説明

パケット伝送システムおよびパケット伝送装置並びに無瞬断切替方法

【課題】
従来は、通常運用時の伝送遅延、切替時の遅延揺らぎやパケットの順序逆転、伝送帯域の占有などの問題があった。
【解決手段】
本発明は、少なくとも2つの経路を有するパケット伝送システムにおいて、送信側の伝送装置は、シーケンシャル番号付与部と、パケットをコピーして現用ルートと予備ルートとに分岐するコピー分岐部とを有し、受信側の伝送装置は、現用ルートと予備ルートの同番号のパケットで遅延量を測定する遅延測定部と、早着側の経路に遅延を挿入する遅延挿入部と、現用ルートまたは予備ルートのいずれか一方に切り替えるフレーム選択部とを有し、外部からの切替指示があった場合は、コピー分岐部はパケットを現用ルートと予備ルートの両方に出力し、遅延挿入部は、遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を早着側に挿入し、フレーム選択部は、現用ルートから予備ルートに切り替えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット伝送システムにおける冗長系の無瞬断切替技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同期回線において無瞬断で冗長系に切り替える技術が用いられていたが、近年のパケット伝送の普及により、非同期通信のパケット伝送においても無瞬断で冗長系に切り替える技術が求められている。冗長系に無瞬断で切り替えるためには、現用ルートと予備ルートの両方のルートで伝送されるパケットの位相を合わせる必要があり、早着系に遅延を挿入する方法が行われていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−232892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、無瞬断で切り替えるために現用ルートまたは予備ルートに常に遅延を挿入しておかなければならず、通常運用時の伝送遅延が増大するという問題があった。
【0005】
一方、パケット伝送における故障時の無瞬断切替技術では、送信側で両方のルートに同一パケットを送信し、受信側で先着したパケットを選択する、という先着優先方式が知られている。この先着優先方式の場合、ルート切り替え時にクライアント側に出力するパケット間隔が挿入される遅延分だけ空いたり、逆にバースト的に連続してしまうなどの遅延揺らぎが発生する。さらに、先着優先方式の場合、ルート切り替え時にパケットの順序が逆転する場合があり、上位層の通信プロトコルによってはパケットのエラーや廃棄或いはパケット再送処理などが発生し、無瞬断で切り替えを行う意味が無くなってしまうという問題があった。また、無瞬断切替を行うために常時、両方のルートにパケットを流しておくため、選択していない予備ルートの伝送帯域を常に占有してしまい帯域の使用効率が悪くなるという問題もあった。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、通常運用時の伝送遅延が少なく、遅延揺らぎやパケットの順序逆転を防止し、予備ルートの伝送帯域を占有しない、パケット伝送システムおよびパケット伝送装置並びに無瞬断切替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るパケット伝送システムは、送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間に現用ルートと予備ルートの少なくとも2つの経路を有するパケット伝送システムにおいて、前記送信側の伝送装置は、送信するパケット順に番号を付与するシーケンシャル番号付与部と、前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートとに分岐するコピー分岐部とを有し、前記受信側の伝送装置は、前記現用ルートから受信するパケットと前記予備ルートから受信するパケットの同番号のパケット間で遅延量を測定する遅延測定部と、前記現用ルートから受信するパケットまたは前記予備ルートから受信するパケットの早着側の経路に前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を挿入する遅延挿入部と、前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方のパケットに切り替えて出力するフレーム選択部とを有し、外部からの切替指示があった場合は、前記コピー分岐部は前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートの両方に出力し、前記遅延挿入部は、前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を前記現用ルートから受信するパケットまたは前記予備ルートから受信するパケットの早着側の経路に挿入し、前記フレーム選択部は、前記現用ルートから前記予備ルートに切り替えてパケットを出力することを特徴とする。
【0008】
特に、外部からの切替指示がない場合は、前記コピー分岐部は前記番号が付与されたパケットを前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方に出力し、前記遅延挿入部は、前記現用ルートまたは前記予備ルートに挿入する遅延を零にすることを特徴とする。
【0009】
また、前記遅延挿入部は、前記現用ルートに前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を挿入する時或いは前記切替後に前記予備ルートに挿入された前記遅延を零にする時に段階的に遅延量を変化させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る伝送装置は、現用ルートと予備ルートの少なくとも2つの経路を有するパケット伝送システムに用いられる伝送装置において、送信するパケット順に番号を付与するシーケンシャル番号付与部と、前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートとに分岐するコピー分岐部とを有する送信部と、前記現用ルートから受信するパケットと前記予備ルートから受信するパケットの同番号のパケット間で遅延量を測定する遅延測定部と、前記現用ルートから受信するパケットまたは前記予備ルートから受信するパケットの早着側の経路に前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を挿入する遅延挿入部と、前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方のパケットに切り替えて出力するフレーム選択部とを有する受信部とを備え、外部からの切替指示があった場合は、前記コピー分岐部は前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートの両方に出力し、前記遅延挿入部は、前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を前記現用ルートから受信するパケットまたは前記予備ルートから受信するパケットの早着側の経路に挿入し、前記フレーム選択部は、前記現用ルートから前記予備ルートに切り替えてパケットを出力することを特徴とする。
