説明

バンドトッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物、及び空気入りタイヤ

【課題】BELの発生を抑制できる、すなわち耐久性に優れるバンドトッピング用ゴム組成物、又はブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物、並びにこれらを用いて作製したバンド及び/又はブレーカーエッジストリップを有する空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】イソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、硫黄を1.5〜2.9質量部、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を1〜3質量部、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を0.7〜3質量部、シリカを5〜17質量部、窒素吸着比表面積が38〜125m/gのカーボンブラックを10〜55質量部含むバンドトッピング用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドトッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物、及びこれらを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車社会において、タイヤには耐摩耗性及び低転がり抵抗(LRR)性が要求され、種々の方策が講じられている。その一方で、タイヤの耐摩耗性が向上すると、タイヤの使用期間が長くなるため、タイヤの耐久性(内部損傷)が懸念される。内部損傷の代表的なものとして、ブレーカーエッジの損傷(BEL:BREAKER EDGE LOOSENESS)がある。
【0003】
従来から、トレッド部の耐久性を高めるために、ブレーカーゴムと接するようにブレーカーゴムのタイヤ半径方向外側に設けられ、ブレーカーゴムの動きを抑制する、バンドトッピングゴム(バンドゴム)、周方向バンドコードや、ブレーカーのエッジ部分に設けられ、ブレーカーの動きを緩和し、ブレーカー端での歪を低減するブレーカーエッジストリップゴムが使用されている。
【0004】
しかし、バンドトッピングゴムやブレーカーエッジストリップゴムが酸化劣化することにより、これらのゴムの硬度が上昇し、破断時伸びが低下する。このゴム特性の変化により、ブレーカーの端で生じた亀裂がブレーカーエッジストリップゴムへと拡がり、さらに、ブレーカーゴムとバンドゴムの間にまで亀裂が成長し、BELが発生する。このバンドトッピングゴムやブレーカーエッジストリップゴムの酸化劣化は、特に高温地区でタイヤが使用された場合に生じやすい。
【0005】
また、従来から、バンドには、バンドトッピングゴムと共にゴムとの接着性に優れるナイロン66コードが使用されている。しかし、最近になって、安価なポリエステル(PE)コードやノイズ(静音性)に優れるポリエチレンナフタレート(PEN)コード等の使用が検討されている。しかし、これらのコードは、従来のナイロン66コードを使用した場合に比べてBELが発生しやすいため、本格的な実用化が遅れているのが現状である。
【0006】
BELの発生を抑制する手法として、ブレーカーとバンドとの間のゴムの厚みを大きくする手法が知られている。しかし、この手法では、加硫初期にゴムが流動し、ブレーカーとバンドとの間のゴムの厚みを充分に保つことは困難である。特に、初期歪下の伸びが少ないPENコードの場合、ゴムの厚みを保つことは困難である。
【0007】
また、BELの発生を抑制する他の手法として、インナーライナーの空気透過性を改善して、タイヤ内部からゴム層を通過してタイヤの外部(大気中)に漏れる空気の量を減らし、すなわちバンドトッピングゴムやブレーカーエッジストリップゴムへの酸素の供給を抑制し、これらのゴムの酸化劣化を抑制する方法も考えられるが、タイヤの空気圧の低下を抑えることには限界があり、これらのゴムの酸化劣化を充分に抑制することはできない。
【0008】
また、特許文献1では、硫黄と共に接着性樹脂を配合し、破断特性を向上する方法が開示されているが、BELの発生を抑制するという点では改善の余地がある。
【0009】
以上のように、BELの発生を抑制できる、すなわち耐久性に優れるバンドトッピングゴム、ブレーカーエッジストリップゴムは未だ実現に至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−28684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決し、BELの発生を抑制できる、すなわち耐久性に優れるバンドトッピング用ゴム組成物、又はブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物、並びにこれらを用いて作製したバンド及び/又はブレーカーエッジストリップを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、イソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、硫黄を1.5〜2.9質量部、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を1〜3質量部、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を0.7〜3質量部、シリカを5〜17質量部、窒素吸着比表面積が38〜125m/gのカーボンブラックを10〜55質量部含むバンドトッピング用ゴム組成物に関する。
【0013】
上記バンドトッピング用ゴム組成物において、上記ゴム成分がスチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0014】
本発明はまた、イソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、硫黄を2.0〜3.99質量部、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を0.6〜4質量部、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を0.6〜4質量部、有機酸コバルトを、コバルトに換算して0.05〜0.30質量部含むブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物に関する。
【0015】
