説明

バンドパスフィルタ

【課題】簡単な構造で損失を抑えつつ基板側とケース側とのグランドの電位がずれるのを防止したバンドパスフィルタを提供する。
【解決手段】バンドパスフィルタは、平板状に形成された基材11を有する基板10と、基材の一方の面11a側に着脱可能とされた基準面20aから没入する第一の凹部21および第二の凹部、第一の凹部と第二の凹部とを連通させる窓部24が形成された導電性のケース20と、基材の他方の面11bに設けられた導電部材40とを備え、基板は、一方の面に設けられケースの基準面に当接可能なグランドパターン12と、一方の面に基材と第一の凹部との間に第一の凹部から離間した状態で設けられた配線パターン13と、グランドパターンと導電部材とを電気的に接続する接続部材15とを有し、ケースには第一の凹部の内面21aから配線パターンに向けて配線パターンとの間に隙間を形成するように延びる導電体30が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機などに用いられるバンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線機などの回路には、電波の特定の周波数成分を取り出すためにバンドパスフィルタ(以下、「BPF」とも称する。)が基板とともに用いられている。BPFは、たとえば、無線機の送信機においては、スプリアス(目的外の電波)の発生を抑制するために、受信機においては、電波に混入してくる妨害波を抑制するために用いられる。
BPFには、小型、軽量、低損失、そして低コストであることが求められるため、BPFを構成する電波の伝送路には、導波管に代えてマイクロストリップ線路が用いられるようになっている。
【0003】
マイクロストリップ線路を用いたBPFは、基板と同時にエッチングなどで製造できるので低コストであり、基板上に導体のパターンを形成するだけで構成できるので小型かつ軽量となる。
一方で、マイクロストリップ線路を用いたBPFの電気特性は、共振器の例えばX帯における無負荷Qが100程度と低くて損失(挿入損失)が比較的大きかったり、このBPFを収容するシャーシや蓋の寸法を適切に設定しないと構造に起因したスプリアスが発生したりする問題がある。
【0004】
また、近年、BPFの伝送路に用いられる導波管を改良したコムライン型BPF(たとえば、特許文献1〜3参照。)が検討されている。
コムライン型BPFでは、導体のケースや蓋などで囲まれた空洞内部に、内導体(導電体)が配置されている。内導体の一端は空洞を囲む導体を通して接地されていて、内導体の他端は導体と離間した状態となり開放されている。内導体の他端と、この他端に対向する導体との間に電気容量を生じさせることで共振器を構成し、共振器を複数結合させることでBPFを構成している。
【0005】
特許文献1に記載されたコムライン型BPFは、内導体を2つに分離し、この2つに分離した内導体で基板を挟んでいる。
特許文献2および3に記載されたコムライン型BPFは、内導体の他端と導体との間隔を保持するために、内導体の他端と導体との間に間隔保持部材を配置している。
【0006】
コムライン型BPFは、共振器の例えばX帯における無負荷Qが2,000程度と、マイクロストリップ線路に対して比較的高くて損失が比較的小さいという特長がある。
一方で、コムライン型BPFは、マイクロストリップ線路を用いたBPFに較べて大型になる。このため、無線機などを構成するために基板に接続するには、無線機全体を小型化するために、コムライン型BPFを取り付けるための金属製のシャーシに切り欠きやザグリ穴を開けるなどの加工をしたうえで、この加工部にコムライン型BPFを取り付け、シャーシ上に配置された基板に接続する必要がある。シャーシの加工部とコムライン型BPFとの隙間が小さいと、両者の寸法のバラツキによっては加工部にコムライン型BPFが取り付けられない場合があるので、一般的に、コムライン型BPFの外径より大きめに加工部を形成する。この場合には、基板側のグランドとコムライン型BPFの導体とが離間して、両部材が電界を介して電気的に接続されることになる。
この場合には、基板側のグランドと導体側のグランドとの電位がずれし、BPFの入出力間のアイソレーションレベル(信号の分離度を示す量)が減少することで通過帯域外の信号の減衰量が減少し、フィルタとしての性能が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0068104号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0128263号明細書
