説明

バルブユニット及び流体噴射装置

【課題】小型化が可能なバルブユニット及び同バルブユニットを備えた流体噴射装置を提供する。
【解決手段】プリンタは、インクを噴射可能な記録ヘッドと、バルブユニットとを備える。このバルブユニットは、連通孔40及び流出孔47と連通可能に構成された圧力室36と、圧力室36の壁面の一部を構成し、その圧力室内の圧力変動に基づいて変位するフィルム部材35と、連通孔40を閉鎖する閉弁位置と連通孔40を開放する開弁位置との間を移動自在に構成された弁体41と、弁体41を常には閉弁位置に保持するように付勢するとともに、フィルム部材35の圧力室36の内方への変位に伴いフィルム部材35から押圧力を受けた場合には弁体41を閉弁位置に保持する姿勢態様から変位する板ばね48とを備える。弁体41は、フィルム部材35の圧力室36の内方への変位に基づいて、閉弁位置から開弁位置に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブユニット及び同バルブユニットを備えた流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射ヘッドから流体をターゲットに対して噴射する流体噴射装置として、例えば、インクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」と言う)が知られている。このプリンタは、インクを記録ヘッド(流体噴射ヘッド)のノズルから記録媒体に噴射することで印刷を行っている。
【0003】
こうしたプリンタにあっては、インクを記録ヘッドに安定して供給することが望ましい。そこで、こうした要望に応えるために、インクの流動圧を調整するためのバルブユニットを備えたプリンタが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
具体的には、特許文献1におけるプリンタに備えられたバルブユニットは、その一面に凹部が形成された定形性を有する流路形成部材と、この流路形成部材の凹部の開口を封止するフィルム部材と、フィルム部材と流路形成部材の凹部とで囲み形成された圧力室へのインク流入孔を開閉する弁体とを備えている。この弁体は、常にはコイルばねによってインク流入孔を閉鎖する閉弁位置に保持されている。そして、ノズルからインクが吐出されて圧力室の流出孔からインクが記録ヘッド側に流出すると、圧力室内に負圧が生じて、フィルム部材が圧力室の内方へ変位し、このフィルム部材の変位に基づく押圧力により弁体がコイルばねの付勢力に抗して流入孔を開放することで、圧力室内に新たなインクが供給されるようになっていた。
【0004】
そして更に、この特許文献1のバルブユニットにおいては、負圧を受けて変位するフィルム部材の面積を小さくしてバルブユニットを小型化するために、弁体とフィルム部材との間に片持ち梁からなる作動レバー(板ばね)を介装して、フィルム部材から弁体に付与される押圧力を倍力するようにしていた。
【特許文献1】特開2005−343123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のバルブユニットにおいては、弁体を付勢するコイルばねを組み込む領域が必要となるため、バルブユニットを小型化することが困難となっていた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化が可能なバルブユニット及び同バルブユニットを備えた流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のバルブユニットは、流体を流入させるための流入孔及び流体を流出させるための流出孔と連通可能に構成された圧力室と、該圧力室の壁面の一部を構成し、その圧力室内の圧力変動に基づいて変位する可撓性部材と、前記流入孔を閉鎖する閉弁位置と前記流入孔を開放する開弁位置との間を移動自在に構成された弁体と、該弁体を常には前記閉弁位置に保持するように付勢するとともに、前記可撓性部材の前記圧力室の内方への変位に伴い該可撓性部材から押圧力を受けた場合には前記弁体を前記閉弁位置に保持する姿勢態様から変位する弾性部材とを備え、前記弁体は、前記可撓性部材の前記圧力室の内方への変位に基づいて、前記閉弁位置から前記開弁位置に移動する。
