有量は、主成分全体に対し、選ばれたIIA族元素に換算して、1原子%未満であることが好ましい。当該含有量が、1原子%以上の場合、バリスタ電圧が増大する傾向にある。
【0069】
バリスタ素体10は、他の副成分として、Cr及びMoの一方または双方を含む酸化物を含むことが好ましい。当該酸化物の含有量は、主成分全体に対して、各Cr元素及びMo元素に換算して10原子%未満であることが好ましい。当該含有量が10原子%を超える場合、バリスタ電圧が増大する傾向にある。
【0070】
外部電極32,34は、導体であり、主成分として酸化物を含有する。酸化物としては、例えばSiO,NiO,MnO,Alなどを含有することができる。外部電極32,34は、上述の酸化物の他に、金属単体を含有することが好ましい。金属単体としては、Ag、Pd、Ptなどを好適に含有することができる。
【0071】
外部電極32,34における酸化物の総含有量は、外部電極全体に対して0.01〜20質量%であることが好ましい。酸化物の総含有量が0.01質量%未満の場合、基材に対する密着強度が低い傾向があり、20質量%を超える場合、電気導電性が損なわれる傾向がある。外部電極32,34の厚みは、例えば1〜30μmとすることができる。
【0072】
抵抗体62は、RuO、SnO、LaBなどの導電性を有する酸化物、Al、B、SiOなどの酸化物、及びPd,Ag,Ptなどの金属単体を含有することができる。
【0073】
抵抗体62は、主成分として酸化物を含有しており、抵抗体62における酸化物の含有量は50〜99質量%であることが好ましい。これによって、抵抗値のバラつきを一層抑制することができる。なお、抵抗体62の厚みは、例えば1〜30μmとすることができる。
【0074】
バリスタ100は、主面10aを覆うように下地ガラス層(図示しない)を有していてもよい。このような下地ガラス層を設けることによって、レーザ照射に伴うバリスタ素体10の変質が抑制され、バリスタ特性の低下を十分に抑制することができる。この下地ガラス層は、バリスタ素体10と、一対の外部電極32,34及び抵抗体62との間に設けられる。下地ガラス層は、HfO、CaO、Al、SiO、ZnO、BaO及びBなど、ガラスに一般的に含まれる酸化物を含有することができる。なお、下地ガラス層の厚みは、例えば1〜30μmとすることができる。
【0075】
また、バリスタ100は、主面10aとは反対側の主面に、入出力端子電極として機能する外部電極とグランド端子電極として機能する外部電極とを有していてもよい。すなわち、バリスタ100は、BGA(Ball Grid Array)パッケージとされた積層型チップバリスタとすることができる。このようなバリスタは、はんだボールを用いて主面10aとは反対側の主面に設けられた各外部電極と該各外部電極に対応する外部基板のランドとを電気的及び機械的に接続することにより、外部基板に実装することができる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
以下、図面を参照しながら、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
<バリスタ素体の形成工程>
バリスタ素体を以下の手順で形成した。主成分として酸化亜鉛を、副成分として表1に示す成分を含有する粉末原料を準備した。表1の含有量は酸化亜鉛に対する比率を示す。これらの粉末原料、有機バインダ、有機溶剤、及び添加剤を、ボールミルを用いて20時間混合・粉砕してバリスタ素体用のスラリーを調製した。
【0079】
【表1】

【0080】
上記の通り調製したバリスタ素体用のスラリーを、ドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルム上に塗布した後、乾燥して厚さ30μmの膜を形成した。こうして得られた膜をフィルムから剥離して複数のグリーンシートを形成した。得られたグリーンシートの一部に、所定の形状の電極部分を形成した。電極部分は、通常の導電性ペーストをスクリーン印刷法にて印刷し、乾燥させることにより形成した。
【0081】
次に、電極部分が形成されたグリーンシートと、電極部分が形成されていないグリーンシートとを所定の順序で重ねてシート積層体であるグリーン体LS2(図8参照)を得た。
【0082】
次に、グリーン体LS2に、加熱処理を実施して脱バインダを行った後、焼成を行ってバリスタ素体を得た。このバリスタ素体の初期表面絶縁抵抗は、200MΩ以上であった。
【0083】
<外部電極の形成工程>
主成分としてAgを含み、副成分として金属酸化物を含む混合原料と、有機バインダと、有機溶剤とをボールミルを用いて20時間混合し、外部電極形成用の導電性ペーストを調製した。
【0084】
バリスタ素体10の一方の主面10a上に、上述の通り調製した導電性ペーストをスクリーン印刷法にて印刷し、乾燥させることによって、図1の外部電極対30に対応する電極部分を形成した。そして、この電極部分を850℃で焼き付けて、図1に示すように、バリスタ素体10の主面10a上に、同一方向に配列した複数の外部電極対30を形成した。なお、バリスタ素体10の他方の主面上にも、市販のAg−Pt系ペーストをスクリーン印刷法にて印刷した後、乾燥させ、800〜1100℃で焼き付けて外部電極を形成した。
