説明

バルブ装置

【課題】極めて簡単な構造で、従来構成と比較して大幅な小型化、軽量化、及び低コスト化を図ることが可能なバルブ装置を提供する。
【解決手段】作動油が流通する油路21と、該油路21を開閉するためのボール弁31と、複数の平板状の陰極板11aと複数のメッシュ状の陽極板13aとを交互に積層し、各陰極板11aと各陽極板13aとの間にPVCゲル15を挟み込んだ構成の収縮型PVCゲルアクチュエータ10とを備え、収縮型PVCゲルアクチュエータ10を伸縮変形させることでボール弁31を駆動して油路21の開閉を切り替えるように構成したバルブ装置1において、収縮型PVCゲルアクチュエータ10が備える各陰極板11a及び各陽極板13aが帯状の配線部11b,13bで連結されていることで、複数の陰極板11aと複数の陽極板13aのそれぞれが一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される自動変速機などの油圧機器の油圧制御に用いて好適なバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載した自動変速機において変速制御用の作動油の流通路を切り替えるためのバルブ装置として、ソレノイドからなるアクチュエータを備えたバルブ装置が用いられている。この種のバルブ装置は、例えば、特許文献1に示すように、油路を開閉するための弁体と、プランジャを介して弁体を駆動するためのソレノイドとを備えており、ソレノイドの電磁力をオンオフすることにより、弁体を駆動して油路の開閉を切り替える構造である。すなわち、この種のバルブ装置では、電源オフ時には、スプリングで付勢されたプランジャによって弁体が着座面に押し付けられていることで油路が閉鎖している。一方、電源をオンすると、ソレノイドの電磁力によりスプリングの付勢力に抗してプランジャが退避する。これにより、作動油の油圧で弁体が着座面から離間して油路が開通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−74729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなソレノイドからなるアクチュエータを備えたバルブ装置では、金属製のソレノイドや磁石などの様々な部材を内蔵していることで、構造が複雑で部品点数も多く、外形寸法や重量が大きいという問題があった。また、部品コストも嵩むという問題がある。特に、車両用の自動変速機においては、一台の自動変速機に上記構成のバルブ装置を複数個(通常4〜6個程度)使用するため、上記のような重量や部品コストの影響が尚更大きくなってしまう。さらに、上記構成のバルブ装置では、ソレノイドの駆動音のため、油路を開閉する際の作動音が大きくなってしまうという課題もある。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来のソレノイドを備えたバルブ装置と比較して、極めて簡単な構造で、大幅な小型化、軽量化、及び低コスト化を図ることができるバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、流体が流通する流体通路(21)と、該流体通路(22)を開閉するための弁体(31)と、複数の平板状の陰極板(11a)と複数のメッシュ状の陽極板(13a)とを交互に積層し、各陰極板(11a)と各陽極板(13a)との間に高分子ゲル(15)を挟み込んだ構成の収縮型高分子ゲルアクチュエータ(10)と、を備え、収縮型高分子ゲルアクチュエータ(10)に印加する電圧を制御することによる伸縮変形で弁体(31)を駆動して流体通路(21)の開閉を切り替えるように構成したバルブ装置(1)において、複数の陰極板(11a)は、隣接する陰極板(11a)同士が帯状の配線部(11b)で互いに連結されて一体に形成された陰極部材(11)を構成しており、かつ、複数の陽極板(13a)は、隣接する陽極板(13a)同士が帯状の配線部(13b)で互いに連結されて一体に形成された陽極部材(13)を構成していることを特徴とする。なお、上記の高分子ゲルとしては、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)に可塑材を添加してなるPVCゲルを用いることができる。
【0007】