上記ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物は、シリカを含むことが好ましい。
【0016】
上記ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が50〜70質量部であることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したバンド及び/又は上記ゴム組成物を用いて作製したブレーカーエッジストリップを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定量のイソプレン系ゴムを含むゴム成分に対して、硫黄と、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、シリカと、特定の窒素吸着比表面積のカーボンブラックとを所定量含むバンドトッピング用ゴム組成物、又は、所定量のイソプレン系ゴムを含むゴム成分に対して、硫黄と、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、有機酸コバルトとを所定量含むブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物であるので、BELの発生を抑制できる(耐久性に優れる)。よって、上記ゴム組成物をタイヤのバンド及び/又はブレーカーエッジストリップに使用することにより、耐久性に優れた空気入りタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のバンドトッピング用ゴム組成物は、所定量のイソプレン系ゴムを含むゴム成分に対して、硫黄と、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、シリカと、特定の窒素吸着比表面積のカーボンブラックとを所定量含む。これにより、加工性(シート圧延性)を維持しつつ、複素弾性率(E)、低発熱性、破断時伸びを向上でき、BELの発生を抑制でき、低燃費性と耐久性に優れた空気入りタイヤを提供できる。
【0021】
なお、複素弾性率(E)と破断時伸びが高く、発熱性(tanδ)が低い方が耐久性の向上に優れている。しかし、Eと破断時伸びは背反性能であるため、両者を共に向上することは困難であるが、本発明のバンドトッピング用ゴム組成物では、両者を共に向上でき、高いレベルでEと破断時伸びを両立できる。
【0022】
本発明のブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物は、所定量のイソプレン系ゴムを含むゴム成分に対して、硫黄と、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、有機酸コバルトとを所定量含む。これにより、硬度、コードとの接着性、加工性(シート圧延性)を維持しつつ、破断時伸び(新品時)、破断時伸び(熱酸化劣化後)を向上でき、BELの発生を抑制でき、耐久性に優れた空気入りタイヤを提供できる。なお、ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物は、トッピングゴム(コードを被覆するゴム)ではないものの、ブレーカーエッジストリップとブレーカーが接する部分では、ブレーカー中のスチールコード等のコードにブレーカーエッジストリップゴムが接触するため、ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物には、コードとの優れた接着性も求められる。
【0023】
また、硬度(Hs)と破断時伸びが高い方が耐久性の向上に優れている。しかし、硬度と破断時伸びは背反性能であるため、両者を共に向上することは困難であるが、本発明のブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物では、高いレベルで硬度と破断時伸びを両立できる。
【0024】
また、本発明のバンドトッピング用ゴム組成物及び/又はブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物をタイヤのバンド及び/又はブレーカーエッジストリップに使用することにより、BELの発生を抑制でき、空気入りタイヤの耐久性を向上できる。そのため、空気入りタイヤの耐久性を憂慮することなく、ナイロン66コード以外のポリエステル(PE)コードやポリエチレンナフタレート(PEN)コード等をバンド用コードとして使用することができ、バンド用コードとして使用できるコードの種類が増加する。よって、例えば、PEコードを使用することによりコストを削減でき、PENコードを使用することにより静音性を向上できる。
【0025】
(ゴム成分)
本発明のバンドトッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物(以下においては、これらをまとめて本発明のゴム組成物ともいう)は、所定量のイソプレン系ゴムを含む。
【0026】
イソプレン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム等が挙げられる。NRには、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)も含まれ、改質天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。また、NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、NR、IRが好ましく、NRがより好ましい。
【0027】
バンドトッピング用ゴム組成物では、ゴム成分100質量%中に、イソプレン系ゴムが50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。イソプレン系ゴムが50質量%未満であると、破断時伸びが低下し、耐久性が低下する。また、低燃費性も悪化する。
イソプレン系ゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。90質量%を超えると、加硫戻り(リバージョン)が大きくなるおそれがある。
【0028】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物では、ゴム成分100質量%中に、イソプレン系ゴムが50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。イソプレン系ゴムが50質量%未満であると、破断時伸びが低下し、耐久性が低下する。また、低燃費性も悪化する。
【0029】
