説明

パイプ抱持用クランプ

【課題】作業者や工具袋やビニールハウスのビニールシートなどが引っ掛かることを可及的に防止できるパイプ抱持用クランプを提供すること。
【解決手段】基体3の先端部に回動自在に設けた回動体7に径大頭付締付ボルト10が螺着する螺着部11を設け、締付開閉体5の開閉先端部に前記径大頭付締付ボルト10を挿入する係止用切欠部8を設け、前記螺着部11に螺着した前記径大頭付締付ボルト10を締付回動することで、この径大頭付締付ボルト10の径大頭部12が前記締付開閉体5の係止用切欠部8に係止してパイプ1を抱持し得るように構成したパイプ抱持用クランプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ抱持用クランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のパイプ抱持用クランプとして、例えば、パイプを抱持する抱持縁を有する抱持体の基端部に、同じく抱持縁を有する締付抱持体の基端部を枢着し、この抱持体の先端部に締付ボルトの基端部を枢着し、この締付ボルトの先端部を締付抱持体の先端部に設けた係合部に係合して前記締付ボルトに螺合したナットを締め付け回動することによりパイプを強固に締め付け抱持するように構成したものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−251443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のパイプ抱持用クランプは、径の異なるパイプに幅広く対応できるように、抱持体の先端部に枢着する締付ボルトは比較的長いものが採用されている。そのため、径の太いパイプを締め付け抱持する場合はまだ良いが、大概はこの締付ボルトに締付螺着して係合部に係合したナットよりこの締付ボルトの先端部が外側に突出した状態で締付抱持されることになる。
【0005】
してみると、通常、建築現場などで仮設足場や仮設階段などを形成する際に使用されることの多いこのクランプは、前記仮設足場や仮設階段や各種骨組みの所々で締付ボルトの先端部が外側方向に突出した状態となっており、作業者がこの仮設足場や仮設階段を移動する際に突出した状態の締付ボルトの先端部に接触したり、作業服や腰などに携帯した工具袋などを引っ掛けてしまうこともあった。
【0006】
また、農業用のビニールハウスの骨組みパイプの組み立てにこの種クランプを用いることがあるが、組み上がった骨組みの上からビニールシートを被せると、外側に突出している締付ボルトの先端部にビニールシートが擦れて破れてしまうこともあった。
【0007】
このような従来のクランプで生じる可能性のある不都合は、締付ボルトを短いものに交換することで簡単に解消できるとも考えられるが、前述のように径の異なるパイプへの対応を考慮すると現実的には難しい。
【0008】
また従来、クランプカバーを設けることで締付ボルト等を覆い、作業服や工具袋等が引っ掛かることを防止することも提案されている(例えば、特許文献1参照)が、一つ一つのクランプに保護用のカバーを取り付けることは手間がかかり煩わしい作業であった。
【0009】
本発明は、前述した不都合を解消しようとするためのもので、特別なカバーが無くとも例えば仮設足場形成にあたって作業者が作業服や工具袋などを引っ掛け難く、また、ビニールハウスの組み立てにあたってビニールシートの破損を可及的に防止できる画期的なパイプ抱持用クランプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
パイプ1を抱持するパイプ抱持縁2を内縁に形成した基体3の基端部に、パイプ抱持縁4を内縁に形成した締付開閉体5の基端部を枢着して基体3に対して締付開閉体5を開閉自在に設け、この締付開閉体5の開閉先端部と前記基体3の先端部とを連結して前記パイプ抱持縁2・4により前記パイプ1を締付抱持する締付抱持機構6を設けたパイプ抱持用クランプにおいて、前記締付抱持機構6は、前記基体3の先端部に回動自在に設けた回動体7に径大頭付締付ボルト10が螺着する螺着部11を設け、前記締付開閉体5の開閉先端部に前記径大頭付締付ボルト10を挿入する係止用切欠部8を設け、前記螺着部11に螺着した前記径大頭付締付ボルト10を締付回動することで、この径大頭付締付ボルト10の径大頭部12が前記締付開閉体5の係止用切欠部8に係止して前記パイプ1を抱持し得るように構成したことを特徴とするパイプ抱持用クランプに係るものである。
