バルブ装置
【課題】開弁時において入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流体を案内させ得るバルブ装置を提供する。
【解決手段】弁体2は、開弁方向および閉弁方向に移動可能にバルブの弁室16内に設けられており、閉弁時に弁座15に着座する着座面25と、閉弁時に着座面25よりも弁ポート14内に進入する突起部26とを有する。弁体2の突起部26は、弁体2に設けられた入口ポート12から弁ポート14を介して出口ポート13に流体を案内させて乱流化を抑制する整流案内面27を有する。
【解決手段】弁体2は、開弁方向および閉弁方向に移動可能にバルブの弁室16内に設けられており、閉弁時に弁座15に着座する着座面25と、閉弁時に着座面25よりも弁ポート14内に進入する突起部26とを有する。弁体2の突起部26は、弁体2に設けられた入口ポート12から弁ポート14を介して出口ポート13に流体を案内させて乱流化を抑制する整流案内面27を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弁ポートを開閉する弁体を有するバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ装置として、ボディと、開弁方向および閉弁方向に移動可能にバルブの弁室内に設けられた弁体とを有するものが知られている(特許文献1,2)。ボディは、入口ポートと出口ポートとの間に位置する弁ポートを有する。弁ポートを弁体が閉鎖する閉弁時には、弁体の着座面は、弁ポートを形成する弁座に着座する。弁ポートが開放されている開弁時には、流体は、入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに向けて流れる。このような開弁時には、弁体の着座面は、弁座に離間する位置に退避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−167342号公報
【特許文献2】特開2007−78039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかるバルブ装置では、開弁時における流体の流れを更に円滑にし、開弁時における圧力損失を低減させるべく、更なる改良が要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、開弁時において入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流体の流れを円滑にさせ得、開弁時における圧力損失を抑えるのに有利なバルブ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバルブ装置は、(i)入口ポートと、出口ポートと、入口ポートと出口ポートとの間に位置する弁ポートを形成する弁座と、弁室とを有するボディと、(ii)開弁方向および閉弁方向に移動可能にバルブの弁室内に設けられ、閉弁時に弁座に着座する着座面と、閉弁時に着座面よりも弁ポート内に進入する突起部とを有する弁体とを具備しており、(iii)弁体の突起部は、弁体に設けられ開弁時に入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流体を案内させて乱流化を抑制する整流案内面を有することを特徴とする。
【0007】
弁ポートを弁体が閉鎖する閉弁時には、弁体の着座面は、弁ポートを形成する弁座に着座する。これに対して、弁ポートが開放されている開弁時には、流体は、入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに向けて流れる。このような開弁時には、弁体の着座面は、弁座に離間する位置に退避している。弁体の突起部に設けられた整流案内面は、開弁時に、入口ポートからの流体を弁ポートおよび出口ポートに向かうように案内させて乱流化を抑制する。これにより開弁時における流体の乱流化が抑制され、圧力損失が抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るバルブ装置によれば、開弁時において、弁体に設けられた整流案内面の作用により、入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに向かう流体の流れを円滑にでき、流体の乱流化が抑制され、圧力損失が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図2】実施例1に係り、バルブ装置の閉弁状態を示す断面図である。
【図3】実施例2に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図4】実施例3に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図5】実施例4に係り、バルブ装置における突起部を示す斜視図である。
【図6】実施例4に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図7】実施例5に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図8】実施例6に係り、バルブ装置の閉弁状態を示す断面図である。
【図9】実施例6に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図10】実施例7に係り、バルブ装置の閉弁状態を示す断面図である。
【図11】実施例7に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るバルブ装置のボディは、入口ポートと、出口ポートと、入口ポートと出口ポートとの間に位置する弁ポートを形成する弁座と、弁室とを有する。弁体は、開弁方向および/または閉弁方向に移動可能にバルブの弁室内に設けられている。弁体を開弁方向および閉弁方向に移動させるアクチュエータが設けられていることが好ましい。
【0011】
バルブ装置が取り付けられる機器が負圧を発生させる場合には、負圧により弁体を開弁方向および/または閉弁方向に移動させることにしても良い。弁体は、閉弁時に弁座に着座する着座面と、閉弁時に着座面よりも弁ポート内に進入する突起部とを有する。
【0012】
弁体の突起部は、開弁時において、入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流体を案内させて乱流化を抑制する整流案内面を有する。弁体の弁体中心軸線に沿って弁体中心軸線を通る断面において、整流案内面は円弧凹状面とすることが好ましい。この場合、流体の流れの円滑化に貢献できる。円弧凹状面としては、凹状の球状面の一部で形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の一視点によれば、好ましくは、弁体の突起部は、開弁時において入口ポートから弁体を超えて弁室の内壁面で跳ね返る流体が、入口ポート、出口ポートおよび弁ポートのうちの少なくとも一方に向かうことを抑える抑制面を有する。これにより入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流れる流体の乱れが抑制され、圧力損失が更に抑制される。
【0014】
本発明の一視点によれば、好ましくは、弁室内において弁体の着座面と反対側に位置する空間に進入した流体を空間から、入口ポート、出口ポートおよび弁ポートのうちの少なくとも一方に吸引させる吸引通路が、弁体の外縁部の側に形成されている。この場合、弁体の着座面と反対側に位置する空間に、流体および/または流体に含まれる物質(例えば水)が過剰に残留することが抑制される。これにより物質の堆積、物質の凍結等が抑制される。
【0015】
本発明の一視点によれば、入口ポートの入口中心軸線と出口ポートの出口中心軸線とは互いに延長線上または実質的に平行に配置されていることが好ましい。この場合、開弁時において、弁体の突起部の整流案内面は、入口ポートの入口内壁面と出口ポートの出口内壁面とを結ぶ仮想延長線に沿って延設されていることが好ましい。これにより開弁時において入口ポートから弁ポートを通過して出口ポートに向かう流体の整流性が確保され易い。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1について図1および図2を参照して具体的に説明する。本実施例に係るバルブ装置は、ボディ1と、弁体2とを備えている。ボディ1は、流体供給機器60側に繋がる入口ポート12と、流体受入機器62に繋がる出口ポート13と、入口ポート12と出口ポート13との間に位置する弁ポート14と、弁ポート14を形成するリング状をなす弁座15と、弁室16とを有する。ボディ1は、入口ポート12、出口ポート13、弁ポート14を形成する通路ボディ部10と、作動機構を収容する作動ボディ部11とを有する。入口ポート12および出口ポート13は、互いに交差するように形成されており、L字型通路を形成している。
【0017】
弁体2は、開弁方向(矢印W1方向)および閉弁方向(矢印W2方向)に移動可能となるように、ボディ1の弁室16内に設けられている。弁体2は、開弁方向に延びる弁軸20と、弁軸20の先端部に鍔状に設けられた円盤状をなす弁部22とを有する。弁軸20は、ボディ1に設けられている軸受部材23により摺動可能に設けられている。軸受部材23は軸受作用およびシール作用を果たす。軸受部材23の軸長M1は、弁体2の開閉時に弁体2の傾きを抑制すべく設定されている。弁部22は、弁体中心軸線2cの回りを1周するリング形状をなす着座シール部24を有する。着座シール部24は、シール性を高めるべくシール材料で形成されており、弁座15に着座するためのリング形状をなす着座面25を形成する。シール材料としてはゴムが好ましいが、場合によっては樹脂や金属でも良い。シール性を考慮すると、樹脂や金属の着座面25は面粗度が小さいほど良い。