イソプレン系ゴムの他に、ゴム成分として使用できるものとしては、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、バンドトッピング用ゴム組成物においては、耐リバージョン、耐熱、耐亀裂成長性という理由から、SBR、BRが好ましく、SBRがより好ましい。
【0030】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)も使用できる。
【0031】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン等により変性された変性SBR等が挙げられる。なかでも、高分子量ポリマー成分が多く、破断時伸びに優れるという理由から、E−SBRが好ましい。
【0032】
バンドトッピング用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、リバージョンが大きくなるおそれがある。該SBRの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。50質量%を超えると、破断時伸びが低下するおそれがある。
【0033】
(硫黄)
バンドトッピング用ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1.5質量部以上、好ましくは2.0質量部以上である。1.5質量部未満では、コードとの接着性が低下し、コードとゴムの間で剥離が生じ、さらに、複素弾性率、破断時伸びも低下し、耐久性が低下する。また、低燃費性も悪化する。また、硫黄の含有量は、2.9質量部以下、好ましくは2.5質量部以下である。2.9質量部を超えると、酸化劣化により架橋密度が上昇し、破断時伸びが低下し、耐久性が低下する。
【0034】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2.0質量部以上、好ましくは2.5質量部以上である。2.0質量部未満では、コードとの接着性が低下し、コードとゴムの間で剥離が生じ、耐久性が低下する。また、加工性(シート圧延性)も低下する。また、硫黄の含有量は、3.99質量部以下、好ましくは3.4質量部以下、より好ましくは3.1質量部以下である。3.99質量部を超えると、酸化劣化により架橋密度が上昇し、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)が低下し、耐久性が低下する。また、接着性、加工性(シート圧延性)も低下する。なお、硫黄の含有量が上記範囲内であると、優れた接着性、破断時伸び(熱酸化劣化後)が得られる。
【0035】
(樹脂)
本発明のゴム組成物は、レゾルシノール樹脂(縮合物)、変性レゾルシノール樹脂(縮合物)、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(樹脂)を含む。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの化合物の少なくとも1種を含むことにより、コードとの接着性、破断時伸び、複素弾性率を向上できる。
なかでも、バンドトッピング用ゴム組成物においては、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、変性クレゾール樹脂が好ましく、変性レゾルシノール樹脂がより好ましい。
また、ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物においては、変性レゾルシノール樹脂、変性クレゾール樹脂、変性フェノール樹脂が好ましく、変性レゾルシノール樹脂がより好ましい。
【0036】
レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。具体的には、住友化学工業(株)製のレゾルシノール等が挙げられる。変性レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。具体的には、インドスペック社製のペナコライト樹脂B−18−S、B−20、田岡化学工業(株)製のスミカノール620、ユニロイヤル社製のR−6、スケネクタディー化学社製のSRF1501、アッシュランド化学社製のArofene7209等が挙げられる。
【0037】
クレゾール樹脂としては、例えば、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。変性クレゾール樹脂としては、例えば、クレゾール樹脂の末端のメチル基を水酸基に変性したもの、クレゾール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。具体的には、田岡化学工業(株)製のスミカノール610等が挙げられる。
【0038】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。また、変性フェノール樹脂としては、フェノール樹脂をカシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミンなどを用いて変性した樹脂が挙げられる。
【0039】
バンドトッピング用ゴム組成物において、上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは1.2質量部以上である。1質量部未満では、複素弾性率が低下し、耐久性が低下する。また、上記樹脂の含有量は、3質量部以下、好ましくは2.5質量部以下である。3質量部を超えると、樹脂の分散性が低下し、低燃費性、破断時伸び、加工性(シート圧延性)、耐久性が低下する。
【0040】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.6質量部以上、好ましくは0.8質量部以上である。0.6質量部未満では、破断時伸び(熱酸化劣化後)、接着性が低下し、耐久性が低下する。また、上記樹脂の含有量は、4質量部以下、好ましくは3質量部以下である。4質量部を超えると、樹脂の分散性が低下し、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)が低下し、耐久性が低下する。
【0041】
(メチレン供与体)
本発明のゴム組成物は、ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)の部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(メチレン供与体)を含む。これらは単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
【0042】
