パイプラインの保守管理システム
【課題】 パイプラインの腐食データ、陰極保護電位データの表示の操作性を改善する。
【解決手段】 パイプライン上に垂直方向に塀型の表示領域を設定する。この塀型表示領域に腐食データ、陰極保護電位データを表示して、これらの属性の内容とその位置が直接特定することができるようにする。
【効果】 腐食データ、陰極保護電位データ表示画面が地図内のパイプライン形状に沿って直接表示されるため、操作性が向上する。
【解決手段】 パイプライン上に垂直方向に塀型の表示領域を設定する。この塀型表示領域に腐食データ、陰極保護電位データを表示して、これらの属性の内容とその位置が直接特定することができるようにする。
【効果】 腐食データ、陰極保護電位データ表示画面が地図内のパイプライン形状に沿って直接表示されるため、操作性が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイプライン情報管理システムに係わり、パイプラインの保守・異常情報である腐食データ、陰極保護電位データなどのパイプライン関連属性情報を、パイプライン上に塀型の表示領域を生成することにより、その塀領域に表示する方式にかかわる。
【背景技術】
【0002】
地図を用いたパイプライン情報管理システムでは、「特開2005−308841号公報」に示すように、パイプライン形状の範囲を選択し、その範囲に対応する、腐食データ、陰極保護電位データを検索して表示することが行われる。このような表示方法においては、腐食分布や陰極保護電位分布を確認するために、表示画面上のパイプライン範囲を選択して、そのパイプライン区間の範囲に対応する属性を属性データベースから検索し、さらに矩形形状の専用の検索結果表示画面を新たに生成してそこに検索結果を書き込み表示することが行われていた。
【0003】
【特許文献1】特開2005−308841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した背景技術では、腐食位置や陰極保護電位分布の地図による確認を行おうとすると、図3に示すように、新規の矩形形状表示範囲303に属性データとして表示された腐食データの位置を線分によるカーソル(線分指示カーソル)305により特定し、地図に記号(310)で表示されたパイプライン上の位置を連動させて、地図上での位置を対応させることが必要となる。具体的には、線分指示カーソル(305)の位置は、地図画面(308)では310である。しかし、この方法では、最初に表示した腐食データ表示領域(303)が大きい場合には地図上の位置が画面に隠れてしまい、腐食データ表示領域の位置を人手による操作により変更するか、または属性表示画面の大きさを小さくして、地図に表示されたパイプラインの形状と、線分指示カーソル(305、312)に対応するパイプライン上の位置が記号(310)により視認できるようにする必要がある。そのため、位置確認のために上記の腐食データ表示領域(303、311)の移動操作を繰り返す必要があり、操作が煩雑になるという問題点がある。
【0005】
本発明では、腐食データ、陰極保護電位データの表示方法を、パイプライン形状上に表示する塀型表示方式にして操作性を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、パイプライン上に垂直方向に塀型の表示領域を設定する。この塀型表示領域に腐食データ、陰極保護電位データを表示して、これらの属性の内容とその位置が直接特定することができるようにする。この方法により、従来方法で行われていた、画面上の適当な場所に矩形形状の表示領域を表示することに伴ってパイプライン形状が隠れることは回避できる。塀型表示領域はパイプラインの3次元形状に沿う形状で表示する。これを塀型表示の下辺とすると、横の線に当たる稜線は垂直に表示する。塀型表示領域は平行四辺形形状による表示となる。そして塀型表示領域に腐食データや陰極保護電位データ(分布データ)などの保守データや圧力などの運用データを平行四辺形形状にマッピングして表示する。これにより表示位置から垂線を下ろすことにより属性の値とその位置が対応付けられることになる。なお、パイプライン形状データの線分の大きな高低差が短い距離で発生する場合、平行四辺形形状の上辺と下辺の距離が短くなり、これにより表示範囲が小さくなるため、属性データをマッピングしたときに内容が判別つかなくなることがある。この場合は、このパイプライン範囲の塀型表示領域をパイプライン形状に対し垂直方向ではなく傾斜させて表示することにより表示範囲確保してこの問題点を回避する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、腐食データ、陰極保護電位データ表示画面が地図内のパイプライン形状に沿って直接表示されるため、従来方法のように矩形形状による表示領域がパイプライン形状を隠すことがなく、また、表示画面をずらしたりする必要がない。また、塀型表示領域上での表示により腐食が集中している場所や陰極保護電位が異常な場所の位置特定が可能となるため、属性表示での操作性が向上する。さらに属性データの解析により、異常値を有する範囲に限定して塀型表示領域を表示することにより、異常発生範囲および位置の把握が容易になる。また、将来予測を行うことによる異常発生予測結果から、異常が発生する範囲とその位置の特定が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明計算機プログラムにより実施される。
【実施例】
【0009】
数百kmから数千kmにわたる長大なパイプラインの腐食や腐食を防ぐための陰極保護の状況を地理情報システム(GIS:Geographic Information System)により管理することが行われる。地理情報システムはビジュアルなマンマシンインタフェースを有する。パイプラインの属性を検索する場合、画面表示されたパイプライン形状の範囲を、マウスのような指示デバイスによって指定することにより、その範囲に対応する属性情報を検索して表示する。具体的には、パイプライン上の2点を指定することによって、距離範囲を特定し、その範囲の属性データを検索する。これらの属性データは距離をキーデータとして管理されており、属性データベースから距離を元にして検索し、専用の表示領域を画面上に新たに生成し、その表示範囲に結果を表示することができる。
【0010】
図3に従来方式による属性表示方法を示す。図3(a)は、表示画面(301)にパイプライン形状データ(302)が表示されている。そして、パイプラインの二点をマウスのようなポインティングデバイスで選択した結果(図3では、306と307が指示・選択されたことを示している)、その範囲に含まれる腐食の分布を矩形形状による表示領域(303)を生成し表示を行っている。ここで、横軸はパイプラインの選択された距離範囲を示し、縦軸は、パイプの円形断面を展開したときの位置を示す。腐食(304)はその大きさを外接四角形で囲った矩形で表している。なお、腐食の深さについては、表示色を変えることにより表示されることが多い。ここで、腐食データの表示領域はパイプライン形状データの上に表示されているため、一部表示が隠されており、腐食データの地図上での位置が確認できない。表示領域(303)に表示画面に位置を示す線分指示カーソル(305)を生成し、その線分の示すパイプライン距離と地図とを連動させて線分指示カーソルの位置を変更すると、地図上でその位置が記号によって表示される。これにより、腐食データ(304)がパイプのどの位置にあるかがわかる。しかし表示領域(303)は一定の大きさを有しているため、表示領域(303)の生成・表示によってパイプライン(302)の形状の一部を隠していることがわかり、表示領域の下に隠れてしまうので、線分指示カーソル(305)で指定された地図上の位置を確認することが困難である。一時的に表示領域(303)を消去して、地図上での位置を確認後再び表示することも考えられるが、操作が煩雑になる。
【0011】
この解決方法として図3(b)に示すように表示領域(303)の位置を311のように変更するか、または大きさ自体を小さくすることも考えられる。図3(b)に示す表示領域(311)への位置変更により、線分指示カーソル(312)に示す位置が記号(310)により確認できる。また、パイプライン形状上に表示された腐食分布(309)も確認できる。しかしこの方法では、表示領域位置を変更しても新規に配置した位置が、新たにパイプライン形状を隠すこともある。さらに線分指示カーソル(312)による地図上の位置確認が困難になることもある。そのため、表示領域(311)の配置をその都度変更しなければならい。
【0012】
属性表示領域を小さくする方法では、属性データの表示に影響があり、属性データの表示自体が見えなくなってしまうことがある。このため、図3(b)に示すように表示領域(311)の位置を変更するか、パイプライン上での位置が確認できる場所に持ってくることが通常採用される。
【0013】
本発明ではパイプライン形状上に塀型の表示領域(以降、塀型表示領域と呼ぶ)を設けて、塀型表示領域上に属性データを表示することにより、表示領域の位置変更や大きさ変更を行わなくても属性データが表示できるようにする。
図2(b)は塀型表示領域の表示形態である。図2(b)に示す表示画面(209)上には、パイプライン形状(210〜213)が表示されている。これらのパイプ形状の上に塀型表示領域を表示してここに、腐食分布などの属性を表示する。パイプ(210)上に塀型領域(214)、パイプ(211)上に塀型領域(215)、パイプ(212)上に塀型領域(216)、パイプ(213)上に塀型領域(217)が表示されている。この塀型表示領域はパイプラインの部分形状に合わせて折れ曲がるように生成されるため、しかし、パイプ位置との対応は図3に示すように常時矩形形状の属性表示領域(303、311)を設ける場合と比較してとくにオペレーション操作を行わなくても確認できる。
【0014】
図1に、塀型表示を行うために必要となる機能構成について示す。
