説明

バーナ装置

【課題】ディーゼルエンジンに用いられる微粒子を除去するためのフィルタ用等のバーナ装置において、短時間で着火を可能とする。
【解決手段】燃料と酸素とを含む混合気に対して着火を行う着火領域R2を内部に備えるケーシング10を備えるバーナ装置であって、着火領域R2を囲むと共に着火領域R2から外部への放熱を防ぐ断熱手段11を備える。断熱手段11は、前記ケーシング10から少なくとも一部が離間して配置されるとともに、前記着火領域R2を囲うインナライナ11である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の排気ガス中には、微粒子(パティキュレートマター)が含まれている。当該微粒子を大気中に放出することによる環境への影響が懸念されることから、近年は、ディーゼルエンジン等を搭載する車両には、排気ガス中の微粒子を除去するためのフィルタ(DPF)が設置されている。
このフィルタは、上記微粒子よりも小さな孔を複数備える多孔質体であるセラミックス等によって形成されており、上記微粒子の通過を阻止することによって微粒子の捕集を行っている。
【0003】
ところが、このようなフィルタを長時間使用していると、捕集した微粒子が蓄積されてフィルタが目詰まり状態となる。
このようなフィルタの目詰まりを防止するために、例えば特許文献1に示されるように、フィルタに対して高温ガスを供給することによって、フィルタに捕集された微粒子を燃焼させて除去する方法が用いられている。
【0004】
具体的には、例えば、ディーゼルエンジンとフィルタとの間にバーナ装置を設置し、排気ガスと燃料とが混合された混合気を燃焼させて高温ガスを発生させ、当該高温ガスをフィルタに供給することによって微粒子を燃焼させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−154772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記バーナ装置では、燃料噴射装置から噴射された燃料が排気ガスや外気と混合されて混合気が生成され、当該混合気を着火装置によって着火温度以上に加熱することによって着火させる。このため、混合気を着火する着火領域における温度は着火温度以上に加熱される必要がある。
しかしながら、バーナ装置の筐体の熱量容量が大きいため、着火装置を用いて着火領域の加熱を行う際に、着火装置から放熱された熱量の一部が筐体に吸収され、着火領域の温度を着火温度まで昇温させるのに時間を要する。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、バーナ装置において、短時間で着火を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、燃料と酸素とを含む混合気に対して着火を行う着火領域を内部に備えるケーシングを備えるバーナ装置であって、上記着火領域を囲むと共に上記着火領域から外部への放熱を防ぐ断熱手段を備えるという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記断熱手段が、上記ケーシングから少なくとも一部が離間して配置されると共に上記着火領域を囲うインナライナであるという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記インナライナが、当該インナライナに付着して下方に伝う上記燃料を受ける燃料受部を備えるという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記燃料受部が、上記ケーシングの上記高温ガスに晒される領域に上記燃料を導くという構成を採用する。
【0013】
第5の発明は、上記第1の発明において、上記ケーシングが鋳物により形成され、上記断熱手段が、上記ケーシングの内壁側の表層部であって、多孔質化処理によって熱伝導率の低減が図られた領域からなるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、断熱手段によって、着火領域から外部への放熱が防がれる。このため、着火領域における昇温速度を速め、短時間で混合気に着火することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態におけるバーナ装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態におけるバーナ装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態におけるバーナ装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るバーナ装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