【0011】
特に、外部からの切替指示がない場合は、前記コピー分岐部は前記番号が付与されたパケットを前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方に出力し、前記遅延挿入部は、前記現用ルートまたは前記予備ルートに挿入する遅延を零にすることを特徴とする。
【0012】
また、前記遅延挿入部は、前記現用ルートに前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を挿入する時或いは前記切替後に前記予備ルートに挿入された前記遅延を零にする時に段階的に遅延量を変化させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る無瞬断切替方法は、送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間に現用ルートと予備ルートの少なくとも2つの経路を有するパケット伝送システムで用いられる無瞬断切替方法において、外部からの切替指示があった場合は、前記送信側の伝送装置では、送信するパケット順に番号を付与し、前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートとに分岐して送信し、前記受信側の伝送装置では、前記現用ルートから受信するパケットと前記予備ルートから受信するパケットの同番号のパケット間で遅延量を測定し、前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれかのパケットの早着側のルートに前記遅延量分の遅延を挿入し、前記現用ルートから前記予備ルートに切り替えてパケットを出力することを特徴とする。
【0014】
特に、外部からの切替指示がない場合は、前記送信側の伝送装置では、前記番号が付与されたパケットを前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方に出力し、前記受信側の伝送装置では、前記現用ルートまたは前記予備ルートに挿入する遅延を零にすることを特徴とする。
【0015】
また、前記受信側の伝送装置では、前記現用ルートに前記測定した遅延量分の遅延を挿入する時或いは前記切替後に前記予備ルートに挿入された前記遅延を零にする時に段階的に遅延量を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るパケット伝送システムおよびパケット伝送装置並びに無瞬断切替方法は、通常運用時の伝送遅延が無く、経路切り替え時の揺らぎやパケット順序の逆転などを防止し、更に予備ルートの伝送帯域を占有することなく、無瞬断で経路切り替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るパケット伝送システム100の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係るNode200の構成例を示す図である。
【図3】NodeAからNodeZへのパケット送信時の構成例を示す図である。
【図4】パケット伝送システム100における計画無瞬断切替の様子を示す図である。
【図5】早着系から後着系に切り替えるときのパケットの様子を示す図である。
【図6】後着系から早着系に切り替えるときのパケットの様子を示す図である。
【図7】遅延挿入および遅延削除における遅延量の制御例を示す図である。
【図8】本実施形態に係るパケット伝送システム100における切替処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る「パケット伝送システムおよびパケット伝送装置並びに無瞬断切替方法」の実施形態について詳しく説明する。
【0019】
[パケット伝送システム100の構成例]
図1は本実施形態に係るパケット伝送システム100の構成例を示す図である。図1において、パケット伝送システム100は、送信側の伝送装置(NodeA)と、受信側の伝送装置(NodeZ)とがネットワーク103を介して接続され、現用ルート103aと予備ルート103bの2つの経路を有している。また、NodeAおよびNodeZは、それぞれクライアント側のネットワークやルータなどの伝送装置に接続されている。
【0020】
図1において、NodeAの送信部201aは、クライアント側から入力するパケットを現用ルート103aおよび予備ルート103bのいずれか一方または両方を介してネットワーク103側に送信する。一方、NodeZの受信部202zは、現用ルート103aおよび予備ルート103bのいずれか一方または両方を介してネットワーク側から受信するパケットをクライアント側に出力する。
【0021】
ここで、図1では、NodeAが送信側でNodeZが受信側の場合の例を示しているが、後で説明するように、NodeZが送信側でNodeAが受信側の場合も同様である。そして、クライアント側の信号を中継するNodeAとNodeZの間はプロテクション区間として、クライアントが通信するパケットを無瞬断で伝送することが求められている。また、NodeAとNodeZは、監視制御網などを介して監視制御装置204に接続され、監視制御信号205を送受信する。そして、監視制御装置204側では、各装置状態の監視や制御がオペレータによって行われている。例えばNodeAに故障が発生した場合、NodeAから監視制御装置204に故障警報が発報される。また、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、監視制御装置204から無瞬断でのルート切替指示(計画無瞬断切替指示)がNodeAおよびNodeZに出力されると、NodeAとNodeZの間のルートが無瞬断で切り替えられる。ここで、計画無瞬断切替とは、故障時の無瞬断切替とは異なり、工事や保守点検などのために一時的に現用系から予備系にルートを切り替えるもので、予め計画した日時に監視制御装置204を操作するオペレータによって行われる。