【0018】
すなわち、弁体2は、閉弁時に弁座15に着座する着座面25と、出口ポート13に向けて突出する突起部26とを有する。着座面25は、弁体2の弁体中心軸線2cを1周するように弁体中心軸線2cの回りにリング状に設けられている。突起部26は着座面25により包囲されている。開弁時において図1に示すように、突起部26は弁ポート14から離間する。これに対して、閉弁時においては、図2に示すように、突起部26は、着座面25よりも弁ポート14内に進入する。
【0019】
弁体2の突起部26は整流案内面27を有する。整流案内面27は出口ポート13に対向しており、開弁時において弁体2に設けられた入口ポート12から弁ポート14を介して出口ポート13に流体を案内させて乱流化を抑制するための整流作用を奏する。図1は、弁体中心軸線2cに沿って弁体中心軸線2cを通過するように切断した断面を模式的に示す。図1において、整流案内面27は、入口ポート12側の一端27eから、出口ポート13側の他端27fに向けて、円弧凹状面で形成されている。円弧凹状面は、弁部22のうち着座面25と反対側の背面28に向けて窪んでいる。ここで、整流案内面27の一端27eは、着座面25とほぼ同一の高さとされていることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。整流案内面27の他端27fは、弁体2の着座面25から遠ざかるように最も突出している。従って、整流案内面27の他端27fは、図2に示すように閉弁時において、弁ポート14に進入する進入量が最も大きくされている。
【0020】
弁体2を開弁方向および閉弁方向に移動させるアクチュエータ4がボディ1の作動ボディ部11内に設けられている。アクチュエータ4としては、弁体2を電動モータの駆動力で移動させる方式、弁体2を空気圧や油圧等の流体圧で移動させる方式、弁体2を負圧で移動させる方式等が例示される。
【0021】
本実施例によれば、弁体2の突起部26は抑制面30を有する。抑制面30は弁体2の弁体中心軸線2cとほぼ平行に沿うように、弁体中心軸線2cに沿って延設されており、弁体中心軸線2cの回りに形成されている。抑制面30は、突起部26の整流案内面27と他端27fで交差する。抑制面30は、開弁時において、入口ポート12から弁体2を超えて弁室16の内壁面1wで矢印X4方向に跳ね返る流体が入口ポート12や出口ポート13に向かうことを抑えることができる。これにより矢印X4方向に流れる流体と、入口ポート12から弁ポート14および出口ポート13に向けて矢印X1方向に流れる流体とが正面衝突することができるだけ抑制される。この結果、入口ポート12から弁ポート14および出口ポート13に向けて矢印X1方向に流れる流体の乱れが抑制される。なお閉弁するとき、図2に示すように、突起部26の抑制面30は、出口ポート13の出口内壁面13cに重なるように接近しているため、弁体2の閉弁動作を案内させて乱流化を抑制するガイド機能を果たすことができる。なお、バルブ装置の内部を流れる流体としては、気体でも良いし、液体でも良い。気体としては、空気、窒素ガス、酸素ガス、酸素含有ガス等が例示される。バルブ装置が燃料電池のスタックに適用される場合には、カソードガス、アノードガスが例示される。
【0022】
流体供給機器60は流体を流体受入機器62に供給できるものであれば、何でも良く、ポンプ、コンプレッサ、ブロアが例示される。流体受入機器62は流体を受け入れることができるものであれば、何でも良い。流体受入機器62としては例えば燃料電池のスタックとすることができる。この場合、バルブ装置は、スタックの内部に反応ガスを供給したり、反応ガスの供給を遮断したりするバルブとなる。反応ガスとしてはカソードガス(例えば酸素ガス、酸素含有ガス)、アノードガス(例えば水素ガス、水素含有ガス)が挙げられる。ここで、スタックは発電時には発電反応に伴い発熱するため、常温領域を超える温度域に保持される。スタックの発電運転が終了すると、発電反応に基づく発熱が停止されるため、スタックは常温領域付近まで冷却される。このため、スタックの発電停止から所定時間経過すると、冷却に伴いスタックの内部に封入されている水蒸気が凝縮して液化するため、スタックの内部は負圧化されることがある。負圧化が一定以上であれば、負圧に基づく吸引作用により、弁体2をスタック(流体受入機器62)の入口側に向けて矢印X3方向に吸引させる吸引力が増加するため、弁体2が弁ポート14を閉鎖する閉弁状態に良好に維持される。
【0023】
図1に示すように、弁体2が開弁しているとき、流体供給機器60から吐出された流体は、入口ポート12から矢印X1方向に通過し、更に弁ポート14および出口ポート13を介して、流体受入機器62の入口に向けて矢印X2,X3方向に流れる。この場合、弁体2の突起部26の整流案内面27が流体に対面するため、流体が弁体2の突起部26の整流案内面27に沿って円滑に流れ、乱流化が抑制され、ひいては圧力損失が低減される。このため、L字通路を構成する入口ポート12から出口ポート13に向けて流体を円滑に方向転換させて良好に流すことを期待できる。特に、整流案内面27は背面28側に窪んでいる円弧凹状面であるため、流体が整流案内面27に沿って円滑に流れる。
【0024】
更に本実施例によれば、入口ポート12から弁体2の他端27f側を超えて弁室16のうち突起部26の抑制面30に対向する空間29に流体が進入することがある。この場合、ボディ1の弁室16を形成する内壁面1wで、流体が逆方向(矢印X4方向)に跳ね返り、乱流化の要因となり得るおそれがある。この点本実施例によれば、弁体2の突起部26には、開弁時に内壁面1wに対向する抑制面30が突設されている。このため、内壁面1wで矢印X4方向に跳ね返った流体が再び入口ポート12側に向かうことを抑えることができる。このように本実施例によれば、矢印X4方向に流れる流体と、入口ポート12から弁ポート14および出口ポート13に向けて矢印X1方向に流れる流体とが衝突することができるだけ抑制される。従って、流体の乱れが一層抑制される利点が得られる。更に、内壁面1wで矢印X4方向に跳ね返った流体が出口ポート13側に向かうことも抑えることができる。
【0025】
本実施例によれば、整流案内面27および抑制面30を形成する突起部26は、着座シール部24と一体的に成形されており、弁体2の弁部22の表面22fに接着または螺子止め等の固定要素により取り付けられている。このため、弁体2の弁部22の構造や材質等に大きく影響させることなく、整流案内面27および抑制面30の形状や材質を任意に選択できる利点が得られる。更に、整流案内面27および抑制面30が損傷した場合には、新しい突起部26を弁体2の弁部22に接着または螺子止め等の固定要素により取り付けて交換させることも期待できる。また、バルブ装置の用途、種類、使用環境等に応じて、整流案内面27および抑制面30を形成する突起部26を成形し、その突起部26を接着または螺子止め等の固定要素により弁体2の弁部22に取り付けることにすれば、バルブ装置の用途、種類、使用環境等に応じて、整流案内面27ばかりか抑制面30の形状、高さ、サイズ等を変更できる利点が挙げられる。勿論、整流案内面27および抑制面30は弁体2の弁部22と同材質または同系材質で一体的に成形されていても良い。
【0026】
本実施例によれば、流体がバルブ装置の内部を流れるとき、弁室16内において弁体2の着座面25と反対側の背面28側に位置する空間29に流体が進入するおそれがある。そこで、図1に示すように、空間29内の流体を入口ポート12側に吸引させる吸引通路5が、弁体2の外縁部の側、つまり整流案内面27の一端27e側に形成されている。この場合、入口ポート12側を矢印X1方向に流れる流体の速度が速ければ、いわゆるエゼクタ作用により、吸引通路5内を矢印PA方向に吸引させる吸引力を大きくできる。従って、弁部22の背面28側に位置する空間29に残留する流体を弁ポート14や出口ポート13側に向けて矢印PA方向に効果的に吸引させることを期待できる。この結果、弁部22の背面28側の位置する空間29に流体が残留することが抑制される。従って、流体に含まれる物質(水等)が空間29に残留することが抑制される。これにより物質(水等)の過剰な堆積、寒冷等に起因する物質(水等)の過剰な凍結等が抑制され、弁体2の開閉動作の円滑性が確保される。
【0027】
図2に示すように、弁体2が閉弁している状態のとき、整流案内面27の他端27f側は、出口ポート13に進入している。これに対して、整流案内面27の一端27e側については、すなわち、弁体2の入口ポート12側については、出口ポート13に進入していないか、ほとんど進入していない。このため寒冷地等において閉弁時に凍結が発生するようなときであっても、整流案内面27の一端27e側の凍結状態は、整流案内面27の他端27f側の凍結状態に比較して少ないと考えられる。このため凍結が発生したとしても、弁体2の弁部22が全面的に凍結することが抑制される。故に、仮に弁体2の弁部22の凍結が発生していたとしても、アクチュエータ4の開弁駆動力により弁体2を開弁させるのに有利となる。
【実施例2】
【0028】
図3は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図3に示すように、弁体2の弁体中心軸線2cの先方に流体供給機器60が配置されている。弁体2の弁体中心軸線2cに対して交差する交差線2hの先方に流体受入機器62が配置されている。
【0029】
図3に示すように、弁体2が開弁しているときには、入口ポート12Bから矢印Y1方向に供給された流体が弁ポート14および出口ポート13Bを介して流体受入機器62の入口に向けて矢印Y2,Y3方向に流れる。この場合、流体が弁体2の突起部26の整流案内面27に沿って流れるため、流体の流れは円滑となり、乱流化が抑制され、ひいては圧力損失が低減される。