【0007】
この構成によれば、可撓性部材の変位力を倍力するために備えられた弾性部材の付勢力によって弁体が閉弁位置に保持されるため、弁体を閉弁位置に保持するためのコイルばねを別途備える必要がない。したがって、弁体を付勢するコイルばねを組み込む領域の分、バルブユニットを小型化することができる。
【0008】
また、本発明のバルブユニットにおいて、前記弁体は、前記流入孔に挿通された状態で移動自在に構成されたバルブ軸と、該バルブ軸とともに移動自在に設けられ、前記弁体が閉弁位置にあるときに前記流入孔を封止する封止部と、前記バルブ軸における前記弾性部材と対応する部位に設けられた係合部とを備え、前記弾性部材は、板ばねにより構成されるとともに、前記弁体の前記係合部が係合可能な被係合部を備え、前記弁体は、前記閉弁位置において、前記係合部が前記板ばねの前記被係合部に係合された状態で前記板ばねによって前記開弁位置から前記閉弁位置に向かう方向に付勢されている。
【0009】
この構成によれば、閉弁位置において、弁体の係合部は板ばねの被係合部に係合された状態となっているため、板ばねから付勢力を受ける際に、弁体の板ばねに対する位置がずれることが抑制され、弁体の開閉精度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のバルブユニットは、前記弁体において、前記係合部は前記可撓性部材と対向する側に前記バルブ軸の断面積よりも表面積が大きくなるように形成された平面部を有し、前記板ばねにおいて、前記被係合部は前記弁体の前記バルブ軸を挿通可能であるとともに前記係合部を係止可能に形成され、前記弁体は、前記閉弁位置において、前記板ばねの前記被係合部に前記バルブ軸が挿通されて前記係合部が係止された状態で、前記板ばねによって付勢されるとともに、前記可撓性部材が前記圧力室の内方へ変位した場合には、前記平面部で前記可撓性部材の押圧力を受けることによって、前記閉弁位置から前記開弁位置に移動する。
【0011】
この構成によれば、弁体の係合部が板ばねの被係合部に係合された状態で弁体は板ばねにより付勢されているので、弁体と板ばねとを固定する必要がない。したがって、バルブユニットの組立操作が煩雑になることを回避することができる。また、係合部は可撓性部材と対向する側にバルブ軸の断面積よりも表面積が大きくなるように形成された平面部を有するため、可撓性部材によって押圧される際に、可撓性部材を破損することなく、受圧面積を大きく確保して変位力を効果的に受けることができる。
【0012】
また、本発明のバルブユニットは、前記弁体において、前記係合部は前記板ばねの前記被係合部と対応する部位に凸曲面部を備え、前記板ばねにおいて、前記被係合部は前記弁体の前記係合部を収容可能であるとともに前記係合部の前記凸曲面部と摺動可能な凹曲面部を備えた凹部を有する。
【0013】
この構成によれば、板ばねが可撓性部材の変位力を受けて撓んだ場合にも、弁体の係合部に備えられた凸曲面部と板ばねの被係合部に備えられた凹曲面部とが摺動することによって、バルブ軸が傾くことが抑制されるため、弁体の開閉精度を良好に保持することができる。
【0014】
また、本発明のバルブユニットは、前記弁体において、前記係合部は、前記平面部が平面視略長方形状をなすとともに、該平面部の端縁から前記バルブ軸の周面にかけての部位に、該平面部から離れるほど断面積が小さくなる凸曲面部を備え、前記板ばねにおいて、前記被係合部は、前記弁体の前記係合部を挿通可能な平面視略長方形状の挿通孔と、前記係合部を収容可能であるとともに前記係合部の前記凸曲面部と摺動可能な凹曲面部を備えた凹部とを有し、該凹部は、前記板ばねの前記可撓性部材と対向する側において、前記挿通孔と交差するように形成されている。
【0015】
この構成によれば、弁体の係合部を板ばねの挿通孔に挿通した後、弁体を回動させて係合部を凹部内に収容することで、弁体の係合部と板ばねの被係合部とを係合させることができる。したがって、バルブユニットの組立作業を簡素化することができる。
【0016】
また、本発明の流体噴射装置は、流体を噴射可能な流体噴射ヘッドと、上記バルブユニットとを備えた。