【0022】
次に、NodeAおよびNodeZの構成について説明する。図2は、NodeAおよびNodeZに共通の伝送装置(Node200)の構成例を示している。Node200は、送信部201と、受信部202と、制御部203とを有する。尚、送信部201および受信部202は、図1のNodeAの送信部201aおよび受信部202zと同じ機能ブロックを示している。ここで、本実施形態の説明において、同じ機能ブロックであってもNodeAの機能ブロックを示す場合はアルファベット”a”、NodeZの機能ブロックを示す場合はアルファベット”z”をそれぞれ符号に付加して表記する。例えば制御部203は、NodeAでは制御部203a、NodeZでは制御部203zとそれぞれ表記する。その他のブロックについても同様である。また、NodeAおよびNodeZに共通の事項を説明する場合はアルファベットを付加せずに表記する。
【0023】
送信部201は、クライアント側から入力する送信パケットをネットワーク側に形成されたA系とB系の2つのルートのいずれか一方または両方に送信する。
【0024】
受信部202は、A系とB系の2つのルートのいずれか一方または両方を介してネットワーク側から受信するパケットをクライアント側に受信パケットとして出力する。
【0025】
ここで、A系およびB系は、例えば図1の現用ルート103aおよび予備ルート103bにそれぞれ対応する。
【0026】
制御部203は、送信部201および受信部202の動作を監視および制御し、監視制御装置204との間で故障警報や計画無瞬断切替指示などの監視制御信号205を送受信する。
【0027】
図2において、送信部201は、シーケンシャル番号付与部(SN付与部)211と、コピー分岐部212とを有する。
【0028】
SN付与部211は、制御部203の指令に応じて、クライアント側から入力する送信パケットをパケット順に番号を付与し、番号情報が格納されたパケットをコピー分岐部212に出力する。ここで、SN付与部211で常時、送信パケットにシーケンシャル番号を付与するように制御してもよいし、監視制御装置204から計画無瞬断切替指示を受けて計画無瞬断切替を実行中のみ送信パケットにシーケンシャル番号を付与するように制御してもよい。
【0029】
コピー分岐部212は、制御部203の指令に応じて、SN付与部211で番号が付与されたパケットをコピーしてA系とB系とに分岐して出力する(Bridgeと称する)。ここで、制御部203は、コピー分岐部212がパケットをA系に送信するか、B系に送信するか、或いはA系とB系の両方に送信するかを制御する。
【0030】
一方、受信部202は、遅延測定部213と、遅延挿入部214と、フレーム選択部215とを有する。
【0031】
遅延測定部213は、制御部203の指令に応じて、A系およびB系から受信する同じシーケンシャル番号が付与されたパケットの受信時刻の差から遅延量(遅延時間)を測定する。例えば、A系からシーケンシャル番号が”5”(以降、SN:5と表記する)のパケットを受信してから1秒後にB系からSN:5のパケットを受信した場合は遅延量は1秒となる。このようにして、遅延測定部213は、A系から受信するパケットとB系から受信するパケットの同番号のパケット間で遅延量を測定する。
【0032】
遅延挿入部214は、制御部203の指令に応じて、A系から受信するパケットまたはB系から受信するパケットの早着側の経路に遅延測定部213で測定した遅延量分の遅延を挿入し、フレーム選択部215に出力する。例えばA系がB系より早く同番号のパケットを受信している場合で遅延量が1秒の場合は、A系に1秒分の遅延を挿入する。これにより、A系とB系の同番号のパケットの位相を合わせることができる。
【0033】
フレーム選択部215は、制御部203の指令に応じて、監視制御装置204から指令される計画無瞬断切替指示に基づいて、A系またはB系のいずれか一方から受信するパケットに切り替えてクライアント側に出力する。例えば図1の現用ルートがA系で予備ルートがB系である場合、制御部203は、遅延挿入部214におけるA系とB系の同番号パケットの位相合わせが完了後、フレーム選択部215によりA系からB系への切り替えを行う。
【0034】
以上説明したように、図1に示した本実施形態に係るパケット伝送システム100におけるNodeAおよびNodeZは、図2のNode200のように構成される。図3は、図1に対応する図で、NodeAは送信部201aと制御部203aの部分、NodeZは受信部202zと制御部203zの部分をそれぞれ描いてあり、NodeAからNodeZへパケットを送信する場合の構成のみを示してある。尚、以下の説明ではNodeAからNodeZへパケットを送信する場合について説明するが、NodeZの送信部201zからNodeAの受信部202aにパケットを送信する場合についても同様に動作するので重複する説明は省略する。
【0035】
[計画無瞬断切替時の動作]
次に、本実施形態に係るパケット伝送システム100の計画無瞬断切替時の動作について、図3および図4を用いて説明する。尚、本実施形態に係るパケット伝送システム100は、予め決めた日時の工事や保守点検などのために、現用ルートから予備ルートに計画的に無瞬断で切り替える(計画無瞬断切替)システムである。一方、故障時に自動的に無瞬断で予備ルートに切り替える既存のシステムの場合、現用系と予備系の両方のルートに同じパケットを常時伝送していなければならず、また切替時の位相を合わせるために早着系に常に遅延を挿入していなければならなかった。このために、現用ルートが早着系である場合、常にパケットに遅延が発生するという問題があった。また、現用ルートと予備ルートの両方のルートに同じパケットを常に送信するので、帯域の使用効率が悪くなるという問題もあった。本実施形態に係るパケット伝送システム100では、計画的にオペレータによるマニュアル操作でルートを切り替える時だけ、早着系のルートに遅延を挿入するので、早着系のルートが現用ルートである場合でも通常運用時に遅延は発生しない。また、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、通常運用時は予備ルートにパケットを送信しないので、常に予備ルートを確保しておく必要がない。特に複数の現用ルートに対して同じ数の予備ルートを確保しておく必要がなく、いくつかの現用ルートに対して一つの予備ルートを共用することにより、帯域の使用効率を高めることができる。
【0036】
