説明

バーハンドル車両用液圧マスタシリンダ装置

【課題】 操作レバーの握り中心とハンドルバーの軸線とを最良な位置関係に特定し、良好な操作フィーリングを得ることのできるバーハンドル車両用液圧マスタシリンダ装置を提供する。
【解決手段】 液圧マスタシリンダ装置1は、シリンダボディ7の軸線CL1を、ハンドルバー2の中心軸CL2を通る仮想面に対して直交するように配設した液圧マスタシリンダ4と、シリンダボディ7に基部が枢着された操作レバー5と、該操作レバー5と液圧マスタシリンダ4のピストンとの間に介装されるプッシュロッドとを備え、握り操作部19bの中心線CL3が回動することで形成される平面A2は、ハンドルバー2の中心軸CL2を通過し、且つ、シリンダボディ7の軸線CL1に平行になるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等のバーハンドル車両のクラッチやブレーキを液圧作動する液圧マスタシリンダのシリンダボディの軸線を、ハンドルバーの中心軸を通る仮想面に対して直交するように配設した縦置き型のバーハンドル車両用液圧マスタシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦置き型の液圧マスタシリンダ装置として、シリンダボディの軸線をハンドルバーの中心軸を含む鉛直面に略直交するように配置し、シリンダボディに設けたシリンダ孔にピストンを移動可能に内挿するとともに、シリンダボディに延設したレバーホルダに、操作レバーの基部を枢支したものがある。操作レバーの回動基部には、前記ピストンの端面に当接するプッシュロッドが設けられ、また、ハンドルバーに連設したグリップの前方には、操作レバーの握り操作部が配設され、該握り操作部を握ってグリップ方向へ回動させることによって、前記プッシュロッドがピストンを押動し、制動操作するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−63546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の構成のものでは、操作レバーを操作する際に、操縦者が握り操作部を握る握り中心と、ハンドルバーの中心軸との位置関係は特定されていないが、この握り中心とハンドルバーの中心軸との位置関係は、操縦者に与える操作フィーリングに大きく影響している。
【0004】
そこで本発明は、操作レバーの握り中心とハンドルバーの中心軸との最良な位置関係を特定し、良好な操作フィーリングを得ることのできるバーハンドル車両用液圧マスタシリンダ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため本発明は、シリンダボディの軸線を、ハンドルバーの中心軸を通る仮想面に対して直交するように配設した液圧マスタシリンダと、前記シリンダボディに基部が枢着された操作レバーと、該操作レバーと前記液圧マスタシリンダのピストンとの間に介装されるプッシュロッドとを備えたバーハンドル車両用液圧マスタシリンダ装置において、前記操作レバーの握り操作部の中心線が回動することで形成される平面は、前記ハンドルバーの中心軸を通過し、且つ、シリンダボディの軸線に平行であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上述のように構成することにより、ハンドルバーの軸線と握り操作部の握り中心とが同一平面上に配設されることから、良好な操作フィーリングを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の各形態例を図面に基づいて詳しく説明する。図1乃至図4は本発明の第1形態例を示すもので、図1は本発明の一形態例を示す液圧マスタシリンダ装置をグリップ側から見た側面図、図2は図1のII-II断面図、図3は液圧マスタシリンダ装置の断面平面図、図4は液圧マスタシリンダ装置の平面図である。
【0008】
液圧マスタシリンダ装置1は、車体前部で図示しない前輪を操向するハンドルバー2のアクセルグリップ3近傍に取り付けられる液圧マスタシリンダ4と、該液圧マスタシリンダ4に付設される操作レバー5と、これらの間に介装されるプッシュロッド6とを備えている。
【0009】
液圧マスタシリンダ4は、シリンダボディ7の軸線CL1をハンドルバー2の中心軸CL2を通る仮想面A1に対して直交して配設された縦置き型のマスタシリンダで、本形態例では、ハンドルバー2の中心軸CL2を水平方向に向け、ハンドルバー2の中心軸CL2を通る仮想面A1を鉛直面とし、シリンダボディの軸線CL1は、ハンドルバー2の中心軸CL2よりも下方に位置している。シリンダボディ7は、車体前部側に開口する有底のシリンダ孔8を備え、該シリンダ孔8の底部側にシリンダボディ7と一体形成されたブラケット半体7aと、別体の半割体ブラケット9とでアクセルグリップ3近傍のハンドルバー2を包持し、両ブラケット7a,9をボルト10,10で締結することによって、ハンドルバー2の車体前部側やや下方に取り付けられている。
