バリ取り工具およびこれを用いた貫通孔のバリ取り方法、並びに貫通孔の面取り方法
【課題】いわゆる中細り構造を有することにより、交差貫通孔においても容易に貫通孔表側からバリ取りを行うことができるバリ取り工具、およびこれを用いた貫通孔のバリ取り方法、並びに貫通孔の面取り方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかるバリ取り工具は、放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも短く、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも長い。
【解決手段】本発明にかかるバリ取り工具は、放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも短く、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも長い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ取り工具およびこれを用いた貫通孔のバリ取り方法、並びに貫通孔の面取り方法に関するものである。より詳しくは、いわゆる中細り構造を有することにより交差貫通孔においても容易に貫通孔表側からバリ取りを行うことができるバリ取り工具、およびこれを用いた貫通孔のバリ取り方法、並びに貫通孔の面取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業材料への貫通穴加工において、貫通穴の裏側にバリが発生する場合がある。このようなバリが発生すると、例えば自動車用部品や各種エンジンなどにおいて、バリの脱落やエッジ部分の割れかけにより、燃料が詰まる等の現象が生じ、システムに不具合が発生する恐れがあり、問題となる。
【0003】
貫通穴を加工する際、工具が設置されている側を表側として、その反対側を裏側とし、最も問題となるのが裏側に発生するバリである。特に切削ではドリル先端が貫通間際になると、切削作業を行わないで材料を押し出すような状況になり、切り残された薄肉の部分が工具の進行と共に押し出されてバリとなる。このバリは切削以外でも見られ、バリの除去は、未だに手作業で行う場合もあり、加工工程において労力や時間の問題点となっている。
【0004】
特に、ドリル穴に他のドリル穴を交差して開けた交差貫通孔の場合、その交差部分にバリが生じ、位置的に、確実にバリを除去することが困難なため問題となっている。
【0005】
これに対し、刃を備えたばね機構を持つバリ取り工具が提案されている(特許文献1、2)。当該工具は、交差貫通孔の表側から工具を挿入して、交差部のバリ取りを行う場合、刃を備えた工具の先端が裏側に貫通した時にばね機構を利用して刃を拡大させ、バリを切削する構造になっている。
【0006】
また、底面放電部および側面放電部を備え、交差穴の縦穴に放電部材を挿入下降および水平移動させてバリを除去する方法および装置が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2005−169517号公報(2005年6月30日公開)
【特許文献2】特開2006−136992号公報(2006年6月1日公開)
【特許文献3】特開平6−238526号公報(1994年8月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、機器の小型化が進むにつれ、部品の微細化などにより、貫通穴加工においても微細穴を加工可能な工具である必要が増えてきている。しかしながら、特許文献1および2に記載の構造を持つ工具は、構造上、直径2mm程度の貫通孔までにしか適用できず、小径孔の貫通孔のバリ取りを行うことは困難である。また、上記工具は切削によってバリ取りを行うものであるため、バリ取り時に工具に大きな負荷がかかる。それゆえ、小径孔用の工具を作製したとしても、切削によってバリ取りを行う以上、継続的にバリ取りを行うに足る強度を保つことはできない。
【0008】
また、交差貫通孔においては、後から貫通させた孔の裏側にバリが発生する。図1は、交差貫通孔におけるバリ発生の状態を示す模式図である。この図に示す交差貫通孔では、孔aを貫通させた後で孔bを貫通させており、孔bの裏側にバリが発生している。特許文献3に記載の発明は、工具を孔aに挿入下降させ、水平移動させて当該バリを除去するものである。ここで、バリ取り工具を孔bに挿入するのであれば、取り付け位置を変更することなく、ドリル等をバリ取り工具に交換するだけですむため作業効率上好ましい。しかしながら、特許文献3に記載の工具は、孔aから挿入されるものであり、孔bを開けたドリル等の取り付け位置をそのまま利用することはできないため、位置決め等に相当の作業を要するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、いわゆる中細り構造を有することにより、交差貫通孔においても容易に貫通孔表側からバリ取りを行うことができるバリ取り工具、およびこれを用いた貫通孔のバリ取り方法、並びに貫通孔の面取り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、交差貫通孔においても容易に貫通孔表側からバリ取りを行うことができるバリ取り工具について鋭意検討した結果、バリ取り工具にいわゆる中細り構造を持たせることによって、容易に課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明にかかるバリ取り工具は、放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも短く、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも長いことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、バリ取り工具が、軸部よりも放電部の方が水平方向の断面が大きい、いわゆる中細り構造を取るため、軸部の下側に位置する放電部は、軸部に妨げられることなく、当該放電部よりも上方に位置する貫通孔に向けて放電することができる。よって、貫通孔に挿入後、貫通孔の裏側に発生したバリを非接触で除去することができる。それゆえ、改めてバリ取り工具の位置決めをする必要もなく、バリ取り工具を貫通孔の表側から挿入して放電するだけで、貫通孔の裏側に発生したバリを効率的に除去することができる。
【0013】
また、当該バリ取り工具は、切削ではなく放電によってバリを除去するものであるため、バリ取り時に工具に大きな負荷がかからない。それゆえ、小型化が可能であり、小径の貫通孔に発生したバリを容易に除去することができる。
【0014】
本発明にかかるバリ取り工具は、上記放電部が、上方に放電可能な面および下方に放電可能な面を備えることが好ましい。上記構成によれば、上方への放電によって貫通孔の裏側に発生したバリを除去することができるとともに、放電部底面からの下方への放電によって、孔を貫通させ、放電部上面からの放電によって貫通孔裏側に生じたバリを除去することができる。よって、穴あけとバリ取りとを一の工具で行うことができるため、工具の付け替えの手間を省くことができる。
【0015】
また、本発明にかかるバリ取り工具では、上記放電部は、水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、上記軸部から上記放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、放電部の形状が略円錐形であるため、遊星運動させた場合に上方へ均一な放電を行いやすい。また、放電部の上面、すなわち略円錐形の斜面からの放電によって、貫通孔の裏側に発生しているバリを除去した後、引き続き放電することによって、当該貫通孔の面取りをも行うことができる。
【0017】
本発明にかかるバリ取り方法は、本発明にかかるバリ取り工具の放電部からの放電によって貫通孔のバリ取りを行うことを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、バリ取り工具がいわゆる中細り構造を取っているため、軸部の下側に位置する放電部は、当該放電部よりも上方に位置する貫通孔に向けて放電することができる。そのため、貫通孔の裏側に発生したバリを、バリの下に位置する放電部からの放電によって除去することができる。また、当該バリ取り工具は、小型化が可能であるため、小径の貫通孔に発生したバリを容易に除去することができる。
【0019】
本発明にかかるバリ取り方法では、上記貫通孔は交差貫通孔であってもよい。交差貫通孔においては、バリは後から貫通させた孔の裏側に発生するため、従来バリ取りを行うことが困難であった。本発明にかかる方法で用いるバリ取り工具は、いわゆる中細り構造を取っているため、交差貫通孔の表側から挿入するだけで、裏側に発生したバリを容易に除去することができる。
【0020】
本発明にかかるバリ取り方法は、本発明にかかるバリ取り工具を遊星運動させながら、当該バリ取り工具の放電部から放電させることによって、貫通孔のバリ取りを行うことが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、バリ取り工具の放電部を、貫通孔の周に沿って運動させることができる。よって、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さが、放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さに比べて非常に大きい場合でも、貫通孔の径全体を平均的に加工することができる。したがって、小型のバリ取り工具を用いても、孔径に関わらず十分にバリ取りを行うことができる。
【0022】
本発明にかかる貫通孔の面取り方法は、放電部の水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、上記軸部から上記放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなるバリ取り工具の放電部からの放電によって、貫通孔の面取りを行うことを特徴としている。
【0023】
