説明

バルーンカテーテル及びその製造方法

【課題】バルーンの先端側や基端側から優先的に拡張することがなく、確実にバルーンの中央部から優先的に拡張させることができ、しかも、目的の位置にステントを設置することができるバルーンカテーテル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル10は、内部に拡張用ルーメン30を有する先端シャフト20と、基端側が先端シャフト20に接合されることで、拡張用ルーメン30からの拡張用流体によって拡張可能なバルーン14と、バルーン14の軸方向中央部と先端との間に設けられ、バルーン14の先端側の拡張を規制する先端側拡張規制部40と、バルーン14の軸方向中央部と基端との間に設けられ、バルーン14の基端側の拡張を規制する基端側拡張規制部42と、先端シャフト20のうち、先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42との間に対応した部分に設けられ、拡張用ルーメン30に連通する先端開口部20bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体器官内の狭窄部の処置等に用いられるバルーンカテーテル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、心筋梗塞や狭心症の治療では、冠動脈の病変部(狭窄部)をバルーンカテーテルにより押し広げる方法が行われており、他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内に形成された狭窄部の改善についても同様に行われることがある。バルーンカテーテルは、一般的に、長尺なシャフト本体と、該シャフト本体の先端側に設けられて径方向に拡張するバルーンとを備えて構成され、先行するガイドワイヤが挿通されることで体内の狭窄部へと送られる。
【0003】
このようなバルーンカテーテルは、狭窄部等を拡張するためのステントを生体内に留置するためのステントデリバリー用のバルーンカテーテルとして用いられることがある。ステントは、通常、金属線材等をメッシュ状に加工した筒状であり、バルーンの周囲にマウントされ、所望の狭窄部でバルーンが拡張されることでステントも拡張され、管腔内壁に密着・固定される。
【0004】
そして、バルーンを拡張する際には、インデフレータ等を用いてバルーン内に圧力を加えることにより行われる。すなわち、バルーン内に圧力が加わることでバルーンが拡張し、それによって、バルーンにマウントされているステントが拡張されることになる。
【0005】
このバルーンの拡張開始時においては、例えば図10に示すように、バルーン100のうち、ステント102がマウントされている部分の拡張が阻害されることから、ステント102による負荷が少ない部分、すなわち、バルーン100の両端から拡張が開始されることが多い。バルーン100の両端から拡張が始まったステント102は、両端から中央に向かって力がかかり、ステント102の長さが目的の長さよりも短くなるという問題がある(ショートニング)。また、バルーン100の両端から拡張が始まると、血管壁に損傷を与えるおそれもある。
【0006】
そこで、従来では、バルーンの先端部に対応する部分に拡張ルーメンを位置させて、先ず最初にバルーンの先端側を拡張させてから、基端側に向かって拡張するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−520095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、バルーンの先端側から優先的に拡張させると、ステントがバルーンの基端側に移動して位置がずれてしまい、目的の場所に留置できないおそれがある。これは、バルーンの基端側から優先的に拡張させた場合でも同様である。
【0009】
本発明はこのような従来の課題を考慮してなされたものであり、バルーンの先端側や基端側から優先的に拡張することがなく、確実にバルーンの中央部から優先的に拡張させることができ、例えばバルーンにステントをマウントしている場合には、目的の位置にステントを設置することができるバルーンカテーテル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 第1の本発明に係るバルーンカテーテルは、内部に拡張用ルーメンを有するシャフトと、基端側が前記シャフトに接合されることで、前記拡張用ルーメンからの拡張用流体によって拡張可能なバルーンと、前記バルーンの軸方向中央部と先端との間に設けられ、前記バルーンの先端側の拡張を規制する先端側拡張規制部と、前記軸方向中央部と基端との間に設けられ、前記バルーンの基端側の拡張を規制する基端側拡張規制部と、前記シャフトのうち、前記先端側拡張規制部と前記基端側拡張規制部との間に対応した部分に設けられ、前記拡張用ルーメンに連通する開口と、を有することを特徴とする。
【0011】
これにより、先ず、拡張用ルーメンに連通する開口が先端側拡張規制部と基端側拡張規制部との間に対応した部分に設けられているため、バルーンの拡張開始時においては、バルーンのうち、先端側拡張規制部と基端側拡張規制部との間に拡張用流体が供給され、バルーンの中央部が拡張し始める。このとき、先端側拡張規制部と基端側拡張規制部によって、バルーンの先端側と基端側の拡張が規制されているため、バルーンの中央部が優先的に拡張することとなる。なお、バルーンを予め規定された外径に拡張させる圧力を規定圧と定義したとき、先端側拡張規制部と基端側拡張規制部を、規定圧未満の圧力でバルーンに対する拡張の規制を解除するように設定しておけば、規定圧となった段階で、バルーンは予め規定された外径に拡張することとなる。
【0012】
このように、本発明においては、バルーンの先端側や基端側から優先的に拡張することがなく、確実にバルーンの中央部から優先的に拡張させることができ、例えばバルーンにステントをマウントしている場合には、目的の位置にステントを設置することができる。
【0013】
[2] 第1の本発明において、前記バルーンは、拡張用ルーメンを介して内部に注入される拡張用流体により筒状に拡張する筒部と、前記筒部の先端側で漸次縮径する先端テーパ部と、前記筒部の基端側で漸次縮径する基端テーパ部とを有し、前記先端側拡張規制部は、前記筒部と前記先端テーパ部との境界部分に対応した位置に設けられ、前記基端側拡張規制部は、前記筒部と前記基端テーパ部との境界部分に対応した位置に設けられていることを特徴とする。この場合、バルーンの先端テーパ部や基端テーパ部から優先的に拡張することがなく、確実にバルーンの中央部、すなわち、筒部から優先的に拡張させることができる。
【0014】