【0030】
ところで、突起部26の整流案内面27の他端27f側から弁室16に矢印Y5方向に進入した流体は、弁室16の内壁面1wで矢印X4方向に跳ね返るおそれがある。この場合、開弁時において弁体2の突起部26に抑制面30が内壁面1wに対向するように突設されている。このため、矢印X4方向に跳ね返った流体が入口ポート12Bや出口ポート13B等に向かうことを抑えることができる。これにより矢印X4方向に流れる流体と、入口ポート12Bから弁ポート14および出口ポート13Bに向けて矢印Y1方向に流れる流体とが衝突することができるだけ抑制される。この結果、入口ポート12Bから弁ポート14および出口ポート13Bに向けて矢印Y1,Y2,Y3方向に流れる流体の乱れが一層抑制される利点が得られる。
【0031】
本実施例においても、弁室16内において、弁体2の着座面25と反対側の背面28側に位置する空間29に流体が進入するおそれがある。そこで、空間29内の流体から吸引させる吸引通路5が、弁体2の外縁部の側、つまり整流案内面27の一端27e側に形成されている。この場合、整流案内面27に案内されて出口ポート13B内を矢印Y3方向に流れる流体の速度が速ければ、吸引通路5に対する吸引力を大きくできる。従って、弁部22の背面28側に位置する空間29に残留する流体を出口ポート13B側に吸引させることができる。この結果、空間29に流体が過剰に残留することが抑制される。従って、流体に含まれる物質(水等)が空間29に過剰に残留することが抑制される。これにより物質(水等)の過剰な堆積、寒冷地等において物質(水等)の過剰な凍結等が抑制され、弁体2の開閉動作の円滑性が確保される。
【0032】
本実施例によれば、着座シール部24はシール性を高めるべく、ゴムまたは樹脂等のシール材料を基材として形成されている。突起部26は着座シール部24と別の材質(金属等)で形成されている。但し、突起部26は弁部22と一体成形されていても良いし、接着または螺子止め等の固定要素で弁部22に固定されていても良い。
【実施例3】
【0033】
図4は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図4に示すように、突起部26の整流案内面27Cは、これの一端27eから他端27fに向かうにつれて、弁体中心軸線2cに沿った断面で、弁体中心軸線2cに対して傾斜しつつ直線状に設定されている。図4から理解できるように、弁体2が開弁しているとき、流体供給機器60から吐出された流体は、入口ポート12から矢印X1方向に通過し、更に弁ポート14および出口ポート13を介して、流体受入機器62の入口に向けて矢印X2,X3方向に流れる。この場合、弁体2の突起部26の整流案内面27Cが流体に対面するため、流体が弁体2の突起部26の整流案内面27に沿って円滑に流れる。このため、流体の流れは円滑となり、圧力損失が低減される。
【実施例4】
【0034】
図5および図6は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図5に示すように、整流案内面27は、これの一端27eから他端27fに向かうにつれて延設されている。整流案内面27は、断面で、三次元的に曲率を有する凹状の球状面で形成されている。図6に示すように、整流案内面27のうち深さが最も深い部位27hが、着座シール部24の着座面25を延長させた仮想延長線WAよりも弁部22の背面28側に位置するように、整流案内面27は三次元的に窪んでいる。この場合、流体の流れの円滑性が確保され、乱流化が抑制され、ひいては圧力損失が低減される。殊に、整流案内面27のうち最も深い部位27hに回り込んだ流体を、凹状の球状面である整流案内面27に沿って流し得る。このため、L字通路を構成する入口ポート12から出口ポート13に向けて流体を円滑に方向転換させて流すことを期待できる。
【0035】
本実施例によれば、整流案内面27および抑制面30を有する突起部26は、着座シール部24の別の材質で形成されている。但しこれに限らず、突起部26は、着座シール部24と同一または同系の材質で形成しても良い。着座シール部24の材質はシール性を高めるべく、弾性変形容易なゴムや樹脂で形成されている。整流案内面27および抑制面30を有する突起部26は、弾性変形しないように高い剛性を有する金属またはセラミックスで形成しても良い。
【実施例5】
【0036】
図7は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図7に示すように、入口ポート12Fおよび出口ポート13Fの位置関係は、図6に示す形態に対して逆とされている。弁体2の弁体中心軸線2cの先方に流体供給機器60が配置されている。弁体2の弁体中心軸線2cに対して交差する交差線2hの先方に流体受入機器62が配置されている。
【0037】
図7に示すように、弁体2が開弁しているときには、入口ポート12Fから供給された流体が弁ポート14および出口ポート13Fを介して流体受入機器62の入口に向けて矢印Y1,Y2,Y3方向に流れる。この場合、流体が弁体2の突起部26の整流案内面27に沿って流れるため、流体の流れは円滑となり、乱流化が抑制され、圧力損失が低減される。
【0038】
殊に、整流案内面27は、断面で、三次元的に曲率を有する凹状の球状面で形成されている。整流案内面27のうち深さが最も深い部位27hは、着座シール部24の着座面25を延長させた仮想延長線WAよりも背面28側に位置している。この場合、整流案内面27における流体の流れの円滑性が確保される。殊に、最も深い部位に回り込んだ流体を凹状の球状面に沿って流し得るため、L字通路を構成する入口ポート12Fから出口ポート13Fに向けて流体を円滑に方向転換させて流すことを期待できる。
【実施例6】
【0039】
図8および図9は実施例6を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図8および図9は、弁体中心軸線2cに沿って弁体中心軸線2cを通過するように切断した断面を模式的に示す。図8および図9に示すように、バルブ装置は、ボディ1と弁体2とを備えている。ボディ1は、流体供給機器60側に繋がる入口ポート12Hと、流体受入機器62に繋がる出口ポート13Hと、入口ポート12Hと出口ポート13Hとの間に位置する弁ポート14を形成するリング状をなすリング形状の弁座15と、弁室16とを有する。ここで、図8に示すように、ボディ1は、入口ポート12H、出口ポート13H、弁ポート14を形成する通路ボディ部10と、アクチュエータ4を収容する作動ボディ部11とを有する。弁座15は、弁体2の弁体中心軸線2cの回りを1周するようにリング状に形成されている。弁座15の頂面で形成される仮想面SAは、弁体2の弁体中心軸線2cに対してほぼ直交しているものの、入口ポート12Hの入口中心軸線12k、出口ポート13Hの出口中心軸線13kに対して傾斜している。
【0040】
図8および図9に示すように、入口ポート12Hの入口中心軸線12kと、出口ポート13Hの出口中心軸線13kとは、互いに延長線上または実質的に平行に配置されている。このため流体は入口ポート12Hから出口ポート13Hに向けて実質的にストレートに流れるため、バルブ装置における圧力損失が低減されている。弁体中心軸線2cは、入口ポート12Hの入口中心軸線12kと出口ポート13Hの出口中心軸線13kに対してθ1で傾斜している。弁ポート14は、互いに逆方向に下り坂となる第1傾斜面14fと第2傾斜面14sとの境界域に配置されている。このため弁ポート14、弁座15付近には水が残留しにくくなり、耐凍結性が高められている。
【0041】
弁体2は、開弁方向(矢印W1方向)および閉弁方向(矢印W2方向)に移動可能となるように、ボディ1の弁室16内に設けられている。弁体2は、開弁方向に延びる弁軸20と、弁軸20の先端部に径外方向に向けて鍔状に設けられた円盤状をなす弁部22とを有する。弁軸20は、ボディ1に設けられている軸受部材23により摺動可能に設けられている。軸受部材23は軸受作用およびシール作用を果たす。シール作用および軸受作用を併有する軸受部材23の軸長M1は、弁体2の開閉時に弁体2の傾きを抑制すべく設定されている。弁部22は、弁座15に着座するためのリング形状をなす着座面25を形成する。
【0042】
すなわち、図8および図9に示すように、弁体2の弁部22は、閉弁時に弁座15に着座する着座面25と、閉弁時に出口ポート13Hに向けて突出する突起部26とを有する。ここで、着座面25は、弁体2の弁体中心軸線2cを1周するように弁体中心軸線2cの回りにリング状に設けられている。突起部26はリング状の着座面25により包囲されている。図8に示すように、閉弁時において、突起部26は、弁部22の着座面25よりも弁ポート14内に進入する。この場合、図8に示すように、閉弁時には、突起部26の整流案内面27は弁座15に干渉、接触せず、弁座15と着座面25との閉弁接触を邪魔しないため、閉弁シール性が良好に維持される。
【0043】
図8および図9に示すように、弁体2の突起部26は整流案内面27を有する。整流案内面27は、断面で直線状とされており、入口ポート12Hの入口中心軸線12k、出口ポート13Hの出口中心軸線13kに対して実質的に平行に配置されている。換言すると、整流案内面27は、入口ポート12H側の一端27eから、出口ポート13H側の他端27fに向けて直線状に延設されている。
【0044】