上記工具は放電部の形状が略円錐形であるため、遊星運動させた場合に上方へ均一な放電を行いやすい。また、上述のように小型化が可能である。よって、小径の貫通孔であっても容易に面取りを行うことが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るバリ取り工具は、以上のように、放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも短く、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも長いという構成である。それゆえ、小径孔の貫通孔、特に交差貫通孔に発生したバリを容易に除去することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
(1.バリ取り工具)
一実施形態において、本発明にかかるバリ取り工具は、放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも短く、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも長い(以下、この構成を「構成1」と称する)。
【0027】
図2は、本発明にかかるバリ取り工具の一例である電極の形状を示す正面図である。図2において、1は電極(バリ取り工具)、2、2´は放電部、3は軸部、4は放電加工機への取り付け部、5は放電部の上面(上方に放電可能な面)、6は軸部3の中心軸、7、7´は放電部の下面(下方に放電可能な面)である。
【0028】
上記放電部は、電極において、上方および/または下方への放電を行う部分であって、放電加工によって貫通孔のバリ取りおよび/または面取りを行う部分である。例えば、図2において2、2´で示される部分である。
【0029】
なお、放電加工とは、加工液中で電極と被加工体との隙間を近づけて行き、絶縁が破壊されて起こる過度アーク放電による熱作用と、加工液の気化爆発作用により形成された放電痕の累積によって、希望する所定の形状を加工する加工法である。放電加工は、(1)導電性材料であれば、材料の硬度・じん性に関係なく加工を行うことができる(2)電極形状が転写されるため、複雑・微細な形状の加工が可能である(3)機械加工と比べると加工力が著しく小さいため、薄板や管・細い線に対する加工が容易である(4)熱影響による加工変質層は仕上げ面粗さの10倍程度である(5)仕上げ面に方向性がなく、本質的に梨地面である(6)加工条件によっては1μm以下の仕上げ面粗さや鏡面が得られる、といった特徴を有する。
【0030】
「放電部の上面(上方に放電可能な面)」とは、放電部が有する面のうち、上方に向けて放電可能な面をいう。例えば、図2において5で示される部分である。「放電部の下面(下方に放電可能な面)」とは、放電部が有する面のうち、下方に向けて放電可能な面をいう。なお、「上方」とは、軸部の中心軸を図2におけるy1−y2線に平行になるようにしたときのy1方向のことをいう。また、「下方」とは、軸部の中心軸を図2におけるy1−y2線に平行になるようにしたときのy2方向のことをいう。
【0031】
上記軸部とは、電極において、上方および下方への放電を行わない部分であって、水平方向の断面が取りうる最大の径の長さが、上記放電部の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さよりも短い部分である。例えば、図2において3で示される部分である。
【0032】
上記「水平方向の断面」とは、例えば、図2に示すように、紙面の底辺と平行な線をx1−x2線とし、軸部の中心軸がy1−y2線に平行になるようにしたときにx1−x2線で物体を切断した場合の横断面である。「放電部の水平方向の断面」とは、放電部の軸部の中心軸をy1−y2線に平行になるようにしたときに、放電部をx1−x2線で切断した場合の横断面である。
【0033】
本発明にかかるバリ取り工具では、特に限定されるものではないが、上記放電部の水平方向の断面は、上記軸部の中心軸と略直交していることが好ましい。この場合、放電部からの上方への放電を均一に行うことができる。「軸部の中心軸」とは、軸部の中心を貫通する軸をいい、軸部の一端における水平方向の断面の中心点と、軸部の他の一端における水平方向の断面の中心点とを結ぶ直線をいう。例えば、図2において6で示される直線である。
【0034】
上記放電部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さよりも短い。つまり、上記放電部は、バリ取りを行う貫通孔を通過可能な大きさ、つまり、貫通孔のバリが発生していない方を表側(入口)、バリが発生している方を裏側(出口)として、バリ取り工具を貫通孔の表側から挿入した場合に、放電部を貫通孔の裏側に通すことができる大きさである。
【0035】
貫通孔を作製する方法は特に限定されるものではない。例えば、従来公知のドリル等による切削によって作製してもよいし、ストレート電極等を用いて放電加工によって作製してもよい。貫通孔の孔径は特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜調整すればよい。貫通孔の材質としては特に限定されるものではない。例えば、鋼、アルミ合金、銅、真鍮黄銅等を用いることができる。
【0036】
貫通孔が、交差貫通孔(交差孔を持つ貫通孔)である場合、交差する孔の数は特に限定されるものではない。また、各孔の交差角も特に限定されるものではない。
【0037】
上記放電部の水平方向の断面形状、上記軸部の水平方向の断面形状、貫通孔の断面形状は特に限定されるものではない。例えば、円、多角形、楕円形など、種々の形を取ることができる。中でも、遊星運動させることが容易であり、貫通孔に対して均一な放電加工を行うことができるため、放電部の水平方向の断面形状は円形であることが好ましい。
【0038】
また、上記放電部自体の形状および軸部自体の形状も、水平方向の断面が、上記構成1を満たす限り、特に限定されるものではない。好適な放電部の形状としては、上方への安定な放電を行うことができるという観点から、例えば円柱型や、略円錐型等を挙げることができる。また、好適な軸部の形状としては、加工の容易さの観点から、円柱形を挙げることができる。
【0039】
本発明にかかるバリ取り工具は、上記放電部の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さよりも長いという構造を取る。本明細書では、当該構造を「中細り構造」とも称する。また、中細り構造を有する電極を「中細り電極」とも称する。「断面が取りうる径の長さ」とは、断面の中心点を通って断面の周上の2点を結ぶ直線の長さのことをいう。例えば、断面形状が円であれば、円の直径の長さが「断面が取りうる径の長さ」となる。
【0040】
上記放電部の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さよりも長いため、上記放電部は、軸部に妨げられることなく、上方に向かって放電することが可能になる。それゆえ、上記放電部を貫通孔の裏側に発生したバリに対して下に位置させ、上方に向かって放電すれば、貫通孔の裏側に発生したバリを除去することができる。
【0041】
このように、上記構造を取ることによって、上記放電部は上方に向けて放電することができるが、側面や下面からも放電可能であってもよい。放電部下面から放電可能である場合、放電部下面からの放電によって、孔を貫通させることができる。そして、孔を貫通させた後、バリ取り工具を孔の表側から挿入して裏側に貫通させ、放電部上面から放電させることにより、貫通孔裏側に生じたバリを除去することができる。よって、本発明にかかるバリ取り工具のみで貫通孔の作製およびバリ取りを行うことができる。放電部の下面は、例えば図2において7、7´で示される部分である。また、軸部も放電可能であってもよい。
【0042】
放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さ、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さ、上記軸部の長さは、上記構成1を満たす限り特に限定されるものではない。
【0043】
また、本発明にかかるバリ取り工具は、放電加工によってバリ取りを行うものであるため、工具にかかる負荷は非常に小さい。よって、上記断面が貫通孔に比して小径であっても折損等の問題が生じる可能性は小さいため、上記断面の径の下限は特に限定されない。例えば実施例に示すように、放電部の水平方向の断面の径を100μm未満にすることも可能である。また、軸部の長さは、貫通孔の長さに応じて、放電部の上面(上方に放電可能な面)がバリ取りを行う貫通孔より下に位置することができるように、適宜設定すればよい。
【0044】
上記径の長さや軸部の長さを調整する方法は特に限定されるものではない。後述するワイヤ放電研削の他、レーザ微細加工、ナノリソグラフィー、光学リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、イオンビームリソグラフィー等、従来公知の加工法を用いることができる。なお、上記軸部の水平方向の断面の径の長さは、一定であることが好ましい。
【0045】
上記放電部は、水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、上記軸部から上記放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなることが好ましい。例えば、図3に示すようなバリ取り工具がこれに該当する。
【0046】
当該工具を用いることにより、貫通孔裏側に位置する放電部の上面(上方に放電可能な面)からの放電によって貫通孔裏側のバリを除去した後、放電により放電部の上面部分の形状を貫通孔裏側に転写することによって、貫通孔の裏側の面取りを行うことができる。軸部の両方の端部が略円錐形のときは、貫通孔表側の面取りをも行うことができるため、一つのバリ取り工具によって貫通孔の両側を面取りすることができる。
【0047】
面取りとは部材の稜角を削ることを言い、面と面のつなぎ目をとる加工である。面取りは、特に限定されるものではないが、削り出しまたは面取り工具およびヤスリによる除去で行われることが多い。怪我の防止や美観付与の観点から、日常にある製品のほとんどは面取りが施さており、割れ欠けを防ぐ意味で行われる場合もある。面取りの種類としては、特に限定されるものではない。例えば、面の交差するエッジ部分を45°でカットするC面取り、面の交差するエッジ部分を半径Rの円弧形状にするR面取りなどを用いることができる。
【0048】
図3は、バリ取り工具によって貫通孔の裏側を面取りしている様子を示す図である。また、図4は、バリ取り工具によって、貫通孔の表側を面取りしている様子を示す図である。