[3] 第1の本発明において、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部は、前記バルーンのそれぞれ対向する内壁の一部同士を接着することで形成されていることを特徴とする。バルーンの拡張開始時においては、バルーンの内壁の一部同士が接着された部分にて、それよりも先端側及び基端側の拡張が規制され、バルーンの中央部が優先的に拡張することとなる。その後、バルーンの拡張が進んで、上述の接着部分の接着が外れる(解除する)ことで、バルーンの先端側及び基端側も拡張し、バルーン全体が拡張することになる。従って、この場合も、バルーンの中央部を優先的に拡張させることができる。
【0015】
[4] 第1の本発明において、前記バルーンの内壁にヒートシール剤がコーティングされ、それぞれ対向する前記ヒートシール剤の一部同士を加熱により接着することで、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部が設けられていることを特徴とする。すなわち、それぞれ対向する前記ヒートシール剤の一部同士を加熱により接着することで、簡単に、それぞれ対向する前記バルーンの内壁の一部同士が接着されて構成された先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部を得ることができる。
【0016】
[5] 第1の本発明において、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部の少なくともいずれか一方は、前記バルーンの内壁の一部同士を線状に接着した隔壁として構成されていることを特徴とする。この場合、先端側拡張規制部及び基端側拡張規制部での規制力を強めることができるため、バルーンが大きい場合や、拡張のタイミングを大きくずらしたい場合(中央部が拡張し始めてから先端部及び基端部が拡張し始めるまでの時間を大きくとりたい場合等)に有効である。
【0017】
[6] 第1の本発明において、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部の少なくともいずれか一方は、前記バルーンの内壁の一部同士を点状に接着した点状接着部として構成されていることを特徴とする。この場合、先端側拡張規制部及び基端側拡張規制部での規制力を弱めることができるため、バルーンが小さい場合や、拡張のタイミングのずれを小さくしたい場合(中央部が拡張し始めてから先端部及び基端部が拡張し始めるまでの時間を短くしたい場合等)に有効である。
【0018】
[7] 第1の本発明において、前記バルーンを予め規定された外径に拡張させる圧力を規定圧と定義したとき、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部は、前記規定圧の1/2以上、前記規定圧未満の圧力で前記バルーンに対する拡張の規制を解除することを特徴とする。この場合、先端側拡張規制部と基端側拡張規制部を、バルーン内の圧力が規定圧の1/2以上、規定圧未満となった段階で、バルーンに対する拡張の規制が解除されるため、規定圧となった段階で、バルーンを予め規定された外径に拡張させることができる。規定圧の1/2以上に設定したので、確実にバルーンの中央部を優先的に拡張させることができる。
【0019】
[8] 第1の本発明において、前記バルーンにマウントされたステントを有することを特徴とする。これにより、上述したように、バルーンの中央部を優先的に拡張させることができるため、ステントのショートニングや、ステントのバルーンからの移動(抜け落ち等)を回避することができ、目的の位置にステントを設置することができる。
【0020】
[9] 第1の本発明において、ガイドワイヤを挿通するための内管を有し、前記内管は前記シャフト及び前記バルーン内に挿通され、その先端部が前記バルーンの先端に接合されていることを特徴とする。この場合、シャフトがバルーンに拡張用流体を導入するための管として機能し、内管がガイドワイヤを挿通するための管として機能するため、ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルを実現させることができる。
【0021】
[10] 第2の本発明に係るバルーンカテーテルの製造方法は、内部に拡張用ルーメンを有するシャフトと、基端側が前記シャフトに接合されることで、前記拡張用ルーメンからの拡張用流体によって拡張可能なバルーンと、前記バルーンの軸方向中央部と先端との間に設けられ、前記バルーンの先端側の拡張を規制する先端側拡張規制部と、前記軸方向中央部と基端との間に設けられ、前記バルーンの基端側の拡張を規制する基端側拡張規制部と、前記シャフトのうち、前記先端側拡張規制部と前記基端側拡張規制部との間に対応した部分に設けられ、前記拡張用ルーメンに連通する開口とを有するバルーンカテーテルの製造方法において、先端が開口している前記拡張用ルーメンを有する前記シャフトを作製する工程と、前記バルーンを作製する工程と、前記バルーンの内壁にヒートシール剤をコーティングする工程と、それぞれ対向する前記バルーンの内壁の一部同士を加熱により接着することで、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部を形成する拡張規制部形成工程と、前記バルーン内に前記シャフトを、前記開口が前記先端側拡張規制部と前記基端側拡張規制部との間に対応した部分に位置するまで挿入した後、前記バルーンの基端側と前記シャフトとを接合するシャフト接合工程とを、有し、前記拡張規制部形成工程を、前記シャフト接合工程の前又は後に行うことを特徴とする。
【0022】
これにより、バルーンの先端側や基端側から優先的に拡張することがなく、確実にバルーンの中央部から優先的に拡張させることができ、例えばバルーンにステントをマウントしている場合には、目的の位置にステントを設置することができるバルーンカテーテルを容易に作製することができる。特に、バルーンの内壁にヒートシール剤をコーティングした後、それぞれ対向する前記ヒートシール剤の一部同士を加熱により接着することで、簡単に、それぞれ対向する前記バルーンの内壁の一部同士が接着されて構成された先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部を簡単に得ることができる。
【0023】
[11] 第2の本発明において、前記拡張規制部形成工程は、前記シャフト接合工程の前に行われ、前記バルーン内に、該バルーンの開口を確保するための芯材を挿入した後、それぞれ対向する前記バルーンの内壁の一部同士を加熱により接着することで、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部を形成することを特徴とする。これにより、その後に行われるシャフト接合工程において、前記バルーン内に前記シャフトを挿入し易くなる。
【0024】
[12] 第2の本発明において、前記拡張規制部形成工程を、前記シャフト接合工程の後に行うことを特徴とする。これにより、事前に、バルーンの開口を確保するための芯材を挿入する等の作業が不要になるため、工程の簡略化を図ることができる。
【0025】