この構成によれば、上記バルブユニットと同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタという)に具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の流体噴射装置としてのプリンタ11は、略矩形箱状をなす本体ケース12を備えるとともに、この本体ケース12内の前方下部には、プラテン13が主走査方向となる本体ケース12の長手方向(図1において左右方向)に沿って架設されている。プラテン13は、記録用紙Pを支持する支持台であって、このプラテン13上には、図示しない紙送り機構により記録用紙Pが主走査方向と直交する副走査方向に沿って給送されるようになっている。
【0018】
本体ケース12内においてプラテン13の後部上方には、主走査方向に沿って棒状のガイド軸14が架設され、このガイド軸14にはキャリッジ15が移動可能に支持されている。また、本体ケース12内の後方側面においてガイド軸14の両端部と対応する位置には、駆動プーリ16及び従動プーリ17が回転自在に支持されている。駆動プーリ16にはキャリッジモータ18が連結されるとともに、一対のプーリ16,17間にはキャリッジ15を支持した無端状のタイミングベルト19が掛装されている。したがって、キャリッジ15は、キャリッジモータ18の駆動により、ガイド軸14に沿って主走査方向に往復移動可能となっている。
【0019】
本体ケース12内の一端側(図1では右端側)には箱形のカートリッジホルダ20が設けられている。カートリッジホルダ20には、インクカートリッジ21が流体としてのインクの色毎に複数個(本実施形態においては4個)、着脱可能に装着されている。
【0020】
各インクカートリッジ21はカートリッジホルダ20に装着された場合にインク供給チューブ22の上流端に接続されるようになっている。また、各インク供給チューブ22の下流端は、キャリッジ15上に搭載されたバルブユニット23の上流側と接続されるとともに、バルブユニット23の下流側はキャリッジ15の下面側に設けられた流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド24に接続されている。そして、記録ヘッド24の下面にて構成されるノズル形成面(図示略)には、複数のノズル開口(図示略)が形成されている。
【0021】
なお、バルブユニット23は、インクカートリッジ21から記録ヘッド24にインクを安定して供給するために設けられた弁機構であり、常には閉弁状態となっているが、ノズル開口から所定量のインクが吐出された場合には、開弁状態となって記録ヘッド24側へインクを供給するようになっている。
【0022】
カートリッジホルダ20とプラテン13との間、すなわち、記録用紙Pが至らない非印刷領域には、プリンタ11の電源オフ時や記録ヘッド24をメンテナンスする場合にキャリッジ15の待機場所となるホームポジションHPが設けられている。また、キャリッジ15がホームポジションHPに配置されたときの下方となる位置には、記録ヘッド24のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット25がキャップ26及び吸引ポンプ(図示略)等を構成要素として備えられている。そして、メンテナンス時等には、キャップ26が記録ヘッド24に対してノズル開口を囲うように当接し、その状態において吸引ポンプが駆動されることにより、インク供給チューブ22及び記録ヘッド24内にあるインクや気泡などが吸引排出されるようになっている。
【0023】
カートリッジホルダ20の上側には、加圧ユニット27が載置されている。加圧ユニット27は加圧ポンプ28を備え、加圧ポンプ28の駆動によって生成された加圧空気は空気供給路29を介してインクカートリッジ21内に圧送されるようになっている。なお、加圧ユニット27において、加圧ポンプ28の下流側の空気供給路29には圧力検出器30及び大気開放弁31が接続されている。
【0024】
空気供給路29は、大気開放弁31の下流側に配設された分配器32を境にインクカートリッジ21の個数と同数に分岐されている。そして、分岐された各空気供給路29は、それぞれの下流端が各々対応するインクカートリッジ21に接続されている。
【0025】