【0049】
上記電極を製造する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法によることができる。例えば、ワイヤ放電研削、レーザ微細加工、ナノリソグラフィー、光学リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、イオンビームリソグラフィー等、従来公知の加工法を用いることができる。後述する実施例では、従来公知の超微細放電加工機((株)松下電器産業製・MG−ED72)を用いワイヤ放電研削することによって電極を製造している。
【0050】
ワイヤ放電研削とは、固定されたワイヤガイドに支えられたワイヤ電極がワイヤガイドに沿ってゆっくりと巻きとられることによって移動していき、その上方から工作物を回転させながら下方向に送ることによって、ワイヤ電極により外周を放電加工する方法である。
【0051】
図5は、ワイヤ放電研削の原理を示す模式図である。図2と同じ部材については同じ部材番号を用いる。図5において、1は電極(バリ取り工具)、11はワイヤ電極、12はワイヤガイドである。この時、電極(バリ取り工具)1の回転軸からワイヤ電極11の最外周までの距離が加工される電極(バリ取り工具)1の半径となる。そのため、電極(バリ取り工具)1を横方向に調節することによって、目的の径をもつ丸棒を製作することができる。また、ワイヤ電極11はワイヤガイド12に沿って移動をしており、常に新しいワイヤが供給されているので、ワイヤ電極11の消耗についてはほとんど考慮する必要はない。
【0052】
図6は、本発明にかかるバリ取り工具で用いられる、いわゆる中細り電極の製造工程の一例を示す模式図である。図6では、ワイヤガイドの表示は省略している。図6において、図5に示されている部材については、同じ部材番号を用いる。まず、目的の径と長さになるように電極(バリ取り工具)1を下方へ送り、ワイヤ電極11の放電によって電極(バリ取り工具)1を丸棒に加工する(図6の(a))。次に、その丸棒に加工した電極(バリ取り工具)1を中細り電極に加工するために、目的の長さに先端部が残るようにワイヤ電極11の位置を設定し、電極(バリ取り工具)1をワイヤ電極11に近づけて軸部の径を細くする。そのままワイヤ電極11を下方へ送り、中細り部分を加工する(図6の(b))。そして、放電部の上面および軸部の端部に傾斜をつける(図6の(c))。軸部の両端部に傾斜をつける際は、さらに軸部の他端部も加工する(図6の(d))。
【0053】
電極の材質としては特に限定されるものではない。例えば、タングステン、銅、銅タングステン等を好適に用いることができる。中でも、高融点であるため、タングステンが好ましく用いられる。
【0054】
以上の例では、一つの電極をワイヤ放電研削によって加工し、軸部、放電部、および放電加工機への取り付け部を作製したため、これらの部材は一体に形成されているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、部材を溶接、ろう付け、導電性接着剤による接着などの方法を用いて接合し、電極を製造してもよい。
【0055】
(2.バリ取り方法および面取り方法)
本発明にかかるバリ取り方法は、本発明にかかるバリ取り工具の放電部からの放電によって貫通孔のバリ取りを行う方法である。
【0056】
本発明にかかるバリ取り工具は、(1.)で説明したように、構成1を備えることにより、貫通孔の表側から挿入し、放電部の上方に放電可能な面を貫通孔の裏側の下に位置させ、放電させることによって、貫通孔の裏側に発生したバリを除去することができる。また、孔径が100μm未満程度の小径の貫通孔に対しても適用可能である。
【0057】
放電電圧は特に限定されるものではないが、放電加工が進行しやすいため、60V〜100Vであることが好ましい。
【0058】
貫通孔の作製をドリル等によって行う場合は、ドリル等を加工機から取り外し、本発明にかかるバリ取り工具を加工機に取り付ける必要がある。このとき、回転軸の位置が変化しないようにすることが好ましい。回転軸の位置が変化した場合は、後述する実施例2に示す方法等によって中心軸の補正を行うことが好ましい。一方、本発明にかかるバリ取り工具の放電部の下面からの放電によって貫通孔を作製する場合は、工具の付け替えは不要である。
【0059】
ここで、特許文献3に記載の方法では、交差貫通孔の裏側に発生したバリを除去するためには、図1に示す孔aのように、先に貫通させた方の孔に工具を挿入する必要がある。それに対し、本発明では、図1に示す孔bのような、後から貫通させたバリが発生している孔に挿入すればよい。よって、例え中心軸の補正を行う場合であっても、工具を挿入する孔を変更する必要のある特許文献3に記載の方法よりも効率的に交差貫通孔の裏側に発生したバリ取りを行うことができる。
【0060】
一実施形態において、本発明にかかるバリ取り方法は、本発明にかかるバリ取り工具を遊星運動させながら、当該バリ取り工具の放電部から放電させることによって、貫通孔のバリ取りを行うことが好ましい。遊星運動とは、自転しながら公転する運動のことである。遊星運動の軌道は、特に限定されるものではないが、バリ取りを均一に行うため、貫通孔の周に沿ったものであることが好ましい。遊星運動の軌道は、遊星運動径を変化させることによって適宜調整することができる。
【0061】
また、バリ取り工具は、ヘリカル送りされることが好ましい。ヘリカル送りとは、らせん状に送るという意味で、工具を遊星運動させながら上方または下方へ送る方法である。上記バリ取り工具をヘリカル送りさせることにより、放電部とバリとの距離を適宜調整することができるので、単に遊星運動させる場合よりもより確実にバリを除去することが可能となる。
【0062】
ただし、これに限られるものではなく、例えば貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さが、放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さと比較してあまり大きくない場合は、本発明にかかるバリ取り工具は、放電部から上方に向けて放電することができるため、遊星運動および自転を行わなくてもバリ取りを行うことができる。ただし、放電加工を平均化して行うという観点から、バリ取り工具を自転させることが好ましく、遊星運動させることがより好ましく、ヘリカル送りさせることが特に好ましい。
【0063】
バリ取り工具を自転させる方法は特に限定されるものではない。例えば、上記工具にモーター等の回転力を伝導させること等によって、上記工具を自転させることができる。また、バリ取り工具を遊星運動またはヘリカル送りさせる方法も、特に限定されるものではない。例えば、NC加工機などの従来公知の装置にバリ取り工具を装着し、その加工機の送り機能を利用することによって遊星運動またはヘリカル送りさせることができる。
【0064】
本発明にかかる貫通孔の面取り方法では、放電部の水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、軸部から放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなるバリ取り工具の放電部からの放電によって、貫通孔の面取りを行う。これによって、略円錐形の斜面の形状を貫通孔に転写することができる。
【0065】
特に限定されるものではないが、面取りを行う際は、上記バリ取り工具に遊星運動またはヘリカル送りをさせることが好ましい。面取りの種類は特に限定されるものではなく、上述のように、C面取りやR面取りなどを行うことができる。C面取りは、上記工具をヘリカル送りさせ、略円錐形の斜面で貫通孔を加工することによって行うことができる。R面取りは、略円錐形の斜面のR部分で貫通孔を加工することによって行うことができる。
【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0067】
〔実施例1:バリ取り工具の作製〕
超微細放電加工機((株)松下電器産業製・MG-ED72)を使用し、ワイヤ放電研削(Wire Electrodischarge Grinding、以下WEDGと表記)によってバリ取り工具の製作を行った。上記加工機のマンドレルの先端に直径300μmのタングステンロッドをとり付け、目的の径と長さになるようにタングステンロッドを50s−1で回転させながら下方へ送り、ワイヤの放電(電圧100V)によって、図6の(a)に示すような丸棒を作製した。この丸棒は、実施例2で用いるストレート電極13に相当する。なお、放電加工時の加工液としては、放電加工油を用いた。
【0068】
次に、その丸棒を中細り電極に加工するために、目的の長さに先端部が残るようにワイヤの位置を設定し、上記丸棒をワイヤに近づけて、図6の(b)に示すように、軸部の径を細くした。そのまま上記丸棒を下方へ送り、図6の(b)に示すように、中細り部分を加工した。そして、面取りを行う先端部分に、図6の(c)に示すように斜め45°の傾斜をつけた。
【0069】
このようにして作成したバリ取り工具の形状の正面図を図7〜図13に示した。なお、図中の数値で径または長さを示すものの単位はμmである。図12は、図7に示すバリ取り工具の写真であり、図13は、図11に示すバリ取り工具の写真である。以下、図7、12に示すバリ取り工具を工具A、図8に示すバリ取り工具を工具B、図9に示すバリ取り工具を工具C、図10に示すバリ取り工具を工具D、図11、図13に示すバリ取り工具を工具Eと称する。
【0070】
〔実施例2:バリ取り工具によるバリ取りおよび面取り〕
図14は貫通孔の作製工程を示す模式図である。図14に示すように、工具電極としてストレート電極13を用い、バリ取りおよび面取りの対象となる貫通孔を工作物14に開けた。まず図14の(a)に示すように、ストレート電極13を微細超音波加工機((株)クリエイティブテクノロジー製・ASWU-1)に取り付け、ストレート電極13の底面から放電して工作物14を貫通させ、ストレート電極13を工作物14の下方へ送り込み、下穴を開けた(荒加工)。その後、必要に応じて、ストレート電極13を引き上げてから、電気条件を変更し、図14の(b)に示すように、ストレート電極13の底面及び側面から放電させながらヘリカル送りにて貫通穴側面の仕上げ加工を行った。
【0071】
本実施例で用いる上記微細超音波加工機では、遊星運動の軌道を正多角形で近似しており、その半径やピッチなどを任意に設定できる。
【0072】