本発明では、HMMMの部分縮合物及び/又はHMMPMEの部分縮合物を含むため、コードとゴム接着層を強化できる。なかでも、HMMPMEの部分縮合物が好ましい。
一方、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)を使用すると、コードとの接着性が充分ではなく、耐久性が低下する。
【0043】
バンドトッピング用ゴム組成物において、上記メチレン供与体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.7質量部以上、好ましくは0.8質量部以上である。0.7質量部未満では、メチレン供給量が少なく、複素弾性率(E)が低下するおそれがある。また、上記メチレン供与体の含有量は、3質量部以下、好ましくは2.5質量部以下である。3質量部を超えると、破断時伸び(熱酸化劣化後)が低下するおそれがある。
【0044】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、上記メチレン供与体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.6質量部以上、好ましくは0.8質量部以上である。0.6質量部未満では、接着性が低下し、耐久性が低下する。また、上記メチレン供与体の含有量は、4質量部以下、好ましくは3質量部以下である。4質量部を超えると、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)が低下し、耐久性が低下する。また、加工性(シート圧延性)も低下する。
【0045】
(シリカ)
バンドトッピング用ゴム組成物は、シリカを含む。これにより、破断時伸び、コード接着性を向上できる。
また、同様の効果が得られるため、ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物においても、シリカを含有することが好ましい。
【0046】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0047】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは40m/g以上、より好ましくは60m/g以上、更に好ましくは100m/g以上である。40m/g未満では、破断時伸びが低下し、耐久性が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。220m/gを超えると、低燃費性、加工性(シート圧延性)が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0048】
バンドトッピング用ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは7質量部以上である。5質量部未満では、破断時伸びが低下し、耐久性が低下する。また、低燃費性も悪化する。また、シリカの含有量は、17質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは13質量部以下である。17質量部を超えると、分散性が低下し、破断時伸び、複素弾性率(E)が低下する。また、熱が加えられると、シリカが再凝集して、加工性(シート圧延性)が低下する。
なお、シリカ量が上記範囲内であれば、カーボンブラックゲルの中に紛れてカーボンブラックと一緒にシリカが分散し、混練時や加硫時において、シリカの再凝集を防止できる。そのため、シランカップリング剤を実質的に含有しなくてよい。シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下、更に好ましくは0.001質量部以下、最も好ましくは0質量部(含有しない)である。これにより、E、及び硬度を向上でき、耐久性に優れると共にコストの低減も図れる。
上記効果は、カーボンブラック量がゴム成分100質量部に対して、20質量部以上の場合に顕著である。また、上記効果は、ゴム成分として、イソプレン系ゴムを含む場合(好ましくはイソプレン系ゴムとBRを併用する場合)に顕著である。
【0049】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上である。5質量部未満では、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)、接着性が低下し、耐久性が低下するおそれがある。また、シリカの含有量は、好ましくは17質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは13質量部以下である。17質量部を超えると、分散性が低下し、破断時伸び、複素弾性率(E)が低下する。また、熱が加えられると、シリカが再凝集して、加工性(シート圧延性)が低下するおそれがある。
なお、シリカ量が上記範囲内であれば、カーボンブラックゲルの中に紛れてカーボンブラックと一緒にシリカが分散し、混練時や加硫時において、シリカの再凝集を防止できる。そのため、シランカップリング剤を実質的に含有しなくてよい。シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下、更に好ましくは0.001質量部以下、最も好ましくは0質量部(含有しない)である。これにより、E、及び硬度を向上でき、耐久性に優れると共にコストの低減も図れる。
上記効果は、カーボンブラック量がゴム成分100質量部に対して、20質量部以上の場合に顕著である。また、上記効果は、ゴム成分として、イソプレン系ゴムを含む場合(好ましくはイソプレン系ゴムとBRを併用する場合)に顕著である。
【0050】
(カーボンブラック)
バンドトッピング用ゴム組成物は、特定の窒素吸着比表面積のカーボンブラックを含有する。これにより、より良好な補強性が得られ、複素弾性率、低発熱性、破断時伸び、耐久性をバランスよく改善できる。また、同様の効果が得られるため、ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物においても、特定の窒素吸着比表面積のカーボンブラックを含有することが好ましい。
【0051】
バンドトッピング用ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、38m/g以上、好ましくは60m/g以上である。NSAが38m/g未満では、充分な補強性が得られず、複素弾性率、破断時伸びが充分に得られず、耐久性が低下する。また、カーボンブラックのNSAは、125m/g以下、好ましくは110m/g以下、より好ましくは90m/g以下である。NSAが125m/gを超えると、低燃費性、加工性(シート圧延性)が低下する。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217、7頁のA法によって求められる。