本発明によれば、複数の平板状の陰極板と複数のメッシュ状の陽極板とを交互に積層し、各陰極板と各陽極板との間にPVCゲルを挟み込んだ構成の収縮型高分子ゲルアクチュエータを備えたバルブ装置において、収縮型高分子ゲルアクチュエータが備える複数の陰極板と陽極板それぞれが配線部で連結されて一体に形成されているため、配線部で連結された複数の陰極板を含む陰極部材、及び配線部で連結された複数の陽極板を含む陽極部材をプレス加工で一体形成することが可能となる。したがって、複数の陰極板及び陽極板を有する収縮型高分子ゲルアクチュエータを備えたバルブ装置を簡単な工程で安価に製造することができる。また、本発明にかかるバルブ装置では、弁体を駆動するためのアクチュエータとして、上記構成の収縮型高分子ゲルアクチュエータを備えたことで、従来のソレノイドからなるアクチュエータを備えたバルブ装置と比較して、極めて簡単な構造で、バルブ装置の大幅な小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。特に、車両に搭載する自動変速機には、油圧制御用のバルブ装置を複数使用するため、当該バルブ装置として本発明にかかる上記構成のバルブ装置を用いれば、自動変速機及び車両の小型化、軽量化及びコスト低減に大きく寄与することができる。また、本発明にかかるバルブ装置では、収縮型高分子ゲルアクチュエータの伸縮変形によって弁体を駆動するので、流体通路の開閉に伴う作動音が生じないか又は極めて小さくて済むため、動作時の静粛性を確保できる。
【0008】
また、上記のバルブ装置では、配線部(11b,13b)は、隣接する陰極板(11a)同士、及び隣接する陽極板(13a)同士を撓んだ状態で接続しているとよい。この構成によれば、配線部が撓んだ状態になっていることで、配線部で接続された複数の陰極板及び複数の陽極板がジャバラ状になるため、陰極板及び陽極板をPVCゲルの変形に追従させることが可能となる。したがって、収縮型高分子ゲルアクチュエータの伸縮変形がスムーズに行われるようになるので、動作性及び耐久性に優れたバルブ装置となる。また、配線部が撓んだ状態になっていることで、PVCゲルが変形する際に配線部が過度に引っ張られるおそれがない。したがって、収縮型高分子ゲルアクチュエータの伸縮変形によって配線部に断線などの不具合が生じることを防止できる。
【0009】
また、上記のバルブ装置では、流体流路(21)が形成されていると共に収縮型高分子ゲルアクチュエータ(10)が収容されたケース(50)を備え、収縮型高分子ゲルアクチュエータ(10)は、陰極板(11a)及び陽極板(13a)の積層方向を軸方向とする円柱状の外形を有しており、ケース(50)には、収縮型高分子ゲルアクチュエータ(10)を収容する円筒状の収容部(56)と、該収容部(56)の内側面における配線部(11b,13b)に対応する箇所に形成した溝部(57)と、が設けられており、収縮型高分子ゲルアクチュエータ(10)の配線部(11b,13b)が溝部(57)に収納されているとよい。この構成によれば、ケースの溝部に収納された配線部が陰極板及び陽極板の回り止めとして機能することで、円筒状の収容部内で円柱状の収縮型高分子ゲルアクチュエータが回転することを防止できる。これにより、収縮型高分子ゲルアクチュエータが収容部内で回転して配線部が断線することを防止できる。
【0010】
また、上記のバルブ装置では、溝部(57)は、収容部(56)内を移動する流体の流通路になっているとよい。この構成によれば、配線部が収納された溝部は、収容部内に流入した作動油や空気などの流体が収納部内を移動するための流通路として機能する。これにより、収縮型高分子ゲルアクチュエータが伸縮変形する際、収容部内の作動油や空気などの流体が円滑に移動することができる。また、溝部を通して作動油や空気を収容部内の全体に行き渡らせることも可能となる。これらによって、収縮型高分子ゲルアクチュエータの伸縮変形をよりスムーズに行わせることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるバルブ装置によれば、従来のバルブ装置と比較して、極めて簡単な構造で、大幅な小型化、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかるバルブ装置を示す図で、(a)は、側断面図、(b)は、(a)のX−X矢視断面を示す図、(c)は、(a)のY−Y矢視断面を示す図である。
【図2】収縮型PVCゲルアクチュエータを示す図で、(a)は、全体構成を示す斜視図、(b)は、陰極部材及び陽極部材を示す図である。
【図3】収縮型PVCゲルアクチュエータの動作を説明するための図で、(a),(c)は、電圧非印加時の状態を示す図、(b),(d)は、電圧印加時の状態を示す図である。