次に、ストレート電極を図7〜11に示すバリ取り工具のいずれかに交換し、加工した貫通孔15に挿入した。工具電極を交換すると、交換の前後で工具電極の回転軸の位置が変化する場合がある。図15は、工具電極の中心軸の補正について示すものである。図15の(a)(b)に示すように、バリ取り工具1を図15の(a)に示すX軸・Y軸の正方向・負方向にそれぞれ送り、貫通孔15の内壁の位置を検出し、その座標の中点を取る。これにより貫通孔15の中心軸と遊星運動の中心軸が一致する。貫通孔15の内壁の位置の検出は、工作物14とバリ取り工具1との間に5V程度の電圧をかけ、両者が接触することによって生じる電流を測ることにより行った。
【0073】
遊星運動の中心軸が決まると、所定の条件になるよう電圧を印加し、図3に示すように上方へのヘリカル送りを開始した。この時、放電部2の上面5からの放電加工により、貫通孔15の裏側のバリ取りおよび面取りが行われる。また、貫通孔15の表側の面取りを行う際は、裏側を加工後、図4に示すようにバリ取り工具1を下方にヘリカル送りさせる。バリ取りおよび面取りは、コンデンサは用いず浮遊容量のみで行った。
【0074】
このようにして、本実施例では3種類の貫通孔と4種類のバリ取り工具を作製した。3種類の貫通孔A〜Cの形状および加工条件を表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
次に、バリ取りおよび面取りの条件を表2に示した。なお、表1における「軸部の挿入深度」は貫通孔を作製するときの送り量であり、表2における「軸部の挿入深度」は貫通孔に面取りなどを行うときの送り量である。
【0077】
【表2】
【0078】
表2の実験(A)は、バリ取り工具として工具A、貫通孔としてタイプAを用いてバリ取りおよび面取りを行ったものである。結果を図16および表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
図16は、実験(A)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。図16の(a)は光学顕微鏡((株)アカシ製ビッカース硬度計MVK−C、以下同じ)で観察した結果を、図16の(b)は走査型電子顕微鏡(SEM、(株)ニコン製ESEM−2700、以下同じ)で観察した結果を示すものである。
【0081】
図17は、面取りを行った貫通孔の裏側の部位を示す模式図である。図17において、16は表3に示す貫通孔の孔径、17は表3に示す貫通孔裏側の面取り部の大きさ、18は表3に示す貫通孔裏側の面取り部の直径を示している。図16、表3に示すように、バリ取り工具Aを用いて、貫通孔裏側のバリ取りおよび面取りが良好に行われていることが分かる。
【0082】
表2に示す実験(B)は、バリ取り工具として工具B、貫通孔としてタイプBを用いてバリ取りおよび面取りを行ったものである。結果を図18および表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
図18は、実験(B)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。図18の(a)は光学顕微鏡で観察した結果を、図18の(b)は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示すものである。
【0085】
図18、表4に示すように、内径(図17に示す貫通孔の孔径)が100μmを下回るような微細穴の裏側のバリ取りおよび面取りも行えることが確認できた。放電加工は工具電極と工作物が接触しないため、さらに工具電極を小径化することにより、より微細な貫通穴に対しても加工が可能であると考えられる。
【0086】
表2に示す実験(C)は、バリ取り工具として工具C、貫通孔としてタイプAを用いてバリ取りおよび面取りを行ったものである。結果を図19および表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
図19は、実験(C)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔を観察した結果を示すものである。図19の(a)は、貫通孔の表側を光学顕微鏡で観察した結果を、図19の(b)は貫通孔の裏側を光学顕微鏡で観察した結果を示すものである。
【0089】
図19および表5に示すように、同一のバリ取り工具を用いて貫通孔の裏側のバリ取りおよび面取りと、貫通孔の表側の面取りとを行うことができた。
【0090】
表2に示す実験(D)は、バリ取り工具として工具D、貫通孔としてタイプCを用いてバリ取りおよび面取りを行ったものである。結果を図20および表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
図20は、実験(D)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を光学顕微鏡で観察した結果を示すものである。
【0093】
貫通穴のアスペクト比が高くなると電極形状が細長くなり、バリ取り工具に回転を与えた際の振れまわりや先端が工作物に接触した際に受ける力も大きくなるなど、折損しやすくなると考えられる。しかし、今回はアスペクト比が5の深穴に対しての裏側のバリ取りおよび面取り加工を行うことができ、ある程度の深穴に対しても加工が行えることが分かった。
【0094】
表2に示す実験(E)は、バリ取り工具として工具E、貫通孔としてタイプAを用いてバリ取りおよび座ぐりを行ったものである。結果を図21および表7に示す。なお、座ぐりとは、ボルト・小ネジ類を使用する場合、その頭が平らに埋め込まれるように、孔の周囲の上面を円形に平滑に削ることを言う。
【0095】
【表7】
【0096】
図21は、実験(E)の条件でバリ取りおよび座ぐりを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。図21の(a)は、光学顕微鏡で観察した結果を、図21の(b)は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示すものである。
【0097】
図21および表7に示すように、工具Eを用いることによって、貫通孔裏側に座ぐりを施せることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るバリ取り工具は、いわゆる中細り構造を有しているため、小径孔の貫通孔、特に交差貫通孔に発生したバリを容易に除去することができる。それゆえ、各種金属工業、自動車産業、電子産業等、非常に広範な各種工業に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】交差貫通孔におけるバリ発生の状態を示す模式図である。
【図2】本発明にかかるバリ取り工具の一例である電極の形状を示す正面図である。
【図3】バリ取り工具によって貫通孔の裏側を面取りしている様子を示す図である。
【図4】バリ取り工具によって、貫通孔の表側を面取りしている様子を示す図である。
【図5】ワイヤ放電研削の原理を示す模式図である。
【図6】本発明にかかるバリ取り工具で用いられる、いわゆる中細り電極の製造工程の一例を示す模式図である。
【図7】工具Aの形状を示す正面図である。
【図8】工具Bの形状を示す正面図である。
【図9】工具Cの形状を示す正面図である。
【図10】工具Dの形状を示す正面図である。
【図11】工具Eの形状を示す正面図である。
【図12】工具Aの形状を示す写真である。
【図13】工具Eの形状を示す写真である。
【図14】貫通孔の作製工程を示す模式図である。
【図15】工具電極の中心軸の補正について示す図である。
【図16】実験(A)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。
【図17】面取りを行った貫通孔の裏側の部位を示す模式図である。
【図18】実験(B)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。
【図19】実験(C)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔を観察した結果を示すものである。
【図20】実験(D)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を光学顕微鏡で観察した結果を示すものである。
【図21】実験(E)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。
【符号の説明】
【0100】
1 電極(バリ取り工具)
2 放電部
2´ 放電部
3 軸部
4 放電加工機への取り付け部
5 放電部の上面(上方に放電可能な面)
6 軸部の中心軸
7 放電部の下面(下方に放電可能な面)
7´ 放電部の下面(下方に放電可能な面)
11 ワイヤ電極
12 ワイヤガイド
13 ストレート電極
14 工作物
15 貫通孔
16 貫通孔の孔径
17 貫通孔裏側の面取り部の大きさ
18 貫通孔裏側の面取り部の直径
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ取り工具およびこれを用いた貫通孔のバリ取り方法、並びに貫通孔の面取り方法に関するものである。より詳しくは、いわゆる中細り構造を有することにより交差貫通孔においても容易に貫通孔表側からバリ取りを行うことができるバリ取り工具、およびこれを用いた貫通孔のバリ取り方法、並びに貫通孔の面取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業材料への貫通穴加工において、貫通穴の裏側にバリが発生する場合がある。このようなバリが発生すると、例えば自動車用部品や各種エンジンなどにおいて、バリの脱落やエッジ部分の割れかけにより、燃料が詰まる等の現象が生じ、システムに不具合が発生する恐れがあり、問題となる。
【0003】
貫通穴を加工する際、工具が設置されている側を表側として、その反対側を裏側とし、最も問題となるのが裏側に発生するバリである。特に切削ではドリル先端が貫通間際になると、切削作業を行わないで材料を押し出すような状況になり、切り残された薄肉の部分が工具の進行と共に押し出されてバリとなる。このバリは切削以外でも見られ、バリの除去は、未だに手作業で行う場合もあり、加工工程において労力や時間の問題点となっている。
【0004】
特に、ドリル穴に他のドリル穴を交差して開けた交差貫通孔の場合、その交差部分にバリが生じ、位置的に、確実にバリを除去することが困難なため問題となっている。
【0005】
