説明

パイプ吊下装置

【課題】簡単に製造することができて、部品交換も容易に行え、しかも軽量化を図ることのできるパイプ吊下装置を提供する。
【解決手段】溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたパイプ吊下装置100において、横軸部10を構成しているベースパイプ11が挿通される横挿通部41と、この横挿通部41に直交して、縦軸部20を上下位置調整可能に支持する縦挿通部42と、ベースパイプ11と平行に支持される横ネジ12が挿通される横ネジ挿通部43とを一体化したガイドフレーム40によって、横軸部10と縦軸部20との連結を行うようにしたパイプ吊下装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設する下水道管やヒューム管等のパイプを、溝内の所定位置に吊下するためのパイプ吊下装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、パイプの一種である下水道管を敷設する工事では、地面を掘削して溝を形成し、この溝内にパイプを敷設するようにしているが、その際には、下水の安定的な流下を促すために、下水道管の勾配を精密に設定しなければならない。そのため、従来では、非特許文献1にも提案されているように、上記溝の両側に設置された土留めパネルまたは矢板間に、パイプ敷設作業を容易にするためのパイプ吊下装置が用いられていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】株式会社エヌ・エス・ピー(住所岐阜県中津川市苗木9167番地)発行のカタログVol.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1のパイプ吊下装置は、図8に示すように、縦軸部を横軸部のベースパイプと横ネジとに溶接しただけのような状態で表現してあるが、実際上は、非常に多数の部材を使用した溶接やネジ止めを行って、縦軸部の、横軸部のベースパイプと横ネジとに対する連結あるいは取付けを行っている。換言すれば、従来のパイプ吊下装置において、その縦軸部の、横軸部のベースパイプと横ネジとに対する連結あるいは取付けは、非常に多くの部品と手間を要する作業になっているのである。
【0005】
それだけでなく、縦軸部の、横軸部のベースパイプと横ネジとに対する連結あるいは取付けは、金属製の多くの部材を使用しているから、パイプ吊下装置全体の重量は相当重いものとなっていて、当該パイプ吊下装置を溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置する作業自体も重労働になっているのである。当該パイプ吊下装置によって吊下すべきパイプ自体が重いものであるため、縦軸部の、ベースパイプと横ネジとに対する連結あるいは取付けは、剛性の高い金属性の部材によって行わなければならないから、パイプ吊下装置全体の重量は非常に嵩むものとなっているのである。
【0006】
また、縦軸部の、ベースパイプと横ネジとに対する連結あるいは取付けを、多数の部材を「溶接」して行っていると、ベースパイプだけ、あるいは横ネジだけを交換したい場合に、これに対する他の部材の溶接を外さなければならないから、事実上、この種のパイプ吊下装置における部品交換は不可能になっているのである。この種のパイプ吊下装置は、一本のパイプを水平に設置するために少なくとも2基使用されるものであり、しかも、多数のパイプを使用した下水道工事を行う場合には、多数のパイプの少なくとも2倍の数のパイプ吊下装置を使用しなければならず、さらには繰り返し使用するものであるから、部品交換が事実上不可能であることは、作業性に劣る重量物であることとも合わせて、当該パイプ吊下装置のコストを非常に高くしているだけでなく、不便なものとなっているのである。
【0007】
そこで、本発明者等は、この種のパイプ吊下装置について、縦軸部の、横軸部のベースパイプと横ネジとに対する連結あるいは取付けを「溶接」によって行う必要がなくて部品交換も容易にでき、作業性を向上させるための軽量化を図るにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0008】
すなわち、本発明の目的とするところは、簡単に製造することができて、部品交換も容易に行え、しかも軽量化を図ることのできるパイプ吊下装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたパイプ吊下装置100において、
横軸部10を構成しているベースパイプ11が挿通される横挿通部41と、この横挿通部41に直交して、縦軸部20を上下位置調整可能に支持する縦挿通部42と、ベースパイプ11と平行に支持される横ネジ12が挿通される横ネジ挿通部43とを一体化したガイドフレーム40によって、横軸部10と縦軸部20との連結を行うようにしたことを特徴とするパイプ吊下装置100」