【0010】
シリンダ孔8には、ピストン11がプライマリカップ12aとセカンダリカップ12bとを外嵌した状態で内挿され、該ピストン11とシリンダ孔8の底壁との間に液圧室13を画成している。シリンダ孔8の底壁とピストン11との間にはリターンスプリング14が縮設され、該リターンスプリング14の弾発力によって、ピストン11が常時シリンダ孔8の開口方向に付勢され、プッシュロッド6の先端部6aとの当接により後退限が規制され、シリンダ孔8の開口にはピストン抜け止め用のリング15が装着されている。
【0011】
シリンダボディ7の上側壁には、リリーフポート16とサプライポート17とがシリンダ孔8に連通して設けられ、両ポート16,17には、図示しないリザーバのホースが接続されるコネクタ18が設けられていて、シリンダ孔8とリザーバとの間を作動液が流通するようになっている。シリンダボディ7の前端には、上下一対のレバーホルダ7b,7bが所定の間隙をおいて突設され、前記操作レバー5は、このレバーホルダ7b,7bにカラー21とピボット22とを用いて回動可能に軸着されている。
【0012】
操作レバー5は、アクセルグリップ3の車体前方に配設されるレバー本体19と、該レバー本体19の内側とシリンダボディ7との間に配設されるノッカー20とからなる2ピースで構成されている。レバー本体19は、前記レバーホルダー7b,7bにピボット22にて回動可能に軸支される回動基部19a(基部)と、アクセルグリップ3の車体前方に略沿って配設される握り操作部19bとを有し、回動基部19aに、ノッカー20を収納する収容凹部19cと、該収容凹部19cに連続してノッカー20の作用腕20aとの対向面に形成される凹部19dとを形成している。
【0013】
ノッカー20は、上述の作用腕20aと、ピボット22にて回動可能に軸支される回動基部20bと、該回動基部20bから前記作用腕20aと反対方向に略90度折曲されて形成されたストッパ片20cとを有している。前記作用腕20aには、円柱状の駒部材23が回動可能に装着され、該駒部材23に前記プッシュロッド6の基端が挿入され、該プッシュロッド6の球状の先端部6aは、前記ピストン11の端部に形成された半球状係合部11aに回動可能に当接している。また、ストッパ片20cは、シリンダボディ7の車体内側壁に当接して、シリンダ孔8内のリターンスプリング14の弾発力によって、図3における半時計方向に回動するノッカー20の非制動時の後退限を規制する。さらに、当接面20dとレバー本体19の回動基部19aとの間には、握り代調整時にレバー本体19の回動を許容するスプリング24が縮設されている。
【0014】
前記作用腕20aと前記レバー本体19の凹部19dとの間には、握り代調整機構25が配設されている。この握り代調整機構25は、レバー本体19の凹部19dに回転可能に設けられるアジャスター26と、該アジャスター26先端のカム部26aが当接するノッカー20の当接面20dとから構成されている。アジャスター26は、先端のカム部26aに軸中心から不等距離に設定された複数のカム面を有し、レバー本体19上面のダイヤル27を回動操作して、カム面のいずれか1つをノッカー20の当接面20dに選択的に当接させることにより、レバー本体19の握り操作部19bとアクセルグリップ3との間に設定される握り代を拡縮調整できるようにしている。
【0015】
レバー本体19とノッカー20とは、レバーホルダ7b,7bに装着する前に、レバー本体19の回動基部19aの上腕と下腕との間にノッカー20の回動基部20bを差し込み、両回動基部19a,20bのピボット挿通孔を位置合わせしてカラー21を挿入することにより、操作レバー5として仮組みされる。この状態で双方の回動基部19a,20bをレバーホルダー7b,7b間に差し込み、カラー21とレバーホルダ7b,7bの挿通孔及びめねじ孔とを位置合わせし、これらにピボット22を上部のレバーホルダ7b側から挿通して取り付けることにより、レバー本体19及びノッカー20がピボット22を中心に回動可能に軸支された状態となる。
【0016】
このように液圧マスタシリンダ4に装着された操作レバー5には、液圧室13内部のリターンスプリング14の弾発力がピストン11及びプッシュロッド6を通して常時作用し、操作レバー5の非作動時の位置は、ノッカー20の液圧マスタシリンダ側のストッパ片20cとシリンダボディ7の一側壁との当接と、握り代調整機構25で選択したカム面とによって設定され、レバー本体19の握り操作部19bとアクセルグリップ3との間に所定の握り代が形成される。
【0017】
また、操作レバー5は、握り操作部19bの握り中心P1を通る中心線CL3が回動することで形成される平面A2が、ハンドルバー2の中心軸CL2を通過し、且つ、シリンダボディ7の軸線CL1に平行になるように形成され、本形態例では、前記平面A2をハンドルバー2の中心軸CL2を通る水平面とし、前記ピボット22は、握り中心P1よりも下方に位置するように形成される。