これに対し、刃を備えたばね機構を持つバリ取り工具が提案されている(特許文献1、2)。当該工具は、交差貫通孔の表側から工具を挿入して、交差部のバリ取りを行う場合、刃を備えた工具の先端が裏側に貫通した時にばね機構を利用して刃を拡大させ、バリを切削する構造になっている。
【0006】
また、底面放電部および側面放電部を備え、交差穴の縦穴に放電部材を挿入下降および水平移動させてバリを除去する方法および装置が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2005−169517号公報(2005年6月30日公開)
【特許文献2】特開2006−136992号公報(2006年6月1日公開)
【特許文献3】特開平6−238526号公報(1994年8月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、機器の小型化が進むにつれ、部品の微細化などにより、貫通穴加工においても微細穴を加工可能な工具である必要が増えてきている。しかしながら、特許文献1および2に記載の構造を持つ工具は、構造上、直径2mm程度の貫通孔までにしか適用できず、小径孔の貫通孔のバリ取りを行うことは困難である。また、上記工具は切削によってバリ取りを行うものであるため、バリ取り時に工具に大きな負荷がかかる。それゆえ、小径孔用の工具を作製したとしても、切削によってバリ取りを行う以上、継続的にバリ取りを行うに足る強度を保つことはできない。
【0008】
また、交差貫通孔においては、後から貫通させた孔の裏側にバリが発生する。図1は、交差貫通孔におけるバリ発生の状態を示す模式図である。この図に示す交差貫通孔では、孔aを貫通させた後で孔bを貫通させており、孔bの裏側にバリが発生している。特許文献3に記載の発明は、工具を孔aに挿入下降させ、水平移動させて当該バリを除去するものである。ここで、バリ取り工具を孔bに挿入するのであれば、取り付け位置を変更することなく、ドリル等をバリ取り工具に交換するだけですむため作業効率上好ましい。しかしながら、特許文献3に記載の工具は、孔aから挿入されるものであり、孔bを開けたドリル等の取り付け位置をそのまま利用することはできないため、位置決め等に相当の作業を要するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、いわゆる中細り構造を有することにより、交差貫通孔においても容易に貫通孔表側からバリ取りを行うことができるバリ取り工具、およびこれを用いた貫通孔のバリ取り方法、並びに貫通孔の面取り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、交差貫通孔においても容易に貫通孔表側からバリ取りを行うことができるバリ取り工具について鋭意検討した結果、バリ取り工具にいわゆる中細り構造を持たせることによって、容易に課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明にかかるバリ取り工具は、放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも短く、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも長いことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、バリ取り工具が、軸部よりも放電部の方が水平方向の断面が大きい、いわゆる中細り構造を取るため、軸部の下側に位置する放電部は、軸部に妨げられることなく、当該放電部よりも上方に位置する貫通孔に向けて放電することができる。よって、貫通孔に挿入後、貫通孔の裏側に発生したバリを非接触で除去することができる。それゆえ、改めてバリ取り工具の位置決めをする必要もなく、バリ取り工具を貫通孔の表側から挿入して放電するだけで、貫通孔の裏側に発生したバリを効率的に除去することができる。
【0013】
また、当該バリ取り工具は、切削ではなく放電によってバリを除去するものであるため、バリ取り時に工具に大きな負荷がかからない。それゆえ、小型化が可能であり、小径の貫通孔に発生したバリを容易に除去することができる。
【0014】
本発明にかかるバリ取り工具は、上記放電部が、上方に放電可能な面および下方に放電可能な面を備えることが好ましい。上記構成によれば、上方への放電によって貫通孔の裏側に発生したバリを除去することができるとともに、放電部底面からの下方への放電によって、孔を貫通させ、放電部上面からの放電によって貫通孔裏側に生じたバリを除去することができる。よって、穴あけとバリ取りとを一の工具で行うことができるため、工具の付け替えの手間を省くことができる。
【0015】
また、本発明にかかるバリ取り工具では、上記放電部は、水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、上記軸部から上記放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、放電部の形状が略円錐形であるため、遊星運動させた場合に上方へ均一な放電を行いやすい。また、放電部の上面、すなわち略円錐形の斜面からの放電によって、貫通孔の裏側に発生しているバリを除去した後、引き続き放電することによって、当該貫通孔の面取りをも行うことができる。
【0017】
本発明にかかるバリ取り方法は、本発明にかかるバリ取り工具の放電部からの放電によって貫通孔のバリ取りを行うことを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、バリ取り工具がいわゆる中細り構造を取っているため、軸部の下側に位置する放電部は、当該放電部よりも上方に位置する貫通孔に向けて放電することができる。そのため、貫通孔の裏側に発生したバリを、バリの下に位置する放電部からの放電によって除去することができる。また、当該バリ取り工具は、小型化が可能であるため、小径の貫通孔に発生したバリを容易に除去することができる。
【0019】
本発明にかかるバリ取り方法では、上記貫通孔は交差貫通孔であってもよい。交差貫通孔においては、バリは後から貫通させた孔の裏側に発生するため、従来バリ取りを行うことが困難であった。本発明にかかる方法で用いるバリ取り工具は、いわゆる中細り構造を取っているため、交差貫通孔の表側から挿入するだけで、裏側に発生したバリを容易に除去することができる。
【0020】
本発明にかかるバリ取り方法は、本発明にかかるバリ取り工具を遊星運動させながら、当該バリ取り工具の放電部から放電させることによって、貫通孔のバリ取りを行うことが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、バリ取り工具の放電部を、貫通孔の周に沿って運動させることができる。よって、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さが、放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さに比べて非常に大きい場合でも、貫通孔の径全体を平均的に加工することができる。したがって、小型のバリ取り工具を用いても、孔径に関わらず十分にバリ取りを行うことができる。
【0022】
本発明にかかる貫通孔の面取り方法は、放電部の水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、上記軸部から上記放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなるバリ取り工具の放電部からの放電によって、貫通孔の面取りを行うことを特徴としている。
【0023】
上記工具は放電部の形状が略円錐形であるため、遊星運動させた場合に上方へ均一な放電を行いやすい。また、上述のように小型化が可能である。よって、小径の貫通孔であっても容易に面取りを行うことが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るバリ取り工具は、以上のように、放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも短く、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも長いという構成である。それゆえ、小径孔の貫通孔、特に交差貫通孔に発生したバリを容易に除去することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
(1.バリ取り工具)
一実施形態において、本発明にかかるバリ取り工具は、放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも短く、上記放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さよりも長い(以下、この構成を「構成1」と称する)。
【0027】
図2は、本発明にかかるバリ取り工具の一例である電極の形状を示す正面図である。図2において、1は電極(バリ取り工具)、2、2´は放電部、3は軸部、4は放電加工機への取り付け部、5は放電部の上面(上方に放電可能な面)、6は軸部3の中心軸、7、7´は放電部の下面(下方に放電可能な面)である。
【0028】
上記放電部は、電極において、上方および/または下方への放電を行う部分であって、放電加工によって貫通孔のバリ取りおよび/または面取りを行う部分である。例えば、図2において2、2´で示される部分である。
【0029】
なお、放電加工とは、加工液中で電極と被加工体との隙間を近づけて行き、絶縁が破壊されて起こる過度アーク放電による熱作用と、加工液の気化爆発作用により形成された放電痕の累積によって、希望する所定の形状を加工する加工法である。放電加工は、(1)導電性材料であれば、材料の硬度・じん性に関係なく加工を行うことができる(2)電極形状が転写されるため、複雑・微細な形状の加工が可能である(3)機械加工と比べると加工力が著しく小さいため、薄板や管・細い線に対する加工が容易である(4)熱影響による加工変質層は仕上げ面粗さの10倍程度である(5)仕上げ面に方向性がなく、本質的に梨地面である(6)加工条件によっては1μm以下の仕上げ面粗さや鏡面が得られる、といった特徴を有する。
【0030】