である。
【0010】
つまり、このパイプ吊下装置100は、図1に示すように、溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたものである。
【0011】
横軸部10は、当該パイプ吊下装置100の上部に位置するベースパイプ11と、このベースパイプ11の下側でこれと平行に支持される横ネジ12とを少なくとも備えていて、当該横軸部10にはガイドフレーム40によって縦軸部20が連結され、この縦軸部20の下端にはパイプを吊下するためのパイプ取付部30が設けてある。
【0012】
ガイドフレーム40は、図1〜図3に示すように、ベースパイプ11が挿通される横挿通部41と、この横挿通部41に直交する縦挿通部42と、横ネジ12が挿通される横ネジ挿通部43と、これらの横挿通部41、縦挿通部42、及び横ネジ挿通部43の一体化を行う連結部44とを備えているものであり、これらの横挿通部41、縦挿通部42、横ネジ挿通部43、及び連結部44は、例えばアルミダイキャストによって一体的に形成したものである。換言すれば、横挿通部41と横ネジ挿通部43とは、連結部44によって互いに平行に連結され、縦挿通部42は、連結部44によって横挿通部41及び横ネジ挿通部43に対して直交状態となるように連結されているのであり、これらの関係は連結部44によって不変となるようになっている。
【0013】
このようなガイドフレーム40を形成しておけば、その横挿通部41に横軸部10のベースパイプ11を、また横ネジ挿通部43に横ネジ12を挿通し、縦挿通部42に縦軸部20を取り付ければ、当該パイプ吊下装置100は簡単に製造あるいは組み付けができる。なお、横ネジ12の両端は後述するブラケット50によって支持され、各ブラケット50は、その上端に位置する挿通部51にて横挿通部41の両端部に取り付けられるものである。
【0014】
さて、以上のようなパイプ吊下装置100が、図1に示すように、溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置されて固定状態になると、ガイドフレーム40は、横軸部10を構成しているベースパイプ11及び横ネジ12に対して、横挿通部41及び横ネジ挿通部43にて横方向にスライド可能となっているのである。なお、例えば、横ネジ挿通部43の両側に位置する横ネジ12上にはそれぞれ固定ハンドル60が取り付けてある。
【0015】
ここで、当該ガイドフレーム40の、図1の左右方向への位置調整を行いたい場合には、パイプ取付部30にパイプを取り付ける前の状態で、移動させたい側の固定ハンドル60を緩めて横ネジ挿通部43の許容移動部分を確保した後、反対側の固定ハンドル60を締めることにより、移動したい方向への固定ハンドル60の横ネジ12上での螺進を行う。このとき、ガイドフレーム40の横挿通部41は、横軸部10側のベースパイプ11に単に挿通してあるだけであるから、当該ガイドフレーム40の移動は、ベースパイプ11と横ネジ12との平行状態を維持したままなされることになる。ガイドフレーム40の上述したのとは反対方向への移動時も同様である。
【0016】
このようにしてガイドフレーム40が所望方向に移動すれば、このガイドフレーム40に一体的に形成してある縦挿通部42も、左右方向へ同量移動することになる。そして、この縦挿通部42の下端にはパイプ取付部30によってパイプが取り付けられるのであるから、このパイプの図1に示した左右方向への位置調整がなされることになるのである。なお、パイプの上下方向の位置調整は、縦軸部20に設けてある固定ハンドル60の回動操作によって行うことができる。
【0017】
以上の通り、このガイドフレーム40を備えたパイプ吊下装置100は、当該ガイドフレーム40によって、横軸部10を構成しているベースパイプ11及び横ネジ12、そして縦軸部20の組付あるいは取付が非常に簡単に行えるのであり、少なくとも、これらの横軸部10及び縦軸部20の部品交換を簡単に行うことができるのである。勿論、このガイドフレーム40は、金属によっても一体成形することができるのであるから、パイプ吊下装置100の製造自体も容易に行うことができるのである。
【0018】
従って、この請求項1に係るパイプ吊下装置100は、簡単に製造することができて、部品交換も容易に行え、しかも軽量化を図ることができる。
【0019】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1のそれについて、
「ガイドフレーム40を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成したこと」
である。
【0020】
この請求項2に係るパイプ吊下装置100では、上述してきたガイドフレーム40を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金、例えばアルミダイキャストによって形成したことであり、これにより、パイプ吊下装置100として必要十分な剛性を確保した状態で、例えばこの種のパイプ吊下装置100を一般的に形成している「鉄」に対して、軽量化が図られているのである。