尚、現用ルートと予備ルート間に遅延が生じる理由は、現用系と予備系が必ずしも同じルートや装置を経由しているとは限らないからである。例えばA地点とB地点との間でパケット通信する場合、現用ルートがC地点経由で、予備ルートがD地点経由で伝送されるようなケースでは、現用ルートから受信するパケットと予備ルートから受信するパケットとの間に遅延が発生する。ここで、同時に送信された同じ番号のパケットが他のルートより早く到着するルートを早着系、逆に遅れて到着するルートを後着系と称する。
【0037】
通常動作時(監視制御装置204から計画無瞬断切替指示を受けていない状態)において、図3のNodeAの制御部203aは、クライアント側から入力する送信パケットをSN付与部211aおよびコピー分岐部212aを介してA系(現用ルート103a)からNodeZに送信する。一方、NodeZの受信部202zは、A系から受信するパケットを遅延測定部213z、遅延挿入部214zおよびフレーム選択部215zを介してクライアント側に受信パケットとして出力する。ここで、通常動作時において、遅延測定部213zおよび遅延挿入部214zは、特別な動作を行わず、NodeAから受信するパケットをそのままフレーム選択部215zに出力し、フレーム選択部215zはA系(現用ルート103a)から受信するパケットを受信パケットとしてクライアント側に出力するので、仮にB系(予備ルート103b)から何らかのパケットを受信している場合でも現用ルート103aからのみ受信するパケットを選択してクライアント側に出力する。
【0038】
このように、通常運用時においては、現用ルート103aを介してNodeAからNodeZにパケットが送信され、予備ルート103bでは送信されない。この様子を図4(a)に示す。
【0039】
ここで、本実施形態では説明がわかり易いように、通常動作時にSN付与部211aはシーケンシャル番号を付与しないものとして説明するが、常にシーケンシャル番号を付与してもよい。尚、シーケンシャル番号の発生は、例えば所定ビット長のカウンタを用いて、パケットを送信する毎にカウントアップする。この場合、カウンタの最大値までカウントアップすると再び0または1にリセットしてカウントを開始する。
【0040】
そして、図3において、NodeAの制御部203aは、監視制御装置204から計画無瞬断切替指示の監視制御信号205を受けると、SN付与部211aにシーケンシャル番号を付与するよう指令する(常時、シーケンシャル番号を付与する場合は不要)。さらに、制御部203aは、コピー分岐部212aにSN付与部211aが出力するパケットをA系とB系の両方に送信するよう指令する。NodeZの制御部203zは、A系およびB系から受信する同番号のパケットの遅延量を測定するよう遅延測定部213zに指令し、測定した遅延量分だけ早着系に遅延を挿入するように遅延挿入部214zに指令する。尚、この時点では、フレーム選択部215zは現用ルート103aのA系から受信するパケットをクライアント側に出力している。この様子を図4(b)に示す。
【0041】
そして、NodeZの制御部203zは、遅延挿入部214zがフレーム選択部215zに出力するA系とB系の同番号のパケットの位相が合った時に、フレーム選択部215zにA系(現用ルート103a)からB系(予備ルート103b)への切り替えを指令し、フレーム選択部215zは遅延挿入部214zが出力するB系のパケットをクライアント側に出力する。この様子を図4(c)に示す。
【0042】
そして、ルートの切り替えが完了後に、NodeAの制御部203aは、SN付与部211aに送信パケットへのシーケンシャル番号の付与を終了するよう指令する(常時、シーケンシャル番号を付与する場合は不要)。さらに、制御部203aは、コピー分岐部212aにSN付与部211aが出力するパケットをB系のみに送信するよう指令する。一方、NodeZの制御部203zは、遅延測定部213zおよび遅延挿入部214zに対して、B系(予備ルート103b)から受信するパケットに遅延が挿入されている場合は、これを削除してフレーム選択部215zに出力するよう指令する。さらに、制御部203zは、フレーム選択部215zに対して、B系のパケットを受信パケットとしてクライアント側に出力するよう指令する。
【0043】
このようにして、現用ルート103aから予備ルート103bへ切り替え後は、予備ルート103bを介してNodeAからNodeZにパケットが送信され、現用ルート103aで受信するパケットは送信されない。この様子を図4(d)に示す。
【0044】
[早着系から後着系に切り替える場合]
次に、早着系から後着系に切り替える場合の動作について詳しく説明する。ここでは、現用ルート103aが早着系、予備ルート103bが後着系とする。
【0045】
図5(a)は、監視制御装置204から計画無瞬断切替指示が発行された時の様子を示している。図5(a)において、送信部201のSN付与部211は、クライアント側から入力するパケットにシーケンシャル番号を付与し、コピー分岐部212は、現用ルート103aおよび予備ルート103bの両方から送信する。そして、受信側のフレーム選択部215で両方の経路から受信するパケットのうち現用ルート103aから受信するパケットを選択してクライアント側に出力する。ここで、遅延測定部213は、例えば現用ルート103aでシーケンシャル番号:5(以降、SN:5と表記する)のパケットが受信された時に予備ルート103bではSN:2のパケットが受信されているので、3パケット分の遅延時間を遅延量として測定する。
【0046】
そして、遅延挿入部214は、早着系の現用ルート103aから受信するパケットを内部のバッファに一時的に蓄積し、バッファから溢れたパケットをフレーム選択部215に出力することにより遅延を挿入する。この時、遅延挿入部214は、バッファの深さを変えることにより、遅延時間を制御する。例えばバッファの深さを1パケット分にすると、2パケット目が入った時に最初のパケットがフレーム選択部215に出力される。次に、バッファの深さを2パケット分にすると、3パケット目が入った時に最初のパケットがフレーム選択部215に出力される。このように、バッファの深さを徐々に深くすることにより、フレーム選択部215からクライアント側に出力されるパケットの間隔が急に空いてしまうことを防止できる。この様子を図5(b)に示す。図5(b)の例では、早着系のパケットを蓄積するバッファは2パケット分の深さがあり、SN:7,8の2つパケットが蓄積され、バッファから溢れたSN:6のパケットがフレーム選択部215からクライアント側に出力される。この場合、先にクライアント側に出力されているSN:5のパケットから約2パケット分だけ遅延してSN:6のパケットがクライアント側に出力される。