【0052】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは38m/g以上、より好ましくは60m/g以上、更に好ましくは90m/g以上である。NSAが38m/g未満では、充分な補強性が得られず、硬度、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)が充分に得られず、耐久性が低下するおそれがある。また、カーボンブラックのNSAは、好ましくは125m/g以下、より好ましくは115m/g以下である。NSAが125m/gを超えると、低燃費性、加工性(シート圧延性)が低下するおそれがある。カーボンブラックのNSAが上記範囲内であると、硬度、低発熱性、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)、耐久性をバランスよく改善できる。特に、NSAが90m/g以上の場合、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)の向上効果が高い。
【0053】
バンドトッピング用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、充分な補強性が得られず、複素弾性率、破断時伸びが充分に得られず、耐久性が低下する。また、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、55質量部以下、好ましくは50質量部以下である。55質量部を超えると、低発熱性、破断時伸び、加工性(シート圧延性)、耐久性が低下する。
【0054】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上である。20質量部未満では、充分な補強性が得られず、硬度、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)が充分に得られず、耐久性が低下するおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは65質量部以下、より好ましくは58質量部以下である。65質量部を超えると、低発熱性、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)、加工性(シート圧延性)、耐久性が低下するおそれがある。
【0055】
バンドトッピング用ゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは35質量部以上である。30質量部未満では、充分な破断時伸び、複素弾性率(E)、フィラーの分散性が得られないおそれがある。また、上記合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下である。60質量部を超えると、低燃費性、破断時伸びが低下するおそれがある。
【0056】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは35質量部以上、より好ましくは37質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。また、上記合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは70質量部以下、より好ましくは65質量部以下である。シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が上記範囲内であると、硬度と破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)が高いレベルで両立できる。
【0057】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物は、有機酸コバルトを含む。
有機酸コバルトは、スチールコードとゴムとを架橋する役目を果たすため、有機酸コバルトを含有することにより、スチールコードとゴムとの接着性を向上させることができる。有機酸コバルトの具体例としては、例えば、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ホウ素酸ネオデカン酸コバルトなどが挙げられる。なかでも、加工性に優れることから、ステアリン酸コバルトが好ましい。
【0058】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、有機酸コバルトの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、コバルトに換算して0.05質量部以上、好ましくは0.08質量部以上である。0.05質量部未満であると、接着性、加工性(シート圧延性)が低下する。
該含有量は、コバルトに換算して0.30質量部以下、好ましくは0.20質量部以下、より好ましくは0.15質量部以下、更に好ましくは0.12質量部以下である。0.30質量部を超えると、破断時伸び(新品時、熱酸化劣化後)、接着性が低下し、耐久性が低下する。
【0059】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー等の補強用充填剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル、ワックス、加硫促進剤、加硫促進助剤などを適宜配合することができる。
【0060】
(酸化亜鉛)
バンドトッピング用ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5.5質量部以上、より好ましくは6質量部以上である。また、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは9質量部以下、特に好ましくは8質量部以下である。酸化亜鉛の含有量が上記範囲であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0061】
ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5.5質量部以上、より好ましくは6質量部以上である。また、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。酸化亜鉛の含有量が上記範囲であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0062】
