パターン化多孔質媒体に基づくラテラルフロー式及びフロースルー式バイオアッセイ装置、該装置の製造方法、及び該装置の使用方法
本発明の実施態様は、パターン化多孔質媒体に基づくラテラルフロー式及びフロースルー式バイオアッセイ装置、この装置の製造方法、及びこの装置の使用方法を提供する。1観点において、アッセイ装置は、多孔質親水性媒体;多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリア;及びアッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援に関する声明
この研究は、National Institutes of Health (NIH) (GM065364)によって支援された。National Science Foundation (NSF)によって支援されたMaterials Research Science and Engineering Centers (MRSEC)の共同施設が、授与番号DMR-0213805のもとで使用された。この研究はまた、NSFの博士号取得前奨学金(A. W. M)、Damon Runyon Cancer Research Foundation Fellowship (DRG-1805-04)(S. T. P)、American Cancer Society (S. W. T.)の博士号取得後奨学金、National Science and Engineering Research Council (NSERC)の博士号取得後奨学金(S. J. V.)、Massachusetts Technology Transfer Center (M. J. B.)のTechnology Investigation Award、Sao Paulo State Research Funding Agency- FAPESP (E. C.)によって支援された。
【0002】
関連出願
本出願は、2007年4月26日付けで出願された、「Patterned Paper as a Platform for Inexpensive, Low Volume, Portable Bioassays and Methods of Making Same」と題される米国仮特許出願第60/914,252号明細書(この明細書の内容全体を参考のため本明細書中に引用する)の、35U.S.C.§199(e)に基づく優先権を主張し、また2006年10月18日付けで出願された、「Patterned Paper as a Platform for Inexpensive, Low Volume, Portable Bioassays and Methods of Making Same」と題される米国仮特許出願第60/852,751号明細書(この明細書の内容全体を参考のため本明細書中に引用する)の、35U.S.C.§199(e)に基づく優先権を主張する。
【0003】
この開示は概ね、多孔質媒体に基づくバイオアッセイ装置、該バイオアッセイ装置の製造方法、及び該バイオアッセイ装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
生物学的流体の分析は、個体及び個体群の健康状態をモニタリングするのに有用である。しかし、これらの測定は、発展途上国、緊急事態、又は在宅介護環境に見いだされるような遠隔地で実施するのが難しい場合がある。慣習的な研究室用機器は、生体試料の定量的測定を可能にはするが、しかしこれらの機器は典型的には、遠隔地には適していない。それというのもこれらは、大型であり、高価であり、また典型的には熟練者及びかなりの量の生体試料を必要とするからである。
【0005】
他のタイプのバイオアッセイ・プラットフォームが、慣習的な機器の代わりとなるものを提供するが、しかしこれらもまた或る状況では限界がある。例えば、マイクロ流体素子は、生物学的・化学的スクリーニングにおいて有用であり得る。ウェル及び/又はチャネルを含有するガラス系及びポリマー系双方のマイクロ流体素子が開発されている。しかしながら、慣習的なマイクロ流体素子は、シンプルになるように構成されている場合でも、典型的には、使用のためにポンプ及び外部検出器を必要とする。
【0006】
「ディップスティック」は概念的には判りやすいが、一般に、低コスト環境に対しては余りにも高価であり、また一般には、正確な測定を行うことを可能にするためには、比較的大量の試料、例えば約5mLの試料を必要とする。このような大量の試料は多くの状況において、特に未熟児及び幼児からは容易に得られない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1観点において、バイオアッセイ装置は、毛管作用によって流体を輸送することができる多孔質親水性媒体;及び、多孔質媒体内の1又は複数の検出領域で終わるチャネルを画定する、多孔質親水性媒体内に埋め込まれた流体不浸透性バリアを含む。1又は複数の実施態様の場合、多孔質親水性媒体は、流体中に存在する被分析物の可視的指示を可能にするように処理される。
【0008】
1観点において、アッセイ装置は、多孔質親水性媒体;多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリア;及びアッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【0009】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部のチャネル領域の境界を画定し、チャネル領域がアッセイ領域に流体連通されている。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部の試料堆積領域の境界を画定し、チャネルは、試料堆積領域とアッセイ領域との間の、多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する。バリアはさらに、複数のアッセイ領域の境界を画定する。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部の複数のチャネル領域の境界を画定し、そしてさらに、試料堆積領域の境界を画定し、各チャネルは、試料堆積領域と複数のアッセイ領域のうちの対応アッセイ領域との間の、多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する。アッセイ装置は、アッセイ領域のうちの少なくともいくつかのアッセイ領域内にアッセイ試薬を含む。バリアは、複数のアッセイ領域のうちのアッセイ領域を互いに物理的に分離する。アッセイ試薬は、アッセイ領域内で多孔質親水性媒体に共有結合されている。アッセイ試薬は、該アッセイ領域内で該多孔質親水性媒体に非共有結合されている。アッセイ試薬は、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される。アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される。フォトレジストはネガティブ・フォトレジストを含む。多孔質親水性媒体は、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む。多孔質親水性媒体は可撓性である。バリアの少なくとも1つの寸法は、約5cm〜約100μmである。バリアの少なくとも1つの寸法は、約300μm〜約100μmである。バリアの少なくとも1つの寸法は、約300μm未満である。チャネルの少なくとも1つの横方向寸法は、約750μm〜約100μmである。チャネルの少なくとも1つの横方向寸法は、約250μm〜約100μmである。チャネルの少なくとも1つの横方向寸法は、約250μm未満である。アッセイ装置は、アッセイ領域のデジタル画像を得ることができる撮像装置を含む。アッセイ装置は、撮像装置と通信するプロセッサを含み、該プロセッサは、アッセイ領域のデジタル画像に基づいて、アッセイ領域内の被分析物に関する情報を得ることができる。プロセッサは、アッセイ領域のデジタル画像内の強度に基づいて、被分析物に関する情報を得ることができる。アッセイ装置は、さらに、多孔質親水性媒体上の層を含み、層は少なくとも1つの開口を含む。開口は、アッセイ領域への流体通路の少なくとも一部を形成する。
【0010】
1観点において、アッセイ装置は、多孔質親水性媒体;多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を完全に画定する、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して約1mm〜約100μmの幅を有する流体不浸透性バリア;及びアッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【0011】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。アッセイ試薬は、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される。アッセイ試薬は、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される。バリアは、フォトレジスト及び硬化性ポリマーのうちの一方を含む。多孔質親水性媒体は、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む。バリアの少なくとも1つの横方向寸法は、約300μm〜約100μmである。バリアの少なくとも1つの横方向寸法が、約300μm未満である。アッセイ装置はさらに、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過する複数の流体不浸透性バリアを含み、各バリアが約1mm〜約100μmの幅を有しており、各バリアがそれぞれ、多孔質親水性媒体内部の対応アッセイ領域の境界を完全に画定し;アッセイ装置がさらに、各アッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【0012】
1観点において、アッセイ装置は、多孔質親水性媒体;多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して所定の長さと当該バリアの長さに沿って約10%未満だけ変化する幅とを有する流体不浸透性バリア;及びアッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【0013】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部のチャネル領域の境界を画定し、チャネル領域はアッセイ領域に流体連通されている。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部の試料堆積領域の境界を画定し、チャネルは、試料堆積領域とアッセイ領域との間の、多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する。アッセイ試薬は、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される。アッセイ試薬は、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの1つの存在に対して反応するように選択される。バリアは、フォトレジスト及び硬化性ポリマーのうちの一方を含む。多孔質親水性媒体は、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む。バリアの幅は約300μm未満である。バリアの幅は、バリアの長さに沿って約5%未満だけ変化する。チャネル領域の幅は、約750μm〜約100μmである。チャネル領域は、所定の長さとチャネルの長さに沿って約10%未満だけ変化する幅とを有する。チャネル領域は、所定の長さとチャネルの長さに沿って約5%未満だけ変化する幅とを有する。
【0014】
1観点において、装置の製造方法は、多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ;飽和済媒体を所定の光パターンに当て;所定の光パターンに基づいて媒体の領域からフォトレジストを除去することにより、領域の境界を形成する残留フォトレジストから成るバリアを画定し、所定の光パターンは、バリアが領域内のアッセイ領域を画定するように選択され;そしてアッセイ領域内にアッセイ試薬を用意することを含む。
【0015】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。バリアは実質的に流体不浸透性である。所定の光パターンを、バリアが領域を完全に包囲するように選択する。所定の光パターンを、バリアが領域の第1部分の境界を形成するように選択し、多孔質親水性媒体のエッジは、領域の第2部分の境界を形成する。試薬を用意することが、試薬をアッセイ領域に共有結合することを含む。試薬を用意することが、試薬をアッセイ領域に非共有結合することを含む。アッセイ領域が液体の存在における試薬の輸送特性に基づく形状を有するように、所定の光パターンを選択する。アッセイ試薬は、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される。アッセイ試薬は、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される。バリアが領域内のチャネル領域を画定するように、所定の光パターンを選択する。チャネル領域の少なくとも1つの横方向寸法が、約750μm〜約100μmである。バリアが領域内の試料堆積領域を画定するように、所定の光パターンを選択する。多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させることが、溶媒中の該フォトレジストの溶液を媒体に被着し、続いて溶媒を実質的に蒸発させることを含む。飽和済媒体を所定の光パターンに当てることが、領域に光を照射し、且つバリアには光を実質的に照射しないことを含む。飽和済媒体を所定の光パターンに当てることが、バリアに光を照射し、且つ領域には光を実質的に照射しないことを含む。フォトレジストを除去することが、所定の光パターンに基づいて媒体の複数の領域からフォトレジストを除去することにより、対応領域の境界を形成する残留フォトレジストから成る複数のバリアを画定することを含む。第2多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ;飽和済媒体を所定の光パターンに当て;所定の光パターンに基づいて第2媒体の領域からフォトレジストを除去することにより、領域の境界を形成する残留フォトレジストから成るバリアを画定し;第2媒体から成るバリアと、前記第1媒体から成るバリアとを実質的に整合し;そして第1媒体を第2媒体に接着する。第1媒体の領域内に、標的被分析物に対して反応するように選択された試薬を被着する。試薬と標的被分析物との反応を色指示するのを可能にするように選択された標識付き抗体及び標識付きタンパク質のうちの一方を、第2媒体の領域内に用意する。多孔質親水性媒体上の層を用意し、層は、バリアの位置に基づいて整合された少なくとも1つの開口を含む。バリアの少なくとも1つの寸法が約5cm〜約100μmとなるように、所定の光パターンを選択することを含む。バリアの少なくとも1つの寸法が約250μm未満となるように、所定の光パターンを選択する。多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む。所定の光パターンに基づいて媒体の複数の領域からフォトレジストを除去することにより、対応する複数の領域の境界を形成する残留フォトレジストから成る複数のバリアを画定し、所定の光パターンは、複数のバリアが、領域内の対応する複数のアッセイ領域を画定するように選択され;そしてアッセイ領域のうちの少なくともいくつかにアッセイ試薬を用意する。