パイプライン形状データベース(101):パイプライン形状データを格納したデータベースである。この形状は座標列による線分データ(ベクトルデータ)としてあらわされる。
属性データベース(102):腐食データ、陰極保護電位データに関するデータを格納したデータベースである。これらの属性データは距離によって管理される。腐食データの場合は、距離(腐食開始距離)と腐食の長さ、幅、深さが対応付けられている。また、陰極保護電位データの場合は、計測地点までの距離と電位計測が対応付けられている。なお、属性データは表形式(関係データベース)により記載される。
オンメモリ形状データ(103):パイプライン形状データベース(101)より形状データ検索部(105)が読み出した形状データを計算機メモリ上に展開したデータである。
オンメモリ属性データ(104):属性データベース(102)より属性データ検索部(106)により検索された属性データを計算機メモリ上に展開したデータである。
形状データ検索部(105):パイプライン形状データベース(101)より検索されたベクトルデータ形式、オンメモリ形状データ(103)として計算機メモリ上に格納する機能である。
属性データ検索部(106):属性データベース(102)より検索された属性データを、オンメモリ属性データ(104)として計算機メモリ上に格納する機能である。
範囲検索部(107):地図上のパイプライン形状の上を選択することにより、パイプラインの範囲を選択し、さらにその選択範囲について実世界における距離範囲を計算することを行う機能である。
パイプライン曲がり形状判定部(108):範囲検索部(107)により選択されたパイプライン形状線分の曲がり部分を判定し、隣接したパイプライン形状線分との角度を求める機能である。そして閾値以上の角度を有するパイプライン形状線分選択する。
表示方法判定部(109):パイプライン曲がり形状判定部(108)で得られたパイプライン形状の曲がり角度と隣接する塀型表示領域の配置関係から、塀型表示領域の表示方法を判定する機能である。具体的には、パイプライン形状の高低差と塀型表示領域の底辺とパイプライン形状までの距離を計算して、閾値以下の場合には、塀型表示領域とパイプライン形状周辺の3次元地形形状の接触点を求めて塀型表示領域を傾けることを行う。
表示位置判定部(110):表示方法判定部(109)による表示方法に基づいて壁型表意領域の座標を計算・取得する機能である。
塀型表示領域生成部(111):パイプライン形状の上にグラフィックによる塀型表示領域のグラフィック形状を生成する機能である。
属性データマッピング部(112):塀型表示領域生成部(111)にて生成した塀型表示領域のグラフィックデータ上にメモリ上にある属性データ(104)を射影により塀型表示領域上に射影する機能である。
姿勢制御・スクロール部(113):パイプラインと塀型表示領域の表示姿勢を解析して、ユーザが指定した場合には、塀型表示領域の表示面をユーザー側に向けることを行う機能である。
非透過処理部(114):透過表示を行なない場合に塀型表示領域の塗りつぶしを行う機能である。透過の場合は塀型表示領域塗りつぶし表示は行わない。
注目領域指定部(115):ユーザが視線方向に表示したい塀型表示領域を選択したときに、どの塀型表示領域を選択したかを判定する機能である。
場所検索部(116):ユーザーにより塀型表示領域を選択して、選択された塀型表示領域に対応するパイプライン形状を検索し、その中心位置を画面中心に持ってくる機能である。
属性解析部(117):属性データを解析して異常値を示す位置、また将来予測を行って将来異常を示す可能性のある位置をパイプラインの距離によって示す機能である。
表示部(118):姿勢制御・スクロール部(113)によって変換した塀型表示領域と表示する属性データを計算機に付属するディスプレイの画面に表示する機能である。
【0015】
これらの機能を用いた塀型属性表示の表示形態を図2に示す。図2(a)の表示画面(201)上には、パイプライン形状(202〜205)が表示されている。また、パイプ(205)の上には、バルブの記号(206)が記載されている。パルブの付近に腐食などが集まりやすいことが知られている。パイプ形状の上に塀型表示領域を表示して、腐食分布などの属性を表示する。まず、このパイプの表示範囲を選択する。このため、場所指示シンボル(207、208)が表示され、パイプ形状の上を選択することによりパイプ範囲が選択される。図2(b)は表示画面(209)に塀型表示領域を生成した結果を示す。パイプ(210)上に塀型表示領域(214)、パイプ(211)上に塀型表示領域(215)、パイプ(212)上に塀型表示領域(216)、パイプ(213)上に塀型表示領域(217)が表示されている。この塀型表示領域はパイプラインの部分形状に合わせて折れ曲がるように生成されるため、パイプライン位置と属性との関係がわかりやすくなる。腐食データ(219)の位置はそこから塀型表示領域の稜線に沿って垂直に見降ろすことによってその位置が示すパイプの場所に腐食があることを示す。バルブ(218)の近くの腐食の集中状況についてもわかりやすく表示される。なおパイプ形状210と213において、塀型表示領域がパイプの途中までしか表示されていないのは、図2(a)に示す場所指示シンボル(207、208)によるパイプの選択範囲によって、表示範囲が限定されているからである。パイプライン形状は背景地図の上にマッピングされ3次元的に表示される。パイプライン周辺の地形形状も3次元形状でよい。この場合、塀型表示領域(214〜217)はパイプライン形状(210〜213)の特徴点(屈曲点、端点)に垂直に共通の柱を立てて、塀型表示領域を表示する。したがって塀型表示領域形状は、パイプライン形状に高低差がある場合、横方向の稜線が垂直方向になる平行四辺形形状となる。これに合わせて、表示された属性の形状も変形を受けることになる。腐食データ(219)などのパイプ上の位置は、塀型表示領域の稜線(220、221)に沿って垂線を下ろすことによりパイプ形状の位置に対応付けられる。これにより、パイプライン位置と属性との関係がわかりやすくなる。バルブ(218)の近くの腐食の集中状況についてもわかりやすく表示される。図2(b)は塀型表示領域(214〜217)の上に腐食分布を表示した結果を示す。腐食データは219に示すように矩形形状で表示されることが多い。これにより平行四辺形に変形された塀型表示領域に射影されるため、腐食データの形状も平行四辺形形状となる。ただし、腐食データの大きさは小さいため、それほど問題となる大きさにはならない。
【0016】
パイプライン形状が垂直方向に近い角度で立ってくる場合、塀型表示領域を表示すると、図4(a)に示すように、角度の急なパイプライン形状の塀型表示領域を表示する場合、図4(a)の塀型表示領域(402)に示すように表示領域が狭まってしまうことがある。そのため、表示角度を変更して表示する。図4(a)はパイプラインの形状(401)の高低差が急激に変化しているため、塀型表示領域を表示したときに平行四辺形の底辺(403)(これはパイプ形状に対応する)と上辺(404)の間の距離が詰まってしまい、この中に表示された属性データの間で重畳が発生することになる。また、データが元来小さい場合には計上の退化による消去などが発生することがある。これについては、図4(b)に示すように塀型表示領域(407)を傾けることによって表示し、塀型表示領域(408、409)および3次元背景地図と間の干渉も発生しないようにする。表示傾斜については、塀型表示領域(402)の上辺(404)とパイプ形状(403)の間の距離を計算し、あらかじめ決められた閾値よりも小さくなる場合に行う。塀型表示形状は407に示すようにパイプライン形状406に沿って表示することになるが、横方向の稜線(412,413)はパイプライン形状406と垂直に表示する。これにより、傾けた塀型表示領域の形状は傾いた矩形となる。また、前後の塀型表示形状とは、塀型表示領域(408、409)の稜線(410、411)と塀型表示領域(407)の稜線(412、413)が作る角度θ(414)によって決定する。θの初期値は90度とする。なお、この角度θ(414)は周囲の3次元的な地形条件に影響される。塀型表示領域が周囲の3次元地形形状と交差する場合には、その塀型表示領域(407)と3次元地形との接触点を求めて、傾けた塀型表示領域(407)が接触点に接するように表示することになる。この方法を図4(c)に示す。パイプ形状(415)に対し、あらかじめ決められた一定間隔で線分(416〜417)を直交するように設定する。そして、この線分(416〜418)と地形形状の断面を計算する。線分416に対する断面形状は421、線分417に対する断面形状は422、線分418に対する断面形状は423である。断面形状は座標列によるベクトル線分で取得する。そして、パイプ位置(419)から線分(424〜426)を発生させ地形断面形状との接点を求め、パイプ形状から立てた垂直線分(420)との角度を求める。そして、この角度が最も小さな角度を選択する。図4(c)では、φ2<φ1、φ2<φ3なので、φ2を塀型表示領域(407)の傾斜角度として採用する。
【0017】
次に、塀型表示領域の表示において、画面上に設定した視点位置(上部から下方向を見た場合)では塀形状の上辺と下辺が接近し、表示結果がわかりにくいことがある。また、壁形状が隠れてしまい、ユーザーが確認できない場合には、表示が確認しやすい位置に変更する。図5に表示変更位置の変更の方法を示す。ここでは、パイプライン形状(501〜503)に対応させて塀型表示領域(504〜506)および腐食データ(507)が表示されている。しかしこの表示方法では、塀型表示領域(505)に表示された属性データが確認しにくい。このため、ユーザーは塀型表示領域(505)を選択すると、図6(b)に示すようにパイプライン形状(509であり、これは502に対応する)を画面の中心になるように移動、回転を行い水平に配置し、その上に塀型表示領域(512)を表示する。これにより、塀型表示領域の表示操作を行いやすくする。図5(a)の505に示すように塀型表示領域が見えなくなっていても、図5(b)に示すように視点位置を変更することによって塀型表示領域自体が大きくなりわかりやすく表示される。これに伴ってパイプライン形状(508〜510)、塀型表示領域(511〜513)および腐食データ(514)も表示が変更される。あらかじめ図5(a)の視線パラメータを記憶しておけば、特定のボタン押下によって図5(a)の視点と表示位置に戻すことも可能である。