【特許文献3】米国特許第7570136号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、従来のマイクロストリップ線路を用いたBPFは損失が比較的大きく、コムライン型BPFは、基板に接続したときに性能が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構造で損失を抑えるとともに、基板側のグランドとケース側のグランドとの電位がずれるのを防止したバンドパスフィルタを提供することを目的とする。このバンドパスフィルタにおいて、例えば基板として無線回路基板を用いることで、無線回路基板と一体化されたバンドパスフィルタを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のバンドパスフィルタは、絶縁性の材料で平板状に形成された基材を有する基板と、前記基材の一方の面側に着脱可能とされた基準面から没入する第一の凹部および第二の凹部、前記第一の凹部と前記第二の凹部とを連通させる窓部が形成された導電性のケースと、前記基材の他方の面に設けられた導電部材と、を備え、前記基板は、前記一方の面に設けられ、前記ケースの前記基準面に当接可能とされたグランドパターンと、前記一方の面に、前記基材と前記第一の凹部との間に前記第一の凹部から離間した状態で設けられた配線パターンと、前記グランドパターンと前記導電部材とを電気的に接続する接続部材と、を有し、前記ケースには、前記第一の凹部の内面から前記配線パターンに向けて、前記配線パターンとの間に隙間を形成するように延びる導電体が設けられていることを特徴としている。
【0011】
また、上記のバンドパスフィルタにおいて、前記導電体と前記配線パターンとの、前記導電体が延びる延在方向の距離を調節可能な調節機構を備えることがより好ましい。
また、上記のバンドパスフィルタにおいて、前記調節機構は、前記ケースおよび前記導電体の一方に設けられ、螺旋状のネジ溝の軸線が前記延在方向に略平行に設定された雄ネジ部と、前記ケースおよび前記導電体の他方に設けられ前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部と、を有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバンドパスフィルタによれば、簡単な構造で損失を抑えるとともに、基板側のグランドとケース側のグランドとの電位がずれるのを防止することができる。さらに、無線回路基板と一体化したバンドパスフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態のバンドパスフィルタを分解した斜視図である。
【図2】同バンドパスフィルタの要部の断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態のバンドパスフィルタの要部の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の変形例におけるバンドパスフィルタの要部の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の変形例におけるバンドパスフィルタの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るバンドパスフィルタの第1実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
図1および図2に示すように、本BPF1は、絶縁性の材料で平板状に形成された基材11を有する基板10と、基材11の一方の面11a側に着脱可能とされた基準面20aを有する導電性のケース20と、基材11の他方の面11bに設けられたグランド層(導電部材)40とを備えている。
【0015】
以下では、まず、ケース20について説明する。
ケース20は、本実施形態では、例えば、アルミニウムといった金属材料で形成されたブロックを削り出すことにより形成されている。
ケース20には、基準面20aから没入する第一の凹部21、第二の凹部22、および第三の凹部23が、基準面20aに沿うX方向に互いに離間した状態で並べて形成されている。この例では、第一の凹部21、第二の凹部22、および第三の凹部23は、略直方体状に凹んでいる。
ケース20には、第一の凹部21における最も没入した面である底面(内面)21aの中央部から、基準面20aに直交するZ方向(延在方向)に延びる内導体(導電体)30が設けられている。内導体30は、底面21aに接触する面以外は、第一の凹部21に接触しないように構成されている。
同様に、ケース20には、第三の凹部23、第二の凹部22における最も没入した面である底面の中央部からZ方向に延びる内導体31、内導体32がそれぞれ設けられている(図1参照)。
内導体30、31、32は、この例では、アルミニウムにより略円柱状に形成され、ケース20に導電性の接着剤などにより接続されている。内導体30、31、32における基準面20a側の面は、基準面20aより突出しないように設定されている。
【0016】
第一の凹部21と第二の凹部22との間には、第一の凹部21と第二の凹部22とを連通させる第一のアイリス(窓部)24が形成されている。同様に、第二の凹部22と第三の凹部23との間には、第二の凹部22と第三の凹部23とを連通させる第二のアイリス25が形成されている。
第一のアイリス24は、たとえば、ケース20に基準面20aから没入する穴部を形成したあとで、穴部における基準面20a側の部分にアルミニウムで形成された連結体Jを接続することで製造することができる(図2参照)。
第一の凹部21に対する、X方向およびZ方向にそれぞれ直交するY方向の一方側Y1には、第一の凹部21およびケース20の側面に形成された開口に連通する連通部26が形成されている。第三の凹部23に対する一方側Y1には、第三の凹部23およびケース20の側面に形成された開口に連通する連通部27が形成されている。