換言すると、開弁時において、図9に示すように、弁体2の突起部26の整流案内面27は、入口ポート12Hの入口内壁面12cと出口ポート13Hの出口内壁面13cとを結ぶ仮想延長線に沿って延設されている。整流案内面27は、入口ポート12Hから弁ポート14を介して出口ポート13Hに向けて流れる流体を円滑に案内させて乱流化を抑制するための整流作用を奏するものであり、前述したように入口ポート12Hから出口ポート13Hに向けて直状に延設されている。このため流体が弁ポート14を通過する際、流体の乱流化が抑制され、ひいては圧力損失が低減される。
【0045】
弁体2の突起部26は交差面30Mを有する。交差面30Mは、突起部26の整流案内面27に対してこれの出口ポート13H側の他端27fで交差する。流体が流れる開弁時には、図9に示すように、交差面30M、突起部26は弁ポート14および出口ポート13Hから弁室16内に退避されているため、バルブ装置の内部を流れる流体の乱流化が抑制される。なお、図8に示すように、閉弁時には交差面30Mは、弁座15の内周面15iに隙間を介して対面するものの、弁座15の内周面15iに干渉、接触しないため、開弁性が良好に維持される。
【0046】
流体供給機器60は流体を供給されるものであれば、何でも良い。流体受入機器62は流体を受け入れることができるものであれば、何でも良い。流体受入機器62としては例えば燃料電池のスタックとすることができる。この場合、バルブ装置は、スタックの内部に反応ガスを供給したり、供給を遮断したりするバルブとなる。前述したように、スタックは発電時には発電反応に伴い発熱するため、常温領域を超える温度域に保持される。スタックの発電運転が終了すると、発電反応に基づく発熱が停止されるため、スタックは常温領域付近まで冷却される。このような過程を経るスタックの場合には、スタックの発電停止から所定時間経過すると、スタックの内部は負圧になることがある。スタック(流体受入機器62)の内部が負圧になれば、負圧に基づく吸引作用により、弁体2をスタック(流体受入機器62)の入口側に向けて矢印K3に吸引する吸引力が増加するため、弁体2が弁ポート14を閉鎖する閉弁状態に良好に維持される。
【0047】
図8に示すように、弁体2が開弁するときには、入口ポート12Hから矢印K1方向に供給された流体が弁ポート14および出口ポート13Hを介して、流体受入機器62に向けて矢印K2,K3方向に流れる。この場合、流体が弁体2の突起部26の断面直状の整流案内面27に沿って流れるため、流体の流れは円滑となり、圧力損失が低減される。
【0048】
本実施例によれば、整流案内面27および交差面30Mを形成する突起部26は、弁体2の弁部22に接着または螺子止め等の固定要素により取り付けられていても良いし、あるいは、弁体2の弁部22と共に一体成形品として成形されていても良い。前者の場合には、弁体2の弁部22に対して、突起部26の整流案内面27および交差面30Mの形状を、任意に選択できる利点が得られる。更には突起部26が損傷した場合には、新しい突起部26を弁体2の弁部22に接着または螺子止め等の固定要素により取り付けることができる。また、バルブ装置の用途、種類、使用環境等に応じて、整流案内面27および交差面30Mを形成する突起部26を成形し、その突起部26を接着または螺子止め等の固定要素により弁体2の弁部22に取り付けることにすれば、バルブ装置の用途、種類、使用環境等に応じて整流案内面27ばかりか抑制面30の形状、高さ、サイズ等変更できる利点が挙げられる。勿論、突起部26は弁体2の弁部22と同材質で一体的に成形されていても良い。
【0049】
ところで本実施例によれば、弁室16内において弁部22の着座面25と反対側の背面28側に位置する空間29に流体が進入するおそれがある。そこで、図9示すように開弁時において、背面28側の空間29内の流体を入口ポート12H側に吸引させるための吸引通路5が、弁体2の外縁部の側、つまり整流案内面27の他端27f側に形成されている。この場合、出口ポート13H側を矢印K3方向に流れる流体の速度が速ければ、いわゆるエゼクタ作用により、吸引通路5内を矢印PA方向に吸引させる吸引力を大きくできる。殊に、弁ポート14では入口ポート12H、出口ポート13Hよりも流路断面積が小さく設定されているため、弁ポート14付近における流速が増加し、いわゆるエゼクタ作用が増加し、弁室16内を弁ポート14や出口ポート13Hに吸引させる吸引力を大きくできる利点が挙げられる。
【0050】
従って、弁部22の背面28側に位置する空間29に残留する流体を、弁ポート14および出口ポート13H側に効果的に吸引させることを期待できる。この結果、空間29に流体が残留することが抑制される。従って、残留する流体に含まれる物質(水等)が背面28側の空間29に残留することが抑制される。これにより空間29において物質(水等)が過剰に堆積したり、寒冷等に起因して物質(水等)が過剰に凍結したりすることが抑制され、弁体2の開閉動作の円滑性が確保される。
【実施例7】
【0051】
図10および図11は実施例7を示す。本実施例は実施例6と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図10および図11は、弁体2の弁体中心軸線2cに沿って弁体中心軸線2cを通過するように切断した断面を模式的に示す。図10および図11に示すように、入口ポート12Hと出口ポート13Hとの関係は、実施例6とは逆の関係とされている。図10に示すように、閉弁時において、突起部26は、弁部22の着座面25よりも入口ポート12Hに向けて進入する。弁体2の突起部26は整流案内面27を有する。
【0052】
図11に示すように、突起部26の整流案内面27は、入口ポート12H側の一端27eから、出口ポート13H側の他端27fに向けて断面で直線状に延設されている。具体的には、入口ポート12Hの入口中心軸線12k、出口ポート13Hの出口中心軸線13kに対して、突起部26の整流案内面27は、延長線上または実質的に平行に配置されている。更に換言すると、図11に示すように、整流案内面27は、開弁時において、入口ポート12Hの入口内壁面12cと出口ポート13Hの出口内壁面13cとを結ぶ仮想延長線に沿って延設されている。このため、流体が流れるとき、流体の乱流化が抑制され、ひいては圧力損失を低減させることができる。
【0053】
突起部26は、整流案内面27と共に交差面30Mを有する。交差面30Mは、弁体2の弁体中心軸線2cとほぼ平行に沿っており、突起部26の整流案内面27と一端27eで交差する。
【0054】
本実施例においても、開弁時には、弁室16内において弁体2の着座面25と反対側に位置する背面28側に位置する空間29に流体が進入するおそれがある。そこで、開弁時に空間29内の流体から吸引させる吸引通路5が、弁体2の外縁部の側、つまり整流案内面27のうち入口ポート12Hに近い一端27e側に形成されている。この場合、開弁時においては、入口ポート12H側を矢印K1方向に流れる流体の速度が速ければ、いわゆるエゼクタ作用により、吸引通路5内を矢印PA方向に吸引させる吸引力を大きくできる。従って、空間29に残留する水や異物等を含む流体を入口ポート12Hおよび弁ポート14側に効果的に吸引させることを期待できる。この結果、空間29に流体が過剰に残留することが抑制される。これにより物質(水等)の過剰な堆積、寒冷に起因する物質(水等)の過剰な凍結等が抑制され、弁体2の開閉動作の円滑性が確保される。
【実施例8】
【0055】
その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。アクチュエータが設けられているが、手動操作で弁体を開弁させる方式とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は例えば燃料電池システム、加湿システム、水素生成シテスム等の各種流体機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1はボディ、12は入口ポート、13は出口ポート、14は弁ポート、15は弁座、16は弁室、2は弁体、20は弁軸、22は弁部、24は着座シール部、26は突起部、27は整流案内面、28は背面、29は空間、30は抑制面、4はアクチュエータ4、5は吸引通路、60は流体供給機器、62は流体受入機器を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は弁ポートを開閉する弁体を有するバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ装置として、ボディと、開弁方向および閉弁方向に移動可能にバルブの弁室内に設けられた弁体とを有するものが知られている(特許文献1,2)。ボディは、入口ポートと出口ポートとの間に位置する弁ポートを有する。弁ポートを弁体が閉鎖する閉弁時には、弁体の着座面は、弁ポートを形成する弁座に着座する。弁ポートが開放されている開弁時には、流体は、入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに向けて流れる。このような開弁時には、弁体の着座面は、弁座に離間する位置に退避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−167342号公報