【0018】
次に、塀型表示領域をグラフックとして表示すると、実際に描画しても面の向き(面を構成する座標の順番)により表示される面と表示されない面が出てくる。塀領域の両面に属性データを表示してもよいが、見えている面のみに属性データを表示する。これにより、画面をスクロールしたときに動きが滑らかになる。視線ベクトルをVとして、面ベクトルSとの内積を求める。面ベクトルは、面の角の一点から2方向に伸びる2本のベクトルを設定して、それぞれ、S1およびS2とする。そして、外積S1×S2を面ベクトルSとする。×は外積記号である。これにより
V*S>0・・・〔数式1〕
の場合は、裏側を表示しているものとして裏面に属性データを表示する。*は内積記号である。さらに塀型表示領域の塗りつぶしなどを行うと塀型表示領域の一部が隠れ面となることがある。このため、塀型表示領域を透過的に表示することにより属性を表示する。図6に透過処理の結果を示す。図6(a)はパイプライン形状(601〜603)に対応し、塀型表示領域(604〜606)が表示され、属性データとして腐食データ(607)が表示されている。ここでは、塀型表示領域(604)が塀型表示領域(605)に一部表示が隠され、さらに塀型表示領域(605)は塀型表示領域(606)に一部表示が隠されている。そのため、図6(b)に示すように透過処理を行うことにより、全体を見通せるようにする。これは塀型表示領域の塗りつぶしを解除することによって行われる。なお、このとき、ここに表示している属性データが重畳してしまい、どの塀型表示領域に表示しているかどうかがわからなくなる可能性がある。そのため、透過処理は、裏面と定義した塀型表示領域上に属性を見る場合には、腐食データ(515)に示すように表示色や表示パターンを変更する。これにより、パイプ形状(608〜610)に対応し、塀型表示領域(611〜613)が透過敵意表示され、そこに腐食データ(514と515)が表示される。
【0019】
塀型表示領域による属性データ表示のフローを図7に示す。ここでは、形状データ検索部(105)により、パイプライン形状データベース(101)からパイプライン形状データが読み出され、オンメモリ形状データ(103)としてメモリ上に展開されているとする。
ステップ1(701):パイプライン範囲の選択
範囲検索部(107)により、計算機画面上に表示された線分図形によって表されるパイプライン形状の2点を選択して、パイプラインの範囲を選択する。そして、選択した範囲を示す始終点の座標を取得する。
ステップ2(702):パイプライン始終点の距離の取得
範囲検索部(107)により、ステップ1(701)で指示選択されたパイプラインの2点間の距離を取得する。これは以下のように行われる。ステップ1(701)にて取得した座標について、その座標に最も近いパイプライン形状データを構成するベクトル線分を計算する。これは、選択点からパイプを構成する線分に垂線を引くことによりこの垂線の長さがもっとも短い線分を選択し、パイプライン上の座標を取得する。そしてパイプライン形状の始点から線分を追跡することにより、パイプライン上の座標までの長さDを計算する。パイプライン形状全体の長さをL、またその実世界上での長さをRとすると、選択した点までの長さHは、
H=R×D/L・・・〔数式2〕
によって求められる。
ステップ3(703):パイプライン形状データの曲がり角度の計算
パイプライン曲がり形状判定部(108)により、曲がり形状部の角度を計算する。この角度はパイプライン形状線分とその隣接する線分との角度である。そして、この角度は表示方法判定部(109)に送る。
ステップ4(704):塀型表示領域の生成チェック
塀型表示生成部(111)で、塀型表示領域の生成・表示をすべてのパイプライン形状上に生成したかをチェックする。すべて生成した場合には、ステップ15(715)を行う。生成していない場合には、ステップ5(705)を実行する。
ステップ5(705):3D部分形状の選択
塀型表示領域生成部(111)は、パイプライン形状データが格納されたオンメモリ形状データ(103)から塀型表示領域を生成していない構成線分(部分線分)を選択する。
ステップ6(706):塀型表示領域の高さおよび稜線座標取得。
【0020】
表示方法判定部(109)は、ステップ5(705)で取得したパイプライン形状の部分線分から、塀型表示領域の高さ方向の座標を含む稜線の座標を取得する。
ステップ7(706):塀型表示領域の上辺と下辺の長さの計算
表示方法判定部(109)では、パイプライン曲がり形状判定部(108)より取得した曲がり角度から塀型表示領域の上辺と下辺の間の距離を計算する。
ステップ8(708):上辺と破片の距離の閾値判定
ステップ7(707)で求めた距離があらかじめ決められた閾値以下ならば、塀型表示領域の大きさが十分でないとしてステップ9(709)以降を実行する。ここで、塀型表示領域の表示角度は初期値として0としておく。上辺と下辺の間の距離が閾値以上であれば、塀型表示領域を生成するためにステップ11(711)を実行する。
ステップ9(709):周囲地形との接触点の計算
表示方法判定部(109)では、図4(c)に示すように、パイプ上に一定間隔で設定した線分(416〜418)と周囲の3次元地形との交差を求め、断面形状(421〜423)を求める。そして、パイプから線分を延長し、接触点までの線分を求める。
ステップ10(710):塀型表示領域の表示角度の計算
表示方法判定部(109)では、延長線分(424〜426)とパイプからの垂線(420)とのなす角度(φ1〜φ3)を求め、最小の角度を塀型表示領域の傾き角度とする。
ステップ11(711):塀型表示領域の座標生成
表示位置判定部(110)では、ステップ6(706)で取得した塀型表示領域形状の座標と、ステップ10(710)によって得られた塀型表示領域の角度を用いて塀型表示領域の座標を生成する。
ステップ12(712):塀型表示領域の表示
塀型表示領域生成部(111)は、塀型表示領域枠の表示をコンピュータグラフィックスなどの表示機能を用いて表示を行う。最初の塀型表示領域はステップ1で取得した開始位置座標から表示し、最後の場合は、終了位置の座標まで表示する。
ステップ13(713):非透過処理の判定
非透過表示判定部(114)では、ユーザーが透過処理を行うかどうかを判定する。透過処理を行う場合には塀領域を塗りつぶさないため、ステップ4(704)以降を実施する。透過処理を行わない場合はステップ14(714)を実施する。
ステップ14(714):塀領域の塗りつぶし
透過表示を行なわない場合には、非透過表示処理部(114)で塀型表示領域の塗りつぶしを行う。この後、ステップ4(704)を実行する。
ステップ15(715):距離データによるデータベース問い合わせ
属性データ検索部(106)では、距離データをSQL文に搭載して属性データベース(102)に送り、属性データの検索を行う。問い合わせ文には、
*パイプライン名称
*距離範囲(開始距離、終了距離)
*検索内容(腐食データの場合は、腐食開始位置、長さ、幅、深さ)
を含ませる。この距離データにより腐食データを検索する。
ステップ16(716):属性データの検索
属性データ検索部(106)では、ステップ15(715)より検索した腐食データなどの属性データをメモリ上に格納し、オンメモリ属性データ(104)とする。
ステップ17(717):属性データ分割の判定
属性データマッピング部(112)では、検索した属性データが塀型表示領域をまたがる場合かどうかを判定する。分割する場合にはステップ18(718)を実行し、分割しない場合にはステップ19(719)を実行する。
ステップ18(718):属性データの分割
属性データマッピング部(112)では、属性データを、塀型表示領域をまたがる部分で分割する。
ステップ19(719):属性データのマッピング
属性データマッピング部(112)では、属性データを塀型表示領域に表示する。
ステップ20(720):姿勢変更の判定
注目範囲指定部(115)では、ユーザーが姿勢変更のために中心にもってくる塀型表示領域を選択したかどうかを判定し、姿勢変更の場合はステップ21(721)を実行し、姿勢を変更しない場合には終了する。
ステップ21(721):姿勢の変更
場所検索部(116)では、選択された塀型表示領域が画面の中心にくるように移動と回転を行う。この後、ステップ210(720)を実行する。
【0021】
以上のようにして、塀型表示領域を表示するとともに、その内部に属性データを表示する。上記の例では、腐食データの表示としたが、陰極保護電位データの表示や、パイプ内の圧力分布の表示であってもよい。陰極保護電位データを塀型表示領域に表示した結果を図10に示す。陰極保護電位データの場合は、電位分布データを表示することになる。電位の計測点は、あらかじめ決められた間隔になることがあるので、計測点が必ずしもパイプラインの折れ曲がり点と一致しているわけではない。そのため、塀型表示領域端での電位値を計算する必要がある。これは以下のようにして行う。
陰極保護電位データの2点の測定点の電位をV1およびV2とする。また、測定点の距離をL1およびL2とする。そして、塀型表示領域端の距離をLとする。また
L1<L<L2 ・・・〔数式3〕
とする。
L点での電位値Vは、
V=V1+(V2−V1)×(L−L1)/(L2−L1) ・・・〔数式4〕
となる。このようにして、折り返し地点の電位値を塀型表示領域の端に与えることになる。
【0022】
次に圧力などの曲線によって与えられる値の場合については、次の方式になる。距離L地点の圧力を求める式については、次のように、距離と、その直前の圧力値によって求められる。