【0016】
1観点において、装置の製造方法は、所定のパターンのスタンプに硬化性ポリマーを塗布し;ポリマー塗布済のスタンプを、所定の厚さを有する多孔質親水性媒体上に押しつけ、硬化性ポリマーは所定のパターンに従って、媒体の厚さを実質的に透過し;媒体内にアッセイ領域を画定する、該媒体内に埋め込まれた流体不浸透性バリアを形成するように、硬化性ポリマーを硬化させ;そしてアッセイ領域内に試薬を用意することを含む。
【0017】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。硬化性ポリマーはポリ(ジメチル−シロキサン)(PDMS)を含む。バリアが領域を完全に包囲するように、所定のパターンを選択する。
【0018】
1観点において、液体試料中の被分析物の存在を割り出すためのアッセイを実施する方法は、多孔質親水性媒体と、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリアと、被分析物の存在に対する可視的な応答を可能にするように選択された、アッセイ領域内のアッセイ試薬と、を含むアッセイ装置上に液体試料を堆積し;アッセイ領域の画像を得;そしてアッセイ領域の画像に基づいて、液体中の被分析物の存在を割り出すことを含む。
【0019】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。液体中の被分析物の存在を割り出すことは、アッセイ領域の画像の少なくとも一部の平均強度を得、そして、平均強度に基づいて液体中の被分析物の存在を割り出すことを含む。アッセイ領域の画像を得ることが、カメラ付き電話機、デジタルカメラ、及びスキャナーのうちの1つを用いてアッセイ領域を撮像することを含む。アッセイ領域の画像に基づいて被分析物の存在を割り出すことが、画像を遠隔研究室に伝送し、そして液体中の被分析物の存在に関して、遠隔研究室から情報を得ることを含む。アッセイ領域の画像を得ることが、カメラ付き電話機を用いてアッセイ領域を撮像することを含み、そしてアッセイ領域の画像に基づいて被分析物の存在を割り出すことが、カメラ付き電話機を介して遠隔研究室に画像を伝送することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1A〜1Eは、いくつかの実施態様によるラテラルフロー式バイオアッセイ装置の画像である。
【図2】図2は、いくつかの実施態様による、種々の濃度の被分析物を含有する溶液に曝露されたラテラルフロー式バイオアッセイ装置の画像である。
【図3】図3A〜3Cは、いくつかの実施態様による、被分析物を含有する溶液に対する曝露の前及び後に撮影された、土埃、植物の花粉、及びグラファイト粉末で汚染されたラテラルフロー式バイオアッセイ装置を示す図である。
【図4】図4は、いくつかの実施態様による、体液中のグルコース及びタンパク質の存在を測定する際に使用するためのラテラルフロー式バイオアッセイ装置を示す平面図である。
【図5】図5は、いくつかの実施態様による、体液中の被分析物、例えばグルコース及びタンパク質の存在を定量的に測定するためにラテラルフロー式バイオアッセイ装置を使用するステップを示す図である。
【図6】図6は、いくつかの実施態様による、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置を使用して、種々の濃度のグルコース及びタンパク質を有する体液中のグルコース及びタンパク質の存在を定量的に測定した結果を示す図である。
【図7】図7は、いくつかの実施態様による、トレハロースの有無を伴って、体液中のグルコース及びタンパク質の存在を定量的に測定する際のフロー装置の長期安定性を示す図である。
【図8】図8A及び8Bは、いくつかの実施態様による、フロースルー式バイオアッセイ装置を示す斜視図である。
【図9】図9A及び9Bは、いくつかの実施態様による、フロースルー式バイオアッセイ装置の一例をそれぞれ示す正面図及び背面図である。
【図10】図10は、いくつかの実施態様による、フロースルー式バイオアッセイ装置を組み立てる方法の一例を示す図である。
【図11】図11は、いくつかの実施態様による、クリーンルーム内でフォトリソグラフィを用いて多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを設けるための手順の一例を示す図である。
【図12】図12は、いくつかの実施態様による、研究室内でフォトリソグラフィを用いて多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを設けるための手順の一例を示す図である。
【図13】図13は、いくつかの実施態様による、マイクロコンタクト印刷を用いて多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを設けるための手順の一例を示す図である。
【図14】図14A〜14Bは、いくつかの実施態様による、種々のパターン化法を用いて得られた疎水性バリアを示す画像である。
【図15】図15A〜15Cは、いくつかの実施態様による、種々のパターン化法を用いて形成された紙内へのパターン化疎水性バリアによって境界を形成されたほぼ3.6x3.6mmの正方形から成る格子を示す画像である。
【図16】図16A〜16Bは、いくつかの実施態様による、種々のパターン化法を用いて形成された、機能デバイスを提供する比較的狭いバリアの幅を示す画像である。
【図17】図17Aは、いくつかの実施態様による、カメラ付き電話機とともに使用するためのレンズの一例を示す画像であり、図17B〜17Cは、いくつかの実施態様による、それぞれ図17Aのレンズを用いてそして用いずに撮影されたバイオアッセイ装置の画像である。
【図18】図18Aは、いくつかの実施態様による、三次元バイオアッセイ装置を示す斜視図であり、図18Bは、いくつかの実施態様による、着色液体に曝露している間の、異なる時点における三次元バイオアッセイ装置例を示す画像である。
【図19】図19は、いくつかの実施態様による、三次元バイオアッセイ装置を示す斜視図である。
【図20】図20は、いくつかの実施態様による、ラテラル式バイオアッセイ装置内の層を示す平面図及び斜視図である。
【図21】図21A〜21Fは、いくつかの実施態様による、着色液体に曝露している間の、異なる時点における図20のラテラル式バイオアッセイ装置を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
概要
本発明の実施態様は、パターン化多孔質媒体に基づくラテラルフロー式及びフロースルー式バイオアッセイ装置、該装置の製造方法、及び該装置の使用方法を提供する。
【0022】
いくつかの観点において、親水性媒体を疎水性バリアでパターン化することにより、体液に対する多重バイオアッセイを実施するための、低コストで持ち運び可能な、そして技術的にシンプルな種類のプラットフォームを提供する。バイオアッセイのための有用な親水性媒体の一例は紙であり、紙は低廉で、容易に商業的に入手可能であり、使い捨て可能であり、液体を素早く運び、またいくつかの慣習的なプラットフォームのように注意深い取り扱いを必要としない。紙又はその他の多孔質親水性媒体は、疎水性バリアでパターン化される。疎水性バリアは、生物学的流体の空間的なコントロールを可能にし、またバリアが画定する領域内部の毛管作用による流体輸送を可能にする。疎水性バリアは高分子、例えば硬化性ポリマー又はフォトレジストであってよく、画定領域内部の多孔質親水性媒体の厚さ全体にわたって実質的に不浸透性のバリアを提供する。ポリマー又はガラス内に空の流体チャネル又はウェルを含む慣習的なマイクロ流体素子とは異なり、これらのバリアによって境界を形成された領域は空ではなく、多孔質親水性媒体から形成されているか、又は多孔質親水性媒体を含有している。
【0023】
慣習的な装置とはさらに異なり、バイオアッセイ装置のいくつかの実施態様は、多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ、飽和済媒体を所定の光パターンに当て、そしてパターンに基づいてフォトレジストを除去し、フォトレジストから成る疎水性バリアを形成することによって製造される。光パターンは、アッセイ領域、チャネル領域、及び試料堆積領域などを画定するように選択することができる。これらの領域の境界は、疎水性バリアによって少なくとも部分的に画定される。フォトレジストは半導体と一緒に従来から使用されているが、発明者は、驚くべきことに、多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ、そしてそのフォトレジスト上にフォトリソグラフィを施すと、慣習的なアッセイ製造技術を用いては入手することができない高品質構成要件の製作が可能になることを発見した。典型的な慣習的なアッセイ製造技術は、所定のパターンに従って液体を多孔質媒体に被着し、次いで液体を硬化させることにより構成要件を形成することを伴う。しかし、液体が被着されると、液体は媒体内部で横方向に広がり、ひいては構成要件における定義を損なうことになる。フォトリソグラフィは、所定のパターンに従って液体を被着することに依存することはなく、従って、従来入手可能なものよりも著しく高い構成要件分解能を提供する。例えば、このフォトリソグラフィ技術を用いれば、スクリーン印刷技術を用いて製造し得るものよりも著しく小さな構成要件、例えば厚さ約1mm〜約100μm、例えば厚さ約300μm〜約100μm、又はそれ未満のバリアを製造することができる。加えて、この技術は、その長さに沿って顕著に変化することのない構成要件、例えばその長さに沿って約10%未満、約5%未満、またはそれ未満だけ変化する幅を有するバリアを形成することができる。逆に言えば、このようなバリアによって画定されたチャネルも、その長さに沿って顕著に変化することはなく、例えばその長さに沿って約10%未満、約5%未満、またはそれ未満だけ変化する幅を有することになる。バイオアッセイ装置の他の実施態様は、他の製造方法、例えばソフト・リソグラフィに基づく。これらの製造方法は、下に詳細に説明するように、慣習的なアッセイ装置製造技術を用いては入手できない有用な利点及び改善された構成要件分解能を提供する。
【0024】
親水性媒体の、境界を形成された領域は、バイオアッセイ装置内の1又は複数のアッセイ領域を画定するために使用することができる。バイオアッセイ装置のアッセイ領域は、試薬で処理することができる。試薬は、生物学的流体中に被分析物の存在に対して応答し、被分析物の存在のインジケータとして役立つことができる。アッセイの多くの実施態様は、複雑及び高価な設備を使用することなしに容易に利用できるように意図されているので、いくつかの実施態様では、被分析物に対する装置の応答は、肉眼で見ることができる。例えば、親水性媒体は、被分析物の存在のカラーインジケータを提供するように、アッセイ領域内で処理することができる。インジケータは、被分析物の存在において有色になる分子、被分析物の存在において色が変化する分子、又は被分析物の存在において蛍光、燐光、又はルミネッセンスを発する分子を含んでよい。他の実施態様の場合、タンパク質、抗体、又はその他の被分析物の存在を割り出すために、放射線測定、磁気測定、光学測定、及び/又は電気測定を用いることができる。
【0025】
いくつかの実施態様の場合、特定のタンパク質を検出するために、親水性媒体のアッセイ領域を、タンパク質と選択的に結合又は相互作用する試薬、例えば小分子で誘導体化することができる。或いは、例えば特定の抗体を検出するために、親水性媒体のアッセイ領域を、抗体と選択的に結合又は相互作用する試薬、例えば抗原で誘導体化することができる。例えば、ビード又はガラス・スライド上に分子を固定化するために用いられるものと同様の化学的性質を利用して、又は炭水化物に分子を結合するために用いられる化学的性質を利用して、親水性媒体に、小分子及び/又はタンパク質のような試薬を親水性媒体に共有結合することができる。別の実施態様の場合、試薬を溶液から被着し、そして溶媒を蒸発させておくことにより、試薬を被着且つ/又は固定化することができる。試薬は、他の非共有結合的相互作用によって多孔質媒体上に物理的に吸収することにより固定化することができる。一般に、被分析物を検出するために、バイオアッセイ装置とともに種々様々な試薬を使用することができ、これらの試薬は種々の好適な方法によって被着することができる。これらの試薬は、抗体、核酸、アプタマー、分子インプリント・ポリマー、化学受容体、タンパク質、ペプチド、無機化合物、及び有機小分子を含んでもよい。これらの試薬は、非特異的相互作用によって非共有結合的に、又は共有結合的に(エステル、アミド、イミン、エーテルとして、又は炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−酸素、又は酸素−窒素結合によって)紙に吸着させることもできる。
【0026】
しかし、被分析物が予め標識付けされていなければ、或る被分析物と或る試薬との相互作用により、目に見える色変化が生じない場合がある。ステイン又は標識付けされたタンパク質、抗体、核酸、又は、アッセイ領域内の試薬に結合した後の標的被分析物に結合して目に見える色変化を生じさせる他の試薬を添加するように、装置をさらに処理することができる。このことは、例えば、ステイン又は標識付き試薬を既に含有する別個の区域を装置に設けることにより実現することができる。この別個の区域は、アッセイ領域内の試薬に結合した後の標的被分析物に、ステイン又は標識付き試薬を容易に導入することができるメカニズムを含む。或いは、例えば、装置に別個のチャネルを設けることもできる。この別個のチャネルは、ステイン又は標識付き試薬を、紙の異なる領域から、アッセイ領域内の試薬に結合した後の標的被分析物中に流入させるように使用することができる。1実施態様の場合、この流れは、水滴、又はその他の流体とともに開始される。別の実施態様の場合、試薬と標識付き試薬とは、装置内の同じ場所、例えばアッセイ領域内に被着される。
【0027】
バイオアッセイ装置は、ラテラルフロー形態、フロースルー形態、これら2つの組み合わせ、又は三次元形態を成すことができる。ラテラルフロー式バイオアッセイ装置の場合、液体は、毛管作用によって横方向に装置を貫流し、例えば、試料を装置内に導入することができる媒体の試料堆積領域から、被分析物の存在を検出することができる媒体のアッセイ領域へ、疎水性バリアによって画定されたチャネルを介して貫流する。疎水性バリアが液体の流路を画定するので、バリア・パターンを適切に選択することにより、多重アッセイをもたらすことができる。多重アッセイでは、液体は媒体の試料堆積領域から、疎水性バリアによって画定された複数のチャネルを介して、複数のアッセイ領域へ流れる。比較的少量の液体(例えば10μL未満)が装置の所期領域の全てに流れるのを可能にするのに十分に狭くチャネルが形成されるように、バリアをさらにパターン化することもできる。但し、バリアの最小構成要件サイズは、下で詳細に説明するように、選択された製作技術に或る程度依存する。
【0028】