【0012】
また、前記螺着部11は、前記回動体7に前記径大頭付締付ボルト10が螺動自在に貫通する螺子孔13を設けて構成したことを特徴とする請求項1記載のパイプ抱持用クランプに係るものである。
【0013】
また、前記螺着部11を構成する前記螺子孔13は、ナット16を前記回動体7に設けて構成したことを特徴とする請求項2記載のパイプ抱持用クランプに係るものである。
【0014】
また、前記回動体7に前記ナット16を収容するナット収容スペース17を設けた構成とし、この回動体7のナット収容スペース17に前記ナット16を固定若しくは回り止め状態に設け、このナット16の前記螺子孔13と連通する挿通孔14を前記回動体7の先端部9に設けたことを特徴とする請求項3記載のパイプ抱持用クランプに係るものである。
【0015】
また、前記回動体7は、板材をコ字状に形成して内側にナット収容スペース17を有する構成とし、この回動体7の基端部を回動自在に前記基体3の先端部に設け、この回動体7のナット収容スペース17に前記ナット16を配設し、このナット16の外周部を前記回動体7の側壁部に設けた係止孔20に係止して回り止め状態に収容し、前記回動体7の先端部に前記挿通孔14を設けたことを特徴とする請求項4記載のパイプ抱持用クランプに係るものである。
【0016】
また、前記径大頭付締付ボルト10は、この径大頭付締付ボルト10の螺子部18の上面部に回動工具で締付回動する径大な回動操作用頭部を径大頭部12として設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパイプ抱持用クランプに係るものである。
【0017】
また、前記径大頭部12は、六角ナット形状頭部としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のパイプ抱持用クランプに係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、従来品と同様に簡単な螺着作業によってパイプを抱持固定可能であると共に、径の異なるパイプに対しても対応使用可能であり、しかも、従来品のように締付抱持体の開閉先端部の係合部に係合したナットから締付ボルトの先端部が外側に突出するのではなく、本発明によれば、係止用切欠部の外側に僅かに径大頭部が突出するだけにとどまるので、保護用カバーが無くとも作業者や作業服や工具袋などが接触しにくく、また、ビニールハウスなどの組み立てに用いた場合には、ビニールシートの損傷を可及的に低減できることになるなど、簡易な構成でありながら極めて安全性に秀れ、実用性に秀れた画期的なパイプ抱持用クランプとなる。
【0019】
また、請求項2記載の発明においては、回動体に螺着部を簡易に設計実現可能であると共に、径寸法の異なるパイプへの対応幅の拡大を容易に設計実現可能となる一層実用性に秀れたパイプ抱持用クランプとなる。
【0020】
また、請求項3記載の発明においては、既製のナットを用いて貫通した螺子孔(螺着部)を回動体に対して簡易に設計実現可能となる一層実用性に秀れたパイプ抱持用クランプとなる。
【0021】
また、請求項4記載の発明においては、回動体の先端部にナットを設ける構成並びに、回動体内に径大頭付締付ボルトが螺入して外側に露出しない構成を簡易に設計実現可能となり、しかも、螺着部への径大頭付締付ボルトの締付回動操作も容易に行われるなど、一層実用性に秀れたパイプ抱持用クランプとなる。
【0022】
また、請求項5記載の発明においては、ナット収容スペースを内側に有する回動体を簡易に設計実現可能となると共に、ナットの脱落防止と回り止めとを簡易構成によって同時に実現できる一層実用性に秀れたパイプ抱持用クランプとなる。
【0023】
また、請求項6記載の発明においては、回動工具を用いて簡単に締付回動操作可能な径大頭付締付ボルトを簡易に設計実現可能となる一層実用性に秀れたパイプ抱持用クランプとなる。
【0024】