各インクカートリッジ21は、内部が加圧室(図示略)となっており、この加圧室の上側に空気供給路29の下流端が接続されている。また、各インクカートリッジ21の加圧室内には可撓性のフィルムによって袋状に形成されたインクパック(図示略)が収容されている。したがって、加圧ポンプ28が駆動された場合には、加圧ポンプ28から圧送された加圧空気は空気供給路29を介してインクカートリッジ21内に導入され、加圧空気の空気圧によってインクパックが押し潰される。すると、インクパック内に収容されたインクが記録ヘッド24側に供給されるようになっている。
【0026】
次に、バルブユニット23の具体的構成について図2〜図6に基づいて説明する。
このバルブユニット23は、図2〜図4に示すように、外形が略直方体形状をなす金属材料又は樹脂材料からなる定形性の流路形成部材33を備えており、この流路形成部材33の平面状をなす上面には複数(本実施形態では4つ)の平面視長方形状の上面側凹部34が形成されている。そして、各上面側凹部34の開口を封止するように可撓性部材としてのフィルム部材35が溶着されることにより、各上面側凹部34とフィルム部材35とによって複数(本実施形態では4つ)の圧力室36が囲み形成されている。なお、図2においては、フィルム部材35の図示を省略している。
【0027】
図3及び図4に示すように、流路形成部材33の平面状をなす下面には、各上面側凹部34の下方において後寄りの位置に、円柱形状の下面側凹部37が各々形成されている。そして、各下面側凹部37の開口部が保持部材38によって各々密閉されることにより、下面側凹部37と保持部材38とによってインク供給室39が各々囲み形成されている。そして、互いに対応する圧力室36とインク供給室39とは、流入孔としての円柱形状の連通孔40を通じてそれぞれ連通可能となっている。また、圧力室36及びインク供給室39内には弁体41が収容されている。
【0028】
図5に示すように、弁体41は、インク供給室39内に収容される円盤形状のシール部42と、シール部42に基端側が支持されるとともに、先端側(図3では上端側)が連通孔40を挿通して圧力室36内まで延設される円柱形状のバルブ軸43とを備えている。弁体41は、バルブ軸43の断面積が連通孔40の開口面積よりも小さく設定されているため、バルブ軸43が連通孔40に挿通された状態で上下方向に移動自在とされている。
【0029】
弁体41の板ばね48と対応する部位、すなわちバルブ軸43の上端側には、係合部44が設けられている。係合部44は、フィルム部材35と対向する側(図3〜図5では上端側)に、バルブ軸43の断面積よりも表面積が大きくなるように形成された平面視長方形状の平面部44aを有する。また、係合部44は平面部44aの端縁からバルブ軸43の周面にかけての部位に、平面部44aから離れるほど断面積が小さくなる凸曲面部44bを備えている。
【0030】
シール部42の上端面には、Oリングからなるシール部材45が固着されている。したがって、シール部材45はバルブ軸43とともに移動自在となっている。そして、図3に示すように、弁体41が連通孔40を閉鎖する閉弁位置にあるときには、封止部を構成するシール部42とシール部材45とによって連通孔40を封止する(閉鎖する)ようになっている。
【0031】
図3及び図4に示すように、流路形成部材33には、下面側凹部37の側面に下流端が開口するとともに、上流端がインク供給チューブ22の下流端に接続された流入路46が下面側凹部37毎に貫通形成されている。また、流路形成部材33には、上面側凹部34の下方においてインク供給室39より前寄りの位置に、上面側凹部34の底面に上流端が開口するとともに、下流端が記録ヘッド24に接続された流出孔47が上面側凹部34毎に貫通形成されている。流出孔47は圧力室36と常に連通された状態となっており、記録ヘッド24からインクが吐出された場合には、流出孔47を通じて圧力室36から記録ヘッド24側に向けてインクが流出するようになっている。
【0032】
フィルム部材35の下方には、上面側凹部34の長手方向(前後方向)に延びる長方形状の薄い金属板からなる板ばね48が配設されている。板ばね48は、後側の支持部48aが流路形成部材33に支持された片持ち梁となっている。また、板ばね48の前側は、支持部48aよりも左右方向の幅が広く形成された押圧部48bとなっている。そして、板ばね48の押圧部48bにおいて、弁体41の係合部44と対応する位置には、係合部44を係合可能な被係合部49が設けられている。