【0047】
さらに、図5(c)は、バッファの深さを4パケット分にした時の様子を示している。図5(c)の例では、早着系のSN:8,9,10,11の4つパケットがバッファに蓄積され、バッファから溢れたSN:7のパケットがフレーム選択部215からクライアント側に出力される。この場合、先にクライアント側に出力されているSN:6のパケットから約4パケット分だけ遅延してSN:7のパケットがクライアント側に出力される。
【0048】
このようにして、遅延挿入部214は、遅延測定部213が測定した遅延量になるまで徐々に早着系の受信パケットを遅延させてフレーム選択部215に出力する。そして、遅延量分だけ遅延させると、早着系と後着系のパケットの位相が合うので、フレーム選択部215は早着系の受信パケットから後着系の受信パケットに切り替えてクライアント側に出力する。例えば図5(c)の時点で早着系および後着系からフレーム選択部215に入力される次のパケットは両系共にSN:8なので、フレーム選択部215は早着系(現用ルート103a)から後着系(予備ルート103b)の受信パケットに切り替え、SN:8のパケットをクライアント側に出力する(図5(d))。
【0049】
SN:9以降のパケットは、図5(e)に示すように、B系(予備ルート103b)から受信するパケットが選択されてクライアント側に出力される。
【0050】
そして、切替完了後、受信側の制御部203は計画無瞬断切替完了の通知を監視制御装置204に出力する。さらに、監視制御装置204は、送信側の制御部203に計画無瞬断切替完了を通知し、これを受けた送信側の制御部203は、A系とB系の両方にパケットを送信していたコピー分岐部212に指令して、A系(現用ルート103a)への送信を停止させ、B系(予備ルート103b)からのみパケットを送信する。
【0051】
尚、上記の説明では、バッファの深さを変えて遅延時間を制御するようにしたが、バッファの深さではなくパケットをバッファに蓄えておく時間を変えるようにしても構わない。例えば、SN:7のパケットは1msec遅らせてクライアント側に出力し、次のSN:8のパケットは2msec遅らせてクライアント側に出力し、同様にSN:9のパケットは3msec、SN:10のパケットは4msecのように、バッファに蓄えておく時間を少しずつ長くしていき、遅延測定部213が測定した遅延量と同じ時間になるまで繰り返す。
【0052】
また、説明がわかり易いように、位相が合った時点で直ぐにルートを切り替えるようにしたが、位相が合った後、動作が安定するまで暫く待ってからルートを切り替えるようにしても構わない。
【0053】
このように、早着系(現用ルート103a)から後着系(予備ルート103b)に切り替える場合、クライアント側に出力する現用ルート103aのパケット間隔を徐々に広げていくので、急激にパケット間隔が空いてしまうことを防止できる。尚、急激にパケット間隔が空いてしまった場合、例えば定期的に受信するパケットが受信できないなどの理由により、クライアント側のシステムによってはエラーになってしまうという問題が生じる。
【0054】
[後着系から早着系に切り替える場合]
次に、後着系から早着系に切り替える場合の動作について詳しく説明する。ここでは、現用ルート103aが後着系、予備ルート103bが早着系とする。
【0055】
図6(a)は、監視制御装置204から計画無瞬断切替指示が発行された時のパケットの流れを示している。計画無瞬断切替指示が発行されると、送信部201のSN付与部211はパケットにシーケンシャル番号を付与し、コピー分岐部212は現用ルート103aおよび予備ルート103bの両方から送信する。そして、受信側のフレーム選択部215で両方の経路から受信するパケットのうち現用ルート103aから受信するパケットを選択してクライアント側に出力する。ここで、遅延測定部213は、例えば現用ルート103aでSN:2のパケットが受信された時に予備ルート103bではSN:5のパケットが受信されているので、3パケット分の遅延時間を遅延量として測定する。
【0056】
そして、遅延挿入部214は、早着系の予備ルート103bから受信するパケットを内部のバッファに一時的に蓄積する。この時、バッファに蓄積される早着系(予備ルート103b)のパケットのSNと後着系(現用ルート103a)のパケットのSNとが一致する(位相が合う)まで、早着系のパケットをバッファに蓄積する。尚、ここでは、パケットをクライアント側に流していない予備ルートから受信するパケットなので先の現用ルートのように徐々にバッファリングする必要はない。図6(a)の例では、後着系のSN:5のパケットが来るまで早着系のSN:5のパケットからSN:8のパケットまでがバッファに蓄積される。この様子を図6(b)に示す。図6(b)では、バッファに蓄積された早着系のSN:5のパケットと後着系から受信するSN:5のパケットとの位相が合っているので、この時点でフレーム選択部215は、後着系(現用ルート103a)から早着系(予備ルート103b)に切り替え、予備ルート103bのSN:5のパケットをクライアント側に出力する(図6(c))。尚、後着系のSN:5のパケットは廃棄される。
【0057】
このようにして、遅延挿入部214は、遅延測定部213が測定した遅延量になるまで早着系の受信パケットをバッファに蓄積して位相合わせを行い、フレーム選択部215は後着系から早着系の受信パケットに切り替えてクライアント側に出力する。
【0058】
SN:6以降のパケットについても、フレーム選択部215は、B系(予備ルート103b)から受信するパケットを選択してクライアント側に出力する。
【0059】
ここで、遅延測定部213のバッファに蓄積されているパケットを一気にクライアント側に送出すると、バースト的に連続したパケットがクライアント側に流れることになり、クライアント側の装置で処理が間に合わなかったり、受信バッファが溢れるなどの問題が発生する恐れがある。そこで、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、制御部203は、バッファに蓄積されているパケットを徐々にクライアント側に出力するよう制御する。
【0060】
例えば図6(d)は、SN:5からSN:12までの早着系のパケットの流れを示した図で、上段は送信側から受信する本来のパケット間隔を示し、ほぼ等間隔にクライアント側に出力されている。中段は従来の例を示し、バッファに蓄積されていたパケット(SN:5からSN:8までのパケット)は一気にクライアント側に出力されている。下段は本実施形態の例を示し、バッファの遅延時間を徐々に減少させながらクライアント側にパケットを出力して、SN:12のパケットで本来のパケット間隔に戻っている。