(第1実施形態)
図1(a)は、本実施形態のバーナ装置S1の概略構成を示す断面図である。
このバーナ装置S1は、上流側に配置されるディーゼルエンジン等の排気ガスを排出する装置の排気口と接続され、酸素を含む排気ガスXと燃料を混合して燃焼させることによって高温ガスZを発生させると共に当該高温ガスZを後流側のフィルタに供給するためのものであり、例えばディーゼルエンジンとパティキュレートフィルタとの間に配置される。そして、本実施形態のバーナ装置S1は、供給流路1と、燃焼部2とを備えている。
【0018】
供給流路1は、ディーゼルエンジン等の装置から供給される排気ガスXを通過させて直接フィルタに対して供給するための流路であり、一方の端部がディーゼエンジン等の装置の排気口と接続され、他方の端部がフィルタに接続された円筒形状の配管によって構成されている。
【0019】
燃焼部2は、供給流路1と接続されると共に、内部において供給流路1を流れる排気ガスXの一部と燃料とを混合させて燃焼させることによって高温ガスを生成するものである。そして、この燃焼部2は、管体部4と、燃料噴射装置5と、着火装置7と、仕切り部材8と、助燃空気供給装置9とを備えている。
【0020】
管体部4は、燃焼部2の外形を形成する管状の部材であり、内部が中空とされている。そして、管体部4は、内部が供給流路1に対して上方から接続されている。また、本実施形態のバーナ装置S1において管体部4は、垂直方向から内部が供給流路1に対して接続されている。なお、管体部4は、その水平断面形状が矩形とされている。
【0021】
燃料噴射装置5は、フィルタの再生に必要な量の燃料Nを供給するものであり、管体部4の側壁に対して固定されている。そして、着火装置7に向けて(すなわち着火領域R2に)燃料Nを噴射するものである。
【0022】
着火装置7は、供給される燃料と排気ガスXとからなる混合気Yに対して着火するものであり、管体部4の天井に固定されている。この着火装置7は、グロープラグとその先端に設置される燃料保持部とによって構成されている。
なお、燃料保持部は、例えば、金網、焼結金属、金属繊維、ガラス布、セラミック多孔体、セラミックファイバ、軽石等によって形成される多孔質体から構成される。
【0023】
仕切り部材8は、管体部4の内部を、排気ガスXを取り込むための排気ガス流路領域R1と、着火装置7が設置される着火領域R2と、混合気Yの燃焼が維持される保炎領域R3とに区分けするものである。そして、仕切り部材8は、管体部4の中央部に上下に延在すると共に管体部4の天井と離間して配置される中央板8aと、中央板8aから水平に延在すると共に管体部4の内壁と離間する側板8bとを有している。この側板8bの面積は、燃料保持部の上方から見た面積よりも広く設定されている。そして、中央板8aによって排気ガス流路領域R1と着火領域R2及び保炎領域R3とが区分けされ、側板8bによって着火領域R2と保炎領域R3とが区分けされている。
【0024】
この仕切り部材8は、図1に示すように、側板8bに形成された貫通孔8cを介して着火領域R2から保炎領域R3に混合気Yを通気可能とする。
また、仕切り部材8は、図1に示すように、中央板8aと管体部4の天井との隙間によって排気ガス流路領域R1から着火領域R2に排気ガスXを通気可能とする。
つまり、仕切り部材8は、排気ガス流路領域R1と、着火領域R2と、保炎領域R3とを順に通気可能に区分けしている。
【0025】
さらに、仕切り部材8は、排気ガス流路領域R1から保炎領域R3に排気ガスXの一部を直接供給するための貫通孔8dも備えている。
【0026】
また、仕切り部材8は、燃料噴射装置5から噴射された燃料を着火領域R2と保炎領域R3とに分けて供給する分流板8eを備えている。
この分流板8eは、燃料噴射装置5から噴射された燃料Nの一部を保炎領域R3に分流して供給するものであり、側板8bの端部に固定されると共に着火装置7と燃料噴射装置5との間に配置されている。
また分流板8eは、その表面を燃料噴射装置5に向けて配置されており、表面で受けた燃料Nを燃料Nの自重によって伝わらせて側板8bの保炎領域R3側に供給する。
【0027】
このような仕切り部材8は、側板8bに形成された貫通孔8cを介して着火領域R2から保炎領域R3に混合気Yを通気することによって、当該混合気Yの流速を、保炎領域R3において燃焼が安定化される流速に調節する。
また、仕切り部材8は、排気ガス流路領域R1を流れる排気ガスXを中央板8aと管体部4の天井との隙間を介して着火領域R2に供給する。
