説明

パターン位相差フィルムの評価方法

【課題】パターン位相差フィルムの領域の寸法及び形状を簡単に評価できる評価方法を提供する。
【解決手段】クロスニコル状態で配置された一対の直線偏光板若しくは円偏光板と、一対の直線偏光板若しくは円偏光板の間に設けられたパターン位相差フィルムと、一対の直線偏光板若しくは円偏光板の一方のパターン位相差フィルムとは反対側に設けられた光源と、一対の直線偏光板若しくは円偏光板の他方のパターン位相差フィルムとは反対側又は一対の直線偏光板若しくは円偏光板の一方と前記光源との間に設けられたマスクとを備え、パターン位相差フィルムが位相差が異なる複数種類の領域を有し、マスクが遮光部及び透光部を備える評価系において、光源を光らせた状態で、マスクの光源とは反対側から、光源が発した光を観察する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン位相差フィルムの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のある態様として、画素と位置合わせされた状態で設けられた、特定のパターンを有する位相差フィルムを備えるものが知られている。例えば、パッシブ形式の立体画像表示装置では、通常、同一画面内に右目用の画像と左目用の画像とを同時に表示させ、これらの画像を専用のメガネを用いて左右の目それぞれに振り分けるようにしている。そのため、パッシブ形式の立体画像表示装置には、右目用の画像及び左目用の画像のそれぞれを、異なる偏光状態で表示させることが求められる。そのような表示を達成するため、パッシブ形式の立体画像表示装置には、2種類以上の異なる位相差(レターデーション)を有する複数種類の領域からなるパターンを有する位相差フィルムが設けられることがある(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−193014号公報
【特許文献2】特許第4363029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のようなパターンを有する位相差フィルムは、従来、ガラス板等の剛性の高い基材の表面に設けられることが多かった。しかし近年、製造効率の向上等の有利な効果を得るための改良として、上に述べたパターンを有する位相差フィルムを、可撓性の基材フィルムに設けることが考えられる。具体例を挙げると、このような可撓性の基材フィルムに設けたパターンを有する位相差フィルムを、斜め延伸された位相差フィルムに貼り合わせて長尺の位相差板を形成し、これを、液晶パネルに連続的に貼り合わせる製造が可能となれば、1/4波長板とパターンを有する位相差フィルムとを同時に簡単に設けることができ、製造効率を著しく高め、且つ製造コストを著しく低減させ、且つ得られる液晶表示装置を軽量化しうることが期待される。
【0005】
パターンを有する位相差フィルムと液晶パネルとの位置合わせは、当該位相差フィルムのパターンを構成する各領域が画素に精密に対応するよう行うことが求められる。具体的には、上で述べたパッシブ形式の立体画像表示装置の例では、右目用の画素と左目用の画素との境界のブラックマトリックス上に、前記のパターンを構成する領域間の境界が位置するような配置を、表示面全面において達成することが求められる。
【0006】
ところが、可撓性の基材フィルムを用いた場合には、寸法安定性及び形状安定性が低いため、前記のパターンを構成する領域の寸法又は形状が、設計どおりにならないことがある。そのような設計どおりでないパターンを有する位相差フィルムを液晶パネルと貼り合わせても、製品として十分な品質を有する液晶表示装置は得られない。そのため、パターンを有する位相差フィルムを液晶パネルと貼り合わせる前に、当該パターンを有する位相差フィルムの前記領域の寸法及び形状を評価し、液晶パネルとの貼り合わせを適切に行えるものか否かを確認することが好ましい。
【0007】
前記の評価は、例えば、位相差フィルムの各領域の寸法を実測することにより行ってもよい。しかし、位相差フィルムにある多数の領域の全てについて測定を行うことは煩雑であり、長時間を要する。そこで、パターンを有する位相差フィルムの領域の寸法及び形状が、液晶パネルとの貼りあわせが可能なものであるか、簡単に評価する方法が求められていた。
【0008】
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、パターン位相差フィルムの領域の寸法及び形状を簡単に評価できる評価方法を提供するものを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、液晶パネルの画素の形状及び寸法に応じた評価用のマスクを用意し、所定の条件においてマスクを通してパターン位相差フィルムを偏光で観察した場合、光の漏れが無いか否かによって、そのパターン位相差フィルムの領域の寸法及び形状が液晶パネルとの貼り合せが可能か否かを簡単かつ精密に評価できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔6〕を要旨とする。
【0010】
〔1〕 クロスニコル状態で配置された一対の直線偏光板若しくは円偏光板と、前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の間に設けられたパターン位相差フィルムと、前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の一方の前記パターン位相差フィルムとは反対側に設けられた光源と、前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の他方の前記パターン位相差フィルムとは反対側又は前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の一方と前記光源との間に設けられたマスクとを備え、前記パターン位相差フィルムが位相差が異なる複数種類の領域を有し、前記マスクが遮光部及び透光部を備える評価系において、前記光源を光らせた状態で、前記マスクの前記光源とは反対側から、前記光源が発した光を観察する、パターン位相差フィルムの評価方法。
〔2〕 光源と、マスクと、直線偏光板若しくは円偏光板と、パターン位相差フィルムと、前記直線偏光板若しくは円偏光板に対してパラレルニコル状態の反射型の直線偏光板若しくは円偏光板とをこの順に備え、前記パターン位相差フィルムが位相差が異なる複数種類の領域を有し、前記マスクが遮光部及び透光部を備える評価系において、前記光源を光らせた状態で、前記マスクの前記光源と同じ側から、前記光源が発した光を観察する、パターン位相差フィルムの評価方法。
〔3〕 前記パターン位相差フィルムの複数種類の領域のうち、少なくとも1種類の領域の位相差が0〜20nmである、〔1〕記載のパターン位相差フィルムの評価方法。
〔4〕 前記パターン位相差フィルムの複数種類の領域のうち、少なくとも1種類の領域の位相差が0〜20nmである、〔2〕記載のパターン位相差フィルムの評価方法。
〔5〕 前記パターン位相差フィルムが、位相差を有する基材の表面に設けられていて、
前記評価系が、前記基材と同じ補償用基材を、前記基材の遅相軸と前記補償用基材の遅相軸とが垂直となるように、前記パターン位相差フィルムと前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の他方との間に備える、〔1〕又は〔3〕記載のパターン位相差フィルムの評価方法。
〔6〕 前記パターン位相差フィルムが、位相差を有する基材の表面に設けられていて、
前記評価系が、前記基材と同じ補償用基材を、前記基材の遅相軸と前記補償用基材の遅相軸とが垂直となるように、前記パターン位相差フィルムと前記直線偏光板若しくは円偏光板との間に備える、〔2〕又は〔4〕記載のパターン位相差フィルムの評価方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパターン位相差フィルムの評価方法によれば、パターン位相差フィルムの領域の寸法及び形状を簡単に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、パターン位相差フィルムが有しうるパターンの一例を概略的に示す上面図である。
【図2】図2は、パターン位相差フィルムの領域と液晶パネルの画素との相対的な位置関係の例を概略的に示す上面図である。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態に係る評価装置に設けられる評価用マスクと液晶パネルのブラックマトリックスとの相対的な位置関係を概略的に示す上面図である。
【図5】図5は、本発明の第一実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の第二実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明の第二実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図8】図8は、本発明の第三実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図9】図9は、本発明の第三実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図10】図10は、本発明の第四実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図11】図11は、本発明の第四実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図12】図12は、本発明の第五実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図13】図13は、本発明の第五実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図14】図14は、本発明の第六実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図15】図15は、本発明の第六実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図16】図16は、本発明の第七実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図17】図17は、本発明の第七実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図18】図18は、本発明の第八実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図19】図19は、本発明の第八実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
【図20】図20は、立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。
【図21】図21は、実施例において、パターン位相差フィルムのパターン位相差フィルムの領域の振れ幅ΔD及び平均幅Dを測定する際のサンプルの様子を模式的に示す図である。
【図22】図22は、実施例及び比較例においてΔD/Dの測定のためにパターン位相差フィルムを撮影した場合に撮影される画像を模式的に示す図である。
【図23】図23は、図22に示す画像の一部を拡大した様子を模式的に示す図である。
【図24】図24は、パターン位相差フィルム層の領域の触れ幅ΔDの測定方法を説明するため、パターン位相差フィルムを撮影して得られる画像における規格化されたY値を表すグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0014】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
また、「位相差板」、「偏光板」及び「基板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0015】
また、「位相差」とは、別に断らない限り、面内位相差(面内レターデーション)のことを意味する。フィルムの面内位相差は、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率nx、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率ny、フィルムの膜厚dを用いて、(nx−ny)×dで表される値である。面内位相差は、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製「KOBRA−21ADH」、フォトニックラティス社製「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定できる。
【0016】
また、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」のことを意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」のことを意味する。
また、「紫外線」とは、波長が1nm以上400nm以下の光のことを意味する。
【0017】
また、構成要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。さらに、ある方向に「沿って」とは、ある方向に「平行に」との意味である。
また、以下の説明において、偏光板の透過軸、位相差フィルムの遅相軸等のような、光学素子の光学軸の角度は、別に断らない限り、厚み方向から見た角度のことを意味する。
【0018】
[1.評価対象]
本発明の評価方法の評価対象となるパターン位相差フィルムは、位相差が異なる複数種類の領域を有するフィルムである。これらの領域は、パターン位相差フィルムの厚み方向から見て異なる位置に形成されている。また、これらの領域は、パターン位相差フィルムの用途に応じたパターンを形成するように配置されている。
【0019】
パターン位相差フィルムの領域の好適な組み合わせの例としては、等方な領域(以下、「等方性領域」ということがある。)及び異方性を有する領域(以下、「異方性領域」ということがある。)との組み合わせが挙げられる。
異方性領域は、例えば、1/2波長板として機能しうる領域としてもよい。1/2波長板として機能しうる領域は、測定波長550nmで測定した面内位相差の値が、225nm以上が好ましく、245nm以上がより好ましく、また、285nm以下が好ましく、265nm以下がより好ましい。
他方、等方性領域は、測定波長550nmで測定した面内位相差がほぼゼロであることが好ましい。具体的には、測定波長550nmで測定した面内位相差の値が、通常20nm以下、好ましくは10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。下限は理想的には0nm以上であるが、通常は1nm以上である。
【0020】
パターン位相差フィルムの領域が形成するパターンの具体的形状は、通常、用途に応じて適切に設定される。例えば、パターン位相差フィルムを液晶表示装置に適用する場合には、当該パターン位相差フィルムと組み合わせる液晶パネルの画素の配置に応じて、パターン位相差フィルムの領域のパターンを設定してもよい。液晶表示装置がパッシブ型の立体画像表示装置である場合、液晶パネルは通常2組の画素群、即ち右目で観察されるための画素群及び左目で観察されるための画素群を有する。この場合、パターン位相差フィルムの領域のパターンは、これらの画素群のうちの一方に対応する領域が等方性領域であり、他方に対応する領域が異方性領域であるパターンとしてもよい。より具体的には、複数の領域が長手方向に沿って帯状に延在するパターンを、好ましく挙げることができる。
【0021】
図1は、パターン位相差フィルムが有しうるパターンの一例を概略的に示す上面図である。図1に示す例では、パターン位相差フィルム10は、複数の領域11及び12を交互に有し、したがってこれらからなるストライプ状のパターンを有している。また、領域11及び12は、いずれも長手方向(座標軸Xで示す方向)に対して平行に延在する帯状の形状を有している。したがって、パターン位相差フィルム10は、領域11と領域12との境界線13を、長手方向に延長する線として有する。このように、パターン位相差フィルム10が有する複数種類の領域11及び12の境界線13を、以下において「パターン境界線」ということがある。
【0022】
領域11及び12の幅W11及びW12は、組み合わせる液晶パネルの画素の寸法に合わせて設定してもよい。通常、液晶パネルの画素の寸法は均一であるため、いずれの領域11及び12の幅W11及びW12も同程度になる。また、異なる種類の領域11と領域12とのパターン境界線13は液晶パネルの画素間にあるブラックマトリックスに対応する位置に位置合わせすることになり、そのブラックマトリックスはある程度の幅を有している。このため、当該ブラックマトリックスの幅の分は、領域11の幅W11と領域12の幅W12とに差があってもよいので、異なる種類の領域11及び12の幅W11及びW12は必ずしも同じでなくても構わない。
【0023】
図2は、パターン位相差フィルム10の領域11及び12と液晶パネルの画素との相対的な位置関係の例を概略的に示す上面図である。図2の例において、液晶パネル20は、パッシブ型の立体画像表示装置用の液晶パネルであり、2組の画素群、即ち右目で観察されるための画素群及び左目で観察されるための画素群を有している。画素R、画素G及び画素Bは2組の画素群のうちの第1の画素群を構成し、画素R、画素G及び画素Bは第2の画素群を構成している。各画素群の画素は、長手方向(図中座標軸X方向)に整列し、第1の画素群の画素の列21及び第2の画素群の画素の列22を構成している。画素の列21及び22は、幅方向(座標軸Y方向)において、交互に配列されている。したがって、第1の画素群及び第2の画素群は、液晶パネル20の長手方向(座標軸X方向)に延在するブラックマトリックスの部分23によって分けられている。この例において、パターン位相差フィルム10は、領域11及び12のパターン境界線13が、ブラックマトリックスの部分23上に位置するよう位置合わせされる。
【0024】
このような位置合わせを行う場合、パターン位相差フィルム10の領域11又は12の寸法又は形状が設計どおりとならないと、パターン境界線13がブラックマトリックスの部分23上に位置することができず、所望の液晶表示装置を製造できないことがある。例えば、領域11又は12の幅が適正でなかったり、真直性(即ち、形状が直線に近いこと)が損なわれていたりすると、液晶表示装置において例えばクロストークが生じ、不良品の原因となる可能性がある。そこで、製品の製造前にパターン位相差フィルム10の評価を行うことにより、そのパターン位相差フィルム10が適切な位置合わせが可能なものであるか否かの選別を行えば、液晶表示装置の不良品の発生を抑制できる。この際、本発明の評価方法を用いれば、パターン位相差フィルム10の評価を簡単に行うことが可能である。