また、請求項7記載の発明においては、既存の六角ボルトや六角ナットを回動操作可能な汎用の回動工具を用いてパイプの締付抱持固定作業を簡単に行なうことができる一層実用性に秀れたパイプ抱持用クランプとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0026】
例えば、予め、径大頭付締付ボルト10を回動体7の螺着部11に仮止めしておくと、パイプ1を抱持固定する際に本発明品の一つ一つに対して径大頭付締付ボルト10を螺着する手間がなく、この締付抱持操作が容易に行なわれる。
【0027】
基体3に対し締付開閉体5を回動して、基体3のパイプ抱持縁2と締付開閉体5のパイプ抱持縁4とでパイプ1を抱持し、この状態で係止用切欠部8に挿入した径大頭付締付ボルト10を、基体3の先端部に設けた回動体7の螺着部11に対して締付回動すると、径大頭付締付ボルト10の径大頭部12が締付開閉体5の係止用切欠部8に係止して、この締付開閉体5の開閉先端部と基体3の先端部とが締付抱持機構6を介して連結され、パイプ1が基体3と締付開閉体5によって締付抱持固定されることになる。
【0028】
また、回動体7は、基体3の先端部に対し回動可能であり、回動体7を回動することで螺着部11に螺着した径大頭付締付ボルト10の径大頭部12の係止用切欠部8への係止位置を、抱持固定対象のパイプ1の径寸法に応じて変更可能である。即ち、径寸法の異なるパイプ1に対応して抱持固定可能である。
【0029】
従って、従来品と同様に、簡単な螺着作業によってパイプ1を抱持固定可能であると共に、径の異なるパイプ1に対しても使用可能である。
【0030】
また、本発明においては、パイプ1抱持固定時に、径大頭付締付ボルト10が基体3先端部に設けた回動体7の螺着部11に螺着してこの回動体7に螺入するので、この径大頭付締付ボルト10の先端部は外側に露出せず、この径大頭付締付ボルト10の径大頭部12が締付開閉体5先端部の係止用切欠部8の外側に露出することになる。
【0031】
即ち、従来品のように締付抱持体(本発明の締付開閉体に相当)の開閉先端部の係合部(本発明の係止用切欠部に相当)に係合したナットから締付ボルトの先端部が外側に突出するのではなく、本発明によれば、係止用切欠部8の外側に僅かに径大頭部12が突出するだけにとどまるので、その突出度は従来品の締付ボルトに比べて著しく小さく、また、径大頭付締付ボルト10の鋭利な螺子山も露出しないので、カバーなどを用いずとも、作業者が触れたり物が当たったりするようなことが可及的に防止される。
【0032】
尚、前記径大頭付締付ボルト10を回動体7の螺着部11に仮止めせずに、基体3と締付開閉体5でパイプ1を抱持してから係止用切欠部8に径大頭付締付ボルト10を挿入して、回動体7の螺着部11に径大頭付締付ボルト10を螺着し締付回動するようにしても良い。
【0033】
また、例えば、前記螺着部11は、前記回動体7に前記径大頭付締付ボルト10が螺動自在に貫通する螺子孔13を設けて構成すれば、回動体7に径大頭付締付ボルト10を螺着する螺着部11を簡易に設計実現可能であると共に、螺子孔13が貫通していることで、径大頭付締付ボルト10の締付螺動範囲を大きく設定可能となり、これにより長さのある前記径大頭付締付ボルト10を採用することが可能になるので、径寸法の異なるパイプ1への対応幅の拡大を容易に設計実現可能となる。
【0034】
また、例えば、前記螺着部11を構成する前記螺子孔13は、ナット16を前記回動体7に設けて構成すれば、既製のナット16を回動体7に設けることによって貫通した螺子孔13(螺着部11)を回動体7に対して簡易に設計実現可能となる。
【0035】
また、例えば、前記回動体7に前記ナット16を収容するナット収容スペース17を設けた構成とし、この回動体7のナット収容スペース17に前記ナット16を固定若しくは回り止め状態に設け、このナット16の前記螺子孔13と連通する挿通孔14を前記回動体7の先端部9に設ければ、回動体7の先端部9にナット16を設ける構成並びに、回動体7内に径大頭付締付ボルト10が螺入して外側に露出しない構成を簡易に設計実現可能となり、しかも固定若しくは回り止め状態のナット16は径大頭付締付ボルト10を締付回動する際に、手で回り止めする必要がないので、締付作業を簡易に行なえることになる。