【特許文献2】特開2007−78039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかるバルブ装置では、開弁時における流体の流れを更に円滑にし、開弁時における圧力損失を低減させるべく、更なる改良が要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、開弁時において入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流体の流れを円滑にさせ得、開弁時における圧力損失を抑えるのに有利なバルブ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバルブ装置は、(i)入口ポートと、出口ポートと、入口ポートと出口ポートとの間に位置する弁ポートを形成する弁座と、弁室とを有するボディと、(ii)開弁方向および閉弁方向に移動可能にバルブの弁室内に設けられ、閉弁時に弁座に着座する着座面と、閉弁時に着座面よりも弁ポート内に進入する突起部とを有する弁体とを具備しており、(iii)弁体の突起部は、弁体に設けられ開弁時に入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流体を案内させて乱流化を抑制する整流案内面を有することを特徴とする。
【0007】
弁ポートを弁体が閉鎖する閉弁時には、弁体の着座面は、弁ポートを形成する弁座に着座する。これに対して、弁ポートが開放されている開弁時には、流体は、入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに向けて流れる。このような開弁時には、弁体の着座面は、弁座に離間する位置に退避している。弁体の突起部に設けられた整流案内面は、開弁時に、入口ポートからの流体を弁ポートおよび出口ポートに向かうように案内させて乱流化を抑制する。これにより開弁時における流体の乱流化が抑制され、圧力損失が抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るバルブ装置によれば、開弁時において、弁体に設けられた整流案内面の作用により、入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに向かう流体の流れを円滑にでき、流体の乱流化が抑制され、圧力損失が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図2】実施例1に係り、バルブ装置の閉弁状態を示す断面図である。
【図3】実施例2に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図4】実施例3に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図5】実施例4に係り、バルブ装置における突起部を示す斜視図である。
【図6】実施例4に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図7】実施例5に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図8】実施例6に係り、バルブ装置の閉弁状態を示す断面図である。
【図9】実施例6に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【図10】実施例7に係り、バルブ装置の閉弁状態を示す断面図である。
【図11】実施例7に係り、バルブ装置の開弁状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るバルブ装置のボディは、入口ポートと、出口ポートと、入口ポートと出口ポートとの間に位置する弁ポートを形成する弁座と、弁室とを有する。弁体は、開弁方向および/または閉弁方向に移動可能にバルブの弁室内に設けられている。弁体を開弁方向および閉弁方向に移動させるアクチュエータが設けられていることが好ましい。
【0011】
バルブ装置が取り付けられる機器が負圧を発生させる場合には、負圧により弁体を開弁方向および/または閉弁方向に移動させることにしても良い。弁体は、閉弁時に弁座に着座する着座面と、閉弁時に着座面よりも弁ポート内に進入する突起部とを有する。
【0012】
弁体の突起部は、開弁時において、入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流体を案内させて乱流化を抑制する整流案内面を有する。弁体の弁体中心軸線に沿って弁体中心軸線を通る断面において、整流案内面は円弧凹状面とすることが好ましい。この場合、流体の流れの円滑化に貢献できる。円弧凹状面としては、凹状の球状面の一部で形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の一視点によれば、好ましくは、弁体の突起部は、開弁時において入口ポートから弁体を超えて弁室の内壁面で跳ね返る流体が、入口ポート、出口ポートおよび弁ポートのうちの少なくとも一方に向かうことを抑える抑制面を有する。これにより入口ポートから弁ポートを介して出口ポートに流れる流体の乱れが抑制され、圧力損失が更に抑制される。
【0014】
本発明の一視点によれば、好ましくは、弁室内において弁体の着座面と反対側に位置する空間に進入した流体を空間から、入口ポート、出口ポートおよび弁ポートのうちの少なくとも一方に吸引させる吸引通路が、弁体の外縁部の側に形成されている。この場合、弁体の着座面と反対側に位置する空間に、流体および/または流体に含まれる物質(例えば水)が過剰に残留することが抑制される。これにより物質の堆積、物質の凍結等が抑制される。
【0015】
本発明の一視点によれば、入口ポートの入口中心軸線と出口ポートの出口中心軸線とは互いに延長線上または実質的に平行に配置されていることが好ましい。この場合、開弁時において、弁体の突起部の整流案内面は、入口ポートの入口内壁面と出口ポートの出口内壁面とを結ぶ仮想延長線に沿って延設されていることが好ましい。これにより開弁時において入口ポートから弁ポートを通過して出口ポートに向かう流体の整流性が確保され易い。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1について図1および図2を参照して具体的に説明する。本実施例に係るバルブ装置は、ボディ1と、弁体2とを備えている。ボディ1は、流体供給機器60側に繋がる入口ポート12と、流体受入機器62に繋がる出口ポート13と、入口ポート12と出口ポート13との間に位置する弁ポート14と、弁ポート14を形成するリング状をなす弁座15と、弁室16とを有する。ボディ1は、入口ポート12、出口ポート13、弁ポート14を形成する通路ボディ部10と、作動機構を収容する作動ボディ部11とを有する。入口ポート12および出口ポート13は、互いに交差するように形成されており、L字型通路を形成している。
【0017】
弁体2は、開弁方向(矢印W1方向)および閉弁方向(矢印W2方向)に移動可能となるように、ボディ1の弁室16内に設けられている。弁体2は、開弁方向に延びる弁軸20と、弁軸20の先端部に鍔状に設けられた円盤状をなす弁部22とを有する。弁軸20は、ボディ1に設けられている軸受部材23により摺動可能に設けられている。軸受部材23は軸受作用およびシール作用を果たす。軸受部材23の軸長M1は、弁体2の開閉時に弁体2の傾きを抑制すべく設定されている。弁部22は、弁体中心軸線2cの回りを1周するリング形状をなす着座シール部24を有する。着座シール部24は、シール性を高めるべくシール材料で形成されており、弁座15に着座するためのリング形状をなす着座面25を形成する。シール材料としてはゴムが好ましいが、場合によっては樹脂や金属でも良い。シール性を考慮すると、樹脂や金属の着座面25は面粗度が小さいほど良い。
【0018】
すなわち、弁体2は、閉弁時に弁座15に着座する着座面25と、出口ポート13に向けて突出する突起部26とを有する。着座面25は、弁体2の弁体中心軸線2cを1周するように弁体中心軸線2cの回りにリング状に設けられている。突起部26は着座面25により包囲されている。開弁時において図1に示すように、突起部26は弁ポート14から離間する。これに対して、閉弁時においては、図2に示すように、突起部26は、着座面25よりも弁ポート14内に進入する。
【0019】
弁体2の突起部26は整流案内面27を有する。整流案内面27は出口ポート13に対向しており、開弁時において弁体2に設けられた入口ポート12から弁ポート14を介して出口ポート13に流体を案内させて乱流化を抑制するための整流作用を奏する。図1は、弁体中心軸線2cに沿って弁体中心軸線2cを通過するように切断した断面を模式的に示す。図1において、整流案内面27は、入口ポート12側の一端27eから、出口ポート13側の他端27fに向けて、円弧凹状面で形成されている。円弧凹状面は、弁部22のうち着座面25と反対側の背面28に向けて窪んでいる。ここで、整流案内面27の一端27eは、着座面25とほぼ同一の高さとされていることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。整流案内面27の他端27fは、弁体2の着座面25から遠ざかるように最も突出している。従って、整流案内面27の他端27fは、図2に示すように閉弁時において、弁ポート14に進入する進入量が最も大きくされている。
【0020】
弁体2を開弁方向および閉弁方向に移動させるアクチュエータ4がボディ1の作動ボディ部11内に設けられている。アクチュエータ4としては、弁体2を電動モータの駆動力で移動させる方式、弁体2を空気圧や油圧等の流体圧で移動させる方式、弁体2を負圧で移動させる方式等が例示される。
【0021】
