説明

パイロ型ガス発生器及びガス発生剤組成物の成型体

【課題】製造がしやすく、燃焼の制御が容易で、かつガス発生器内圧力を低くできるガス発生剤組成物の成型体及びこのガス発生剤組成物の成型体を充填したガス発生器を提供する。
【解決手段】ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃によって作動する点火手段7と、複数の粒状のガス発生剤組成物の成型体4を収容する燃焼室8を有するパイロ型ガス発生器1であって、該ガス発生剤組成物の成型体4が、3つの貫通孔を有し、その孔を有する面が同一径である3つの円をそれぞれ重なり合わせた筒状をなす形状で、且つ隣り合う円の一部がそれぞれ重なりあっている形状であり、ガス発生剤組成物の成型体4の筒状の外周部が周方向に途切れず連続した形状であり、貫通孔と外周部とが非連通である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ等の自動車安全装置を作動させるために好適なガス発生剤組成物の成型体を用いたガス発生器及びガス発生剤組成物の成型体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するため、急速にエアバッグを膨張展開させるガス発生器は、ステアリングホイール内やインストルメントパネル内等に装着されたエアバッグモジュールに組み込まれている。そしてガス発生器は、コントロールユニット(作動器)からの電気信号によって点火器(スクイブ)を作動させて、この点火器からの火炎によりガス発生剤を燃焼させて、多量のガスを急激に発生させることにより、エアバッグを展開し乗員の衝突による衝撃をやわらげる働きをする。ガス発生器に要求される性能としては、有害物を含まないガスを発生すること、所望の時間内に必要十分なガスを発生させること等が挙げられる。
【0003】
一方、燃焼の安定化及び燃焼時のガス発生挙動を制御するために、ガス発生器内に配置されるガス発生剤は一定の形状に成形されている。すなわち、燃焼速度が遅いガス発生剤組成物の場合には、ガス発生剤組成物の成型体の単位形状を小さくするか、または表面積を大きくすることにより、短時間で急速なガス発生を可能にしている。逆に、燃焼速度が速いガス発生剤組成物の場合には、ガス発生剤組成物の成型体の単位形状を大きくするか、または表面積を小さくすることにより、所望のガス発生挙動を可能にしている。
【0004】
現在、ガス発生剤成型体の形状は、種々の形状が知られている。例えば、特許文献3には複合エアバッグに用いられる圧縮ガスの膨張のための熱供給を目的とした高発熱組成である多孔押出成型体が開示されている。また特許文献4には、単孔円筒状のガス発生剤成型体が開示されている。特許文献5、特許文献6には、断面形状が円であり、7孔を有するガス発生剤成型体が開示されている。特許文献7には、多孔状成型体が開示されている。
【0005】
さらに特許文献8では、19孔、37孔など多数の貫通孔を有するワングレインタイプの成型体が開示されている。特許文献9、特許文献10には、円柱のガス発生剤成型体に3つの凹部を設けたものが開示されている。また、特許文献11では、単孔円筒状の両端が閉じられたガス発生剤成型体が開示されている。
【0006】
また、特許文献1には、単孔円筒状のガス発生剤成型体の側面に燃焼抑制剤をコーティングすることにより、燃焼初期のガス発生量を制限し、燃焼が進行するに従い燃焼表面積が増加していくものが開示されている。また、特許文献2には、ガス発生特性の異なる複数のガス発生剤を一体に結合したペレットにより燃焼時間及びガス発生量を調整するものが開示されている。
【0007】
パイロ型ガス発生器として例えば、特許文献12には、単孔円筒状のガス発生剤成型体を使用して、ガス発生器作動開始から10ミリ秒の間のエアバッグの膨張速度を抑え、30乃至50ミリ秒後において十分乗員拘束をするガス発生器が開示されている。特許文献13には、助手席用ガス発生器として乗員拘束に必要なタイミングに合わせてガスを発生させることが開示されている。しかし、従来のパイロ型ガス発生器に使用するガス発生剤成型体の形状は、例えばタブレット状、ディスク状、シート状、単孔円筒状、多孔円筒状のものである。
【0008】
特許文献14には、戦車砲やロケット砲に用いられる筒状の発射薬が開示されている。当該発射薬は、エアバッグモジュール等に組み込まれるガス発生器に使用されるガス発生剤成型体ではないものの、内部に3つの貫通孔を有し、且つ貫通孔の外周部に切り欠き部を有し、上記貫通孔と外周部とが当該切り欠き部を介して連通することで外周部の一部が開口した形状とされている。
【特許文献1】特開2000−219588号公報
【特許文献2】特開2001−278690号公報
【特許文献3】特開平7−330477号公報
【特許文献4】特開平10−87390号公報
【特許文献5】特開2000−103692号公報
【特許文献6】特許第2960388号明細書
【特許文献7】特開2000−86378号公報
【特許文献8】特開2004−83304号公報
【特許文献9】特開2000−319086号公報
【特許文献10】特開2000−239092号公報
【特許文献11】国際公開第2004/048296号パンフレット
【特許文献12】特許第2963086号明細書
【特許文献13】特開2004−1613号公報
【特許文献14】特開昭56−100189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1では、成型体の側面のみに燃焼抑制剤(エポキシ樹脂等)をコーティングすることは生産性を考慮すると事実上不可能であり、エポキシ等の樹脂を用いることで、燃焼後に人体に有害な排出ガス成分を多く出すという問題がある。特許文献2では、ガス発生特性の異なる複数のガス発生剤を一体にする技術は、生産性を考慮すると大きな問題を抱えている。また、熱膨張率の異なる複数のガス発生剤を一体にすると、温度変化、経年劣化等により高信頼性を求められる自動車用エアバッグには耐えられない恐れがある。
【0010】
特許文献3の図11には、3孔形状のガスジェネラント粒子が記載されている。しかし、使用されるガスジェネラント粒子は、複合エアバッグ膨張システム用であり、パイロ型ガス発生器のものではない。そしてガスジェネラント粒子の組成は、封止された圧縮ガスのラプチャーを破壊する目的と高発熱粒子によって圧縮ガスの膨張を補う目的のものであり、発熱量が高く、ガス発生量が少ないので、エアバッグ膨張を目的とするパイロ型ガス発生器用には使用できない。
【0011】
特許文献4や11記載の貫通または非貫通の単孔形状を有するガス発生剤成型体であるが、燃焼初期のガス発生量を抑えることができる。しかし燃焼後半、つまりエアバッグが乗員を拘束するのに最適な時間付近での燃焼速度は失速していく傾向にあり、十分な拘束力を持っているとは言えない。また、近年自動車安全デバイスに対する要求が多様化していく中で、単孔円筒状のガス発生剤だけでは多種多様な要求に答えていくことができない。特許文献5、6や7では、7孔形状など多孔形状について触れられているが、3孔形状について触れられていない。また、単に円筒形状の断面に7孔など多孔を均等配置したガス発生剤成型体では、成型体の外表面及び内孔の内表面から同時に燃焼していくと、燃焼が進んでいくに従って単孔円筒状とは違って燃焼効率の悪い燃焼部ができてしまう。結果として、エアバッグが乗員を拘束するのに最適な時間付近で必要なガス発生量を得ることができず、エアバッグとして十分な拘束力を発揮できない。特許文献8記載の19孔以上の貫通孔を有するワングレインタイプのガス発生剤では、生産性が悪い。またワングレインであるので、エアバッグ用パイロ型ガス発生器として、充填する方向とガス発生器の構成に制限がある。なぜなら、点火手段からの火炎方向と成型体の貫通孔を有する軸方向が平行に配置されていなければ、最適な燃焼特性を得ることができないからである。特許文献9や10では、凹部を有しているが、貫通孔とは違い、ガス発生器に充填する際のガス発生剤の向きにより、燃焼特性が大きく左右されてしまい、燃焼特性の個体差が大きくなるという問題がある。
【0012】
特許文献12では、ガス発生剤の燃焼を初期着火段階のみを制御しており、エアバッグが乗員を拘束する段階でのガス量制御については記載されていない。特許文献13では、保護される乗員の拘束にとって最も反力の必要なタイミングに合わせてガスを供給できることが記載されているが、マスフローカーブ(質量流量速度曲線)は後半右肩下がりになっており、乗員の拘束が一番必要な時に、ガス量が減少してしまっている。また点火器1つのガス発生器では、どのような手段によってマスフローカーブ(質量流量速度曲線)の後半の面積、つまり燃焼後半のガス量を増やしたか不明瞭である。さらに、点火器2つのガス発生器では、デレイ着火することにより燃焼後半のガス量を増やしているが、点火器を二つ用いるとガス発生器の構造が複雑になり、製造コストが高くなってしまう。
【0013】
また、特許文献14には、筒状の発射薬であり、内部に3つの貫通孔を有し、且つ貫通孔の外周部に切り欠き部を有し、上記貫通孔と外周部が連通しており、開口したような形状を有するする発射薬が開示されているが、このような発射薬においては、着火した場合において、外周部及び貫通孔全体が燃焼することとなるため、燃焼時間に対してガス発生量を制御することは不可能であり、保護される乗員の拘束にとって最も反力の必要なタイミングに合わせてガスを供給することは不可能である。
【0014】