フロースルー式バイオアッセイ装置は典型的には、複数の層を含んでおり、これらの層のうちの少なくとも1つは、疎水性バリアでパターン化された多孔質親水性媒体である。使用中、液体は1つの層から別の層へ鉛直方向に流れ、そして疎水性バリアは、液体の横方向流を抑制する。多孔質親水性媒体の1又は複数の区域を処理することにより、標的被分析物に対するアッセイを提供する、例えば被分析物の存在の可視インジケータ(又は他の検出可能なインジケータ)を提供することができる。いくつかの実施態様の場合、装置の1つの層がステイン又は標識付き試薬で処理される。このステイン又は標識付き試薬は、例えば被分析物が別の層内の試薬と相互作用した後に被分析物の存在のカラーインジケータを提供する。なお、いくつかの実施態様は、液体の横方向流及び貫流の両方を含むことができる。
【0029】
多くの観点において、一滴の液体、例えば針で刺した指から採取した一滴の血液で、被分析物の存在に対する単純なイエス/ノーの答えを提供するアッセイ、又は、例えばアッセイの強度を較正カラーチャートと視覚的比較又はデジタル比較することによる、試料中に存在する被分析物の量の半定量的測定を行うには十分である。しかし、液体中の被分析物を定量的測定するためには、定義された流体量が典型的には装置内に堆積される。このようにいくつかの実施態様の場合、定義された流体量を受容する試料ウェルを含むように紙をパターン化することにより、定義された流体量(又はかなり正確な読み取りを可能にするのに十分に、定義量に近い量)を得ることができる。例えば全血試料の場合、被検者の指を針で刺し、次いで、試料ウェルがいっぱいになるまで試料ウェルに指を押しつけ、こうして定義量の申し分のない近似値を提供することもできる。
【0030】
いくつかの実施態様は、装置の比色分析応答強度に基づいて被分析物の量に関する情報を得るために、液体の堆積後のバイオアッセイ装置を撮像するために使用することができる装置を含む。いくつか実施態様の場合、この装置は、携帯電話通信チャネルを介して、現場以外の人員と通信リンクを確立することができ、この人員は、この装置によって得られた画像に基づいて分析を行う。
【0031】
いくつかの観点において、このようなバイオアッセイ装置は、親水性媒体中にパターン化水性バリアを生成するシンプルな方法を用いて製作することができる。例えば、いくつか実施態様の場合、親水性媒体はフォトレジスト中に浸され、そして、フォトリソグラフィを用いてフォトレジストをパターン化することにより、バリアを形成する。フォトリソグラフィはクリーンルーム内に実施することができ、又は下で実証するように、クリーンルーム以外で、例えば典型的な研究室環境で実施することもでき、しかもこの場合、製作されたバリアの品質に顕著な影響を及ぼすことはなく、またコストが著しく低減される。他の実施態様の場合、マイクロコンタクト印刷を用いてバリアを画定する。この場合、画定パターンの「スタンプ」にポリマーを「インク着け」し、そしてこのスタンプを親水性媒体上に押しつけ、また親水性媒体中に押し込むので、ポリマーは媒体にしみ通り、ひいてはその画定パターンのバリアを形成する。他の製作技術を用いることもでき、これらのうちのいくつかを下で説明する。装置の所期用途及び用いられる具体的なバリア製作技術に応じて、バリアの幅は、約200μmを上回ることができ、またバリアは、数ミクロンオーダー、例えば約50μm、又は最大で数ミリメートル又はそれ以上の幅を有するチャネルを画定することができる。
【0032】
いくつかの実施態様は、多孔質親水性媒体としてクロマトグラフィ紙を含む一方、一般には、毛管作用によって流体を運ぶ任意の基材、及び選択されたパターン化法と適合可能な任意の基材、例えばニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、布地、及び多孔質ポリマーフィルムが使用されてよい。例えばニトロセルロースアセテート、及びセルロースアセテートは、流体診断において共通して使用される良く知られた膜であるが、しかしフォトリソグラフィにおいて典型的に使用される溶媒とは適合できないので、下で詳細に論じるように、パターン化のためには他の方法がより好適である場合がある。加えて、親水性媒体及び疎水性バリア領域は、試験条件、例えば温度、pH、及び/又はイオン強度と適合可能な材料を使用して調製することができる。
【0033】
先ず、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置のいくつかの実施態様及びこの装置の使用について説明する。次いで、フロースルー式バイオアッセイ装置のいくつかの実施態様及びこの装置の使用について説明する。次いで多孔質親水性媒体内にパターン化疎水性バリアを形成する方法のいくつかの実施態様について説明する。
【0034】
ラテラルフロー式バイオアッセイ装置
図1Aは、本発明のいくつかの実施態様による、親水性媒体と疎水性バリアとを有するラテラルフロー式バイオアッセイ装置のアレイ100の画像である。各装置110は、1又は複数のパターン化疎水性バリア130、例えばフォトリソグラフィによりパターン化され硬化されたフォトレジスト、及び多孔質媒体120、例えばクロマトグラフィ紙を含んでいる。疎水性バリア130は、バイオアッセイを実施するために使用することができる媒体120内の領域を画定する。図示の実施態様の場合、バリア130は、体液を堆積することができ、また毛管作用によって流体を運ぶためのチャネルとして役立つ試料堆積領域140と、体液が流入する複数のアッセイ領域150とを画定している。下で詳細に説明するように、特定の用途のためのアッセイを提供するために、例えば尿中の糖の存在を指示するために、アッセイ領域150を処理することができる。図1Aはクロマトグラフィ紙から成る単一の7.5cmディスクから製造された10個の個々の装置110を示している。ただし、紙のサイズ、並びに装置の数及びタイプは、所与の用途に合わせて適宜に選ぶことができる。
【0035】
図1Bは、毛管作用により約5μLのWaterman赤インクを吸収した後の、図1Aのバイオアッセイ装置110のうちの1つの画像である。試料堆積領域140は、毛管作用によって試料を吸収し、そしてパターン化された疎水性バリア130は試料を3つのアッセイ領域150に導いた。画像が示すように、バリア130は、明確に画定された領域内部に、試料流を実質的に制限する。下で詳細に説明するように、装置のパターン化領域は、比較的小さなサイズに製作することができるので、バリア130によって画定された領域140,150を十分に満たすために必要な液体は、比較的少量(例えば10μL未満)にすぎず、一般に、装置の種々の形態は、装置のサイズ、及び装置内部の構成要件のサイズに応じて、装置を満たすために約0.1μL〜100μLの流体を必要とすることがある。
【0036】
いくつかの実施態様の場合、親水性媒体、例えば紙の1又は複数の領域は、適切な試薬を添加することにより、生物学的アッセイのために誘導体化される。図1Cは、バイオアッセイ装置160の1実施態様の画像である。この装置において、アッセイ領域170及び180は、診断用途のための異なる試薬でスポッティングされており、また第3のアッセイ領域190は対照である。図示の実施態様において、領域170は、J.D. Peele, R.H. Gadsden, R. Crews, Clin. Chem. 1977, 23, 2242-2246 (この内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されたものから適応させたグルコース・アッセイのために調製される。下で詳細に説明するように、アッセイ装置は、0.3μLの0.6Mヨウ化カリウム、及びこれに続いて0.3μLの1:5ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ/グルコースオキシダーゼ溶液(溶液1mL当たり15単位のタンパク質)をアッセイ領域170にスポッティングすることにより、調製される。アッセイ装置をグルコースに曝露すると、グルコースは、水及び酸素の存在においてグルコースオキシダーゼによって酸化されることによりグルコン酸及び過酸化水素を提供する。次いで、過酸化水素がホースラディッシュ・ペルオキシダーゼによって還元されて水になると同時に、ヨウ化物が酸化されることによりヨウ素になる。その結果、グルコースの存在に伴って、透明から茶色に可視的に色が変化する。
【0037】
領域180は、M.J. Pugia, J.A. Lott, J.A. Profitt, T.K. Cast, J. Clin. Lab. Anal. 1999, 13, 180-187 (この内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されたものから適応させたタンパク質アッセイのために調製される。下で詳細に説明するように、アッセイ装置は、0.3μLのプライミング溶液(0.3μL)(92%体積の水、8体積%のエタノール、2.5g/Lのポリビニルアルコール、及びpH 1.8の250mMクエン酸緩衝剤)、及びこれに続いて0.3μLの試薬溶液(95%体積%のエタノール、5%体積%の水、3.3mMテトラブロモフェノール・ブルー)を領域180にスポッティングすることにより調製される。タンパク質アッセイは、テトラブロモフェノール・ブルー(TBPB)がイオン化してタンパク質と結合するときに、その色が変化することに基づいている。この場合の陽性の結果は、色が黄色から青に変わることにより示される。
【0038】
領域190は対照ウェルとして使用することができ、ヨウ化物でスポッティングされるが、しかし酵素溶液ではスポッティングされず、又は酵素溶液でスポッティングされるが、しかしヨウ化物ではスポッティングされない。
【0039】
この実施態様の例において、試薬は毛管によってスポッティングされたが、ピペット、又はマイクロアレイで使用されるようなピンを使用することにより、アッセイ装置を大量生産することもできる。試薬を堆積するために、インクジェット印刷を用いることもできる。スポッティングされた試薬は、装置を使用する前に少なくとも3分にわたって室温で空気乾燥させておいた。
【0040】
図1Dは、グルコース及びタンパク質を含有しない5μLの人工尿溶液に曝露した後の、図1Cのバイオアッセイ装置の画像である。具体的には、5μLの試料溶液をマイクロピペットでペトリ皿に移し、装置の底部を溶液中に浸し、そして装置を毛管作用によって紙内に吸収させた。Brooks及びKeevilによって提供された製法(T. Brooks, C.W. Keevil, Lett. Appl. Microbiol. 1997, 24, 203-206。その内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に従って、人工尿溶液を調製した。人工尿溶液は、全てMillipore精製水中で混合された1.1mM乳酸、2.0mMクエン酸、25mM重炭酸ナトリウム、170mM尿素、2.5mM塩化カルシウム、90mM塩化ナトリウム、2.0mM硫酸マグネシウム、10mM硫酸ナトリウム、7.0mMリン酸二水素カリウム、7.0mMリン酸水素二カリウム、及び25mM塩化アンモニウムを含有した。溶液のpHは、1.0M塩酸を添加することにより、6.0に調節した。全ての試薬はSigma-Aldrichから入手した。
【0041】
図1Eは、さらに550mMグルコース及び75μMウシ血清アルブミン(BSA)を含む5μLの上記人工尿溶液に曝露した後の、図1Cのバイオアッセイ装置の画像である。対照領域190には、ヨウ化カリウム溶液をスポッティングしたが、酵素溶液はスポッティングしなかった。グルコース・アッセイ領域170及びタンパク質領域180の両方は、溶液中のそれぞれの被分析物の存在に対して可視応答を示すのに対して、対照領域190は、有意な応答を示さない。酵素溶液を含有するがしかしヨウ化物を含有しない同様の対照も、実質的に同じ結果をもたらした(データは示さず)。
【0042】
アッセイの安定性を見極めるために、時間及び温度の変動条件下で、上記試験を繰り返した。この特定の実施態様の場合、約0℃又は約23℃で約15日間にわたってアルミニウム・フォイル内に包まれた状態で保存したときに、タンパク質アッセイは、保存温度及び時間とは無関係に同程度の結果をもたらすことが判った。グルコース・アッセイは、保存条件に対して若干高い感受性を有するように見え、23℃で保存した場合、試薬をスポッティングしてから約24時間後に実施されるアッセイに対しては、信号の低下を示した。しかし、グルコース・アッセイ装置を約30日間にわたって約0℃で保存したときには、このアッセイは、最初に行ったとの同程度の結果をもたらした。
【0043】
図2は、図1Cに示されたバイオアッセイ例において実施された一連の試験を示している。具体的には、5μLの試験溶液中に各装置の底部を浸すことにより、臨床的に該当する範囲のグルコース及びタンパク質(グルコースは2.5〜500mM、BSAは0.38〜75μM)を含有する人工尿の試料に、バイオアッセイ装置を曝露した。流体は、約1分以内に、パターン化疎水性バリアによって画定された領域のほぼ全体を満たした。アッセイ装置を乾燥させ、可視インジケータはほぼ10〜11分後にほぼ完全に発現した。結果として生じたインジケータの強度は、試料中のグルコース及びタンパク質の量にほぼ相当した。一般に、検出可能な応答をもたらす、例えば可視の色変化をもたらす最低被分析物濃度は、アッセイ感受性の下限を定義する。ここで実施された試験において、色変化は、2.5mMのグルコース及び0.38μMのBSAで可視である。このことは、アッセイが少なくともこの値に対して(またおそらくはこれよりも低い値に対して)感受性であることを示す。これと比較して、典型的な商業的に入手可能なディップスティックは、5mMの低さのグルコース、又は0.75μMの低さのタンパク質を検出する。このように、上記のバイオアッセイ装置例は、少なくとも、これらのディップスティックと同じ感受性を有する。さらに、このアッセイ・フォーマットは、2つ又は3つの被分析物の測定を一度に行うことを可能にするのに対して、ディップスティックは典型的には、単一の被分析物の測定に制限される。
【0044】
一般に、変動する被分析物濃度を用いて測定を行うことにより、測定に対応する標準曲線を割り出すことができる。従って、所与のタンパク質又は抗体の濃度を、可視の色変化又は強度と相関することができ、定量的測定を可能にする。但し、タンパク質又は抗体の存在を見極めるための慣習的な放射線測定、光学測定、及び/又は電気測定はこのプラットフォームとは相容れず、或る環境において有用である場合がある。
【0045】
典型的な使用中、液体試料は、滅菌条件下で測定されない場合がある。例えば、吹き付けるダストやその他の粒状不純物が液体及び/又は装置に接触するおそれがある。多孔質親水性媒体を含有するバイオアッセイ装置の1つの有用な特徴は、媒体が、生体試料にとって有害であり得る少なくともいくつかの不純物を除去するためのフィルタとしても役立つことである。図3A〜3Cは、図1Cに示されたラテラルフロー式装置の画像であり、これらの装置はさらに、それぞれ土埃、植物の花粉、及びグラファイト粉末で汚染されている。これらの汚染物質は、屋外で試料を典型的に採取し分析している間に直面し得る条件に近似する。汚染物質の堆積後、550mMのグルコース及び75μMのBSAを含有する人工尿試料に装置を曝露した。図3A〜3Cが示すように、これらの粒子は実質的にチャネルを上って移動することはなく、また、アッセイを著しく妨害することもない。
【0046】