「放電部の上面(上方に放電可能な面)」とは、放電部が有する面のうち、上方に向けて放電可能な面をいう。例えば、図2において5で示される部分である。「放電部の下面(下方に放電可能な面)」とは、放電部が有する面のうち、下方に向けて放電可能な面をいう。なお、「上方」とは、軸部の中心軸を図2におけるy1−y2線に平行になるようにしたときのy1方向のことをいう。また、「下方」とは、軸部の中心軸を図2におけるy1−y2線に平行になるようにしたときのy2方向のことをいう。
【0031】
上記軸部とは、電極において、上方および下方への放電を行わない部分であって、水平方向の断面が取りうる最大の径の長さが、上記放電部の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さよりも短い部分である。例えば、図2において3で示される部分である。
【0032】
上記「水平方向の断面」とは、例えば、図2に示すように、紙面の底辺と平行な線をx1−x2線とし、軸部の中心軸がy1−y2線に平行になるようにしたときにx1−x2線で物体を切断した場合の横断面である。「放電部の水平方向の断面」とは、放電部の軸部の中心軸をy1−y2線に平行になるようにしたときに、放電部をx1−x2線で切断した場合の横断面である。
【0033】
本発明にかかるバリ取り工具では、特に限定されるものではないが、上記放電部の水平方向の断面は、上記軸部の中心軸と略直交していることが好ましい。この場合、放電部からの上方への放電を均一に行うことができる。「軸部の中心軸」とは、軸部の中心を貫通する軸をいい、軸部の一端における水平方向の断面の中心点と、軸部の他の一端における水平方向の断面の中心点とを結ぶ直線をいう。例えば、図2において6で示される直線である。
【0034】
上記放電部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さよりも短い。つまり、上記放電部は、バリ取りを行う貫通孔を通過可能な大きさ、つまり、貫通孔のバリが発生していない方を表側(入口)、バリが発生している方を裏側(出口)として、バリ取り工具を貫通孔の表側から挿入した場合に、放電部を貫通孔の裏側に通すことができる大きさである。
【0035】
貫通孔を作製する方法は特に限定されるものではない。例えば、従来公知のドリル等による切削によって作製してもよいし、ストレート電極等を用いて放電加工によって作製してもよい。貫通孔の孔径は特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜調整すればよい。貫通孔の材質としては特に限定されるものではない。例えば、鋼、アルミ合金、銅、真鍮黄銅等を用いることができる。
【0036】
貫通孔が、交差貫通孔(交差孔を持つ貫通孔)である場合、交差する孔の数は特に限定されるものではない。また、各孔の交差角も特に限定されるものではない。
【0037】
上記放電部の水平方向の断面形状、上記軸部の水平方向の断面形状、貫通孔の断面形状は特に限定されるものではない。例えば、円、多角形、楕円形など、種々の形を取ることができる。中でも、遊星運動させることが容易であり、貫通孔に対して均一な放電加工を行うことができるため、放電部の水平方向の断面形状は円形であることが好ましい。
【0038】
また、上記放電部自体の形状および軸部自体の形状も、水平方向の断面が、上記構成1を満たす限り、特に限定されるものではない。好適な放電部の形状としては、上方への安定な放電を行うことができるという観点から、例えば円柱型や、略円錐型等を挙げることができる。また、好適な軸部の形状としては、加工の容易さの観点から、円柱形を挙げることができる。
【0039】
本発明にかかるバリ取り工具は、上記放電部の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さよりも長いという構造を取る。本明細書では、当該構造を「中細り構造」とも称する。また、中細り構造を有する電極を「中細り電極」とも称する。「断面が取りうる径の長さ」とは、断面の中心点を通って断面の周上の2点を結ぶ直線の長さのことをいう。例えば、断面形状が円であれば、円の直径の長さが「断面が取りうる径の長さ」となる。
【0040】
上記放電部の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さよりも長いため、上記放電部は、軸部に妨げられることなく、上方に向かって放電することが可能になる。それゆえ、上記放電部を貫通孔の裏側に発生したバリに対して下に位置させ、上方に向かって放電すれば、貫通孔の裏側に発生したバリを除去することができる。
【0041】
このように、上記構造を取ることによって、上記放電部は上方に向けて放電することができるが、側面や下面からも放電可能であってもよい。放電部下面から放電可能である場合、放電部下面からの放電によって、孔を貫通させることができる。そして、孔を貫通させた後、バリ取り工具を孔の表側から挿入して裏側に貫通させ、放電部上面から放電させることにより、貫通孔裏側に生じたバリを除去することができる。よって、本発明にかかるバリ取り工具のみで貫通孔の作製およびバリ取りを行うことができる。放電部の下面は、例えば図2において7、7´で示される部分である。また、軸部も放電可能であってもよい。
【0042】
放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さ、上記軸部の水平方向の断面が取りうる径の長さ、上記軸部の長さは、上記構成1を満たす限り特に限定されるものではない。
【0043】
また、本発明にかかるバリ取り工具は、放電加工によってバリ取りを行うものであるため、工具にかかる負荷は非常に小さい。よって、上記断面が貫通孔に比して小径であっても折損等の問題が生じる可能性は小さいため、上記断面の径の下限は特に限定されない。例えば実施例に示すように、放電部の水平方向の断面の径を100μm未満にすることも可能である。また、軸部の長さは、貫通孔の長さに応じて、放電部の上面(上方に放電可能な面)がバリ取りを行う貫通孔より下に位置することができるように、適宜設定すればよい。
【0044】
上記径の長さや軸部の長さを調整する方法は特に限定されるものではない。後述するワイヤ放電研削の他、レーザ微細加工、ナノリソグラフィー、光学リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、イオンビームリソグラフィー等、従来公知の加工法を用いることができる。なお、上記軸部の水平方向の断面の径の長さは、一定であることが好ましい。
【0045】
上記放電部は、水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、上記軸部から上記放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなることが好ましい。例えば、図3に示すようなバリ取り工具がこれに該当する。
【0046】
当該工具を用いることにより、貫通孔裏側に位置する放電部の上面(上方に放電可能な面)からの放電によって貫通孔裏側のバリを除去した後、放電により放電部の上面部分の形状を貫通孔裏側に転写することによって、貫通孔の裏側の面取りを行うことができる。軸部の両方の端部が略円錐形のときは、貫通孔表側の面取りをも行うことができるため、一つのバリ取り工具によって貫通孔の両側を面取りすることができる。
【0047】
面取りとは部材の稜角を削ることを言い、面と面のつなぎ目をとる加工である。面取りは、特に限定されるものではないが、削り出しまたは面取り工具およびヤスリによる除去で行われることが多い。怪我の防止や美観付与の観点から、日常にある製品のほとんどは面取りが施さており、割れ欠けを防ぐ意味で行われる場合もある。面取りの種類としては、特に限定されるものではない。例えば、面の交差するエッジ部分を45°でカットするC面取り、面の交差するエッジ部分を半径Rの円弧形状にするR面取りなどを用いることができる。
【0048】
図3は、バリ取り工具によって貫通孔の裏側を面取りしている様子を示す図である。また、図4は、バリ取り工具によって、貫通孔の表側を面取りしている様子を示す図である。
【0049】
上記電極を製造する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法によることができる。例えば、ワイヤ放電研削、レーザ微細加工、ナノリソグラフィー、光学リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、イオンビームリソグラフィー等、従来公知の加工法を用いることができる。後述する実施例では、従来公知の超微細放電加工機((株)松下電器産業製・MG−ED72)を用いワイヤ放電研削することによって電極を製造している。
【0050】
ワイヤ放電研削とは、固定されたワイヤガイドに支えられたワイヤ電極がワイヤガイドに沿ってゆっくりと巻きとられることによって移動していき、その上方から工作物を回転させながら下方向に送ることによって、ワイヤ電極により外周を放電加工する方法である。
【0051】
図5は、ワイヤ放電研削の原理を示す模式図である。図2と同じ部材については同じ部材番号を用いる。図5において、1は電極(バリ取り工具)、11はワイヤ電極、12はワイヤガイドである。この時、電極(バリ取り工具)1の回転軸からワイヤ電極11の最外周までの距離が加工される電極(バリ取り工具)1の半径となる。そのため、電極(バリ取り工具)1を横方向に調節することによって、目的の径をもつ丸棒を製作することができる。また、ワイヤ電極11はワイヤガイド12に沿って移動をしており、常に新しいワイヤが供給されているので、ワイヤ電極11の消耗についてはほとんど考慮する必要はない。
【0052】
図6は、本発明にかかるバリ取り工具で用いられる、いわゆる中細り電極の製造工程の一例を示す模式図である。図6では、ワイヤガイドの表示は省略している。図6において、図5に示されている部材については、同じ部材番号を用いる。まず、目的の径と長さになるように電極(バリ取り工具)1を下方へ送り、ワイヤ電極11の放電によって電極(バリ取り工具)1を丸棒に加工する(図6の(a))。次に、その丸棒に加工した電極(バリ取り工具)1を中細り電極に加工するために、目的の長さに先端部が残るようにワイヤ電極11の位置を設定し、電極(バリ取り工具)1をワイヤ電極11に近づけて軸部の径を細くする。そのままワイヤ電極11を下方へ送り、中細り部分を加工する(図6の(b))。そして、放電部の上面および軸部の端部に傾斜をつける(図6の(c))。軸部の両端部に傾斜をつける際は、さらに軸部の他端部も加工する(図6の(d))。
【0053】