【0036】
また、例えば、前記回動体7は、板材をコ字状に形成して内側にナット収容スペース17を有する構成とし、この回動体7の基端部を回動自在に前記基体3の先端部に設け、この回動体7のナット収容スペース17に前記ナット16を配設し、このナット16の外周部を前記回動体7の側壁部に設けた係止孔20に係止して回り止め状態に収容し、前記回動体7の先端部に前記挿通孔14を設ければ、ナット収容スペース17を内側に有する回動体7を簡易に設計実現可能となると共に、例えば、単に回動体7の側壁部に設けた係止孔20にナット16の外周部が嵌合するように板材を折り曲げてコ字状に形成するだけで、回動体7内のナット収容スペース17にナット16が回り止め状態で係止されるので、ナット16の脱落防止と回り止めとを簡易構成によって同時に実現できる一層実用的な構成になる。
【0037】
また、例えば、前記径大頭付締付ボルト10は、この径大頭付締付ボルト10の螺子部18の上面部に回動工具で締付回動する径大な回動操作用頭部を径大頭部12として設ければ、回動工具を用いて、簡単に締付回動操作可能な径大頭付締付ボルト10を簡易に設計実現可能になる。
【0038】
また、例えば、前記径大頭部12は、六角ナット形状頭部とすれば、既存の六角ボルトや六角ナットを回動操作可能な汎用の回動工具を用いてパイプ1の締付抱持固定作業を簡単に行なうことができる。
【実施例1】
【0039】
本発明の具体的な実施例1について図1〜図11に基づいて説明する。
【0040】
本実施例は、ビニールハウス構築用の比較的径小な丸形骨組みパイプ1を締付抱持固定する小型のパイプ抱持用クランプ30に適用したもので、パイプ1を抱持するパイプ抱持縁2を内縁に形成した基体3の基端部に、パイプ抱持縁4を内縁に形成した締付開閉体5の基端部を枢着して基体3に対して締付開閉体5を開閉自在に設け、この締付開閉体5の開閉先端部と前記基体3の先端部とを連結して前記パイプ抱持縁2・4により前記パイプ1を締付抱持する締付抱持機構6を設けている。
【0041】
詳細には、本実施例の基体3は、帯状の金属板の長手方向の両側縁を直角に折曲した断面コ字状体で構成し、この両側の直角折曲部の折曲先端縁を円弧状の前記パイプ抱持縁2としている。
【0042】
また、本実施例の締付開閉体5も、前記基体3と同様に帯状の金属板の長手方向の両側縁を直角に折曲した断面コ字状体で構成し、この両側の直角折曲部の折曲先端縁を円弧状の前記パイプ抱持縁4としている。
【0043】
この基体3と締付開閉体5の枢着構造は、基体3基端部の両側の折曲部と、締付開閉体5基端部の両側の折曲部とを重合し、この両側の重合部分に軸ピン15を貫通してカシメ止めすることで、この軸ピン15を支点(枢着軸)として、基体3に対し締付開閉体5が開閉自在となる構造としている。
【0044】
本実施例の締付抱持機構6は、前記基体3の先端部に回動自在に設けた回動体7に径大頭付締付ボルト10が螺着する螺着部11を設け、前記締付開閉体5の開閉先端部に前記径大頭付締付ボルト10を挿入する係止用切欠部8を設け、前記螺着部11に螺着した前記径大頭付締付ボルト10を締付回動することで、この径大頭付締付ボルト10の径大頭部12が前記締付開閉体5の係止用切欠部8に係止して前記パイプ1を抱持し得るように構成している。
【0045】
具体的には、回動体7は、図1,図9に示すように板材をコ字状に折り曲げ形成して両側の側壁部間の内側にナット収容スペース17を有する構成とし、このナット収容スペース17にナット16を回り止め状態に設け、このナット16の螺子孔13と連通する挿通孔14を回動体7の中間板部に貫通形成して、このナット16の螺子孔13を、前記挿通孔14を介して前記径大頭付締付ボルト10が螺動自在に貫通する前記螺子部11としている。
【0046】
更に詳しくは、回動体7の両側の側壁部に矩形状の係止孔20を形成し、この回動体7を構成する板材をコ字状に折曲形成する際に、前記ナット16として採用した六角ナット16の対向角部をこの各係止孔20に係止することで、両側の側壁部間のナット収容スペース17にナット16を回り止め状態に収容している。
【0047】