【0025】
パターン位相差フィルムの厚みは、前記の領域それぞれで所望の位相差が得られるように適切な厚みに設定しうる。通常は、パターン位相差フィルムの厚みは、0.5μm以上50μm以下の範囲である。
【0026】
パターン位相差フィルムは、基材の表面に、別の層を介さずに直接、又は接着層等の別の層を介して間接的に、設けられることがある。以下、このように基材とパターン位相差フィルムとを備える複層フィルムを、「積層位相差フィルム」と呼ぶことがある。基材としては、通常、フィルムを用いる。
【0027】
基材は、面内において均一な位相差及び遅相軸方向を有することが好ましい。パターン位相差フィルムの評価を適切に行うためである。ここで、面内において位相差が均一であるとは、パターン位相差フィルムとは異なり、異なる位相差を有する2種類以上の領域からなるパターンを基材が有しないという意味であり、具体的には、基材の面内の位相差のばらつきは、好ましくは±20nm以内、より好ましくは±10nm以内である。
【0028】
基材としては、位相差を有さない等方性のフィルムを用いてもよく、位相差を有する位相差フィルムを用いてもよい。基材が位相差フィルムである場合、液晶表示装置を構成する光学フィルムの一つとして基材を活用でき、液晶表示装置の薄型化及び部品点数の削減を進めることができる。
【0029】
基材として位相差フィルムを用いる場合、その位相差フィルムの具体的な位相差は液晶表示装置の構成に応じて設定してもよい。例えば、位相差フィルムとしては1/4波長板として機能しうるものを用いてもよい。1/4波長板として機能しうる位相差フィルムの位相差は、透過光の波長範囲の中心値の1/4の値から、通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲であるか、または、中心値の3/4の値から通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲である。前記の透過光は通常は可視光であるため、透過光の波長範囲の中心値としては、通常、透過光の波長範囲の中心値である550nmを適用する。
【0030】
基材が位相差フィルムである場合、当該位相差フィルムの長手方向と、位相差フィルムの遅相軸方向とがなす角は、液晶表示装置の態様に応じて設定してもよい。例えば、位相差フィルムを幅方向又は長手方向に延伸することにより、当該位相差フィルムの遅相軸方向を、長手方向と平行な方向又は垂直な方向にしてもよい。また、例えば、位相差フィルムとして斜め延伸した延伸フィルムを用いることにより、当該位相差フィルムの遅相軸方向を、長手方向と45°程度(例えば45°±5°、好ましくは45°±1°)の角度をなす方向としてもよい。
【0031】
積層位相差フィルムは、パターン位相差フィルム及び基材に加えて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の層を備えていてもよい。例えば、パターン位相差フィルムと基材とを貼り合わせる接着層を備えていてもよい。接着層とは、接着剤により形成された層である。この接着剤は、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1〜500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
【0032】
[2.第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係るパターン位相差フィルムの評価方法では、一対の直線偏光板と、前記一対の直線偏光板の間に設けられたパターン位相差フィルムと、前記一対の直線偏光板の一方の前記パターン位相差フィルムとは反対側に設けられた光源と、前記一対の直線偏光板の他方の前記パターン位相差フィルムとは反対側に設けられたマスク(以下、「評価用マスク」ということがある。)とを備える評価系を用意し、この評価系において光源を光らせた状態で、評価用マスクの前記光源とは反対側から、光源が発した光を観察する。
【0033】
[2−1.評価系の用意]
図3は、本発明の第一実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。図3に示すように、本発明の第一実施形態に係る評価系1では、光源110と、直線偏光板120と、直線偏光板130と、評価用マスク140と、観察装置としてのカメラ150とを、この順に備える評価装置を備える。前記の直線偏光板120と直線偏光板130との間には、基材160と、基材160の表面に設けられたパターン位相差フィルム170とを備える積層位相差フィルム180が挿入される。
【0034】
ここで、直線偏光板120及び130、評価用マスク140並びに積層位相差フィルム180は、いずれも主面が水平方向と平行となり、それらの厚み方向が一致するように配設されている。以下の説明においては、別に断らない限り、「厚み方向」とは前記の厚み方向のことを意味するものとする。
また、図3においては、直線偏光板120、直線偏光板130、評価用マスク140及び積層位相差フィルム180は、図示のため離隔して示されているが、これらのうち一部又は全部は実際の態様においては接触した状態で評価されてもよい。
【0035】
光源110は、評価用の非偏光を発しうる装置である。通常、光源110としては、可視光を発しうる装置を用いる。
【0036】
直線偏光板120及び130は、吸収型の直線偏光板でもよく、反射型の直線偏光板でもよい。ここで吸収型の直線偏光板とは、所定の透過軸方向と平行な振動方向を有する直線偏光を透過させ、それ以外の偏光を吸収しうる偏光板を意味する。また、反射型の直線偏光板とは、所定の透過軸方向と平行な振動方向を有する直線偏光を透過させ、それ以外の偏光を反射しうる偏光板を意味する。なお、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。
【0037】
直線偏光板120及び130は、クロスニコル状態で配置されている。すなわち、厚み方向から見て、直線偏光板120の透過軸A120と直線偏光板130の透過軸A130とは、垂直になっている。
【0038】
評価用マスク140は、光を遮りうる遮光部141と、光を透過させうる透光部142とを備える。これらの遮光部141及び透光部142の寸法及び形状は、評価対象となる積層位相差フィルム180と貼り合わせる予定の液晶パネルに応じて設定される。本実施形態においては、積層位相差フィルム180は図2を用いて説明したのと同様の液晶パネル20と貼り合わせることを予定しており、評価用マスク140の遮光部141及び透光部142の寸法及び形状は、前記の液晶パネル20に合わせて設定されるものとする。
【0039】
図4は、本発明の第一実施形態に係る評価装置に設けられる評価用マスク140と液晶パネルのブラックマトリックスとの相対的な位置関係を概略的に示す上面図である。本実施形態では、積層位相差フィルム180のパターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172は、それぞれ、液晶パネル20の第1の画素群及び第2の画素群に位置合わせされるようになっている。この場合、図4に示すように、評価用マスク140の遮光部141は第1の画素群の列21を覆い、透光部142は第2の画素群の列22を覆いうるように形成される。
【0040】
評価用マスク140の遮光部141の幅W141は、第1の画素群の列21及びその列21を囲む両端のブラックマトリックスの部分23の合計幅と同じになるように設定する。他方、評価用マスク140の透光部142の幅W142は、第2の画素群の列22の幅と同じになるように設定する。これにより、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状又は寸法が、液晶表示装置の立体表示の画質に影響を与えない程度に不均一である場合では、カメラ150において光漏れは観察できず、不均一性は検出できない。したがって、例えば異方性領域171及び等方性領域172の形状又は寸法がブラックマトリックスの部分23の幅に収まる範囲内で整っている場合など、実用に耐えるパターン位相差フィルムを不良品として評価することを避けることができる。
【0041】
また、評価用マスク140は、面内方向に可動に設けられているものとする。
【0042】
カメラ150は、厚み方向から観察を行い、光源110から発せられて直線偏光板120、積層位相差フィルム180、直線偏光板130及び評価用マスク140を透過してきた光を検出する観察装置である。
【0043】
図3に示すように、観察対象となる積層位相差フィルム180は、フィルム状の基材160と、基材160の表面に形成されたパターン位相差フィルム170とを備える。
本実施形態において、基材160は位相差を有さない等方性のフィルムである。
【0044】
パターン位相差フィルム170は、パターン位相差フィルム170の長手方向に対して平行に延在する帯状の領域として、異方性領域171と等方性領域172を有する。異方性領域171及び等方性領域172は、パターン位相差フィルム170の幅方向において交互に設けられていて、これらは全体としてストライプ状のパターンを形成している。上述したように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172は、それぞれ、図2に示すように、液晶パネル20の第1の画素群の列21及び第2の画素群の列22に位置合わせされるようになっている。
【0045】
本実施形態において、異方性領域171の位相差は、透過光の波長に対して1/2波長であり、このため異方性領域171は1/2波長板として機能しうる領域となっている。また、異方性領域171の遅相軸A171の方向は、パターン位相差フィルム170の長手方向に対して平行であり、したがって、直線偏光板120の透過軸A120に対して−45°、直線偏光板130の透過軸A130に対して+45°の角度をなすように設定されている。
【0046】
このように、本実施形態においては、クロスニコル状態で配置された一対の直線偏光板120及び130と、前記一対の直線偏光板120及び130の間に設けられたパターン位相差フィルム170と、前記一対の直線偏光板120及び130の一方(本実施形態では、直線偏光板120)のパターン位相差フィルム170とは反対側に設けられた光源110と、前記一対の直線偏光板120及び130の他方(本実施形態では、直線偏光板130)のパターン位相差フィルム170とは反対側に設けられた評価用マスク140とを備えた評価系1が構成されている。
【0047】
[2−2.パターン位相差フィルムの評価]
前記のような評価系1を用意した後で、光源110を光らせた状態で、評価用マスク140の光源110とは反対側から、光源110が発した光を観察する。本実施形態では、カメラ150で評価用マスク140の表面を撮影することにより、観察を行う。この際、評価用マスク140を移動させて評価用マスク140の遮光部141及び透光部142とパターン位相差フィルムの異方性領域171及び等方性領域172とがそれぞれ重なるように位置調整を行うことにより、評価用マスク140とパターン位相差フィルム170との相対位置を合わせて、光源110から発せられた光が検出されない暗状態が観察されるかどうかを評価する。
【0048】
以下、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正である場合を、例を示して説明する。
図3に示すようにパターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、異方性領域171及び等方性領域172が形成するパターンと、評価用マスク140の遮光部141及び透光部142が形成するパターンとが一致する。このため、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置においては厚み方向から見てパターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172と評価用マスク140の遮光部141及び透光部142とが重なるため、暗状態で観察できる。
【0049】
具体的には、光源110から光が発せられると、一部の光Lは、直線偏光板120、基材160、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び直線偏光板130の順に透過し、評価用マスク140に入射する。
すなわち、直線偏光板120に光Lが入射すると、直線偏光板120の透過軸A120と平行な振動方向Aiを有する直線偏光は直線偏光板120を透過し、他の偏光は直線偏光板120により遮られる。
直線偏光板120を透過した光Lは、その後、基材160を透過する。この際、基材160は位相差を有さないので、光Lは、偏光状態を変えずにそのまま基材160を透過する。
基材160を透過した光Lは、その後、パターン位相差フィルム170の異方性領域171を透過する。異方性領域171は1/2波長板として機能しうるので、光Lは、異方性領域171を透過する際に振動方向が90°回転させられる。
異方性領域171を透過した光Lは、その後、直線偏光板130へ入射する。入射する光Lは、直線偏光板130の透過軸A130と平行な振動方向Aiiを有する直線偏光となっているので、この光Lは、直線偏光板130を透過する。
直線偏光板130を透過した光Lは、その後、評価用マスク140に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていると、光Lは遮光部141に遮られる。
【0050】
また、光源110から発せられた別の光LIIは、直線偏光板120、基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172の順に透過し、直線偏光板130に入射する。
すなわち、直線偏光板120に光LIIが入射すると、直線偏光板120の透過軸A120と平行な振動方向Aiを有する直線偏光は直線偏光板120を透過し、他の偏光は直線偏光板120により遮られる。
直線偏光板120を透過した光LIIは、その後、基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過する。この際、基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172は位相差を有さないので、光LIIは、偏光状態を変えずにそのまま基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過する。
基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過した光LIIは、その後、直線偏光板130へ入射する。入射する光LIIは、直線偏光板130の透過軸A130と垂直な振動方向Aiiiを有する直線偏光となっているので、この光LIIは、直線偏光板130に遮られる。
【0051】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置において、カメラ150において光L及びLIIを検知しない暗状態を観察できる。したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、少なくとも一つの位置において暗状態が観察されれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正であると評価できる。
【0052】
次に、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合を、図5に例を示して説明する。図5は、本発明の第一実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
図5に示す評価系1において、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の幅が適正な寸法範囲を外れていたり、湾曲して形状の真直性が損なわれていたりすると、異方性領域171及び等方性領域172が形成するパターンと、評価用マスク140の遮光部141及び透光部142が形成するパターンとが一致しない。このため、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行っても、どの位置においても厚み方向から見てパターン位相差フィルム170の異方性領域171の少なくとも一部は評価用マスク140の遮光部141と重ならないため、暗状態で観察できない。
【0053】
具体的には、光源110から光が発せられると、一部の光LIIIは、図3を用いて説明した光Lと同様にして、直線偏光板120、基材160、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び直線偏光板130の順に透過し、評価用マスク140に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていないと、光LIIIの一部は評価用マスク140の透光部142を透過し、カメラ150に入る。このため、カメラ150で撮影された映像に周囲よりも明るい部分が生じ、暗状態とならない。
【0054】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状又は寸法が適正でなければ、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行っても、暗状態で観察できない。したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、いずれの位置においても暗状態が観察されなければ、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正でないと評価できる。
【0055】
以上のように、本実施形態の評価方法によれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法を実測しなくても、それらの異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が、貼り合わせる予定の液晶パネルとの関係で適正か否かを簡単に評価できる。特に、適正である場合には暗状態が観察され、適正でなければ光源110からの光が検出されるので、暗所での光が目立つために僅かな光であっても容易に検出できることに鑑みれば、精度の高い評価を行うことが可能である。
【0056】