ここで、上記特許文献1乃至14に記載の技術を整理すると、上記特許文献1及び2に開示の如くのガス発生剤成型体とした場合には、製造がそもそも容易ではなく、人体に有害なガスが排出されたり、信頼性に劣るものとなってしまう問題があり、上記特許文献3に開示の如くのガスジェネラント粒子は、そもそも複合エアバッグ膨張システム用(すなわちハイブリッド型ガス発生器用)のものであり、パイロ型ガス発生器に使用されるものではないため、パイロ型ガス発生器のガス発生剤成型体にはそのまま応用できない問題があり、上記特許文献8及び14に記載の如くのガス発生剤成型体や発射薬は、ワングレインタイプのものであり、その燃焼特性は複数の粒状のガス発生剤成型体を燃焼室に充填した場合と全く異なることになるため、そもそも燃焼特性を制御するために考慮すべき事項が全く相違するものであって、複数の粒状のガス発生剤成型体を燃焼室に充填する構成のパイロ型ガス発生器のガス成型体にはそのまま応用できない問題があり、上記特許文献4乃至7及び9乃至11に記載のガス発生剤成型体とした場合には、エアバッグが乗員を拘束するのに最適な時間付近で必要なガス発生量を得ることができない問題があり、上記特許文献12及び13に開示の如くのパイロ型ガス発生器においても同様に、エアバッグが乗員を拘束するのに最適な時間付近で必要なガス発生量を得ることができない問題がある。
【0015】
以上において説明したように、従来のガス発生器は、エアバッグが乗員を拘束するのに最適な時間付近で必要なガス発生量を得ることができず、エアバッグとして十分な拘束力を発揮できない。そのため、エアバッグが乗員を拘束する段階でのガス量を増やそうとすると、ガス発生剤の充填量を増加させるか、ガス発生剤成型体の長さ、外径を増加させることによって、燃焼時間を延ばす方法がとられる。ガス発生剤充填量を増加させると、その分燃焼残渣を捕集するためにより多くの冷却フィルタ部材を必要とし、ガス発生器の重量が増大する。また、ガス発生剤充填量が増加すると、ガス発生量が多くなり、ガス発生器ハウジング内圧が増大してしまうので、強度上の問題よりハウジングの肉厚を厚くする必要があり、ガス発生器としての重量が増大するという問題がある。
【0016】
上記のごとく、ガス発生器に使用される従来のガス発生剤組成物の成型体は、製造に手間がかかったり、燃焼の制御がし難いものであった。
【0017】
本発明の目的は、製造がしやすく、燃焼の制御が容易で、ガス発生器内圧力を低くできるガス発生剤組成物の成型体の開発及びこのガス発生剤組成物の成型体を充填したガス発生器を提供することであり、ガス発生剤使用量を増やすことなく、最適な時間付近で必要なガス発生量が得られるガス発生剤組成物の成型体及びこれを備えたパイロ型ガス発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、ガス発生器としては簡易的な構造であり、エアバッグ作動初期にはガス発生量を抑制し、乗員を保護する段階に多くのガスを供給し、結果として十分乗員を保護できるエアバッグ用パイロ型ガス発生器を提供することにある。
【0019】
本発明者らは、ガス発生剤組成物の成型体の燃焼特性にガス発生剤組成物の成型体の形状が大きく影響していることに着目し、本発明を完成させるに至った。具体的には、複数の粒状のガス発生剤組成物の成型体が燃焼室に収容されてなるパイロ型ガス発生器において、エアバッグ作動初期においてガス発生量を抑制し、乗員を保護する段階において多くのガスが発生するようにするためには、ガス発生剤組成物の成型体を筒状とした場合に、燃焼に伴って燃焼面積が増加する貫通孔表面における燃焼表面積増加率と、燃焼に伴って燃焼面積が減少する筒状の外周部表面における燃焼表面積減少率とを最適化し、上記燃焼表面積増加率が上記燃焼表面積減少率よりもまさるように設計することが効果的であることを見出した。すなわち、燃焼表面積増加率が燃焼表面積減少率よりもまさることとなるようにガス発生剤組成物の成型体の形状を設計すれば、エアバッグ作動初期においてガス発生剤組成物の成型体の燃焼している部分の面積を小さく抑制することができ、その後乗員を保護する段階においてガス発生剤組成物の成型体の燃焼している部分の面積を大きくすることができる。したがって、燃焼によって生成されるガスの量も、自ずとエアバッグ作動初期において小さくなり、乗員を保護する段階において多くなることになる。
【0020】
以上の条件を満たす具体的なガス発生剤組成物の成型体の形状として、本発明者らは、3つの貫通孔を有し、その孔を有する面が同一径である3つの円をそれぞれ重なり合わせた筒状をなす形状で、且つ隣り合う円の一部がそれぞれ重なりあっている形状で、さらに筒状の外周部が周方向に途切れず連続した形状であり、上記貫通孔と上記外周部とが非連通である形状が好適であることを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は、
(1)ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃によって作動する点火手段と、複数の粒状のガス発生剤組成物の成型体を収容する燃焼室を有するパイロ型ガス発生器であって、該ガス発生剤組成物の成型体が、3つの貫通孔を有し、その孔を有する面が同一径である3つの円をそれぞれ重なり合わせた筒状をなす形状で、且つ隣り合う円の一部がそれぞれ重なりあっている形状であり、上記ガス発生剤組成物の成型体の筒状の外周部が、周方向に途切れず連続した形状であり、上記貫通孔と上記外周部とが、非連通であるパイロ型ガス発生器、
(2)ガス発生剤組成物の成型体が、図3及び図5に示すように、3つの円A,B,Cのそれぞれの中心が、他の第一の円33の円周上に存在し、且つ等間隔に配置され、隣り合う2つの円(図5中には円A,Bの重なり部分を示す)の面積の重なり部分をSとした場合、該2円A,Bの一方の円の面積に対するSの面積の割合が15%乃至50%の範囲となる形状である上記(1)に記載のパイロ型ガス発生器、
(3)また、図3及び図4に示すように3つの貫通孔が円形であり、それぞれの内孔の中心が図3に示すように他の第二の円の円周上34に存在し、且つ等間隔に配置されているガス発生剤組成物の成型体である上記(1)または(2)に記載のパイロ型ガス発生器、
(4)さらに図3に示すように、他の第一の円33と第二の円34がそれぞれ同心円の関係にあり、3つの貫通孔の中心が、図4中に示すように孔を有する面の形状を規定する3つの円A,B,Cのそれぞれの中心と該同心円の中心とを結ぶ直線L1,L2,L3上にそれぞれ存在する上記(2)または(3)に記載のパイロ型ガス発生器、
(5)また図3に示すように、他の第一の円33の直径をa、他の第二の円34の直径をbとした場合、0.5≦b/a≦1.5で表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体である上記(2)乃至(4)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(6)さらに、図3に示すように成型体の軸方向の長さをLとした場合、3mm≦L≦10mm、一つの内孔の直径をdとした場合、0.3mm≦d≦2mmで表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体である上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(7)また図3に示すように、成型体の孔を有する面の中心から最長端までの距離をDとした場合、1.5mm≦D≦4mmで表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体である上記(2)乃至(6)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(8)ガス発生剤組成物が燃料成分、酸化剤成分、成型用バインダを含有することを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(9)燃料成分が非アジド系含窒素化合物である上記(8)に記載のパイロ型ガス発生器、
(10)非アジド系含窒素化合物が、グアニジン誘導体、テトラゾール誘導体、尿素誘導体、トリアゾール誘導体、ヒドラジン誘導体、トリアジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ジシアナミド誘導体、ニトラミン化合物からなる群から選ばれる1種以上である上記(9)に記載のパイロ型ガス発生器、
(11)非アジド系含窒素化合物が、硝酸グアニジン、ニトログアニジン、5−アミノテトラゾール、5,5’−ビ−1H−テトラゾールジアンモニウム塩、5,5’−アゾビス−1H−テトラゾールアミノグアニジウム塩、アゾジカルボンアミドからなる群から選ばれる1種以上である上記(9)に記載のパイロ型ガス発生器、
(12)酸化剤成分が、金属酸化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、硝酸塩、塩基性硝酸塩および塩基性炭酸塩であることを特徴とする上記(8)乃至(11)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(13)酸化剤成分が、酸化銅、酸化鉄、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸鉄、相安定化硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、塩基性硝酸銅および塩基性炭酸銅からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とする上記(8)乃至(12)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(14)ガス発生剤組成物が、硝酸グアニジン15乃至59重量%、塩基性硝酸銅40乃至70重量%、成型用バインダ0.1乃至15重量%を含有することを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(15)ガス発生剤組成物の成型体が、プレス成型にて製造されていることを特徴とする上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(16)ガス発生剤組成物の成型体が、押出成型にて製造されていることを特徴とする上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(17)衝撃によって作動する点火手段を1つのみ有する上記(1)乃至(16)のいずれかに記載のパイロ型ガス発生器、
