説明

バルブケース及びそれを備えたシリンダヘッドカバー

【課題】合成樹脂の射出圧力が脚部に加わることで、筒状の本体の開口端部が変形されるおそれを防止することができるバルブケース及びそれを備えたシリンダヘッドカバーを提供する。
【解決手段】バルブケース14を、金属製の筒状の本体16と、その本体16から突設した脚部17とより構成する。バルブケース14の外側に合成樹脂よりなる外殻部13をモールドする。バルブケース14の脚部17の外形を、合成樹脂の射出圧力を脚部17の周囲に分散させる形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンのシリンダヘッドカバーに設けられるバルブケース及びそのバルブケースを備えたシリンダヘッドカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバルブケースを備えたシリンダヘッドカバーとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、図7及び図8に示すように、シリンダヘッドカバー31の外殻部32が、耐熱性を有する合成樹脂により成形されている。バルブケース33は、図示しないオイルコントロールバルブを挿着するための円筒状の本体34と、その本体34の外周に突設された四角柱状の脚部35とより構成されている。脚部35には、本体34の内部と外部とを連通する複数の油路36,37,38が形成されている。そして、バルブケース33の本体34及び脚部35の外周を覆うように、バルブケース33が外殻部32によってモールドされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−107479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来構成においては、バルブケース33の脚部35が四角柱状に形成されて、その脚部35の前面部35aが平面状になっている。このため、合成樹脂よりなる外殻部32のモールド時に、その合成樹脂の射出圧力が脚部35の前面部35aに直接加わって、その前面部35aを中心に脚部35が変形するおそれがある。特に、前面部35aの中央部に軽量化等のために凹状の肉盗み部を形成した場合は、その凹状の肉盗み部に射出圧力が集中的に作用するため、肉盗み部の形成によって薄肉になった部分が大きく変形する。このように、前面部35aに変形が生じると、円筒状の本体34の開口端部34aが変形して真円度が低下し、このためオイルコントロールバルブの挿着が困難になるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、バルブケースのモールド時に、筒状の本体の開口端部が変形されるおそれを防止することができるバルブケース及びそれを備えたシリンダヘッドカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、バルブケースに係る発明では、筒状の本体から脚部を突設し、合成樹脂よりなるシリンダヘッドカバーにモールドされる金属製のバルブケースにおいて、前記脚部の外形を、前記合成樹脂の射出圧力が脚部の周囲に分散される形状に形成したことを特徴とするものである。
【0007】
従って、この発明においては、バルブケースをシリンダヘッドカバーにモールドする際に、その合成樹脂の射出圧力が脚部に加わることを抑制でき、その射出圧力が脚部の周囲に分散される。よって、筒状の本体の開口端部が変形されることを防止できて、オイルコントロールバルブの挿着が困難になるおそれを防止することができる。
【0008】
前記バルブケースにおいて、前記脚部が前記本体の内部と外部との油路を形成するように構成するとよい。
前記バルブケースにおいて、前記脚部は複数設けるとよい。
【0009】
各脚部の先端間には、脚部材を拘束するための保持板が固定されていることが好ましい。
前記バルブケースにおいて、前記脚部は円筒形をなすように構成するとよい。
【0010】
1つの脚部内に複数の油路が形成されていてもよい。
また、シリンダヘッドカバーに係る発明では、前記のような構成のバルブケースを、その脚部がシリンダヘッド側に位置するように埋設したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、バルブケースのモールド時に、筒状の本体の開口端部が変形されるおそれを防止することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のバルブケースを備えたシリンダヘッドカバーを示す一部破断正面図。
【図2】図1のバルブケースの部分を拡大して示す要部断面図。
【図3】同バルブケースを示す斜視図。
【図4】第2実施形態のバルブケースを示す斜視図。
【図5】図4の5−5線における断面図。
【図6】第2実施形態のバルブケースの脚部の変更例を示す断面図。
【図7】従来のバルブケースを備えたシリンダヘッドカバーの要部断面図。
【図8】図7の8-8線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したバルブケースを備えたシリンダヘッドカバーの第1実施形態を、図1〜図3に従って説明する。
【0014】
図1に示すように、エンジン11のシリンダヘッドを含むシリンダブロックの上部には、シリンダヘッドカバー12が固定されている。図2に示すように、シリンダヘッドカバー12の外殻部13は、耐熱性を有する合成樹脂により一体に成形されている。外殻部13には、金属製のバルブケース14がモールドされている。このバルブケース14は、オイルコントロールバルブ15を挿着するための円筒状の本体16と、その本体16の外周からエンジン11のシリンダヘッド側に突設された複数の円筒形をなす脚部17とより構成されている。各脚部17には、本体16の内部と外部とを連通する油路18,19,20が形成されている。なお、油路18,19,20はエンジンの可変バルブ機構(図示しない)の進角側,遅角側に供給される流路と、可変バルブ機構からの戻りの流路とを構成する。
【0015】