【0021】
従って、この請求項2に係るパイプ吊下装置100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、軽量化を図ることができて、その設置作業や、保管あるいは運搬を容易に行うことができるものとなっているのである。
【0022】
以上課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、
「溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたパイプ吊下装置100において、
横軸部10を構成しているベースパイプ11が挿通される挿通部51と、
ベースパイプ11と平行に配置される横ネジ12の両端部を固定するネジ固定部52とを一体化した左右一対のブラケット50によって、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を行うようにしたことを特徴とするパイプ吊下装置100」
である。
【0023】
すなわち、この請求項3に係るパイプ吊下装置100は、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を、図4及び図5に示すような左右一対のブラケット50によって行うようにしたものである。これら各ブラケット50の、まず、横軸部10のベースパイプ11に対する取付及び固定は、その上端部である挿通部51をベースパイプ11の両端部に挿通するとともに、図1及び図5に示した固定ネジ53aを固定部53に螺着することによってなされるのである。
【0024】
これらブラケット50の、ベースパイプ11の両端部に対する取付時には、各ブラケット50の下部に形成してあるネジ固定部52内に、横軸部10側の横ネジ12の両端部を挿入または固定しておくものであり、各ブラケット50のベースパイプ11に対する固定が完了すれば、横ネジ12のベースパイプ11に対する平行な取り付けが自動的に完了するものである。
【0025】
以上の操作を逆に行えば、当該ブラケット50は勿論、ベースパイプ11や横ネジ12の交換も簡単に行えることになるのである。また、これらのブラケット50は、例えばアルミダイキャストによって一体的に形成することができるのであり、ネジ固定部52の中心でみたとき左右対称になっているし、一つの型で左右のブラケット50を製造できるのであるから、結果的に当該パイプ吊下装置100の製造を容易にしていることは言うまでもない。
【0026】
従って、この請求項3に係るパイプ吊下装置100は、簡単に製造することができて、部品交換も容易に行え、しかも軽量化を図ることができる。
【0027】
上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項3のそれについて、
「ブラケット50を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成したこと」
である。
【0028】
この請求項4に係るパイプ吊下装置100では、上述してきたブラケット50を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成したことであり、これにより、パイプ吊下装置100として必要十分な剛性を確保した状態で、例えばこの種のパイプ吊下装置100を一般的に形成している「鉄」に対して、軽量化が図られているのである。
【0029】
従って、この請求項4に係るパイプ吊下装置100は、上記請求項3のそれと同様な機能を発揮する他、軽量化を図ることができて、その設置作業や、保管あるいは運搬を容易に行うことができるものとなっているのである。
【0030】
上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載のパイプ吊下装置100について、
「ベースパイプ11の表面に硬質化処理を施したこと」
である。
【0031】
ベースパイプ11は、ガイドフレーム40の横挿通部41内に挿入されて、このガイドフレーム40に対する左右方向への移動がなされるのであり、また、その両端部にブラケット50が挿入されて取り付けられるのであるから、これらの操作あるいは移動の際に、その表面とガイドフレーム40またはブラケット50との間に「砂」や「土」を噛み込むことがあり得る。当該パイプ吊下装置100が使用されるのは、前述したような下水工事現場であるから、当然、このような砂等の噛み込みは発生し易い。
【0032】