連通部26および連通部27は、基準面20aから没入した形状に形成されている。
【0017】
基材11の外形は、基準面20aの外形にほぼ等しく形成されている。
基材11の一方の面11aには、グランドパターン12、第一の配線パターン(配線パターン)13、および第二の配線パターン14が設けられている。
グランドパターン12は、基準面20aの形状にほぼ等しく形成され、ケース20の基準面20aに当接可能とされている。ただし、アイリス24、25のZ方向側に対応する部分には、グランドパターン12は形成されていない。
第一の配線パターン13および第二の配線パターン14はマイクロストリップ線路であり、ケース20の基準面20aをグランドパターン12に当接させたときに、第一の凹部21および第三の凹部23を含むケース20から離間した状態となるように、Y方向に延びた形状にそれぞれ形成されている。
グランドパターン12、第一の配線パターン13および第二の配線パターン14は、互いに電気的に絶縁されている。
【0018】
第一の配線パターン13において、Y方向における一方側Y1とは反対側となる他方側Y2の端部13aは、Z方向に平行に見たときに第一の凹部21の中央部に重なる位置に配置されている。
第二の配線パターン14は、第一の配線パターン13と同様に形成されている。すなわち、第二の配線パターン14における他方側Y2の端部14aは、Z方向に平行に見たときに第三の凹部23の中央部に重なる位置に配置されている。
【0019】
グランド層40は、図2に示すように、基材11の他方の面11bにほぼ全面にわたり設けられている。本実施形態では、導電部材であるグランド層40は、基板10を構成する要素となっている。
基材11には、グランドパターン12が設けられた範囲に、Z方向に多数の貫通孔11cが形成されている(図1では、貫通孔11cを1つのみ示している。)。貫通孔11cには、グランドパターン12とグランド層40とを電気的に接続するビア(接続部材)15が設けられている。
隣り合うビア15のピッチは、電波の伝送路における公知の設計基準により、たとえば、BPF1の通過帯域の電波の波長の10分の1〜16分の1程度に設定されている。
【0020】
本実施形態では、基板10は、図1に示すように、同軸型のコネクタ16、17を有している。コネクタ16の内部導体16aは第一の配線パターン13に、外部導体16bはグランドパターン12にそれぞれ電気的に接続されている。コネクタ17の内部導体17aは第二の配線パターン14に、外部導体17bはグランドパターン12にそれぞれ電気的に接続されている。
なお、コネクタ16、17は、本発明の必須の構成ではなく、BPF1の性能など評価する際に用いられるものである。
【0021】
図2に示すように、ケース20の基準面20aをグランドパターン12に当接させたときに、内導体30は第一の配線パターン13の端部13aに向けて延びるように配置されるとともに、内導体30と端部13aとの間に長さLの隙間が形成されるように設定されている。内導体31も同様に、第二の配線パターン14の端部14aとの間に隙間が形成されるように設定されている。
そして、第一の凹部21と基板10、第二の凹部22と基板10、第三の凹部23と基板10により、それぞれ第一の空洞共振器、第二の空洞共振器、第三の空洞共振器が形成される。
第一の空洞共振器内には第一の配線パターン13の端部13aが、第三の空洞共振器内には第二の配線パターン14の端部14aがそれぞれ配されているが、第二の空洞共振器内には配線パターンは配されていない。これは、第一および第三の空洞共振器が、BPFの入出力の関係にある為である。
なお、基板10とケース20とは、導電性の接続がなされる。
【0022】
以上のように構成されたBPF1は、ケース20の基準面20aをグランドパターン12に当接させた状態でコネクタ16、17の一方からBPF1に電波が伝送されたときに、以下のように動作する。
すなわち、3つの空洞共振器がアイリス24、25を介して電磁界結合する。このとき、内導体30と第一の配線パターン13の端部13aとが所定の電気容量のコンデンサと等価となり、第一の空洞共振器の内導体30が等価的にインダクタンスとなることで並列共振器を構成する。第三の空洞共振器および内導体31も、同様の並列共振器を構成する。これにより、BPF1は、複数の並列共振器を備えることになり、通過帯域の波長以外の電波を遮断する帯域通過特性を得る。
本実施形態のBPF1においては、内導体30を備えない場合に比べて電気的にコンデンサの要素を備えるため、電波の通過帯域が所定の範囲となるために必要なBPF1の外形を小型にすることができる。
なお、本実施形態では、内導体32には対応する配線パターンが設けられていないため、第二の空洞共振器内でコンデンサの要素を構成するのは、内導体30と、基材11を介したグランド層40との隙間となる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態のBPF1によれば、ケース20の基準面20aと基板10のグランドパターン12とを当接させた状態で、基板10とケース20とに導電性の接続をしているため、グランドパターン12とケース20とが確実に電気的に接続される。このため、グランドパターン12とケース20との電位がずれるのを防止することができる。同時に、基板回路とBPFを一体化することができる。