[3.第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係るパターン位相差フィルムの評価方法では、一対の直線偏光板と、前記一対の直線偏光板の間に設けられたパターン位相差フィルムと、前記一対の直線偏光板の一方の前記パターン位相差フィルムとは反対側に設けられた光源と、前記一対の直線偏光板の一方と前記光源との間に設けられた評価用マスクとを備える評価系を用意し、この評価系において光源を光らせた状態で、前記評価用マスクの前記光源とは反対側から、前記光源が発した光を観察する。
【0057】
[3−1.評価系の用意]
図6は、本発明の第二実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。図6に示すように、本発明の第二実施形態に係る評価系2では、評価用マスク140の位置が変更されたことにより、評価系2の構成要素の順番が、光源110、評価用マスク140、直線偏光板120、積層位相差フィルム180、直線偏光板130及びカメラ150の順に変更されたこと以外は、第一実施形態と同様である。
【0058】
これにより、本実施形態においては、クロスニコル状態で配置された一対の直線偏光板120及び130と、前記一対の直線偏光板120及び130の間に設けられたパターン位相差フィルム170と、前記一対の直線偏光板120及び130の一方(本実施形態では、直線偏光板120)の前記パターン位相差フィルム170とは反対側に設けられた光源110と、前記一対の直線偏光板120及び130の一方(本実施形態では、直線偏光板120)と光源110との間に設けられた評価用マスク140とを備えた評価系2が構成されている。
【0059】
[3−2.パターン位相差フィルムの評価]
前記のような評価系2を用意した後で、光源110を光らせた状態で、第一実施形態と同様に、評価用マスク140の光源110とは反対側から、光源110が発した光を観察する。
【0060】
以下、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正である場合を、例を示して説明する。
図6に示すように光源110から光が発せられると、一部の光LIVは、評価用マスク140の遮光部141に入射し、この遮光部141で遮られる。
【0061】
また、光源110から発せられた別の光Lは、評価用マスク140、直線偏光板120、基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172の順に透過し、直線偏光板130に入射する。
すなわち、光Lは、評価用マスク140の透光部142を透過し、直線偏光板120に入射する。直線偏光板120に光Lが入射すると、直線偏光板120の透過軸A120と平行な振動方向Aiを有する直線偏光は直線偏光板120を透過し、他の偏光は直線偏光板120により遮られる。
直線偏光板120を透過した光Lは、その後、基材160及びパターン位相差フィルム170を透過する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていると、光Lは全て、偏光状態を変えずにそのまま基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過する。
基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過した光Lは、その後、直線偏光板130へ入射する。入射する光Lは、直線偏光板130の透過軸A130と垂直な振動方向Aiiiを有する直線偏光となっているので、この光Lは、直線偏光板130に遮られる。
【0062】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置において、カメラ150が光LIV及びLを検知しない暗状態を観察できる。したがって、第一実施形態と同様に、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、少なくとも一つの位置において暗状態が観察されれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正であると評価できる。
【0063】
次に、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合を、図7に例を示して説明する。図7は、本発明の第二実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
図7に示す評価系2において光源110から光が発せられると、一部の光LVIは、図6を用いて説明した光LVと同様にして、評価用マスク140の透光部142、直線偏光板120及び基材160をこの順に透過し、パターン位相差フィルム170に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていないと、光LVIの一部は異方性領域171を透過して直線偏光板130に入射する。異方性領域171を透過する際、光LVIは振動方向が90°回転させられて、直線偏光板130の透過軸A130と平行な振動方向Aivを有する直線偏光に変換される。このため、光LVIは直線偏光板130を透過し、カメラ150に入る。このため、カメラ150で撮影された映像に周囲よりも明るい部分が生じ、暗状態とならない。
【0064】
したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、いずれの位置においても暗状態が観察されなければ、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正でないと評価できる。
【0065】
以上のように、本実施形態の評価方法によれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が、貼り合わせる予定の液晶パネルとの関係で適正か否かを簡単に評価できる。
また、第一実施形態と同様の利点も得ることができる。
【0066】
[4.第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係るパターン位相差フィルムの評価方法では、一対の円偏光板と、前記一対の円偏光板の間に設けられたパターン位相差フィルムと、前記一対の円偏光板の一方の前記パターン位相差フィルムとは反対側に設けられた光源と、前記一対の円偏光板の他方の前記パターン位相差フィルムとは反対側に設けられた評価用マスクとを備える評価系を用意し、この評価系において光源を光らせた状態で、前記評価用マスクの前記光源とは反対側から、前記光源が発した光を観察する。
【0067】
[4−1.評価系の用意]
図8は、本発明の第三実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。図8に示すように、本発明の第三実施形態に係る評価系3では、一対の直線偏光板120及び130の代わりに、一対の円偏光板220及び230を設けたこと以外は、第一実施形態と同様である。
【0068】
円偏光板220及び230は、吸収型の円偏光板でもよく、反射型の円偏光板でもよい。ここで吸収型の円偏光板とは、所定の回転方向へと回転する円偏光を透過させ、それ以外の偏光を吸収しうる偏光板を意味する。また、反射型の円偏光板とは、所定の回転方向へと回転する円偏光を透過させ、それ以外の偏光を反射しうる偏光板を意味する。
円偏光板220及び230は、クロスニコル状態で配置されている。すなわち、一方の円偏光板220を透過しうる円偏光の回転方向A220と、他方の円偏光板230を透過しうる円偏光の回転方向A230とが、逆向きとなっている。
【0069】
これにより、本実施形態においては、一対の円偏光板220及び230と、前記一対の円偏光板220及び230の間に設けられたパターン位相差フィルム170と、前記一対の円偏光板220及び230の一方(本実施形態では、円偏光板220)の前記パターン位相差フィルム170とは反対側に設けられた光源110と、前記一対の円偏光板220及び230の他方(本実施形態では、円偏光板230)の前記パターン位相差フィルム170とは反対側に設けられた評価用マスク140とを備える評価系3が構成されている。
【0070】
[4−2.パターン位相差フィルムの評価]
前記のような評価系3を用意した後で、光源110を光らせた状態で、第一実施形態と同様に、評価用マスク140の光源110とは反対側から、光源110が発した光を観察する。
【0071】
以下、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正である場合を、例を示して説明する。
図8に示すように光源110から光が発せられると、一部の光LVIIは、円偏光板220、基材160、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び円偏光板230の順に透過し、評価用マスク140に入射する。
すなわち、円偏光板220に光LVIIが入射すると、回転方向A220と同じ回転方向Avに回転する円偏光が円偏光板220を透過し、他の偏光は円偏光板220により遮られる。
円偏光板220を透過した光LVIIは、その後、基材160を透過する。この際、基材160は位相差を有さないので、光LVIIは、偏光状態を変えずにそのまま基材160を透過する。
基材160を透過した光LVIIは、その後、パターン位相差フィルム170の異方性領域171を透過する。異方性領域171は1/2波長板として機能しうるので、光LVIIは、異方性領域171を透過する際に円偏光の回転方向を逆向きに変換される。
異方性領域171を透過した光LVIIは、その後、円偏光板230へ入射する。入射する光LVIIは、円偏光板230を透過しうる回転方向A230と円偏光の回転方向Aviが同じになっているので、この光LVIIは、円偏光板230を透過する。
円偏光板230を透過した光LVIIは、その後、評価用マスク140に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていると、光LVIIは遮光部141に遮られる。
【0072】
また、光源110から発せられた別の光LvIIIは、円偏光板220、基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172の順に透過し、円偏光板230に入射する。
すなわち、円偏光板220に光LvIIIが入射すると、回転方向A220と同じ回転方向Avに回転する円偏光が円偏光板220を透過し、他の偏光は円偏光板220により遮られる。
円偏光板220を透過した光LvIIIは、その後、基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過する。この際、基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172は位相差を有さないので、光LvIIIは、偏光状態を変えずにそのまま基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過する。
基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過した光LVIIIは、その後、円偏光板230へ入射する。入射する光LvIIIは、円偏光板230を透過しうる円偏光の回転方向A230とは逆の回転方向Aviiに回転する円偏光となっているので、この光LvIIIは、円偏光板230に遮られる。
【0073】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置において、カメラ150が光LVII及びLvIIIを検知しない暗状態を観察できる。したがって、第一実施形態と同様に、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、少なくとも一つの位置において暗状態が観察されれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正であると評価できる。
【0074】
次に、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合を、図9に例を示して説明する。図9は、本発明の第三実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
図9に示す評価系3において光源110から光が発せられると、一部の光LIXは、図8を用いて説明した光LVIIと同様にして、円偏光板220、基材160、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び円偏光板230の順に透過し、評価用マスク140に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていないと、光LIXの一部は評価用マスク140の透光部142を透過し、カメラ150に入る。このため、カメラ150で撮影された映像に周囲よりも明るい部分が生じ、暗状態とならない。
【0075】
したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、いずれの位置においても暗状態が観察されなければ、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正でないと評価できる。
【0076】
以上のように、本実施形態の評価方法によれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が、貼り合わせる予定の液晶パネルとの関係で適正か否かを簡単に評価できる。
また、第一実施形態と同様の利点も得ることができる。
さらに、本実施形態では、第一実施形態及び第二実施形態のような直線偏光板120及び130ではなく、円偏光板220及び230を用いている。このため、厚み方向から傾斜した斜め方向から観察を行った場合でも、暗状態において光が検出されないので、厚み方向から観察を行った場合と同様に、精度の高い評価を行うことが可能である。
【0077】
[5.第四実施形態]
本発明の第四実施形態に係るパターン位相差フィルムの評価方法では、一対の円偏光板と、前記一対の円偏光板の間に設けられたパターン位相差フィルムと、前記一対の円偏光板の一方の前記パターン位相差フィルムとは反対側に設けられた光源と、前記一対の円偏光板の一方と前記光源との間に設けられた評価用マスクとを備える評価系を用意し、この評価系において光源を光らせた状態で、前記評価用マスクの前記光源とは反対側から、前記光源が発した光を観察する。
【0078】
[5−1.評価系の用意]
図10は、本発明の第四実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。図10に示すように、本発明の第四実施形態に係る評価系4では、評価用マスク140の位置が変更されたことにより、評価系4の構成要素の順番が、光源110、評価用マスク140、円偏光板220、積層位相差フィルム180、円偏光板230及びカメラ150の順に変更されたこと以外は、第三実施形態と同様である。
【0079】
これにより、本実施形態においては、クロスニコル状態で配置された一対の円偏光板220及び230と、前記一対の円偏光板220及び230の間に設けられたパターン位相差フィルム170と、前記一対の円偏光板220及び230の一方(本実施形態では、円偏光板220)の前記パターン位相差フィルム170とは反対側に設けられた光源110と、前記一対の円偏光板220及び230の一方(本実施形態では、円偏光板220)と光源110との間に設けられた評価用マスク140とを備えた評価系4が構成されている。
【0080】
[5−2.パターン位相差フィルムの評価]
前記のような評価系4を用意した後で、光源110を光らせた状態で、第一実施形態と同様に、評価用マスク140の光源110とは反対側から、光源110が発した光を観察する。
【0081】
以下、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正である場合を、例を示して説明する。
図10に示すように光源110から光が発せられると、一部の光LXは、評価用マスク140の遮光部141に入射し、この遮光部141で遮られる。
【0082】
また、光源110から発せられた別の光LXIは、評価用マスク140、円偏光板220、基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172の順に透過し、円偏光板230に入射する。
すなわち、光LXIは、評価用マスク140の透光部142を透過し、円偏光板220に入射する。円偏光板220に光LXIが入射すると、回転方向A220と同じ回転方向Avに回転する円偏光が円偏光板220を透過し、他の偏光は円偏光板220により遮られる。
円偏光板220を透過した光LXIは、その後、基材160及びパターン位相差フィルム170を透過する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていると、光LXIは全て、偏光状態を変えずにそのまま基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過する。
基材160及びパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過した光LXIは、その後、円偏光板230へ入射する。入射する光LXIは、円偏光板230を透過しうる円偏光の回転方向A230とは逆の回転方向Aviiに回転する円偏光となっているので、この光LXIは、円偏光板230に遮られる。
【0083】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置において、カメラ150が光LX及びLXIを検知しない暗状態を観察できる。したがって、第一実施形態と同様に、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、少なくとも一つの位置において暗状態が観察されれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正であると評価できる。
【0084】
次に、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合を、図11に例を示して説明する。図11は、本発明の第四実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
図11に示す評価系4において光源110から光が発せられると、一部の光LXIIは、図10を用いて説明した光LXIと同様にして、評価用マスク140の透光部142、円偏光板220及び基材160をこの順に透過し、パターン位相差フィルム170に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていないと、光LXIIの一部は異方性領域171を透過して円偏光板230に入射する。異方性領域171を透過する際、光LXIIは、円偏光の回転方向を逆向きに変換されて、円偏光板230を透過しうる回転方向A230と円偏光の回転方向Aviが同じになる。このため、光LXIIは円偏光板230を透過し、カメラ150に入る。このため、カメラ150で撮影された映像に周囲よりも明るい部分が生じ、暗状態とならない。