[13] 第2の本発明において、前記拡張規制部形成工程は、前記バルーンの内壁の一部同士を線状に接着して、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部の少なくともいずれか一方を隔壁として形成することを特徴とする。これにより、バルーンの拡張に対する規制力を強めた先端側拡張規制部及び基端側拡張規制部を得ることができ、バルーンが大きい場合や、拡張のタイミングを大きくずらしたい場合(中央部が拡張し始めてから先端部及び基端部が拡張し始めるまでの時間を大きくとりたい場合等)に有効である。
【0026】
[14] 第2の本発明において、前記拡張規制部形成工程は、前記バルーンの内壁の一部同士を点状に接着して、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部の少なくともいずれか一方を点状接着部として形成することを特徴とする。これにより、バルーンの拡張に対する規制力を弱めた先端側拡張規制部及び基端側拡張規制部を得ることができ、バルーンが小さい場合や、拡張のタイミングのずれを小さくしたい場合(中央部が拡張し始めてから先端部及び基端部が拡張し始めるまでの時間を短くしたい場合等)に有効である。
【0027】
[15] 第2の本発明において、前記バルーンにステントをマウントする工程を有することを特徴とする。これにより、ステントのショートニングや、ステントのバルーンからの移動(抜け落ち等)を回避することができ、目的の位置にステントを設置することができるバルーンカテーテルを簡単に得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、バルーンの先端側や基端側から優先的に拡張することがなく、確実にバルーンの中央部から優先的に拡張させることができ、例えばバルーンにステントをマウントしている場合には、目的の位置にステントを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係るバルーンカテーテルの全体構成図である。
【図2】図1に示すバルーンカテーテルの先端側を拡大した一部断面側面図である。
【図3】バルーンの断面を示す説明図である。
【図4】図4Aはバルーンの2つの折り畳み部に対する加熱箇所(線状に加熱する箇所)を示す説明図であり、図4Bは図4AにおけるIVB−IVB線上の断面図である。
【図5】図5Aはバルーンの2つの折り畳み部に対する加熱箇所(点状に加熱する箇所)を示す説明図であり、図5Bは図5AにおけるVB−VB線上の断面図である。
【図6】図6Aはバルーンの3つの折り畳み部に対する局部的な加熱によって各折り畳み部に先端側拡張規制部及び基端側拡張規制部を形成した状態を示す断面図であり、図6Bはバルーンの4つの折り畳み部に対する局部的な加熱によって各折り畳み部に先端側拡張規制部及び基端側拡張規制部を形成した状態を示す断面図である。
【図7】本実施形態に係るバルーンカテーテルの第1製造方法を示す工程図である。
【図8】本実施形態に係るバルーンカテーテルの第2製造方法を示す工程図である。
【図9】本実施形態に係るバルーンカテーテルの作用、特に、バルーンの中央部が優先的に拡張する状態を示す説明図である。
【図10】従来において、バルーンの両端から拡張が始まった状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るバルーンカテーテルについての好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0031】
本発明に係るバルーンカテーテルは、長尺なシャフト本体を生体器官、例えば冠動脈に挿通させ、その先端側に設けられたバルーンを狭窄部(病変部)で拡張させることで該狭窄部を押し広げて治療する、いわゆるPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠動脈形成術)拡張カテーテルであり、バルーンの周囲にマウントされたステントを所望の狭窄部に留置するためのステントデリバリー(ステントシステム)用として使用される。勿論、本発明は、このようなPTCA拡張カテーテル以外のもの、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内に形成された病変部の改善のためのカテーテルにも適用可能である。
【0032】
そして、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、図1に示すように、細径で長尺なシャフト本体12と、シャフト本体12の先端部に設けられたバルーン14と、バルーン14の周囲にマウントされるステント16と、シャフト本体12の基端側に設けられたハブ18とを備える。なお、図1、図2において、シャフト本体12の右側(ハブ18側)を「基端(後端)」側、シャフト本体12の左側(バルーン14側)を「先端」側と呼ぶ。
【0033】
図2に示すように、シャフト本体12は、外周面がバルーン14の基端部に液密に接合(例えば熱融着又は接着)することにより互いに固着(以後、接合固着という。)された先端シャフト20と、先端側が先端シャフト20の基端部に挿入及び接合固着された基部シャフト22とを有する。
【0034】
また、バルーン14内と先端シャフト20内には、ガイドワイヤ24(図1参照)が挿通されるワイヤ用ルーメン26を形成した内管28が挿入されている。従って、シャフト本体12のうち、バルーン14及び先端シャフト20の部分は、内管28と、拡張用ルーメン30を内管28の外周面との間に形成した外管(この場合、バルーン14と先端シャフト20)とから構成される同心二重管となっている。
【0035】
内管28は、バルーン14及び先端シャフト20の内部を延在すると共に、先端近傍がバルーン14の先端側に液密に接合され、基端で開口する基端側開口部28aが先端シャフト20の基端側(途中)に形成された開口部20aに接合固着されている。従って、内管28の先端側開口部28bを入口として挿入されたガイドワイヤ24(図1参照)は、内管28のワイヤ用ルーメン26を先端側から基端側へと挿通し、出口である基端側開口部28aから外部へと導出される。
【0036】
先端シャフト20は、バルーン14の後端から基部シャフト22との接合部34まで延びており、先端から開口部20aまでの部位は内管28との間に拡張用ルーメン30を形成する二重管を構成し、開口部20aから接合部34までの部位は基部シャフト22の先端部36が内挿されると共に、該基部シャフト22の拡張用ルーメン38に連続する拡張用ルーメン30を形成している。
【0037】
基部シャフト22は、その軸方向に沿う方向及び該軸方向に沿う方向から傾斜した方向にチューブが切断されることで軸方向に傾斜する樋状に形成された先端部36を有し、該先端部36より基端側はハブ18(図1参照)まで延びたチューブとして形成されている。先端部36は、細い最先端部36aと、該最先端部36aの基端側から傾斜状に拡径した傾斜部36bとを有すると共に、そのチューブ剛性を漸次変化させるため、傾斜部36bの基端側から接合部34の間付近に形成されたらせん状のスリット36cを有する。これにより、先端部36は先端から基端に向かってその剛性が漸次強くなるように構成される。