従って、板材をコ字状に折り曲げて係止孔20に汎用六角ナット16を係止するだけで、ナット収容スペース17にナット16が回り止め固定されて螺着部11を具備する回動体7を構成することができ、螺子孔の形成や溶接作業を不用にして螺着部11を具備する回動体7を極めて簡単且つコストをかけずに製造することができる。
【0048】
また、この回動体7の前記基体3先端部への取付構造は、この回動体7の前記挿通孔14を形成した中間板部を先端部9とし、両側の側壁部を基端部として、この両側壁部を前記基体3先端部の両側の折曲部に重合し、この重合部分に取付ピン22を貫通してカシメ止めすることで、この取付ピン22を支点(回動軸)として基体3の先端部に回動体7を回動自在に取付した構造としている。図中符号19は回動体7の両側壁部の基端部に形成した取付ピン22の軸受孔19である。
【0049】
従って、この螺着部11に前記係止用切欠部8に挿入した前記径大頭付締付ボルト10の螺子部18を螺着し、締付操作により深く螺入(螺動進出)させると、この螺子部18の先端部は貫通する螺子孔13から前記回動体7のナット16より基端側のナット収容スペース17へと進出することとなって、この螺子部18の先端部は外側に突出せず、この径大頭付締付ボルト10の径大頭部12だけが前記係止用切欠部8から僅かに突出する構成としている。
【0050】
また、本実施例では、ナット16の螺子孔13と連通孔14とが間隔を開けずに連通状態となるように、両側の側壁部への前記係止孔20の形成位置を設定し、これにより、連通孔14に挿入した径大頭付締付ボルト10を直ちに螺子孔13へと螺着できるようにしてこの螺着操作性を向上させている。
【0051】
本実施例の前記径大頭付締付ボルト10は、螺子部18の上面部に回動工具で締付回動可能な回動操作用頭部を径大頭部12として設けた構成としている。更に具体的には、六角頭付ボルトを採用して構成している。
【0052】
また、この径大頭付締付ボルト10の六角形状の径大頭部12は、比較的薄圧な形状を有するものを採用すると共に、詳しく図示していないがその上部周縁部をR面取りして、係止用切欠部8に締付係止した際に外側へ大きく突出せず且つ滑らかな上部周面(R面)に人やものが引っ掛り難い構成としている。
【0053】
また、前記径大頭付締付ボルト10は、この径大頭付締付ボルト10の径大頭部12の直径を前記係止用切欠部8の幅よりも大きく設定して、この径大頭部12を係止用切欠部8周囲の締付開閉体5先端部分に確実に締結係止できるように構成している。
【0054】
更に、この径大頭部12の下部には、この径大頭部12の六角周面より外方へ円盤状に突出する鍔23を設け、この六角周面より径大な鍔23により、径大頭部12を回動操作して前記締付開閉体5係止用切欠部8に係止する際に、径大頭部12の六角周面が係止用切欠部8に引っ掛かることを防止している。従って、前記締付開閉体5の係止用切欠部8に前記径大頭付締付ボルト10を挿通した状態で、回動工具を用いて前記螺着部11に締付回動する際に引っ掛かりなくスムーズに回動操作を行えることになる。また、鍔23があることで、係止用切欠部8周囲の締付開閉体5の先端部分への係止面積が拡大するのでこの径大頭部12の係止用切欠部8への係止安定性が向上することになる。
【0055】
また、この径大頭付締付ボルト10を挿入する本実施例の係止用切欠部8は、締付開閉体5の先端部の中間板部を平坦に形成すると共に、この中間板部の先端縁から締付開閉体5の基端方向に向かって長さを有するように切欠した先端側が開放する切欠部8に構成している。
【0056】
従って、例えば、この係止用切欠部8の先端開放部分から、前記回動体7の螺着部11に仮止め螺着した径大頭付締付ボルト10を、この回動体7を回動することによって挿入できるように構成し、この状態で仮止めした径大頭付締付ボルト10を締付回動すると、前記締付開閉体5と前記回動体7とを締付固定できる構成としている。
【0057】
尚、本実施例では、締付開閉体5の先端側が開放する形状の係止用切欠部8を示したが、前記径大頭付締付ボルト10の螺子部18が挿通し得る貫通孔形状の切欠部としても良い。
【0058】
また、本実施例のパイプ抱持用クランプ30は、基体3に連結孔21を設け、この連結孔21を利用して用途に応じた適宜な機器を例えばボルト・ナット止め連結して成る製品を構成しているもので、図10,図11にこの具体的な二例を示す。