【0061】
このように本実施形態に係るパケット伝送システム100では、バースト的にクライアント側にパケットが出力されるのを防ぐことができる。
【0062】
尚、図6(c)で後着系(現用ルート103a)から早着系(予備ルート103b)への切り替えを完了すると、受信側の制御部203は計画無瞬断切替完了の通知を監視制御装置204に出力する。そして、監視制御装置204は、計画無瞬断切替完了の通知を送信側の制御部203に出力し、これを受けた送信側の制御部203は、A系とB系の両方にパケットを送信していたコピー分岐部212に指令して、A系(現用ルート103a)への送信を停止させ、B系(予備ルート103b)からのみパケットを送信する。
【0063】
また、上記の説明では、位相が合った時点で直ぐにルートを切り替えるようにしたが、位相が合った後、動作が安定するまで暫く待ってからルートを切り替えるようにしても構わない。
【0064】
このようにして、現用ルート103aから予備ルート103bへの無瞬断での切り替えを終了する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、計画的にルートを切り替える時だけ遅延を挿入するので、通常運用時に遅延が発生しない。また、通常運用時は予備ルートにパケットを送信しないので、常に予備ルートを確保しておく必要がなく、また、複数の現用ルートに対して同じ数の予備ルートを確保しておく必要もなく、帯域の使用効率を高めることができる。さらに、位相合わせの際にバッファに蓄積されたパケットをバースト的にクライアント側に出力するのではなく、挿入された遅延時間が徐々に零になるように制御するので揺らぎが抑制され、クライアント側におけるバッファ溢れなどの問題を回避できる。また、先着優先方式という方法が知られているが、この方式の場合、ルート切替時に位相がずれていると、パケットの逆転や重複が生じる場合がある。これに対して、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、位相合わせを行った後でルートの切り替えを行うので、パケットの逆転や重複が生じることはない。
【0066】
尚、実際の伝送装置では、パケット送受信処理を行うために多少のバッファリングを行っているので、パケットの遅延は完全には零にはならないが、本実施形態の説明ではこのような処理の遅延などは無いものとする。
【0067】
[遅延量の調整方法]
次に、パケットを遅延させる場合の遅延量の調整方法について説明する。本実施形態に係るパケット伝送システム100では、早着系のパケットを遅延させるために受信したパケットをバッファに蓄積するが、現用ルート103aが早着系の場合、クライアント側に出力するパケットの間隔が急に空かないように徐々にバッファに蓄積して遅延させる。図7(a)は、遅延挿入開始から遅延挿入終了までの挿入遅延量の変化を示したグラフである。図7(a)のグラフにおいて、通常動作時は挿入遅延量が0なのでパケットは遅延なく伝送され、計画無瞬断切替指示が発行されると遅延挿入部214は遅延の挿入を開始し、徐々に挿入遅延量を増加させて、遅延測定部213が測定した遅延量になった時点で挿入遅延量の増加を停止する。挿入遅延量は、グラフ301に示すように、時間に比例して挿入遅延量を増加させても構わないが、グラフ302に示すように、段階的に挿入遅延量を変化させても構わない。先に説明したように、バッファの深さを1パケット単位で深くすることによって挿入遅延量を調整する場合は、グラフ302に示すように、時間に対して段階的に挿入遅延量が変化する。尚、切替先の予備ルート103bが早着系の場合、バッファに蓄積するパケットはクライアント側に出力されないので、位相が合うまで一気にバッファに蓄積しても構わない。
【0068】
次に、図7(b)は、無瞬断切り替え後に、バッファに蓄積されたパケットをクライアント側に出力する時に、早着系に挿入された遅延を徐々に零に戻す場合の遅延削除開始から遅延削除終了までの挿入遅延量の変化を示したグラフである。図7(b)のグラフにおいて、切り替え直後の挿入遅延量は遅延測定部213が測定した遅延量になっている。そして、無瞬断切り替えが完了して、バッファに蓄積されているパケットをクライアント側に出力する時に、徐々に挿入遅延量が零になるように制御し、挿入遅延量が零になった時点で挿入削除を停止する。挿入遅延量は、グラフ303に示すように、時間に比例して挿入遅延量を減少させても構わないが、グラフ304に示すように、段階的に挿入遅延量を変化させても構わない。
【0069】
尚、切替先の予備ルート103bが後着系の場合は、切替後の予備ルート103bに遅延が挿入されていないので、切り替え後の遅延削除は不要である。
【0070】
[計画無瞬断切替処理]
次に、計画無瞬断切替処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。尚、図8のフローチャートは、図3において、監視制御装置204からNodeAおよびNodeZに対して計画無瞬断切替指示が発行された時の送信側のNodeAおよび受信側のNodeZで行われる処理を示している。
【0071】
(ステップS101)送信側のNodeAでは、送信部201aのSN付与部211aがクライアント側から入力する送信パケットにシーケンシャル番号を付与し、コピー分岐部212aでシーケンシャル番号が付与された送信パケットをコピーして現用ルート103aおよび予備ルート103bの両方の経路に送信する。
【0072】
(ステップS102)受信側のNodeZでは、受信部202zの遅延測定部213zが現用ルート103aおよび予備ルート103bの両方の経路から受信する同じシーケンシャル番号のパケットの遅延量を測定する。
【0073】
(ステップS103)受信部202zの遅延挿入部214zは、現用ルート103aと予備ルート103bのどちらが早着系かを判別する。早着系の判別方法として、例えば遅延測定部213zが遅延量を測定する時に、現用ルート103aでパケットを受信した時刻から予備ルート103bで同じSNのパケットを受信した時刻を減算した値が正であるか負であるかを判別することにより、早着系を知ることができる。この場合、減算値が正の時は予備ルート103bが早着系、減算値が負の時は現用ルート103aが早着系であると判別できる。
【0074】
そして、予備ルート103bが早着系の場合はステップS104に進み、現用ルート103aが早着系の場合はステップS105に進む。
【0075】
(ステップS104)受信部202zの遅延挿入部214zは、予備ルート103bに遅延を挿入して現用ルート103aに位相を合わせる。