ベースパイプ11の表面と、ガイドフレーム40またはブラケット50との間に「砂」や「土」を噛み込むと、次の使用時には、これらの砂等によってベースパイプ11の表面が損傷され、この損傷部分から当該ベースパイプ11に錆が発生することになる。このベースパイプ11は、後述する位置調整ネジ13や位置調整パイプ14を内蔵する部分であり、しかも、この上にてガイドフレーム40を移動させるものであって、屋外で使用するパイプ吊下装置100にとって重要部品でもあるから、錆が発生すればパイプ吊下装置100の寿命を短くする。
【0033】
しかしながら、この請求項5のパイプ吊下装置100では、そのベースパイプ11の表面に硬質化処理を施してあるから、仮にすなや土を噛み込んだとしても表面に傷が付くことは少なくなり、上記錆の発生を抑制できて寿命を長くすることができるだけでなく、当該ベースパイプ11上でのガイドフレーム40の移動をスムーズに行うこともできるのである。
【0034】
従って、この請求項5のパイプ吊下装置100は、上記請求項1〜4のそれと同様な機能を発揮する他、ベースパイプ11の寿命を長くすることができて、しかもベースパイプ11上でのガイドフレーム40の移動をスムーズに行うことができるものとなるのである。
【0035】
上記課題を解決するために、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載のパイプ吊下装置100について、
「横軸部10のベースパイプ11の一端部内に位置調整ネジ13を抜き差し自在に組み付けるとともに、この位置調整ネジ13の内端が挿入され得る位置調整パイプ14をベースパイプ11の他端部内に抜き差し自在に組み付けて、
ベースパイプ11と、位置調整ネジ13上の固定ハンドル60との間に、受け材61を配置するようにしたこと」
である。
【0036】
この請求項6のパイプ吊下装置100では、まず、その横軸部10について、その上述したベースパイプ11の一端部内に位置調整ネジ13を抜き差し自在に組み付けるとともに、この位置調整ネジ13の内端が挿入され得る位置調整パイプ14をベースパイプ11の他端部内に抜き差し自在に組み付けるようにしたものである。そして、このパイプ吊下装置100では、図1及び図6に示すように、ベースパイプ11と、位置調整ネジ13上の固定ハンドル60との間に、受け材61を配置するようにしたものである。
【0037】
本発明に係るパイプ吊下装置100を、図1にも示すように、溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置するには、ベースパイプ11の一端部内に挿入してあった位置調整ネジ13を抜き出すとともに、この位置調整ネジ13の内端が挿入されていた位置調整パイプ14をベースパイプ11の他端部内から抜き出して、各先端の脚板15が土留めパネルまたは矢板の内面に当接するようにする。
【0038】
このとき、例えば位置調整パイプ14については、その抜き出しが完了した時点で、ベースパイプ11に形成してあるピン穴(図示せず)と、位置調整パイプ14に形成してあるピン穴14aとの間に図示しないピンを差し込んで、ベースパイプ11に対する固定を行う。一方、位置調整ネジ13については、図6にも示すように、当該位置調整ネジ13に固定ハンドル60が螺着してあってその図示左側面がベースパイプ11の右端面に当接しているから、この固定ハンドル60を例えば右回転させることによって、位置調整ネジ13をベースパイプ11から強制的に抜き出す。これにより、横軸部10は、土留めパネルまたは矢板間で両手を突っ張ったような状態となるのである。
【0039】
ところで、この請求項6のパイプ吊下装置100では、横軸部10を土留めパネルまたは矢板間で突っ張らせるため、固定ハンドル60を回動する際には、当該固定ハンドル60とベースパイプ11との間に受け材61が配置してあるから、これがない場合に比べて小さい摩擦力しか存在しない。つまり、受け材61の存在によって、横軸部10を突っ張らせるための固定ハンドル60の回動を比較的小さな力で行えるのであり、作業性が向上しているのである。
【0040】
この受け材61としては、所謂オイルレスベアリング、スラストベアリング、その他のハンドル60の回転を円滑にする部材が採用される。
【0041】
従って、この請求項6のパイプ吊下装置100は、上記請求項1〜5のそれと同様な機能を発揮する他、横軸部10の突っ張り作業が容易に、あるいは軽く行えるものとなっているのである。
【0042】
上記課題を解決するために、請求項7に係る発明の採った手段は、上記請求項6に記載のパイプ吊下装置100について、
「位置調整ネジ13と位置調整パイプ14との何れか少なくとも一方の外端に、前記土留めパネルまたは矢板の内面に当接される脚板15の取付部15aを挿入して、これらの取付部15aを位置調整ネジ13及び位置調整パイプ14の外端にて着脱自在としたこと」
である。
【0043】
この請求項7のパイプ吊下装置100では、位置調整ネジ13と位置調整パイプ14との外端に、脚板15を、その取付部15aにて着脱自在に取り付けたものであるから、各脚板15の交換が自在に行えるようになっているのである。
【0044】