図3に示すように、前記脚部17の下端間には、保持部材としての1枚の金属製の保持板21が固定されている。そして、バルブケース14の本体16の外周と、各脚部17の外周と、保持板21の上面及び外周縁を覆うように、バルブケース14が合成樹脂の外殻部13を構成する合成樹脂によってモールドされている。この場合、各脚部17の外形が、合成樹脂の射出圧力を脚部17の周囲に分散させる形状、つまり円筒形状となるように形成されている。また、バルブケース14における本体16の開口端部16aの外周には環状の凹溝22が形成され、外殻部13のモールド時に、この凹溝22内に合成樹脂が充填されることにより、外殻部13とバルブケース14とが位置ずれしないように固定されている。
【0016】
以上のように構成されたシリンダヘッドカバー12においては、バルブケース14における各脚部17の外形が円筒形状となるように形成されているため、バルブケース14が合成樹脂の外殻部13にモールドされるとき、合成樹脂の射出圧力が各脚部17の周囲に分散される。よって、各脚部17の変形を抑制でき、その結果、筒状の本体16の開口端部16aが変形されるおそれを解消することができる。しかも、各脚部17は、その先端が保持板21によって拘束されているため、さらなる変形防止を図ることができる。
【0017】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態においては、バルブケース14の脚部17の外形が、合成樹脂の射出圧力を脚部17の周囲に分散させる形状に形成されている。このため、バルブケース14を合成樹脂よりなる外殻部13にモールドする際には、脚部17の周囲に分散される。よって、合成樹脂の射出圧力が脚部17に加わることで、筒状の本体16の開口端部16aが変形されることを抑制できて、オイルコントロールバルブ15の挿着が困難になるおそれを防止することができる。
【0018】
(2) この実施形態においては、前記脚部17が複数設けられている。よって、脚部17に加わる合成樹脂の射出圧力を、複数の脚部17に分割して周囲に分散させることができる。
【0019】
(3) この実施形態においては、前記脚部17が円筒形をなすように構成されている。よって、脚部17に加わる合成樹脂の射出圧力を、円筒形の脚部17の外周面に沿って効果的に分散させることができる。
【0020】
(4) この実施形態においては、各脚部17を拘束するように、それらの先端間に1枚の保持板21が固定されている。このため、各脚部17の変形をさらに有効に防止できる。
【0021】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したバルブケース及びそれを備えたシリンダヘッドカバーの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0022】
さて、この第2実施形態においては、図4及び図5に示すように、バルブケース14の本体16に1つの脚部17が突設され、その脚部17内に複数の油路18〜20が形成されている。そして、脚部17における本体16の開口端部16a側の外面がほぼ半円筒形状に形成されて、シリンダヘッドカバー12における合成樹脂の外殻部13のモールド時に、合成樹脂の射出圧力が脚部17の周囲に分散されるようになっている。
【0023】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(2)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0024】
・ 前記第2実施形態において、図6に示すように、バルブケース14の本体16に、複数の油路18〜20が形成された1つの脚部17を突設し、その脚部17の外形を断面ほぼ楕円形状となるように形成すること。このように構成しても、前記第2実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0025】
・ 前記第1実施形態において、複数の脚部17間の保持板21を省略すること。
【符号の説明】
【0026】
11…エンジン、12…シリンダヘッドカバー、13…外殻部、14…バルブケース、15…オイルコントロールバルブ、16…本体、16a…開口端部、17…脚部、18〜20…油路、21…保持板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体から脚部を突設し、合成樹脂よりなるシリンダヘッドカバーにモールドされる金属製のバルブケースにおいて、
前記脚部の外形を、前記合成樹脂の射出圧力が脚部の周囲に分散される形状に形成したことを特徴とするバルブケース。
【請求項2】
前記脚部は前記本体の内部と外部との油路を形成することを特徴とする請求項1に記載のバルブケース。
【請求項3】
前記脚部は複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブケース。
【請求項4】
各脚部の先端間には、脚部間を拘束するための保持部材が固定されていることを特徴とする請求項3に記載のバルブケース。
【請求項5】
前記脚部は円筒形をなすことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のバルブケース。
【請求項6】
1つの脚部内に複数の油路が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバルブケース。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のバルブケースをその脚部がシリンダヘッド側に位置するように埋設したことを特徴とするシリンダヘッドカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−2144(P2012−2144A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138295(P2010−138295)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】