【0038】
基部シャフト22及び先端シャフト20は、ハブ18に設けられるルアーテーパー32(図1参照)等によって図示しないインデフレーター等の圧力印加装置から圧送される拡張用流体をバルーン14まで送液可能となっている。
【0039】
内管28は、例えば外径が0.1〜1.0mm程度、好ましくは0.3〜0.7mm程度であり、肉厚が10〜150μm程度、好ましくは20〜100μm程度であり、長さが100〜2000mm程度、好ましくは150〜1500mm程度のチューブであり、先端側と基端側とで外径や内径が異なるものでもよい。
【0040】
先端シャフト20は、例えば外径が0.3〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.5mm程度であり、肉厚が約10〜150μm程度、好ましくは20〜100μm程度、長さが100〜2000mm程度、好ましくは150〜1500mm程度である。
【0041】
基部シャフト22は、例えば、外径が0.5mm〜1.5mm程度、好ましくは0.6mm〜1.3mm程度であり、内径が0.3mm〜1.4mm程度、好ましくは0.5mm〜1.2mm程度、長さが800mm〜1500mm程度、好ましくは1000mm〜1300mm程度のチューブである。
【0042】
これら内管28、先端シャフト20及び基部シャフト22は、術者が基端側を把持及び操作しながら、長尺なシャフト本体12を血管等の生体器官内へと円滑に挿通させることができるために、適度な可撓性と適度な強度(コシ。剛性)を有する構造であることが好ましい。そこで、内管28及び先端シャフト20は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、或いはこれら二種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物、或いは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成するとよい。基部シャフト22は、比較的剛性の高い材質で形成されることが好ましく、例えば、Ni−Ti合金、真鍮、SUS、アルミ等で挙げられるが、勿論、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等の樹脂を用いてもよい。
【0043】
バルーン14は、内圧の変化により折り畳み及び拡張が可能であり、図2に示すように、拡張用ルーメン30を介して内部に注入される拡張用流体により筒状(円筒状)に拡張する筒部14a(ストレート部)と、筒部14aの先端側で漸次縮径する先端テーパ部14bと、筒部14aの基端側で漸次縮径する基端テーパ部14cと、先端テーパ部14bの先端側に設けられ、且つ、内管28の外周面に液密に接合固着される円筒状の先端側非拡張部14dと、基端テーパ部14cの基端側に設けられ、且つ、先端シャフト20の外周面に液密に接合固着される円筒状の基端側非拡張部14eとを有する。
【0044】
バルーン14は、先端側に設けられた先端側非拡張部14dが内管28の外周面に液密に接合固着され、基端側に設けられた基端側非拡張部14eが先端シャフト20の外周面に液密に接合固着されることで、シャフト本体12に固着されている。先端側非拡張部14dの内径は、内管28の外径に略一致しており、基端側非拡張部14eの外径は、先端シャフト20の外径に略一致している。
【0045】
バルーン14の拡張時の大きさは、例えば、筒部14aの外径が1〜6mm程度、好ましくは1〜4mm程度であり、長さが5〜50mm程度、好ましくは5〜40mm程度である。また、先端側非拡張部14dの外径は、0.5〜1.5mm程度、好ましくは0.6〜1.3mm程度であり、長さは1〜5mm程度、好ましくは1〜2mm程度である。基端側非拡張部14eの外径は0.5〜1.6mm程度、好ましくは0.7〜1.5mm程度であり、長さは1〜5mm程度、好ましくは2〜4mm程度である。さらに先端テーパ部14b及び基端テーパ部14cの長さは1〜10mm程度、好ましくは3〜7mmで程度である。
【0046】
このようなバルーン14は、内管28及び先端シャフト20と同様に適度な可撓性が必要とされると共に、狭窄部を確実に押し広げることできる程度の強度が必要であり、その材質は、例えば、上記にて例示した内管28及び先端シャフト20のものと同一でよく、勿論他の材質であってもよい。
【0047】
ステント16は、バルーン14の拡張力により拡張(塑性変形)する、いわゆるバルーンエクスパンダブルステントであり、バルーン14を被包するようにバルーン14上に装着される。ステント16は、所定の金属線を網目状に形成して筒状にしたものや、金属線を波線状の環状体として形成したものを複数配置し、その間を適宜金属線で接続して筒状にしたもの、金属線をらせん状に巻回して筒状にしたもの等、公知の構成を適用可能である。ステント16を形成する金属線の材質としては、生体適合性を有する金属が好ましく、例えば、ステンレス鋼、タンタル(タンタル合金)、プラチナ(プラチナ合金)、金(金合金)、コバルトベース合金、コバルトクロム合金、チタン合金、ニオブ合金等が挙げられる。
【0048】
そして、本実施形態においては、図2に示すように、バルーン14の軸方向中央部と先端との間に設けられ、バルーン14の先端側の拡張を規制する先端側拡張規制部40と、軸方向中央部と基端との間に設けられ、バルーン14の基端側の拡張を規制する基端側拡張規制部42と、先端シャフト20のうち、先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42との間に対応した部分に設けられ、先端シャフト20の拡張用ルーメン30に連通する先端開口部20bとを有する。
【0049】
具体的には、先端側拡張規制部40は、バルーン14の筒部14aと先端テーパ部14bとの境界部分に対応した位置に設けられ、基端側拡張規制部42は、バルーン14の筒部14aと基端テーパ部14cとの境界部分に対応した位置に設けられている。
【0050】
本実施形態において、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42は、それぞれ対向するバルーン14の内壁の一部同士を接着することで形成されている。
【0051】