また、各脚板15は、その取付部15aを位置調整ネジ13または位置調整パイプ14の何れか少なくとも一方(後述する実施形態では両方)の外端に挿入すること(図7の(a)参照)で組み付けがなされることは当然として、例えば、図7の(b)に示すように取付ピン15bによって簡単に取り付けることができるものである。
【0045】
従って、この請求項7に係るパイプ吊下装置100は、上記請求項6のそれと同様な機能を発揮することができる他、脚板15の組付を簡単に行えるだけでなく、その交換も簡単に行えるのである。
【発明の効果】
【0046】
以上、説明した通り、本発明は、
「溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたパイプ吊下装置100において、
横軸部10を構成しているベースパイプ11が挿通される横挿通部41と、この横挿通部41に直交して、縦軸部20を上下位置調整可能に支持する縦挿通部42と、ベースパイプ11と平行に支持される横ネジ12が挿通される横ネジ挿通部43とを一体化したガイドフレーム40によって、横軸部10と縦軸部20との連結を行うようにしたこと」
または、
「溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、を備えたパイプ吊下装置100において、
横軸部10を構成しているベースパイプ11が挿通される挿通部51と、
ベースパイプ11と平行に配置される横ネジ12の両端部を固定するネジ固定部52とを一体化した左右一対のブラケット50によって、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を行うようにしたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、簡単に製造することができて、部品交換も容易に行え、しかも軽量化を図ることのできるパイプ吊下装置100を提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るパイプ吊下装置100の、土留めパネルまたは矢板間に設置した状態の正面図である。
【図2】同パイプ吊下装置100を構成しているガイドフレーム40を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】同ガイドフレーム40の右側面図である。
【図4】同パイプ吊下装置100を構成しているブラケット50であって、図1の左側に位置するものを示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図5】同ブラケット50の右側側面図である。
【図6】同パイプ吊下装置100の横軸部10を構成している位置調整ネジ13を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図である。
【図7】同横軸部10を構成している位置調整パイプ14を示すもので、(a)は脚板15を取り付けようとしている正面図、(b)は右側面図、(c)は脚板15を取り付けたときの平面図である。
【図8】非特許文献1に示された従来技術を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態に基づいて説明するが、この実施形態に係るパイプ吊下装置100は、上記各請求項に係る発明の全てを含むものであるから、以下では、この実施形態に係るパイプ吊下装置100を中心に説明していることとする。
【0049】
図1には、本発明に係るパイプ吊下装置100を、土留めパネルまたは矢板間に設置した状態での正面図で示してある。このパイプ吊下装置100は、溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部10と、当該横軸部10に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部20と、この縦軸部20の下端に設けたパイプ取付部30と、横軸部10と縦軸部20との連結を行うガイドフレーム40と、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を行う左右一対のブラケット50とを備えたものである。
【0050】
このパイプ吊下装置100の横軸部10は、上部に位置するベースパイプ11と、このベースパイプ11と平行に配置されてベースパイプ11の下側に位置する横ネジ12とを、その基本構成部材としているものである。ベースパイプ11は、その内部に、図6に示した位置調整ネジ13と、図7に示した位置調整パイプ14とを内部に収納でき、かつこれらの位置調整ネジ13及び位置調整パイプ14を引き出した後にその位置での固定が行えるようにしたものであり、その表面には硬質化処理が施してある。
【0051】