一般に、特定の実施態様の構成に応じて、バイオアッセイ装置に液体試料を導入するための少なくとも2つの方法がある。例えばいくつかの実施態様は、多孔質親水性媒体のエッジによって境界形成された試料堆積領域を含んでいる。試料は、試料堆積領域のこのエッジを液体中に浸すことにより、このような装置に導入することができる。次いで液体は、1又は複数のアッセイ領域へ横方向に流れる。他の実施態様は、装置に対して中心に配置され、そしてバリアによって少なくとも部分的に画定された境界を有する1又は複数の試料堆積領域を含んでいるので、試料堆積領域のこのエッジを液体中に浸す代わりに、液滴を中心の試料堆積領域に被着することができる。次いで液体は、1又は複数のアッセイ領域へ横方向に流れる。このような装置は、別個の滅菌試料保存容器を必要とすることなしに使用することができる。このことは、保存容器内部に比較的多量の液体試料を提供するために患者にかかる負担を軽減するだけでなく、液体の取り扱い及び処分のために医療従事者にかかる負担をも軽減する。
【0047】
図20は、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置2000の例を示す頂面図及び底面図である。装置は、ボトム層2010に貼り合わされるか又は他の形式で接着されたトップ層2020を含んでいる。装置の頂面図から判るように、トップ層2020は、実質的に液体不浸透性の材料、例えばドライフィルム・フォトレジストを含み、この材料中には、試料捕集のために使用することができるチャネル2020’が設けられている。例示された実施態様の場合、チャネル2020’は中心開口を含んでおり、この開口から、いくつかの狭い開口が放射線状に延びている。ボトム層2010は、多孔質親水性媒体、例えば紙と、パターン化疎水性バリア、例えば本明細書中に詳細に説明するようなパターン化フォトレジストとを含んでおり、これらのバリアは、中心の試料吸収区域を含む試験ゾーン2010’を画定しており、この試料吸収区域からは、いくつかのチャネルが放射線状に延びて、それぞれのアッセイ区域で終わっている。
【0048】
装置2000は、いくつかの実施態様によれば、図20に示したように形成することができる。先ずボトム層2010を形成するために、下で詳細に説明するように、疎水性材料、例えばフォトレジスト2011で飽和させた親水性媒体を用意する。次いで、飽和させた媒体2011を、装置2000内の疎水性バリアの所期パターンに従って選択されたパターンを有するマスク2040を通して、UV又は他の好適な光に当て、次いで、下で詳細に説明するように、疎水性材料を現像することにより層2010を形成する。層2010は、試験ゾーン2010’を画定するパターン化疎水性バリアと、試験ゾーン2010’に接触することなしに装置を取り扱うために使用することができる紙タブとを含む。試験ゾーン2010’のチャネルの端部に設けられた円形アッセイ領域は、被分析物と反応するように、上及び下で詳細に説明したように処理することができる。
【0049】
次に、トップ層2020を形成するために、パターン化を行うことができる疎水性材料層、例えばドライフィルム・フォトレジストを用意する。次いで、材料2021を、試料捕集チャネル2020’の所期パターンに従って選択されたパターンを有するマスク2050を通して、UV又は他の好適な光に当て、次いで、下で詳細に説明するように、疎水性材料を現像することにより層2020を形成する。層2020は、試料捕集チャネル2020’を含む領域2021’と、試料捕集チャネル2020’に接触することなしに装置を取り扱うために使用することができるプラスチック裏当て材を含む領域2021’’とを含む。なお、トップ層及びボトム層は、所望の順番で、又は所望の通り並行して形成することができる。
【0050】
次いで、トップ層2020をボトム層2010に、例えばこれらを貼り合わせることにより接着し、これにより装置2000を形成する。トップ層とボトム層とは、領域2021’’が領域2011’に重なり、そして領域2011’が領域2021’に重なるように整合される。図示の実施態様の場合、試料捕集チャネル2020’の中心開口が、試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域に重なる。しかし、試料捕集チャネル2020’の中心開口から放射線状に延びる狭い開口は、試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域から放射線状に延びるチャネル又はアッセイ区域に重ならない。その代わりに、チャネル2020’の狭い開口は、試験ゾーン2010’のチャネル及びアッセイ区域から横方向にずらされているので、液体は、チャネル2020’の狭い開口のうちの1つから試験ゾーン2010’のチャネル及びアッセイ区域のうちの1つに直接的に流入することは実質的にできない。その代わりに、チャネル2020’の狭い開口は、流体を、試料捕集チャネル2020’の中心開口に向かって流れさせ、この中心開口から、液体は試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域内に流入し、そしてこの区域から、試験ゾーン2010の複数のチャネル及びアッセイ区域を下る。
【0051】
1つの例において、Whatman濾紙1をフォトレジストで飽和させ;約10分間にわたって約95℃で紙をベーキングし;紙をマスクと押し合わせ(2片のガラスの間で);紙を、マスクを通してUV光に当て;約10分間にわたって約95℃で紙をベーキングし;約30分間にわたってプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に紙を浸すことにより、露光されていないフォトレジストを洗い流し;そして紙をプロパン−2−オールで洗浄することにより、ボトム層2010を形成した。次いで紙を約25℃で乾燥させ、次いで約500torrで約10秒間にわたってプラズマ酸化することにより、チャネル及び試験ゾーンの親水性を改善した。
【0052】
同じ例において、先ずドライフィルム・フォトレジストを得ることによって、ボトム層2010を形成した。ドライフィルム・フォトレジストは、透明プラスチック・シートによって両面が保護された淡青色のプラスチックから成るロール(Riston(登録商標)、Dupontから入手)として入手される。フォトレジストを、マスク(透明体上に印刷)を通してUV光に当て;一方の側からプラスチック・シートを取り除き;そして約0.85wt%のNa2CO3の水溶液で、露光されていないフォトレジストを洗い流すことにより、フォトレジストをパターン化した。パターン化されたフォトレジストに、約1秒間にわたって3M Spray Mount(登録商標)接着剤を噴霧し、これをボトム層2010に対して手で整合し、そして2つの層を約100℃で貼り合わせた。エアブラシを使用して、装置が僅かに湿って見えるまで、装置の上側にポリエチレンイミン(MW=20,000)のほぼ7wt%のエタノール溶液を被着した。次いで、窒素流を装置上に吹き付けることにより、被膜を乾燥させた。ポリエチレンイミン被膜は、ドライフィルム・フォトレジスト内のスポークの親水性を高めた。
【0053】
図21A〜21Fは、着色水に曝露している間の、異なる時点における上記手順例を用いて製作されたバイオアッセイ装置の画像である。図21Aは、水に対する曝露前の、装置の頂面を示す画像である。図21Bは、トップ層2020の試料捕集チャネル2020’内の狭い開口のうちの1つに約5μLの水を堆積した直後に得られた装置の頂面を示す画像である。図21Cは、その後の装置の頂面を示す画像であり、着色水が、これが堆積された狭い開口に沿って、試料捕集チャネル2020’の中心開口内へ、そしてボトム層2010の試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域内へ移動することを示している。
【0054】
図21D〜21Fは、着色水が試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域に達した後の、異なる時点に撮影された装置の底部側の連続画像である。図21Dは、着色水が試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域から、中心区域から放射線状に延びるチャネル内に流入した後の着色水を示している。図21Eは、着色水がこれらのチャネルからアッセイ領域内へ部分的に流入した後の着色水を示している。図21Fは、これが中心試料吸収区域、チャネル、及び試験ゾーン2010’のアッセイ領域内を実質的に完全に満たした後の着色水を示している。この実施態様の場合、試験ゾーン2010’を完全に満たすには約5μLの水で十分であった。
【0055】
多孔質媒体は粒子を濾過することができるので、これらは全血試料に対する診断を実施するために使用することもできる。赤血球の存在は典型的には、従来の診断を面倒にし、例えば遠心分離又は凝固を必要とする。本明細書中に記載された装置のいくつかの実施態様の場合、多孔質媒体は、赤血球を濾過により除去し、そして血液流体成分のチャネル内への自由な流入を許すように選択することができる。或いは、赤血球との結合を促進し、赤血球がチャネルを塞ぐのを防止するために、紙をさらに処理することもできる。一般に、紙の有孔率は、紙を通って輸送され得る粒子のサイズを決定することになる。例えば、タンパク質及び小分子は典型的には、紙を通って容易に移動することができるのに対して、孔サイズのオーダーの粒子は濾過により除去することができる。
【0056】
被分析物の有無に関する可視インジケータを提供する上で、比色試験が一般に助けとなるが、体液、例えば尿中の被分析物のレベルを定量的に測定するためのプラットフォームとして、ラテラルフロー式装置を使用することもできる。低廉且つ持ち運び可能なバイオアッセイ装置を用いて複数の被分析物を同時に定量する能力は、在宅介護環境、緊急事態、及び発展途上国、並びに研究室及び病院環境において疾患を識別してモニタリングするのに潜在的に有用である。
【0057】
いくつかの実施態様の場合、定量的データを得るために、バイオアッセイ装置は、液体に対する曝露後、そして比色分析結果が出た後、例えばデスクトップ・スキャナー、ポータブル・スキャナー(例えばビジネス・カード・スキャナー)、デジタルカメラ、又はカメラ付き電話機を使用して撮像される。スキャナーは、これらが比較的低廉であり、高い分解能を有し、走査された画像の焦点が典型的には合っており、そして画像の強度が典型的には照明条件によって影響されないので、バイオアッセイの結果を記録するのに有用である。デジタルカメラは、記録されたデジタル画像の強度が照明条件によって影響されることがあり、また、カメラの焦点を再現可能に合わせる能力が或る環境では操作者に依存することがあるものの、持ち運び可能であり、そしてますます低価格、軽量、そして強力になってきている。
【0058】
カメラ付き電話機は典型的には、デジタルカメラと同様の構成要件を有しており、また、記録された画像を、既存の通信インフラ(例えば携帯電話チャネル)を通して、現場から離れた研究室へ電子的に伝送されることをも可能にする。この研究室では、データを専門家によって分析することができる。専門家は次いで、分析結果を(例えばリアルタイムで)試験管理者に戻すことができる。
【0059】
カメラ付き電話機のいくつかのモデルは、自動フォーカシングすることができ、被写体、例えばバイオアッセイ装置に十分に焦点を合わせるために付加的なレンズを必要としないのに対して、いくつかのカメラ付き電話機は、カメラに余りにも近接した被写体には焦点を合わせることができないカメラを含んでいる。いくつかの実施態様は、カメラの正面に配置されたレンズを含む。このレンズは、カメラが、カメラに比較的近接した被写体の十分に焦点の合った画像を撮影するのを可能にすることができる。図17Aは、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)から形成された一例としてのレンズ1710の画像である。レンズ1710は、カメラ付き電話機上のレンズに可逆的にシールすることができる。レンズ1710は、PDMSベースと硬化剤(Sylgard(登録商標) 184シリコーン・エラストマー・キット)との10:1混合物を使用して製作し、これを30分間にわたって真空下に置くことにより混合物から気泡を除去した。ペトリ皿1720の底に約5μLのPDMSを置き、そして上側を下に向けて60℃で2時間にわたって硬化させることにより凹PDMSレンズを作成した。PDMSレンズ1710をペトリ皿1720からピンセットで取り出し、カメラ付き電話機のレンズ上に置いた。カメラ付き電話機と装置との間の距離を調節することにより、カメラ付き電話機の焦点を装置に合わせた。一般に、レンズの焦点距離は、PDMSレンズの曲率半径を変化させることにより、例えば、ペトリ皿よりも親水性が高い又は低い表面上でPDMSを硬化させることにより、調節することができる。より高親水性の表面は、曲率半径がより大きい、そして焦点距離がより長いレンズをもたらすことになる。曲率半径がより小さいレンズは、上側を下に向ける代わりに、表側を上側に向けてPDMSを硬化させることにより得ることもできる。画像の焦点を合わせるために、適切な焦点距離を有する収束レンズ(例えば平凸レンズ、両凸レンズ、フレネルレンズ)を、カメラ付き電話機の正面に置くこともできる。
【0060】
図17Bは、カメラ付き電話機(Samsung Traceカメラ付き電話機の自動モード、1.3メガ画素)のレンズ上にレンズ1710を置き、そしてバイオアッセイ装置から約4cm上方にカメラ付き電話機を保持することにより得られた画像1730である。図17Cは、図17Bにおける画像と同じカメラ付き電話機と同じ装置からの距離とで撮影された同じバイオアッセイ装置の画像1740である。画像1730は、PDMSレンズの結果として、画像1740よりも著しく明瞭である。
【0061】
いくつかの実施態様の場合、アッセイの結果が一旦デジタル・フォーマットに変換されたら、各試験ゾーンにおいて発現した色の強度を、例えばAdobe(登録商標) Photoshop(登録商標)、又は別の画像分析プログラムを用いて測定する。次いで、被分析物の濃度を計算するために、色の強度を較正曲線と比較する。
【0062】
図4は、一例としてのバイオアッセイ装置400を概略的に示している。このバイオアッセイ装置400は、試料を多孔質親水性媒体(例えば紙)内に運ぶ中央チャネル410と、それぞれがアッセイ試薬を含有する4つの別個の試験区域420,421,430,431内に試料を導く4つの側方チャネルとを含む。この構成は、各アッセイのために必要とされる試料の量を低減するために比較的狭いチャネル(約0.75mm幅)を含んでいる。一般に、チャネルが広ければ広いほど、アッセイを実施するために必要な試料量は多くなる。試験区域420,421は、上記タンパク質アッセイで処理し、そして試験区域430,431は、上記グルコース・アッセイで処理される。
【0063】
この構成のいくつかの構成要件は、この構成を、例えば在宅介護環境又は遠隔環境における使用に適したものにする。ほぼ3mm長の中央チャネル410は、上記装置と同様に、生体試料から粒状物質を濾過し、そして中央チャネル410の張り出した下側区分は、試料の吸収を容易にする。この一例としての装置全体は、1.6x1.6cmの紙片に収まることができるので、この装置は小型且つ持ち運び可能であるだけでなく、軽量(ほぼ35mg)でもある。試験区域420,421,430,431の上方の空いた区域は、装置のラベリング及び操作のために使用することができる。
【0064】