また、仕切り部材8は、排気ガス流路領域R1を流れる排気ガスXの一部を貫通孔8dを介して保炎領域R3に供給する。
【0028】
助燃空気供給装置9は、必要に応じて補助的に管体部4の内部(排気ガス流路領域R1)に空気を供給するものであり、空気を供給する空気供給装置や、この空気供給装置と管体部4の内部とを接続する配管等を備えている。
【0029】
この本実施形態のバーナ装置S1においては、供給流路1と管体部4とによって、バーナ装置S1の外形を形作るケーシング10が構成されている。ケーシング10は、例えば、仕切り部材8と共に黒鉛鋳鉄から形成され、仕切り部材8と一体的に成形されている。
上述のように管体部4の内部には、仕切り部材8が配置され、当該仕切り部材8によって着火領域R2が形成されている。つまり、本実施形態のバーナ装置S1においては、ケーシング10の内部に、燃料と酸素とを含む混合気Yに対して着火を行う着火領域R2が形成されている。
そして、本実施形態のバーナ装置S1は、図1(b)に示す容器形状のインナライナ11(断熱手段)を有している。このインナライナ11は、図1(b)に示すように、着火領域R2を囲むと共に着火領域R2から外部への放熱を防ぐものであり、上端が開口され、対向する一対の側壁に対して各々開口11aを有し、さらに底部に混合気Yを分散させて均一化する複数の開口11bを有している。そして、インナライナ11は、着火領域R2を囲むようにして設けられ、管体部4の天井に対して固定され、一方の開口11aを燃料噴射装置5に向け、他方の開口11aを排気ガス流路領域R1側に向けて配置されている。
このようなインナライナ11は、側壁11cがケーシング10の内壁に対して離間して設けられており、側壁11cとケーシング10との間に気体層を形成することによって、着火領域R2の熱量がケーシング10に伝達されにくくする。
【0030】
このように構成された本実施形態におけるバーナ装置S1においては、供給流路1から排気ガス流路領域R1に取り込まれた排気ガスXが着火領域R2に供給される。
一方で、不図示の制御装置下において着火装置7が加熱され、燃料噴射装置5から着火装置7に向けて燃料Nが噴射される。
【0031】
燃料噴射装置5から噴射された燃料Nの一部が分流板8eによって遮られて保炎領域R3に供給され、分流板8eによって遮られなかった残りの燃料Nが着火装置7に供給される。
着火装置7に供給された燃料Nは、気化されて混合気Yとなり、その後さらに加熱されて着火する。
【0032】
このように着火領域R2において混合気Yが着火されると、着火によって生成された火炎が未燃の混合気Yと共に保炎領域R3に伝播する。この結果、保炎領域R3において火炎Fが形成され、保炎が図られる。
そして、分流板8eを伝わる燃料Nは、仕切り部材8の側板8bを伝わりながら加熱されて気化あるいは微粒化して保炎領域R3に供給される。
この結果、分流板8eによって保炎領域R3に供給された燃料Nは、火炎Fによって燃焼される。ただし、一部の燃料は残存して高温ガスZに含有されることとなる。つまり、高温ガスZ中には、未燃の混合気Yが残存している。
【0033】
なお、混合気Yが着火された後は、着火領域R2においても、混合気Yの着火後には火炎が形成される。このため、混合気Yは、着火領域R2において1次燃焼し、その後保炎領域R3で2次燃焼する。
そして、このような場合であっても、分流板8eによって保炎領域R3に供給された燃料Nは、火炎Fによって燃焼されるか残存して高温ガスZに含有されることとなる。
【0034】
そして、本実施形態のバーナ装置S1によれば、インナライナ11によって、着火領域R2から外部への放熱が防がれる。このため、着火領域R2における昇温速度を速め、短時間で混合気に着火することが可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、同一の符号を付し、その説明を省略あるいは簡略化する場合がある。
【0036】
図2(a)は、本実施形態のバーナ装置S2の概略構成を示す断面図である。図2(b)は、本実施形態のバーナ装置S2が備えるインナライナ11Aの斜視図である。
本実施形態のバーナ装置S2が備えるインナライナ11Aは、上記第1実施形態のインナライナ11に換えて設置されるものであり、インナライナ11の構成に加えて、アーム11dと、燃料受部11eとを有している。
【0037】
アーム11dは、インナライナ11Aに付着した燃料Nを下方に伝わせて移動させるためのものであり、図2(a)の紙面手前と奥側とに対向して一対設けられている。