本発明のバンドトッピング用ゴム組成物は、バンドに使用することができる。以下において、バンドについて図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図1において、上下方向がタイヤ半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。一点鎖線CLは、空気入りタイヤ2の赤道面を表す。空気入りタイヤ2のトレッド部4は、タイヤ半径方向内側から順に、インナーライナー14、カーカス10(第一プライ28、第二プライ30)、ブレーカー12(内側層44、外側層46)、バンド15が設けられている。本発明の一実施形態において、本発明のバンドトッピング用ゴム組成物は、ブレーカー12と接するようにブレーカー12のタイヤ半径方向外側に設けられているバンド15に使用される。なお、バンドが周方向(赤道面)に対してなす角度の絶対値は、0〜40°であることが好ましい。
【0063】
本発明のブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物は、ブレーカーエッジストリップに使用することができる。以下において、ブレーカーエッジストリップについて図2〜4を参照して説明する。
図2〜4は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【0064】
図2〜4は、ブレーカーエッジストリップが設けられている点以外は、図1と同様である。図2では、ブレーカー12の端部近傍において、ブレーカー12の内側層44のタイヤ半径方向外側、かつ、ブレーカー12の外側層46のタイヤ半径方向内側に、すなわち、内側層44と外側層46の間に、ブレーカーエッジストリップ16が設けられている。図3では、ブレーカー12の端部近傍において、ブレーカー12の外側層46の端部を覆うようにブレーカーエッジストリップ16Aが設けられ、ブレーカー12の内側層44の端部を覆うようにブレーカーエッジストリップ16Bが設けられている。図4では、ブレーカー12の端部近傍において、ブレーカー12の外側層46のタイヤ半径方向外側、かつ、バンド15のタイヤ半径方向内側に、すなわち、外側層46とバンド15の間に、ブレーカーエッジストリップ16Aが設けられている。さらに、ブレーカー12の内側層44のタイヤ半径方向外側、かつ、ブレーカー12の外側層46のタイヤ半径方向内側に、すなわち、内側層44と外側層46の間に、ブレーカーエッジストリップ16Bが設けられている。本発明の一実施形態において、本発明のブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物は、図2〜4に示すブレーカーエッジストリップ16、ブレーカーエッジストリップ16A、ブレーカーエッジストリップ16Bに使用される。
【0065】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、前記各成分をバンバリーミキサー、オープンロール等のゴム混練装置を用いて混練する方法が挙げられる。
【0066】
本発明の空気入りタイヤは、コードを上記バンドトッピング用ゴム組成物で被覆してバンド形状に成形したのち、及び/又は、上記ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物をブレーカーエッジストリップ形状に成形したのち、他のタイヤ部材と貼りあわせて未加硫タイヤを成形し、加硫することによって、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤなど)を得ることができる。
【0067】
本発明で使用できるコードとしては、有機繊維コード、スチールコード、有機繊維とスチールのハイブリッドコードなどが挙げられる。なかでも、有機繊維コードが好ましい。有機繊維コードとしては、例えば、ナイロン66コード、ポリエステル(PE)コード、ポリエチレンナフタレート(PEN)コード、レーヨンコード、ナイロン11コード等が挙げられる。
【0068】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック/バス、ライトトラック等に用いることができる。本発明の空気入りタイヤは、低燃費性、耐久性(特に、耐久性(高荷重耐久性))に優れている。よって、高寿命タイヤ、車両総重量が重い電気自動車/燃料電池車用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例】
【0069】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0070】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
SBR(1):日本ゼオン(株)製のNipol 1502(E−SBR、スチレン含量:23.5質量%)
SBR(2):JSR(株)製のHPR340(変性S−SBR、結合スチレン量:10質量%)
BR(1):宇部興産(株)製のBR150B(ハイシスBR、シス含量:97質量%)
BR(2):日本ゼオン(株)製のBR1250H(スズ変性BR)
シリカ(1):ローディアジャパン(株)製のZ115Gr(NSA:112m/g)
カーボンブラック(1):三菱化学(株)製のN326(NSA:78m/g)
カーボンブラック(2):三菱化学(株)製のN219(NSA:107m/g)
カーボンブラック(3):三菱化学(株)製のN660(NSA:35m/g)
カーボンブラック(4):三菱化学(株)製のN110(NSA:127m/g)
オイル:H&R社製のvivatec500(TDAEオイル)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69
老化防止剤:大内新興化学(株)製のNocrac224
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
硫黄:フレキシス社製の不溶性硫黄(オイル分:20%)
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
スミカノール620:田岡化学工業(株)製のスミカノール620(変性レゾルシノール樹脂(変性レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物))
スミカノール610:田岡化学工業(株)製のスミカノール610(変性クレゾール樹脂(メタクレゾール樹脂))
レゾルシノール:住友化学工業(株)製のレゾルシノール(レゾルシノール樹脂)
