説明

バルブおよび流量制御部を備える流量制御装置

流量制御装置10は、使用時に投入される流体の供給源に連絡する上流端14と、供給ダクト26と接続可能に連絡する下流端16とを有するハウジング12とを備える。流路18は、前記ハウジング12の前記上流端14と前記下流端16により規定される。バルブ装置20は、前記流路18を通る流体の流れを制御するために、前記流路18に配置されている。流量制御部21は前記バルブ装置20と協働する。前記流量制御部21は、前記バルブ装置20の状態に関わらず、前記流路18を通る流体の流れを促す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月12日に出願された豪州国特許仮出願2005906976号の優先権を主張しており、その内容をここに組み込むものとする。
【0002】
本発明は、一般に流量制御装置に関し、特に、これに限定されるわけではないが、静脈内(IV群)投与セット用の流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
IV群投与装置は通常、患者の体内に流体を注入するために使用する。流体の貯蔵部から投与セットを通る流体の流量は、上部圧力により決定される。上部圧力は、患者の体内に流体が導入される位置(入り口点)に対して高い位置に配置された貯蔵部を有することにより、および/または、ポンプのような圧力発生装置を使用することにより決定される。
【0004】
投入された流体について、患者が正確な用量を確実に投与されるために、所定の流量での流体の輸液流量を維持することが必要である。
【0005】
流体の輸液流量を制御する、主に3つの要素がある。第1に生じた上部圧力、第2にシステムにおける流れ抵抗または摩擦、第3に点滴される流体の粘度または密度である。
【0006】
高い位置に配置された貯蔵部によって得られた上部圧力は、背圧により変化する場合がある。生じた背圧により、流体の流量に変化が生じ得る。また圧力は、例えば、患者が立ち上がること、またはベッドの上で寝返りをうつこと等により、何らかの事情で変化する場合がある。流体の粘度は、周囲温度における変化のような環境要因により変化する場合がある。
【0007】
注入される流体の粘度に依存せずに一定流量を得るため、オリフィス板を用いることが考えられる。しかしながら、IV型投与装置の針アセンブリは患者に流体を注射する際にも用いられる。オリフィス板下流の地点は、オリフィスの面積が小さいため、流体の注入が遅れる場合がある。また、投与装置を取り外したときに、患者の身体から体液が逆流するという危険性がある。この体液が投与装置を取り外す人に対して接触する可能性があり、血液を介して感染する病気等による不都合を招き得る。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、流量制御装置であって、投入される流体の供給源に使用時に連絡する上流端、および供給ダクトと接続可能に連絡する下流端を有するハウジングと、該ハウジングの前記上流端および前記下流端の間を通るように規定される流路と、該流路を通る流体の流れを制御するために前記流路に配置されたバルブ装置と、該バルブ装置と協働する流量制御部とを備え、該流量制御部は、前記バルブ装置の状態に関わらず、前記流路を通る流体の流れを促す流量制御装置を提供する。
【0009】
本明細書における「バルブ装置の状態」とは、別途に明示の記載がない限り、バルブ装置が開いている状態かあるいは閉じている状態か、ということを意味する。
【0010】
前記ハウジングは、流体の貯蔵部の流出口の一部を形成していてもよく、あるいは流出口に接続可能であることとしてもよい。前記貯蔵部は流体の供給源として機能することとしてもよい。これに代えて、前記ハウジングが供給路の一部を形成することとしてもよく、あるいは供給路に直列に取り付けられることとしてもよい。さらに、前記ハウジングの上流端は、シリンジの端部を受け得る形状としてもよい。このように、前記ハウジングの上流端は、メス型ルアーロック部材(Luer lock)の形状を有することとしてもよい。
【0011】
前記バルブ装置は、上流バルブとして配列された第1のバルブと、下流バルブとして配列された第2のバルブとが直列に配置された、少なくとも2つのバルブを備えることとしてもよい。各バルブは作動部材を備え、この作動部材は所定の流体圧力で開くこととしてもよい。上記装置において、上記下流バルブが上記上流バルブより実質的に低い圧力で開くようになされていることとしてもよい。
【0012】
少なくとも前記第1のバルブにおいて、前記作動部材が一対の薄片を備え、この薄片は通常閉じた状態で配置されて、ダックビル(duck bill)形バルブを形成するようになされることとしてもよい。
【0013】