本実施例によれば、弁体2の突起部26は抑制面30を有する。抑制面30は弁体2の弁体中心軸線2cとほぼ平行に沿うように、弁体中心軸線2cに沿って延設されており、弁体中心軸線2cの回りに形成されている。抑制面30は、突起部26の整流案内面27と他端27fで交差する。抑制面30は、開弁時において、入口ポート12から弁体2を超えて弁室16の内壁面1wで矢印X4方向に跳ね返る流体が入口ポート12や出口ポート13に向かうことを抑えることができる。これにより矢印X4方向に流れる流体と、入口ポート12から弁ポート14および出口ポート13に向けて矢印X1方向に流れる流体とが正面衝突することができるだけ抑制される。この結果、入口ポート12から弁ポート14および出口ポート13に向けて矢印X1方向に流れる流体の乱れが抑制される。なお閉弁するとき、図2に示すように、突起部26の抑制面30は、出口ポート13の出口内壁面13cに重なるように接近しているため、弁体2の閉弁動作を案内させて乱流化を抑制するガイド機能を果たすことができる。なお、バルブ装置の内部を流れる流体としては、気体でも良いし、液体でも良い。気体としては、空気、窒素ガス、酸素ガス、酸素含有ガス等が例示される。バルブ装置が燃料電池のスタックに適用される場合には、カソードガス、アノードガスが例示される。
【0022】
流体供給機器60は流体を流体受入機器62に供給できるものであれば、何でも良く、ポンプ、コンプレッサ、ブロアが例示される。流体受入機器62は流体を受け入れることができるものであれば、何でも良い。流体受入機器62としては例えば燃料電池のスタックとすることができる。この場合、バルブ装置は、スタックの内部に反応ガスを供給したり、反応ガスの供給を遮断したりするバルブとなる。反応ガスとしてはカソードガス(例えば酸素ガス、酸素含有ガス)、アノードガス(例えば水素ガス、水素含有ガス)が挙げられる。ここで、スタックは発電時には発電反応に伴い発熱するため、常温領域を超える温度域に保持される。スタックの発電運転が終了すると、発電反応に基づく発熱が停止されるため、スタックは常温領域付近まで冷却される。このため、スタックの発電停止から所定時間経過すると、冷却に伴いスタックの内部に封入されている水蒸気が凝縮して液化するため、スタックの内部は負圧化されることがある。負圧化が一定以上であれば、負圧に基づく吸引作用により、弁体2をスタック(流体受入機器62)の入口側に向けて矢印X3方向に吸引させる吸引力が増加するため、弁体2が弁ポート14を閉鎖する閉弁状態に良好に維持される。
【0023】
図1に示すように、弁体2が開弁しているとき、流体供給機器60から吐出された流体は、入口ポート12から矢印X1方向に通過し、更に弁ポート14および出口ポート13を介して、流体受入機器62の入口に向けて矢印X2,X3方向に流れる。この場合、弁体2の突起部26の整流案内面27が流体に対面するため、流体が弁体2の突起部26の整流案内面27に沿って円滑に流れ、乱流化が抑制され、ひいては圧力損失が低減される。このため、L字通路を構成する入口ポート12から出口ポート13に向けて流体を円滑に方向転換させて良好に流すことを期待できる。特に、整流案内面27は背面28側に窪んでいる円弧凹状面であるため、流体が整流案内面27に沿って円滑に流れる。
【0024】
更に本実施例によれば、入口ポート12から弁体2の他端27f側を超えて弁室16のうち突起部26の抑制面30に対向する空間29に流体が進入することがある。この場合、ボディ1の弁室16を形成する内壁面1wで、流体が逆方向(矢印X4方向)に跳ね返り、乱流化の要因となり得るおそれがある。この点本実施例によれば、弁体2の突起部26には、開弁時に内壁面1wに対向する抑制面30が突設されている。このため、内壁面1wで矢印X4方向に跳ね返った流体が再び入口ポート12側に向かうことを抑えることができる。このように本実施例によれば、矢印X4方向に流れる流体と、入口ポート12から弁ポート14および出口ポート13に向けて矢印X1方向に流れる流体とが衝突することができるだけ抑制される。従って、流体の乱れが一層抑制される利点が得られる。更に、内壁面1wで矢印X4方向に跳ね返った流体が出口ポート13側に向かうことも抑えることができる。
【0025】
本実施例によれば、整流案内面27および抑制面30を形成する突起部26は、着座シール部24と一体的に成形されており、弁体2の弁部22の表面22fに接着または螺子止め等の固定要素により取り付けられている。このため、弁体2の弁部22の構造や材質等に大きく影響させることなく、整流案内面27および抑制面30の形状や材質を任意に選択できる利点が得られる。更に、整流案内面27および抑制面30が損傷した場合には、新しい突起部26を弁体2の弁部22に接着または螺子止め等の固定要素により取り付けて交換させることも期待できる。また、バルブ装置の用途、種類、使用環境等に応じて、整流案内面27および抑制面30を形成する突起部26を成形し、その突起部26を接着または螺子止め等の固定要素により弁体2の弁部22に取り付けることにすれば、バルブ装置の用途、種類、使用環境等に応じて、整流案内面27ばかりか抑制面30の形状、高さ、サイズ等を変更できる利点が挙げられる。勿論、整流案内面27および抑制面30は弁体2の弁部22と同材質または同系材質で一体的に成形されていても良い。
【0026】
本実施例によれば、流体がバルブ装置の内部を流れるとき、弁室16内において弁体2の着座面25と反対側の背面28側に位置する空間29に流体が進入するおそれがある。そこで、図1に示すように、空間29内の流体を入口ポート12側に吸引させる吸引通路5が、弁体2の外縁部の側、つまり整流案内面27の一端27e側に形成されている。この場合、入口ポート12側を矢印X1方向に流れる流体の速度が速ければ、いわゆるエゼクタ作用により、吸引通路5内を矢印PA方向に吸引させる吸引力を大きくできる。従って、弁部22の背面28側に位置する空間29に残留する流体を弁ポート14や出口ポート13側に向けて矢印PA方向に効果的に吸引させることを期待できる。この結果、弁部22の背面28側の位置する空間29に流体が残留することが抑制される。従って、流体に含まれる物質(水等)が空間29に残留することが抑制される。これにより物質(水等)の過剰な堆積、寒冷等に起因する物質(水等)の過剰な凍結等が抑制され、弁体2の開閉動作の円滑性が確保される。
【0027】
図2に示すように、弁体2が閉弁している状態のとき、整流案内面27の他端27f側は、出口ポート13に進入している。これに対して、整流案内面27の一端27e側については、すなわち、弁体2の入口ポート12側については、出口ポート13に進入していないか、ほとんど進入していない。このため寒冷地等において閉弁時に凍結が発生するようなときであっても、整流案内面27の一端27e側の凍結状態は、整流案内面27の他端27f側の凍結状態に比較して少ないと考えられる。このため凍結が発生したとしても、弁体2の弁部22が全面的に凍結することが抑制される。故に、仮に弁体2の弁部22の凍結が発生していたとしても、アクチュエータ4の開弁駆動力により弁体2を開弁させるのに有利となる。
【実施例2】
【0028】
図3は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図3に示すように、弁体2の弁体中心軸線2cの先方に流体供給機器60が配置されている。弁体2の弁体中心軸線2cに対して交差する交差線2hの先方に流体受入機器62が配置されている。
【0029】
図3に示すように、弁体2が開弁しているときには、入口ポート12Bから矢印Y1方向に供給された流体が弁ポート14および出口ポート13Bを介して流体受入機器62の入口に向けて矢印Y2,Y3方向に流れる。この場合、流体が弁体2の突起部26の整流案内面27に沿って流れるため、流体の流れは円滑となり、乱流化が抑制され、ひいては圧力損失が低減される。
【0030】
ところで、突起部26の整流案内面27の他端27f側から弁室16に矢印Y5方向に進入した流体は、弁室16の内壁面1wで矢印X4方向に跳ね返るおそれがある。この場合、開弁時において弁体2の突起部26に抑制面30が内壁面1wに対向するように突設されている。このため、矢印X4方向に跳ね返った流体が入口ポート12Bや出口ポート13B等に向かうことを抑えることができる。これにより矢印X4方向に流れる流体と、入口ポート12Bから弁ポート14および出口ポート13Bに向けて矢印Y1方向に流れる流体とが衝突することができるだけ抑制される。この結果、入口ポート12Bから弁ポート14および出口ポート13Bに向けて矢印Y1,Y2,Y3方向に流れる流体の乱れが一層抑制される利点が得られる。
【0031】
本実施例においても、弁室16内において、弁体2の着座面25と反対側の背面28側に位置する空間29に流体が進入するおそれがある。そこで、空間29内の流体から吸引させる吸引通路5が、弁体2の外縁部の側、つまり整流案内面27の一端27e側に形成されている。この場合、整流案内面27に案内されて出口ポート13B内を矢印Y3方向に流れる流体の速度が速ければ、吸引通路5に対する吸引力を大きくできる。従って、弁部22の背面28側に位置する空間29に残留する流体を出口ポート13B側に吸引させることができる。この結果、空間29に流体が過剰に残留することが抑制される。従って、流体に含まれる物質(水等)が空間29に過剰に残留することが抑制される。これにより物質(水等)の過剰な堆積、寒冷地等において物質(水等)の過剰な凍結等が抑制され、弁体2の開閉動作の円滑性が確保される。
【0032】
本実施例によれば、着座シール部24はシール性を高めるべく、ゴムまたは樹脂等のシール材料を基材として形成されている。突起部26は着座シール部24と別の材質(金属等)で形成されている。但し、突起部26は弁部22と一体成形されていても良いし、接着または螺子止め等の固定要素で弁部22に固定されていても良い。
【実施例3】
【0033】
図4は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図4に示すように、突起部26の整流案内面27Cは、これの一端27eから他端27fに向かうにつれて、弁体中心軸線2cに沿った断面で、弁体中心軸線2cに対して傾斜しつつ直線状に設定されている。図4から理解できるように、弁体2が開弁しているとき、流体供給機器60から吐出された流体は、入口ポート12から矢印X1方向に通過し、更に弁ポート14および出口ポート13を介して、流体受入機器62の入口に向けて矢印X2,X3方向に流れる。この場合、弁体2の突起部26の整流案内面27Cが流体に対面するため、流体が弁体2の突起部26の整流案内面27に沿って円滑に流れる。このため、流体の流れは円滑となり、圧力損失が低減される。