すなわち、図3に示すように、バルーン14の内壁には、ヒートシール剤44がコーティングされている。図3において、「+」のマークはバルーン14の中心を示す指標である。そして、図4Aに示すように、バルーン14内に、バルーン14の開口を確保するための芯材45を挿入した後、バルーン14を折り畳んで、2つの折り畳み部46a及び46b(バルーン14の互いに対向する内壁が接触する部位)を形成し、各折り畳み部46a及び46bについて、それぞれ2箇所48a及び48b(後に先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42となる部分:図4Aにおいて二点鎖線で示す部分)を加熱することにより、それぞれ対向するバルーン14の内壁のうち、加熱した部分がヒートシール剤44(図3参照)を介して接着され、図4Bに示すように、バルーン14内に先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42が設けられることとなる。このとき、図4A及び図4Bに示すように、バルーン14の内壁の一部同士を線状に接着することで、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42はそれぞれ隔壁50として構成される。また、図5A及び図5Bに示すように、バルーン14の内壁の一部同士を点状に接着することで、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42はそれぞれ点状接着部52として構成される。なお、ヒートシール剤44としては、バルーン14が熱によって溶融しない140℃以下の加熱で接着が可能なものを使用することが好ましい。
【0052】
図4A及び図4Bの例では、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を共に隔壁50として構成し、図5A及び図5Bの例では、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を共に点状接着部52として構成したが、その他、先端側拡張規制部40を隔壁50として構成し、基端側拡張規制部42を点状接着部52として構成してもよいし、先端側拡張規制部40を点状接着部52として構成し、基端側拡張規制部42を隔壁50として構成してもよい。
【0053】
上述の例では、バルーン14を折り畳んで2つの折り畳み部46a及び46bを形成し、各折り畳み部46a及び46bについてそれぞれ2箇所48a及び48bを加熱することで、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を形成するようにしたが、その他、図6Aに示すように、3つの折り畳み部46a〜46cを形成し、各折り畳み部46a〜46cについてそれぞれ2箇所を局部的に加熱することで、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を形成するようにしてもよいし、図6Bに示すように、4つの折り畳み部46a〜46dを形成し、各折り畳み部46a〜46cについてそれぞれ2箇所を局部的に加熱することで、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を形成するようにしてもよい。図6A及び図6Bでは、いずれも隔壁50で構成された先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を示したが、その他、図5Bと同様に、点状接着部52で構成された先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42としてもよい。
【0054】
上述の例では、バルーン14内に芯材45を挿入した後に、バルーンを折り畳んで、各折り畳み部について、それぞれ加熱することにより、バルーン14内に先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を設けるようにしたが、その他、先に、バルーン14内に先端シャフト20を挿入して接合固着し、さらに、先端シャフト20及びバルーン14内に内管28を挿入して接合固着した後に、バルーン14を折り畳んで、各折り畳み部について、それぞれ加熱することにより、バルーン14内に先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を設けるようにしてもよい。後者の方法であれば、芯材45を挿入する工程を省略することができる。
【0055】
本実施の形態において、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42は、バルーン14を予め規定された外径に拡張させる圧力(内圧)を規定圧と定義したとき、規定圧の1/2以上、規定圧未満の圧力でバルーン14に対する拡張の規制を解除するように接着力を調整してある。
【0056】
一方、先端シャフト20の先端開口部20b(図2参照)は、上述したように、先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42との間に対応した部分に設けられればよいが、より好ましくは、バルーン14の筒部14aの中央部に対応する部分に設けるとよい。
【0057】
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の2つの製造方法(第1製造方法及び第2製造方法)について図7及び図8も参照しながら説明する。
【0058】
最初に、第1製造方法について説明すると、先ず、図7のステップS1において、先端から後端まで貫通したワイヤ用ルーメン26を有し、ガイドワイヤ24を挿通するための内管28を作製する。
【0059】
ステップS2において、先端から後端まで貫通した拡張用ルーメン30を有する先端シャフト20を作製する。
【0060】
ステップS3において、先端から後端まで貫通した拡張用ルーメン38を有する基部シャフト22を作製する。
【0061】
ステップS4において、先端から後端まで貫通した拡張用ルーメン30を有し、内径が内管28の外径より大きいバルーン14を作製する。
【0062】
ステップS5において、バルーン14の内壁にヒートシール剤44をコーティングする。例えばバルーン14の先端開口あるいは基端開口からヒートシール剤44の噴射ノズルを挿入し、噴射ノズルからヒートシール剤44を吹きかけることで、バルーン14の内壁にヒートシール剤44をコーティングすることができる。または、バルーン14を先端開口あるいは基端開口から裏返しにして内壁面を露出させ、この露出した内壁面に既知の方法でヒートシール剤44をコーティングし、その後、バルーン14を再び先端開口あるいは基端開口から裏返しにすればよい。
【0063】
ステップS6において、バルーン14内に、該バルーン14の開口を確保するための芯材45を挿入する。その後、ステップS7において、バルーン14を折り畳んで、例えば図4Aに示すように、2つの折り畳み部46a及び46bを形成し、各折り畳み部46a及び46bについて、それぞれ2箇所48a及び48bを加熱する。これにより、バルーン14のそれぞれ対向する内壁のうち、加熱した部分がヒートシール剤44を介して接着され、バルーン14内に先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42が設けられることとなる。
【0064】
ステップS8において、バルーン14内に先端シャフト20を、先端開口部20bが先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42との間に対応した部分、例えばバルーン14の筒部14aの中央部に対応した部分に位置するまで挿入する。