(18)ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃によって作動する1つの点火手段収容室と、燃焼室を有するパイロ型ガス発生器用のガス発生剤組成物の成型体であって、該ガス発生剤組成物の成型体は、上記燃焼室に複数収容が可能な粒状の形状を有し、該ガス発生剤組成物の成型体が、3つの貫通孔を有し、その孔を有する面が同一径である3つの円をそれぞれ重なり合わせた筒状をなす形状で、且つ隣り合う円の一部がそれぞれ重なりあっている形状であり、上記ガス発生剤組成物の成型体の筒状の外周部が、周方向に途切れず連続した形状であり、上記貫通孔と上記外周部とが、非連通であるガス発生剤組成物の成型体、
(19)ガス発生剤組成物が、硝酸グアニジン15乃至59重量%、塩基性硝酸銅40乃至70重量%、成型用バインダ0.1乃至15重量%を含有することを特徴とする上記(18)に記載のガス発生剤組成物の成型体、
に関する。
【0022】
なお、燃焼室に収容されるガス発生剤成型体の一部には、上述した形状と異なる異形のものが含まれていてもよい。ただし、その場合にも、燃焼室に収容されるガス発生剤成型体の全量に対する上記異形のガス発生剤成型体の量は、燃焼によって生成されるガスの発生量の特性が、本発明の目的に照らした場合に企図するところと大幅に異なることとなってしまう程度にまで大量に含まれている場合は除く。このように、燃焼室に少量含まれることとなってもよい上記異形のガス発生剤成型体としては、オートイグニッション剤、燃焼助剤、冷却剤、排出ガス改善剤等の成型体が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のパイロ型ガス発生器は、従来よりもエアバッグ作動時のガス発生器内圧力を低くできるため、燃焼残渣の捕集性が上がり、ガス発生器の燃焼残渣捕集部材を軽量化でき、さらに、ガス発生器のハウジング部材の薄肉化することが可能になり、小型で軽量なパイロ型ガス発生器を実現することができる。
【0024】
また、本発明では、ガス発生剤組成物の成型体に3つの孔を設け、その3つの孔の径、孔の位置、及び成型体の長さを適宜選択することにより、所望のガス放出速度のパイロ型ガス発生器が得られる。特に従来よりも初期のガス発生量が少なく、ガス発生量のピークを遅らせることができる。したがって、ガス発生特性が乗員保護に重要な段階にガス発生量を増やすことができ、それによって少ないガス発生剤量で、十分保護できるエアバッグを実現できる。
【0025】
なお、パイロ型ガス発生器とはガス発生剤組成物の燃焼により発生するガスによりエアバッグを展開させる器具であり、圧縮ガスの放出によりエアバッグを展開させるハイブリッド型ガス発生器とはガス発生機構が全く異なる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のパイロ型ガス発生器は、その燃焼室内にガス発生剤組成物の成型体が収容され、該ガス発生剤組成物の成型体が、3つの貫通孔を有し、その孔を有する面が同一径である3つの円をそれぞれ重なり合わせた筒状をなす形状で、且つ隣り合う円の一部がそれぞれ重なりあっている形状を有している。ここで、ガス発生剤組成物の成型体の筒状の外周部は、周方向に途切れず連続した形状であり、貫通孔と外周部とは、切り欠き等が設けられることなく非連通となっている。すなわち、ガス発生剤組成物の成型体は、3つの実質的に同径の円柱状の部材を軸線が平行となるように配置しかつこれら部材同士が互いに一部重なり合うように結合された如くの全体として略円柱状の外形を有し、上記3つの円柱状の部材に対応する部分のそれぞれに1つずつ設けられ、軸方向に沿って貫通しかつ一対の軸方向端面においてのみ開口する合計3つの貫通孔を有し、当該軸方向と直交する断面において当該貫通孔の軸線が同一円上にほぼ均等に配置されてなる形状に成形されている。ガス発生剤組成物の成型体に3つの貫通孔が開いていることで、燃焼が進行していくに従い、内孔の内表面からの燃焼表面積増加率が外表面からの燃焼表面積減少率よりまさり、結果として燃焼後半のガス量を増大させることができる。
【0027】
さらにガス発生剤組成物の成型体が、前記3つの円のそれぞれの中心が、他の第一の円の円周上に存在し、且つ等間隔に配置され、隣り合う2つの円の面積の重なり部分をSとした場合、該2円の一方の円の面積に対するSの面積の割合が15%乃至50%の範囲となる形状であることがより好ましい。つまり図5より、3つの円をそれぞれA、B、Cとした場合、AとBの重なり部分をSとすると、円Aの面積に対するSの面積の割合が15%乃至50%となるように重なり合わせるのが好ましい。前記3つの円のそれぞれの中心が、他の第一の円の円周上に存在し、且つ等間隔に配置された形状であると、ガス発生器への充填性が良くなるばかりでなく、充填されるガス発生剤の向きによって燃焼特性が左右されない。また、隣り合う2つの円の面積の重なり部分をSとした場合、該2円の一方の円の面積に対するSの面積の割合が15%以下であると、燃焼が進んでいくに従い、成型体の中心付近に燃焼効率の悪い燃焼部ができてしまう。また50%以上であっても、略円筒となってしまい、燃焼効率の悪い燃焼部ができてしまう。
【0028】
さらに3つの貫通孔が円形であり、それぞれの内孔の中心が他の第二の円の円周上に存在し、且つ等間隔に配置されているガス発生剤組成物の成型体であるのがより好ましい。貫通孔の断面形状は、角柱状、三角柱状、円形状どれでもよいが、形状安定な燃焼性能を得るためには、貫通孔は円形が望ましい。さらに、それぞれの内孔の中心が他の第二の円の円周上に存在し、且つ等間隔に配置され、他の第一の円と他の第二の円がそれぞれ同心円の関係にあり、3つの貫通孔の中心が、孔を有する面の形状を規定する3つの円のそれぞれの中心と該同心円の中心とを結ぶ直線上に存在することにより、燃焼時に表面からの燃焼表面積減少率と内孔の内表面からの燃焼表面積増加率のバランスが取れ、燃焼が進むにつれ燃焼面積が理想的に増加することができる。
【0029】
さらに、他の第一の円の直径をa、他の第二の円の直径をbとした場合、0.5≦b/a≦1.5で表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体であることが好ましい。b/aが0.5未満であると、内孔同士が成型体断面の中心側に寄った形状となり、燃焼が進んでいくに従い、燃焼効率の悪い燃焼部ができてしまう。また、b/aが1.5を超える場合も燃焼が進んでいくに従い、成型体中心部に燃焼効率の悪い燃焼部ができてしまう。
【0030】
さらに、成型体の軸方向の長さをLとした場合、3mm≦L≦10mm、一つの内孔の直径をdとした場合、0.3mm≦d≦2mmで表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体がより好ましい。成型体の軸方向の長さが3mm未満であると、燃焼が進んでも燃焼後半にガス発生量を増大させることができない。また10mmを超える場合、点火手段によってガス発生剤全体を燃焼に導くことが難しくなり、点火威力を増大させねばならないばかりでなく、ガス発生器への充填性が悪化してしまう。また、一つの内孔の直径dが0.3mm未満である場合、燃焼速度が低くなる。また、直径dが2mmを超える場合、点火手段による着火初期段階で内孔の奥まで着火され燃焼速度が高くなり、ガス発生器内圧が急激に上昇してしまい、エアバッグ作動時に乗員を拘束するのに最適な時間付近で発生ガス量が十分確保できない。なお、ガス発生特性の目的によっては、3つの内孔dの径がそれぞれ異なっていても良い。
【0031】
さらに、成型体の孔を有する面の中心から最長端までの距離をDとした場合、1.5mm≦D≦4mmで表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体が好ましい。Dの値が1.5mm未満で3つの孔を有する場合、ガス発生剤組成物の成型体自体の密度が低下してしまうばかりでなく、初期着火表面積が増大することにより、燃焼速度が高くなり、ガス発生器内圧が急激に上昇してしまい、エアバッグ作動時に乗員を拘束するのに最適な時間付近で発生ガス量が十分確保できない。Dの値が4mmを超える場合、燃焼速度が低下するばかりでなく、ガス発生器への成型体の充填性が悪くなる。
【0032】