【0018】
バーハンドル車両の走行時に、操縦者が操作レバー5の握り中心P1部分を握って、レバー本体19とノッカー20とをピボット22を支点として、アクセルグリップ3方向へ回動させると、ノッカー20の作用腕20aが駒部材23を介してプッシュロッド6を押動し、プッシュロッド6がピストン11をシリンダ孔8の底部方向へ押し込む。これにより、液圧室13の作動液が昇圧してフロントブレーキに供給され、前輪の制動作用が行われる。このとき、ハンドルバー2の中心軸CL2が水平方向に向き、シリンダボディ7の軸線CL1が、ハンドルバー2の中心軸CL2を通る鉛直方向の仮想面A1に対して直交するように配設されるとともに、操作レバー5は、握り操作部19bの中心線CL3が、シリンダボディ7の軸線CL1に平行で、且つ、ハンドルバー2の水平方向の中心軸CL2を通る鉛直面となる平面A2に沿って回動するように設けられることにより、良好な操作フィーリングを得られるとともに、良好な状態で、ピストン11を押動させることができる。
【0019】
図5は、本発明の第2形態例を示すもので、第1形態例と同様の部材には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0020】
本形態例の液圧マスタシリンダ装置30は、ハンドルバー31の中心軸CL10を水平方向に向けて配置したときに、液圧マスタシリンダ32は、シリンダボディ33の軸線CL11が、ハンドルバー31の中心軸CL10を通る鉛直面A10に対して直交する方向で、且つ、ハンドルバー31の中心軸CL10の上方に位置するように配設されている。また、操作レバー34は、握り操作部の中心線が、ハンドルバー31の中心軸CL10を通る水平面A11に沿って回動するように形成されている。
【0021】
なお、本発明の操作レバーは、上述の形態例のように、レバー本体19とノッカー20とからなる2ピースタイプのものに限らず、握り代調整機構25を備えていない一体型の操作レバーを用いた液圧マスタシリンダ装置にも適用でき、さらに、クラッチ用の液圧マスタシリンダ装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1形態例を示す液圧マスタシリンダ装置をグリップ側から見た側面図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】同じく液圧マスタシリンダ装置の断面平面図である。
【図4】同じく液圧マスタシリンダ装置の平面図である。
【図5】本発明の第2形態例を示す液圧マスタシリンダ装置の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1,30…液圧マスタシリンダ装置、2,31…ハンドルバー、3…アクセルグリップ、4,32…液圧マスタシリンダ、5,34…操作レバー、6…プッシュロッド、6a…先端部、7,33…シリンダボディ、7a…ブラケット半体、7b…レバーホルダ、8…シリンダ孔、9…半割体ブラケット、10…ボルト、11…ピストン、11a…半球状係合部、12a…プライマリカップ、12b…セカンダリカップ、13…液圧室、14…リターンスプリング、15…リング、16…リリーフポート、17…サプライポート、18…コネクタ、19…レバー本体、19a…回動基部、19b…握り操作部、19c…収容凹部、19d…凹部、20…ノッカー、20a…作用腕、20b…回動基部、20c…ストッパ片、20d…当接面、21…カラー、22…ピボット、23…駒部材、24…スプリング、25…握り代調整機構、26…アジャスター、26a…カム部、27…ダイヤル、CL1,CL11…シリンダボディの軸線、CL2,CL10…ハンドルバーの中心軸、CL3…握り操作部の中心線、A1…仮想面、A2…中心軸CL2を通る平面、P1…握り中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボディの軸線を、ハンドルバーの中心軸を通る仮想面に対して直交するように配設した液圧マスタシリンダと、前記シリンダボディに基部が枢着された操作レバーと、該操作レバーと前記液圧マスタシリンダのピストンとの間に介装されるプッシュロッドとを備えたバーハンドル車両用液圧マスタシリンダ装置において、前記操作レバーの握り操作部の中心線が回動することで形成される平面は、前記ハンドルバーの中心軸を通過し、且つ、シリンダボディの軸線に平行であることを特徴とするバーハンドル車両用液圧マスタシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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