【0033】
図6に示すように、被係合部49は、弁体41の平面部44aを挿通可能な平面視長方形状の挿通孔49aと、板ばね48のフィルム部材35と対向する側(図3及び図6では上面側)において、挿通孔49aと直交するように形成された同じく平面視長方形状の凹部49bとを有する。凹部49bは、弁体41の係合部44を収容可能であるとともに、係合部44の凸曲面部44bと摺動可能な凹曲面部50を備えている。
【0034】
そして、バルブユニット23を組み立てる際には、押圧部48bの挿通孔49aに弁体41の係合部44を下側から挿通させた後、弁体41を図5の矢印に示すように水平方向に90度回転させて凹部49b内に係合部44を収容する。
【0035】
なお、バルブ軸43の長さは、係合部44が板ばね48の凹部49b内に収容された状態において、図3に示すように、板ばね48を下向きに付勢した状態となるように設定されている。したがって、弁体41は、図3に示す閉弁位置において、係合部44が板ばね48の被係合部49に係合された状態で、板ばね48の反力によって、常には開弁位置から閉弁位置に移動される方向(図3では上向き)に付勢されるようになっている。
【0036】
次に、以上のように構成されたバルブユニット23の作用について説明する。
プリンタ11にインクカートリッジ21が装着されて加圧ポンプ28が駆動されると、流入路46を通じてインク供給室39内にインクが充填される。続いて、キャップ26が記録ヘッド24に当接した状態で吸引ポンプが駆動されると、圧力室36内に負圧が生じるため、フィルム部材35が下側に撓んで、弁体41を押圧して下向きに移動させる。すると、圧力室36と連通孔40との間が連通された開弁状態となり、連通孔40,圧力室36及び流出孔47内にもインクが充填される。
【0037】
このようにバルブユニット23内へのインクの充填が終了すると、図3に示すように、弁体41が板ばね48によって閉弁位置に保持された閉弁状態となる。その後、印刷が開始されてノズルからインクが吐出されると、圧力室36内に負圧が生じる。すると、圧力室36の壁面の一部を構成するフィルム部材35が圧力室36内の圧力変動に基づいて、板ばね48の反力に抗して圧力室36の内方へ変位する。
【0038】
変位したフィルム部材35に押圧された板ばね48は、弁体41を閉弁位置に保持する姿勢態様から圧力室36の内方へ変位する。すると、板ばね48によって閉弁位置に保持されていた弁体41は、平面部44aでフィルム部材35の押圧力を受けることによって、閉弁位置から開弁位置に移動して、図4に示すように連通孔40を開放する。このとき、弁体41を押圧するフィルム部材35の押圧力は、板ばね48によって倍力されている。
【0039】
上述したようにバルブユニット23が開弁状態となると、インク供給室39内から圧力室36内にインクが供給される。すると、圧力室36内の負圧が解消されるため、バルブユニット23が閉弁状態となる。プリンタ11における印刷時には、このようにバルブユニット23が開弁動作及び閉弁動作を繰り返すことにより、ノズルから吐出されるインクの量に応じて、適切な量のインクが安定して記録ヘッド24に供給される。
【0040】
上記説明した実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、フィルム部材35の変位力を倍力するために備えられた板ばね48の付勢力によって弁体41が閉弁位置に保持されるため、弁体41を閉弁位置に保持するためのコイルばねを別途備える必要がない。したがって、弁体41を付勢するコイルばねを組み込む領域の分、バルブユニット23を小型化することができる。
【0041】
(2)上記実施形態では、閉弁位置において、弁体41の係合部44は板ばね48の被係合部49に係合された状態となっているため、板ばね48から付勢力を受ける際に、弁体41の板ばね48に対する位置がずれることが抑制され、弁体41の開閉精度を向上させることができる。
【0042】