【0059】
図10は、連結孔21を介して二体のパイプ抱持用クランプ30を互いに背中合わせで回動自在に連結した構造例(ダブルクランプ)を示しており、この構造例によれば、二本の骨組みパイプ1を図示したような直交状態あるいは斜設状態にして連結固定することができる。
【0060】
また、図11は、連結孔21を利用してパイプ抱持用クランプ30の反対側に張線器31を連結した構造例を示しており、この構造例によれば、縦設(支柱)パイプ1や横設パイプ1に取付けて果樹園の親線、つるの誘引線、防風・防鳥ネットの吊線,防鳥線などのワイヤを張設することができる。
【0061】
以上のように構成した本実施例によれば、パイプ抱持用クランプ30の外側に径大頭付締付ボルト10の先端部が突出することはなく、薄厚で滑らかな径大頭部12が僅かに外側へ突出しているにとどまるから、この径大頭部12に作業者や作業服や工具袋やビニールシートなどが接触しにくく、仮に接触しても怪我をしたり損傷したりすることを可及的に低減できることとなった。
【実施例2】
【0062】
本発明の具体的な実施例2について図12に基づいて説明する。
【0063】
本実施例は、前記実施例1において、螺着部11の構成を異ならせた場合である。
【0064】
即ち、本実施例の螺着部11は、前記回動体7のナット収納スペース17にナット16を収容せず、回動体7の先端部9(中間板部)の前記挿通孔14の孔縁に前記径大頭付締付ボルト10が螺着する雌螺子を刻設することで、この挿通孔14が前記螺子孔13として機能するように構成した場合を示している。
【0065】
このように螺着部11を構成した本実施例によれば、ナット16が不要となるので実施例1よりも部品点数を削減できると共に、このナット16取付作業も、ナット16取付用の係止孔20を形成する作業も不要となる。
【0066】
尚、本実施例の場合、回動体7を構成する板材にやや厚みのあるものを採用して、挿通孔14に、前記径大頭付締付ボルト10の螺子部13が良好に螺着可能な雌螺子を数条形成することが好ましい。
【0067】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【実施例3】
【0068】
本発明の具体的な実施例3について図13に基づいて説明する。
【0069】
本実施例も、前記実施例1において、螺着部11の構成を異ならせた場合である。
【0070】
即ち、本実施例の螺着部11は、回動体7の先端部9に、所謂バーリング加工によりナット収納スペース17方向に筒状に突出する前記挿通孔14を設け、この筒状の挿通孔14の孔縁(内周面)の全域に前記径大頭付締付ボルト10が螺着する雌螺子を刻設することで、この挿通孔14が前記螺子孔13として機能するように構成した場合を示している。
【0071】
このように螺着部11を構成した本実施例によれば、螺子孔13の孔長があることで、実施例2よりも前記径大頭付締付ボルト10を安定的に螺着可能である。
【0072】
また、本実施例においても、ナット16が不要となるので部品点数を削減できると共に、このナット16取付作業も、ナット16取付用の係止孔20を形成する作業も不要となる。
【0073】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【0074】
尚、本発明は、実施例1〜3に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【0075】
例えば、回動体7を、断面角形あるいは断面丸形の金属製棒状部材で構成し、この棒状の回動体7にその先端部から基端部にかけて貫通する螺子孔13を形成することで、前記螺着部11を構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1に係るパイプ抱持用クランプの斜視図である。
【図2】実施例1に係るパイプ抱持用クランプのパイプ取付状態を示す斜視図である。
【図3】実施例1に係るパイプ抱持用クランプのパイプ取付前状態の平面図である。
【図4】実施例1に係るパイプ抱持用クランプの締付開閉体を回動した状態の一部を切り欠いた状態の平面図である。