本発明で使用する燃料成分としては、非アジド系含窒素化合物を挙げることができる。含窒素化合物としては、例えばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、尿素誘導体、トリアジン誘導体、ヒドラジン誘導体、ジシアナミド誘導体、ニトラミン化合物から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。より具体的には、5−オキソ−1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、5−アミノテトラゾール、硝酸アミノテトラゾール、ニトロアミノテトラゾール、ビテトラゾール(5,5’−ビ−1H−テトラゾール)、5,5’−ビ−1H−テトラゾールジアンモニウム塩、アゾビステトラゾール、5,5’−アゾテトラゾールジグアニジウム塩、グアニジン、ニトログアニジン、シアノグアニジン、トリアミノグアニジン硝酸塩、硝酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、炭酸グアニジン、尿素、ビウレット、アゾジカルボンアミド、カルボヒドラジド、カルボヒドラジド硝酸塩錯体、シュウ酸ヒドラジド、ヒドラジン硝酸塩錯体、アンミン錯体などを挙げることができる。これらの含窒素有機化合物の中でも、安価で反応性が良く比較的取扱いが容易であることから、尿素、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、ビテトラゾール、アゾビステトラゾール、5,5’−アゾビス−1H−テトラゾールアミノグアニジュウム塩、アゾジカルボンアミドおよび5−アミノテトラゾールから選ばれる1種以上が特に好ましい。ガス発生剤中の含窒素化合物の配合割合は、分子式中の炭素元素、水素元素及びその他の酸化される元素の数によって異なるが、通常10〜70重量%の範囲が好ましく、15〜59重量%の範囲が特に好ましい。ガス発生剤中の酸化剤の種類により、含窒素化合物の配合割合の絶対数値は異なるが、完全酸化理論量より多いと発生ガス中の微量CO濃度が増大し、完全酸化理論量及びそれ以下になると発生ガス中の微量NOx濃度が増大する。従って両者の最適バランスが保たれる範囲が最も好ましい。また、燃料成分の含有率(配合割合)が70質量%を超える場合には、低比重の燃料成分が多くなるためにガス発生組成物の真比重が減少し、例えばエアバッグ用等のガス発生器への体積当りの充填量が減少してしまう。
【0033】
本発明で使用するバインダは、ガス発生剤の燃焼挙動に大幅な悪影響を与えないものであれば何れでも使用可能である。バインダとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)、カルボキシメチルセルロースカリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート(CAB)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、グアガム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、澱粉等の多糖誘導体、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤からなる水性エマルション粘着剤、ステアリン酸塩等の有機バインダ、二硫化モリブデン、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、シリカ、アルミナ等の無機バインダを挙げることができる。バインダの配合割合はプレス成型の場合0.1乃至10重量%の範囲が好ましく、押出成型においては2〜15重量%の範囲であることが好ましい。量的には多い側でより成型体の破壊強度が強くなるが、組成物中の炭素元素及び水素元素の数が増大し、炭素元素の不完全燃焼生成物である微量COガスの濃度が増大し、発生ガスの品質を低下させ、また燃焼を阻害することから、最低量での使用が好ましい。特に15重量%を超える量では酸化剤の相対的存在割合の増大を必要とし、ガス発生化合物の相対的割合が低下し、実用できるガス発生器システムの成立が困難となる。
【0034】
本発明で使用する酸化剤成分としては、塩素酸塩、過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニウムから選ばれたカチオンを含む硝酸塩、金属酸化物、亜硝酸塩、塩基性硝酸塩および塩基性炭酸塩の少なくとも1種から選ばれた酸化剤が好ましい。塩素酸塩としては、例えば塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム等の塩素酸のアルカリ金属塩、塩素酸バリウム、塩素酸カルシウム等の塩素酸のアルカリ土類金属塩、塩素酸アンモニウム等の塩素酸塩が挙げられる。過塩素酸塩としては、例えば過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム等の過塩素酸のアルカリ金属塩、過塩素酸バリウム、過塩素酸カルシウム等の過塩素酸のアルカリ土類金属塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸鉄等の過塩素酸塩が挙げられる。硝酸塩としては、例えば硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸のアルカリ金属塩、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム等の硝酸のアルカリ土類金属塩等が金属酸化物としては、例えば酸化銅、酸化鉄などが挙げられる。塩基性硝酸塩としては、例えば塩基性硝酸銅、塩基性硝酸マンガン、塩基性硝酸鉄、塩基性硝酸モリブデン、塩基性硝酸ビスマス、塩基性硝酸セリウム等が挙げられる。塩基性炭酸塩としては、塩基性炭酸銅、塩基性炭酸コバルト、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸カルシウム、塩基性炭酸ニッケル、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、過塩素酸塩、硝酸塩または塩基性硝酸塩が好ましく、過塩素酸塩の中では、発生ガス量が高く、反応性の高い過塩素酸アンモニウムまたは過塩素酸カリウム、過塩素酸鉄が好ましい。また硝酸塩の中では、反応性及び取扱い性などの理由から、相安定化硝酸アンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる金属硝酸塩であることが好ましく、特に、相安定化硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ストロンチウムが好ましい。または、塩基性硝酸塩の中では、燃焼温度が低く、熱安定性が良い塩基性硝酸銅が好ましい。ガス発生剤中の酸化剤の配合割合は、用いられる含窒素化合物の種類と量により絶対数値は異なるが、通常25〜80重量%の範囲が好ましく、特に上記のCO及びNOx濃度に関連して40〜70重量%の範囲が好ましい。
【0035】
その他の成分としては、スラグ形成剤を配合することができる。スラグ形成剤は、ガス発生剤中の特に酸化剤成分から発生する金属酸化物とのインタラクションにより、インフレータ内のフィルターでの濾過を容易にするために添加される。スラグ形成剤としては、窒化珪素、炭化珪素、酸性白土、シリカ、ベントナイト系、カオリン系等のアルミノケイ酸塩を主成分とする天然に産する粘土、合成マイカ、合成カオリナイト、合成スメクタイト等の人工的粘土、含水マグネシウムケイ酸塩鉱物の一種であるタルク等から選ばれるものを挙げることができ、これらの中でも酸性白土又はシリカが好ましく、特に酸性白土が好ましい。スラグ形成剤が必要な場合の配合割合は2〜20重量%の範囲が特に好ましい。多すぎると線燃焼速度の低下及びガス発生効率の低下をもたらし、少なすぎるとスラグ形成能を十分発揮することができない。
【0036】
本発明のガス発生剤組成物は、燃焼調節触媒や排ガス向上剤をさらに含有していてもよい。燃焼調節触媒は、燃焼温度を下げる作用、燃焼ガス中の有毒成分濃度を低減する作用等を有し、また酸化剤としても作用するものであり、たとえば、元素周期律表の第4〜6周期元素の酸化物、アルカリ金属の過酸化物、アルカリ土類金属の過酸化物、アルカリ金属の炭酸塩などを使用できる。燃焼調節触媒を含有する場合、その好ましい含有率は1〜10重量%である。また排ガス向上剤は、主に、排ガス中の有毒成分濃度を低減する作用を有するものであり、たとえば元素周期律表の第4〜6周期元素の珪化物、ストロンチウム等の塩素中和剤などを使用できる。排ガス向上剤を含有する場合、その好ましい含有率は1〜5重量%である。燃焼調整剤としては金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト、或いはRDX、HMX、NTOといった化合火薬が使用可能である。燃焼調整剤が必要な場合の配合割合は1〜20重量%の範囲が好ましく、2〜10重量%の範囲が特に好ましい。多すぎるとガス発生効率の低下をもたらし、また、少なすぎると十分な燃焼速度を得ることができない。さらに燃焼速度を高め、着火性をより向上させるために、金属粉末、ケイ素または金属窒化物を含ませることができる。金属粉末としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、マグナリウム、チタン及びジルコニウムなどが挙げられる。金属窒化物としては、例えば、窒化珪素,窒化硼素,窒化アルミニウム,窒化マグネシウム,窒化モリブデン,窒化タングステン,窒化カルシウム,窒化バリウム,窒化ストロンチウム,窒化亜鉛,窒化ナトリウム,窒化銅,窒化チタン,窒化マンガン,窒化バナジウム,窒化ニッケル,窒化コバルト,窒化鉄,窒化ジルコニウム,窒化クロム,窒化タンタル,窒化ニオブ,窒化セリウム,窒化スカンジウム,窒化イットリウム,窒化ゲルマニウム等が挙げられる。金属粉末、ケイ素または金属窒化物の含有量は、組成物中0〜10質量%が好ましい。