少なくとも前記上流バルブが前記流量制御部を備え、この流量制御部と前記上流バルブとが協働することとしてもよい。前記流量制御部はオリフィス板を備えることとしてもよい。このオリフィス板は、前記上流バルブにおける前記作動部材の前記薄板のうちの1つに取り付けられることとしてもよい。前記オリフィス板は、実質上流体の粘度に依存しない態様で、流路を通る流体の流量を制御する役割を果たすことが好ましい。
【0014】
前記第2のバルブの前記作動部材は、前記オリフィス板を通る流体の前記流路で生じる圧力のみにより開くようになされることとしてもよい。さらに、前記第2のバルブは、注入される流体における所望の流量に応じた圧力で開くように調整されることとしてもよい。
【0015】
前記貯蔵部以外の投入部から流体が投入されると、前記バルブ装置の前記第1のバルブが開き、流体が前記オリフィス板によって規定される流量よりも実質的に大きな流量で投入されるようになされることとしてもよい。
【0016】
前記バルブ装置の前記第2のバルブは、流路における流体の逆流を抑制することとしてもよい。これにより、流量制御装置が組み込まれた上記システムの利用者が患者の体液と接触するリスクを低減することができる。
【0017】
本発明は、上述した流量制御装置を備える静脈内投与装置にも適用することとしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1において、符号10は本実施形態に係る流量制御装置を概略的に示す。以下に流量制御装置10をIV群投与装置に適用することについて説明するが、他の装置において使用することとしてもよい。
【0019】
流量制御装置は、上流端14および下流端16を有する細長いハウジング12を備える。流路18はハウジング12により規定される。
【0020】
バルブ装置20は、ハウジング12の上流端14と下流端16との間に介在するとともに、流路18に配置されている。
【0021】
流量制御部21は、オリフィス板22を備え、バルブ装置20と協働する。この流量制御部21は、バルブ装置20の状態に関わらず、流路18を通る食塩水のような流体または液体の流量を促す。
【0022】
上流端14は液体の供給源(図示せず)と接続可能である。通常、流量制御装置10はIV群投与セットとともに使用される。液体の供給源とは、患者の体内に所定の流量で注入される液体の貯蔵部である。これにより符号24の矢印で示されるように、オリフィス板22を通る液体の流れを実現することができる。
【0023】
ハウジング12の下流端16は、供給ダクト26に取り付けられている。供給ダクト26は、針アセンブリ(図示せず)に通じ、その針は、液体を注入するために患者の身体の血管内に挿入される。
【0024】
バルブ装置20は、第1のバルブ28と、この第1のバルブ28の下流に配置された第2のバルブ30とを備える。
【0025】
第1のバルブ28は、この第1のバルブ28の上流の液体が所定の圧力となった際に開くようになされている。液体がIV群投与装置の貯蔵部以外の供給源から患者に注入された際、例えば、液体がシリンジから注入されたときに、第1のバルブ28が開くように設計されている。
【0026】
このため、ハウジング12の上流端14は、患者に液体を注入するために、シリンジのオス型ルアーロック(Luer lock)を受け得るように、その内部においてメス型ルアーロック構造32を有している。
【0027】
第1のバルブ28は、ダックビル(duck bill)構造となるように配置された一対の作動部材34を有する。オリフィス板22は、作動部材34の一方に配置されている。これにより、液体は、所望の注入(点滴)流量で、第1のバルブ28の状態に関わらず、すなわち、第1のバルブ28が開いている状態または閉じている状態であるかに関わらず、ハウジング12を通ることができる。
【0028】
第2のバルブ30もまた、ダックビル構造となるように配置された一対の作動部材36を有する。この作動部材36は、極めて低い圧力であって、第1のバルブ28の作動部材34が開く圧力よりも著しく低い圧力で開くようになされている。より詳細には、第2のバルブ30の作動部材36は、オリフィス板22を通る液体の注入流量に応じて生じる流体の圧力で開くようになされている。さらに、第2のバルブ30の作動部材36は、様々な注入流量で開くように調整することもできる。
【0029】
第2のバルブ30は、流量制御装置10から投与装置が取り外された際に、血液のような流体が逆流するのを防ぐことを目的としている。
【0030】
使用時に、ハウジング12の上流端14は、投与装置を介して注入される液体の貯蔵部の流出口に連結されている。適切な前処理の後、液体は、流量制御部21のオリフィス板22を通って流れ、第2のバルブ30の作動部材36が開くこととなる。これにより、液体は、供給ダクト26内を通り、針アセンブリを介して、所望の流量で患者の体内に投与されることとなる。
【0031】
何らかの薬物を患者の体内に注射する必要がある場合、ハウジング12は貯蔵部の流出口から取り外され、シリンジのオス型ルアーロックをハウジング12の上流端14内に挿入する。シリンジから液体が放出されることにより、第1のバルブ28が開くこととなり、その結果、第2のバルブ30も開くこととなる。これにより、流量制御部21を通る流量よりも大幅に大きな流量で液体を注射することができる。