P=F(L、L1、P1、Q) ・・・〔数式5〕
となる。ここで、Fは圧力を求める関数である。この式はこれまで複数が知られており任意でよい。
【0023】
図10において、塀型表示領域(801)内に陰極保護電位データ(802)と、その上限閾値(804)および下限閾値(803)を表示した結果を示す。閾値を超える場合には、陰極保護電位が異常であることがわかり、その場所の確認を行うことができる。図10においては、805、807で下限閾値を越えるため異常部位であることを示す。806では上限閾値を越えているため、異常部位となる。さらに、塀型表示領域上に線分カーソル(808)を表示して、そこから引き出し線(809)を表示し、その場所に、座標を表示することによって、GPS(Global Positioning System)などを用いた誘導を行うこともできる。
【0024】
図11は、図10の陰極保護電位データの中で、異常値を示している区間だけを塀型表示領域を生成し、そこに異常値を表示した結果を示す。異常部位(902、904、905)に対応させて塀型表示領域(901、903)が表示される。なお、異常部位904と905は接近しているため、1個の塀型表示領域(903)上に表示される。
この区分的な塀型表示領域の生成フローを図12に示す。
ステップ1(1001):計測データ異常地点の取得
属性解析部(117)では、計測地点での計測値が下限閾値、上限閾値を超える場合には、その距離を記憶しておく。計測地点の距離はあらかじめ属性データベース(102)にて管理されている陰極保護電位データを参照し、そこで管理されている距離情報得を検索する。
ステップ2(1002):計測データの選択チェック
塀型表示領域生成部(111)では、すべての異常値を有する計測データについて塀型表示領域を生成したかどうかをチェックする。すべて塀型表示領域を生成したかどうかをチェックする。生成していない場合にはステップ3(1003)を実行し、生成した場合には終了する。
ステップ3(1003):異常計測値の取得
属性解析部(117)では、異常計測値をオンメモリ属性データ(104)から取得し計測地点の距離と対応付けて記憶する。
ステップ4(1004):異常範囲の取得
属性解析部(117)では、ステップ3(1003)で検索した異常データについて、閾値と交差する両端の点を計算し、その地点の距離を計算する。異常値計測点が閾値を超えている場合、計測地点の計測地を結ぶ距離-計測値のグラフをとった場合、その閾値と交差する二点が得られ、それらの距離が計測される。これらの距離をK1およびK2(K1<K2とする)とする。
ステップ5(1005):塀型表示領域の長さの計算
塀型表示領域についてその表示範囲距離を、
L1=K1−Th ・・・〔数式6〕
L2=K2+Th
ここで、Thはあらかじめ決められた閾値であり、もし、L1および、L2が表示限界のM1およびM2を超える場合、すなわち
M1<L1 ・・・〔数式7〕
M2>L2
の場合は、それぞれL1=M1およびL2=M2とする。
ステップ6(1006):塀型表示領域の生成
図7〜図9に示すステップに従って指定された表示範囲(L1からL2の範囲)で塀型表示領域を生成する。
ステップ7(1007):属性データのマッピング
属性データマッピング部(112)では、属性データ(ここでは、陰極保護電位データ)の塀型表示領域でのマッピングを行う。そしてステップ2(1002)以降を実施する。
【0025】
このような区分的な壁表意領域の生成により、異常値を有する区間をデータとしてリストに格納しておけば、計算機キーボードのキー操作により、距離の順番に表示の移動を行い、塀型表示領域の表示を中心にもってくることが可能である。区分データの表示により異常区間の全属性データの表示が可能となる。図3に示すような方式では、異常区間ごとに新規に表示領域を生成する必要があるため、表示が煩雑となるが、ここに示す塀型表示領域による表示により全体をまとめて表示することが可能となる。
【0026】
図11のさらなる応用として、陰極保護電位の経時変化により、将来の特定期間に異常が発生する場合、これを予測して異常区間を表示することが考えられる。図13はこの結果を示している。図13(a)は現状、図13(b)は将来の予測結果に基づく表示である。図13(a)では、異常区間1102、1104、1105に対応し、塀型表示領域1101、1103が表示されるが、図13(b)では、同じ異常区間1106、1107、1108の属性を表示する塀型表示領域(1110、1111)に加え、予測による異常区間1109に対する新たな塀型表示領域(1112)が生成されている。この塀内の背景色を変更することにより、新たに異常が発生した区間を強調表示することができる。
【0027】
上記したように、従来は、別途表示領域を生成し、パイプライン位置との関連性が見えない場合には、これらの表示領域の表示位置を変更する操作が必要であったが、本発明による塀型表示領域に従って属性データを表示することにより、位置移動操作は必要でなくなるため、属性データの確認が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明はパイプライン保守・監視システムとして計算機ソフトウエアとして利用される。とくに数百kmから数千kmにおよぶパイプラインの属性データを一元管理するとともに、地理情報システムを用いたビジュアルインターフェイスによって、これらの属性データを、パイプライン形状の範囲を選択して表示するときに利用する。パイプライン形状データ上に属性データを一括表示するため、属性の内容の確認が位置を含めて容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】機能構成を示す図である。
【図2】塀型属性表示の形態を示す図である。
【図3】従来の属性表示方式を示す図である。
【図4】塀型表示領域の表示角度変更を示す図である。
【図5】塀型属性領域の表示位置変更を示す図である。
【図6】透過処理の方式を示す図である。
【図7】塀型表示領域への属性表示のフローを示す図である。
【図8】塀型表示領域への属性表示のフローを示す図である(続き)。
【図9】塀型表示領域への属性表示のフローを示す図である(続き)。
【図10】陰極保護電位データの表示方法を示す図である。
【図11】区分的な塀型表示領域の生成を示す図である。
【図12】区分的な塀型表示領域への属性表示のフローを示す図である。
【図13】予測による新たな塀型表示領域の生成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
101・・・パイプライン形状データベース、102・・・属性データベース、103・・・オンメモリ形状データ、104・・・オンメモリ属性データ、105・・・形状データ検索部、106・・・属性データ検索部、107・・・範囲検索部、108・・・パイプライン曲がり形状判定部、109・・・表示方法判定部、110・・・表示位置判定部、111・・・塀型表示領域生成部、112・・・属性データマッピング部、113・・・姿勢制御・スクロール部、114・・・非透過表示制御部、115・・・注目範囲指定部、116・・・場所検索部、117・・・属性解析部、118・・・表示部。
【技術分野】
【0001】
本発明はパイプライン情報管理システムに係わり、パイプラインの保守・異常情報である腐食データ、陰極保護電位データなどのパイプライン関連属性情報を、パイプライン上に塀型の表示領域を生成することにより、その塀領域に表示する方式にかかわる。
【背景技術】
【0002】
地図を用いたパイプライン情報管理システムでは、「特開2005−308841号公報」に示すように、パイプライン形状の範囲を選択し、その範囲に対応する、腐食データ、陰極保護電位データを検索して表示することが行われる。このような表示方法においては、腐食分布や陰極保護電位分布を確認するために、表示画面上のパイプライン範囲を選択して、そのパイプライン区間の範囲に対応する属性を属性データベースから検索し、さらに矩形形状の専用の検索結果表示画面を新たに生成してそこに検索結果を書き込み表示することが行われていた。
【0003】
【特許文献1】特開2005−308841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した背景技術では、腐食位置や陰極保護電位分布の地図による確認を行おうとすると、図3に示すように、新規の矩形形状表示範囲303に属性データとして表示された腐食データの位置を線分によるカーソル(線分指示カーソル)305により特定し、地図に記号(310)で表示されたパイプライン上の位置を連動させて、地図上での位置を対応させることが必要となる。具体的には、線分指示カーソル(305)の位置は、地図画面(308)では310である。しかし、この方法では、最初に表示した腐食データ表示領域(303)が大きい場合には地図上の位置が画面に隠れてしまい、腐食データ表示領域の位置を人手による操作により変更するか、または属性表示画面の大きさを小さくして、地図に表示されたパイプラインの形状と、線分指示カーソル(305、312)に対応するパイプライン上の位置が記号(310)により視認できるようにする必要がある。そのため、位置確認のために上記の腐食データ表示領域(303、311)の移動操作を繰り返す必要があり、操作が煩雑になるという問題点がある。
【0005】