前記特許文献1では、内導体を2つに分離して、この2つに分離した内導体で基板を挟むように構成していた。これに対して本実施形態では、内導体30を分離せず基板10に対する一方の側に配置しているため、BPF1の構成を簡単にするとともに、挿入損失を抑えることができる。
また、前記特許文献2および3では、内導体と導体との間に間隔保持部材を配置しているため、本実施形態ではBPF1の構成を簡単にすることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、内導体30は第一の凹部21の底面21aに導電性の接着剤などにより接続されているとした。ただし、内導体30がケース20と一体に形成されるようにしてもよい。
また、アイリス24、25は、ケース20の基準面20aから没入するように形成してもよい。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図3および図4を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図3に示すように、本実施形態のBPF2は、上記第1実施形態のBPF1の各構成に加えて、アルミニウムなどの金属で形成されたシャーシ(導電部材)50を備え、さらに、内導体30と第一の配線パターン13の端部13aとのZ方向の距離を調節可能な調節機構60を備えている。
【0026】
シャーシ50は、アルミニウムなどの金属で板状に形成され、不図示の蓋とともにBPF2を収容するケーシングを構成するものである。シャーシ50には、複数のネジ穴50aが形成されている。
調節機構60は、ケース20に設けられた調節ネジ(雄ネジ部)33と、内導体30に設けられ調節ネジ33に螺合する雌ネジ部30aとを有している。
調節ネジ33は、螺旋状に形成されたネジ溝33aの軸線CがZ方向に略平行となるように設定されている。
【0027】
ケース20および基材11にZ方向に延びるように形成された貫通孔20bには、導電性を有する接続ネジ34が挿通されていて、接続ネジ34をネジ穴50aに螺合させることで、ケース20の基準面20aをグランドパターン12に当接させた状態で、基板10とケース20とを確実に接続することができる。
ビア15における基材11の他方の面11b側の面15aは露出していて、接続ネジ34をネジ穴50aに螺合させることで、ビア15がシャーシ50に電気的に接続される。
【0028】
このように構成されたBPF2は、調節機構60を備えるため、調節ネジ33のネジ溝33aに螺合する内導体30の雌ネジ部30aの長さを調節することで、内導体30と第一の配線パターン13の端部13aとの隙間の長さLを調節することができる。この長さLに依存して、第一の配線パターン13から内導体30への電波エネルギーの伝播量が決まる。このエネルギーの伝播量は、BPF1の通過帯域を決めるパラメタ―となる。このように、隙間の長さLを調節することで、BPF1における電波の通過帯域を調節することができる。
調節機構60は、調節ネジ33と内導体30の雌ネジ部30aとで構成されているため、調節機構60を簡単な構成とすることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、以下に説明するように、BPF2の構成を様々に変形させることができる。
例えば、図4に示すBPF3のように、BPF2の内導体30および調節機構60に代えて、内導体70および調節機構80を備えてもよい。
本変形例では、第一の凹部21の底面21aには、Z方向に延びる雌ネジ部21bが形成されている。ケース20における基準面20aとは反対側の面には、ナット部材(雌ネジ部)81が自身の軸線回りに回転可能に配置されている。ナット部材81のネジ孔は、ケース20の雌ネジ部21bに連通している。
内導体70は、内導体30と同じ材料で略円柱状に形成され、内導体70の外周面には内導体70の全長にわたり雄ネジ部70aが形成されている。雄ネジ部70aは、ナット部材81のネジ孔およびケース20の雌ネジ部21bに螺合する。
内導体70は、雄ネジ部70aがナット部材81のネジ孔およびケース20の雌ネジ部21bに螺合することで、ケース20に取り付けられている。
【0030】
このように構成されたBPF3では、内導体70と第一の配線パターン13の端部13aとの間に、長さLの隙間を設けたあとで、内導体70を凹部21から引き出すようにナット部材81を締め付けることで、所望の特性を得られる隙間の長さLが維持された状態で、内導体70をケース20に固定することができる。
【0031】
なお、本変形例では、内導体を円柱状の部材で構成するとともに、ケース20に雌ネジ部21bに代えて貫通孔を形成し、この貫通孔と内導体の外周面との間で適度な摩擦力が生じるように構成してもよい。この場合、BPF3にナット部材81は配されない。
隙間の長さを調節するには、ケース20に対して内導体のZ方向の位置を調節し、この位置を前述の摩擦力により保持しつつ、ケース20と内導体とをハンダにより固定する。
この例では、ケース20の貫通孔、内導体の外周面およびハンダで、調節機構を構成する。
【0032】
また、図5に示すBPF4のように、第一の凹部21の底面21aに内導体30を設けてもよい。内導体30にはZ方向に延びる貫通孔30bが形成されていて、内導体70は貫通孔30bに挿通されている。