【0085】
したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、いずれの位置においても暗状態が観察されなければ、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正でないと評価できる。
【0086】
以上のように、本実施形態の評価方法によれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が、貼り合わせる予定の液晶パネルとの関係で適正か否かを簡単に評価できる。
また、第三実施形態と同様の利点も得ることができる。
【0087】
[6.第五実施形態]
本発明の第五実施形態に係るパターン位相差フィルムの評価方法では、光源と、評価用マスクと、直線偏光板と、パターン位相差フィルムと、反射型の直線偏光板とをこの順に備える評価系を用意し、この評価系において光源を光らせた状態で、前記評価用マスクの前記光源と同じ側から、前記光源が発した光を観察する。
【0088】
[6−1.評価系の用意]
図12は、本発明の第五実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。図12に示すように、本発明の第五実施形態に係る評価系5では、光源110と、評価用マスク140と、直線偏光板320と、反射型の直線偏光板330とを、この順に備える評価装置を備える。また、この評価装置においては、評価用マスク140の光源110と同じ側にはカメラ150が設けられている。前記の直線偏光板320と直線偏光板330との間には、基材160と、基材160の表面に設けられたパターン位相差フィルム170とを備える積層位相差フィルム180が挿入される。
【0089】
ここで、直線偏光板320及び330、評価用マスク140並びに積層位相差フィルム180は、いずれも主面が水平方向と平行となり、それらの厚み方向が一致するように配設されている。したがって、以下の説明においては、別に断らない限り、「厚み方向」とは前記の厚み方向のことを意味するものとする。また、図12においては、図示のため、光源からカメラへと向かう光路は斜めに示されているが、実際には、実質的に厚み方向と平行にしてもよい。さらに、図12においては、直線偏光板320、直線偏光板330、評価用マスク140及び積層位相差フィルム180は、図示のため離隔して示されているが、これらのうち一部又は全部は実際の態様においては接触した状態で評価されてもよい。
【0090】
光源110、評価用マスク140、カメラ150及び積層位相差フィルム180並びに当該積層位相差フィルム180に含まれる基材160及びパターン位相差フィルム170は、第一実施形態と同様である。ただし、評価用マスク140の遮光部141としては、照射された光を吸収しうるものを用いることが好ましい。本実施形態でも、遮光部141として、照射された光を吸収しうるものを用いているものとする。これにより、評価用マスク140の遮光部141で反射した光がカメラ150に入ることを防止して、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合に観察される明るい部分を目立ち易くし、評価精度を高めることができる。
【0091】
直線偏光板320は、吸収型の直線偏光板であることが好ましい。本実施形態でも、直線偏光板320は吸収型の直線偏光板であるものとする。これにより、直線偏光板320で反射した光がカメラ150に入ることを防止して、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合に観察される明るい部分を目立ち易くし、評価精度を高めることができる。
一方、直線偏光板330は、反射型の直線偏光板である。これらの直線偏光板320及び330は、パラレルニコル状態で配置されている。すなわち、厚み方向から見て、直線偏光板320の透過軸A320と直線偏光板330の透過軸A330とは、平行になっている。
【0092】
このように、本実施形態においては、光源110と、評価用マスク140と、直線偏光板320と、パターン位相差フィルム170と、反射型の直線偏光板330とをこの順に備えた評価系5が構成されている。
【0093】
[6−2.パターン位相差フィルムの評価]
前記のような評価系5を用意した後で、光源110を光らせた状態で、評価用マスク140の光源110と同じ側から、光源110が発した光を観察する。本実施形態では、カメラ150で評価用マスク140の表面を撮影することにより、観察を行う。この際、第一実施形態と同様に、評価用マスク140を移動させて評価用マスク140の遮光部141及び透光部142とパターン位相差フィルムの異方性領域171及び等方性領域172とがそれぞれ重なるように位置調整を行うことにより、評価用マスク140とパターン位相差フィルム170との相対位置を合わせて、光源110から発せられた光が検出されない暗状態が観察されるかどうかを評価する。
【0094】
以下、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正である場合を、例を示して説明する。
図12に示すように光源110から光が発せられると、一部の光LXIIIは、評価用マスク140の遮光部141に入射し、この遮光部141で遮られる。遮られた光LXIIIは遮光部141で吸収されるので反射せず、カメラ150では検出されない。
【0095】
また、光源110から発せられた別の光LXIVは、評価用マスク140の透光部142、直線偏光板320、パターン位相差フィルム170の等方性領域172、基材160及び反射型の直線偏光板330の順に透過する。
すなわち、光LXIVは、評価用マスク140の透光部142を透過した後で、直線偏光板320に入射する。直線偏光板320に光LXIVが入射すると、直線偏光板320の透過軸A320と平行な振動方向Aviiiを有する直線偏光は直線偏光板320を透過し、他の偏光は直線偏光板320により遮られる。本実施形態では直線偏光板320は吸収型であるため、遮られた偏光は直線偏光板320で吸収されるので反射せず、カメラ150では検出されない。
直線偏光板320を透過した光LXIVは、その後、パターン位相差フィルム170及び基材160を透過する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていると、光LXIVは全て、偏光状態を変えずにそのまま等方性領域172及び基材160を透過する。
等方性領域172及び基材160を透過した光LXIVは、その後、反射型の直線偏光板330へ入射する。入射する光LXIVは、直線偏光板330の透過軸A330と平行な振動方向Aixを有する直線偏光となっているので、この光LXIVは、直線偏光板330を透過する。
【0096】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置において、カメラ150が光LXIII及びLXIVを検知しない暗状態を観察できる。したがって、第一実施形態と同様に、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、少なくとも一つの位置において暗状態が観察されれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正であると評価できる。
【0097】
次に、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合を、図13に例を示して説明する。図13は、本発明の第五実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
図13に示す評価系5において光源110から光が発せられると、一部の光LXVは、図12を用いて説明した光LXIVと同様にして評価用マスク140の透光部142及び直線偏光板320を透過し、パターン位相差フィルム170に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていないと、光LXVの一部は異方性領域171及び基材160を透過する。異方性領域171を透過する際、光LXVは、振動方向が90°回転させられて、直線偏光板330の透過軸A330と垂直な振動方向Axを有する直線偏光に変換される。このため、光LXVは直線偏光板330で反射される。反射後の光LXVは、反射前と同じ振動方向Axiを有する直線偏光であるが、再度パターン位相差フィルム170の異方性領域171を透過することによって振動方向が90°回転させられて、直線偏光板320の透過軸A320と平行な振動方向Axiiを有する直線偏光に変換される。このため、光LXVは直線偏光板320を透過し、次いで評価用マスク140の透光部142を透過して、カメラ150に入る。このため、カメラ150で撮影された映像に周囲よりも明るい部分が生じ、暗状態とならない。
【0098】
したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、いずれの位置においても暗状態が観察されなければ、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正でないと評価できる。
【0099】
以上のように、本実施形態の評価方法によれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が、貼り合わせる予定の液晶パネルとの関係で適正か否かを簡単に評価できる。
また、第一実施形態と同様の利点も得ることができる。
【0100】
[7.第六実施形態]
本発明の第六実施形態に係るパターン位相差フィルムの評価方法では、光源と、評価用マスクと、円偏光板と、パターン位相差フィルムと、反射型の円偏光板とをこの順に備える評価系を用意し、この評価系において光源を光らせた状態で、前記評価用マスクの前記光源と同じ側から、前記光源が発した光を観察する。
【0101】
[7−1.評価系の用意]
図14は、本発明の第六実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。図14に示すように、本発明の第六実施形態に係る評価系6では、直線偏光板320の代わりに円偏光板420を設け、反射型の直線偏光板330の代わりに反射型の円偏光板430を設けたこと以外は、第五実施形態と同様である。
【0102】
円偏光板420は、吸収型の円偏光板であることが好ましい。本実施形態でも、円偏光板420は吸収型の円偏光板であるものとする。これにより、円偏光板420で反射した光がカメラ150に入ることを防止して、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合に観察される明るい部分を目立ち易くし、評価精度を高めることができる。
一方、円偏光板430は、反射型の円偏光板である。これらの円偏光板420及び430は、パラレルニコル状態で配置されている。すなわち、一方の円偏光板420を透過しうる円偏光の回転方向A420と、他方の円偏光板430を透過しうる円偏光の回転方向A430とが、同じ向きとなっている。
【0103】
これにより、本実施形態においては、光源110と、評価用マスク140と、円偏光板420と、パターン位相差フィルム170と、反射型の円偏光板430とをこの順に備える評価系6が構成されている。
【0104】
[7−2.パターン位相差フィルムの評価]
前記のような評価系6を用意した後で、光源110を光らせた状態で、第五実施形態と同様に、評価用マスク140の光源110と同じ側から、光源110が発した光を観察する。
【0105】
以下、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正である場合を、例を示して説明する。
図14に示すように光源110から光が発せられると、一部の光LXVIは、評価用マスク140の遮光部141に入射し、この遮光部141で遮られる。遮られた光LXVIは遮光部141で吸収されるので反射せず、カメラ150では検出されない。
【0106】
また、光源110から発せられた別の光LXVIIは、評価用マスク140の透光部142、円偏光板420、パターン位相差フィルム170の異方性領域171、基材160及び反射型の円偏光板430の順に透過する。
すなわち、光LXVIIは、評価用マスク140の透光部142を透過した後で、円偏光板420に入射する。円偏光板420に光LXVIIが入射すると、回転方向A420と同じ回転方向Axiiiに回転する円偏光が円偏光板420を透過し、他の偏光は円偏光板420により遮られる。本実施形態では円偏光板420は吸収型であるため、遮られた偏光は円偏光板420で吸収されるので反射せず、カメラ150では検出されない。
円偏光板420を透過した光LXVIIは、その後、パターン位相差フィルム170及び基材160を透過する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていると、光LXVIIは全て、偏光状態を変えずにそのまま等方性領域172及び基材160を透過する。
等方性領域172及び基材160を透過した光LXVIIは、その後、反射型の円偏光板430へ入射する。入射する光LXVIIは、円偏光板430を透過しうる回転方向A430と円偏光の回転方向Axivが同じであるので、この光LXVIIは、円偏光板430を透過する。
【0107】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置において、カメラ150が光LXVI及びLXVIIを検知しない暗状態を観察できる。したがって、第一実施形態と同様に、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、少なくとも一つの位置において暗状態が観察されれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正であると評価できる。
【0108】
次に、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合を、図15に例を示して説明する。図15は、本発明の第六実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
図15に示す評価系6において光源110から光が発せられると、一部の光LXVIIIは、図14を用いて説明した光LXVIIと同様にして評価用マスク140の透光部142及び円偏光板420を透過し、パターン位相差フィルム170に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていないと、光LXVIIIの一部は異方性領域171及び基材160を透過する。異方性領域171を透過する際、光LXVIIIは、円偏光の回転方向を逆向きに変換されて、円偏光板430を透過しうる回転方向A430と円偏光の回転方向Axvが逆向きになる。このため、光LXVIIIは円偏光板430で反射される。反射後の光LXVIIIは、反射前と同じ回転方向Axviに回転する円偏光であるが、再度パターン位相差フィルム170の異方性領域171を透過することによって回転方向を逆向きに変換されて、円偏光板420を透過しうる回転方向A420と円偏光の回転方向Axviiが同じになる。このため、光LXVIIIは円偏光板420を透過し、次いで評価用マスク140の透光部142を透過して、カメラ150に入る。このため、カメラ150で撮影された映像に周囲よりも明るい部分が生じ、暗状態とならない。
【0109】
したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、いずれの位置においても暗状態が観察されなければ、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正でないと評価できる。
【0110】
以上のように、本実施形態の評価方法によれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が、貼り合わせる予定の液晶パネルとの関係で適正か否かを簡単に評価できる。
また、第三実施形態と同様の利点も得ることができる。
【0111】
[8.第七実施形態]
上述した実施形態では、いずれも、評価対象となるパターン位相差フィルムが備える基材は位相差を有さないフィルムであったが、基材は、位相差を有するフィルムであってもよい。ただし、基材が位相差を有する場合、当該基材において発現する位相差を相殺するために、基材と同じフィルムを補償用基材とし、この補償用基材を、基材の遅相軸と補償用基材の遅相軸とが垂直となるように設けることが好ましい。これにより、基材が位相差を有していても、精度の高い評価を行うことができる。
【0112】
[8−1.評価系の用意]
図16は、本発明の第七実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。ここで、図16においては、積層位相差フィルム580を構成する基材560とパターン位相差フィルム170とを、図示のため離隔して示されているが、これらは実際の態様においては接触した状態で評価されてもよい。
図16に示すように、本発明の第七実施形態に係る評価系7では、基材160の代わりに基材560を用いたこと、並びに、補償用基材590を、パターン位相差フィルム170と円偏光板230との間に設けたこと以外は、第三実施形態と同様である。
【0113】
基材560は、面内において一様な位相差を有し、したがって面内に遅相軸を有するフィルムである。パターン位相差フィルム170はこの基材560の表面に設けられ、これらの基材560及びパターン位相差フィルム170によって積層位相差フィルム580が構成されている。本実施形態では、基材560の位相差は、透過光の波長に対して1/4波長であり、このため基材560は1/4波長板として機能しうるようになっている。また、基材560の面内の遅相軸A560の方向は、パターン位相差フィルム170の長手方向に対して垂直に設定されている。
【0114】
補償用基材590は、基材560と同様のフィルムである。したがって、本実施形態では、補償用基材590は、透過光の波長に対して1/4波長の位相差を有している。また、補償用基材590の面内の遅相軸A590の方向は、パターン位相差フィルム170の長手方向に対して平行に設定されている。したがって、基材560の遅相軸A560と補償用基材590の遅相軸A590とは垂直になっている。
【0115】
これにより、本実施形態においては、基材560と同じ補償用基材590を、基材560の遅相軸A560と補償用基材590の遅相軸A590とが垂直となるように、パターン位相差フィルム170と円偏光板230との間に備える評価系7が構成されている。