【0065】
ステップS9において、バルーン14の基端部と先端シャフト20とを接合固着する。例えば図2に示すように、バルーン14の基端側非拡張部14eの内周面と先端シャフト20の外周面とを接合固着する。
【0066】
ステップS10において、先端シャフト20内及びバルーン14内に内管28を挿入し、先端シャフト20内及びバルーン14内に内管28を挿入し、先端シャフト20の基端部に内管28の基端部を接合固着する。例えば図2に示すように、先端シャフト20の基端側(途中)の開口部20aに内管28の基端側開口部28aを接合固着する。このとき、先端シャフト20の途中に、内管28のワイヤ用ルーメン26に連通する基端側開口部28aが形成された形態となる。
【0067】
ステップS11において、バルーン14の先端部に内管28の先端部を接合固着する。例えば図2に示すように、バルーン14の先端開口から内管28の先端部を突出させ、バルーン14の先端側非拡張部14dの内周面と内管28の先端部の外周面とを接合固着する。
【0068】
ステップS12において、図2に示すように、先端シャフト20の基端部に、基部シャフト22の先端部36を挿入し、内管28の基端部と基部シャフト22の先端部とを接合固着する。
【0069】
ステップS13において、バルーン14の筒部14aの表面にステント16をマウントする。
【0070】
ステップS14において、基部シャフト22の後端にハブ18を取り付けることで、本実施形態に係るバルーンカテーテル10が完成する。
【0071】
この第1製造方法では、バルーン14に先端シャフト20や内管28を接合固着する前に、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を形成するようにしているが、事前に、バルーン14内に、バルーン14の開口を確保するための芯材45を挿入したので、その後に行われるバルーン14への先端シャフト20や内管28の接合固着の作業において、バルーン14内に先端シャフト20や内管28を挿入し易くなる。
【0072】
次に、第2製造方法について、図8を参照しながら説明すると、先ず、ステップS101〜ステップS105において、上述した第1製造方法のステップS1〜ステップS5と同様に、内管28、先端シャフト20、基部シャフト22及びバルーン14を作製した後、バルーン14の内壁にヒートシール剤44をコーティングする。
【0073】
その後、ステップS106において、上述のステップS8と同様に、バルーン14内に先端シャフト20を、その先端開口部20bが、例えばバルーン14の筒部14aの中央部に対応した部分に位置するまで挿入する。
【0074】
ステップS107において、上述のステップS9と同様に、バルーン14の基端部と先端シャフト20とを接合固着する。
【0075】
ステップS108において、上述のステップS10と同様に、先端シャフト20内及びバルーン14内に内管28を挿入し、先端シャフト20の開口部20aに内管28の基端側開口部28aを接合固着する。
【0076】
ステップS109において、上述のステップS11と同様に、バルーン14の先端部に内管28の先端部を接合固着する。
【0077】
その後、ステップS110において、上述のステップS7と同様に、バルーン14を折り畳んで、例えば図4Aに示すように、2つの折り畳み部46a及び46bを形成し、各折り畳み部46a及び46bについて、それぞれ2箇所48a及び48bを加熱する。これにより、バルーン14のそれぞれ対向する内壁のうち、加熱した部分がヒートシール剤44を介して接着され、バルーン14内に先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42が設けられることとなる。
【0078】
その後、ステップS111〜ステップS113において、第1製造方法のステップS12〜ステップS14と同様に、先端シャフト20の基端部に、基部シャフト22の先端部36を挿入し、内管28の基端部と基部シャフト22の先端部とを接合固着する。バルーン14の筒部14aの表面にステント16をマウントし、基部シャフト22の後端にハブ18を取り付けることで、本実施形態に係るバルーンカテーテル10が完成する。
【0079】
この第2製造方法においては、バルーン14に先端シャフト20や内管28を接合固着した後に、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を形成するようにしたので、事前に、バルーン14の開口を確保するための芯材45を挿入する等の作業が不要になり、工程の簡略化を図ることができる。ただ、この第2製造方法では、バルーン内に挿入されている先端シャフトや内管を熱から保護する必要があるため、サイズによっては点状接着部のみで先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を形成しなければならない場合がある。そこで、バルーン14の大きさや、規制する力に応じて第1製造方法、第2製造方法のいずれかを選択すればよい。
【0080】
次に、以上のように構成される本実施形態に係るバルーンカテーテル10の作用について説明する。
【0081】
先ず、冠動脈内等に発生した狭窄部(病変部)の形態を、血管内造影法や血管内超音波診断法により特定する。
【0082】
次に、例えばセルジンガー法によって大腿部等から経皮的に血管内にガイドワイヤ24を先行して導入すると共に、該ガイドワイヤ24を内管28の先端側開口部28bから内管28のワイヤ用ルーメン26を挿通させて、先端シャフト20の途中にある内管28の基端側開口部28aに導出しつつバルーンカテーテル10を冠動脈内へと挿入する。このとき、バルーンカテーテル10は、バルーン14が収縮あるいは折り畳まれた形態で挿入される。
【0083】
そして、X線造影下で、ガイドワイヤ24を目的とする狭窄部へ進め、その狭窄部を通過させて留置すると共に、バルーンカテーテル10をガイドワイヤ24に沿って冠動脈内に進行させる。
【0084】
バルーンカテーテル10の進行によって、該バルーンカテーテル10のバルーン14が狭窄部に到達する。この段階で、ハブ18側から基部シャフト22及び先端シャフト20の拡張用ルーメン30内へと拡張用流体(例えば、造影剤)を圧送することで、バルーン14が拡張することとなる。このとき、拡張用ルーメン30に連通する開口(先端シャフト20の先端開口部20b)が先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42との間に対応した部分に設けられているため、バルーン14の拡張開始時においては、バルーン14のうち、先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42との間に拡張用流体が供給され、図9に示すように、バルーン14の中央部が拡張し始める。このとき、先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42によって、バルーン14の先端側と基端側の拡張が規制されているため、バルーン14の中央部が優先的に拡張することとなる。本実施形態では、先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42を、規定圧未満の圧力でバルーンに対する拡張の規制を解除するように設定してあるので、バルーン14の内圧が規定圧となった段階では、バルーン14は予め規定された外径に拡張することとなる(図1参照)。