また、このベースパイプ11は、後述するガイドフレーム40で縦軸部20を支持しながら、図1に示した左右方向への位置調整が行えるようにするものであるから、この位置調整ができる程度の長さを有していれば十分である。一方、横ネジ12は、後述するブラケット50によってその左右両端部を上記ベースパイプ11に取り付けるようにしたものであり、後述するガイドフレーム40を挟んで取り付けた左右の固定ハンドル60を螺進あるいは螺退させることにより、ガイドフレーム40の位置調整が行えるようにしたものであり、上記ベースパイプ11の長さ程度の長さを有するものである。
【0052】
なお、本実施形態での横ネジ12の直径及びネジのピッチは、後述する位置調整ネジ13や縦軸部20のそれと同じにしてあり、これにより、使用される固定ハンドル60を共通のものにできるようにしてある。固定ハンドル60は、突出したものであり、比較的強い力で回動操作がなされることもあるから、破損し易いものであるため、各部分で共通して使用できるものにしておくと交換が極めて円滑に行え、頻繁に使用される当該パイプ吊下装置100のメンテナンス作業効率を格段に高めることができるのである。
【0053】
このパイプ吊下装置100の横軸部10を構成しているベースパイプ11は、上述したように、その一端部内に位置調整ネジ13を抜き差し自在に組み付けるとともに、この位置調整ネジ13の内端が挿入され得る位置調整パイプ14をベースパイプ11の他端部内に抜き差し自在に組み付けるようにしたものである。
【0054】
つまり、位置調整ネジ13はパイプ状にしてあって、その中に位置調整パイプ14が抜き差し自在に挿入できるのであり、この位置調整ネジ13自体はベースパイプ11内に抜き差し自在に挿入できるのである。これにより、当該ベースパイプ11は、その中に位置調整ネジ13と位置調整パイプ14とをコンパクトに収納することができて、その全体を短くすることができるだけでなく、位置調整ネジ13と位置調整パイプ14とを最大限抜き出せば、図1に示したように、土留めパネルまたは矢板間の距離に合わせることができるのである。この結果、横ネジ12についても、その長さをベースパイプ11の長さ程度にすることができて、当該パイプ吊下装置100の図1に示した左右方向の長さを短くすることができているのである。
【0055】
また、上記の位置調整ネジ13と位置調整パイプ14との何れか一方、本実施形態のパイプ吊下装置100では両方の外端に、前記土留めパネルまたは矢板の内面に当接される脚板15が取り付けてある。この脚板15は、例えば図7の(a)に示したように、パイプ状になっている位置調整ネジ13と位置調整パイプ14との外端に挿入するための取付部15aを有したものであり、この取付部15aには、取付ピン15bが挿入できる挿通穴15cが形成してある。
【0056】
つまり、各脚板15は、その取付部15aを位置調整ネジ13と位置調整パイプ14との外端に挿入すること(図7の(a)参照)で簡単に組み付けがなされることは当然として、例えば、図7の(b)に示したように、挿通穴15cに挿通した取付ピン15bによって簡単に取り付けることができる。
【0057】
さらに、位置調整ネジ13には、図6にも示したように、固定ハンドル60が螺着してあって、この固定ハンドル60の図示左側面がベースパイプ11の右端面に、後述する受け材61を介して当接するようにしてあるから、この固定ハンドル60を例えば右回転させることによって、当該位置調整ネジ13は、ベースパイプ11から強制的かつ微調整可能に抜き出せるものとなっているのである。一方、位置調整パイプ14については、その抜き出しが完了した時点で、ベースパイプ11に形成してあるピン穴(図示せず)と、位置調整パイプ14に形成してあるピン穴14aとの間に図示しないピンを差し込んで、ベースパイプ11に対する固定が行えるようにしてある。
【0058】
そして、このパイプ吊下装置100では、図1及び図6に示したように、ベースパイプ11と、位置調整ネジ13上の固定ハンドル60との間に、受け材61が配置してある。この受け材61としては、所謂オイルレスベアリング、スラストベアリング、その他のハンドル60の回転を円滑にする部材が採用される。
【0059】
このような受け材61を固定ハンドル60とベースパイプ11との間に配置しておけば、固定ハンドル60を回動する際には、当該受け材61がない場合に比べて小さい摩擦力しか存在しないようにすることができる。つまり、受け材61の存在によって、横軸部10を突っ張らせるための固定ハンドル60の回動が比較的小さな力で行えるのであり、当該パイプ吊下装置100の施工作業性を向上させている。
【0060】
当該横軸部10には、図1に示したように、後述するガイドフレーム40によって縦軸部20が連結されるのであり、この縦軸部20の下端には、パイプを吊下するための一般的なパイプ取付部30が設けられるのである。縦軸部20は、図1にも示したように、「ネジ軸」として形成したものであり、これに螺着した固定ハンドル60の下面を、ガイドフレーム40の縦挿通部42の上端に当接させることにより、当該パイプ吊下装置100における所定位置での固定がなされる。一方、当該縦軸部20の上下方向の位置決めを行うには、パイプ取付部30にてのパイプの吊下をする前に、固定ハンドル60を当該縦軸部20に対して螺進させたり螺退させたりするのである。