本発明では、腐食データ、陰極保護電位データの表示方法を、パイプライン形状上に表示する塀型表示方式にして操作性を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、パイプライン上に垂直方向に塀型の表示領域を設定する。この塀型表示領域に腐食データ、陰極保護電位データを表示して、これらの属性の内容とその位置が直接特定することができるようにする。この方法により、従来方法で行われていた、画面上の適当な場所に矩形形状の表示領域を表示することに伴ってパイプライン形状が隠れることは回避できる。塀型表示領域はパイプラインの3次元形状に沿う形状で表示する。これを塀型表示の下辺とすると、横の線に当たる稜線は垂直に表示する。塀型表示領域は平行四辺形形状による表示となる。そして塀型表示領域に腐食データや陰極保護電位データ(分布データ)などの保守データや圧力などの運用データを平行四辺形形状にマッピングして表示する。これにより表示位置から垂線を下ろすことにより属性の値とその位置が対応付けられることになる。なお、パイプライン形状データの線分の大きな高低差が短い距離で発生する場合、平行四辺形形状の上辺と下辺の距離が短くなり、これにより表示範囲が小さくなるため、属性データをマッピングしたときに内容が判別つかなくなることがある。この場合は、このパイプライン範囲の塀型表示領域をパイプライン形状に対し垂直方向ではなく傾斜させて表示することにより表示範囲確保してこの問題点を回避する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、腐食データ、陰極保護電位データ表示画面が地図内のパイプライン形状に沿って直接表示されるため、従来方法のように矩形形状による表示領域がパイプライン形状を隠すことがなく、また、表示画面をずらしたりする必要がない。また、塀型表示領域上での表示により腐食が集中している場所や陰極保護電位が異常な場所の位置特定が可能となるため、属性表示での操作性が向上する。さらに属性データの解析により、異常値を有する範囲に限定して塀型表示領域を表示することにより、異常発生範囲および位置の把握が容易になる。また、将来予測を行うことによる異常発生予測結果から、異常が発生する範囲とその位置の特定が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明計算機プログラムにより実施される。
【実施例】
【0009】
数百kmから数千kmにわたる長大なパイプラインの腐食や腐食を防ぐための陰極保護の状況を地理情報システム(GIS:Geographic Information System)により管理することが行われる。地理情報システムはビジュアルなマンマシンインタフェースを有する。パイプラインの属性を検索する場合、画面表示されたパイプライン形状の範囲を、マウスのような指示デバイスによって指定することにより、その範囲に対応する属性情報を検索して表示する。具体的には、パイプライン上の2点を指定することによって、距離範囲を特定し、その範囲の属性データを検索する。これらの属性データは距離をキーデータとして管理されており、属性データベースから距離を元にして検索し、専用の表示領域を画面上に新たに生成し、その表示範囲に結果を表示することができる。
【0010】
図3に従来方式による属性表示方法を示す。図3(a)は、表示画面(301)にパイプライン形状データ(302)が表示されている。そして、パイプラインの二点をマウスのようなポインティングデバイスで選択した結果(図3では、306と307が指示・選択されたことを示している)、その範囲に含まれる腐食の分布を矩形形状による表示領域(303)を生成し表示を行っている。ここで、横軸はパイプラインの選択された距離範囲を示し、縦軸は、パイプの円形断面を展開したときの位置を示す。腐食(304)はその大きさを外接四角形で囲った矩形で表している。なお、腐食の深さについては、表示色を変えることにより表示されることが多い。ここで、腐食データの表示領域はパイプライン形状データの上に表示されているため、一部表示が隠されており、腐食データの地図上での位置が確認できない。表示領域(303)に表示画面に位置を示す線分指示カーソル(305)を生成し、その線分の示すパイプライン距離と地図とを連動させて線分指示カーソルの位置を変更すると、地図上でその位置が記号によって表示される。これにより、腐食データ(304)がパイプのどの位置にあるかがわかる。しかし表示領域(303)は一定の大きさを有しているため、表示領域(303)の生成・表示によってパイプライン(302)の形状の一部を隠していることがわかり、表示領域の下に隠れてしまうので、線分指示カーソル(305)で指定された地図上の位置を確認することが困難である。一時的に表示領域(303)を消去して、地図上での位置を確認後再び表示することも考えられるが、操作が煩雑になる。
【0011】
この解決方法として図3(b)に示すように表示領域(303)の位置を311のように変更するか、または大きさ自体を小さくすることも考えられる。図3(b)に示す表示領域(311)への位置変更により、線分指示カーソル(312)に示す位置が記号(310)により確認できる。また、パイプライン形状上に表示された腐食分布(309)も確認できる。しかしこの方法では、表示領域位置を変更しても新規に配置した位置が、新たにパイプライン形状を隠すこともある。さらに線分指示カーソル(312)による地図上の位置確認が困難になることもある。そのため、表示領域(311)の配置をその都度変更しなければならい。
【0012】
属性表示領域を小さくする方法では、属性データの表示に影響があり、属性データの表示自体が見えなくなってしまうことがある。このため、図3(b)に示すように表示領域(311)の位置を変更するか、パイプライン上での位置が確認できる場所に持ってくることが通常採用される。
【0013】
本発明ではパイプライン形状上に塀型の表示領域(以降、塀型表示領域と呼ぶ)を設けて、塀型表示領域上に属性データを表示することにより、表示領域の位置変更や大きさ変更を行わなくても属性データが表示できるようにする。
図2(b)は塀型表示領域の表示形態である。図2(b)に示す表示画面(209)上には、パイプライン形状(210〜213)が表示されている。これらのパイプ形状の上に塀型表示領域を表示してここに、腐食分布などの属性を表示する。パイプ(210)上に塀型領域(214)、パイプ(211)上に塀型領域(215)、パイプ(212)上に塀型領域(216)、パイプ(213)上に塀型領域(217)が表示されている。この塀型表示領域はパイプラインの部分形状に合わせて折れ曲がるように生成されるため、しかし、パイプ位置との対応は図3に示すように常時矩形形状の属性表示領域(303、311)を設ける場合と比較してとくにオペレーション操作を行わなくても確認できる。
【0014】
図1に、塀型表示を行うために必要となる機能構成について示す。
パイプライン形状データベース(101):パイプライン形状データを格納したデータベースである。この形状は座標列による線分データ(ベクトルデータ)としてあらわされる。
属性データベース(102):腐食データ、陰極保護電位データに関するデータを格納したデータベースである。これらの属性データは距離によって管理される。腐食データの場合は、距離(腐食開始距離)と腐食の長さ、幅、深さが対応付けられている。また、陰極保護電位データの場合は、計測地点までの距離と電位計測が対応付けられている。なお、属性データは表形式(関係データベース)により記載される。
オンメモリ形状データ(103):パイプライン形状データベース(101)より形状データ検索部(105)が読み出した形状データを計算機メモリ上に展開したデータである。
オンメモリ属性データ(104):属性データベース(102)より属性データ検索部(106)により検索された属性データを計算機メモリ上に展開したデータである。
形状データ検索部(105):パイプライン形状データベース(101)より検索されたベクトルデータ形式、オンメモリ形状データ(103)として計算機メモリ上に格納する機能である。
属性データ検索部(106):属性データベース(102)より検索された属性データを、オンメモリ属性データ(104)として計算機メモリ上に格納する機能である。
範囲検索部(107):地図上のパイプライン形状の上を選択することにより、パイプラインの範囲を選択し、さらにその選択範囲について実世界における距離範囲を計算することを行う機能である。
パイプライン曲がり形状判定部(108):範囲検索部(107)により選択されたパイプライン形状線分の曲がり部分を判定し、隣接したパイプライン形状線分との角度を求める機能である。そして閾値以上の角度を有するパイプライン形状線分選択する。
表示方法判定部(109):パイプライン曲がり形状判定部(108)で得られたパイプライン形状の曲がり角度と隣接する塀型表示領域の配置関係から、塀型表示領域の表示方法を判定する機能である。具体的には、パイプライン形状の高低差と塀型表示領域の底辺とパイプライン形状までの距離を計算して、閾値以下の場合には、塀型表示領域とパイプライン形状周辺の3次元地形形状の接触点を求めて塀型表示領域を傾けることを行う。
表示位置判定部(110):表示方法判定部(109)による表示方法に基づいて壁型表意領域の座標を計算・取得する機能である。
塀型表示領域生成部(111):パイプライン形状の上にグラフィックによる塀型表示領域のグラフィック形状を生成する機能である。
属性データマッピング部(112):塀型表示領域生成部(111)にて生成した塀型表示領域のグラフィックデータ上にメモリ上にある属性データ(104)を射影により塀型表示領域上に射影する機能である。
姿勢制御・スクロール部(113):パイプラインと塀型表示領域の表示姿勢を解析して、ユーザが指定した場合には、塀型表示領域の表示面をユーザー側に向けることを行う機能である。
非透過処理部(114):透過表示を行なない場合に塀型表示領域の塗りつぶしを行う機能である。透過の場合は塀型表示領域塗りつぶし表示は行わない。
注目領域指定部(115):ユーザが視線方向に表示したい塀型表示領域を選択したときに、どの塀型表示領域を選択したかを判定する機能である。
場所検索部(116):ユーザーにより塀型表示領域を選択して、選択された塀型表示領域に対応するパイプライン形状を検索し、その中心位置を画面中心に持ってくる機能である。
属性解析部(117):属性データを解析して異常値を示す位置、また将来予測を行って将来異常を示す可能性のある位置をパイプラインの距離によって示す機能である。