【実施例4】
【0034】
図5および図6は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図5に示すように、整流案内面27は、これの一端27eから他端27fに向かうにつれて延設されている。整流案内面27は、断面で、三次元的に曲率を有する凹状の球状面で形成されている。図6に示すように、整流案内面27のうち深さが最も深い部位27hが、着座シール部24の着座面25を延長させた仮想延長線WAよりも弁部22の背面28側に位置するように、整流案内面27は三次元的に窪んでいる。この場合、流体の流れの円滑性が確保され、乱流化が抑制され、ひいては圧力損失が低減される。殊に、整流案内面27のうち最も深い部位27hに回り込んだ流体を、凹状の球状面である整流案内面27に沿って流し得る。このため、L字通路を構成する入口ポート12から出口ポート13に向けて流体を円滑に方向転換させて流すことを期待できる。
【0035】
本実施例によれば、整流案内面27および抑制面30を有する突起部26は、着座シール部24の別の材質で形成されている。但しこれに限らず、突起部26は、着座シール部24と同一または同系の材質で形成しても良い。着座シール部24の材質はシール性を高めるべく、弾性変形容易なゴムや樹脂で形成されている。整流案内面27および抑制面30を有する突起部26は、弾性変形しないように高い剛性を有する金属またはセラミックスで形成しても良い。
【実施例5】
【0036】
図7は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図7に示すように、入口ポート12Fおよび出口ポート13Fの位置関係は、図6に示す形態に対して逆とされている。弁体2の弁体中心軸線2cの先方に流体供給機器60が配置されている。弁体2の弁体中心軸線2cに対して交差する交差線2hの先方に流体受入機器62が配置されている。
【0037】
図7に示すように、弁体2が開弁しているときには、入口ポート12Fから供給された流体が弁ポート14および出口ポート13Fを介して流体受入機器62の入口に向けて矢印Y1,Y2,Y3方向に流れる。この場合、流体が弁体2の突起部26の整流案内面27に沿って流れるため、流体の流れは円滑となり、乱流化が抑制され、圧力損失が低減される。
【0038】
殊に、整流案内面27は、断面で、三次元的に曲率を有する凹状の球状面で形成されている。整流案内面27のうち深さが最も深い部位27hは、着座シール部24の着座面25を延長させた仮想延長線WAよりも背面28側に位置している。この場合、整流案内面27における流体の流れの円滑性が確保される。殊に、最も深い部位に回り込んだ流体を凹状の球状面に沿って流し得るため、L字通路を構成する入口ポート12Fから出口ポート13Fに向けて流体を円滑に方向転換させて流すことを期待できる。
【実施例6】
【0039】
図8および図9は実施例6を示す。本実施例は実施例1と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図8および図9は、弁体中心軸線2cに沿って弁体中心軸線2cを通過するように切断した断面を模式的に示す。図8および図9に示すように、バルブ装置は、ボディ1と弁体2とを備えている。ボディ1は、流体供給機器60側に繋がる入口ポート12Hと、流体受入機器62に繋がる出口ポート13Hと、入口ポート12Hと出口ポート13Hとの間に位置する弁ポート14を形成するリング状をなすリング形状の弁座15と、弁室16とを有する。ここで、図8に示すように、ボディ1は、入口ポート12H、出口ポート13H、弁ポート14を形成する通路ボディ部10と、アクチュエータ4を収容する作動ボディ部11とを有する。弁座15は、弁体2の弁体中心軸線2cの回りを1周するようにリング状に形成されている。弁座15の頂面で形成される仮想面SAは、弁体2の弁体中心軸線2cに対してほぼ直交しているものの、入口ポート12Hの入口中心軸線12k、出口ポート13Hの出口中心軸線13kに対して傾斜している。
【0040】
図8および図9に示すように、入口ポート12Hの入口中心軸線12kと、出口ポート13Hの出口中心軸線13kとは、互いに延長線上または実質的に平行に配置されている。このため流体は入口ポート12Hから出口ポート13Hに向けて実質的にストレートに流れるため、バルブ装置における圧力損失が低減されている。弁体中心軸線2cは、入口ポート12Hの入口中心軸線12kと出口ポート13Hの出口中心軸線13kに対してθ1で傾斜している。弁ポート14は、互いに逆方向に下り坂となる第1傾斜面14fと第2傾斜面14sとの境界域に配置されている。このため弁ポート14、弁座15付近には水が残留しにくくなり、耐凍結性が高められている。
【0041】
弁体2は、開弁方向(矢印W1方向)および閉弁方向(矢印W2方向)に移動可能となるように、ボディ1の弁室16内に設けられている。弁体2は、開弁方向に延びる弁軸20と、弁軸20の先端部に径外方向に向けて鍔状に設けられた円盤状をなす弁部22とを有する。弁軸20は、ボディ1に設けられている軸受部材23により摺動可能に設けられている。軸受部材23は軸受作用およびシール作用を果たす。シール作用および軸受作用を併有する軸受部材23の軸長M1は、弁体2の開閉時に弁体2の傾きを抑制すべく設定されている。弁部22は、弁座15に着座するためのリング形状をなす着座面25を形成する。
【0042】
すなわち、図8および図9に示すように、弁体2の弁部22は、閉弁時に弁座15に着座する着座面25と、閉弁時に出口ポート13Hに向けて突出する突起部26とを有する。ここで、着座面25は、弁体2の弁体中心軸線2cを1周するように弁体中心軸線2cの回りにリング状に設けられている。突起部26はリング状の着座面25により包囲されている。図8に示すように、閉弁時において、突起部26は、弁部22の着座面25よりも弁ポート14内に進入する。この場合、図8に示すように、閉弁時には、突起部26の整流案内面27は弁座15に干渉、接触せず、弁座15と着座面25との閉弁接触を邪魔しないため、閉弁シール性が良好に維持される。
【0043】
図8および図9に示すように、弁体2の突起部26は整流案内面27を有する。整流案内面27は、断面で直線状とされており、入口ポート12Hの入口中心軸線12k、出口ポート13Hの出口中心軸線13kに対して実質的に平行に配置されている。換言すると、整流案内面27は、入口ポート12H側の一端27eから、出口ポート13H側の他端27fに向けて直線状に延設されている。
【0044】
換言すると、開弁時において、図9に示すように、弁体2の突起部26の整流案内面27は、入口ポート12Hの入口内壁面12cと出口ポート13Hの出口内壁面13cとを結ぶ仮想延長線に沿って延設されている。整流案内面27は、入口ポート12Hから弁ポート14を介して出口ポート13Hに向けて流れる流体を円滑に案内させて乱流化を抑制するための整流作用を奏するものであり、前述したように入口ポート12Hから出口ポート13Hに向けて直状に延設されている。このため流体が弁ポート14を通過する際、流体の乱流化が抑制され、ひいては圧力損失が低減される。
【0045】
弁体2の突起部26は交差面30Mを有する。交差面30Mは、突起部26の整流案内面27に対してこれの出口ポート13H側の他端27fで交差する。流体が流れる開弁時には、図9に示すように、交差面30M、突起部26は弁ポート14および出口ポート13Hから弁室16内に退避されているため、バルブ装置の内部を流れる流体の乱流化が抑制される。なお、図8に示すように、閉弁時には交差面30Mは、弁座15の内周面15iに隙間を介して対面するものの、弁座15の内周面15iに干渉、接触しないため、開弁性が良好に維持される。
【0046】
流体供給機器60は流体を供給されるものであれば、何でも良い。流体受入機器62は流体を受け入れることができるものであれば、何でも良い。流体受入機器62としては例えば燃料電池のスタックとすることができる。この場合、バルブ装置は、スタックの内部に反応ガスを供給したり、供給を遮断したりするバルブとなる。前述したように、スタックは発電時には発電反応に伴い発熱するため、常温領域を超える温度域に保持される。スタックの発電運転が終了すると、発電反応に基づく発熱が停止されるため、スタックは常温領域付近まで冷却される。このような過程を経るスタックの場合には、スタックの発電停止から所定時間経過すると、スタックの内部は負圧になることがある。スタック(流体受入機器62)の内部が負圧になれば、負圧に基づく吸引作用により、弁体2をスタック(流体受入機器62)の入口側に向けて矢印K3に吸引する吸引力が増加するため、弁体2が弁ポート14を閉鎖する閉弁状態に良好に維持される。
【0047】
図8に示すように、弁体2が開弁するときには、入口ポート12Hから矢印K1方向に供給された流体が弁ポート14および出口ポート13Hを介して、流体受入機器62に向けて矢印K2,K3方向に流れる。この場合、流体が弁体2の突起部26の断面直状の整流案内面27に沿って流れるため、流体の流れは円滑となり、圧力損失が低減される。
【0048】