【0085】
<抵抗体の形成工程>
RuO及びSiOを主成分とする金属酸化物の混合原料と、有機バインダと、有機溶剤とをボールミルを用いて20時間混合し、抵抗体形成用の抵抗ペーストを調製した。
【0086】
次に、バリスタ素体10の主面10a上に形成された全ての第1の外部電極32と全ての第2の外部電極34とを掛け渡すように、上述の通り調製した抵抗ペーストをスクリーン印刷法にて印刷した。この抵抗ペーストを乾燥させ、850℃にて焼き付けて、図2に示すように、抵抗体60を形成した。これによって、第1の外部電極32と第2の外部電極34とが、抵抗体60によって連結された。
【0087】
<抵抗体の除去工程>
市販のレーザートリミング装置を用い、抵抗体60及び外部電極対30が形成されたバリスタ素体10の主面10a上に、レーザ光を照射した。レーザ光は、図3のレーザ光照射線40に沿って、図3の上方から下方に向かって移動させながら照射した。レーザ光の照射条件(移動スピード、周波数、出力)は、表3に示す通りであった。なお、レーザ光の照射回数が複数回の場合には、レーザ光照射線40に沿って、レーザ光の照射を複数回繰り返して行った。
【0088】
レーザ光の照射によって、図4に示すような、バリスタ素体10の主面10a上に複数の接続体20が形成されたバリスタを得た。当該バリスタにおける、対向する外部電極32,34の間隔S(図1)及び外部電極32,34の幅Tは、それぞれ500μm及び150μmであった。また、隣接する外部電極対30の間隔Lは100μmであり、抵抗体62の幅Rは、150〜250μmであった。
【0089】
<トリミング工程>
次に、抵抗体62のトリミングを行った。具体的には、抵抗体の除去行程で使用したレーザートリミング装置を用いて、レーザ光を抵抗体62の所定の位置に照射して、抵抗体62の一部分を除去してトリミング部分を形成した。トリミング行程におけるレーザ光の照射条件は、周波数20kHz、出力0.50Wとした。以上の工程によって、評価用のバリスタを得た。
【0090】
(実施例2,3)
抵抗体の除去工程におけるレーザ光の照射条件を表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして評価用のバリスタを作製した。外部電極の幅T、対向する外部電極32、34の間隔S、隣接する外部電極対の間隔L、抵抗体の幅Rは実施例1と同等であった。
【0091】
(比較例1)
<バリスタ素体の形成工程>
バリスタ素体を以下の手順で形成した。主成分として酸化亜鉛を、副成分として表2に示す成分を含有する粉末原料を準備した。表2の含有量は酸化亜鉛に対する比率を示す。これらの粉末原料、有機バインダ、有機溶剤、及び添加剤を、ボールミルを用いて20時間混合・粉砕してバリスタ素体用のスラリーを調製した。
【0092】
【表2】

【0093】
上記の通り調製したバリスタ素体用のスラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてバリスタ素体を形成した。このバリスタ素体の初期表面絶縁抵抗は、200MΩ以上であった。そして、実施例1と同様にして、外部電極の形成工程、抵抗体の形成工程、抵抗体の除去工程及びトリミング工程を行い、評価用のバリスタを作製した。
【0094】
(表面絶縁抵抗の評価)
各実施例及び比較例で作製した評価用のバリスタ100(図4)において、隣接する接続体20間の表面絶縁抵抗を測定するために、外部電極32aと外部電極34bとの間の抵抗値(表面絶縁抵抗)を、レーザートリミング装置に内蔵された測定器を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
表3に示す結果の通り、実施例1〜3のバリスタでは、レーザ照射を行う抵抗体の除去工程及びトリミング工程を行っても、十分大きな表面絶縁抵抗が維持されており、良好なバリスタ特性を有するバリスタを製造することができた。
【0097】
一方、比較例1のバリスタでは、レーザ照射によりバリスタ素体が変質し、表面絶縁抵抗が小さくなっていた。
【0098】
(比較例2)
実施例1と同様にして、バリスタ素体を形成し、該バリスタ素体の主面上に外部電極を形成した。そして、抵抗体の形成工程において、図10に示すように、バリスタ素体110の主面110a上に形成されたそれぞれの外部電極対130を、個別に掛け渡すように、実施例1と同じ抵抗ペーストをスクリーン印刷法にて印刷した。この抵抗ペーストを乾燥させ、850℃にて焼き付けて、図10に示す評価用のバリスタ200を形成した。
【0099】
バリスタ素体110の主面110a上には、一対の外部電極132,134と、当該一対の外部電極132,134を連結する抵抗体162とからなる複数の接続体120が形成されている。
【0100】