表示部(118):姿勢制御・スクロール部(113)によって変換した塀型表示領域と表示する属性データを計算機に付属するディスプレイの画面に表示する機能である。
【0015】
これらの機能を用いた塀型属性表示の表示形態を図2に示す。図2(a)の表示画面(201)上には、パイプライン形状(202〜205)が表示されている。また、パイプ(205)の上には、バルブの記号(206)が記載されている。パルブの付近に腐食などが集まりやすいことが知られている。パイプ形状の上に塀型表示領域を表示して、腐食分布などの属性を表示する。まず、このパイプの表示範囲を選択する。このため、場所指示シンボル(207、208)が表示され、パイプ形状の上を選択することによりパイプ範囲が選択される。図2(b)は表示画面(209)に塀型表示領域を生成した結果を示す。パイプ(210)上に塀型表示領域(214)、パイプ(211)上に塀型表示領域(215)、パイプ(212)上に塀型表示領域(216)、パイプ(213)上に塀型表示領域(217)が表示されている。この塀型表示領域はパイプラインの部分形状に合わせて折れ曲がるように生成されるため、パイプライン位置と属性との関係がわかりやすくなる。腐食データ(219)の位置はそこから塀型表示領域の稜線に沿って垂直に見降ろすことによってその位置が示すパイプの場所に腐食があることを示す。バルブ(218)の近くの腐食の集中状況についてもわかりやすく表示される。なおパイプ形状210と213において、塀型表示領域がパイプの途中までしか表示されていないのは、図2(a)に示す場所指示シンボル(207、208)によるパイプの選択範囲によって、表示範囲が限定されているからである。パイプライン形状は背景地図の上にマッピングされ3次元的に表示される。パイプライン周辺の地形形状も3次元形状でよい。この場合、塀型表示領域(214〜217)はパイプライン形状(210〜213)の特徴点(屈曲点、端点)に垂直に共通の柱を立てて、塀型表示領域を表示する。したがって塀型表示領域形状は、パイプライン形状に高低差がある場合、横方向の稜線が垂直方向になる平行四辺形形状となる。これに合わせて、表示された属性の形状も変形を受けることになる。腐食データ(219)などのパイプ上の位置は、塀型表示領域の稜線(220、221)に沿って垂線を下ろすことによりパイプ形状の位置に対応付けられる。これにより、パイプライン位置と属性との関係がわかりやすくなる。バルブ(218)の近くの腐食の集中状況についてもわかりやすく表示される。図2(b)は塀型表示領域(214〜217)の上に腐食分布を表示した結果を示す。腐食データは219に示すように矩形形状で表示されることが多い。これにより平行四辺形に変形された塀型表示領域に射影されるため、腐食データの形状も平行四辺形形状となる。ただし、腐食データの大きさは小さいため、それほど問題となる大きさにはならない。
【0016】
パイプライン形状が垂直方向に近い角度で立ってくる場合、塀型表示領域を表示すると、図4(a)に示すように、角度の急なパイプライン形状の塀型表示領域を表示する場合、図4(a)の塀型表示領域(402)に示すように表示領域が狭まってしまうことがある。そのため、表示角度を変更して表示する。図4(a)はパイプラインの形状(401)の高低差が急激に変化しているため、塀型表示領域を表示したときに平行四辺形の底辺(403)(これはパイプ形状に対応する)と上辺(404)の間の距離が詰まってしまい、この中に表示された属性データの間で重畳が発生することになる。また、データが元来小さい場合には計上の退化による消去などが発生することがある。これについては、図4(b)に示すように塀型表示領域(407)を傾けることによって表示し、塀型表示領域(408、409)および3次元背景地図と間の干渉も発生しないようにする。表示傾斜については、塀型表示領域(402)の上辺(404)とパイプ形状(403)の間の距離を計算し、あらかじめ決められた閾値よりも小さくなる場合に行う。塀型表示形状は407に示すようにパイプライン形状406に沿って表示することになるが、横方向の稜線(412,413)はパイプライン形状406と垂直に表示する。これにより、傾けた塀型表示領域の形状は傾いた矩形となる。また、前後の塀型表示形状とは、塀型表示領域(408、409)の稜線(410、411)と塀型表示領域(407)の稜線(412、413)が作る角度θ(414)によって決定する。θの初期値は90度とする。なお、この角度θ(414)は周囲の3次元的な地形条件に影響される。塀型表示領域が周囲の3次元地形形状と交差する場合には、その塀型表示領域(407)と3次元地形との接触点を求めて、傾けた塀型表示領域(407)が接触点に接するように表示することになる。この方法を図4(c)に示す。パイプ形状(415)に対し、あらかじめ決められた一定間隔で線分(416〜417)を直交するように設定する。そして、この線分(416〜418)と地形形状の断面を計算する。線分416に対する断面形状は421、線分417に対する断面形状は422、線分418に対する断面形状は423である。断面形状は座標列によるベクトル線分で取得する。そして、パイプ位置(419)から線分(424〜426)を発生させ地形断面形状との接点を求め、パイプ形状から立てた垂直線分(420)との角度を求める。そして、この角度が最も小さな角度を選択する。図4(c)では、φ2<φ1、φ2<φ3なので、φ2を塀型表示領域(407)の傾斜角度として採用する。
【0017】
次に、塀型表示領域の表示において、画面上に設定した視点位置(上部から下方向を見た場合)では塀形状の上辺と下辺が接近し、表示結果がわかりにくいことがある。また、壁形状が隠れてしまい、ユーザーが確認できない場合には、表示が確認しやすい位置に変更する。図5に表示変更位置の変更の方法を示す。ここでは、パイプライン形状(501〜503)に対応させて塀型表示領域(504〜506)および腐食データ(507)が表示されている。しかしこの表示方法では、塀型表示領域(505)に表示された属性データが確認しにくい。このため、ユーザーは塀型表示領域(505)を選択すると、図6(b)に示すようにパイプライン形状(509であり、これは502に対応する)を画面の中心になるように移動、回転を行い水平に配置し、その上に塀型表示領域(512)を表示する。これにより、塀型表示領域の表示操作を行いやすくする。図5(a)の505に示すように塀型表示領域が見えなくなっていても、図5(b)に示すように視点位置を変更することによって塀型表示領域自体が大きくなりわかりやすく表示される。これに伴ってパイプライン形状(508〜510)、塀型表示領域(511〜513)および腐食データ(514)も表示が変更される。あらかじめ図5(a)の視線パラメータを記憶しておけば、特定のボタン押下によって図5(a)の視点と表示位置に戻すことも可能である。
【0018】
次に、塀型表示領域をグラフックとして表示すると、実際に描画しても面の向き(面を構成する座標の順番)により表示される面と表示されない面が出てくる。塀領域の両面に属性データを表示してもよいが、見えている面のみに属性データを表示する。これにより、画面をスクロールしたときに動きが滑らかになる。視線ベクトルをVとして、面ベクトルSとの内積を求める。面ベクトルは、面の角の一点から2方向に伸びる2本のベクトルを設定して、それぞれ、S1およびS2とする。そして、外積S1×S2を面ベクトルSとする。×は外積記号である。これにより
V*S>0・・・〔数式1〕
の場合は、裏側を表示しているものとして裏面に属性データを表示する。*は内積記号である。さらに塀型表示領域の塗りつぶしなどを行うと塀型表示領域の一部が隠れ面となることがある。このため、塀型表示領域を透過的に表示することにより属性を表示する。図6に透過処理の結果を示す。図6(a)はパイプライン形状(601〜603)に対応し、塀型表示領域(604〜606)が表示され、属性データとして腐食データ(607)が表示されている。ここでは、塀型表示領域(604)が塀型表示領域(605)に一部表示が隠され、さらに塀型表示領域(605)は塀型表示領域(606)に一部表示が隠されている。そのため、図6(b)に示すように透過処理を行うことにより、全体を見通せるようにする。これは塀型表示領域の塗りつぶしを解除することによって行われる。なお、このとき、ここに表示している属性データが重畳してしまい、どの塀型表示領域に表示しているかどうかがわからなくなる可能性がある。そのため、透過処理は、裏面と定義した塀型表示領域上に属性を見る場合には、腐食データ(515)に示すように表示色や表示パターンを変更する。これにより、パイプ形状(608〜610)に対応し、塀型表示領域(611〜613)が透過敵意表示され、そこに腐食データ(514と515)が表示される。
【0019】
塀型表示領域による属性データ表示のフローを図7に示す。ここでは、形状データ検索部(105)により、パイプライン形状データベース(101)からパイプライン形状データが読み出され、オンメモリ形状データ(103)としてメモリ上に展開されているとする。
ステップ1(701):パイプライン範囲の選択
範囲検索部(107)により、計算機画面上に表示された線分図形によって表されるパイプライン形状の2点を選択して、パイプラインの範囲を選択する。そして、選択した範囲を示す始終点の座標を取得する。
ステップ2(702):パイプライン始終点の距離の取得
範囲検索部(107)により、ステップ1(701)で指示選択されたパイプラインの2点間の距離を取得する。これは以下のように行われる。ステップ1(701)にて取得した座標について、その座標に最も近いパイプライン形状データを構成するベクトル線分を計算する。これは、選択点からパイプを構成する線分に垂線を引くことによりこの垂線の長さがもっとも短い線分を選択し、パイプライン上の座標を取得する。そしてパイプライン形状の始点から線分を追跡することにより、パイプライン上の座標までの長さDを計算する。パイプライン形状全体の長さをL、またその実世界上での長さをRとすると、選択した点までの長さHは、
H=R×D/L・・・〔数式2〕