【図5】実施例1に係るパイプ抱持用クランプの回動体を回動した状態の一部を切り欠いた状態の平面図である。
【図6】実施例1に係るパイプ抱持用クランプをパイプに抱持した状態の平面図である。
【図7】実施例1に係るパイプ抱持用クランプをパイプに抱持した状態の一部を切り欠いた状態の平面図である。
【図8】実施例1に係る回動体の分解斜視図である。
【図9】実施例1に係る回動体の斜視図である。
【図10】実施例1のパイプ抱持用クランプの連結状態を示す説明図である。
【図11】実施例1のパイプ抱持用クランプに張線器を取付けた状態を示す説明図である。
【図12】実施例2に係る回動体の展開状態の斜視図である。
【図13】実施例3に係る回動体の展開状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 パイプ
2 パイプ抱持縁
3 基体
4 パイプ抱持縁
5 締付開閉体
6 締付抱持機構
7 回動体
8 係止用切欠部
9 先端部
10 径大頭付締付ボルト
11 螺着部
12 径大頭部
13 螺子孔
14 挿通孔
16 ナット
17 ナット収容スペース
18 螺子部
20 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを抱持するパイプ抱持縁を内縁に形成した基体の基端部に、パイプ抱持縁を内縁に形成した締付開閉体の基端部を枢着して基体に対して締付開閉体を開閉自在に設け、この締付開閉体の開閉先端部と前記基体の先端部とを連結して前記パイプ抱持縁により前記パイプを締付抱持する締付抱持機構を設けたパイプ抱持用クランプにおいて、前記締付抱持機構は、前記基体の先端部に回動自在に設けた回動体に径大頭付締付ボルトが螺着する螺着部を設け、前記締付開閉体の開閉先端部に前記径大頭付締付ボルトを挿入する係止用切欠部を設け、前記螺着部に螺着した前記径大頭付締付ボルトを締付回動することで、この径大頭付締付ボルトの径大頭部が前記締付開閉体の係止用切欠部に係止して前記パイプを抱持し得るように構成したことを特徴とするパイプ抱持用クランプ。
【請求項2】
前記螺着部は、前記回動体に前記径大頭付締付ボルトが螺動自在に貫通する螺子孔を設けて構成したことを特徴とする請求項1記載のパイプ抱持用クランプ。
【請求項3】
前記螺着部を構成する前記螺子孔は、ナットを前記回動体に設けて構成したことを特徴とする請求項2記載のパイプ抱持用クランプ。
【請求項4】
前記回動体に前記ナットを収容するナット収容スペースを設けた構成とし、この回動体のナット収容スペースに前記ナットを固定若しくは回り止め状態に設け、このナットの前記螺子孔と連通する挿通孔を前記回動体の先端部に設けたことを特徴とする請求項3記載のパイプ抱持用クランプ。
【請求項5】
前記回動体は、板材をコ字状に形成して内側にナット収容スペースを有する構成とし、この回動体の基端部を回動自在に前記基体の先端部に設け、この回動体のナット収容スペースに前記ナットを配設し、このナットの外周部を前記回動体の側壁部に設けた係止孔に係止して回り止め状態に収容し、前記回動体の先端部に前記挿通孔を設けたことを特徴とする請求項4記載のパイプ抱持用クランプ。
【請求項6】
前記径大頭付締付ボルトは、この径大頭付締付ボルトの螺子部の上面部に回動工具で締付回動する径大な回動操作用頭部を径大頭部として設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパイプ抱持用クランプ。
【請求項7】
前記径大頭部は、六角ナット形状頭部としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のパイプ抱持用クランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−138930(P2010−138930A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313157(P2008−313157)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(592001816)株式会社マルサ (7)
【Fターム(参考)】