この図示の例において、利用される具体的なグルコース・アッセイ及びタンパク質アッセイに対して特異的ないくつかの構成要件もある。液体は、グルコース・アッセイのための試薬を溶媒先端とともに動かすのに対して、これらの液体はタンパク質のための試薬を動かすことはない。図4の構成は、このような示差挙動に対応するため、そしてアッセイ定量化能力を高くための2つのタイプの試験ゾーンを含む。グルコース・アッセイのために、試験区域の端部に試薬を集中させるために、試験領域430,431内にダイヤモンド様形状を提供する。タンパク質アッセイのためには、データの比較的一貫した分析のための画定領域を提供するために、試験領域420,421内に方形様形状を提供する。一般に、このような構成例を用いて4種の異なるバイオアッセイを実施することもできるが、しかしここでは各装置上で2部ずつ、2種のアッセイを提供する。加えて、図4の実施態様の場合、チャネル及び試験ゾーンのサイズは、目に見えるように十分に大きく、しかしそれと同時に、アッセイを実施するために必要となる流体の量を、扱いやすい量(例えば約5μL)の試料、例えば涙液、又は一滴の尿に制限するのに十分に小さくなるように、設定され構成された。
【0065】
一般に、チャネル及び/又はアッセイ領域の形状及びサイズは、液体のタイプ及び/又は被分析物及び/又は装置が使用される際の検出方法に従って選択することができる。例えば、被分析物に対する装置の応答が、装置を撮像し、そしてコンピュータ・ソフトウェアで画像を分析することによって測定されることになっている場合には、撮像システムが分析を実施するのに十分な量の、被分析物に対する応答に関する情報を得ることができる限り、チャネル及びアッセイ領域は、人間の目に見えることを必ずしも必要とはしない。或いは、上記例におけるように、試薬が装置に被着された液体と一緒に移動する場合、試薬を捕捉し且つ/又は集中させるように、アッセイ領域を成形することもできる。或いは、上記例におけるように、試薬がアッセイ領域内部で比較的定置である場合、画像分析ソフトウェアが容易に分析することができる区域を提供するように、アッセイ領域を成形することもできる。
【0066】
図5は、尿中のグルコース及びタンパク質のレベルを定量化するための手順例500を示している。先ず、バイオアッセイ装置を液体510に曝露し、例えば既知の濃度のグルコース及びタンパク質を有する人工尿試料溶液(ウシ血清アルブミンBSA)約5.0μL中に浸す。1つの例において、溶液及び浸漬手順は上記のものと同じであった。
【0067】
次いで、曝露済バイオアッセイ装置を撮像する(520)。1つの例において、アッセイ開始から30分後に、Nikon D50デジタルSLRカメラの手動モードでフラッシュを伴って(6.1メガ画素);又はSony Ericsson W660iカメラ付き電話機の自動モードでフラッシュを伴わずに(オートフォーカスで2.0メガ画素);又はSamsung Traceカメラ付き電話機の自動モード(1.3メガ画素)でPDMSレンズとともに、装置を撮影した。装置をまた、Epson Perfection 1640SUスキャナーを用いてデフォルト設定値(カラーフォト、600dpi)で;そしてDocketport 465枚葉紙フィード型ポータブル・スキャナーを用いてデフォルト設定値(カラー、600dpi)で走査した。これらの例は非限定的であり、他の撮像装置を使用することもできる。
【0068】
次いで、画像を任意には8ビット・グレースケールに変換する(530)か、又はカラーフォーマット、例えばCMYKに、例えばAdobe(登録商標) Photoshop(登録商標)を用いて変換する(530’)。次いで、画像内の試験領域を選択する(540)。1つの例において、タンパク質アッセイに対しては方形マーキーツールを用いて、そしてグルコース・アッセイに対しては多角形投げ縄ツールを用いて、試験領域をマウスで選択した。タンパク質アッセイに対しては、試験区域全体を、2.5x1.5mm幅の方形で選択した。グルコース・アッセイに対しては、パターンの先端の三角形を選択した。
【0069】
次に、各試験区域内部の画素強度の算術平均を用いることにより、比色応答を定量化した(550)。これらの平均強度を、スポッティングされた試薬を有するが、しかし試料に曝露されてはいない装置の平均強度から差し引いた。但し、分析ステップのうちのいくつか又は全ては自動化することができる。例えば、コンピュータ上で実行するソフトウェアを使用することにより、続いて分析されるべき画像の領域を自動的に選択することができる。或いは、例えば、画像の分析全体を自動化することができ、すなわち、コンピュータ・プログラムは自動的に、画像の領域を選択し、平均画素強度を測定し、そして濃度曲線から誘導された等式を使用して、画素強度を濃度に変換することもできる。
【0070】
図6は、本発明のいくつかの実施態様による、人工尿中の種々異なる濃度のグルコース及びタンパク質に対して得られた信号を示している。0〜20mMのグルコース濃度を測定した。タンパク質アッセイを、0〜60μMのBSA濃度を使用して実施し、図面の下側にグラフで示す。グラフは、デスクトップ・スキャナー(四角)、ポータブル・スキャナー(白四角)、デジタルカメラ(丸)、及びオートフォーカス付きカメラ付き電話機(白丸)を使用して得られたデータを含み、差し込み図は、データの線形領域をより詳細に示す。各データ点は12回のアッセイの平均であり、誤差バーはこれらの測定値の相対標準偏差を表す。データの線形領域は直線とフィットし;各直線に対応する勾配(m)、切片(b)、及びR2値は次の通りである:グルコース(デスクトップ・スキャナー)(m=16.6,b=−1.54,R2=0.991)、グルコース(ポータブル・スキャナー)(m=18.0,b=2.95,R2=0.986)、グルコース(デジタルカメラ)(m=8.96,b=−2.12,R2=0.983)、グルコース(カメラ付き電話機)(m=6.17,b=0.186,R2=0.986)、タンパク質(デスクトップ・スキャナー)(m=1.16,b=12.8,R2=0.982)、タンパク質(ポータブル・スキャナー)(m=1.07,b=14.0,R2=0.954)、タンパク質(デジタルカメラ)(m=0.771,b=14.5,R2=0.980)、タンパク質(カメラ付き電話機)(m=0.379,b=17.0,R2=0.950)。
【0071】
図6に示すように、一例としてのグルコース・アッセイ及びタンパク質アッセイから得られた信号は、被分析物の濃度とほぼ線形に相関する。この図面に示されたデータ点及び誤差バーは、1つの被分析物濃度当たり少なくとも12回の測定から得られた、それぞれ平均値及び標準偏差値である。各データ集合の線形最小二乗適合は、決定係数(R2)0.95〜0.99をもたらす。応答は、0〜5mMのグルコース及び5〜60μMのBSAでほぼ線形であるが、しかしより高い濃度の被分析物で横ばいになることにより、線形性から逸脱する。スキャナー又はカメラを使用することにより測定されたグルコースの濃度範囲は、尿中に臨床的に検出されるグルコース濃度範囲全体(1〜56mM)には跨らない。しかし、0.8mMを上回る尿中グルコースレベルでさえ疾患を示すので、低レベルのグルコースを検出することが役立つ場合がある。グルコース・アッセイの線形範囲(0〜5mM)は、尿中の低濃度のグルコースを定量的に測定するのを可能にする。タンパク質の検出のための線形範囲もまた臨床使用に適している。このアッセイは、糸球体疾患([タンパク質]>35μM)と、腎尿細管疾患(10μM<[タンパク質]<20μM)と、微量アルブミン尿(0.3μM<[タンパク質]<2μM)とを区別するのに十分な感受性を有していると思われる。但し、試薬の濃度を変化させることにより、又はパターンの中央チャネルを短くして試験ウェルと装置の底部との間の距離を制限することにより、グルコース及びタンパク質の他の濃度を定量的に検出することが可能である。
【0072】
図6がさらに示すように、信号の強度は、デジタルカメラ及びカメラ付き電話機の方が、特定の照明条件を有するデスクトップ・スキャナー及びポータブル・スキャナーよりも一貫して小さかったが、しかし決定係数間の類似性、及びグルコース及びタンパク質データの勾配間の一貫した関係は、高品質デジタルカメラが、定量的データを獲得する際にスキャナーとほぼ等しい効果を有していることを示唆する。例えば、人工尿試料中のBSA及びグルコースのレベルを定量化するために、スキャナー及びカメラから得られた較正曲線を比較した。4.5mMのグルコースと45μMのBSAとを含有する試料を12回アッセイし、4.3±0.4mMのグルコース及び46±5μMのBSAという結果(スキャナーの較正曲線を使用)、及び4.5±0.8mMのグルコース及び48±6μMのBSAという結果(カメラの較正曲線を使用)をもたらした。従って両技術は、統計学的に見て同程度の結果をもたらす。
【0073】
手順の一例において、デジタルカメラ及びカメラ付き電話機からのデータが照明条件に或る程度依存するので、既知の濃度を有する人工尿試料を試験することにより、各データ集合を較正した。この既知の試料に対する信号強度を、図6に示された曲線から予期される値と比較し、これにより、較正曲線に適合するように試験データを調節するために使用される応答係数を得た。
【0074】
一般に、種々のバイオアッセイ装置を分析するために、画像分析プロトコル、例えば上記プロトコル例を用いることができ、このようなプロトコルは記載の実施態様に限定されるものではない。デジタル撮像することができる、何らかの形式で被分析物の存在に対して応答するいかなる装置も、上記手順の適応形を用いて分析することができる。例えば、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置、フロースルー式バイオアッセイ装置、及び三次元バイオアッセイ装置の他の構成を分析することもできる。
【0075】
上記のようにバイオアッセイ装置の性能は、粒状汚染物質の存在によって顕著に影響を及ぼされることはない。表1は、土埃、おがくず、又は植物の花粉で汚染された一例としての人工尿試料(4.5mMのグルコース及び50μMのBSA)の定量的分析をまとめた結果を示す。各汚染物質を、デジタルカメラ及びスキャナーの両方を使用して6回測定し、図6に示された較正線を使用して、デジタル信号を濃度に変換した。それぞれの事例において、汚染物質は、グルコースの濃度に対してほとんど影響を及ぼさず(誤差≦6%)、また植物の花粉だけがタンパク質の濃度に対して影響を及ぼした(誤差≦13%)。これは、試料中に溶解され応答の増大を引き起こす、花に由来する何らかのタンパク質から生じた結果であった。
【表1】
【0076】
上記のように、定量的測定を行うために、分析される試料の量に関して少なくとも何らかのコントロールが必要とされる。しかしながら、いくつかの環境、例えば遠隔地では、5μlの試料を調量することができるマイクロピペットを入手できない場合がある。バイオアッセイ装置上のチャネルと試験ゾーンとの組み合わせ表面積が多くの実施態様において一定なので、装置を未知量の試料中に浸し、そして試料が試験ゾーンを満たしたらすぐに装置を取り出すことにより、被分析物を定量的に得ることができる。表2は、ほぼ20μLの人工尿をペトリ皿に移し、装置の底部を試料中に浸し、そして試料が試験ゾーンを満たしたらすぐに装置を試料から取り出す方法を用いた、3つの異なる濃度のグルコース及びタンパク質の測定の結果を示す。装置をペーパータオル上に平らに置き、30分後に装置を上述のように撮像した。この方法を用いた測定の誤差は、固定量の試料を使用した測定よりも若干大きいが、しかし被分析物のレベルをなおも定量的に検出することができる。
【表2】
【0077】
パターン化された紙とスキャナー又はデジタルカメラ検出器との組み合わせは、在宅介護環境における、又は第1応答者による疾患の定量的検出のためのいくつかの利点を提供する。この実施態様は、尿中のグルコース及びタンパク質を検出するときに、正確且つ定量的な結果を提供することが判っている(誤差≦15%)。これらの結果はまた、この低廉、且つシンプルであり、また持ち運び可能な紙に基づく技術が、試験システムにおいて十分に定量的であるので、医学関連状況において有用であることを実証する。
【0078】
いくつかの装置例において、グルコース・アッセイの結果は、装置上に試薬をスポッティングした後、時間経過とともに感受性が低くなることが観察された(装置を室温で保存したとき)。遠隔地において有用となるであろう分析装置は、少なくとも数日間、好ましくは数週間は安定であり続ける試薬を含むことが望ましい。グルコース・アッセイのための試薬の安定性を高めるために、他の用途においてタンパク質をこれらの活性形において安定化する能力が知られている二糖であるトレハロースを添加することができる。図7は、(酵素が添加される前に)トレハロースが紙上にスポッティングされたいくつかの実施態様の例において、2週間にわたって(装置が室温で保存されたときでさえも)酵素活性の損失は観察されなかったのに対して、トレハロースなしで調製されたいくつかの実施態様の例では、グルコース・アッセイの信号強度は時間経過とともに線形に減少することを示している。具体的には、トレハロースの存在において、(人工尿中4.5mMのグルコースを検出する場合)グルコース・アッセイに対する信号強度は、装置に試薬をスポッティングし、次いで装置を室温で保存すると、約30日にわたってほぼ一定であった。グラフ上の値は6回の測定の平均であり、そして誤差バーはこれらの平均からの標準偏差を表す。タンパク質アッセイは、信号の損失なしに2か月にわたって室温で保存することができる(データは示さず)。言うまでもなく、トレハロースは、機能デバイスを提供するためには必要ではなく、また多くの他の処理を用いてアッセイの安定性を高めることもできる。
【0079】
上記実施態様の多孔質媒体は、グルコース及びタンパク質を検出するために誘導体化された種々異なる領域を含むが、一般に、媒体は、多くの他の被分析物を同様に測定するために好適に誘導体化することができ、シンプルで低廉な試験の利用可能性が有用であるような種々の用途において使用することができる。
【0080】
例えば、いくつかの実施態様の場合、バイオアッセイ装置は、幼児、例えば未熟児のための尿分析を実施するために使用される。幼児、特に未熟児から十分な量の尿を得ることは、従来の技術では難しい。従来の技術は、幼児のおむつ内の適宜の場所に綿ボールを入れ、3時間後におむつを開き、綿ボールを取り出し、できるだけ多くの尿(典型的には一滴の一部にすぎない量)を成人用サイズの尿分析ディップスティック上に絞り出す。この方法は、被検査物が典型的には少なくとも部分的に蒸発し、このことが被分析物の濃度、並びに溶液の比重(ひいては移動度)に影響を及ぼすことを含む、種々様々な問題を招く。加えて、被分析物は酸化することがあり、このことは、タンパク質、グルコース、pH、及び/又は測定値の結果に影響を及ぼすおそれがある。
【0081】
対照的に、本発明の実施態様は、幼児、例えば未熟児からの尿試料を捕捉して分析するために容易に使用することができる装置を提供する。1実施態様の場合、所望のアッセイのために調製されたラテラルフロー式バイオアッセイ装置が、おむつ内の適宜の場所に配置され、この装置はおむつの外面に通じる紙チャネルを含む。幼児が排尿すると、尿は装置及び紙チャネルを通って流れ、看護師、技術者、又は医師が読むことができる外部比色分析インジケータを表示する。このような装置は、コストが低い理由から、おむつ内に容易に含むことができる。さらに、装置を読み取るために、幼児に対する取り扱いは必要とならない。なぜならば色/アッセイはおむつの外面上で生じるからである。このような点は、未熟児にとっては特に有用であり得る。なぜならば、取り扱いは例えば呼吸、温度、及び/又はストレス・レベルの問題を引き起こすおそれがあるからである。加えて、その結果は排尿直後に入手することができ、これにより、計画されたおむつ交換(典型的には3時間毎)まで試験を実施するのを待つ必要がなくなること、そして従来のアッセイで発生するおそれのある潜在的な試料劣化を低減することの両方の結果が得られる。いくつかの実施態様の場合、可視インジケータは、結果を素早く読み取ることができるように、尿が分析されていることを指示するために、特に明るく形成されている。