【0085】
バルーン14の拡張によって、狭窄部が押し広げられることで、ステント16も拡張し、ステント16は狭窄部内壁に密着・固定されることとなる。
【0086】
このように、本実施形態に係るバルーンカテーテル10においては、バルーン14の先端側の拡張を規制する先端側拡張規制部40と、バルーン14の基端側の拡張を規制する基端側拡張規制部42と、先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42との間に対応した部分に設けられた先端開口部20b(拡張用ルーメン30に連通する開口)とを有するようにしたので、バルーン14の先端側や基端側から優先的に拡張することがなく、確実にバルーン14の中央部から優先的に拡張させることができ、例えばバルーン14にステント16をマウントしている場合には、ステント16のショートニングや、ステント16のバルーン14からの移動(抜け落ち等)を回避することができ、目的の位置にステント16を設置することができる。
【0087】
特に、本実施形態において、先端側拡張規制部40を、バルーン14の筒部14aと先端テーパ部14bとの境界部分に対応した位置に設け、基端側拡張規制部42を、バルーン14の筒部14aと基端テーパ部14cとの境界部分に対応した位置に設けるようにしたので、バルーン14の先端テーパ部14bや基端テーパ部14cから優先的に拡張することがなく、確実にバルーン14の中央部、すなわち、筒部14aから優先的に拡張させることができる。
【0088】
また、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を、それぞれ対向するバルーン14の内壁の一部同士を接着することで形成するようにしたので、バルーン14の拡張開始時においては、バルーン14の内壁の一部同士が接着された部分によって、それよりも先端側及び基端側の拡張が規制され、バルーン14の中央部が優先的に拡張することとなる。その後、バルーン14の拡張が進んで、上述の接着部分の接着が外れる(解除する)ことで、バルーン14の先端側及び基端側も拡張し、バルーン14全体が拡張することになる。
【0089】
また、本実施形態では、バルーン14の内壁にヒートシール剤44をコーティングし、それぞれ対向するヒートシール剤44の一部同士を加熱により接着することで、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を設けるようにしたので、加熱接着という簡単な手法で、バルーン14の所定箇所に先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42を設けることができる。この場合、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42の少なくともいずれか一方を、バルーン14の内壁の一部同士を線状に接着した隔壁50として構成すれば、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42での規制力を強めることができるため、バルーン14が大きい場合や、拡張のタイミングを大きくずらしたい場合(中央部が拡張し始めてから先端部及び基端部が拡張し始めるまでの時間を大きくとりたい場合等)に有効である。また、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42の少なくともいずれか一方を、バルーン14の内壁の一部同士を点状に接着した点状接着部52として構成すれば、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42での規制力を弱めることができるため、バルーン14が小さい場合や、拡張のタイミングのずれを小さくしたい場合(中央部が拡張し始めてから先端部及び基端部が拡張し始めるまでの時間を短くしたい場合等)に有効である。
【0090】
さらに、本実施形態では、先端側拡張規制部40及び基端側拡張規制部42によるバルーン14に対する拡張の規制を、規定圧の1/2以上、規定圧未満の圧力で解除するように設定している。この場合、先端側拡張規制部40と基端側拡張規制部42を、バルーン14内の圧力が規定圧の1/2以上、規定圧未満となった段階で、バルーン14に対する拡張の規制が解除されるため、規定圧となった段階で、バルーン14を予め規定された外径に拡張させることができる。規定圧の1/2以上に設定したので、確実にバルーン14の中央部を優先的に拡張させることができる。
【0091】
また、ガイドワイヤ24を挿通するための内管28を有するようにし、内管28を先端シャフト20及びバルーン14内に挿通し、その先端部をバルーン14の先端に接合固着するようにしたので、先端シャフト20がバルーン14に拡張用流体を導入するための管として機能し、内管28がガイドワイヤ24を挿通するための管として機能するため、ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルを実現させることができる。
【0092】
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0093】
上述の例では、バルーン14の周囲にマウントされたステント16を所望の狭窄部に留置するためのステントデリバリー(ステントシステム)に適用した場合を示したが、バルーン14にステント16がマウントされない通常のPTCA拡張カテーテルにも適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0094】
10…バルーンカテーテル 12…シャフト本体
14…バルーン 14a…筒部
14b…先端テーパ部 14c…基端テーパ部
16…ステント 20…先端シャフト
22…基部シャフト 24…ガイドワイヤ
26…ワイヤ用ルーメン 28…内管
30、38…拡張用ルーメン 40…先端側拡張規制部
42…基端側拡張規制部 44…ヒートシール剤
46a〜46d…折り畳み部 48a、48b…加熱箇所
50…隔壁 52…点状接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に拡張用ルーメンを有するシャフトと、
基端側が前記シャフトに接合されることで、前記拡張用ルーメンからの拡張用流体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーンの軸方向中央部と先端との間に設けられ、前記バルーンの先端側の拡張を規制する先端側拡張規制部と、前記軸方向中央部と基端との間に設けられ、前記バルーンの基端側の拡張を規制する基端側拡張規制部と、