【図4】バルブ装置の動作を説明するための図で、(a)は、油路が閉じられた状態を示す図、(b)は、油路が開かれた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるバルブ装置1を示す図で、(a)は、バルブ装置1の側断面図、(b)は、(a)のX−X矢視断面を示す図であり、(c)は、(a)のY−Y矢視断面を示す図である。同図に示すバルブ装置1は、車両に搭載される自動変速機において変速制御用の作動油の流通を制御するために用いて好適なバルブ装置である。このバルブ装置1は、作動油が流通する油路21と、該油路21を開閉するためのボール弁(弁体)31と、ボール弁31を駆動するための収縮型PVCゲルアクチュエータ(収縮型高分子ゲルアクチュエータ)10と、ボール弁31及び収縮型PVCゲルアクチュエータ10を収容したケース(バルブボディ)50とを備えて構成されている。
【0014】
ケース50は、略円筒状に形成された本体部51と、該本体部51の一端から突出する該本体部51よりも小径の円柱状の軸部52とを備えている。本体部51及び軸部52は一体に形成された外ケース53で構成されており、本体部51における外ケース53の内周側には、収縮型PVCゲルアクチュエータ10を収容するための内ケース55が嵌合している。一方、軸部52の内部には、油路21が形成されている。油路21は、軸部52の先端から本体部側51に向かって軸方向に延びる流入ポート22と、流入ポート22の下流端から径方向の外側へ延びる流出ポート23,23とを備えている。流入ポート22の下流端には、球状のボール弁31が収容されており、ボール弁31を着座させるための弁座部24が設けられている。ボール弁31は、油路21内を移動することで弁座部24に対して当接・離間するようになっている。これにより、油路21の開閉が切り替えられる。
【0015】
ケース50の本体部51は、外ケース53と内ケース55の二重構造になっており、内ケース55の内部には、収縮型PVCゲルアクチュエータ10を収容するための円筒状の収容部56が形成されている。収容部56に収容された収縮型PVCゲルアクチュエータ10は、全体が略円柱状の外形を有している。
【0016】
収縮型PVCゲルアクチュエータ10とボール弁31との間には、プランジャ33が介在している。プランジャ33は、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の一端に当接する平板部34と、該平板部34からボール弁31側に向かって突出形成された棒状のニードル部35とを備えており、ニードル部35の先端がボール弁31に当接してこれを押圧するようになっている。また、軸部52内のニードル部35が収容された箇所には、油路21からの余剰の作動油を流入させるためのドレン室26が設けられている。また、ドレン室26から軸部52の径方向の両外側に向かってドレンポート27,27が開口している。
【0017】
図2は、収縮型PVCゲルアクチュエータ10を示す図で、同図(a)は、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の全体構成を示す概略の斜視図であり、同図(b)は、収縮型PVCゲルアクチュエータ10が備える陰極部材11と陽極部材13の展開した状態を示す図である。収縮型PVCゲルアクチュエータ10は、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)に可塑材を添加してなるPVCゲル(高分子ゲル)を備えた高分子ゲルアクチュエータであり、複数の陰極板11aと複数の陽極板13aとを交互に積層し、各陰極板11aと各陽極板13aとの間にPVCゲル15を挟み込んだ構成である。各陰極板11aは、円形平板状に形成されている。一方、各陽極板13aは、外形が円形の平板状であって、その全体が縦横に交差する微細なメッシュ状に形成されている。なお、上記の収縮型PVCゲルアクチュエータ10の基本的な構成及びその動作については、「山野美咲,小川尚希,橋本稔,高崎緑,平井利博:収縮型PVCゲルアクチュエータの構造と駆動特性,日本ロボット学会誌 vol.27 No.7,pp.718〜724,2009」などに開示されている。
【0018】
本実施形態のバルブ装置1が備える収縮型PVCゲルアクチュエータ10では、上記の基本的な構成に加えて、下記の構成を具備している。すなわち、図2(b)に示すように、複数の陰極板11aは、隣接する陰極板11a同士が帯状の配線部11bで連結されていることで、全体として一枚の陰極部材11を構成している。同様に、複数の陽極板13aは、隣接する陽極板13a同士が帯状の配線部13bで連結されていることで、全体として一枚の陽極部材13を構成している。陰極部材11及び陽極部材13は、いずれも金属製の薄板状の部材であり、それぞれプレス加工によって一体に形成することが可能である。