電極の材質としては特に限定されるものではない。例えば、タングステン、銅、銅タングステン等を好適に用いることができる。中でも、高融点であるため、タングステンが好ましく用いられる。
【0054】
以上の例では、一つの電極をワイヤ放電研削によって加工し、軸部、放電部、および放電加工機への取り付け部を作製したため、これらの部材は一体に形成されているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、部材を溶接、ろう付け、導電性接着剤による接着などの方法を用いて接合し、電極を製造してもよい。
【0055】
(2.バリ取り方法および面取り方法)
本発明にかかるバリ取り方法は、本発明にかかるバリ取り工具の放電部からの放電によって貫通孔のバリ取りを行う方法である。
【0056】
本発明にかかるバリ取り工具は、(1.)で説明したように、構成1を備えることにより、貫通孔の表側から挿入し、放電部の上方に放電可能な面を貫通孔の裏側の下に位置させ、放電させることによって、貫通孔の裏側に発生したバリを除去することができる。また、孔径が100μm未満程度の小径の貫通孔に対しても適用可能である。
【0057】
放電電圧は特に限定されるものではないが、放電加工が進行しやすいため、60V〜100Vであることが好ましい。
【0058】
貫通孔の作製をドリル等によって行う場合は、ドリル等を加工機から取り外し、本発明にかかるバリ取り工具を加工機に取り付ける必要がある。このとき、回転軸の位置が変化しないようにすることが好ましい。回転軸の位置が変化した場合は、後述する実施例2に示す方法等によって中心軸の補正を行うことが好ましい。一方、本発明にかかるバリ取り工具の放電部の下面からの放電によって貫通孔を作製する場合は、工具の付け替えは不要である。
【0059】
ここで、特許文献3に記載の方法では、交差貫通孔の裏側に発生したバリを除去するためには、図1に示す孔aのように、先に貫通させた方の孔に工具を挿入する必要がある。それに対し、本発明では、図1に示す孔bのような、後から貫通させたバリが発生している孔に挿入すればよい。よって、例え中心軸の補正を行う場合であっても、工具を挿入する孔を変更する必要のある特許文献3に記載の方法よりも効率的に交差貫通孔の裏側に発生したバリ取りを行うことができる。
【0060】
一実施形態において、本発明にかかるバリ取り方法は、本発明にかかるバリ取り工具を遊星運動させながら、当該バリ取り工具の放電部から放電させることによって、貫通孔のバリ取りを行うことが好ましい。遊星運動とは、自転しながら公転する運動のことである。遊星運動の軌道は、特に限定されるものではないが、バリ取りを均一に行うため、貫通孔の周に沿ったものであることが好ましい。遊星運動の軌道は、遊星運動径を変化させることによって適宜調整することができる。
【0061】
また、バリ取り工具は、ヘリカル送りされることが好ましい。ヘリカル送りとは、らせん状に送るという意味で、工具を遊星運動させながら上方または下方へ送る方法である。上記バリ取り工具をヘリカル送りさせることにより、放電部とバリとの距離を適宜調整することができるので、単に遊星運動させる場合よりもより確実にバリを除去することが可能となる。
【0062】
ただし、これに限られるものではなく、例えば貫通孔の水平方向の断面が取りうる径の長さが、放電部の水平方向の断面が取りうる径の長さと比較してあまり大きくない場合は、本発明にかかるバリ取り工具は、放電部から上方に向けて放電することができるため、遊星運動および自転を行わなくてもバリ取りを行うことができる。ただし、放電加工を平均化して行うという観点から、バリ取り工具を自転させることが好ましく、遊星運動させることがより好ましく、ヘリカル送りさせることが特に好ましい。
【0063】
バリ取り工具を自転させる方法は特に限定されるものではない。例えば、上記工具にモーター等の回転力を伝導させること等によって、上記工具を自転させることができる。また、バリ取り工具を遊星運動またはヘリカル送りさせる方法も、特に限定されるものではない。例えば、NC加工機などの従来公知の装置にバリ取り工具を装着し、その加工機の送り機能を利用することによって遊星運動またはヘリカル送りさせることができる。
【0064】
本発明にかかる貫通孔の面取り方法では、放電部の水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、軸部から放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなるバリ取り工具の放電部からの放電によって、貫通孔の面取りを行う。これによって、略円錐形の斜面の形状を貫通孔に転写することができる。
【0065】
特に限定されるものではないが、面取りを行う際は、上記バリ取り工具に遊星運動またはヘリカル送りをさせることが好ましい。面取りの種類は特に限定されるものではなく、上述のように、C面取りやR面取りなどを行うことができる。C面取りは、上記工具をヘリカル送りさせ、略円錐形の斜面で貫通孔を加工することによって行うことができる。R面取りは、略円錐形の斜面のR部分で貫通孔を加工することによって行うことができる。
【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0067】
〔実施例1:バリ取り工具の作製〕
超微細放電加工機((株)松下電器産業製・MG-ED72)を使用し、ワイヤ放電研削(Wire Electrodischarge Grinding、以下WEDGと表記)によってバリ取り工具の製作を行った。上記加工機のマンドレルの先端に直径300μmのタングステンロッドをとり付け、目的の径と長さになるようにタングステンロッドを50s−1で回転させながら下方へ送り、ワイヤの放電(電圧100V)によって、図6の(a)に示すような丸棒を作製した。この丸棒は、実施例2で用いるストレート電極13に相当する。なお、放電加工時の加工液としては、放電加工油を用いた。
【0068】
次に、その丸棒を中細り電極に加工するために、目的の長さに先端部が残るようにワイヤの位置を設定し、上記丸棒をワイヤに近づけて、図6の(b)に示すように、軸部の径を細くした。そのまま上記丸棒を下方へ送り、図6の(b)に示すように、中細り部分を加工した。そして、面取りを行う先端部分に、図6の(c)に示すように斜め45°の傾斜をつけた。
【0069】
このようにして作成したバリ取り工具の形状の正面図を図7〜図13に示した。なお、図中の数値で径または長さを示すものの単位はμmである。図12は、図7に示すバリ取り工具の写真であり、図13は、図11に示すバリ取り工具の写真である。以下、図7、12に示すバリ取り工具を工具A、図8に示すバリ取り工具を工具B、図9に示すバリ取り工具を工具C、図10に示すバリ取り工具を工具D、図11、図13に示すバリ取り工具を工具Eと称する。
【0070】
〔実施例2:バリ取り工具によるバリ取りおよび面取り〕
図14は貫通孔の作製工程を示す模式図である。図14に示すように、工具電極としてストレート電極13を用い、バリ取りおよび面取りの対象となる貫通孔を工作物14に開けた。まず図14の(a)に示すように、ストレート電極13を微細超音波加工機((株)クリエイティブテクノロジー製・ASWU-1)に取り付け、ストレート電極13の底面から放電して工作物14を貫通させ、ストレート電極13を工作物14の下方へ送り込み、下穴を開けた(荒加工)。その後、必要に応じて、ストレート電極13を引き上げてから、電気条件を変更し、図14の(b)に示すように、ストレート電極13の底面及び側面から放電させながらヘリカル送りにて貫通穴側面の仕上げ加工を行った。
【0071】
本実施例で用いる上記微細超音波加工機では、遊星運動の軌道を正多角形で近似しており、その半径やピッチなどを任意に設定できる。
【0072】
次に、ストレート電極を図7〜11に示すバリ取り工具のいずれかに交換し、加工した貫通孔15に挿入した。工具電極を交換すると、交換の前後で工具電極の回転軸の位置が変化する場合がある。図15は、工具電極の中心軸の補正について示すものである。図15の(a)(b)に示すように、バリ取り工具1を図15の(a)に示すX軸・Y軸の正方向・負方向にそれぞれ送り、貫通孔15の内壁の位置を検出し、その座標の中点を取る。これにより貫通孔15の中心軸と遊星運動の中心軸が一致する。貫通孔15の内壁の位置の検出は、工作物14とバリ取り工具1との間に5V程度の電圧をかけ、両者が接触することによって生じる電流を測ることにより行った。
【0073】
遊星運動の中心軸が決まると、所定の条件になるよう電圧を印加し、図3に示すように上方へのヘリカル送りを開始した。この時、放電部2の上面5からの放電加工により、貫通孔15の裏側のバリ取りおよび面取りが行われる。また、貫通孔15の表側の面取りを行う際は、裏側を加工後、図4に示すようにバリ取り工具1を下方にヘリカル送りさせる。バリ取りおよび面取りは、コンデンサは用いず浮遊容量のみで行った。
【0074】
このようにして、本実施例では3種類の貫通孔と4種類のバリ取り工具を作製した。3種類の貫通孔A〜Cの形状および加工条件を表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
次に、バリ取りおよび面取りの条件を表2に示した。なお、表1における「軸部の挿入深度」は貫通孔を作製するときの送り量であり、表2における「軸部の挿入深度」は貫通孔に面取りなどを行うときの送り量である。
【0077】
【表2】
【0078】
表2の実験(A)は、バリ取り工具として工具A、貫通孔としてタイプAを用いてバリ取りおよび面取りを行ったものである。結果を図16および表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
図16は、実験(A)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。図16の(a)は光学顕微鏡((株)アカシ製ビッカース硬度計MVK−C、以下同じ)で観察した結果を、図16の(b)は走査型電子顕微鏡(SEM、(株)ニコン製ESEM−2700、以下同じ)で観察した結果を示すものである。
【0081】
図17は、面取りを行った貫通孔の裏側の部位を示す模式図である。図17において、16は表3に示す貫通孔の孔径、17は表3に示す貫通孔裏側の面取り部の大きさ、18は表3に示す貫通孔裏側の面取り部の直径を示している。図16、表3に示すように、バリ取り工具Aを用いて、貫通孔裏側のバリ取りおよび面取りが良好に行われていることが分かる。
【0082】