【0116】
[8−2.パターン位相差フィルムの評価]
前記のような評価系7を用意した後で、光源110を光らせた状態で、第一実施形態と同様に、評価用マスク140の光源110とは反対側から、光源110が発した光を観察する。
【0117】
以下、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正である場合を、例を示して説明する。
図16に示すように光源110から光が発せられると、一部の光LXIXは、円偏光板220、基材560、パターン位相差フィルム170の異方性領域171、補償用基材590及び円偏光板230の順に透過し、評価用マスク140に入射する。
すなわち、円偏光板220に光LXIXが入射すると、回転方向A220と同じ回転方向Avに回転する円偏光が円偏光板220を透過し、他の偏光は円偏光板220により遮られる。
円偏光板220を透過した光LXIXは、その後、基材560を透過する。この際、基材560は透過光に対して1/4波長の位相差を発現するので、光LXIXは、振動方向Axviiiを有する直線偏光に変換される。
基材560を透過した光LXIXは、その後、パターン位相差フィルム170の異方性領域171を透過する。異方性領域171を透過する際、光LXIXは、振動方向Axixが90°回転させられる。
異方性領域171を透過した光LXIXは、補償用基材590を透過する。この際、補償用基材590は基材560と同じ位相差を有し、且つ、基材560の遅相軸A560と補償用基材590の遅相軸A590とが垂直であるので、光LXIXは、基材560に入射する前とは逆向きに回転する円偏光に変換される。
補償用基材590を透過した光LXIXは、その後、図8を用いて説明した第三実施形態に係る光LVIIと同様にして、円偏光板230を透過し、評価用マスク140に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていると、光LXIXは全て遮光部141に遮られる。
【0118】
また、光源110から発せられた別の光LXXは、円偏光板220、基材560、パターン位相差フィルム170の等方性領域172及び補償用基材590の順に透過し、円偏光板230に入射する。
すなわち、光LXXは、光LXIXと同様にして、円偏光板220及び基材560を透過し、パターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過する。この際、等方性領域172は位相差を有さないので、光LXXは、偏光状態を変えずに振動方向Axxを維持したままパターン位相差フィルム170の等方性領域172を透過する。
等方性領域172を透過した光LXXは、その後、補償用基材590を透過する。この際、補償用基材590は基材560と同じ位相差を有し、且つ、基材560の遅相軸A560と補償用基材590の遅相軸A590とが垂直であるので、光LXXは、基材560に入射する前とは同じ回転方向Aviiに回転する円偏光に変換される。
補償用基材590を透過した光LXXは、その後、図8を用いて説明した第三実施形態に係る光LVIIIと同様にして、円偏光板230に遮られる。
【0119】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置において、カメラ150が光LXIX及びLXXを検知しない暗状態を観察できる。したがって、第一実施形態と同様に、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、少なくとも一つの位置において暗状態が観察されれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正であると評価できる。
【0120】
次に、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合を、図17に例を示して説明する。図17は、本発明の第七実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
図17に示す評価系7において、光源110から光が発せられると、一部の光LXXIは、図16を用いて説明した光LXIXと同様にして、円偏光板220、基材560、パターン位相差フィルム170の異方性領域171、補償用基材590及び円偏光板230の順に透過し、評価用マスク140に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていないと、光LXXIの一部は評価用マスク140の透光部142を透過し、カメラ150に入る。このため、カメラ150で撮影された映像に周囲よりも明るい部分が生じ、暗状態とならない。
【0121】
したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、いずれの位置においても暗状態が観察されなければ、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正でないと評価できる。
【0122】
以上のように、本実施形態の評価方法によれば、基材560が位相差を有していても、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が、貼り合わせる予定の液晶パネルとの関係で適正か否かを簡単に評価できる。
また、第三実施形態と同様の利点も得ることができる。
【0123】
[9.第八実施形態]
第七実施形態では、第一実施形態〜第四実施形態のように、サンプルを透過する光を観察するタイプの評価系において補償用基材を用いる例を示したが、例えば第五実施形態及び第六実施形態のように、サンプルから反射する光を観察するタイプの評価系において補償用基材を用いてもよい。
【0124】
[9−1.評価系の用意]
図18は、本発明の第八実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。ここで、図18においては、積層位相差フィルム580を構成する基材560とパターン位相差フィルム170とを、図示のため離隔して示されているが、これらは実際の態様においては接触した状態で評価されてもよい。
図18に示すように、本発明の第八実施形態に係る評価系8では、基材160の代わりに基材560を用いたこと、並びに、補償用基材590を、パターン位相差フィルム170と円偏光板420との間に設けたこと以外は、第六実施形態と同様である。
基材560及び補償用基材590は、第七実施形態で説明したものと同様である。
【0125】
これにより、本実施形態においては、基材560と同じ補償用基材590を、基材560の遅相軸A560と補償用基材590の遅相軸A590とが垂直となるように、パターン位相差フィルム170と円偏光板420との間に備える評価系8が構成されている。
【0126】
[9−2.パターン位相差フィルムの評価]
前記のような評価系8を用意した後で、光源110を光らせた状態で、第五実施形態と同様に、評価用マスク140の光源110と同じ側から、光源110が発した光を観察する。
【0127】
以下、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正である場合を、例を示して説明する。
図18に示すように光源110から光が発せられると、一部の光LXXIIは、第六実施形態と同様に、評価用マスク140の遮光部141に入射し、この遮光部141で遮られる。遮られた光LXXIIは遮光部141で吸収されるので反射せず、カメラ150では検出されない。
【0128】
また、光源110から発せられた別の光LXXIIIは、評価用マスク140の透光部142、円偏光板420、補償用基材590、パターン位相差フィルム170の等方性領域172、基材560及び反射型の円偏光板430の順に透過する。
すなわち、光LXXIIIは、評価用マスク140の透光部142を透過した後で、円偏光板420に入射する。円偏光板420に光LXXIIIが入射すると、第六実施形態と同様に、回転方向A420と同じ回転方向Axiiiに回転する円偏光が円偏光板420を透過し、他の偏光は円偏光板420により遮られる。
円偏光板420を透過した光LXXIIIは、その後、補償用基材590を透過する。この際、補償用基材590は透過光に対して1/4波長の位相差を発現するので、光LXXIIIは、振動方向Axxiを有する直線偏光に変換される。
補償用基材590を透過した光LXXIIIは、その後、パターン位相差フィルム170を透過する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていると、光LXXIIIは全て、偏光状態を変えずに振動方向Axxiiを維持したまま等方性領域172を透過する。
等方性領域172を透過した光LXXIIIは、その後、基材560を透過する。この際、基材560は補償用基材590と同じ位相差を有し、且つ、基材560の遅相軸A560と補償用基材590の遅相軸A590とが垂直であるので、光LXXIIIは、補償用基材590に入射する前と同様の偏光状態(即ち、矢印Axivで示す向きに回転する円偏光)に変換される。
基材560を透過した光LXXIIIは、その後、第六実施形態に係る光LXVIIと同様にして、円偏光板430を透過する。
【0129】
このように、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正であれば、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行うことにより、ある位置において、カメラ150が光LXXII及びLXXIIIを検知しない暗状態を観察できる。したがって、第一実施形態と同様に、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、少なくとも一つの位置において暗状態が観察されれば、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正であると評価できる。
【0130】
次に、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が適正でない場合を、図19に例を示して説明する。図19は、本発明の第八実施形態に係る評価系を模式的に示す図である。
図19に示す評価系8において、光源110から光が発せられると、一部の光LXXIVは、図18を用いて説明した光LXXIIIと同様にして評価用マスク140の透光部142、円偏光板420、補償用基材590を透過し、パターン位相差フィルム170に入射する。この際、厚み方向から見て評価用マスク140の遮光部141がパターン位相差フィルム170の異方性領域171の全体に重なっていないと、光LXXIVの一部は異方性領域171を透過する。異方性領域171を透過する際、光LXXIVは、振動方向Axxiiiが90°回転させられる。
異方性領域171を透過した光LXXIVは、その後、基材560を透過する。この際、基材560は補償用基材590と同じ位相差を有し、且つ、基材560の遅相軸A560と補償用基材590の遅相軸A590とが垂直であるので、光LXXIVは、第六実施形態において図15を用いて説明した光LXVIIIと同様に、円偏光板430を透過しうる回転方向A430とは円偏光の回転方向Axvが逆になる。このため、光LXXIVは円偏光板430で反射される。
反射後の光LXXIVは、反射前と同じ回転方向Axviに回転する円偏光であるが、再度、基材560、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び補償用基材590を透過することによって偏光状態を、振動方向Axxivを有する直線偏光、前記直線偏光に対して振動方向Axxvが垂直な直線偏光、及び回転方向Axviiに回転する円偏光に変換される。補償用基材590を透過した後の円偏光は、円偏光板420を透過しうる回転方向A420と円偏光の向きが同じになる。このため、光LXXIVは円偏光板420を透過し、次いで評価用マスク140の透光部142を透過して、カメラ150に入る。このため、カメラ150で撮影された映像に周囲よりも明るい部分が生じ、暗状態とならない。
【0131】
したがって、パターン位相差フィルム170と評価用マスク140との相対的な位置合わせを行い、いずれの位置においても暗状態が観察されなければ、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の寸法及び形状が適正でないと評価できる。
【0132】
以上のように、本実施形態の評価方法によれば、基材560が位相差を有していても、パターン位相差フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172の形状及び寸法が、貼り合わせる予定の液晶パネルとの関係で適正か否かを簡単に評価できる。
また、第三実施形態と同様の利点も得ることができる。
【0133】
[10.その他の実施形態]
上述した実施形態は、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施してもよい。
例えば、第一実施形態又は第二実施形態において基材160が位相差を有する場合、第七実施形態と同様の要領で、パターン位相差フィルム170と直線偏光板130との間に補償用基材を設けてもよい。
また、例えば、第四実施形態において基材160が位相差を有する場合、第七実施形態と同様の要領で、パターン位相差フィルム170と円偏光板230との間に補償用基材を設けてもよい。
また、例えば、第五実施形態において基材160が位相差を有する場合、第八実施形態と同様の要領で、パターン位相差フィルム170と直線偏光板320との間に補償用基材を設けてもよい。
【0134】
また、例えば、第五実施形態、第六実施形態、及び第八実施形態において、偏光板330及び430のパターン位相差フィルム170とは反対側の面に、光源110より発せられる光を吸収する黒シートを配置してもよい。黒シートを上記のように配置することで、偏光板330及び430を透過した光LXIV、LXVII及びLXXIIIの反射を防止し、ある位置において観察される暗状態を明瞭に観察することができる。
【0135】
また、例えば、上述した実施形態ではいずれもカメラ150によって観察をしたが、目視にて評価を行ってもよい。
また、例えば、パターン位相差異フィルム170の異方性領域171及び等方性領域172、並びに評価用マスク140の遮光部141及び透光部142の形状は、帯状以外の任意の形状にしてもよい。
【0136】
さらに、例えば、パターン位相差フィルム170の各領域の位相差及び遅相軸の方向は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。各領域の位相差の大きさによっては、暗状態において光の無い真っ暗の観察像が観察されないこともありえるが、パターンが適正でないことを示す明るい部分を検出できる程度に暗い観察像が得られれば、評価時に最も暗い暗状態において例えばグレーの観察像しか得られなくても、構わない。
【0137】
[11.材料等]
続いて、本発明の評価方法において用いられる部材を構成する材料の例について、以下に説明する。
【0138】
[11−1.偏光板]
吸収型の直線偏光板は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造してもよい。また、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造してもよい。
また、反射型の直線偏光板は、例えば、下記を挙げることができる。
(1)ブリュースター角による偏光成分の反射率の差を利用したもの(例えば、特表平6−508449号公報に記載のもの)。
(2)微細な金属線状パターンを施工したもの(例えば、特開平2−308106号公報に記載のもの)。
(3)少なくとも2種の高分子フィルムを積層し、屈折率異方性による反射率の異方性を利用したもの(例えば、特表平9−506837号公報に記載のもの)。
(4)高分子フィルム中に少なくとも2種の高分子で形成される海島構造を有し、屈折率異方性による反射率の異方性を利用したもの(例えば、米国特許明細書第5,825,543号に記載のもの)。
(5)高分子フィルム中に粒子が分散し、屈折率異方性による反射率の異方性を利用したもの(例えば、特表平11−509014号公報に記載のもの)。
(6)高分子フィルム中に無機粒子が分散し、サイズによる散乱能差に基づく反射率の異方性を利用したもの(例えば、特開平9−297204号公報に記載のもの)。
【0139】
吸収型の円偏光板は、例えば、上述した吸収型の直線偏光板と、1/4波長板とを組み合わせた偏光板などが挙げられる。
また、反射型の円偏光板は、例えば、コレステリック液晶偏光板(例えば、特開2010−181710号公報に記載の「コレステリック樹脂層」)などが挙げられる。また、上述した反射型の直線偏光板と、1/4波長板とを組み合わせた偏光板を用いてもよい。吸収型の直線偏光板ないし反射型の直線偏光板と1/4波長板とを組み合わせた偏光板を用いる場合、1/4波長板は、パターン位相差フィルム側に向くように配置することが好ましい。
【0140】
偏光板の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
また、偏光板の厚さ(平均厚さ)は、好ましくは5μm〜80μmである。
【0141】
[11−2.評価用マスク]
評価用マスクとしては、例えば、透明フィルムの表面に、着色剤及び金属粒子等を含む樹脂層を備えるものを用いてもよい。このような評価用マスクでは、樹脂層の厚みが厚い部分が遮光部となり、樹脂層の厚みが薄い部分又は樹脂層が形成されていない部分が透光部となる。
【0142】
透明フィルムは、パターン位相差フィルムの評価が可能な程度の透光性を有するものを用いる。通常、透明フィルムの材料としては、1mm厚で全光線透過率(JIS K7361−1997に準拠して、濁度計(日本電色工業社製、NDH−300A)を用いて測定)が80%以上である材料であれば、好適に使用できる。
【0143】
透明フィルムの厚みとしては、下限は通常10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上であり、上限は通常3mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。10μm以下であると、フィルム剛性が低くなり、評価用マスクとしての取扱いが困難になる可能性がある。3mm以上であると、実際に液晶パネルに搭載して観察する場合と評価条件が大きく異なる可能性があるため、評価結果が、実際の液晶パネルを用いて観察した結果と整合性が取れなくなるおそれがある。
【0144】