【0082】
おむつに基づく装置内に種々様々なアッセイを組み込むことができる。例えば上記グルコース及び/又はタンパク質試験を含むことができる。いくつかの実施態様の場合、幼児、例えば未熟児の尿中の血管内皮成長因子(VEGF)レベルをモニタリングすることができる。VEGFレベルは、網膜疾患の発生のインジケータである。未熟児における網膜疾患の従来の診断法は、幼児網膜専門眼科医による毎週又は隔週の15分間の検査である。このような検査は高価であり、しかも幼児に悪影響を及ぼす。尿中のVEGF及びその他の成長因子(例えばIGF−1、又はインスリン様成長因子I)の検出は、S. K. Smith, Hum. Reprod. Update 1998, 4, 509-519(この内容を参考のため本明細書中に引用する)に開示されているように、未熟児網膜症、糖尿病、癌、及び移植を診断するのに有用である。VEGF及びその他の成長因子は、妊娠ストリップ試験が尿中のベータ−HCGを検出するのと同様にパターン化紙技術で検出することもできる。
【0083】
他の実施態様の場合、装置は、動物、例えば実験動物、又は獣医師のもとに連れていかれたペットの尿分析を行うために使用することができる。従来、動物は排尿するまで締め付けられ且つ/又はくすぐられ、尿が捕集され、次いで人間の成人用の尿検査ディップスティック上に堆積される。対照的に、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置は、比較的小さな紙「シュレッド」片として形成し、ケージの床上にまき散らすことができる。この床上で動物は排尿することができる。このような比色試験は、糖尿病又は腎臓疾患の早期診断が有用である実験動物におけるタンパク質及びグルコースを測定するのに役立つことができる。獣医環境では、肥満の猫や犬の糖尿病の検出は、従来は実施するのが難しいことのあった有用な試験である。
【0084】
他の実施態様の場合、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置は、脳脊髄液(CSF)を分析するために、例えば患者が髄膜炎を有しているかどうかを割り出すために使用することができる。一般に、髄膜炎の診断は、CSFの培養、CSF中にどれほど多くの白血球があるかどうかを割り出すための細胞カウント、及びCSFのタンパク質及びグルコースのレベルの測定を含む。これらの3つのファクターは、ウィルス性髄膜炎対細菌性/寄生虫性/真菌性髄膜炎の病因を割り出す上で有用であり得る。CSFは典型的には、特に小児においては、大量に入手することはできない(数mL)。さらに、CSFを培養することの必要性に優先権が与えられ、化学アッセイのための試料(グルコース、タンパク質)はほとんど又は全く残されない。従来の化学分析装置は、数μLの被検査物に対してグルコース/タンパク質測定を実施することができるが、このような試験は高価であり、発展途上国内では典型的には利用できない。対照的に、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置は、CSFからのタンパク質及びグルコースの半定量的読み取り値を低廉且つ迅速に提供することができる。例えば、資源の乏しい熱帯環境のために適用すると、CSF中のタンパク質及びグルコースのレベルをスクリーニングすることにより、ウィルス髄膜炎から脳マラリアを区別することが可能になるはずである。これらの障害は大幅に異なる治療を必要とし、適切な区別により、患者が不要の投薬及びそれらの重大な副作用を被らないようにすることができる。
【0085】
いくつかの実施態様の場合、装置は、母乳分析のために、例えば母乳中のタンパク質、脂肪、及びグルコースのレベルを割り出すために使用することができる。このような分析は、十分なカロリーを獲得するために、授乳期の母親が授乳量/搾乳量を調節するのを助けることができる。このことは、栄養摂取が成長の遅れを巻き返すために重大であるような未熟児には特に重要である。
【0086】
他の実施態様の場合、装置は、再生医療用途で、例えば肝臓、膵臓、島細胞、及びその他の外分泌/内分泌器官の小さな「組織」を代償療法の目的で発生させる際に使用することができる。これらの少数の細胞の産出量をモニタリングすること、例えば肝細胞の小さな培養物からのアルブミン産出量を測定することは困難な場合がある。比較的小さな被検査物を測定するために、触媒化学反応、例えばELISAを装置内に組み込むことができる。ELISA型アッセイ装置は、ラテラルフロー式装置又はフロースルー式装置の形態を成していることができる。ここでは、例えば酵素標識付き抗体を装置上の所定の領域内に堆積し、次いで生物学的流体が装置を通って運ばれるのに伴ってこの生物学的流体によってこれらの抗体を溶媒和することができる。標識付き抗体は、試料中の抗原に結合することができ、そしてこの複合体はさらに、基質に取り付けられる(共有結合)か又は付着(非共有結合)された抗体に結合する。抗体に取り付けられた酵素のための基質は、装置内の別個のチャネルを通して提供するか、又は生物学的流体が装置を通過した後で試薬を手で添加することにより、提供することもできる。
【0087】
さらに他の実施態様の場合、装置は、眼科分野において、例えば、硝子体液(目の含有物)又は涙液膜内の成分を分析する際に使用することができる。このような分析は、種々様々な状態(例えば感染症、腫瘍、外傷、関節リウマチのような全身性炎症に対する応答)を診断するのに役立つことができる。例えば抗体及び/又はサイトカインのレベルを割り出すために、目の液体を素早く分析することができる。
【0088】
他の実施態様の場合、装置は、例えば胃内容物の胃食道逆流からの吸引を診断するために、気管支肺胞洗浄液中の成分を測定する際に使用することができる。
【0089】
一般に、装置は、植物、動物、及びヒトの代謝、ストレス、及び疾患の生化学マーカーを検出するのに適している。装置はまた、水及び土壌中の汚染及びその他の被分析物を検出するために使用することができ、その他の流体、例えば化粧品、油、燃料及びその他のものにおける被分析物を検出するのに適している。
【0090】
フロースルー式バイオアッセイ装置
いくつかの実施態様は概ね、疎水性バリアによって画定されたチャネル内で多孔質媒体中を液体試料が横方向に流れることによって動作するのに対して、いくつかの実施態様の場合、試料は、複数の親水性媒体層を貫通して、すなわち「フロースルー」形態で流れる。フロースルー式装置の場合、疎水性バリアは、液体が1つの層から別の層内に横断して流れるのに伴って、この液体を横方向に含有する。種々異なる多孔質媒体層は、所与の用途に適するように処理することができ、又は未処理のままにすることができる。
【0091】
図8Aは、本発明のいくつかの実施態様によるフロースルー式装置800を概略的に示す斜視図である。装置は上側及び下側の保護被膜810,850、任意のフィルタ820、及び多孔質媒体830,840を含んでいる。上側及び下側の保護被膜810,850は、装置の他の層を互いに隣接した状態で保持し、付加的な強度及び安定性を装置に提供し、装置からの蒸発を低減し、そして外部の汚染から他の層を保護する。上側の保護被膜810は開口815を含んでおり、この開口815を通して、液体試料を下側の層上に堆積することができる。上側及び下側の保護被膜は例えばポリマー被膜であってよい。有用な保護被膜の1つの例は、商業的に入手可能な粘着テープである。粘着テープは低廉であり、また接触した層の表面と容易に結合することになる。ラミネートも有用である。
【0092】
試料の濾過が必要になると思われるとき、例えばダスト又はその他の汚染物質の存在が予期される場合、又は装置を全血試料とともに使用し、赤血球の除去が望まれる場合、フィルタ820、例えばガラス繊維フィルタ又は他の商業的に入手可能なフィルタを任意に含むことができる。多孔質媒体830、例えばセルロース紙は、試薬をスポッティングするか又は他の形式で被着することができる領域835を画定する1又は複数のパターン化疎水性バリアを含む。多孔質媒体840、例えばセルロース紙も同様に、他の試薬をスポッティングするか又は他の形式で被着することができる領域845を画定する1又は複数の疎水性バリアを含む。いくつかの実施態様の場合、領域835内の試薬は試料中の被分析物と反応することにより、中間試薬を生成する。これらの中間試薬は過剰の流体と一緒に領域845内に入り、ここでこれらは、領域845内に予め吸収された第2試薬集合と反応する。いくつかの実施態様の場合、この第2の反応は色彩豊かな生成物を提供する。この層状構造は、被分析物が存在するまでは、領域835内の試料と領域845内の試料との接触を阻害する。
【0093】
図8Bは、本発明のいくつかの実施態様によるフロースルー式装置800’を概略的に示す斜視図である。装置は図8Aに示された装置と同様であり、上側及び下側の保護被膜810’,850’、任意のフィルタ820’、及び多孔質媒体830’,840’を含んでいる。これらは上記のものとほぼ同じであることが可能である。装置800’はさらに、装置の層820’,830’及び840’を通して液体を引き出すためのポンプとして作用する吸収性媒体860’を含む。いくつかの実施態様の場合、領域835’内の試薬は抗原であり、この抗原は生体試料中の抗体を検出するために使用することができる。他の実施態様の場合、試薬は、抗原を検出するための抗体であり、更なる実施態様の場合、試薬は核酸、アプタマー、分子インプリント・ポリマー、又は抗原に結合するように調製された他の化学受容体、例えば核酸、タンパク質、有機小分子、又は無機イオンである。領域845’内の試薬は、層840’に、(例えば前記化学的性質を用いて)共有結合的に又は(例えば非特異的な吸着を介して)非共有結合的に付着することができる。
【0094】
装置800’を使用して実施される一例としてアッセイは、生物学的流体をフィルタ820に添加することを伴い、流体はフィルタ内に分配され、過剰な流体がフィルタを通過し、そして層830’の領域内に分配される。過剰の流体は、層830’内に堆積された試薬、例えば標識付き二次抗体を溶解し、そしてこれらの試薬を層840’に運ぶ。流体中の被分析物、例えば抗体は、領域845’に取り付けられた受容体に結合し、そして領域835’からの標識付き試薬は被分析物に結合する。過剰の流体及び試薬は層860’内に運ばれる。この層860’は親水性であり、過剰の流体及び試薬を捕集するための領域として役立つ。任意には、一滴の水、緩衝剤、又はその他の洗浄流体をフィルタ820’に添加することにより、過剰の試薬を装置を通して層860’内に流し入れることができ、この洗浄ステップは、非特異的に結合された標識を除去し、そしてバックグラウンド信号を低減することができる。この装置は、免疫アッセイに適している。これらのうちの1つのアッセイは例えばELISAアッセイであってよい。ELISAアッセイの一例は、例えばホースラディッシュ・ペルオキシダーゼで標識付けされた酵素標識付き二次抗体を領域835’内に含むことになる。アッセイ完了後、試薬、例えばヨウ化物を領域845’に添加すると、例えばヨウ化物からヨウ素への変換を触媒して茶色をもたらすホースラディッシュ・ペルオキシダーゼによって、アッセイに対する信号を増幅することができる。
【0095】
但し、これらの層の全てが全ての実施態様に含まれる必要はない。例えば、いくつかの実施態様の場合、当該試料に対してバイオアッセイを実施するために、唯1つの多孔質媒体層、例えば図8Aの媒体830が必要とされる。他の実施態様は、図8A及び8Bに示されている層よりも多い層、又はこれらの層とは異なる層を含んでいてよい。また、複数の装置を所与の単位(例えば単一の多孔質媒体片上に)として提供することができる。この単位は、複数の診断試験が並行して又は順繰りに行われるのを容易に可能にする。下に詳細に説明するように、装置のそれぞれはそれ自体多重化されていてよく、このようにすると、多くの異なる種類の測定が一度に行われるのが可能になる。
【0096】
図9A及び9Bは、いくつかの実施態様による一例としての鉛直フロー式装置900のそれぞれ正面図及び背面図である。図9Aから明らかなように、装置は保護上層910、例えば粘着テープ、フィルタ920、及び多孔質媒体930、例えば濾紙を含む。保護上層910は、図8Aに示されているものと同様の開口を含み、この開口は、液体試料をフィルタ920、例えばガラス繊維フィルタ上に堆積することができる区域を提供する。保護上層910はまた任意には、多孔質媒体930のエッジを超えて延びる「タブ」を含み、装置の容易な取り扱いを可能にする。多孔質媒体930は、試料がフィルタ920に被着された後で貫流することができる領域(この画像では見ることはできない)を画定する疎水性バリアを含む。
【0097】
図9Bは装置900の背面図を示している。この装置は保護下層950と、試料分析のための領域935とを含んでいる。これらの領域935は、多孔質媒体930内の疎水性バリアによって画定されている。図示の実施態様の場合、異なるアッセイを提供するようにそれぞれ処理された4つの領域935がある。しかし、一般に、領域の他の形状及び数、及び他の形態も可能である。上記ラテラルフロー式装置とは異なり、ここでは、アッセイ領域は、疎水性バリアによって互いに分離されている。しかし、いくつかの実施態様は、互いに流体連通しているアッセイ領域を含む。このような実施態様は、組み合わせラテラルフロー式とフロースルー式とを組み合わせた装置として動作することができる。
【0098】
図10は、図9A〜9Bのラテラルフロー式装置を組み立てる手順例を示している。先ず、バイオアッセイ層とフィルタとを調製する(1010)。1つの例において、バイオアッセイ層は、パターン化バリアと、例えば上記のように、バリアによって画定された領域内にスポッティングされたアッセイ試薬とを有する多孔質媒体であり、そしてフィルタは、穴開け器を使用して調製された9mm直径のガラス繊維濾紙片(Whatman GF/C)である。フィルタをバイオアッセイ層上に整合する(1020)。保護層、例えば接着材を用意する(1030)。1つの例において、透明な粘着テープ(例えばScotchテープ)(7x1.9cm)に、このテープの一方の端部からほぼ7mmのところから、7mm直径の穴を開ける。次いでこの接着材を使用して、フィルタをバイオアッセイ層に付着させる(1040)。次いで接着材を連続して複数回折り曲げる(1050)ことにより、フィルタをバイオアッセイ層に固定し、この場合粘着テープの穴がガラス繊維フィルタの上に位置するようにし、また、テープの過剰の長さでバイオアッセイ層をくるむことにより装置をシールする。
【0099】
1つの例において、製作された装置は比較的軽量(例えば50mg)であり、また小型(約36x18x0.3mm)であるが、しかし、手で操作するのに十分に大きい。装置は、異なるアッセイで4つの領域935を処理することにより、肝機能のインジケータをもたらす4つのアッセイを実施するように構成された。
【0100】
米国特許第5,279,944号明細書(内容全体を参考のため本明細書に引用する)に報告された手順を改変した方法を用いて、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)を検出するように、製作された装置の第1領域935を処理した。アッセイは、L−アラニン及びアルファ−ケトグルタル酸の存在における(ALTによって触媒される)ピルビン酸の形成に依存する。ピルビン酸は続いて、ピルビン酸オキシダーゼと反応することにより、過酸化水素を生成する。過酸化水素は、4−アミノアンチピリジン及びジメチルアミノ安息香酸ナトリウムの存在においてホースラディッシュ・ペルオキシダーゼと反応することにより、4−N(1−イミノ−3−カルボキシ−5−N,Nジメチルアミノ−1,2−シクロヘキサンジオン)アンチピリンナトリウム塩を提供し、このアッセイ装置は、ALTが存在すると赤/紫色に転じる。