表2に示す実験(B)は、バリ取り工具として工具B、貫通孔としてタイプBを用いてバリ取りおよび面取りを行ったものである。結果を図18および表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
図18は、実験(B)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。図18の(a)は光学顕微鏡で観察した結果を、図18の(b)は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示すものである。
【0085】
図18、表4に示すように、内径(図17に示す貫通孔の孔径)が100μmを下回るような微細穴の裏側のバリ取りおよび面取りも行えることが確認できた。放電加工は工具電極と工作物が接触しないため、さらに工具電極を小径化することにより、より微細な貫通穴に対しても加工が可能であると考えられる。
【0086】
表2に示す実験(C)は、バリ取り工具として工具C、貫通孔としてタイプAを用いてバリ取りおよび面取りを行ったものである。結果を図19および表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
図19は、実験(C)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔を観察した結果を示すものである。図19の(a)は、貫通孔の表側を光学顕微鏡で観察した結果を、図19の(b)は貫通孔の裏側を光学顕微鏡で観察した結果を示すものである。
【0089】
図19および表5に示すように、同一のバリ取り工具を用いて貫通孔の裏側のバリ取りおよび面取りと、貫通孔の表側の面取りとを行うことができた。
【0090】
表2に示す実験(D)は、バリ取り工具として工具D、貫通孔としてタイプCを用いてバリ取りおよび面取りを行ったものである。結果を図20および表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
図20は、実験(D)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を光学顕微鏡で観察した結果を示すものである。
【0093】
貫通穴のアスペクト比が高くなると電極形状が細長くなり、バリ取り工具に回転を与えた際の振れまわりや先端が工作物に接触した際に受ける力も大きくなるなど、折損しやすくなると考えられる。しかし、今回はアスペクト比が5の深穴に対しての裏側のバリ取りおよび面取り加工を行うことができ、ある程度の深穴に対しても加工が行えることが分かった。
【0094】
表2に示す実験(E)は、バリ取り工具として工具E、貫通孔としてタイプAを用いてバリ取りおよび座ぐりを行ったものである。結果を図21および表7に示す。なお、座ぐりとは、ボルト・小ネジ類を使用する場合、その頭が平らに埋め込まれるように、孔の周囲の上面を円形に平滑に削ることを言う。
【0095】
【表7】
【0096】
図21は、実験(E)の条件でバリ取りおよび座ぐりを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。図21の(a)は、光学顕微鏡で観察した結果を、図21の(b)は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示すものである。
【0097】
図21および表7に示すように、工具Eを用いることによって、貫通孔裏側に座ぐりを施せることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るバリ取り工具は、いわゆる中細り構造を有しているため、小径孔の貫通孔、特に交差貫通孔に発生したバリを容易に除去することができる。それゆえ、各種金属工業、自動車産業、電子産業等、非常に広範な各種工業に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】交差貫通孔におけるバリ発生の状態を示す模式図である。
【図2】本発明にかかるバリ取り工具の一例である電極の形状を示す正面図である。
【図3】バリ取り工具によって貫通孔の裏側を面取りしている様子を示す図である。
【図4】バリ取り工具によって、貫通孔の表側を面取りしている様子を示す図である。
【図5】ワイヤ放電研削の原理を示す模式図である。
【図6】本発明にかかるバリ取り工具で用いられる、いわゆる中細り電極の製造工程の一例を示す模式図である。
【図7】工具Aの形状を示す正面図である。
【図8】工具Bの形状を示す正面図である。
【図9】工具Cの形状を示す正面図である。
【図10】工具Dの形状を示す正面図である。
【図11】工具Eの形状を示す正面図である。
【図12】工具Aの形状を示す写真である。
【図13】工具Eの形状を示す写真である。
【図14】貫通孔の作製工程を示す模式図である。
【図15】工具電極の中心軸の補正について示す図である。
【図16】実験(A)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。
【図17】面取りを行った貫通孔の裏側の部位を示す模式図である。
【図18】実験(B)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。
【図19】実験(C)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔を観察した結果を示すものである。
【図20】実験(D)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を光学顕微鏡で観察した結果を示すものである。
【図21】実験(E)の条件でバリ取りおよび面取りを行った貫通孔の裏側を観察した結果を示すものである。
【符号の説明】
【0100】
1 電極(バリ取り工具)
2 放電部
2´ 放電部
3 軸部
4 放電加工機への取り付け部
5 放電部の上面(上方に放電可能な面)
6 軸部の中心軸
7 放電部の下面(下方に放電可能な面)
7´ 放電部の下面(下方に放電可能な面)
11 ワイヤ電極
12 ワイヤガイド
13 ストレート電極
14 工作物
15 貫通孔
16 貫通孔の孔径
17 貫通孔裏側の面取り部の大きさ
18 貫通孔裏側の面取り部の直径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、
上記放電部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さよりも短く、
上記放電部の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さよりも長いことを特徴とするバリ取り工具。
【請求項2】
上記放電部は、上方に放電可能な面および下方に放電可能な面を備えることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項3】
上記放電部は、水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、上記軸部から上記放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のバリ取り工具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のバリ取り工具の放電部からの放電によって貫通孔のバリ取りを行うことを特徴とするバリ取り方法。
【請求項5】
上記貫通孔は交差貫通孔であることを特徴とする請求項4に記載のバリ取り方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のバリ取り工具を遊星運動させながら、当該バリ取り工具の放電部から放電させることによって、貫通孔のバリ取りを行うことを特徴とする請求項4または5に記載のバリ取り方法。
【請求項7】
請求項3に記載のバリ取り工具の放電部からの放電によって、貫通孔の面取りを行うことを特徴とする貫通孔の面取り方法。
【請求項1】
放電部と、軸部とを備える電極からなるバリ取り工具であって、
上記放電部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さは、バリ取りを行う貫通孔の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さよりも短く、
上記放電部の水平方向の断面が取りうる最小の径の長さが、上記軸部の水平方向の断面が取りうる最大の径の長さよりも長いことを特徴とするバリ取り工具。
【請求項2】
上記放電部は、上方に放電可能な面および下方に放電可能な面を備えることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項3】
上記放電部は、水平方向の断面形状が円形であり、当該円の直径が、上記軸部から上記放電部の先端に向かうほど大きくなるように形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のバリ取り工具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のバリ取り工具の放電部からの放電によって貫通孔のバリ取りを行うことを特徴とするバリ取り方法。
【請求項5】
上記貫通孔は交差貫通孔であることを特徴とする請求項4に記載のバリ取り方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のバリ取り工具を遊星運動させながら、当該バリ取り工具の放電部から放電させることによって、貫通孔のバリ取りを行うことを特徴とする請求項4または5に記載のバリ取り方法。
【請求項7】
請求項3に記載のバリ取り工具の放電部からの放電によって、貫通孔の面取りを行うことを特徴とする貫通孔の面取り方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図17】
【図12】
【図13】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図17】
【図12】
【図13】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−12521(P2010−12521A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171769(P2008−171769)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]