【0061】
ガイドフレーム40は、図1〜図3に示したように、ベースパイプ11が挿通される横挿通部41と、この横挿通部41に直交する縦挿通部42と、横ネジ12が挿通される横ネジ挿通部43と、これらの横挿通部41、縦挿通部42、及び横ネジ挿通部43の一体化を行う連結部44とを備えたものであり、これらの横挿通部41、縦挿通部42、横ネジ挿通部43、及び連結部44は、例えばアルミダイキャストによって一体的に形成したものである。換言すれば、当該ガイドフレーム40の連結部44によって、横挿通部41と横ネジ挿通部43とは互いに平行に連結され、縦挿通部42は横挿通部41及び横ネジ挿通部43に対して直交状態となるように連結されているのであり、これらの関係は連結部44によって不変となる。このようなガイドフレーム40の横挿通部41に横軸部10のベースパイプ11を、また横ネジ挿通部43に横ネジ12を挿通して縦挿通部42に縦軸部20を取り付ければ、当該パイプ吊下装置100の製造あるいは組み付けは簡単に行える。
【0062】
この実施形態のパイプ吊下装置100では、上述してきたガイドフレーム40を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成してあり、これにより、パイプ吊下装置100として必要十分な剛性を確保した状態で、例えばこの種のパイプ吊下装置100を一般的に形成している「鉄」に対して、軽量化を図っているのである。
【0063】
このガイドフレーム40は、横軸部10を構成しているベースパイプ11及び横ネジ12に対して、横挿通部41及び横ネジ挿通部43にて横方向にスライド可能となっている。なお、例えば、横ネジ挿通部43の両側に位置する横ネジ12上には、前述したように、固定ハンドル60がそれぞれ取り付けてある。
【0064】
ここで、当該ガイドフレーム40の、図1の左右方向への位置調整を行いたい場合には、パイプ取付部30にパイプを取り付ける前の状態で、移動させたい側の固定ハンドル60を緩めて横ネジ挿通部43の許容移動部分を確保した後、反対側の固定ハンドル60を締めることにより、移動したい方向への固定ハンドル60の横ネジ12上での螺進を行う。このとき、ガイドフレーム40の横挿通部41は、横軸部10側のベースパイプ11に単に挿通してあるだけであるから、当該ガイドフレーム40の移動は、ベースパイプ11と横ネジ12との平行状態を維持したままなされることになる。ガイドフレーム40の上述したのとは反対方向への移動時も同様である。
【0065】
このようにしてガイドフレーム40が所望方向に移動すれば、このガイドフレーム40に一体的に形成してある縦挿通部42も、左右方向へ同量移動することになる。そして、この縦挿通部42の下端にはパイプ取付部30によってパイプを取り付ければ、このパイプの図1に示した左右方向への位置調整がなされることになるのである。なお、パイプの上下方向の位置調整は、縦軸部20に設けてある固定ハンドル60の回動操作によって行うことができることは、前述した通りである。
【0066】
そして、ブラケット50は、図4及び図5に示したように、横軸部10を構成しているベースパイプ11が挿通される挿通部51と、ベースパイプ11と平行に配置される横ネジ12の両端部を固定するネジ固定部52とを一体化したものであり、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を行うものである。
【0067】
すなわち、この実施形態のパイプ吊下装置100は、ベースパイプ11と横ネジ12との連結を、図4及び図5に示したようなブラケット50を左右一対使用して行うようにしたものである。これら各ブラケット50の、まず、横軸部10のベースパイプ11に対する取付及び固定は、その上端部である挿通部51をベースパイプ11の両端部に挿通するとともに、図1及び図5に示した固定ネジ53aを固定部53に螺着することによってなされる。
【0068】
これらブラケット50の、ベースパイプ11の両端部に対する取付時には、各ブラケット50の下部に形成してあるネジ固定部52内に、横軸部10側の横ネジ12の両端部を挿入または固定しておくものであり、各ブラケット50のベースパイプ11に対する固定が完了すれば、横ネジ12のベースパイプ11に対する平行な取り付けが自動的に完了するものである。
【0069】
以上の操作を逆に行えば、当該ブラケット50は勿論、ベースパイプ11や横ネジ12の交換も簡単に行えることになるのである。また、これらのブラケット50は、例えばアルミダイキャストによって一体的に形成したものであり、ネジ固定部52の中心でみたとき左右対称になっているし、一つの型で左右のブラケット50を製造できるのであるから、結果的に当該パイプ吊下装置100の製造を容易にしている。