【0076】
(ステップS105)受信部202zの遅延挿入部214zは、現用ルート103aに遅延を挿入して予備ルート103bに位相を合わせる。この時、図7(a)で説明したように、段階的に遅延を挿入して位相合わせを行う。
【0077】
(ステップS106)受信部202zのフレーム選択部215zは、現用ルート103aから予備ルート103bに切り替えて、予備ルート103bから受信するパケットをクライアント側に出力する。
【0078】
ここで、受信部202zの制御部203zは、監視制御装置204に切替完了通知を送信する。そして、切替完了通知を受信した監視制御装置204は、送信側のNodeAに切替完了通知を送信する。これを受けて、NodeAは、受信側のNodeZで経路の切り替えを完了したことを認識する。
【0079】
(ステップS107)監視制御装置204から切替完了通知を受け取った送信側のNodeAにおいて、送信部201aのコピー分岐部212aは、現用ルート103aへの送信を停止して、予備ルート103bのみにパケットを送信する。また、計画無瞬断切替指示に対する処理を行っている間だけシーケンシャル番号の付与を行う場合、SN付与部211aはシーケンシャル番号の付与を停止する。尚、常時、シーケンシャル番号を付与する場合、SN付与部211aの動作は継続する。
【0080】
(ステップS108)切り替えが完了した受信側のNodeZにおいて、受信部202zの遅延挿入部214zは、遅延を挿入した経路が切り替え先の予備ルート103bであるか否かを判別し、予備ルート103bである場合はステップS109に進み、予備ルート103bでない場合は処理を終了する。
【0081】
(ステップS109)受信部202zの遅延挿入部214zは、切り替え先の予備ルート103bに挿入した遅延を除去する。この時、図7(b)で説明したように、段階的に遅延を削除して全ての遅延を取り除く。
【0082】
このように、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、通常運用時の伝送遅延が無く、経路切り替え時の揺らぎやパケット順序の逆転などを防止し、更に予備ルートの伝送帯域を占有することなく、無瞬断で経路の切り替えを行うことができる。
【0083】
尚、本実施形態では、「計画無瞬断切替」を行うことを前提として説明したが、故障時の切替に対応できるように、送信部201のSN付与部211は常に送信パケットにシーケンシャル番号を付与し、コピー分岐部212は現用ルート103aと予備ルート103bの両方にパケットを送信するようにしてもよい。
【0084】
以上、説明してきたように、本発明に係るパケット伝送システムおよびパケット伝送装置並びに無瞬断切替方法は、以下のような効果が得られる。
【0085】
従来の故障時無瞬断切替では、常時、両方の経路にパケットを流しておくため、選択していない経路の伝送帯域を占有し、帯域の使用効率が悪くなるという問題があった。これに対して、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、無瞬断切替を実施しない通常運用時に、予備ルート103bへパケットを送信しないことにより、使用していない予備ルート103bの伝送帯域を占有することなく、伝送路の帯域効率を上げることができる。
【0086】
また、従来の故障時無瞬断切替では、位相を合わせるために予めどちらか一方のルートに遅延を常時挿入しておかなければならなかった。この方法をそのまま計画的な無瞬断切替に用いた場合、常時、遅延が挿入されているためパケットの伝送遅延が問題であった。これに対して、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、計画無瞬断切替を実施しない通常運用時には、位相を合わせるための遅延を加えないので、伝送遅延を小さくすることができる。
【0087】
さらに、従来の先着優先方式では、経路切替時にクライアント側に出力するパケットの間隔が2つの経路間の遅延差分だけ空いたり、逆にバースト的に連続してしまうなどの遅延揺らぎが発生してしまうという問題があった。これに対して、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、計画無瞬断切替を実施する時に、遅延量を少しずつ変化させるので、クライアント側に出力するパケットの間隔が経路間の遅延差分だけ空いたり、逆にバースト的に連続してしまうような遅延揺らぎが発生しない。
【0088】
また、先着優先方式の場合、経路切替時にパケットの順序が逆転する場合があり、上位層の通信プロトコルの処理によってはパケット廃棄やパケット再送処理が発生する等、無瞬断で切り替える本来の意味がなくなってしまうという問題があった。これに対して、本実施形態に係るパケット伝送システム100では、切替時以外は現用ルートまたは予備ルートのいずれかの経路にしかパケットを送信せず、位相合わせを行った後で切り替えを行うのでパケットの順序が逆転することはない。
【0089】
尚、本発明に係るパケット伝送システムおよびパケット伝送装置並びに無瞬断切替方法について、各実施例を挙げて説明してきたが、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の多様な形で実施することができる。そのため、上述した実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0090】
100・・・パケット伝送システム
103・・・ネットワーク
103a・・・現用ルート
103b・・・予備ルート
200,A,Z・・・Node
201・・・送信部
202・・・受信部
203・・・制御部
204・・・監視制御装置
205・・・監視制御信号
211・・・SN付与部
212・・・コピー分岐部
213・・・遅延測定部
214・・・遅延挿入部
215・・・フレーム選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間に現用ルートと予備ルートの少なくとも2つの経路を有するパケット伝送システムにおいて、
前記送信側の伝送装置は、
送信するパケット順に番号を付与するシーケンシャル番号付与部と、
前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートとに分岐するコピー分岐部と
を有し、
前記受信側の伝送装置は、
前記現用ルートから受信するパケットと前記予備ルートから受信するパケットの同番号のパケット間で遅延量を測定する遅延測定部と、