このように構成されたBPF4においても、前記変形例のBPF3と同様に、隙間の長さLを調節できる。さらに、内導体30を設けることで、内導体として必要な径の大きさを確保することができる。
【0033】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、BPFの構造上、第一の配線パターン13の端部13aに対する内導体のZ方向、X方向あるいはY方向の位置ずれがBPFの電気特性に与える影響が大きいと懸念される場合には、BPFとして所望の特性を確保できる範囲で、以下のように調節しておくことが好ましい。
すなわち、内導体を第一の配線パターン13の端部13aから離間した位置に配置したり、Z方向に平行に見たときに内導体よりも第一の配線パターン13の端部13aが大きくなるように設定したりする。
このように構成することで、内導体の位置ずれがBPFの電気特性に与える影響を低減させることができる。
【0034】
前記第2実施形態では、内導体30と第一の配線パターン13の端部13aとの隙間の長さLを調節機構60で調節するとした。この隙間の調節は、上述の内導体30と端部13aとの距離の調節、および、端部13aの大きさの調節を行ってもBPFの電気特性に与える影響を低減できない場合に行うことが好ましい。
【0035】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、ケース20、内導体30、31、32、70、およびシャーシ50を形成する材料は、アルミニウムに限ることなく、導電性の材料であれば特に限定されない。これらには、たとえば、樹脂の表面に導電性膜を形成した部材も、好適に用いることができる。
ケースに3つの凹部21、22、23が形成されることで、BPFに第一の空洞共振器から第三の空洞共振器の、3段の空洞共振器が形成されるように構成した。しかし、BPFに形成される空洞共振器の数は複数であればいくつでもよい。
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、連通部26、27はY方向の一方側Y1に延びるように形成されていた。しかし、連通部26、27が延びる向きは一方側Y1に限ることなく、たとえばX方向に延びるように構成するなど、連通部26、27が接続される伝送路の位置や向きなどに応じて適宜調節することができる。
【0036】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、内導体のZ方向に平行な平面による断面形状を円形に形成した。しかし、この断面形状は円形に限ることなく、楕円形や多角形など、任意の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1、2、3、4 BPF(バンドパスフィルタ)
10 基板
11 基材
11a 一方の面
11b 他方の面
12 グランドパターン
13 第一の配線パターン(配線パターン)
14 第二の配線パターン
15 ビア(接続部材)
20 ケース
20a 基準面
21 第一の凹部
21a 底面(内面)
22 第二の凹部
23 第三の凹部
24 第一のアイリス(窓部)
30、70 内導体(導電体)
30a 雌ネジ部
33 調節ネジ(雄ネジ部)
40 グランド層(導電部材)
50 シャーシ(導電部材)
60、80 調節機構
70a 雄ネジ部
81 ナット部材(雌ネジ部)
Z 方向(延在方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の材料で平板状に形成された基材を有する基板と、
前記基材の一方の面側に着脱可能とされた基準面から没入する第一の凹部および第二の凹部、前記第一の凹部と前記第二の凹部とを連通させる窓部が形成された導電性のケースと、
前記基材の他方の面に設けられた導電部材と、
を備え、
前記基板は、
前記一方の面に設けられ、前記ケースの前記基準面に当接可能とされたグランドパターンと、
前記一方の面に、前記基材と前記第一の凹部との間に前記第一の凹部から離間した状態で設けられた配線パターンと、
前記グランドパターンと前記導電部材とを電気的に接続する接続部材と、
を有し、
前記ケースには、前記第一の凹部の内面から前記配線パターンに向けて、前記配線パターンとの間に隙間を形成するように延びる導電体が設けられていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記導電体と前記配線パターンとの、前記導電体が延びる延在方向の距離を調節可能な調節機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記調節機構は、
前記ケースおよび前記導電体の一方に設けられ、螺旋状のネジ溝の軸線が前記延在方向に略平行に設定された雄ネジ部と、
前記ケースおよび前記導電体の他方に設けられ前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部と、を有することを特徴とする請求項2に記載のバンドパスフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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