【0032】
液体の注射が完了した後、ハウジング12は貯蔵部からの液体の注入を継続可能とするために、貯蔵部に再度取り付けられる。
【0033】
患者の身体から針アセンブリが取り外された場合、貯蔵部からの液体の供給は直ちに停止される。これにより、第2のバルブ30の上流に低圧領域を作り出すこととなり得る。第2のバルブ30は、供給ダクト26における圧力を保持しながら、閉じられたままとなる。これにより、IV群投与セットのオス型ルアーアセンブリが流量制御装置10から取り外された際には、患者から体液が逆流することを防ぐことができる。
【0034】
本発明の第1の効果は、この流量制御装置によれば、液体の注射と注入(点滴)の両方を、同じ装置を用いて容易に行うことができることである。第2の効果は、この流量制御装置によれば、患者の体内から体液が逆流することを防ぐことができ、これにより、使用者が、体液等により汚染されるのを防ぐことができることである。
【0035】
広範にわたって説明した本発明の要旨を逸脱しない範囲で、具体的な実施形態として述べたような、様々な変形例および/または設計変更が、本発明に対して当業者によりなされ得る。上記実施形態において、図示されているものおよび図示されていないもの全てについて考慮されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る流量制御装置の概略断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入される流体の供給源に使用時に連絡する上流端、および供給ダクトと接続可能に連絡する下流端を有するハウジングと、
該ハウジングの前記上流端および前記下流端の間を通る流路と、
該流路を通る流体の流れを制御するために前記流路に配置されたバルブ装置と、
該バルブ装置と協働する流量制御部とを備え、
該流量制御部は、前記バルブ装置の状態に関わらず、前記流路を通る流体の流れを促す流量制御装置。
【請求項2】
前記バルブ装置は、少なくとも2つのバルブを備え、上流バルブである第1のバルブと、下流バルブである第2のバルブとが直列に配置された請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記各バルブが所定の流体圧力で開く作動部材を備え、前記下流バルブでは、前記上流バルブより実質的に低い圧力で開く請求項2に記載の流量制御装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1バルブの前記作動部材は、対向する一対の薄片を備え、これら薄片は、通常は閉じた状態で配置されてダックビル形バルブを形成する請求項2または請求項3に記載の流量制御装置。
【請求項5】
少なくとも前記上流バルブが前記流量制御部を備え、該流量制御部と前記上流バルブとが協働する請求項2から請求項4のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記流量制御部は、前記上流バルブの前記作動部材に取り付けられたオリフィス板を備える請求項5に記載の流量制御装置。
【請求項7】
前記第2のバルブの前記作動部材は、前記オリフィス板を通る流体の前記流路で生じる圧力のみにより開くようになされた請求項6に記載の流量制御装置。
【請求項8】
前記第2のバルブは、注入される流体における所望の流量に応じた圧力で開くように調整される請求項7に記載の流量制御装置。
【請求項9】
使用時に前記ハウジングが連結された貯蔵部以外の投入部から、前記ハウジングを通って流体が投入されると、前記バルブ装置の前記第1のバルブが開くようになされ、流体が前記オリフィス板によって規定される流量よりも実質的に大きな流量で投入される請求項6から請求項8のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の流量制御装置を備える静脈内投与装置。


【図1】
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【公表番号】特表2009−518154(P2009−518154A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544712(P2008−544712)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001792
【国際公開番号】WO2007/068030
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508105670)アキュ レート ピーティーワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】