本実施例によれば、整流案内面27および交差面30Mを形成する突起部26は、弁体2の弁部22に接着または螺子止め等の固定要素により取り付けられていても良いし、あるいは、弁体2の弁部22と共に一体成形品として成形されていても良い。前者の場合には、弁体2の弁部22に対して、突起部26の整流案内面27および交差面30Mの形状を、任意に選択できる利点が得られる。更には突起部26が損傷した場合には、新しい突起部26を弁体2の弁部22に接着または螺子止め等の固定要素により取り付けることができる。また、バルブ装置の用途、種類、使用環境等に応じて、整流案内面27および交差面30Mを形成する突起部26を成形し、その突起部26を接着または螺子止め等の固定要素により弁体2の弁部22に取り付けることにすれば、バルブ装置の用途、種類、使用環境等に応じて整流案内面27ばかりか抑制面30の形状、高さ、サイズ等変更できる利点が挙げられる。勿論、突起部26は弁体2の弁部22と同材質で一体的に成形されていても良い。
【0049】
ところで本実施例によれば、弁室16内において弁部22の着座面25と反対側の背面28側に位置する空間29に流体が進入するおそれがある。そこで、図9示すように開弁時において、背面28側の空間29内の流体を入口ポート12H側に吸引させるための吸引通路5が、弁体2の外縁部の側、つまり整流案内面27の他端27f側に形成されている。この場合、出口ポート13H側を矢印K3方向に流れる流体の速度が速ければ、いわゆるエゼクタ作用により、吸引通路5内を矢印PA方向に吸引させる吸引力を大きくできる。殊に、弁ポート14では入口ポート12H、出口ポート13Hよりも流路断面積が小さく設定されているため、弁ポート14付近における流速が増加し、いわゆるエゼクタ作用が増加し、弁室16内を弁ポート14や出口ポート13Hに吸引させる吸引力を大きくできる利点が挙げられる。
【0050】
従って、弁部22の背面28側に位置する空間29に残留する流体を、弁ポート14および出口ポート13H側に効果的に吸引させることを期待できる。この結果、空間29に流体が残留することが抑制される。従って、残留する流体に含まれる物質(水等)が背面28側の空間29に残留することが抑制される。これにより空間29において物質(水等)が過剰に堆積したり、寒冷等に起因して物質(水等)が過剰に凍結したりすることが抑制され、弁体2の開閉動作の円滑性が確保される。
【実施例7】
【0051】
図10および図11は実施例7を示す。本実施例は実施例6と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図10および図11は、弁体2の弁体中心軸線2cに沿って弁体中心軸線2cを通過するように切断した断面を模式的に示す。図10および図11に示すように、入口ポート12Hと出口ポート13Hとの関係は、実施例6とは逆の関係とされている。図10に示すように、閉弁時において、突起部26は、弁部22の着座面25よりも入口ポート12Hに向けて進入する。弁体2の突起部26は整流案内面27を有する。
【0052】
図11に示すように、突起部26の整流案内面27は、入口ポート12H側の一端27eから、出口ポート13H側の他端27fに向けて断面で直線状に延設されている。具体的には、入口ポート12Hの入口中心軸線12k、出口ポート13Hの出口中心軸線13kに対して、突起部26の整流案内面27は、延長線上または実質的に平行に配置されている。更に換言すると、図11に示すように、整流案内面27は、開弁時において、入口ポート12Hの入口内壁面12cと出口ポート13Hの出口内壁面13cとを結ぶ仮想延長線に沿って延設されている。このため、流体が流れるとき、流体の乱流化が抑制され、ひいては圧力損失を低減させることができる。
【0053】
突起部26は、整流案内面27と共に交差面30Mを有する。交差面30Mは、弁体2の弁体中心軸線2cとほぼ平行に沿っており、突起部26の整流案内面27と一端27eで交差する。
【0054】
本実施例においても、開弁時には、弁室16内において弁体2の着座面25と反対側に位置する背面28側に位置する空間29に流体が進入するおそれがある。そこで、開弁時に空間29内の流体から吸引させる吸引通路5が、弁体2の外縁部の側、つまり整流案内面27のうち入口ポート12Hに近い一端27e側に形成されている。この場合、開弁時においては、入口ポート12H側を矢印K1方向に流れる流体の速度が速ければ、いわゆるエゼクタ作用により、吸引通路5内を矢印PA方向に吸引させる吸引力を大きくできる。従って、空間29に残留する水や異物等を含む流体を入口ポート12Hおよび弁ポート14側に効果的に吸引させることを期待できる。この結果、空間29に流体が過剰に残留することが抑制される。これにより物質(水等)の過剰な堆積、寒冷に起因する物質(水等)の過剰な凍結等が抑制され、弁体2の開閉動作の円滑性が確保される。
【実施例8】
【0055】
その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。アクチュエータが設けられているが、手動操作で弁体を開弁させる方式とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は例えば燃料電池システム、加湿システム、水素生成シテスム等の各種流体機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1はボディ、12は入口ポート、13は出口ポート、14は弁ポート、15は弁座、16は弁室、2は弁体、20は弁軸、22は弁部、24は着座シール部、26は突起部、27は整流案内面、28は背面、29は空間、30は抑制面、4はアクチュエータ4、5は吸引通路、60は流体供給機器、62は流体受入機器を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ポートと、出口ポートと、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に位置する弁ポートを形成する弁座と、弁室とを有するボディと、
開弁方向および閉弁方向に移動可能に前記バルブの前記弁室内に設けられ、閉弁時に前記弁座に着座する着座面と、閉弁時に前記着座面よりも前記弁ポート内に進入する突起部とを有する弁体とを具備しており、
前記弁体の前記突起部は、前記弁体に設けられ開弁時に前記入口ポートから前記弁ポートを介して前記出口ポートに流体を案内させて乱流化を抑制する整流案内面を有することを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記弁体の前記突起部は、開弁時において前記入口ポートから前記弁体を超えて前記弁室の内壁面で跳ね返る流体が、前記入口ポート、前記出口ポートおよび前記弁ポートのうちの少なくとも一方に向かうことを抑える抑制面を有することを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記弁室内において前記弁体の前記着座面と反対側に位置する空間に進入した流体を前記空間から、前記入口ポート、前器出口ポートおよび前記弁ポートのうちの少なくとも一方に吸引させる吸引通路が、前記弁体の外縁部の側に形成されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記入口ポートの入口中心軸線と前記出口ポートの出口中心軸線とは互いに延長線上または実質的に平行に配置されており、
開弁時において、前記弁体の前記突起部の前記整流案内面は、前記入口ポートの入口内壁面と前記出口ポートの出口内壁面とを結ぶ仮想延長線に沿って延設されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項1】
入口ポートと、出口ポートと、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に位置する弁ポートを形成する弁座と、弁室とを有するボディと、
開弁方向および閉弁方向に移動可能に前記バルブの前記弁室内に設けられ、閉弁時に前記弁座に着座する着座面と、閉弁時に前記着座面よりも前記弁ポート内に進入する突起部とを有する弁体とを具備しており、
前記弁体の前記突起部は、前記弁体に設けられ開弁時に前記入口ポートから前記弁ポートを介して前記出口ポートに流体を案内させて乱流化を抑制する整流案内面を有することを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記弁体の前記突起部は、開弁時において前記入口ポートから前記弁体を超えて前記弁室の内壁面で跳ね返る流体が、前記入口ポート、前記出口ポートおよび前記弁ポートのうちの少なくとも一方に向かうことを抑える抑制面を有することを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記弁室内において前記弁体の前記着座面と反対側に位置する空間に進入した流体を前記空間から、前記入口ポート、前器出口ポートおよび前記弁ポートのうちの少なくとも一方に吸引させる吸引通路が、前記弁体の外縁部の側に形成されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記入口ポートの入口中心軸線と前記出口ポートの出口中心軸線とは互いに延長線上または実質的に平行に配置されており、
開弁時において、前記弁体の前記突起部の前記整流案内面は、前記入口ポートの入口内壁面と前記出口ポートの出口内壁面とを結ぶ仮想延長線に沿って延設されていることを特徴とするバルブ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−169197(P2010−169197A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12632(P2009−12632)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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