【0101】
下記の順番でアッセイ・ウェル内に下記溶液をスポッティングし、各溶液間に10分間の乾燥時間を置くことにより、1実施態様例において、紙上のALTアッセイを調製する:1)0.3μLの0.3MトレハロースのMillipore水溶液;2)L−アラニン(1M)、α−ケトグルタル酸(30mM)、KH2PO4(2mM)、MgCl2・6H2O(20mM)、及びチアミンピロリン酸(TPP)(2mM)を含有する0.3μLの200mM Tris−HCl緩衝剤(pH7.35)溶液;3)4−アミノアンチピリジン(2mM)及びジメチルアミノ安息香酸ナトリウム(10mM)を含有する0.3μLの200mM Tris−HCl緩衝剤(pH7.35)溶液;4)ピルビン酸オキシダーゼ(6U/ml)及びホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(6U/ml)を含有する0.3μLの200mM Tris−HCl緩衝剤(pH7.35)溶液。150mM NaClを含有する50mM リン酸ナトリウム緩衝剤(pH8.0)中のALTの溶液0.5μLを試験区域内にスポッティングすることにより、ALTに対応する較正曲線を調製した。
【0102】
J. Clin. Lab. Anal. 1999, 13, 180、及びAngew. Chem. Int. Ed. 2007, 46,1318に報告されたものを改変した手順を用いて、血漿中のタンパク質レベルを検出するために、製作された装置の第2領域935を処理した。具体的には、0.3μLの250mMクエン酸緩衝溶液(pH1.8)を試験区域内にスポッティングし、続いて10分間乾燥させ、次いで、4.5mMテトラブロモフェノール・ブルー(TBPB)のエタノール溶液0.3μLを添加し、紙を再び10分間にわたって乾燥させた。150mM NaClを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝剤(pH8.0)中のBSA(濃度範囲0.1〜2mM)の溶液0.5μLを試験区域内にスポッティングすることにより、較正曲線を調製した。
【0103】
“Rapid and Sensitive Colorimetric Method for Visualizing Biotin-Labeled DNA Probes Hydbridized to DNA or RNA Immobilized on Nitrocellulose: Bio-Blots”, Leary, J. J.; Brigati, D. J.; Ward, D. C., PNAS, Vol. 80, No. 13, 1983, pp. 4045-4049(この内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されたものを改変したアッセイを用いて、血漿中のアルカリホスファターゼ(ALP)のレベルを検出するために、製作された装置の第3領域935を処理した。具体的には、0.3μLの500mM Tris緩衝剤(pH9.5)を紙試験区域内にスポッティングし、この区域を10分間にわたって乾燥させておき、次いで、70%ジメチルホルムアミド中の2.5%ニトロブルーテトラゾリウム0.3μLをスポッティングし、次いで10分間にわたって乾燥させ、そして100%DMA中の5%の5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート0.3μLをスポッティングした。試験区域を30分間にわたって乾燥させておいた。500mM Tris緩衝剤(pH9.5)中のアルカリホスファターゼの溶液0.5μLを試験区域内にスポッティングすることにより、較正曲線を調製した。
【0104】
米国特許第5,834,226号明細書(内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に報告されたものを改変した手順を用いて、血漿中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルを検出するために、製作された装置の第4領域935を処理した。具体的には、蒸発を最小限に抑えるために試験基材の背面をテープでカバーしたあと、5%w/vトレハロースのMillipore水溶液2.0μLを試験区域内にスポッティングした。10分間にわたって乾燥させた後、0.0237M NaCl、及び4.5mM EDTA2ナトリウム塩を含有する200mM TRIS緩衝剤(pH8.0)中に1.0M L−システインスルフィン酸及び0.1M 2−ケトグルタル酸1ナトリウムを含有する溶液2.0μLを試験区域内にスポッティングした。さらに10分間にわたって乾燥させた後、2.0μLの色素溶液(0.25gのポリビニルアルコール、7.5mgのメチルグリーン、7.5mgのローダミンB、2.8mgのZnCl2を25.0mLの脱イオン水中に含有)及び0.06%Triton X−100を試験区域内にスポッティングした。150mM NaClを含有する50mM リン酸ナトリウム緩衝剤(pH8.0)中のアスパラギンアミノトランスフェラーゼ(濃度範囲0.05U/mL〜2.50U/mL)の溶液2.0μLを試験区域内にスポッティングすることにより、較正曲線を調製した。
【0105】
いくつかの実施態様の場合、ランセットを使用して指を刺すことにより得られた一滴の血液に、装置を曝露する。ここで血液は、(一滴の血液がフィルタ上に整合されるように)刺された指と親指との間に装置を保持することにより、装置に添加される。装置を約60秒間にわたって加圧することなしに保持し、次いで、約10秒間にわたって軽く圧迫する。約70秒後には、装置はもはや保持する必要はない。しかし約30分後まで、アッセイの結果は分析されない。アッセイの結果は、保護ケーシング(すなわちテープ)をパターン化紙から剥ぎ取ることにより観察される(このプロセスはまたガラス繊維フィルタを取り外す)。アッセイの結果は、カラーチャートと比較することにより定性的に視覚化することができ、或いは、上に詳しく説明したように、結果をデジタル化し分析することにより定量化することができる。
【0106】
多孔質媒体内にはいかなる所望のパターンをも画定することができるので、バイオアッセイの範囲を超えた幅広い用途が考えられる。例えば、多孔質媒体、例えば紙をパターン化することによりチャネルを形成し、続いて電界を印加することにより、これらのチャネル内の試料に対して電気泳動を実施することができる。電気泳動法に紙を使用することは良く知られており理解されているが、試料の経路長、ひいては試料中の荷電粒子間の分離度は従来、使用される紙の長さに限定されている。ここでは、紙は任意にパターン化することができるので、チャネルは、「ジグザグ」、又は紙の長さに対してチャネルの経路長を増大させる他のパターンを有するように製作することができる。さらに、パターン化は、チャネルが従来の紙に基づく電気泳動よりも顕著に狭くなるのを可能にするので、それだけ小さな試料サイズを用いることができる。
【0107】
いくつかの実施態様の場合、パターン化多孔質親水性媒体(例えば紙)から成る層と、絶縁材料(例えば両面テープ)から成る層とを互い違いに積み重ねることにより、三次元マイクロ流体装置を製造する。三次元マイクロ流体装置は流体を、パターン化紙層内部で横方向に運ぶか、又は2つのパターン化紙層の間で鉛直方向に運ぶことができる。絶縁材料層は、異なるパターン化紙層内の流体が互いに混ざり合わないことを保証する。流体が2つのパターン化紙層の間で鉛直方向に流れる必要があるところにはどこでも絶縁材料層に、開口を設けることができる。三次元マイクロ流体装置は、2つの異なるチャネルが、直接に物理的に接触することなしに互いに交差するのを可能にする。これは、単一層ラテラルフロー装置においては可能ではない特徴である。三次元装置はまた、任意の所期パターンを成す多数のウェル内に試料を分配するために有用である。三次元装置は、試料が鉛直方向に流れることができ、また装置の各層を試料の処理又は分析のために使用することができるので、多数の試料が処理又は分析されることになっている用途において有用である。紙層及びテープ層は薄い(1層当たり約100〜200μm)ので、装置のサイズを大幅に変えることなしに、いくつかの紙層及びテープ層を積み重ねることが可能である。
【0108】
図18Aは、三次元マイクロ流体装置1800の1実施態様の斜視図を概略的に示している。この装置は、2つのパターン化紙層1810及び1830と、開口を有する1つの絶縁材料層1820、例えば両面テープとを含んでいる。3つの層1810,1820,1830は互いに整合され接着されている。図18Bは、2つの異なる色の水性色素(グレースケール画像において一方が他方よりも明るく見える)を運ぶ図18Aの装置を示している。この装置は、色素が貫流する別個のチャネルが、2つの流体間でいかなる混合も生じることなしに、互いに交差するのを可能にする。
【0109】
図19は、三次元マイクロ流体装置1900の別の実施態様の斜視図を概略的に示している。この装置は、2つの試料を、特定のパターンを成す16個の試験ゾーンに分配するように構成された試料分配装置である。装置1900は、2つのパターン化紙層1910と、3つの絶縁材料層1920とを含んでいる。装置のトップ層1911は2つの試料のための2つの入口を含み、そして装置のボトム層1914は16個の試験ゾーンを含んでいる。装置の内層は、水平方向平面内に試料を分配する複数のチャネルを含んでいる。図19は、装置のトップ層1911上の2つの入口に液体を被着し、そして色素が装置を通ってボトム層1914上の16個の試験ゾーン内に流入するのを可能にした後の、2つの異なる色の水性色素(グレースケール画像において一方が他方よりも明るく見える)の流れを概略的に示している。装置の内層におけるチャネルを適切に配列することにより、試験ゾーン内の任意の試料パターンを得ることができる。
【0110】
多孔質親水性媒体内にパターン化疎水性バリアを設ける方法
いくつかの実施態様の場合、下で詳細に説明するように、必要となる設備が比較的少なく、ほとんどいずれの研究室内でも実施することができ、そして多くのタイプのパターン及び各パターンの複数のコピーを形成するのに十分に万能のパターン化法を用いて、多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを設けることができる。比較的製作しやすく、且つ低廉な成分を入手しやすいので、バイオアッセイ装置は、慣習的な装置、例えばディップスティックよりも著しく低コストで形成することができ、従って、何よりも、資源が制限されており、また装置のコスト及び持ち運び可能性が有用となるような遠隔地において疾患を検出するために役立つことができる。
【0111】
上記のように、多孔質親水性媒体、例えば紙内にマイクロ流体チャネルを製作するために、パターン化疎水性ポリマーは一般に、所望の区域内に液体を閉じ込めるために、紙のほぼ全厚を通って延びている。この制約は、紙をパターン化するために実際に用いることができる方法を制限する。例えば標準的なインクを使用する印刷方法は、紙内にチャネルを形成するのに適していないことがある。なぜならば、現在入手可能なインクは、紙の表面に付着するように構成されてはいるが、しかし紙内に吸収されるようには構成されていないからである。しかし、或る種のインクは、紙のほぼ全厚を通して吸収されるように構成することもできると考えられる。
【0112】
多孔質媒体、例えば紙の組成も、実際に用いることができるパターン化法を制限することがある。例えば、紙は典型的には、絡み合わされた繊維を含み、これらの繊維は、紙シートのx軸及びy軸において配向されており、z方向で互いに上下に積み重ねられている。この配列の結果、z方向と比較してx,y平面内で液体の広がりが増大し、このことは、パターン化された構成要件をぼやけさせる。モノマー、ポリマー、及び溶媒を適切に選ぶことにより、紙のこれらの特性を克服し、そして、紙の全厚を貫通する明確な構成要件のパターン化を可能にすることができる。
【0113】
いくつかの有用な紙パターン化法は、フォトリソグラフィに基づいており、クリーンルーム内又は研究室内で実施することができる。クリーンルーム・フォトリソグラフィは、紙内の高度に画定されたパターンを形成するのに効果的ではあるが、しかし比較的高価且つ低速であり、場合によってはその商業的な実行可能性をいくらか制限してしまう。他の方法、例えば研究室フォトリソグラフィ及びソフト・リソグラフィ(マイクロコンタクト印刷とも呼ばれる)は、高品質の装置をなおも製造しつつ、クリーンルームの必要をなくし、そして、製造業者側の設備及び専門知識に対する要件をわずかしか有さない。研究室フォトリソグラフィは、良好に分解されたチャネル及び小さな構成要件サイズを有するパターンを形成するのに有用である。ソフト・リソグラフィは典型的にはフォトリソグラフィに基づく方法よりも低廉であり、そして同じパターンの複数のコピーを比較的速やかに作成するのに有用である。
【0114】
いくつかの用途の場合、紙マイクロ流体装置の構成要件サイズが比較的大きく(例えば約1〜2mm幅のチャネルを有する)、この場合には、分解能はより低いが、しかしより高速のスタンピング技術で十分となる。他の用途の場合、ミクロンサイズの構成要件が使用されることになり、この場合には、低廉ではあるが、しかしより高分解能の方法が有用となる。ほとんどの用途の場合、装置は、1.5mm未満のサイズの構成要件を有することになる。しかし念のために述べておくと、本明細書中に記載されたシステム及び方法を用いて、チャネルの種々様々な形状及びサイズを形成することができる。両方の種類の用途において、パターン化方法が、低廉であり、高スループットを有し、そして製造するために高度な技術を有するユーザーを必要としないことが望ましい。
【0115】
下記考察では、本発明のいくつかの実施態様に基づく3つの紙パターン化法(クリーンルーム・リソグラフィ、卓上リソグラフィ、及びスタンピング)について記述し、各方法を用いて製造されたパターンの品質を、パターン形成コストとともに比較する。これらの比較は、紙マイクロ流体装置内で有用であり得るいくつかの構成要件、例えば曲線、直角、T字形接合部分、及び真直ぐなチャネルに関して行われる。また、親水性チャネル及び疎水性バリアの両方に対して、これらの構成要件の幅を変える。これらの構成要件の分解能及び均一性、並びに紙内の水の広がりを制御するパターンの能力を比較する。種々の例は、いくつかの方法を用いて製造することができるいくつかのタイプの構成要件を示すことを意図したものであり、これらは本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0116】
いくつかの実施態様の場合、クリーンルーム・リソグラフィを用いて、疎水性パターンを生成する。図11は、クロマトグラフィ紙をフォトレジストを用いてフォトリソグラフィによりパターン化することにより、紙内部に疎水性バリアを形成する方法の一例における工程を概略的に示している。
【0117】
図11に示された実施態様の場合、先ず、多孔質親水性媒体、例えばクロマトグラフィ紙(例えば約7.5cm直径及び約100μm厚)を用意する(1110)。紙は、リソグラフィ工程を生き延びるのに十分な厚さ及び強度を有するように、そしてまた、後続の所期用途と適合するように選択される。
【0118】