樹脂層を形成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレタンアクリレート硬化樹脂、エポキシアクリレート硬化樹脂、ポリエステルアクリレート硬化樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0145】
着色剤としては、例えば、有機顔料、カーボンブラック顔料、導電性カーボンブラック、電池用カーボンブラック、ゴム用カーボンブラック等の顔料;アントラキノン系化合物、フタロシアニン系化合物、ペリノン系化合物、ジオキサジン系化合物、ベンゾフラン系化合物、チオフェンモノアゾ系化合物、シアニン系化合物、ジインモニウム系化合物等の染料などが挙げられる。これらの着色剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0146】
金属粒子を形成する金属材料としては、例えば、ニッケル、白金、パラジウム、銀−パラジウム、銅、金、銀、錫、鉛、並びにこれらの合金などが挙げられる。これらの金属材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、金属粒子には表面処理が施されていてもよく、例えばチオール化合物によって表面を修飾されていてもよい。金属粒子の粒子径(直径)は、0.2μm以上60μm以下の範囲にあることが好ましい。
【0147】
透明フィルムの表面に樹脂層を供えたマスクをガラス板又はプラスチック板に貼合した評価用マスクを用いてもよい。ガラス板及びプラスチック板は、通常、前記の透明フィルムと同様の透光性を有するものを用いる。この場合、マスクとガラス板ないしプラスチック板を貼合したものの厚みが10μm以上3mm以下であることが好ましい。
【0148】
また、評価用マスクとして、ストライプ状のパターンを構成する透光部及び遮光部をガラス上に設けたガラスマスクを用いてもよい。ガラスマスクは、例えば、ガラス表面にクロムスパッタを施し、さらにフォトレジストを塗布し、ストライプ状に露光してフォトレジストを感光させて、洗浄し、クロムをエッチングしたものを用いてもよい。あるいは、例えば感光性乳剤を塗布したPETフィルムをストライプ状にレーザー描画し、洗浄し、該PETフィルムをガラス上に接着層を介して貼り合わせたものを用いてもよい。
また、特開平4−299332号公報に示した方法を使用してもよい。
【0149】
[11−3.パターン位相差フィルム]
パターン位相差フィルムは、例えば、基材フィルム上に液晶相を呈することができ且つ紫外線(UV)等のエネルギー線の照射を受けて硬化しうる材料を用いて製造したものを用いてもよい。かかる材料を、以下において「液晶層形成用組成物」ということがある。また、かかる材料の、未硬化状態の層又は硬化後の層を、以下において「液晶樹脂層」ということがある。
【0150】
パターン位相差フィルムは、例えば、液晶層形成用組成物を基材フィルムに塗布して未硬化状態の液晶樹脂層を得て、その液晶樹脂層の一部をある配向状態で硬化させ、他の一部を等方相の配向状態(すなわち、配向していない状態)で硬化させることに製造してもよい。このような製造方法は、基材フィルムとして長尺の基材フィルムを用いて行うことが可能であり、基材フィルムを搬送方向にラビングすることで、そのラビング方向と平行(遅相軸が搬送方向と平行)に液晶層形成用組成物が配向し、そのためパターン位相差フィルムを長尺のフィルムとして製造できるので、生産効率の点で優れている。
【0151】
具体的には、
i.基材フィルムの一方の表面に、エネルギー線を遮光する遮光部と前記エネルギー線を透光する透光部とを有するマスク層を作製する工程と、
ii.前記基材フィルムの前記マスク層とは反対側の表面に未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程と、
iii.前記基材フィルムの前記マスク層側から、前記遮光部で遮光されるが前記透光部を透光する波長のエネルギー線を照射して、前記液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程と
iv.前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程と、
v.前記基材フィルムの前記マスク層とは反対側からエネルギー線を照射して前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域を硬化させる第二の硬化工程と
を有する製造方法により製造してもよい。
【0152】
これらのようにして製造されたパターン位相差フィルムは、通常は基材フィルム及びマスク層を剥がした後で使用される。ただし、適宜、基材フィルム及びマスク層は、剥がさずに使用してもよい。例えば、基材フィルムとして位相差フィルムを用いてもよい。
【0153】
上記のパターン位相差フィルムの製造方法において、基材フィルムの材料としては、未硬化状態の液晶樹脂層を硬化させる工程において液晶樹脂層が硬化できる程度に紫外線等のエネルギー線を透過させられる材料を用いうる。通常は、1mm厚で全光線透過率(JIS K7361−1997に準拠して、濁度計(日本電色工業社製、NDH−300A)を用いて測定)が80%以上である材料が好適である。
【0154】
基材フィルムの材料の例を挙げると、鎖状オレフィン系ポリマー樹脂、脂環式オレフィン系ポリマー樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸セルロース系ポリマー樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィン系ポリマー樹脂及び脂環式オレフィン系ポリマー樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ゼオノア1420(商品名、日本ゼオン社製)を挙げることができる。これらの材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。基材としては、市販の長尺の斜め延伸フィルム、例えば、日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」を用いてもよい。
【0155】
基材フィルムの厚みは、製造時のハンドリング性、材料のコスト、薄型化及び軽量化の観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは60μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0156】
基材フィルムは、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。また、等方なフィルムであっても、異方性を有するフィルムであってもよい。
【0157】
基材フィルムは、一層のみからなる単層構造のフィルムであってもよく、二層以上の層からなる複層構造のフィルムであってもよい。通常は、生産性及びコストの観点から、単層構造のフィルムを用いる。
【0158】
基材フィルムは、その片面又は両面に表面処理が施されたものであってもよい。表面処理を施すことにより、基材フィルムの表面に直接形成される他の層との密着性を向上させることができる。表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。また、基材フィルムの液晶層形成用組成物を塗布する面に配向膜を有していてもよい。
【0159】
マスク層の材料としては、エネルギー線、特に紫外線を遮光することができ、且つパターンの形成が容易なマスク用組成物を適宜選択して用いてもよい。
【0160】
通常、マスク用組成物としては、樹脂を用いる。前記の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレタンアクリレート硬化樹脂、エポキシアクリレート硬化樹脂およびポリエステルアクリレート硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂が好ましい。これらの樹脂を含むことにより、紫外線を遮光する材料を高温環境下においても保持し、安定した遮光部を作製することができる。前記の樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0161】
マスク用組成物に含まれる樹脂のガラス転移温度は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下である。ガラス転移温度を80℃以上にすることによりマスク層の耐熱性を高めることができ、例えば液晶樹脂層の加熱時にマスク層が変形することを防止できる。また、ガラス転移温度を400℃以下にすることにより、樹脂の溶解性を高めてマスク用組成物の印刷を簡単にできる。印刷前の状態とマスク層を形成した後の状態とで樹脂のガラス転移温度が変化する場合には、マスク層を形成した後の状態においてガラス転移温度が前記の範囲に収まることが好ましい。
【0162】
マスク用組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。これによりマスク層の遮光部が紫外線吸収剤を含むことになり、遮光部において紫外線を安定して遮光することができるようになる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤の使用量は、マスク層中のモノマー、オリゴマー及びポリマー100重量部に対して、通常5重量部以上、好ましくは8重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。
【0163】
マスク用組成物は、さらに、着色剤、金属粒子、溶媒、光重合開始剤、架橋剤、その他の成分を含んでいてもよい。
【0164】
マスク用組成物を用いてマスク層を形成する方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、ロータリースクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法、又はこれらの組み合わせである印刷法を好ましく挙げることができる。透光部と遮光部は、例えば、マスク層の厚さが薄い層と厚い層とを形成することにより設けてもよい。
【0165】
液晶層形成用組成物としては、液晶化合物を含む組成物を用いうる。液晶化合物としては、例えば、重合性基を有する棒状液晶化合物、側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。棒状液晶化合物としては、例えば、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003−177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0166】
液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下である。屈折率異方性Δnが0.05未満では所望の光学的機能を得るために液晶樹脂層の厚さが厚くなって配向均一性が低下する可能性があり、また経済コスト的にも不利である。屈折率異方性Δnが0.30より大きいと所望の光学的機能を得るために液晶樹脂層の厚さが薄くなり、厚さ精度に対して不利である。また、Δnが0.30より大きい場合、液晶樹脂層の紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合がありえるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。液晶層形成用組成物が液晶化合物を1種類だけ含む場合には、当該液晶化合物の屈折率異方性を、そのまま液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性とする。また、液晶層形成用組成物が液晶化合物を2種類以上含む場合には、各液晶化合物それぞれの屈折率異方性Δnの値と各液晶化合物の含有比率とから求めた屈折率異方性Δnの値を、液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性とする。屈折率異方性Δnの値は、セナルモン法により測定しうる。
【0167】
さらに、液晶層形成用組成物は、製造方法や最終的な性能に対して適正な物性を付与するために、液晶化合物以外にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、有機溶媒、界面活性剤、キラル剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、架橋剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0168】
有機溶媒のうち好適な例を挙げると、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、およびエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、環状ケトン類、環状エーテル類が、液晶化合物を溶解させやすいために好ましい。環状ケトン溶媒としては、例えば、シクロプロパノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、中でもシクロペンタノンが好ましい。環状エーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、中でも1,3−ジオキソランが好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよく、液晶層形成用組成物としての相溶性や粘性、表面張力の観点などから最適化されることが好ましい。
有機溶媒の含有割合は、有機溶媒以外の固形分全量に対する割合として、通常は30重量%以上95重量%以下である。
【0169】
界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することが好ましい。好ましい界面活性剤の例を挙げると、疎水基部分にシロキサン及びフッ化アルキル基等を含有するノニオン系界面活性剤などが挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の例を製品名で挙げると、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社サーフロンのKH−40等が挙げられる。界面活性剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0170】
界面活性剤の配合割合は、液晶層形成用組成物を硬化して得られる液晶樹脂層中における界面活性剤の濃度が0.05重量%以上3重量%以下となるようにすることが好ましい。界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる可能性がある。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶性化合物分子間に入り込み、配向均一性を低下させる可能性がある。
【0171】
キラル剤は、重合性化合物であってもよく、非重合性化合物であってもよい。キラル剤としては、通常、分子内にキラルな炭素原子を有し、液晶化合物の配向を乱さない化合物を使用する。キラル剤の例を挙げると、重合性のキラル剤としてはBASF社製「LC756」等が挙げられる。また、例えば、特開平11−193287号公報、特開2003−137887号公報などに記載されているものも挙げられる。キラル剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。キラル剤は、通常、ツイステッドネマチック相を有する領域を形成する場合に、重合性を有する液晶化合物と併用して用いられる。
【0172】
重合開始剤は、例えば熱重合開始剤を用いてもよいが、通常は光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる化合物を使用しうる。光重合開始剤の例を挙げると、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp′−ジクロロベンゾフェノン、pp′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。重合開始剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて液晶層形成用組成物に、例えば三級アミン化合物等の光増感剤又は重合促進剤を含ませて、液晶層形成用組成物の硬化性を調整してもよい。光重合効率を向上させるためには、液晶化合物及び光重合開始剤などの平均モル吸光係数を適切に選定することが好ましい。
【0173】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系;などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、所望する耐光性を付与するために、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0174】
紫外線吸収剤の配合割合は、液晶化合物100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下である。紫外線吸収剤の配合割合が、0.001重量部未満の場合には紫外線吸収能が不十分となり所望する耐光性を得られない可能性があり、5重量部より多い場合には液晶層形成用組成物を紫外線等の活性エネルギー線で硬化させる際に硬化が不十分となり、液晶樹脂層の機械的強度が低くなったり耐熱性が低くなったりする可能性がある。
【0175】
液晶層形成用組成物には、所望する機械的強度に応じて架橋剤を含ませてもよい。架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;などが挙げられる。架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、液晶層形成用組成物には架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を含ませ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させるようにしてもよい。
【0176】
前記架橋剤の配合割合は、硬化後の液晶樹脂層中における架橋剤の濃度が0.1重量%以上20重量%以下となるようにすることが好ましい。架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られない可能性があり、逆に20重量%より多いと硬化後の液晶樹脂層の安定性を低下させる可能性がある。
【0177】
酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤の配合量は、粘着層の透明性や粘着力が低下しない範囲としうる。
【0178】