【0037】
従って、本発明の実施に用いられる好ましいガス発生剤組成物は、硝酸グアニジン15乃至59重量%、塩基性硝酸銅40乃至70重量%、成型用バインダ0.1乃至15重量%である。
【0038】
本発明に使用するガス発生剤成型体の製法としては、例えばプレス成型法、押出成型法があげられる。本発明のガス発生剤組成物の製造方法の一例を説明する。前記したテトラゾ−ル類又はグアニジン類、硝酸塩又は過塩素酸塩及び塩基性硝酸塩を、まず、V型混合機、またはボールミル等に入れ、混合する。ここに、ポリビニルアルコールを水または溶媒に溶かして適量噴霧しながら混合し、湿状の薬塊を得る。この後、造粒を行い、乾燥させると強固な顆粒が得られる。これを打錠し、ガス発生剤成型体としてもよい。また、湿状の薬塊をそのまま押出成型機により、押出成型品にしてもよい。
【0039】
本発明のエアバッグ用パイロ型ガス発生器は、ガス発生剤への点火手段は、複数有してもよいが、1つの点火手段のみを有したガス発生器であることが本発明の効果を最も発揮でき、且つ構造の簡易性からコスト低減でき軽量化が可能になるので好ましい。
【0040】
本発明のパイロ型ガス発生器の構造は、特に限定されないが、運転席用エアバッグなどに好適に使用されるディスク型と助手席用、側突用エアバッグに好適に使用されるシリンダー型などがあげられる。エアバッグの作動、ガス発生器の作動に有利な、または低コスト、軽量な構造や部材を適宜選択することができる。
【0041】
本発明のガス発生器について、図1等を用いて説明する。図1はガス発生器の断面図である。本発明の一例のガス発生器1は、上蓋6と、下蓋10と、点火器2と伝火薬3が配置された中央の点火手段7と、その周囲のガス発生剤組成物の成型体4が充填された燃焼室8と、さらにクッション5と冷却フィルタ部材9とから構成されている。ガス発生器1は、主に、例えば運転席用または助手席用等の自動車等のエアバッグ装置用のものとして好適に使用される。
【0042】
ガス発生器1の構造を具体的に説明する。上蓋6及び下蓋10は、鉄、ステンレス、アルミニウム、鋼材等の金属でできている。上蓋6と下蓋10は、圧接、溶接によって接合されている。上蓋6には、複数のガス放出孔11が形成されている。ガス放出孔11を燃焼室8側から帯状のアルミニウムテ−プ等のラプチャ−部材12が貼り付けられ、燃焼室8内を密封している。
【0043】
中央に設けられている点火手段7は、周囲に複数の伝火孔15を有する有底の内筒体13と、この内筒体13内に装填された伝火薬3と、この伝火薬3に接するように設けられた点火器2とで構成されている。伝火薬3は、公知のものを用いることができ、その成分としては、B−KNO3や5−アミノテトラゾール、硝酸カリウム、合成ヒドロタルサイト、三酸化モリブデン、窒化珪素を含むものを好ましく用いることができる。内筒体13は、点火手段保持部に対しカシメ固定等の方法により固定されている。
【0044】
上蓋6及び下蓋10内には、フィルタ部材9が設けられている。冷却フィルタ部材9は、例えばメリヤス編み金網、平織金網、クリンプ織り金属線材或いは巻き金属線材の集合体を円環状に成形することによって安価に製造される。なお、用途によってフィルタを簡略化したものや、フィルタ自体を省略した構造でも良い。
【0045】
冷却フィルタ部材9の内周部内には、本発明のガス発生剤組成物の成型体4が装填されて、燃焼室8となっている。そして、これらガス発生剤組成物の成型体4が、点火手段7からの火炎及び熱粒子によって燃焼、大量のガスが発生する。
【0046】
ガス発生器1は1筒式のガス発生器として、主に運転席側のインストルメントパネル内に装着されることになるエアバッグモジュールに組み込まれる。エアバッグモジュールに取り付けられる際には、フランジ14をモジュールに固定することによって取り付けることができる。
【0047】
そして、エアバッグモジュールに組み込まれた後、ガス発生器1の点火手段7は、図示省略する車両側コネクタに接続される。
【0048】
以上のようにして、自動車に搭載されたガス発生器1は、例えば、図示省略する衝突センサが自動車の衝突を検出することで、点火手段7に接続されているスクイブ点火回路によって点火手段7が作動して、燃焼室8内のガス発生剤組成物の成型体4を燃焼させて高温ガスを発生させる。このとき、燃焼室8内は圧力が上昇する。そして、燃焼室8内で発生した高温ガスは、冷却フィルタ部材9を通過して、ラプチャー部材12を破ってガス放出孔11から放出される。高温ガスが冷却フィルタ部材9を通過する際に、ガスの冷却及び残渣の捕集がなされる。また、冷却フィルタ部材9が、燃焼室8の略全域にわたり設けられているため、冷却フィルタ部材9を有効に利用することができる。このため、十分に冷却されるとともに、残渣が十分に捕集されたガスを放出することが可能となる。
【0049】
図2は、ガス発生器16の断面図である。本発明の一例のガス発生器16は主に、側突用の例えばカーテンエアバッグ、ニーエアバッグ、ソーラックスエアバッグ等のエアバッグ装置用として好適に使用される。
【0050】
ガス発生器16の構造を具体的に説明する。図2において、ガス発生器16は、長尺円筒状のハウジング17と、ハウジング17の一端部を封止する蓋部材18と、ハウジング17の他端部を封止するとともに、ハウジング17内部側において点火器28を保持しているホルダ29と中央部にシール部材が貼付されている孔を有し、ハウジング17内を軸方向に仕切っている板部材20と、蓋部材18と板部材20との間に設けられた円筒状のフィルタ19と、板部材20と、点火器28との間に形成され、内部に本発明のガス発生剤組成物の成型体23を有している燃焼室31と、複数の孔30を有し、板部材20の孔の燃焼室31側を覆っている多孔部材22と、点火器28で発生した火炎のエネルギーを増幅する伝火薬26を収容する有底の内筒体25とを備えている。そして、ハウジング17は、フィルタ19の外周部に対応する所定位置に設けられたガス放出孔30を複数有している。なお、有底のハウジングを用いる場合は、蓋部材18は省略できる。
【0051】
ハウジング17の径は、ほぼ一定であり、スチールまたは、アルミニウム等の金属材料から形成されている。蓋部材18は、ハウジング17の軸端部において、カシメ固定されている。また、ホルダ29は、ハウジング17の他の軸端部において、カシメ固定されている。なお、ホルダ29の外周には、Oリング27が嵌められた溝が形成されている。また、ホルダ29には、ハウジング17の内部側において、突起部によって点火器28がカシメ固定されているとともに、突起部によって有底の内筒体25がカシメ固定されている。
【0052】
点火器28は、図示省略する衝突センサからの衝突信号に基づいて通電発火されて、火炎を有底の内筒体25内に噴出し、伝火薬26を着火した後、ガス発生剤組成物の成型体23を強制的に着火燃焼させるものである。また、点火器28は、ゴム等で構成の材料で構成されるOリング27を介して、ホルダ29にカシメ等の方法で固定されている。このとき、点火器28とホルダ29との界面は、Oリング27によりシール性を有する構造となる。ここで、点火器28は、その内部にセンサからの通電による電気エネルギーを、内部に含まれる火薬の燃焼エネルギーに変換する役割をもつものであるが、その外部の大半はモールドにより熱可塑性樹脂等で覆われ、電気的に絶縁されている。
【0053】
有底の内筒体25は、図2に示すように、燃焼室31の点火器28側の端部に設けられたクッション材24と内筒体25の底部と当接している。また、有底の内筒体25の開口部に形成されているフランジ部とホルダ29の突起部によってカシメ固定されている。この有底の内筒体25には、鉄などの比較的固く、熱に強いとされる金属材料を用いる。なお、一変形例として、有底の内筒体25の底部は、複数の孔が形成されているものであってもよい。
【0054】
次に、ガス発生器16の作動を説明する。図示省略する衝突センサが自動車等の衝突を検出すると、ガス発生器16の点火器28に信号を送り、点火器28内で点火薬を発火させることによって、ガス及び火炎を発生させる。点火器28内のガス及び火炎は有底の内筒体25内に噴出し、伝火薬26を効率良く着火させるとともに、本発明のガス発生剤組成物の成型体23を着火燃焼させ、高温高圧ガスを発生させる。このとき、燃焼室31内は圧力が上昇する。そして、燃焼室31内で発生した高温ガスは、シール部材が貼付されている孔を有する板部材20のシール部材を破って、冷却フィルタ部材19を通過して、ガス放出孔30から放出される。高温ガスが冷却フィルタ部材19を通過する際に、ガスの冷却及び残渣の捕集がなされる。放出したガスは、エアバッグを急速に膨張展開させる。
【0055】
本発明においてタンク燃焼試験とは以下に示す方法により行った試験である。内容積60リットルのSUS(ステンレス鋼)製タンク内に、室温においてエアバッグ用ガス発生器を固定し、タンク外からタンク内へシーリングされたケーブルをガス発生器の点火器へ接続しタンクを密閉する。さらに該シーリングケーブルを外部着火電流発生装置へ接続する。着火電流発生装置のスイッチを入れそれをトリガーとし、タンク内壁に設置された圧力センサによりデータ収集を開始する。着火電流発生装置のスイッチを入れた時間を0として、タンク内の圧力上昇変化を時間0―150ミリ秒の間をデーターロガーにて測定する。なおサンプリングレートは10kHzである。データーロガーでサンプリングしたデータをデジタル信号処理し最終的にタンク圧力−時間(kPa/ミリ秒)曲線として、ガス発生剤組成物の成型体の性能を評価する曲線を得る。本発明に於けるタンク内最大圧力とは、このタンク燃焼試験に於けるSUS製タンク内の最大圧力のことであり、またハウジング内最大内圧とはガス発生器を作動させた際のハウジング内部の最大圧力のことである。