(3)上記実施形態では、弁体41の係合部44が板ばね48の被係合部49に係止されているので、弁体41と板ばね48とを固定する必要がない。したがって、バルブユニット23の組立操作が煩雑になることを回避することができる。また、係合部44はフィルム部材35と対向する側にバルブ軸43の断面積よりも表面積が大きくなるように形成された平面部44aを有するため、フィルム部材35によって押圧される際に、フィルム部材35を破損することなく、受圧面積を大きく確保して変位力を効果的に受けることができる。
【0043】
(4)上記実施形態では、板ばね48がフィルム部材35の変位力を受けて撓んだ場合にも、弁体41の係合部44に備えられた凸曲面部44bと板ばね48の被係合部49に備えられた凹曲面部50とが摺動することによって、バルブ軸43が傾くことが抑制されるため、弁体41の開閉精度を良好に保持することができる。
【0044】
(5)上記実施形態では、弁体41の係合部44を板ばね48の挿通孔49aに挿通した後、弁体41を回動させて係合部44を凹部49b内に収容することで、弁体41の係合部44と板ばね48の被係合部49とを係合させることができる。したがって、バルブユニット23の組立作業を簡素化することができる。
【0045】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、バルブユニット23をインクの色毎に備えてもよい。
・上記実施形態において、弾性部材は板ばねに限定されず、例えば剛性を有する複数本の金属棒等として実現してもよい。
【0046】
・上記実施形態において、板ばね48の両端が支持されるようにしてもよい。
・上記実施形態において、板ばね48と弁体41とが固定されていてもよいし、板ばね48が挿通孔を備えず、弁体41の係合部を収容する凹部のみを備えるようにしてもよい。この構成においては、弁体41がフィルム部材35の変位力を受けた板ばね48によって押圧されることになる。
【0047】
・上記実施形態において、弁体41の係合部は、平面部と凸曲面部とを有する形状に限らない。例えば、係合部を球状に形成して、板ばね48がこの係合部を収容可能であるとともに、係合部の球状面と摺動可能な球状の凹部を備えるようにしてもよい。
【0048】
・上記実施形態において、弁体41の係合部が凹曲面部を備え、板ばね48の被係合部が凸曲面部を備えるようにしてもよい。
・上記実施形態において、弁体41の係合部44がフィルム部材35と対向する側にバルブ軸43の断面積よりも表面積が大きくなるように形成された平面部を有するとともに、板ばね48の被係合部が弁体41のバルブ軸43を挿通可能であるとともに係合部44を係止可能な挿通孔を備えるようにしてもよい。この場合には、弁体41の係合部44を板ばね48の上端面に係止される態様となる側面視T字状や側面視L字状に形成すればよい。
【0049】
・上記実施形態において、弁体41の平面部は平面視長方形状に限らず、例えば円形など任意の形状にしてもよい。
・上記実施形態において、流体噴射装置を、記録用紙Pの搬送方向(前後方向)と交差する方向において記録ヘッドが記録用紙Pの幅方向(左右方向)の長さに対応した全体形状をなす、いわゆるラインヘッド方式のプリンタに具体化してもよい。
【0050】
・上記各実施形態においては、本発明に係る流体消費装置をインクジェット式プリンタに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体等を含む)を噴射したり消費したりする流体消費装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体消費装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態におけるインクジェット式プリンタの概略平面図。
【図2】実施形態におけるバルブユニットの平面図。
【図3】図2におけるA−A線矢視断面図で、バルブユニットが閉弁された状態を示す。
【図4】図3において、バルブユニットが開弁された状態を示す断面図。
【図5】実施形態における弁体の斜視図。
【図6】実施形態における板ばねの要部斜視図。
【符号の説明】
【0052】