未硬化状態の液晶樹脂層を設ける場合、通常は、塗布法を用いる。液晶層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、リバースグラビアコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等の方法が挙げられる。液晶層形成用組成物を基材フィルムの表面に塗布することにより、未硬化状態の液晶樹脂層が形成される。
【0179】
液晶層形成用組成物は、基材フィルムの表面に直接に塗布してもよいが、基材フィルムの表面に例えば配向膜等を介して間接的に塗布してもよい。配向膜を用いれば、液晶樹脂層において液晶化合物を容易に配向させることができる。
【0180】
配向膜は、例えば、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを用いて形成してもよい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0181】
配向膜の厚みは、所望する液晶樹脂層の配向均一性が得られる厚みであればよく、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。さらに、例えば、特開平6−289374号公報、特表2002−507782号公報、特許4022985号公報、特許4267080号公報、特許4647782号公報、米国特許5389698号明細書などに示されるような光配向膜と偏光UVを用いる方法によって、液晶化合物を配向させるようにしてもよい。
【0182】
また、上述した配向膜以外の手段によって、液晶化合物を配向させるようにしてもよい。例えば、配向膜を使用せずに基材フィルムの表面を直接ラビングするような配向処理を施してもよい。通常、基材フィルムの搬送方向とラビング方向は平行になる。
前記の配向膜の形成、基材フィルムの表面のラビング等の処理工程は、マスク層形成工程の工程前、工程中及び工程後のいずれの時点で行ってもよいが、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程の前に行うことが好ましい。
【0183】
パターン位相差フィルムの製造方法においては、第一の硬化工程に先立ち、必要に応じて、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程を行った後で、液晶樹脂層の液晶化合物を配向させる配向工程を行ってもよい。配向工程における具体的な操作としては、例えば、オーブン内で未硬化状態の液晶樹脂層を所定の温度に加熱する操作を挙げることができる。
【0184】
配向工程において液晶樹脂層を加熱する温度は、通常40℃以上、好ましくは50℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは140℃以下である。また、加熱処理における処理時間は、通常1秒以上、好ましくは5秒以上であり、通常3分以下、好ましくは120秒以下である。これにより、液晶樹脂層中の液晶化合物が配向しうる。また、液晶層形成用組成物に溶媒が含まれていた場合、前記の加熱によって通常は溶媒が乾燥するので、液晶樹脂層から溶媒が除去される。したがって、配向工程を行うと、通常は液晶樹脂層を乾燥させる乾燥工程も同時に進行する。通常、液晶樹脂層の配向軸はラビング方向と平行となり、配向軸が遅相軸となる。
【0185】
必要に応じて配向工程を行った後で、液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程を行う。第一の硬化工程は、通常、紫外線の照射により行う。紫外線の照射時間、照射量、及びその他の条件は、液晶層形成用組成物の組成及び液晶樹脂層の厚みなどに応じて適切に設定しうる。照射時間は通常0.01秒から3分の範囲であり、照射量は通常0.01mJ/cmから50mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。
【0186】
第一の硬化工程の後で、液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程を行う。この工程において、配向状態を変化させる方法としては、例えば、ヒーターにより、液晶樹脂層を、液晶層形成用組成物の透明点(NI点)以上に加熱してもよい。これにより、液晶化合物分子の配向はランダムになるので、液晶樹脂層の未硬化状態の領域は等方相となる。
【0187】
液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させた後で、第二の硬化工程を行う。第二の硬化工程は、紫外線の照射により行ってもよい。紫外線の照射時間、照射量などは、液晶層形成用組成物の組成及び液晶樹脂層の厚みなどに応じて適切に設定しうるが、照射量は通常50mJ/cmから10,000mJ/cmの範囲である。また、紫外線の照射は、例えば窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。照射に際して、必要に応じてヒーターによる加熱を継続して、未硬化状態の液晶樹脂層の等方相を維持した状態で照射を行ってもよい。
【0188】
さらに、別の製造方法として、パターン位相差フィルムは、
i.基材フィルムの一方の表面に、未硬化状態の液晶樹脂層を設ける工程と、
ii.前記基材フィルムの液晶樹脂層を設けた面と反対側の表面に、ストライプパターンの透光部および遮光部をガラス上に設けたガラスマスクを介して、エネルギー線を照射して、前記液晶樹脂層の一部の領域を硬化させる第一の硬化工程と、
iii.前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域における配向状態を変化させる工程と、
iv.前記基材フィルムの液晶樹脂層を設けた面にエネルギー線を照射して前記液晶樹脂層の未硬化状態の領域を硬化させる第2の硬化工程と
を有する製造方法により製造してよい。この製造方法においては、先に説明した製造方法と同様の操作は、先に説明した製造方法と同様の条件で行ってもよい。
【0189】
また、第一の硬化工程としては、特開平4−299332号公報に示した方法を使用してもよい。また、ガラスマスクは、例えば、ガラス表面にクロムスパッタを施し、さらにフォトレジストを塗布し、ストライプ状に露光してフォトレジストを感光させて、洗浄し、クロムをエッチングしたものを用いてもよい。あるいは、例えば感光性乳剤を塗布したPETフィルムをストライプ状にレーザー描画し、洗浄し、該PETフィルムをガラス上に接着層を介して貼り合わせたものを用いてもよい。
さらに、上述した各製造方法では、パターン位相差フィルムが得られる限り、各工程の順番は任意である。
【0190】
上述した製造方法によれば、いずれも、遮光部及び透光部により形成されるマスク層又はガラスマスクのマスクパターンを精度よく写し取ったパターンを有するパターン位相差フィルムが製造できる。さらに、当該方法により得られたパターン位相差フィルムにおいては、位相差Reを有する異方性領域と位相差Reを有さない等方性領域との間には、物質的な連続性がある。したがって、領域間の空隙による反射及び散乱等を生じない点で光学的に有利であり、また、領域間の空隙を起点とした破損等を生じない点で機械的強度の点でも有利である。
【0191】
パターン位相差フィルムとしての液晶樹脂層の厚みは、液晶層形成用組成物における液晶化合物の屈折率異方性Δnの値に応じて、パターン位相差フィルムの領域それぞれで所望の位相差Reが得られるように適切な厚みに設定しうる。通常は、液晶樹脂層の厚みは、0.5μm以上50μm以下の範囲である。
【0192】
[11−4.基材]
基材の材料としては、透明性が良好な熱可塑性樹脂を、特に制約無く用いうる。かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、鎖状オレフィン系ポリマー樹脂、脂環式オレフィン系ポリマー樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸セルロース系ポリマー樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、鎖状オレフィン系ポリマー樹脂及び脂環式オレフィン系ポリマー樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ゼオノア1420(商品名、日本ゼオン社製)を挙げることができる。基材としては、市販の長尺の斜め延伸フィルム、例えば、日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」を用いてもよい。
【0193】
[12.用途]
上述したようにして評価されたパターン位相差フィルムは、例えば、立体画像表示装置の構成部材として用いてもよい。以下、立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の具体的な例について図面を示して説明する。
【0194】
図20は、立体画像表示装置として使用しうる液晶表示装置の例を概略的に示す分解上面図である。図20は、観察者が、液晶表示装置600の表示面に対して垂直な方向から、右目及び左目により映像を視認する態様を上側から観察した例を示している。液晶表示装置600は、図中左側に縦置きされ(即ち、表示面が鉛直方向に平行となるよう置かれ)、従って図中右側から観察する観察者の観察方向は、水平方向となる。図20に示すように、液晶表示装置600は、液晶パネル610と、1/4波長板である位相差フィルム620と、パターン位相差フィルム630とを、この順に備える。使用の態様において、液晶パネル610、位相差フィルム620及びパターン位相差フィルム630は、通常は貼付された状態とされるが、図20では図示のためこれらを分解して示している。また、位相差フィルム620とパターン位相差フィルム630との間には通常は接着層が設けられるが、この接着層は大きな位相差を有さないので、画像表示に影響を与えないため、本例においては図示を省略する。
【0195】
液晶パネル610は、光源側から順に、直線偏光板である光源側偏光板611と、液晶セル612と、直線偏光板である視認側偏光板613とを備える。これらにより、液晶パネル610を透過した光は、直線偏光となって出射する。視認側偏光板613の透過軸は、矢印A613で示す通り、鉛直方向に対して45°の角度をなす。
【0196】
液晶パネル610には、厚み方向から見てそれぞれ異なる位置に、右目用画像を表示する画素領域と左目用画像を表示する画素領域とが設定されている。これらの画素領域はいずれも水平方向に延在する帯状の領域となっている。また、右目用画像を表示する画素領域及び左目用画像を表示する画素領域は幅が一定の領域となっていて、それらの配置は、右目用画像を表示する画素領域と左目用画像を表示する画素領域とが鉛直方向において交互となるように並んだストライプ状の配置となっている。
【0197】
位相差フィルム620は、透過光に対して1/4波長板として機能しうるフィルムであって、面内に一様な位相差を有する。位相差フィルム620の遅相軸は、矢印A620で示す通り、鉛直方向に対して平行であり、したがって視認側偏光板613の偏光透過軸に対して45°の角度をなす。視認側偏光板613から出射した直線偏光は、この位相差フィルム620を透過することにより、矢印A640で示す回転方向を有する円偏光に変換される。
【0198】
パターン位相差フィルム630は、画面の長手方向に対して平行且つ均一に設けられた帯状の異方性領域631と帯状の等方性領域632とを有する。異方性領域631及び等方性領域632は、鉛直方向において交互に並んだストライプ状の配置となっている。また、厚み方向から見ると、等方性領域632は液晶パネル610の右目用画像を表示する画素領域に重なり、異方性領域631は液晶パネルの左目用画像を表示する画素領域に重なるようになっている。
【0199】
異方性領域631の位相差は透過光の1/2波長であり、異方性領域631の遅相軸は、矢印A631で示す通り、水平方向である。これにより、位相差フィルム620から出射した円偏光のうち、異方性領域631を透過した光は、矢印A652で示される、反転した回転方向を有する円偏光に変換される。他方、等方性領域632の位相差はゼロであり、したがって、位相差フィルム620から出射した円偏光のうち等方性領域632を透過した光は、矢印A651で示す通り、透過前と同じ回転方向を有する円偏光として出射する。
【0200】
この例において、観察者は、偏光メガネ700を通して液晶表示装置600の表示面を観察する。偏光メガネ700は、1/2波長板710、1/4波長板720及び直線偏光板730をこの順に備える。1/2波長板710の遅相軸は、矢印A710で示す通り、パターン位相差フィルム630の異方性領域631の遅相軸に対して垂直である(即ち、鉛直方向に平行である。)。1/4波長板720の遅相軸は、矢印A720で示す通り、液晶表示装置600の位相差フィルム620の遅相軸に対して垂直である(即ち、水平方向に平行である。)。直線偏光板730の偏光透過軸は、矢印A730で示す通り、液晶表示装置600の視認側偏光板613の偏光透過軸に対して垂直である。また、1/2波長板710は、偏光メガネ700の、右目に対応する部分に設けられているが、左目に対応する部分には設けられない。
【0201】
等方性領域632から出射した光Rが、偏光メガネ700の右目に対応する部分に入射し、1/2波長板710を透過すると、光Rは、矢印A740で示される、反転した回転方向を有する円偏光に変換され、1/4波長板720に入射する。1/4波長板720を透過した光は、矢印A730に対して平行な振動方向を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板730を透過することができる。したがって、等方性領域632を透過した光Rは、使用者の右目で視認される。
一方、等方性領域632から出射した光Rが、偏光メガネ700の左目に対応する部分に入射すると、光Rは、偏光を変換されることなく1/4波長板720に入射する。1/4波長板720を透過した光は、矢印A730に対して垂直な振動方向を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板730を透過することができない。したがって、等方性領域632を透過した光Rは、使用者の左目で視認されない。
【0202】
また、異方性領域631から出射した光Lが、偏光メガネ700の左目に対応する部分に入射すると、光Lは、偏光を変換されることなく1/4波長板720に入射する。1/4波長板720を透過した光は、矢印A730に対して平行な振動方向を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板730を透過することができる。したがって、異方性領域631を透過した光Lは、使用者の左目で視認される。
一方、異方性領域631から出射した光Lが、偏光メガネ700の右目に対応する部分に入射し、1/2波長板710を透過すると、光Lは、反転した回転方向(即ち矢印A740と反対方向)を有する円偏光に変換され、1/4波長板720に入射する。1/4波長板720を透過した光は、矢印A730に対して垂直な振動方向を有する直線偏光に変換され、したがって直線偏光板730を透過することができない。したがって、異方性領域631を透過した光Lは、使用者の右目で視認されない。
【0203】
このように、使用者は、等方性領域632を透過した光を右目で視て、また、異方性領域631を透過した光を左目で視ることになる。したがって、等方性領域632に対応する画素領域で右目用の画像を表示し、異方性領域631に対応する画素領域で左目用の画像を表示することにより、使用者は、立体画像を視認できる。この際、液晶表示装置600では、パターン位相差フィルム630の形状及び寸法が適正であるので、異方性領域631及び等方性領域632の位相差を精度よく発現させることが可能である。したがって、液晶表示装置600の画質を向上させることができる。
【0204】
なお、上記の液晶表示装置600は、更に変更して実施してもよい。
例えば、位相差フィルム620とパターン位相差フィルム630との順番を入れ替えて、位相差フィルム620をパターン位相差フィルム630よりも視認側に設けてもよい。
また、例えば、液晶表示装置600に、反射防止フィルム、ギラツキ防止フィルム、アンチグレアフィルム、ハードコートフィルム、輝度向上フィルム、接着層、粘着層、ハードコート層、反射防止膜、保護層などを設けてもよい。
また、偏光メガネ700の右目に対応する部分と左目に対応する部分の構成を入れ替えて、且つ、液晶パネル610の異方性領域631に対応する画素領域の画像と液晶パネル610の等方性領域632に対応する画素領域の画像とを入れ替えて実施してもよい。
さらに、立体画像を適切に表示できる限り、各光学要素の遅相軸、透過軸等の光軸の方向は変更して実施してもよい。
【実施例】
【0205】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。また、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の説明において位相差Reの測定波長は、別に断らない限り550nmである。さらに、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0206】
[実施例1]
(1−1.パターン位相差フィルムの製造)
(1−1−1.液晶層形成用組成物の調製)
重合性液晶化合物(BASF社製、製品名「LC242」)25部と、重合開始剤(チバ・ジャパン社製、製品名「Irg 379」)1部と、液晶性を示さない化合物1(構造式は下記の通り)5部と、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート3部と、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(ネオス社製、製品名「フタージェント209F」)0.03部と、溶媒としてメチルエチルケトン66部からなる液晶層形成用組成物を調製した。
【0207】
【化1】

【0208】
(1−1−2.パターン位相差フィルムの形成)
基材フィルムとして、ノルボルネン樹脂のフィルム(日本ゼオン社製 ゼオノアフィルムZF14−100;面内位相差は10nm以下)を繰り出し部に取り付け、搬送しながら、ラビング処理を施し、用意した液晶層形成用組成物をダイコーターを使用して塗布して、塗膜として未硬化状態の液晶樹脂層を形成した。
【0209】