前記シャフトのうち、前記先端側拡張規制部と前記基端側拡張規制部との間に対応した部分に設けられ、前記拡張用ルーメンに連通する開口部と、を有することを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
請求項1記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記バルーンは、拡張用ルーメンを介して内部に注入される拡張用流体により筒状に拡張する筒部と、前記筒部の先端側で漸次縮径する先端テーパ部と、前記筒部の基端側で漸次縮径する基端テーパ部とを有し、
前記先端側拡張規制部は、前記筒部と前記先端テーパ部との境界部分に対応した位置に設けられ、
前記基端側拡張規制部は、前記筒部と前記基端テーパ部との境界部分に対応した位置に設けられていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部は、前記バルーンのそれぞれ対向する内壁の一部同士を接着することで形成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項4】
請求項3記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記バルーンの内壁にヒートシール剤がコーティングされ、
それぞれ対向する前記ヒートシール剤の一部同士を加熱により接着することで、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部が設けられていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項5】
請求項3又は4記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部の少なくともいずれか一方は、前記バルーンの内壁の一部同士を線状に接着した隔壁として構成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項6】
請求項3又は4記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部の少なくともいずれか一方は、前記バルーンの内壁の一部同士を点状に接着した点状接着部として構成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記バルーンを予め規定された外径に拡張させる圧力を規定圧と定義したとき、
前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部は、前記規定圧の1/2以上、前記規定圧未満の圧力で前記バルーンに対する拡張の規制を解除することを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記バルーンにマウントされたステントを有することを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルにおいて、
ガイドワイヤを挿通するための内管を有し、
前記内管は前記シャフト及び前記バルーン内に挿通され、その先端部が前記バルーンの先端に接合されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項10】
内部に拡張用ルーメンを有するシャフトと、基端側が前記シャフトに接合されることで、前記拡張用ルーメンからの拡張用流体によって拡張可能なバルーンと、前記バルーンの軸方向中央部と先端との間に設けられ、前記バルーンの先端側の拡張を規制する先端側拡張規制部と、前記軸方向中央部と基端との間に設けられ、前記バルーンの基端側の拡張を規制する基端側拡張規制部と、前記シャフトのうち、前記先端側拡張規制部と前記基端側拡張規制部との間に対応した部分に設けられ、前記拡張用ルーメンに連通する開口部とを有するバルーンカテーテルの製造方法において、
先端が開口している前記拡張用ルーメンを有する前記シャフトを作製する工程と、
前記バルーンを作製する工程と、
前記バルーンの内壁にヒートシール剤をコーティングする工程と、
それぞれ対向する前記バルーンの内壁の一部同士を加熱により接着することで、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部を形成する拡張規制部形成工程と、
前記バルーン内に前記シャフトを、前記開口部が前記先端側拡張規制部と前記基端側拡張規制部との間に対応した部分に位置するまで挿入した後、前記バルーンの基端側と前記シャフトとを接合するシャフト接合工程とを、有し、
前記拡張規制部形成工程を、前記シャフト接合工程の前又は後に行うことを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項11】
請求項10記載のバルーンカテーテルの製造方法において、
前記拡張規制部形成工程は、前記シャフト接合工程の前に行われ、
前記バルーン内に、該バルーンの開口を確保するための芯材を挿入した後、それぞれ対向する前記バルーンの内壁の一部同士を加熱により接着することで、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部を形成することを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項12】
請求項10記載のバルーンカテーテルの製造方法において、
前記拡張規制部形成工程を、前記シャフト接合工程の後に行うことを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルの製造方法において、
前記拡張規制部形成工程は、
前記バルーンの内壁の一部同士を線状に接着して、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部の少なくともいずれか一方を隔壁として形成することを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルの製造方法において、
前記拡張規制部形成工程は、
前記バルーンの内壁の一部同士を点状に接着して、前記先端側拡張規制部及び前記基端側拡張規制部の少なくともいずれか一方を点状接着部として形成することを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルの製造方法において、
前記バルーンにステントをマウントする工程を有することを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−200587(P2011−200587A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73140(P2010−73140)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】