【0056】
本発明における質量流量速度曲線は、上記のタンク燃焼試験で得られた0.1ミリ秒ごとのタンク圧力Pのデータを0.1ミリ秒ごとに微分して得られた値を用いて、上記タンク燃焼試験におけるタンク内最大圧力時に、充填されたガス発生剤組成物の成型体全量が燃焼したと仮定して、圧力からガス発生重量を算出した曲線である。なお、質量流量速度曲線とは、ガス発生器のガス放出孔からの単位時間当たりのガス放出量と、時間との関係を示す曲線である。
【実施例】
【0057】
実施例1
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え図6の断面形状となり、隣り合う2つの円の面積の重なり部分をSとした場合、該2円の一方の円の面積に対するSの面積の割合(以下、S比という)が20.1%、b/a=1、d=0.7mm、D=2.15mmに設計されたダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤成型体を長さL=3mm、5mm、6mm、9mmに裁断し、乾燥し、本発明のガス発生剤組成物の成型体1を得た。
【0058】
実施例2
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え図7の断面形状となり、S比=21.0%、b/a=1、d=0.85mm、D=2.85mmに設計されたダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤成型体を長さL=6mmに裁断し、乾燥し、本発明のガス発生剤組成物の成型体2を得た。
【0059】
実施例3
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え図6の断面形状となり、S比=20.1%、b/a=1、d=0.7mm、D=2.15mmに設計されたダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤の成型体を長さL=1mm、2mmに裁断し、乾燥しガス発生剤組成物の成型体1を得た。
【0060】
実施例4
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え図8の断面形状となり、S比=21.0%、b/a=1、d=0.25mm、D=2.85mmに設計されたダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤の成型体を長さL=6mmに裁断し、乾燥しガス発生剤組成物の成型体3を得た。
【0061】
実施例5
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え図9の断面形状となり、S比=21.0%、b/a=1、d=2.1mm、D=2.85mmに設計されたダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤の成型体を長さL=6mmに裁断し、乾燥しガス発生剤組成物の成型体4を得た。
【0062】
実施例6
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え図11の断面形状となり、S比=21.0%、b/a=1.64、d=0.85mm、D=2.85mmに設計されたダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤の成型体を長さL=6mmに裁断し、乾燥しガス発生剤組成物の成型体6を得た。
【0063】
実施例7
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え図10の断面形状となり、S比=21.0%、b/a=0.4、d=0.85mm、D=2.85mmに設計されたダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤の成型体を長さL=6mmに裁断し、乾燥しガス発生剤組成物の成型体5を得た。
【0064】
比較例1
硝酸グアニジン52質量%、塩基性硝酸銅45質量%、酸性白土:3質量%をボールミルにより乾式混合した。次に、ポリビニルアルコール:0.1質量%を、ガス発生剤組成物全量に対して、11質量%の水で希釈し、この水溶液を噴霧しながら混合し、その後湿式造粒を行い、粒径1mm以下の顆粒状にした。この顆粒を90℃で15時間乾燥した後、回転式打錠機で直径6mm、高さ1.5mmの形状にプレス成型し、その後、110℃で15時間乾燥させ、図13のペレット状のガス発生剤の成型体8を得た。
【0065】
比較例2
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え外径4mm、内径1mmのダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤組成物の成型体を長さ6.5mmに裁断し、乾燥して図14の単孔円筒状のガス発生剤の成型体9を得た。
【0066】
比較例3
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え、外径8mmの円を2つ重ねあわせた形状であり、各々の円の重なりが21%となる図15の断面形状であり、内孔0.85mmとなるダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出されたガス発生剤組成物の成型体を長さL=6mmに裁断し、乾燥し図15のような断面形状のガス発生剤の成型体10を得た。
【0067】
比較例4
硝酸グアニジン40質量%、塩基性硝酸銅51質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5質量%、ポリビニルピロリドン1.5質量%、酸性白土5質量%をロッキングミキサーで混合し、混練機で外割り18質量%のイオン交換水を加え均一に混練した。次に、前記混合物を押出機で所定の圧力を加え、図12の断面形状となり、d=0.85mm、D=2.85mmに設計されたダイスを通しながら所定の形状に押出した。押出された3孔円筒状のガス発生剤成型体を長さL=6mmに裁断し、乾燥しガス発生剤組成物の成型体7を得た。
【0068】
試験例1
本実施例、比較例で用いた図1で示されるガス発生器1に上記実施例、比較例で得られたガス発生剤組成物の成型体40gを充填した。なお、ガス発生器1は、点火装置2と伝火薬3が配置された中央の点火室7と、その周囲のガス発生剤組成物の成型体4が充填された燃焼室8と、さらにその周囲の金網5が配置された冷却フィルタ室9とから構成されている。このガス発生器1を、内容積60リットルの容器に取り付けた後、室温にてガス発生器1を作動させ、圧力曲線、ガス発生器を作動させた際のハウジング内の圧力曲線を測定した。また圧力曲線より質量流量速度曲線を算出した。なお、ガス発生器1に用いた冷却フィルタの圧損値は、1.8kPaであり、ガス放出孔の開口総面積は、0.687cm2、フィルタ重量75gである。本実施例、比較例で得られたガス発生剤組成物の成型体を試験例1によって60リットルタンク試験を行った。得られたタンク圧力−時間(kPa/ミリ秒)曲線、ガス発生器を作動させた際のハウジング内の圧力−時間(MPa/ミリ秒)曲線、質量流量速度曲線を図16〜26に示す。
【0069】
試験例2
内壁部がテフロン(登録商標)コーティングされた、60リットルタンク内に試験例1記載の通りガス発生器を作動させ、十分冷却したのちタンク内の圧力を徐々に大気開放した。次に、2リットルの蒸留水を用いてタンク内を洗浄しガス発生器外へ流出した燃焼残渣を回収した。回収した燃焼残渣混合水を110℃の恒温槽に3時間いれ、蒸留水を完全に蒸発させた後、残った固形物の重量を測定し、これをガス発生器外へ流出した燃焼残渣の重量とした。
【0070】
図16、図17、図18は以下の試験結果である。
比較例1、実施例1、比較例2で得られた長さ6mmのガス発生剤組成物の成型体8、1、9の曲線がそれぞれ、A、B、Cである。図16より、孔を有さない比較例1の成型体8(曲線A:図13の形状;ペレット状)では、燃焼が進行するにしたがい燃焼表面積が減少していくので、エアバッグが乗員を拘束するのに最適な時間(ここでは、30ミリ秒以降)付近でガス発生速度が失速してしまう。また、図17より、成型体8(曲線A)のハウジング内最大内圧が突出して高い結果となっている。また実施例1の成型体1(曲線B:図6の形状)と比較例2の成型体9(曲線C:図14の形状:単孔円筒状)を比較すると成型体1を充填したガス発生器のほうが、ハウジング内最大内圧が低い結果なのがわかる。このことからハウジングの軽量化として、厚みを薄肉化するのに最適なのは、成型体1であることがわかる。また、図18の質量流量速度曲線では、成型体8、9に比べて、本発明の成型体1のほうが、20ミリ秒以降にピークを向え速度ゼロになる時間も速い。よって、必要な時間により多くのガスを発生させ、不必要な時間領域では、燃焼終了しているので、エアバッグの性能設計が容易にできる可能性を示唆している。
【0071】
図19、図20は以下の試験結果である。