によって求められる。
ステップ3(703):パイプライン形状データの曲がり角度の計算
パイプライン曲がり形状判定部(108)により、曲がり形状部の角度を計算する。この角度はパイプライン形状線分とその隣接する線分との角度である。そして、この角度は表示方法判定部(109)に送る。
ステップ4(704):塀型表示領域の生成チェック
塀型表示生成部(111)で、塀型表示領域の生成・表示をすべてのパイプライン形状上に生成したかをチェックする。すべて生成した場合には、ステップ15(715)を行う。生成していない場合には、ステップ5(705)を実行する。
ステップ5(705):3D部分形状の選択
塀型表示領域生成部(111)は、パイプライン形状データが格納されたオンメモリ形状データ(103)から塀型表示領域を生成していない構成線分(部分線分)を選択する。
ステップ6(706):塀型表示領域の高さおよび稜線座標取得。
【0020】
表示方法判定部(109)は、ステップ5(705)で取得したパイプライン形状の部分線分から、塀型表示領域の高さ方向の座標を含む稜線の座標を取得する。
ステップ7(706):塀型表示領域の上辺と下辺の長さの計算
表示方法判定部(109)では、パイプライン曲がり形状判定部(108)より取得した曲がり角度から塀型表示領域の上辺と下辺の間の距離を計算する。
ステップ8(708):上辺と破片の距離の閾値判定
ステップ7(707)で求めた距離があらかじめ決められた閾値以下ならば、塀型表示領域の大きさが十分でないとしてステップ9(709)以降を実行する。ここで、塀型表示領域の表示角度は初期値として0としておく。上辺と下辺の間の距離が閾値以上であれば、塀型表示領域を生成するためにステップ11(711)を実行する。
ステップ9(709):周囲地形との接触点の計算
表示方法判定部(109)では、図4(c)に示すように、パイプ上に一定間隔で設定した線分(416〜418)と周囲の3次元地形との交差を求め、断面形状(421〜423)を求める。そして、パイプから線分を延長し、接触点までの線分を求める。
ステップ10(710):塀型表示領域の表示角度の計算
表示方法判定部(109)では、延長線分(424〜426)とパイプからの垂線(420)とのなす角度(φ1〜φ3)を求め、最小の角度を塀型表示領域の傾き角度とする。
ステップ11(711):塀型表示領域の座標生成
表示位置判定部(110)では、ステップ6(706)で取得した塀型表示領域形状の座標と、ステップ10(710)によって得られた塀型表示領域の角度を用いて塀型表示領域の座標を生成する。
ステップ12(712):塀型表示領域の表示
塀型表示領域生成部(111)は、塀型表示領域枠の表示をコンピュータグラフィックスなどの表示機能を用いて表示を行う。最初の塀型表示領域はステップ1で取得した開始位置座標から表示し、最後の場合は、終了位置の座標まで表示する。
ステップ13(713):非透過処理の判定
非透過表示判定部(114)では、ユーザーが透過処理を行うかどうかを判定する。透過処理を行う場合には塀領域を塗りつぶさないため、ステップ4(704)以降を実施する。透過処理を行わない場合はステップ14(714)を実施する。
ステップ14(714):塀領域の塗りつぶし
透過表示を行なわない場合には、非透過表示処理部(114)で塀型表示領域の塗りつぶしを行う。この後、ステップ4(704)を実行する。
ステップ15(715):距離データによるデータベース問い合わせ
属性データ検索部(106)では、距離データをSQL文に搭載して属性データベース(102)に送り、属性データの検索を行う。問い合わせ文には、
*パイプライン名称
*距離範囲(開始距離、終了距離)
*検索内容(腐食データの場合は、腐食開始位置、長さ、幅、深さ)
を含ませる。この距離データにより腐食データを検索する。
ステップ16(716):属性データの検索
属性データ検索部(106)では、ステップ15(715)より検索した腐食データなどの属性データをメモリ上に格納し、オンメモリ属性データ(104)とする。
ステップ17(717):属性データ分割の判定
属性データマッピング部(112)では、検索した属性データが塀型表示領域をまたがる場合かどうかを判定する。分割する場合にはステップ18(718)を実行し、分割しない場合にはステップ19(719)を実行する。
ステップ18(718):属性データの分割
属性データマッピング部(112)では、属性データを、塀型表示領域をまたがる部分で分割する。
ステップ19(719):属性データのマッピング
属性データマッピング部(112)では、属性データを塀型表示領域に表示する。
ステップ20(720):姿勢変更の判定
注目範囲指定部(115)では、ユーザーが姿勢変更のために中心にもってくる塀型表示領域を選択したかどうかを判定し、姿勢変更の場合はステップ21(721)を実行し、姿勢を変更しない場合には終了する。
ステップ21(721):姿勢の変更
場所検索部(116)では、選択された塀型表示領域が画面の中心にくるように移動と回転を行う。この後、ステップ210(720)を実行する。
【0021】
以上のようにして、塀型表示領域を表示するとともに、その内部に属性データを表示する。上記の例では、腐食データの表示としたが、陰極保護電位データの表示や、パイプ内の圧力分布の表示であってもよい。陰極保護電位データを塀型表示領域に表示した結果を図10に示す。陰極保護電位データの場合は、電位分布データを表示することになる。電位の計測点は、あらかじめ決められた間隔になることがあるので、計測点が必ずしもパイプラインの折れ曲がり点と一致しているわけではない。そのため、塀型表示領域端での電位値を計算する必要がある。これは以下のようにして行う。
陰極保護電位データの2点の測定点の電位をV1およびV2とする。また、測定点の距離をL1およびL2とする。そして、塀型表示領域端の距離をLとする。また
L1<L<L2 ・・・〔数式3〕
とする。
L点での電位値Vは、
V=V1+(V2−V1)×(L−L1)/(L2−L1) ・・・〔数式4〕
となる。このようにして、折り返し地点の電位値を塀型表示領域の端に与えることになる。
【0022】
次に圧力などの曲線によって与えられる値の場合については、次の方式になる。距離L地点の圧力を求める式については、次のように、距離と、その直前の圧力値によって求められる。
P=F(L、L1、P1、Q) ・・・〔数式5〕
となる。ここで、Fは圧力を求める関数である。この式はこれまで複数が知られており任意でよい。
【0023】
図10において、塀型表示領域(801)内に陰極保護電位データ(802)と、その上限閾値(804)および下限閾値(803)を表示した結果を示す。閾値を超える場合には、陰極保護電位が異常であることがわかり、その場所の確認を行うことができる。図10においては、805、807で下限閾値を越えるため異常部位であることを示す。806では上限閾値を越えているため、異常部位となる。さらに、塀型表示領域上に線分カーソル(808)を表示して、そこから引き出し線(809)を表示し、その場所に、座標を表示することによって、GPS(Global Positioning System)などを用いた誘導を行うこともできる。
【0024】
図11は、図10の陰極保護電位データの中で、異常値を示している区間だけを塀型表示領域を生成し、そこに異常値を表示した結果を示す。異常部位(902、904、905)に対応させて塀型表示領域(901、903)が表示される。なお、異常部位904と905は接近しているため、1個の塀型表示領域(903)上に表示される。
この区分的な塀型表示領域の生成フローを図12に示す。
ステップ1(1001):計測データ異常地点の取得
属性解析部(117)では、計測地点での計測値が下限閾値、上限閾値を超える場合には、その距離を記憶しておく。計測地点の距離はあらかじめ属性データベース(102)にて管理されている陰極保護電位データを参照し、そこで管理されている距離情報得を検索する。
ステップ2(1002):計測データの選択チェック
塀型表示領域生成部(111)では、すべての異常値を有する計測データについて塀型表示領域を生成したかどうかをチェックする。すべて塀型表示領域を生成したかどうかをチェックする。生成していない場合にはステップ3(1003)を実行し、生成した場合には終了する。
ステップ3(1003):異常計測値の取得
属性解析部(117)では、異常計測値をオンメモリ属性データ(104)から取得し計測地点の距離と対応付けて記憶する。
ステップ4(1004):異常範囲の取得
属性解析部(117)では、ステップ3(1003)で検索した異常データについて、閾値と交差する両端の点を計算し、その地点の距離を計算する。異常値計測点が閾値を超えている場合、計測地点の計測地を結ぶ距離-計測値のグラフをとった場合、その閾値と交差する二点が得られ、それらの距離が計測される。これらの距離をK1およびK2(K1<K2とする)とする。
ステップ5(1005):塀型表示領域の長さの計算
塀型表示領域についてその表示範囲距離を、
L1=K1−Th ・・・〔数式6〕
L2=K2+Th
ここで、Thはあらかじめ決められた閾値であり、もし、L1および、L2が表示限界のM1およびM2を超える場合、すなわち
M1<L1 ・・・〔数式7〕
M2>L2
の場合は、それぞれL1=M1およびL2=M2とする。
ステップ6(1006):塀型表示領域の生成
図7〜図9に示すステップに従って指定された表示範囲(L1からL2の範囲)で塀型表示領域を生成する。
ステップ7(1007):属性データのマッピング
属性データマッピング部(112)では、属性データ(ここでは、陰極保護電位データ)の塀型表示領域でのマッピングを行う。そしてステップ2(1002)以降を実施する。
【0025】