【0019】
また、本実施形態の収縮型PVCゲルアクチュエータ10では、図2(a)に示すように、各陰極板11aと各陽極板13aとの間にPVCゲル15を挟み込んで積層した構造において、陰極部材11と陽極部材13との間に電圧を印加していない状態で、隣接する陰極板11aを接続している配線部11bと、隣接する陽極板13aを接続している配線部13bとが収縮型PVCゲルアクチュエータ10の外径側に若干撓んだ状態になっている。これにより、配線部11b,13bで連結された複数の陰極板11a及び複数の陽極板13aがジャバラ状になっている。また、図1(b)及び図2(a)に示すように、配線部11bと配線部13bは、それぞれ陰極板11と陽極板13の外周方向において90度間隔で配置されている。
【0020】
また、図1に示すように、収容部56内のPVCゲルアクチュエータ10のプランジャ33と反対側の端部に対向する位置には、係止板58が設置されている。係止板58は、PVCゲルアクチュエータ10の端部と内ケース55の底部55aとの間に介在している。係止板58によって収容部56内のPVCゲルアクチュエータ10一端が係止されている。これにより、PVCゲルアクチュエータ10は、軸方向が若干圧縮された状態で収容部56内に設置されており、プランジャ33及びボール弁31に対して所定のプリセット荷重を付加した状態で組み付けられている。なお、内ケース55の底部55aには、収縮型PVCゲルアクチュエータ10に給電するための外部端子(図示せず)が接続される端子部59が設けられている。
【0021】
また、図1に示すように、収容部56の内側面には、配線部11b,13bを収納するための溝部57が形成されている。溝部57は、PVCゲル15の積層方向に延びる直線状の細溝である。この溝部57は、配線部11b,13bに対応する箇所に形成されており、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の外周側面から外径側に撓んだ配線部11b,13bが溝部57に収納されている。このように溝部57に収納された配線部11b,13bは、陰極板11a及び陽極板13aの回り止めとして機能するので、円筒型の収容部56の内部で円柱型の収縮型PVCゲルアクチュエータ10が回転することを防止できる。
【0022】
図3は、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の動作を説明するための図で、(a)は、電圧非印加時の状態を示す図、(b)は、電圧印加時の状態を示す図である。また、(c)は、(a)のA部分を示す部分拡大図であり、(d)は、(b)のB部分を示す部分拡大図である。上記構成の収縮型PVCゲルアクチュエータ10では、図3(a)及び(c)に示す状態から、陰極部材11と陽極部材13との間に所定の電圧を印加すると、陰極板11aと陽極板13aとの間に挟み込まれたPVCゲル15が陽極板13aの方に移動する。その際、陽極板13aがメッシュ状になっていることで、図3(d)に示すように、PVCゲル15が変形してメッシュ状の隙間13eに入り込む。これにより、図3(b)に示すように、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の積層方向の高さ寸法が、電圧を印加していない状態と比較して小さく(薄く)なる。その一方で、電圧の印加を停止するとPVCゲル15が元の状態に復帰するので、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の積層方向の高さが元の寸法に戻る。
【0023】
本実施形態のバルブ装置1では、上記のような特性を有する収縮型PVCゲルアクチュエータ10を用いてボール弁31を駆動することで、油路21の開閉を切り替えるようになっている。図4は、バルブ装置1の動作を説明するための図で、同図(a)は、収縮型PVCゲルアクチュエータ10への電圧の非印加時に油路21が閉じられた状態を示す図、同図(b)は、収縮型PVCゲルアクチュエータ10への電圧の印加時に油路21が開かれた状態を示す図である。
【0024】