前記現用ルートから受信するパケットまたは前記予備ルートから受信するパケットの早着側の経路に前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を挿入する遅延挿入部と、
前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方のパケットに切り替えて出力するフレーム選択部と
を有し、
外部からの切替指示があった場合は、
前記コピー分岐部は前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートの両方に出力し、
前記遅延挿入部は、前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を前記現用ルートから受信するパケットまたは前記予備ルートから受信するパケットの早着側の経路に挿入し、
前記フレーム選択部は、前記現用ルートから前記予備ルートに切り替えてパケットを出力する
ことを特徴とするパケット伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載のパケット伝送システムにおいて、
外部からの切替指示がない場合は、
前記コピー分岐部は前記番号が付与されたパケットを前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方に出力し、
前記遅延挿入部は、前記現用ルートまたは前記予備ルートに挿入する遅延を零にする
ことを特徴とするパケット伝送システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパケット伝送システムにおいて、
前記遅延挿入部は、前記現用ルートに前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を挿入する時或いは前記切替後に前記予備ルートに挿入された前記遅延を零にする時に段階的に遅延量を変化させる
ことを特徴とするパケット伝送システム。
【請求項4】
現用ルートと予備ルートの少なくとも2つの経路を有するパケット伝送システムに用いられる伝送装置において、
送信するパケット順に番号を付与するシーケンシャル番号付与部と、
前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートとに分岐するコピー分岐部と
を有する送信部と、
前記現用ルートから受信するパケットと前記予備ルートから受信するパケットの同番号のパケット間で遅延量を測定する遅延測定部と、
前記現用ルートから受信するパケットまたは前記予備ルートから受信するパケットの早着側の経路に前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を挿入する遅延挿入部と、
前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方のパケットに切り替えて出力するフレーム選択部と
を有する受信部と
を備え、
外部からの切替指示があった場合は、
前記コピー分岐部は前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートの両方に出力し、
前記遅延挿入部は、前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を前記現用ルートから受信するパケットまたは前記予備ルートから受信するパケットの早着側の経路に挿入し、
前記フレーム選択部は、前記現用ルートから前記予備ルートに切り替えてパケットを出力する
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の伝送装置において、
外部からの切替指示がない場合は、
前記コピー分岐部は前記番号が付与されたパケットを前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方に出力し、
前記遅延挿入部は、前記現用ルートまたは前記予備ルートに挿入する遅延を零にする
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の伝送装置において、
前記遅延挿入部は、前記現用ルートに前記遅延測定部が測定した遅延量分の遅延を挿入する時或いは前記切替後に前記予備ルートに挿入された前記遅延を零にする時に段階的に遅延量を変化させる
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項7】
送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間に現用ルートと予備ルートの少なくとも2つの経路を有するパケット伝送システムで用いられる無瞬断切替方法において、
外部からの切替指示があった場合は、
前記送信側の伝送装置では、送信するパケット順に番号を付与し、前記番号が付与されたパケットをコピーして前記現用ルートと前記予備ルートとに分岐して送信し、
前記受信側の伝送装置では、前記現用ルートから受信するパケットと前記予備ルートから受信するパケットの同番号のパケット間で遅延量を測定し、前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれかのパケットの早着側のルートに前記遅延量分の遅延を挿入し、前記現用ルートから前記予備ルートに切り替えてパケットを出力する
ことを特徴とする無瞬断切替方法。
【請求項8】
請求項7に記載の無瞬断切替方法において、
外部からの切替指示がない場合は、
前記送信側の伝送装置では、前記番号が付与されたパケットを前記現用ルートまたは前記予備ルートのいずれか一方に出力し、
前記受信側の伝送装置では、前記現用ルートまたは前記予備ルートに挿入する遅延を零にする
ことを特徴とする無瞬断切替方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の無瞬断切替方法において、
前記受信側の伝送装置では、前記現用ルートに前記測定した遅延量分の遅延を挿入する時或いは前記切替後に前記予備ルートに挿入された前記遅延を零にする時に段階的に遅延量を変化させる
ことを特徴とする無瞬断切替方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−5210(P2013−5210A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134000(P2011−134000)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】