11…流体噴射装置としてのプリンタ、23…バルブユニット、24…流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、35…可撓性部材としてのフィルム部材、36…圧力室、40…流入孔としての連通孔、41…弁体、42…封止部を構成するシール部、43…バルブ軸、44…係合部、44a…平面部、44b…凸曲面部、45…封止部を構成するシール部材、47…流出孔、48…弾性部材としての板ばね、49…被係合部、49a…挿通孔、49b…凹部、50…凹曲面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流入させるための流入孔及び流体を流出させるための流出孔と連通可能に構成された圧力室と、
該圧力室の壁面の一部を構成し、その圧力室内の圧力変動に基づいて変位する可撓性部材と、
前記流入孔を閉鎖する閉弁位置と前記流入孔を開放する開弁位置との間を移動自在に構成された弁体と、
該弁体を常には前記閉弁位置に保持するように付勢するとともに、前記可撓性部材の前記圧力室の内方への変位に伴い該可撓性部材から押圧力を受けた場合には前記弁体を前記閉弁位置に保持する姿勢態様から変位する弾性部材とを備え、
前記弁体は、前記可撓性部材の前記圧力室の内方への変位に基づいて、前記閉弁位置から前記開弁位置に移動することを特徴とするバルブユニット。
【請求項2】
前記弁体は、前記流入孔に挿通された状態で移動自在に構成されたバルブ軸と、
該バルブ軸とともに移動自在に設けられ、前記弁体が閉弁位置にあるときに前記流入孔を封止する封止部と、
前記バルブ軸における前記弾性部材と対応する部位に設けられた係合部とを備え、
前記弾性部材は、板ばねにより構成されるとともに、前記弁体の前記係合部が係合可能な被係合部を備え、
前記弁体は、前記閉弁位置において、前記係合部が前記板ばねの前記被係合部に係合された状態で前記板ばねによって前記開弁位置から前記閉弁位置に向かう方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記弁体において、前記係合部は前記可撓性部材と対向する側に前記バルブ軸の断面積よりも表面積が大きくなるように形成された平面部を有し、
前記板ばねにおいて、前記被係合部は前記弁体の前記バルブ軸を挿通可能であるとともに前記係合部を係止可能に形成され、
前記弁体は、前記閉弁位置において、前記板ばねの前記被係合部に前記バルブ軸が挿通されて前記係合部が係止された状態で、前記板ばねによって付勢されるとともに、
前記可撓性部材が前記圧力室の内方へ変位した場合には、前記平面部で前記可撓性部材の押圧力を受けることによって、前記閉弁位置から前記開弁位置に移動することを特徴とする請求項2に記載のバルブユニット。
【請求項4】
前記弁体において、前記係合部は前記板ばねの前記被係合部と対応する部位に凸曲面部を備え、
前記板ばねにおいて、前記被係合部は前記弁体の前記係合部を収容可能であるとともに前記係合部の前記凸曲面部と摺動可能な凹曲面部を備えた凹部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のバルブユニット。
【請求項5】
前記弁体において、前記係合部は、前記平面部が平面視略長方形状をなすとともに、該平面部の端縁から前記バルブ軸の周面にかけての部位に、該平面部から離れるほど断面積が小さくなる凸曲面部を備え、
前記板ばねにおいて、前記被係合部は、前記弁体の前記係合部を挿通可能な平面視略長方形状の挿通孔と、前記係合部を収容可能であるとともに前記係合部の前記凸曲面部と摺動可能な凹曲面部を備えた凹部とを有し、
該凹部は、前記板ばねの前記可撓性部材と対向する側において、前記挿通孔と交差するように形成されていることを特徴とする請求項3に記載のバルブユニット。
【請求項6】
流体を噴射可能な流体噴射ヘッドと、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のバルブユニットとを備えたことを特徴とする流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−232216(P2008−232216A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70611(P2007−70611)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】