【0070】
この実施形態のパイプ吊下装置100では、上述してきたブラケット50を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成したものであり、これにより、パイプ吊下装置100として必要十分な剛性を確保した状態で、例えばこの種のパイプ吊下装置100を一般的に形成している「鉄」に対して、軽量化を図るようにしている。
【0071】
なお、このブラケット50をアルミダイキャストによって一体的に形成するにあたって、所謂「中実体」として形成するよりも、図4及び図5に示したように、空間部54を有するものとした方が、当該ブラケット50自体の軽量化を図り、結果的に、パイプ吊下装置100全体の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0072】
100 パイプ吊下装置
10 横軸部
11 ベースパイプ
12 横ネジ
13 位置調整ネジ
14 位置調整パイプ
14a ピン穴
14b 挿入穴
15 脚板
15a 取付部
15b 取付ピン
15c 挿通穴
20 縦軸部
30 パイプ取付部
40 ガイドフレーム
41 横挿通部
42 縦挿通部
43 横ネジ挿通部
44 連結部
45a 固定ネジ穴
50 ブラケット
51 挿通部
52 ネジ固定部
52a 取付穴
53 固定部
53a 固定ネジ
54 空間部
60 固定ハンドル
61 受け材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部(10)と、当該横軸部(10)に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部(20)と、この縦軸部(20)の下端に設けたパイプ取付部(30)と、を備えたパイプ吊下装置(100)において、
前記横軸部(10)を構成しているベースパイプ(11)が挿通される横挿通部(41)と、この横挿通部(41)に直交して、前記縦軸部(20)を上下位置調整可能に支持する縦挿通部(42)と、前記ベースパイプ(11)と平行に支持される横ネジ(12)が挿通される横ネジ挿通部(43)とを一体化したガイドフレーム(40)によって、前記横軸部(10)と縦軸部(20)との連結を行うようにしたことを特徴とするパイプ吊下装置(100)。
【請求項2】
前記ガイドフレーム(40)を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成したことを特徴とする請求項1に記載のパイプ吊下装置(100)。
【請求項3】
溝内に設置された土留めパネルまたは矢板間に配置される横軸部(10)と、当該横軸部(10)に支持されて、前記溝内に敷設すべきパイプを吊下する縦軸部(20)と、この縦軸部(20)の下端に設けたパイプ取付部(30)と、を備えたパイプ吊下装置(100)において、
前記横軸部(10)を構成しているベースパイプ(11)が挿通される挿通部(51)と、
前記ベースパイプ(11)と平行に配置される横ネジ(12)の両端部を固定するネジ固定部(52)とを一体化した左右一対のブラケット(50)によって、前記ベースパイプ(11)と前記横ネジ(12)との連結を行うようにしたことを特徴とするパイプ吊下装置(100)。
【請求項4】
前記ブラケット(50)を、比重が1.7〜4.0の金属または金属合金によって形成したことを特徴とする請求項3に記載のパイプ吊下装置(100)。
【請求項5】
前記ベースパイプ(11)の表面に硬質化処理を施したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のパイプ吊下装置(100)。
【請求項6】
前記横軸部(10)のベースパイプ(11)の一端部内に位置調整ネジ(13)を
抜き差し自在に組み付けるとともに、この位置調整ネジ(13)の内端が挿入され得る位置調整パイプ(14)を前記ベースパイプ(11)の他端部内に抜き差し自在に組み付けて、
前記ベースパイプ(11)と、前記位置調整ネジ(13)上の固定ハンドル(60)との間に、受け材(61)を配置するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のパイプ吊下装置(100)。
【請求項7】
前記位置調整ネジ(13)と位置調整パイプ(14)との何れか少なくとも一方の外端に、前記土留めパネルまたは矢板の内面に当接される脚板(15)の取付部(15a)を挿入して、これらの取付部(15a)を前記位置調整ネジ(13)及び位置調整パイプ(14)の外端にて着脱自在としたことを特徴とする請求項6に記載のパイプ吊下装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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