HMMM:田岡化学工業(株)製のスミカノール508(ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物(成分含量:100質量%))
スミカノール507A:住友化学工業(株)製のスミカノール507A(変性エーテル化メチロールメラミン樹脂(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)の部分縮合物)、シリカとオイル35質量%含有)
HMT:大内新興化学工業(株)製のノクセラーH(ヘキサメチレンテトラミン)
CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
DM:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
ステアリン酸コバルト:大日本インキ化学工業(株)製のcost−F(コバルト含有量:9.5質量%)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーDZ(N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
PR12686:住友デュレツ社製のスミライトレジンPR12686(カシューオイル変性フェノール樹脂)
【0071】
(バンドトッピング用ゴム組成物)
実施例1〜18及び比較例1〜16
表1〜3に示す配合処方(表中の硫黄量は、硫黄成分の量を示す)に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、硫黄、加硫促進剤及びメチレンドナー(HMMM、スミカノール507A、HMT)以外の材料を180℃になるまで混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及びメチレンドナー(HMMM、スミカノール507A、HMT)を添加し、2軸オープンロールを用いて、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物でナイロン66コードを被覆し、バンド形状に加工し、他のタイヤ部材と貼り合わせ、170℃の条件下で12分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:225/40R18 92Y XL)を得た。なお、バンドとブレーカーの詳細を下記する。
ブレーカー:スチールコード、2+2 1.23、38ends/5cm、トップ厚(ゴムの厚み)1.25mm(生トップ反仕上り)
バンド:ジョイントレス、ナイロン66、120dtex/1本撚り、トップ厚(ゴムの厚み)0.85mm(生トップ反仕上り)、5本の束を周方向に巻いて行く方法、バンドが周方向(赤道面)に対してなす角度0°
【0072】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0073】
(複素弾性率(E)、低燃費性(tanδ))
岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、70℃、初期歪10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で、各加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)及び複素弾性率(E)を測定した。
tanδが小さいほど、転がり抵抗が低く、低燃費性に優れることを示す。Eが大きいほど、耐久性に優れることを示す。
【0074】
(引張試験)
加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。EBが大きいほど、破断時伸びに優れることを示す。
【0075】
(シート圧延性)
未加硫ゴム組成物をコールドフィード押し出し機に投入し、厚み0.85mm×幅約1.7mのゴムシートを作製した。作製したゴムシートをナイロン66コードの上下から圧着し、得られたシート表面の平坦性、仕上りを観察し、比較例1を100とし指数評価した。指数が大きいほど、加工性(シート圧延性)に優れる。
【0076】
(低燃費性)
転がり抵抗試験機を用い、上記試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)の条件で走行させたときの転がり抵抗を測定した。そして、比較例1の転がり抵抗を100とし、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗特性が良好である(転がり抵抗が低く、低燃費性に優れる)ことを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1の転がり抵抗)/(各配合の転がり抵抗)×100
【0077】
(耐久性)
JIS規格の最大荷重(最大内圧条件)の150%荷重の条件下で、試験用タイヤを空気圧240kPa(最大荷重が可能な相当空気圧)、速度100km/h、試験環境30℃で、ドラム走行させ、ブレーカー部のセパレーション(バンド、ブレーカー間のBEL)が発生し、タイヤの外観が膨れるまで(タイヤが損傷するまで)の走行距離を測定した。比較例1の走行距離を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐久性に優れることを示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
表1〜3より、所定量のイソプレン系ゴムを含むゴム成分に対して、硫黄と、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、シリカと、特定の窒素吸着比表面積のカーボンブラックとを所定量含む実施例は、加工性(シート圧延性)を維持しつつ、複素弾性率(E)、低発熱性、破断時伸びを向上でき、BELの発生を抑制でき、低燃費性と耐久性に優れていた。
【0082】
(ブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物)
実施例19〜34及び比較例17〜30