実施例1、比較例2、比較例3、比較例4で得られた長さ6mmのガス発生剤組成物の成型体1、9、10、7の曲線がそれぞれ、A、B、C、Dである。図19より、円形断面に3孔を有する成型体7(曲線D:図12の形状)、成型体10(曲線C:図15の形状:2孔)では、燃焼後のガス量が低く出力(タンク内最大内圧)が出ていないことがわかる。また、成型体1(曲線A)より成型体9(曲線B:図14の形状:単孔円筒状)のほうが、タンク内最大内圧に到達する付近で失速しているのがわかる。貫通孔の数が1つ、2つの場合では、成型体の外表面及び内孔の内表面から同時に燃焼していくと、外表面からの燃焼表面積減少率と内孔の内表面からの燃焼表面積増加率のバランスから燃焼後半、つまりエアバッグが乗員を拘束するのに最適な時間付近での燃焼速度は失速していく傾向になり、十分な拘束力を持てない可能性を示唆している。また、3つの貫通孔を有し、その孔を有する面の形状が円形の場合、成型体の外表面及び内孔の内表面から同時に燃焼していくと、燃焼が進んでいくに従い、孔の存在しない部分ができてしまい、その体積が大きいため、燃焼効率が悪くなると考えられる。また、図20より、質量流量速度曲線では、成型体7(曲線D:図12の形状)、9(曲線B:図14の形状:単孔円筒状)、10(曲線C:図15の形状:2孔)どれもそのピークに達する時間が短く、燃焼が進むにつれて、減少傾向にあるのに対して、本発明の成型体1(曲線A)では、質量流量速度のピークに達する時間が長い傾向にあることがわかる。助手席用や運転席用のガス発生器は、乗員がバッグに当たるとされる、作動20−40ms後に一定のガス放出量があることが好ましい。よって、成型体1は質量流量速度のピークが作動20−30ms後にあり、この時間帯におけるガス放出量が他の成型体より多いので、少ないガス発生剤の充填量によって同等以上のエアバッグ拘束性能がだせる可能性を示唆している。エアバッグが乗員を拘束するのに最適な時間付近のガス発生量を増加させるために、ガス発生剤の充填量を増加させると、その分燃焼残渣を捕集するためにより多くの冷却フィルタ部材を必要とし、ガス発生器の重量が増大する。また、ガス発生剤充填量が増加すると、ガス発生量が多くなり、ガス発生器ハウジング内圧が増大してしまうので、強度上の問題よりハウジングの肉厚を厚くする必要があり、ガス発生器としての重量が増大するデメリットがあるので、他の成型体より本発明の成型体1のほうが有利である。
【0072】
図21、図22は以下の試験結果である。
実施例3で得られた成型体1の長さ1mm、2mm品を試験例1の方法で評価した曲線がそれぞれA、Bである。実施例3で得られた成型体1の長さ1mm、2mm品を試験例1の方法で評価した曲線がそれぞれA、Bである。実施例1で得られた成型体1の長さ3mm、5mm、9mm品を試験例1の方法で評価した曲線がそれぞれC、D、Eである。図21より、成型体の軸方向の長さが短いほど圧力の立ち上がりが早く初期の燃焼速度が高く、逆に長いほど圧力の立ち上がりが低く、燃焼速度は緩やかになっているのがわかる。また、図22より、質量流量速度曲線では、成型体が1mm(図22曲線A)、2mm(図22曲線B)では、燃焼初期の速度が高く30ミリ秒以降の速度が著しく落ちている。また3mm(図22曲線C)、5mm(図22曲線D)、9mm(図22曲線E)の成型体1では、広範囲において質量流量速度が一定な部分が確認できる。これは、一定時間、一定量のガスが生成していることを示している。以上から、本発明の成型体1の長さが短いほど急激な燃焼になり、成型体の長さが長いほど一定時間に一定量のガス発生をすることが可能であることがわかる。成型体の長さが短いものは、サイドエアバッグ等に好適であり、長さが長いものについては、運転席用、助手席用等のエアバッグに好適である。広範囲にわたり、一定量のガスが発生することにより、エアバッグの性能設計を容易に行うことができる。すなわち、成型体1の長さを調節するだけで、種々の燃焼速度のガス発生剤組成物の成型体を製造できる。さらに少ないガス発生剤の充填量で、十分なエアバッグ拘束性能を出すことが可能になる。
【0073】
図23、図24は以下の試験結果である。
実施例5、実施例2、実施例4で得られた長さ6mmのガス発生剤組成物の成型体4、2、3の曲線がそれぞれ、A、B、Cである。図23から、成型体の外径は同じでも、内孔が0.25mmの場合(曲線C:成型体3)、燃焼速度が遅く、最大圧力、その到達時間も遅い。また、逆に内孔が2.1mmの場合(曲線A:成型体4)は、初期の燃焼速度が高くなっている。内孔が0.85mmの場合(曲線B:成型体2)は、両者の中間の曲線になっている。また、図24より、質量流量速度曲線では、成型体3(曲線C:図8の形状)、成型体4(曲線A:図9の形状)は、燃焼が進むにつれて右肩下がりに速度が減少していることがわかる。成型体2(曲線B:図7の形状)では、運転席または助手席用エアバッグの乗員保護に最適な時間付近つまり30ミリ秒(ms)以降に速度が増加していることがわかる。このことから、さらに少ないガス発生剤の充填量で、十分なエアバッグ拘束性能を出すことが可能になる。また、成型体4(曲線A)は、最大ピークが10−20msにあり、50msで燃焼が完了している点が特徴である。また成型体3(曲線C)は、120msもの長い間燃焼が続いている点が特徴である。成型体4は、スピードが要求されるサイドエアバッグへの適用が考えられ、成型体3は、歩行者保護用のエアバッグ、ロールオーバー用エアバッグ等、長時間ガスを発生させる必要のあるエアバッグへの適用が考えられる。
【0074】
図25、図26は以下の試験結果である。
実施例2、実施例7、実施例6で得られた長さ6mmのガス発生剤組成物の成型体2(b/a=1)、5(b/a=0.4)、6(b/a=1.64)の曲線がそれぞれ、A、B、Cである。図25より、b/a=0.4の成型体5(曲線B:図10の形状)、b/a=1.64の成型体6(曲線C:図11の形状)では、b/a=1の成型体2(曲線A:図2の形状)に比し、いづれも圧力の上昇が遅いが、b/a=1.64の成型体6(曲線C:図11の形状)のほうがより遅くなっている。また、図26の質量流量速度曲線より、成型体2(曲線A)では、運転席または助手席用エアバッグの乗員保護に最適な時間付近つまり30ms以降に速度が増加していることがわかる。このことから、さらに少ないガス発生剤の充填量で、十分なエアバッグ拘束性能を出すことが可能になる。成型体5(曲線B)、成型体6(曲線C)は、10−30ms付近に速度一定部分がある点、100ms以降まで燃焼が続いている点が特徴である。このことから、歩行者保護用のエアバッグ、ロールオーバー用エアバッグ等、長時間ガスを発生させる必要のあるエアバッグへの適用が考えられる。
【0075】
質量流量速度曲線について、円形断面に3孔を有する成型体7(図20曲線D:図12の形状)と内孔が0.25mmの成型体3(図24の曲線C:図8の形状)、b/a=0.4の成型体5(図26曲線B:図10の形状)を対比すると、成型体7では、質量流量速度がピークに達した後30msまでの速度の低下が大きいのに対し、成型体3、成型体5では、質量流量速度がピークに達した後30msまでの速度の低下が緩慢という特徴がある。この特徴から、長時間ガスを発生し続ける必要があるエアバッグ、例えばロールオーバー用エアバッグやカーテンエアバッグへの適用が考えられる。
【0076】
比較例1、実施例1、比較例2で得られた長さ6mmのガス発生剤組成物の成型体8、成型体1、成型体9をそれぞれ試験例2によってガス発生器外へ流出した燃焼残渣重量を測定した。成型体8、成型体1、成型体9を用いたガス発生器からの流出残渣量はそれぞれ、1.52g、0.62g、0.91gであった。以上、流出燃焼残渣と図17よりハウジング内最大内圧が高いほど、ガス発生器外へ流出した燃焼残渣量も高いことがわかる。このことから、成型体1が他の成型体8、9に比べてハウジング内最大内圧が最も低く、流出残渣も最も少ないことがわかる。
【0077】
本発明のパイロ型ガス発生器は、従来よりも初期のガス発生量が少なく、ガス発生量のピークを遅らせることができることがわかった。したがって、ガス発生特性が乗員保護に重要な段階にガス発生量を増やすことができ、それによって少ないガス発生剤量で、十分保護できるエアバッグを実現できる。また、従来よりもエアバッグ作動時のガス発生器内圧力を低くできるため、燃焼残渣の捕集性が上がり、ガス発生器の燃焼残渣捕集部材を軽量化でき、さらに、ガス発生器のハウジング部材の薄肉化することが可能になり、小型で軽量なパイロ型ガス発生器を実現することが可能になるガス発生器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】60リットルタンク試験で使用した本発明のガス発生器の一例の構造を示す要部断面模式図である。
【図2】本発明のガス発生器の他の一例の構造を示す要部断面模式図である。
【図3】本発明のガス発生器の燃焼室に収容されるガス発生剤組成物の成型体の外観図であり、aは他の第一の円の直径、bは他の第二の円の直径、dは一つの内孔の直径、Dは成型体の孔を有する面の中心から最長端までの距離、Lは成型体の軸方向の長さを示すものである。
【図4】本発明のガス発生器の燃焼室に収容されるガス発生剤組成物の成型体の孔を有する面形状を示すものである。
【図5】本発明のガス発生器の燃焼室に収容されるガス発生剤組成物の成型体を構成する面形状であり、Sは、面を構成する隣り合う2円の重なり部分を示すものである。
【図6】実施例1及び3に用いたガス発生剤組成物の成型体1の断面形状を示すものである。
【図7】実施例2に用いたガス発生剤組成物の成型体2の断面形状を示すものである。
【図8】実施例4に用いたガス発生剤組成物の成型体3の断面形状を示すものである。
【図9】実施例5に用いたガス発生剤組成物の成型体4の断面形状を示すものである。
【図10】実施例7に用いたガス発生剤組成物の成型体5の断面形状を示すものである。
【図11】実施例6に用いたガス発生剤組成物の成型体6の断面形状を示すものである。