バリスタ200における、対向する外部電極132,134の間隔S、外部電極対130の幅T、及び隣接する外部電極対130の間隔Lは、それぞれ実施例1と同じであった。しかしながら、比較例14では、レーザ照射を行わず、スクリーン印刷法を用いて抵抗体162を形成しているため、隣接する抵抗体162の間隔を150μmとする必要があった。このため、抵抗体162の幅Rは100μmであり、これ以上、幅Rを大きくすることができなかった。抵抗体162の幅Rが実施例1〜3よりも小さいため、トリミングを行うためのレーザ光の位置合わせが困難であり、抵抗体162のトリミングを行うことができなかった。
【0101】
(抵抗値の評価)
実施例1と比較例2で作製したそれぞれの評価用のバリスタの接続体の抵抗値を以下の通り測定した。図4に示す各バリスタ100において、トリミング工程実施前後(トリミング部分50の形成前後)で、それぞれの接続体20における第1の外部電極32と第2の外部電極34との間の抵抗値を、レーザートリミング装置に内蔵された測定器を用いて測定した。なお、抵抗値測定は、異なる外部電極対30間の9箇所で行い、平均値と標準偏差(σ)と最小値と最大値とを導出した。これらの値から3σ/平均値の値を算出し、抵抗値のばらつきを評価した。結果を表4に示す。
【0102】
【表4】

【0103】
表4に示す結果の通り、実施例1のバリスタは、トリミングを行うことによって、抵抗値のばらつきを大幅に低減することができた。一方、比較例2のバリスタは、抵抗体の幅Rが小さく、トリミングを行うことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本実施形態のバリスタの製造方法における外部電極形成工程を示す工程図である。
【図2】本実施形態のバリスタの製造方法における抵抗体形成工程を示す工程図である。
【図3】本実施形態のバリスタの製造方法における抵抗体の除去工程を示す工程図である。
【図4】本発明の製造方法によって得られるバリスタの一例を示す上面図である。
【図5】図4に示すバリスタ100の表面における領域Aを拡大して示す一部拡大図である。
【図6】本実施形態のバリスタの製造方法におけるトリミング工程を示す工程図である。
【図7】図6のバリスタにおけるVII−VII線の断面を示す走査型電子顕微鏡写真(1000倍)である。
【図8】シート積層体を形成する工程を示す工程図である。
【図9】本発明のバリスタの製造方法によって得られるバリスタの一例を示す模式断面図である。
【図10】従来の製造方法によって製造されたバリスタの上面図である。
【符号の説明】
【0105】
10…バリスタ素体、10a…主面(一面)、14…保護層、20,120…接続体、30,130…外部電極対、32,132…第1の外部電極(外部電極)、34,134…第2の外部電極(外部電極)、40…レーザ光照射線、50…トリミング部分、60,62,64,162…抵抗体、100,200…バリスタ、LS2…グリーン体、EL2,EL3,EL4…電極部分、GS11,GS12,GS13…グリーンシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリスタ素体の一面上に、第1の外部電極と前記第1の外部電極に対向するように設けられる第2の外部電極とからなる外部電極対を、所定方向に配列するように複数形成する外部電極形成工程と、
複数の前記外部電極対が互いに連結されるとともに、当該外部電極対における前記第1の外部電極と前記第2の外部電極とが互いに連結されるように、前記バリスタ素体の前記一面上に抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、
前記抵抗体のうち、隣り合う前記外部電極対の間の領域に形成された部分をレーザ光の照射により除去して、前記第1の外部電極と前記第2の外部電極と前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極を連結する抵抗体とを有する接続体を形成する除去工程と、を有しており、
前記バリスタ素体が、主成分として酸化亜鉛を含み、副成分としてカルシウム酸化物とケイ素酸化物と希土類金属の酸化物とを含んでおり、前記主成分全体に対する前記カルシウム酸化物のカルシウム原子換算の比率Xが2〜80原子%、前記主成分全体に対する前記ケイ素酸化物のケイ素原子換算の比率Yが1〜40原子%であり、前記Yに対する前記Xの比率(X/Y)が下記式(1)を満たすバリスタの製造方法。
1≦X/Y<3 (1)
【請求項2】
前記除去工程で形成された前記接続体における前記抵抗体の一部をレーザ光でトリミングするトリミング工程を有する、請求項1記載のバリスタの製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光の照射を複数回繰り返す請求項1又は2記載のバリスタの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−289992(P2009−289992A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141185(P2008−141185)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】