表4,5に示す配合処方(表中の硫黄量は、硫黄成分の量を示す)に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、硫黄、加硫促進剤及びメチレンドナー(HMMM、スミカノール507A、HMT)以外の材料を180℃になるまで混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及びメチレンドナー(HMMM、スミカノール507A、HMT)を添加し、2軸オープンロールを用いて、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を150℃の条件下で30分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をブレーカーエッジストリップ形状に加工し、他のタイヤ部材と貼り合わせ、170℃の条件下で12分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:225/40R18 92Y XL)を得た。なお、ブレーカーエッジストリップ(厚み0.5mm×全幅20mmのシート)は、図3に示すように配置した。また、ブレーカーは、スチールコード(1×3/.30HT)をブレーカートッピングゴム(配合は表4,5に示す通り)で被覆して、ブレーカー形状に加工したものを用いた。
【0083】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。その結果を表4,5に示す。
【0084】
(硬度(Hs))
JIS−A硬度計を用いて、25℃において加硫ゴム組成物の硬度を測定した。
【0085】
(引張試験)
加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)(新品時)を測定した。また、温度80℃の条件下で96時間、加硫ゴム組成物を熱酸化劣化した後、劣化後の加硫ゴム組成物についても同様に、破断時伸びEB(%)(熱酸化劣化後)の測定を行った。EBが大きいほど、破断時伸びに優れることを示す。
【0086】
(接着性)
スチールコードを未加硫ゴム組成物で被覆して成型したのち、150℃30分間加硫することによってスチールコード被覆ゴム組成物を作製し、得られたゴム組成物を用いて以下に示す試験を実施し、ゴム組成物のゴムの被覆率(%)を測定した。
ゴムの被覆率は、スチールコードとゴム間を剥離したときの剥離面のゴムの覆われている割合(100%:全面が覆われている)を示す。被覆率(%)が高いほど、接着性が優れていることを示す。
【0087】
(シート圧延性)
未加硫ゴム組成物をコールドフィード押し出し機に投入し、厚み0.5mm×幅約1.7mのシートを作製する条件で押し出し、得られたシート表面の平坦性、仕上りを観察し、比較例17を100とし指数評価した。指数が大きいほど、加工性(シート圧延性)に優れる。
【0088】
(耐久性)
JIS規格の最大荷重(最大内圧条件)の150%荷重の条件下で、試験用タイヤを空気圧240kPa(最大荷重が可能な相当空気圧)、速度100km/h、試験環境30℃で、ドラム走行させ、ブレーカー部のセパレーション(バンド、ブレーカー間のBEL)が発生し、タイヤの外観が膨れるまで(タイヤが損傷するまで)の走行距離を測定した。比較例17の走行距離を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐久性に優れることを示す。
【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
表4,5より、所定量のイソプレン系ゴムを含むゴム成分に対して、硫黄と、レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、有機酸コバルトとを所定量含む実施例は、硬度、接着性、加工性(シート圧延性)を維持しつつ、破断時伸び(新品時)、破断時伸び(熱酸化劣化後)を向上でき、BELの発生を抑制でき、耐久性に優れていた。
【符号の説明】
【0092】
2 空気入りタイヤ
4 トレッド部
10 カーカス
12 ブレーカー
14 インナーライナー
15 バンド
16 ブレーカーエッジストリップ
16A ブレーカーエッジストリップ
16B ブレーカーエッジストリップ
28 第一プライ
30 第二プライ
44 内側層
46 外側層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、
硫黄を1.5〜2.9質量部、
レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を1〜3質量部、
ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を0.7〜3質量部、
シリカを5〜17質量部、
窒素吸着比表面積が38〜125m/gのカーボンブラックを10〜55質量部含むバンドトッピング用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分がスチレンブタジエンゴムを含む請求項1記載のバンドトッピング用ゴム組成物。
【請求項3】
イソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、
硫黄を2.0〜3.99質量部、
レゾルシノール樹脂、変性レゾルシノール樹脂、クレゾール樹脂、変性クレゾール樹脂、フェノール樹脂、及び変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を0.6〜4質量部、
ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、及びヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を0.6〜4質量部、
有機酸コバルトを、コバルトに換算して0.05〜0.30質量部含むブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物。
【請求項4】
シリカを含む請求項3記載のブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物。
【請求項5】
ゴム成分100質量部に対して、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が50〜70質量部である請求項4記載のブレーカーエッジストリップ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1又は2記載のゴム組成物を用いて作製したバンド及び/又は請求項3〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したブレーカーエッジストリップを有する空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87253(P2012−87253A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236746(P2010−236746)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】