すなわち、図4(a)に示す収縮型PVCゲルアクチュエータ10への電圧の非印加時には、収縮型PVCゲルアクチュエータ10からプランジャ33及びボール弁31にかかっているプリセット荷重によって、ボール弁31が油路21内の弁座部24に着座している。これにより、油路21が閉止された状態になっている。その一方で、収縮型PVCゲルアクチュエータ10に電圧を印加すると、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の積層方向の高さ寸法が小さくなる。したがって、収縮型PVCゲルアクチュエータ10からプランジャ33及びボール弁31に掛かっているプリセット荷重が解除されるので、流入ポート22内の作動油の油圧で、ボール弁31が弁座部24から離間する方向に移動する。これにより、弁座部24からボール弁31が離間して油路21が開かれる。なお、その状態で収縮型PVCゲルアクチュエータ10への電圧の印加を停止すると、収縮型PVCゲルアクチュエータ10が元の形状に復帰することで、図4(a)に示すように、プリセット荷重によってボール弁31が弁座部24に着座して油路21が閉止される。このように、バルブ装置1に内蔵された収縮型PVCゲルアクチュエータ10が電圧の印加の有無に応じて伸縮することで、バルブ装置1内の油路21の開閉が切り替えられる。
【0025】
なお、本実施形態のバルブ装置1では、収縮型PVCゲルアクチュエータ10に印加する電圧の具体的な設定値は、ボール弁31を駆動するために必要な発生力(荷重)を考慮して決定するとよい。また、収縮型PVCゲルアクチュエータ10におけるPVCゲル15の積層数は、油路21を開閉するために必要なボール弁31の変位量(移動量)を考慮して決定するとよい。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のバルブ装置1は、複数の平板状の陰極板11aと複数のメッシュ状の陽極板13aとを交互に積層し、各陰極板11aと各陽極板13aとの間にPVCゲル15を挟み込んだ構成の収縮型PVCゲルアクチュエータ10を備えている。そして、収縮型PVCゲルアクチュエータ10を伸縮変形させることによってボール弁31を駆動して、油路21の開閉を切り替えるように構成している。そのうえで、収縮型PVCゲルアクチュエータ10が備える複数の陰極板11aは、隣接する陰極板11a同士が配線部11bで連結された陰極部材11を構成しており、かつ、複数の陽極板13aは、隣接する陽極板13a同士が配線部13bで連結された陽極部材13を構成している。
【0027】
このように、本実施形態のバルブ装置1では、収縮型PVCゲルアクチュエータ10が備える複数の陰極板11aと複数の陽極板13aがそれぞれ配線部11b,13bで連結されて一体化されているため、各陰極板11a及び各配線部11bを含む陰極部材11と、各陽極板13a及び各配線部13bを含む陽極部材13のそれぞれをプレス加工で一体形成することが可能となる。したがって、複数の陰極板11a及び陽極板13aを有する収縮型PVCゲルアクチュエータ10を備えたバルブ装置1を簡単な工程で安価に製造することができる。
【0028】
また、収縮型PVCゲルアクチュエータ10は、ソレノイドと比較して簡単な構成であり、小型かつ軽量である。したがって、本実施形態のバルブ装置1では、ボール弁31を駆動するためのアクチュエータとして、上記構成の収縮型PVCゲルアクチュエータ10を備えたことで、従来のソレノイドからなるアクチュエータを備えたバルブ装置と比較して、極めて簡単な構造で、バルブ装置1の大幅な小型化、軽量化、及び低コスト化を図ることができる。特に、車両に搭載する自動変速機では、油圧制御用のバルブ装置を複数使用するため、当該バルブ装置として本実施形態にかかる上記構成のバルブ装置1を用いれば、自動変速機及び車両の小型化、軽量化及びコスト低減に大きく寄与することができる。また、本実施形態のバルブ装置1では、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の伸縮変形によってボール弁31を駆動するので、油路21の開閉に伴う作動音が生じないか又は極めて小さくて済む。したがって、動作時の静粛性に優れたバルブ装置1となる。
【0029】
また、本実施形態のバルブ装置1では、配線部11b,13bが外径側に撓んだ状態となっていることで、配線部11b,13bで接続された複数の陰極板11a及び複数の陽極板13aがジャバラ状になっている。そのため、各陰極板11a及び各陽極板13aをPVCゲル15の変形に追従させることが可能となる。したがって、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の伸縮変形がスムーズに行われるようになるので、動作性及び耐久性に優れたバルブ装置1となる。また、配線部11b,13bが撓んだ状態になっていることで、PVCゲル15が変形する際に配線部11b,13bが過度に引っ張られるおそれがない。したがって、収縮型高分子ゲルアクチュエータ10の伸縮変形によって配線部11b,13bに断線などの不具合が生じることを防止できる。
