説明

バルブ組立用治具

【課題】作業効率、作業性及び作業負荷を改善できる治具の実現。
【解決手段】バルブ組立用治具20は、発泡性飲料を貯蔵する樽型容器1のバルブ構成部品としての弁軸部11に対してパッキン12を圧入するためのバルブ組立用治具20であって、前記パッキンを保持する治具本体21と、他の部品13,14,16を装着した前記弁軸部の一端部に前記パッキンを当接させた状態で、当該弁軸部の一端部を下方に押圧する押圧部22と、を有し、前記押圧部は、前記弁軸部の他端部を保持した状態で前記治具本体から鉛直上方に延びるバー部材23に対して鉛直方向に移動可能な可動部24と、前記弁軸部の一端部が前記パッキンに圧入されるように前記可動部を鉛直下方に移動させる操作部25と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール等の発泡性飲料を貯蔵する樽型容器のバルブ構成部品としての弁軸部に対してパッキンを圧入するためのバルブ組立用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ボールバルブの弁箱のステム孔にステムを自動装着するバルブ組立装置が記載されている。また、特許文献2には、ライン配管が加圧状態のままバルブの分解、修理を行う治具が記載されている。また、特許文献3には、工具を用いずに、弁体がケース本体に対して着脱自在なバタフライバルブ装置が記載されている。
【特許文献1】特開平05−057536号公報
【特許文献2】特開2003−097761号公報
【特許文献3】特開2000−257726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
樽型容器のガスバルブは定期的に分解整備を行う必要があり、バルブを再度組立てる際にバルブにパッキンを圧入する作業がある。この組立ての際に、パッキンが均一に装着されていないと、後でビール等の内容物が漏れる原因となるため重要な作業である。しかしながら、この組立て作業は、棒状の弁軸部にスプリング等の他の構成部品を装着させ、当該スプリングの付勢力に抗しながら、床に置いたパッキンに押し込むという力作業であるため、時間がかかり作業効率が悪く、不安定な作業で且つ作業負荷の大きい重労働である。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、作業効率、作業性及び作業負荷を改善できる治具を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るバルブ組立用治具は、発泡性飲料を貯蔵する樽型容器1のバルブ構成部品としての弁軸部11に対してパッキン12を圧入するためのバルブ組立用治具20であって、前記パッキンを保持する治具本体21と、他の部品13,14,16を装着した前記弁軸部の一端部に前記パッキンを当接させた状態で、当該弁軸部の一端部を下方に押圧する押圧部22と、を有し、前記押圧部は、前記弁軸部の他端部を保持した状態で前記治具本体から鉛直上方に延びるバー部材23に対して鉛直方向に移動可能な可動部24と、前記弁軸部の一端部が前記パッキンに圧入されるように前記可動部を鉛直下方に移動させる操作部25と、を有する。
【0006】
また、好ましくは、前記治具本体には、前記パッキンを当該治具本体に対して保持する第1アダプタ28が設けられ、前記可動部には、前記弁軸部の他端部を係合するための溝部29aが形成された第2アダプタ29が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パッキンを圧入する作業が容易になり、作業の迅速化に寄与する治具を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0009】
[樽型容器の構成]
図1は、本実施形態のバルブ組立用治具により組み立てられるバルブを含む樽型容器の全体構成を示す側断面図であり、中心軸Lに対して右側のガスバルブを断面で示している
図1に示すように、ステンレス製の円筒状の樽型容器は、ビール等の発泡性飲料を貯蔵するもので、容器本体1の中心軸L上の上部には、ガスバルブ10により開閉可能とされる開口部2が形成されている。
【0010】
このガスバルブ10は、中空円筒状の弁軸部11と、弁軸部1の上端部に圧入される樹脂製のパッキン12と、弁軸部11の上端部の内周部に配置されてパッキン12に当接する半球状の弁体13と、弁体13を上方に付勢する内周スプリング14と、樽型容器の開口部2に装着されて弁軸部11の上端部に装着されたパッキン12に当接するブッシュ部15と、弁軸部11の上端部の外周部に装着されて弁軸部11を上方に付勢する外周スプリング16と、を有する。
【0011】
上記内周スプリング14は、上端部が弁体13、下端部が弁軸部11の縮径部11aにそれぞれ保持されている。また、上記外周スプリング16は、上端部が弁軸部11のフランジ部11b、下端部が弁軸部11の外周部に固定されたフランジ部11cにそれぞれ保持されている。
【0012】
上記ブッシュ部15は、上記容器本体1の開口部2に装着されると共に、パッキン12に当接する当接部15aと、この当接部15aから下方に延びる円筒部15bと、を有する。上記ブッシュ部15は、発泡性飲料をグラス等に注ぐための不図示のガス注入機に接続され、このガス注入機からブッシュ部15とパッキン12との間を通って容器本体1内にガスを注入し、ガスにより容器本体1内の発泡性飲料が押し出されて、弁軸部11の下端部11dから中空内部を通って弁体13とパッキン12との間からガス注入機に排出される仕組みになっている。
【0013】
尚、樽型容器は様々な容量のものが存在し(例えば、10リットルや19リットル)、それぞれの容量に応じたガスバルブが存在する。
【0014】
[バルブ組立用治具の構成]