【図12】比較例4に用いたガス発生剤組成物の成型体7の断面形状を示すものである。
【図13】比較例1に用いたガス発生剤組成物の成型体8の外観を示すものである。
【図14】比較例2に用いたガス発生剤組成物の成型体9の外観を示すものである。
【図15】比較例3に用いたガス発生剤組成物の成型体10の断面形状を示すものである。
【図16】実施例1、比較例1、2で得られた60リットルタンク燃焼試験におけるタンク圧力−時間(kPa/ミリ秒)曲線である。
【図17】実施例1、比較例1、2で得られた60リットルタンク燃焼試験におけるハウジング内の圧力−時間(MPa/ミリ秒)曲線である。
【図18】実施例1、比較例1、2で得られた60リットルタンク燃焼試験から算出した質量流量速度曲線である。
【図19】実施例1、比較例2、3、4で得られた60リットルタンク燃焼試験におけるタンク圧力−時間(kPa/ミリ秒)曲線である。
【図20】実施例1、比較例2、3、4で得られた60リットルタンク燃焼試験から算出した質量流量速度曲線である。
【図21】実施例1、3で得られた60リットルタンク燃焼試験におけるタンク圧力−時間(kPa/ミリ秒)曲線である。
【図22】実施例1、3で得られた60リットルタンク燃焼試験から算出した質量流量速度曲線である。
【図23】実施例2、4、5で得られた60リットルタンク燃焼試験におけるタンク圧力−時間(kPa/ミリ秒)曲線である。
【図24】実施例2、4、5で得られた60リットルタンク燃焼試験から算出した質量流量速度曲線である。
【図25】実施例2、6、7で得られた60リットルタンク燃焼試験におけるタンク圧力−時間(kPa/ミリ秒)曲線である。
【図26】実施例2、6、7で得られた60リットルタンク燃焼試験から算出した質量流量速度曲線である。
【符号の説明】
【0079】
1 ガス発生器
2 点火器
3 伝火薬
4 ガス発生剤成型体
5 クション
6 上蓋
7 点火手段
8 燃焼室
9 冷却フィルタ部材
10 下蓋
11 ガス放出孔
12 ラプチャ−部材
13 内筒体
14 フランジ
15 伝火孔
16 ガス発生器
17 ハウジング
18 蓋部材
19 冷却フィルタ部材
20 板部材
21 シール部材
22 多孔部材
23 ガス発生剤成型体
24 クション材
25 内筒体
26 伝火薬
27 Oリング
28 点火器
29 ホルダ
30 ガス放出孔
31 燃焼室
32 Oリング
33 第一の円
34 第二の円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃によって作動する点火手段と、複数の粒状のガス発生剤組成物の成型体を収容する燃焼室を有するパイロ型ガス発生器であって、
該ガス発生剤組成物の成型体が、3つの貫通孔を有し、その孔を有する面が同一径である3つの円をそれぞれ重なり合わせた筒状をなす形状で、且つ隣り合う円の一部がそれぞれ重なりあっている形状であり、
前記ガス発生剤組成物の成型体の筒状の外周部は、周方向に途切れず連続した形状であり、
前記貫通孔と前記外周部とは、非連通である、パイロ型ガス発生器。
【請求項2】
ガス発生剤組成物の成型体が、3つの円のそれぞれの中心が、他の第一の円の円周上に存在し、且つ等間隔に配置され、隣り合う2つの円の面積の重なり部分をSとした場合、該2円の一方の円の面積に対するSの面積の割合が15%乃至50%の範囲となる形状である、請求項1に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項3】
3つの貫通孔が円形であり、それぞれの内孔の中心が他の第二の円の円周上に存在し、且つ等間隔に配置されているガス発生剤組成物の成型体である、請求項1または2に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項4】
他の第一の円と他の第二の円がそれぞれ同心円の関係にあり、3つの貫通孔の中心が、孔を有する面の形状を規定する3つの円のそれぞれの中心と該同心円の中心とを結ぶ直線上に存在する、請求項2または3に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項5】
他の第一の円の直径をa、他の第二の円の直径をbとした場合、0.5≦b/a≦1.5で表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体である、請求項2乃至4のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項6】
成型体の軸方向の長さをLとした場合、3mm≦L≦10mm、一つの内孔の直径をdとした場合、0.3mm≦d≦2mmで表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項7】
成型体の孔を有する面の中心から最長端までの距離をDとした場合、1.5mm≦D≦4mmで表される範囲にあるガス発生剤組成物の成型体である、請求項2乃至6のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項8】
ガス発生剤組成物が燃料成分、酸化剤成分、成型用バインダを含有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項9】
燃料成分が非アジド系含窒素化合物である、請求項8に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項10】
非アジド系含窒素化合物が、グアニジン誘導体、テトラゾール誘導体、尿素誘導体、トリアゾール誘導体、ヒドラジン誘導体、トリアジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ジシアナミド誘導体、ニトラミン化合物からなる群から選ばれる1種以上である、請求項9に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項11】
非アジド系含窒素化合物が、硝酸グアニジン、ニトログアニジン、5−アミノテトラゾール、5,5’−ビ−1H−テトラゾールジアンモニウム塩、5,5’−アゾビス−1H−テトラゾールアミノグアニジウム塩、アゾジカルボンアミドからなる群から選ばれる1種以上である、請求項9に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項12】
酸化剤成分が、金属酸化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、硝酸塩、塩基性硝酸塩および塩基性炭酸塩であることを特徴とする、請求項8乃至11のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項13】
酸化剤成分が、酸化銅、酸化鉄、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸鉄、相安定化硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、塩基性硝酸銅および塩基性炭酸銅からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とする、請求項8乃至12のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項14】
ガス発生剤組成物が、硝酸グアニジン15乃至59重量%、塩基性硝酸銅40乃至70重量%、成型用バインダ0.1乃至15重量%を含有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項15】
ガス発生剤組成物の成型体が、プレス成型にて製造されていることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項16】
ガス発生剤組成物の成型体が、押出成型にて製造されていることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項17】
衝撃によって作動する点火手段を1つのみ有する、請求項1乃至16のいずれか1項に記載のパイロ型ガス発生器。
【請求項18】
ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃によって作動する1つの点火手段収容室と、燃焼室を有するパイロ型ガス発生器用のガス発生剤組成物の成型体であって、
該ガス発生剤組成物の成型体は、前記燃焼室に複数収容が可能な粒状の形状を有し、
該ガス発生剤組成物の成型体が、3つの貫通孔を有し、その孔を有する面が同一径である3つの円をそれぞれ重なり合わせた筒状をなす形状で、且つ隣り合う円の一部がそれぞれ重なりあっている形状であり、
前記ガス発生剤組成物の成型体の筒状の外周部は、周方向に途切れず連続した形状であり、
前記貫通孔と前記外周部とは、非連通である、ガス発生剤組成物の成型体。
【請求項19】
ガス発生剤組成物が、硝酸グアニジン15乃至59重量%、塩基性硝酸銅40乃至70重量%、成型用バインダ0.1乃至15重量%を含有することを特徴とする、請求項18に記載のガス発生剤組成物の成型体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−143793(P2009−143793A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285784(P2008−285784)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】