このような区分的な壁表意領域の生成により、異常値を有する区間をデータとしてリストに格納しておけば、計算機キーボードのキー操作により、距離の順番に表示の移動を行い、塀型表示領域の表示を中心にもってくることが可能である。区分データの表示により異常区間の全属性データの表示が可能となる。図3に示すような方式では、異常区間ごとに新規に表示領域を生成する必要があるため、表示が煩雑となるが、ここに示す塀型表示領域による表示により全体をまとめて表示することが可能となる。
【0026】
図11のさらなる応用として、陰極保護電位の経時変化により、将来の特定期間に異常が発生する場合、これを予測して異常区間を表示することが考えられる。図13はこの結果を示している。図13(a)は現状、図13(b)は将来の予測結果に基づく表示である。図13(a)では、異常区間1102、1104、1105に対応し、塀型表示領域1101、1103が表示されるが、図13(b)では、同じ異常区間1106、1107、1108の属性を表示する塀型表示領域(1110、1111)に加え、予測による異常区間1109に対する新たな塀型表示領域(1112)が生成されている。この塀内の背景色を変更することにより、新たに異常が発生した区間を強調表示することができる。
【0027】
上記したように、従来は、別途表示領域を生成し、パイプライン位置との関連性が見えない場合には、これらの表示領域の表示位置を変更する操作が必要であったが、本発明による塀型表示領域に従って属性データを表示することにより、位置移動操作は必要でなくなるため、属性データの確認が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明はパイプライン保守・監視システムとして計算機ソフトウエアとして利用される。とくに数百kmから数千kmにおよぶパイプラインの属性データを一元管理するとともに、地理情報システムを用いたビジュアルインターフェイスによって、これらの属性データを、パイプライン形状の範囲を選択して表示するときに利用する。パイプライン形状データ上に属性データを一括表示するため、属性の内容の確認が位置を含めて容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】機能構成を示す図である。
【図2】塀型属性表示の形態を示す図である。
【図3】従来の属性表示方式を示す図である。
【図4】塀型表示領域の表示角度変更を示す図である。
【図5】塀型属性領域の表示位置変更を示す図である。
【図6】透過処理の方式を示す図である。
【図7】塀型表示領域への属性表示のフローを示す図である。
【図8】塀型表示領域への属性表示のフローを示す図である(続き)。
【図9】塀型表示領域への属性表示のフローを示す図である(続き)。
【図10】陰極保護電位データの表示方法を示す図である。
【図11】区分的な塀型表示領域の生成を示す図である。
【図12】区分的な塀型表示領域への属性表示のフローを示す図である。
【図13】予測による新たな塀型表示領域の生成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
101・・・パイプライン形状データベース、102・・・属性データベース、103・・・オンメモリ形状データ、104・・・オンメモリ属性データ、105・・・形状データ検索部、106・・・属性データ検索部、107・・・範囲検索部、108・・・パイプライン曲がり形状判定部、109・・・表示方法判定部、110・・・表示位置判定部、111・・・塀型表示領域生成部、112・・・属性データマッピング部、113・・・姿勢制御・スクロール部、114・・・非透過表示制御部、115・・・注目範囲指定部、116・・・場所検索部、117・・・属性解析部、118・・・表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位などの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、パイプライン内の腐食分布や防食電位分布を表示する場合、パイプライン形状上に塀型の表示領域をグラフィック的に生成し、その内部に上記の分布を表示して、地図上と腐食分布、陰極保護分布の対応関係を明示することを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項2】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位などの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、3次元形状の塀型表示領域を生成する際に、塀型表示領域の上辺と下辺の距離が短い場合、塀型表示領域を傾けて表示することを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項3】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位、建設データなどの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、壁型領域の属性を表示する場合、透過、非透過の切り替えを行い、透過型の表示を行う場合には、壁領域の背面からでも、その壁表示領域が隠していた別の塀型表示領域の属性データの参照ができるようにしたことを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項4】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位などの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、属性データの中で、異常値を示す区間を、異常値が閾値を越える範囲の区間を抽出することにより、その距離範囲に限定した塀型表示領域を生成し、属性をマッピングすることにより、問題地点のみを選択的に塀型表示領域として生成することを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項5】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位などの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、属性データの中で、異常値を示す区間以外に、異常値の将来予測を行い閾値を越える範囲の区間を抽出することにより、その距離範囲の塀型表示領域を生成して属性をマッピングし、さらにすでに門箇所となっていたところと塀型表示領域とは異なる背景色にして表示することにより、新しい問題地点を選択的に塀型表示領域として生成することを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項1】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位などの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、パイプライン内の腐食分布や防食電位分布を表示する場合、パイプライン形状上に塀型の表示領域をグラフィック的に生成し、その内部に上記の分布を表示して、地図上と腐食分布、陰極保護分布の対応関係を明示することを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項2】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位などの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、3次元形状の塀型表示領域を生成する際に、塀型表示領域の上辺と下辺の距離が短い場合、塀型表示領域を傾けて表示することを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項3】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位、建設データなどの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、壁型領域の属性を表示する場合、透過、非透過の切り替えを行い、透過型の表示を行う場合には、壁領域の背面からでも、その壁表示領域が隠していた別の塀型表示領域の属性データの参照ができるようにしたことを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項4】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位などの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、属性データの中で、異常値を示す区間を、異常値が閾値を越える範囲の区間を抽出することにより、その距離範囲に限定した塀型表示領域を生成し、属性をマッピングすることにより、問題地点のみを選択的に塀型表示領域として生成することを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【請求項5】
座標列によって表現されたパイプライン形状と距離によって管理されている腐食や陰極保護電位などの属性データを管理し、検索して表示するパイプラインの保守管理システムにおいて、属性データの中で、異常値を示す区間以外に、異常値の将来予測を行い閾値を越える範囲の区間を抽出することにより、その距離範囲の塀型表示領域を生成して属性をマッピングし、さらにすでに門箇所となっていたところと塀型表示領域とは異なる背景色にして表示することにより、新しい問題地点を選択的に塀型表示領域として生成することを特徴とするパイプラインの保守管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−98228(P2009−98228A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267346(P2007−267346)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]