図2は、本実施形態のバルブ組立用治具の構成を示す側面図(a)及び上面図(b)であり、バルブ構成部品を断面で示している。図3は、第1アダプタの平面図(a)、側面図(b)及び裏面図(c)である。図4は、第2アダプタの平面図(a)、側面図(b)及び裏面図(c)である。
【0015】
本実施形態のバルブ組立用治具20は、図1のガスバルブ10の構成部品である弁軸部11の上端部にパッキン12を圧入するための治具であり、図2に示すように、パッキン12を保持する治具本体21と、図1に示す弁体13や内周スプリング14、外周スプリング16等の他の部品を装着した弁軸部11の上端部(フランジ部11c側)にパッキン12を当接させた状態で、当該弁軸部11の上端部を下方に押圧する押圧部22と、を有する。
【0016】
上記押圧部22は、上記弁軸部11の上端部を保持した状態で治具本体21から鉛直上方に延びるバー部材23に対して鉛直方向に移動可能な可動部24と、弁軸部11の下端部(図1では上端部)がパッキン12に圧入されるように可動部24を鉛直下方に移動させる操作を行うためのレバー部25と、を有する。
【0017】
上記可動部24の上端部24aと、その下方のバー部材23に固定された支持部26との間にはスプリング27が装着されている。レバー部25の一端部25aが上記支持部26に回転自在に軸支され、レバー部25の一端部25aから軸方向に所定距離離間した部位に形成された長穴25bが可動部24に形成された突起部24bに回転可能に嵌合している。
【0018】
上記治具本体21には、パッキン12を治具本体21の上面に対して保持する第1アダプタ28が設けられ、可動部24の端部には、弁軸部11の上端部(図1では下端部)を係合する第2アダプタ29が設けられる。
【0019】
そして、レバー部25を下方に押し下げることで、可動部24の上端部24aがスプリング27による上方への付勢力に抗しつつ、可動部24の突起部24bが長穴25bに沿って移動して梃子の原理により可動部24を押し下げる。
【0020】
この可動部24による下方への押圧により、パッキン12が弁軸部11の下端部(図1では上端部)に圧入される。
【0021】
尚、レバー部25の一端部25aを支持する支持部26は、ねじ等の締結部品26aによりバー部材23に対する上下位置が任意に変更可能であり、例えば、容器本体1の容量(10リットルや19リットル)に応じて弁軸部11の長さが異なる場合に、その弁軸部11の長さに応じた調節が可能である。
【0022】
また、治具本体21に装着される第1アダプタ28は、その上面部にパッキン12に合致する形状の凹部28aが形成されていると共に、下面部には治具本体21に嵌合する突起部28bが形成されている。また、可動部24に装着される第2アダプタ29には、その下面部に弁軸部11の上端部を係合するための溝部29aが形成されていると共に、上面部には可動部24の把持開口部24dに対してねじ等の締結部品24cにより着脱可能な凸部29bが形成されている。また、第1アダプタ28と第2アダプタ29とは鉛直方向に同軸となるように、治具本体21及び可動部24にそれぞれ装着される。
【0023】
また、上記長穴25bの長さは、可動部24の可動範囲を規定する一方、支持部26は可動部24の上限位置を規定している。
【0024】
上記構成によれば、従来の不安定且つ効率の悪い力作業を廃止し、少ない力で容易にパッキンの圧入作業が行えるようになり、作業の迅速化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る実施形態のバルブ組立用治具により組み立てられるバルブを含む樽型容器の全体構成を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る実施形態のバルブ組立用治具の構成を示す側面図(a)及び上面図(b)である。
【図3】第1アダプタの平面図(a)、側面図(b)及び裏面図(c)である。
【図4】第2アダプタの平面図(a)、側面図(b)及び裏面図(c)である。
【符号の説明】
【0026】
1 容器本体
2 開口部
10 ガスバルブ
11 弁軸部
12 パッキン
13 弁体
14 内周スプリング
15 ブッシュ部
16 外周スプリング
20 バルブ組立用治具
21 治具本体
22 押圧部
23 バー部材
24 可動部
25 レバー部
26 支持部
27 スプリング
28 第1アダプタ
29 第2アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性飲料を貯蔵する樽型容器のバルブ構成部品としての弁軸部に対してパッキンを圧入するためのバルブ組立用治具であって、
前記パッキンを保持する治具本体と、
他の部品を装着した前記弁軸部の一端部に前記パッキンを当接させた状態で、当該弁軸部の一端部を下方に押圧する押圧部と、を有し、
前記押圧部は、前記弁軸部の他端部を保持した状態で前記治具本体から鉛直上方に延びるバー部材に対して鉛直方向に移動可能な可動部と、前記弁軸部の一端部が前記パッキンに圧入されるように前記可動部を鉛直下方に移動させる操作部と、を有することを特徴とする治具。
【請求項2】
前記治具本体には、前記パッキンを当該治具本体に対して保持する第1アダプタが設けられ、前記可動部には、前記弁軸部の他端部を係合するための溝部が形成された第2アダプタが設けられることを特徴とする請求項1に記載の治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−23046(P2009−23046A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188575(P2007−188575)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】