前記の液晶樹脂層を40℃で2分間配向処理して、液晶樹脂層中の重合性液晶化合物を配向させた。その後、液晶樹脂層に対して、基材フィルムの液晶樹脂層塗布面と反対面から露光部の幅267.6μmと遮光部の幅288.7μmであるガラスマスクを介して0.1〜45mJ/cmの微弱な紫外線を照射した。また、紫外線を照射する際、基材フィルムと未硬化状態の液晶樹脂層との積層体には張力をかけた。この張力は、前記の積層体の引っ張り歪が0.13%となる大きさとした。前記のガラスマスクとしては、長尺基材の長尺方向に延在する透光部及び遮光部が互いに平行に並んでストライプ状に形成されたものを用いた。ガラスマスクの遮光部の位置には露光されなかったために液晶樹脂層は未硬化状態のままであるが、ガラスマスクの透光部の位置には露光されたために液晶樹脂層が硬化した。これにより、液晶樹脂層の露光部分において、1/2波長板として機能しうる面内位相差を有する樹脂領域(異方性領域)を形成した。
【0210】
次に、液晶樹脂層を90℃で10秒間加温処理して、液晶樹脂層の未硬化状態の部分(ガラスマスクの遮光部の位置)の液晶相を等方相に転移させた。この状態を維持しながら、基材フィルムの液晶樹脂層側から窒素雰囲気下で液晶樹脂層に対して2000mJ/cmの紫外線を照射して、液晶樹脂層の未硬化部分を硬化させた。これにより、1/2波長板として機能しうる面内位相差を有する樹脂領域(異方性領域)と、面内位相差が小さい樹脂領域(等方性領域)とを、同一面内に有する、パターン位相差フィルムを形成した。(基材フィルム)−(パターン位相差フィルム)の層構成を有する長尺の積層位相差フィルムを得た。形成されたパターン位相差フィルムの乾燥膜厚は5.0μmであった。異方性領域の位相差は250nmであり、面方向の遅相軸が積層位相差フィルムの長手方向と0°の角度をなしていた。一方、等方性領域の位相差は10nm以下であった。異方性領域及び等方性領域の配置は、図1に示すものと同様に、それぞれの領域が長手方向に帯状に延長する配置であった。異方性領域及び等方性領域の配置は、それぞれの領域が長尺方向に帯状に延在する配置となっており、全体としてストライプ状のパターンを形成していた。それぞれの領域の幅は、276μmであった。
【0211】
(1−2.寸法の実測によるパターン位相差フィルムの評価)
図21は、実施例において、パターン位相差フィルムのパターン位相差フィルムの領域の振れ幅ΔD及び平均幅Dを測定する際のサンプルの様子を模式的に示す図である。
図21に示すように、ガラス板に貼り合わせた直線偏光板810及び820を用意し、ガラス板が内側になるようにして配置した。この際、一方の直線偏光板810の透過軸A810と、他方の直線偏光板820の透過軸A820とは垂直にして、クロスニコル状態となるようにした。この直線偏光板810と直線偏光板820との間に、長尺方向A830に延在する異方性領域831及び等方性領域832を有するパターン位相差フィルム830を挿入した。
【0212】
こうして用意したサンプルを、二次元測定機(中村製作所社製「EXLONy99」)の定盤上に設置し、CCDカメラにて撮影し、観察した。前記の二次元測定器の仕様は、以下の通りである。
測定機の仕様
測定範囲:x軸=900mm、Y軸=900mm
最小読取量:0.001mm
各軸精度:U1=5+5L/1000
座標検出:光学式リニアエンコーダー
画像検出:CCDカメラ
照明装置:LED落射照明
【0213】
パターン位相差フィルム830の各領域831及び832の位相差の相違により、一方の領域831に相当する部分と他方の領域832に相当する部分とでは、異方性領域831に相当する部分は光が透過し、等方性領域832に相当する部分は光が遮光される。したがって、前記の撮影では、図22で示すように、透光部と遮光部がストライプ状に形成された画像が撮影される。撮影された画像において、黒色の部分が延在する方向を長尺方向X、それに垂直な方向を幅方向Yとし、さらに二次元測定機に予め信頼性の高い基準点を設け、その基準点を原点(0,0)として、XY座標を設定した。
【0214】
図23に、撮影された画像の一部を拡大した様子を模式的に示す。図23で示すように、黒色の部分840の幅方向Yのエッジ841及び842を、画像処理により検出し、黒色の部分840の幅方向両端のエッジ841及び842のY座標を「Y値」として測定した。
X座標が同一の値(x)となる位置において、一端側のエッジ841のY値(y841)と他端側のエッジ842のY値(y842)の平均値((y841+y842)/2)を、当該X座標(x)における中点843のY値とした。また、一端側のエッジ841のY値(y41)と他端側のエッジ842のY値(y842)の差(y842−y841)を、当該X座標(x)における黒色の部分840の幅とした。このような計算を、その黒色の部分840について、長尺方向Xにおいて30mmピッチで1080mmまでの37箇所で行った。
【0215】
前記の測定を、図22に示すように、幅方向の端部から連続した5本の黒色の部分840A〜840E、並びに、20mmピッチで5本の黒色の部分840F〜840Jについて行い、黒色の部分840A〜840Jそれぞれの各X座標における幅及び中点のY値を求めた。
【0216】
上述したようにして求めた10本の黒色の部分840A〜840Jの幅の全測定結果の平均値を、このサンプルの領域の平均幅Dとした。測定の結果、このサンプルの領域の平均幅Dは278.2μmであった。
【0217】
10本の黒色の部分840A〜840Jそれぞれについて、X座標が0となる位置における中点のY値を「0」として、37箇所の中点のY値を規格化し、図24で例示するようにグラフに表した。このグラフにおいて、長尺方向XでのY値の最大値と最小値との差を、領域の振れ幅ΔDとした。測定の結果、このサンプルの領域の振れ幅ΔDは22μmであった。
【0218】
前記のサンプルの領域の平均幅Dに対する振れ幅ΔDの比は22/278.2となり、非常に小さい値となる。したがって、このサンプルのパターン位相差フィルムの領域の形状及び寸法は、適正であることが分かる。
【0219】
(1−3.評価用マスクを用いたパターン位相差フィルムの評価)
図8及び図9を用いて説明した第三実施形態と同様の要領で、製造したパターン位相差フィルムの評価を行った。円偏光板220及び230としては偏光板(サンリッツ社製、製品名「HLC2−5618」)上に、PSAを介して、1/4波長板として機能しうる位相差フィルム(日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」)を貼合したものを用いた。PSAは、アクリル粘着剤(綜研化学社製、製品名「SKダイン2094」)に硬化剤(綜研化学社製、製品名「E−AX」)を、アクリル粘着剤中のポリマー100重量部に対して5重量部の割合で添加したものを用意した。さらに、評価用マスク140としては、遮光部141の幅W141が326.4μm、透光部142の幅W142が227.2μmのものを用いた(図4参照)。
【0220】
円偏光板220、基材フィルム160及びパターン位相差フィルム170を備える積層位相差フィルム180、円偏光板230並びに評価用マスク140をこの順に重ねた。円偏光板220および230は、パターン位相差フィルム170側に1/4波長板が面するように配置した。評価用マスク140とは反対側から光を照射し、評価用マスク140の角度を調整しながら観察を行ったところ、光が全く検出できない暗状態が観察できる位置が確認された。したがって、製造されたパターン位相差フィルムの領域の寸法及び形状が適正であることが確認された。
【0221】
(1−4.液晶表示装置への実装試験)
図20を用いて説明したのと同様にして、製造したパターン位相差フィルムを用いて以下のようにして液晶表示装置を組み立て、偏光メガネで観察した。
評価用ディスプレイ装置としてIO−DATA社製「LCD−AD201XGB」(24インチ)を用意し、その液晶パネル610を取り外した。
また、基材フィルム及びパターン位相差フィルムを備える前記の積層位相差フィルムに、接着剤を介して、1/4波長板として機能しうる位相差フィルム(日本ゼオン社製「延伸ゼオノアフィルム」)を貼り合せた。
【0222】
取り外した液晶パネル610に、紫外線により硬化するタイプの接着剤を介して前記の積層位相差フィルム及び位相差フィルムを備える積層フィルムを重ねた。このとき、積層フィルムは、液晶パネル610に近い方から、位相差フィルム620、接着層(図示せず)、パターン位相差フィルム630及び基材フィルム(図示せず)の順となる向きにした。また、液晶パネル610の視認側の偏光板透過軸、位相差フィルム620の遅相軸、及びパターン位相差フィルム630の異方性領域の遅相軸は、それぞれ図20を用いて説明した例の通りにした。
【0223】
ニップロールで積層フィルムを押さえつけることにより積層フィルムを液晶パネル610の視認側偏光板613に貼りあわせた。その後、積層フィルムに張力をかけ、その張力を維持した状態で、液晶パネル610の画素とパターン位相差フィルム630の異方性領域631及び等方性領域632の位置合わせを行った。位置合わせ後、紫外線を照射して液晶パネル610と積層フィルムとの間の接着剤を硬化させた。こうして位相差フィルム620及びパターン位相差フィルム630と貼り合わせた液晶パネル610を、評価用ディスプレイ装置に戻した。
【0224】
一方で、以下の要領で、偏光メガネを用意した。
すなわち、ノルボルネン樹脂のフィルム(日本ゼオン社製、製品名「ゼオノアフィルム(ZF14−100)」、上記(1−1−2)で使用したものと同一)のラビング処理を施した面に、上記(1−1−1)で調製した液晶層形成用組成物を#ダイコーターを使用して塗布し、塗膜を形成した。この塗膜を40℃で2分間配向処理し、塗膜面側より窒素雰囲気下で2000mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、乾燥膜厚が1.5μmで、透過光の1/2波長の位相差を有する樹脂層を形成した。これにより、基材フィルム及び1/2波長樹脂層を有する1/2波長板を得た。
【0225】
偏光板(サンリッツ社製、製品名「HLC2−5618」)上に、上記(1−3)で用意したPSAを介して、位相差フィルム(日本ゼオン社製、製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム」;長手方向に対する配向角45°;測定波長550nmでの面内における位相差125nm、面内における位相差のばらつきは±10nm以下)を貼合して、偏光メガネ用円偏光板1を得た。
【0226】
円偏光板1の1/4波長板側の面上に、PSAを介して、上記の1/2波長板を貼合して、偏光メガネ用円偏光板2を得た。
【0227】
これらの偏光メガネ用円偏光板1と偏光メガネ用円偏光板2とが、観察者の左右それぞれの視野上に並ぶように配置し、図20に示す例と同様の偏光メガネを得た。
この際、偏光メガネ用円偏光板1は、評価用ディスプレイ装置に対応して、評価用ディスプレイ装置側から、1/4波長板720、PSAの層(図示せず)及び直線偏光板730の順序で積層した状態となるようにした。また、偏光メガネ用円偏光板1の直線偏光板730の透過軸方向は、評価用ディスプレイ装置の視認側偏光板613の透過軸方向と垂直になるように配置した。さらに、偏光メガネ用円偏光板1の1/4波長板720の遅相軸方向は、評価用ディスプレイ装置の位相差フィルム620の遅相軸方向と垂直な方向となるように配置した。
また、偏光メガネ用円偏光板2は、評価用ディスプレイ装置に対応して、評価用ディスプレイ装置側から、1/2波長板710、PSAの層(図示せず)、1/4波長板720、PSAの層(図示せず)及び直線偏光板730の順序で積層した状態となるようにした。また、偏光メガネ用円偏光板2の直線偏光板730の透過軸方向は、評価用ディスプレイ装置の視認側偏光板613の透過軸方向と垂直になるように配置した。また、偏光メガネ用円偏光板2の1/4波長板720の遅相軸方向は、評価用ディスプレイ装置の位相差フィルム620の遅相軸方向と垂直な方向となるように配置した。さらに、偏光メガネ用円偏光板2の1/2波長板710の遅相軸方向は、評価用ディスプレイ装置のパターン位相差フィルムの異方性領域の遅相軸方向と垂直な方向となるように配置した。
【0228】
評価用ディスプレイ装置の液晶パネルに、画素の奇数列が黒表示、画素の偶数列が白表示となる信号を入力して、画素の奇数列を黒表示、偶数列を白表示とした。液晶パネルから1m離れた距離で、偏光メガネを使用して観察した。右目で液晶パネルの全画面のうち9/10以上の面積で黒表示である場合を「良」、光抜けが全画面のうち1/10より大きい面積で見られる場合を「不良」とする。実装評価の結果、全画面のうち10/10の面積で黒表示となり、「良」と判断した。
【0229】
[実施例2]
(2−1.パターン位相差フィルムの製造)
基材フィルムと未硬化状態の液晶樹脂層との積層体にかけた張力を、前記の積層体の引っ張り歪が0.05%となる大きさにしたこと以外は実施例1と同様にして、(基材フィルム)−(パターン位相差フィルム)の層構成を有する長尺の積層位相差フィルムを得た。
【0230】
(2−2.寸法の実測によるパターン位相差フィルムの評価)
実施例2で製造したパターン位相差フィルムについて、実施例1と同様の要領で、パターン位相差フィルムの領域の平均幅D及び振れ幅ΔDを測定した。測定の結果、パターン位相差フィルムの領域の平均幅Dは278.4μm、振れ幅ΔDは78μmであった。前記のサンプルの領域の平均幅Dに対する振れ幅ΔDの比は78/278.4となり、実施例1と比べて大きい値となる。したがって、このサンプルのパターン位相差フィルムの領域の形状及び寸法は、実施例1と比べれば精度に劣ることが分かる。
【0231】
(2−3.評価用マスクを用いたパターン位相差フィルムの評価)
実施例2で製造したパターン位相差フィルムについて、実施例1と同様の要領で、評価用マスクを用いてパターン位相差フィルムの評価を行った。評価用マスクの角度を調整しながら観察を行ったところ、光が全く検出できない暗状態が観察できる位置は無かった。したがって、製造されたパターン位相差フィルムの領域の寸法及び形状が適正でないことが確認された。
【0232】
(2−4.液晶表示装置への実装試験)
実施例2で製造したパターン位相差フィルムを用いて、実施例1と同様の要領で、液晶表示装置への実装試験を行った。実装評価の結果、全画面のうち3/10以上の面積で光抜けが見られ、「不良」と判断した。
【0233】
[検討]
実施例1及び実施例2の結果から、本発明のパターン位相差フィルムの評価方法によれば、パターン位相差フィルムの領域の形状及び寸法を精度良く評価できることが分かる。また、この評価方法は、寸法の実測に比べて手間を要さず短時間で行えるので、従来よりも簡単な方法といえる。
【符号の説明】
【0234】
1〜8 評価系
10 パターン位相差フィルム
11、12 領域
13 パターン境界線
20 液晶パネル
21 第1の画素群の画素の列
22 第2の画素群の画素の列
23 ブラックマトリックスの部分
110 光源
120、130 直線偏光板
140 評価用マスク
141 遮光部
142 透光部
150 カメラ
160 基材
170 パターン位相差フィルム
171 異方性領域
172 等方性領域
180 積層位相差フィルム
220、230 円偏光板
320 直線偏光板
330 反射型の直線偏光板
420 円偏光板
430 反射型の円偏光板
560 基材
580 積層位相差フィルム
590 補償用基材
600 液晶表示装置
610 液晶パネル
611 光源側偏光板
612 液晶セル
613 視認側偏光板
620 位相差フィルム
630 パターン位相差フィルム
631 異方性領域
632 等方性領域
700 偏光メガネ
710 1/2波長板
720 1/4波長板
730 直線偏光板
810、820 直線偏光板
830 積層位相差フィルム
831、832 積層位相差フィルムのパターン位相差フィルムの領域
840 撮影された画像の黒色の部分
841、842 撮影された黒色の部分のエッジ
843 撮影された黒色の部分の中点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスニコル状態で配置された一対の直線偏光板若しくは円偏光板と、前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の間に設けられたパターン位相差フィルムと、前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の一方の前記パターン位相差フィルムとは反対側に設けられた光源と、前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の他方の前記パターン位相差フィルムとは反対側又は前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の一方と前記光源との間に設けられたマスクとを備え、前記パターン位相差フィルムが位相差が異なる複数種類の領域を有し、前記マスクが遮光部及び透光部を備える評価系において、前記光源を光らせた状態で、前記マスクの前記光源とは反対側から、前記光源が発した光を観察する、パターン位相差フィルムの評価方法。
【請求項2】
光源と、マスクと、直線偏光板若しくは円偏光板と、パターン位相差フィルムと、前記直線偏光板若しくは円偏光板に対してパラレルニコル状態の反射型の直線偏光板若しくは円偏光板とをこの順に備え、前記パターン位相差フィルムが位相差が異なる複数種類の領域を有し、前記マスクが遮光部及び透光部を備える評価系において、前記光源を光らせた状態で、前記マスクの前記光源と同じ側から、前記光源が発した光を観察する、パターン位相差フィルムの評価方法。
【請求項3】
前記パターン位相差フィルムの複数種類の領域のうち、少なくとも1種類の領域の位相差が0〜20nmである、請求項1記載のパターン位相差フィルムの評価方法。
【請求項4】
前記パターン位相差フィルムの複数種類の領域のうち、少なくとも1種類の領域の位相差が0〜20nmである、請求項2記載のパターン位相差フィルムの評価方法。
【請求項5】
前記パターン位相差フィルムが、位相差を有する基材の表面に設けられていて、
前記評価系が、前記基材と同じ補償用基材を、前記基材の遅相軸と前記補償用基材の遅相軸とが垂直となるように、前記パターン位相差フィルムと前記一対の直線偏光板若しくは円偏光板の他方との間に備える、請求項1又は3記載のパターン位相差フィルムの評価方法。
【請求項6】
前記パターン位相差フィルムが、位相差を有する基材の表面に設けられていて、
前記評価系が、前記基材と同じ補償用基材を、前記基材の遅相軸と前記補償用基材の遅相軸とが垂直となるように、前記パターン位相差フィルムと前記直線偏光板若しくは円偏光板との間に備える、請求項2又は4記載のパターン位相差フィルムの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−15563(P2013−15563A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146298(P2011−146298)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】