燃料受部11eは、アーム11dに沿って下方に伝う燃料Nを受けるものであり、アーム11dの下端に設けられている。なお、燃料受部11eは、その位置が供給流路1の上壁と同じ高さに設定されおり、受けた燃料Nを排気ガスXの流れに乗せて、供給流路1の高温ガスZに晒される高温領域RAに燃料Nを導く。
そして、このような構成を有する本実施形態のバーナ装置S2によれば、燃料噴射装置5から噴射された燃料Nのより多くを燃焼させることが可能となり、例えばバーナ装置S2の下流側に設置された触媒に燃料Nが付着することを抑止することができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明においても、上記第1実施形態と同様の部分については、同一の符号を付し、その説明を省略あるいは簡略化する場合がある。
【0039】
図3は、本実施形態のバーナ装置S3の概略構成を示す断面図である。この図に示すように、本実施形態のバーナ装置S3においては、ケーシング10の内壁側の表層部10A(断熱手段)が多孔質化処理によって熱伝導率の低減が図られている。そして、当該表層部10Aによって、着火領域R2から外部への放熱を防ぐ。
【0040】
なお、ケーシング10は、黒鉛鋳鉄(鋳物)によって形成されている。このため、例えば、ケーシング10を1123Kで24時間大気中にて保持する熱処理を行うことによって、ケーシング10の表層部の炭素を焼却して多孔質化し、これによって熱伝導率の低い表層部10Aを形成することができる。
なお、このような多孔質化処理については、例えば、「多孔質化処理鋳鉄の加圧溶浸処理と熱伝導率の測定、山口泰文 他5名、鋳造工学 第77巻(2005)第1号、p.26−30」に記載されている。
【0041】
このような構成を採用する本実施形態のバーナ装置S3においては、ケーシング10の内壁側の表層部10Aによって着火領域R2から外部への放熱が防止され、上記第1実施形態のインナライナ11を設置することなく、着火領域R2における昇温速度を速め、短時間で混合気に着火することが可能となる。
【0042】
なお、上記第1実施形態において説明したように、ケーシング10と仕切り部材8とは、黒鉛鋳鉄によって一体化されて成形されているため、ケーシング10と同時に仕切り部材8にも熱処理を施すことによって、図3に示すように、仕切り部材8の表層部8Aも熱伝導率の低い領域とすることができる。これによって、着火領域R2の熱量が仕切り部材8に吸収されることを防止し、より着火領域R2における昇温速度を速め、短時間で混合気に着火することが可能となる。
【0043】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態においては、助燃空気供給装置9を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、排気ガス中に十分な濃度の酸素が含有されている場合には、助燃空気供給装置9を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
S1〜S3……バーナ装置、1……供給流路、4……管体部、10……ケーシング、10A……表層部(断熱手段)、11,11A……インナライナ(断熱手段)、11e……燃料受部、RA……高温領域、R2……着火領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸素とを含む混合気に対して着火を行う着火領域を内部に備えるケーシングを備えるバーナ装置であって、
前記着火領域を囲むと共に前記着火領域から外部への放熱を防ぐ断熱手段を備えることを特徴とするバーナ装置。
【請求項2】
前記断熱手段は、前記ケーシングから少なくとも一部が離間して配置されると共に前記着火領域を囲うインナライナであることを特徴とする請求項1記載のバーナ装置。
【請求項3】
前記インナライナは、当該インナライナに付着して下方に伝う前記燃料を受ける燃料受部を備えることを特徴とする請求項1記載のバーナ装置。
【請求項4】
前記燃料受部は、前記ケーシングの高温ガスに晒される領域に前記燃料を導くことを特徴とする請求項3記載のバーナ装置。
【請求項5】
前記ケーシングが鋳物により形成され、前記断熱手段は、前記ケーシングの内壁側の表層部であって、多孔質化処理によって熱伝導率の低減が図られた領域からなることを特徴とする請求項1記載のバーナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−257091(P2011−257091A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133184(P2010−133184)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】