【0030】
また、本実施形態のバルブ装置1では、収容部56の内側面における配線部11b,13bに対応する箇所に溝部57が設けられている。そして、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の外周側面から外径側に撓んだ配線部11b,13bが溝部57に収納されている。この構成によって、溝部57に収納された配線部11b,13bが陰極板11a及び陽極板13aの回り止めとして機能することで、円筒型の収容部56の内部で円柱型の収縮型PVCゲルアクチュエータ10が回転することを防止できる。したがって、収縮型PVCゲルアクチュエータ10が収容部56の内部で回転して配線部11b,13bの断線などの不具合が生じることを効果的に防止できる。
【0031】
また、本実施形態のバルブ装置1では、配線部11b,13bが収納された溝部57は、収容部56内に流入した作動油や空気などの流体の流通路としても機能するようになっている。これにより、収縮型PVCゲルアクチュエータ10が伸縮変形する際、収容部56内の作動油や空気などの流体が円滑に移動することができる。また、溝部57を通して作動油や空気を収容部56の全体に行き渡らせることも可能となる。これらによって、収縮型PVCゲルアクチュエータ10の伸縮変形をよりスムーズに行わせることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 バルブ装置
10 収縮型PVCゲルアクチュエータ(収縮型高分子ゲルアクチュエータ)
11 陰極部材
11a 陰極板
11b 配線部
13 陽極部材
13a 陽極板
13b 配線部
13e メッシュ部
15 PVCゲル(高分子ゲル)
21 油路(流体通路)
22 流入ポート
23 流出ポート
24 弁座部
26 ドレン室
27 ドレンポート
31 ボール弁(弁体)
33 プランジャ
34 平板部
35 ニードル部
50 ケース
51 本体部
52 軸部
53 外ケース
55 内ケース
55a 底部
56 収容部
57 溝部
58 係止板
59 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流体通路と、
該流体通路を開閉するための弁体と、
複数の平板状の陰極板と複数のメッシュ状の陽極板とを交互に積層し、各陰極板と各陽極板との間に高分子ゲルを挟み込んだ構成の収縮型高分子ゲルアクチュエータと、を備え、
前記収縮型高分子ゲルアクチュエータに印加する電圧を制御することによる伸縮変形で前記弁体を駆動して前記流体通路の開閉を切り替えるように構成したバルブ装置において、
前記複数の陰極板は、隣接する陰極板同士が帯状の配線部で互いに連結されて一体に形成された陰極部材を構成しており、かつ、前記複数の陽極板は、隣接する陽極板同士が帯状の配線部で互いに連結されて一体に形成された陽極部材を構成している
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記陰極部材の配線部及び前記陽極部材の配線部は、前記隣接する陰極板同士及び前記隣接する陽極板同士を撓んだ状態で接続している
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記流体通路が形成されていると共に前記収縮型高分子ゲルアクチュエータが収容されたケースを備え、
前記収縮型高分子ゲルアクチュエータは、前記陰極板及び前記陽極板の積層方向を軸方向とする円柱状の外形を有しており、
前記ケースには、前記収縮型高分子ゲルアクチュエータを収容する円筒状の収容部と、該収容部の内側面における前記配線部に対応する箇所に形成した溝部とが設けられており、
前記収縮型高分子ゲルアクチュエータの前記配線部が前記溝部に収納されている
ことを特徴とする請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記溝部は、前記収容部内を移動する流体の流通路になっている
ことを特徴とする請求項3に記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159099(P2012−159099A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17263(P2011−17263)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】