次に、紙をフォトレジスト中に浸し、前ベーキングする(1120)。1つの例において、フォトレジストが紙全体にしみこむのに十分な時間、例えば30秒〜1分間にわたって、約2mLのSU−8 2010フォトレジスト中に紙を浸す。いくつかの実施態様の場合、フォトレジストは紙を実質的に透過するか又は紙に実質的にしみ通るので、フォトレジストの画定部分が後で除去されると、紙上及び紙内に残った部分は、横方向流体流を実質的に通さないバリアを形成する。フォトリソグラフィと適合可能な他の光活性材料、例えばフォトポリマーを、パターンを画定するために紙を損傷することなしにこの材料を除去できる限り使用することもできる。フォトレジストで浸された紙を次いで任意には、例えば2000rpmで30秒間にわたって回転させることにより過剰のフォトレジストを除去する。過剰のフォトレジストを他の方法、例えば掻き取り又は加圧によって除去することができる。次に、紙を例えば95℃で5分間にわたってベーキングするか、又は空気乾燥させることにより、例えばSU−8製剤中のシクロペンタノンを除去する。
【0119】
次に、フォトレジストで浸された紙をフォトマスクの下に整合し、そしてフォトレジストを適切に反応させるように選択された波長のUV光に当てる(1130)。1つの例において、CAD/Art Services, Incから得られるフォトマスクを、マスク・アライナ(OL-2 Mask Aligner, AB-M, Inc)を使用して整合し、そして約10秒間にわたってマスクを通してほぼ405nmのUV光(50mW/cm2)に紙を当てる。別の例の場合、フォトマスクを、インクジェット・プリンタを使用して透明体上に直接に印刷する。
【0120】
次に、露光済紙を、例えば95℃で5分間にわたってベーキングする(1140)ことにより、フォトレジストを架橋するか又はその他の形でフォトレジストを適宜に処理する。
【0121】
次に、フォトレジストを現像し、そしてその結果としての集成体を任意にはプラズマ酸化する(1150)。1つの例において、露光済・後ベーキング済の紙をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に浸すことにより(5分)、そしてパターンを2−プロパノール(3x10mL)で洗浄することにより、重合されていないフォトレジストを除去する。現像過程は、紙(又はその他の多孔質媒体)内のフォトレジストから形成された疎水性バリアを残す。いくつかの環境において、フォトリソグラフィ過程に続いて、紙は、おそらくは紙に結合された残留レジストに起因して、処理前よりも高い疎水性を有する。所期用途にとって紙内の申し分のない親水性レベルに達するために適切な場合には、紙の表面全体に、任意には酸素プラズマ又はその他の適宜の処理を施すことにより、親水性を調節することができる。1つの例において、パターン化紙を10秒間にわたって600torrで酸素プラズマに当てる(SPI Plasma-Prep II, Structure Probe, Inc)。フォトレジストを除去した後、紙の親水性が所期目的にとって十分である実施態様の場合、この工程を実施する必要はない。いくつかの実施態様の場合、そのフォトレジスト及び処理は、紙の親水性の変化を低減又は排除するように選択される。
【0122】
次いで、結果として生じたパターン化紙をウェハーから切り取ることにより、個々のバイオアッセイ装置を形成し(1160)、そして上で詳細に説明したように、試薬をスポッティングし乾燥させることにより、誘導体化するか又はその他の形式で診断アッセイにおいて使用するために改変することができる(1170)。
【0123】
フォトレジストがそれを通して露光されるマスクは、完成したバイオアッセイ装置の所期用途にとって適するようにパターン化される。いくつかの実施態様の場合、マスクは、例えばほぼ1mmの幅を有する疎水性チャネルを画定するように、且つ/又は、所望の通りのアッセイ領域、例えば1〜10個又はこれよりも多いアッセイ領域を画定するようにパターン化される。装置はマイクロアレイ用途で使用されるようになっている実施態様の場合、装置は、50を上回る、100を上回る、又は数百を上回るアッセイ領域を含んでいてよい。アッセイ領域及びチャネルの両方を含む実施態様において、アッセイ領域は、チャネルと同一の広がりを有していてよく、或いは、チャネルから分岐していてもよい。パターン化領域は、必要に応じて、アッセイのタイプに関する情報をユーザーに提供するために種々異なる形状を有することもできる。一般に、チャネルを占有する紙又はその他の多孔質親水性媒体は、毛管作用によって流体をチャネルを通して輸送することができ、チャネルは、それだけで毛管作用を誘発することができる特定のサイズ又は形状を有する必要はない。しかしながら、チャネルが小さければ小さいほど、申し分のない測定を行うために必要となる試料は少なくなる。
【0124】
本明細書中に記載されたフォトリソグラフィ法を用いて、幅100μmのチャネルが達成されている。最小構成要件サイズはフォトリソグラフィ分解能によって理論上制限される一方、実験に基づくいくつかのパラメータが、この方法で実際に形成することができる構成要件のサイズを制限する。例えば紙は不透明であり比較的厚いので、典型的には、紙全体にわたるようにフォトレジストを露光するためには比較的長い露光時間を必要とする。このことはリソグラフィ分解能を多少低減する。それにもかかわらず、100μmよりも小さい構成要件サイズを容易に達成することができ、また著しく小さな構成要件(例えば100nm)が理論上可能である。
【0125】
「卓上(ベンチトップ)」又は「研究室」フォトリソグラフィを用いて多孔質親水性媒体中の疎水性バリアを設ける手順は、上記クリーンルーム・フォトリソグラフィと同じ原理の多くを用いるが、しかし一般により低廉であり、しかもよりシンプルに実施することができる。
【0126】
図12は、いくつかの実施態様による、多孔質親水性媒体中に疎水性バリアを設けるためのプロセスの一例を示している。先ず、多孔質親水性媒体を用意する(1210)。紙は、リソグラフィ工程を生き延びるのに十分な厚さ及び強度を有するように、そしてまた、後続の所期用途と適合するように選択される。コストを軽減するために、1つの例の場合、親水性媒体として10cm x 10cmのペーパータオル片を使用する。
【0127】
次に、紙をフォトレジスト中に浸し、そして乾燥させる(1220)。1つの例において、ガラス試験管の側面を使用して、1mLのSCフォトレジストをペーパータオル上に広げることにより、ペーパータオルの厚さを通してレジストのほぼ均一な被膜を得る。例えばペーパータオルで吸い取ることにより、過剰のレジストを除去し、そして次いでフォトレジストで浸された紙を25℃で10分間にわたって空気乾燥させる。フォトレジストの選択肢は、図11を参照して説明したものと概ね同じである。SCフォトレジストは典型的には、多くの他の種類の商業的に入手可能なフォトレジストよりも低廉であり、ひいては費用重視の用途において有用であり得る。自家製のフォトレジストも同様に好適である。
【0128】
次に、フォトレジストで浸された紙をフォトマスクの下に整合し、そしてフォトレジストを適切に反応させるように選択された波長のUV光に当てる(1230)。1つのプロセス例において、卓上リソグラフィのためのマスクは、デスクトップ・インジェット・プリンタ(HP Photosmart C3100)を使用して透明シート上にマスクを印刷することにより製造される。この例において、2つのガラス片間にマスクと紙とを締め付けることにより紙の上側に保持されたフォトマスクを通して、約3.5分間にわたって紙よりも12cm上方で保持された長波UVランプ、B 100 AP、UVP、ほぼ20mW/cm2からのUV光に紙を当てる。別の低廉なUV光源は、UV EPROM(消去可能プログラム可能リード・オンリ・メモリ)チップ消去ランプである。
【0129】
次に、フォトレジストを現像する(1240)。1つの例において、紙をキシレン(3分間)、及びジクロロメタン(3x3分)中に浸すことにより、重合されていないフォトレジストを除去した。現像過程は、紙(又はその他の多孔質媒体)内のフォトレジストから形成された疎水性バリアを残す。図12の実施態様におけるように、紙を任意には酸素プラズマで処理し、例えば紙を10秒間にわたって600torrで酸素プラズマに当てる(SPI Plasma-Prep II, Structure Probe, Inc)ことにより、その親水性を調節することができる。
【0130】
結果として生じたパターン化紙を次いで切り取り、そして上で詳細に説明したように、誘導体化することができる。
【0131】
他の実施態様の場合、ソフト・リソグラフィ/マイクロコンタクト印刷/スタンピングによって、多孔質親水性媒体中に疎水性バリアが設けられる。図13は、疎水性バリアを提供するためにソフト・リソグラフィを使用する方法の一例を示している。先ずスタンプを用意する(1310)。1つの例において、スタンプはプラスチックから形成され(Costar 384-ウェル・マイクロプレート、Corning)、また別の実施態様において、Rubber Stamps Netによって、3x3インチのスタンプに対して約$25のコストのゴムスタンプが注文製作され、これらのゴムスタンプは約0.35mm幅の構成要件に制限される。他の最小構成要件サイズが可能であると考えられ、これらのサイズは、用いられる製造技術及び材料によって制限される。
【0132】
次に、疎水性ポリマーをスタンプ上に塗ることにより、スタンプに「インク着け」する(1320)。1つの例において、白毛フラット絵筆#4を使用して、パターンの構成要件上に薄層状にポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(sylgard 184, 10:1エラストマー・ベース:硬化剤、3時間にわたって室温で硬化)を広げた。
【0133】
次に、ポリマーをインク着けされたスタンプを多孔質親水性媒体に押しつける(1330)。1つの例において、PDMSを塗布されたスタンプを10 x 10cmの紙片、Whatman No.1 濾紙と接触させ、ほぼ20秒間にわたって手で静かに押しつけ、次いでスタンプを取り外した。
【0134】
続いてポリマーを処理し、例えば硬化させた(1340)。上記例を続けて、紙内のPDMSを、使用前に室温で8時間にわたって硬化させた。
【0135】
クリーンルーム・リソグラフィ、研究室/卓上リソグラフィ、及びソフト・リソグラフィに関して上述した手順例を用いて形成されたパターン化済の構成要件の寸法を、立体顕微鏡(Leica MZ12)に取り付けられたNikonデジタルカメラDXM1200を使用してパターンを撮像し、Microsoft Powerpointにおいて画像を拡大し、画像を印刷し、そして定規を用いて構成要件を測定することにより、定量化した。図14A及び14Bは、それぞれクリーンルーム・リソグラフィ及び研究室リソグラフィを用いて形成された構成要件の画像である。表3は、画像から行われた測定をまとめたものであり、表3の報告値は倍率に対して較正されており、実寸法を表しており、これらの値はまた、パターン全体にわたって分布された位置で10回測定された同じパターンの3つのレプリカの平均である。
【表3】
【0136】
例11を参照しながら上述したクリーンルーム・リソグラフィで疎水性バリアをパターン化するための手順例は、比較的良好に画定された構成要件を生成し、これらの構成要件は、いくつかの実施態様の場合、図16Aに示されているように、親水性チャネルに関しては幅約150μm(実験値:158±13μm)という小ささで、そして疎水性壁に関しては幅約300μm(実験値:297±27μm)という小ささで形成することができる。一般に、疎水性壁は約150μmよりも小さく形成することもできるが、薄い壁は、親水性チャネル外部での水の拡散を制限するときの効率が、厚い壁よりも低い。
【0137】
クリーンルーム・リソグラフィは高品質の構成要件を生成しはするものの、スループット、費用、及びパターンを形成するのに必要な工程数に関して、卓上リソグラフィ及び卓上スタンピングよりも効率が多少低い。例えば、1プロセス例において、クリーンルーム・リソグラフィは、7.5cm濾紙片上に3.6 x 3.6mmの正方形から成る5 x 5cmの格子を形成するために、約0.5gのSU−8 2010フォトレジストを使用し(図15Aに示す)、この量のフォトレジストだけでほぼ$0.26かかる。図15Aに示された格子を製造するために用いられる製法例は、装置が完成して使用の準備ができる前に9つの工程を必要とする。
【0138】
クリーンルーム内のリソグラフィはまた、設備が典型的には特定の基材最大サイズに合わせて設計されているという実際的な制限を有している。例えばこの一例としての過程中に使用される設備は、直径7.5cmを上回る円形の紙片をパターン化するためには使用することができない。なぜならばマスク・アライナがより大きい基材に対応することができないからである。マスク・アライナがより大きければ、より大きい基材のパターン化が可能になるはずである。
【0139】
卓上リソグラフィは、構成要件のサイズがミリメートルである場合、マスクから紙片へ構成要件を転写することに関して、クリーンルーム・リソグラフィと同程度の忠実度を有している。例えば、表3に示すように、1mmの親水性チャネル及び疎水性壁を有するマスクは、チャネルが0.99±0.03mm幅であり、壁が1.02±0.03mm幅である紙内パターンをもたらす。
【0140】
しかしながら、卓上リソグラフィは、パターン全体にわたって等しいサイズの構成要件を提供するときに、クリーンルーム・リソグラフィよりも一貫性が若干低いことがある。例えば、いくつかの実施態様の場合、線幅の変動率は、卓上リソグラフィにおいて、クリーンルーム・リソグラフィよりも50%高い。卓上リソグラフィは、比較的狭い線幅のパターンを製造するときに、クリーンルーム・リソグラフィよりも効率が低いこともある。例えば、上記プロセス例を用いると、図16Bに示されているように、卓上リソグラフィを用いて漏れずに形成された最も狭い構成要件は、幅約100μm(実験値106±23μm)(親水性チャネル)、及び幅約150μm(実験値245±31μm)(疎水性壁)であった。
【0141】
しかし、卓上リソグラフィは、クリーンルーム・リソグラフィよりも著しく低廉であり、高スループットである。卓上リソグラフィを用いる一例としてのプロセスにおいて、3.6 x 3.6mmの正方形から成る10.7 x 7.2cmの格子を形成するために、0.5gのSCフォトレジストを使用した(図15B)。このコストはほぼ$0.05である(クリーンルーム・リソグラフィを用いた場合よりも$0.21だけ安い)。
【0142】
同じレジストはクリーンルーム法でも使用することができるので、卓上法の1つの有用な特徴は、レジストのコストにあるのではなく、設備のコスト、及びプロセスに対するスループットにある。例えば、いくつかのプロセス例では、卓上で同じ5 x 5cm格子を形成するために必要となる工程は、6つであり(クリーンルーム法よりも3つ少ない)、クリーンルーム内で格子を形成するために必要な時間よりもほぼ10分速く達成することができる。
【0143】
いくつかの実施態様の場合、スタンピング法は、クリーンルーム又は卓上のフォトリソグラフィよりも簡単且つ低廉な紙パターン化法ではあるが、しかし若干低品質のパターンを産出することがある。転写過程に加えて、スタンプ自体の品質が、結果として生じるパターンの品質に影響を及ぼすことがある。上記プロセス例では、商業的に購入したスタンプを使用したが、スタンプは研究室で、当業者に知られた技術を用いて(フォトリソグラフィによって形成された)マスターをレプリカ成形することにより、例えばポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)を使用して製造することもできる。
【0144】
いくつかの実施態様の場合、スタンピング法は、フォトリソグラフィ法よりも著しく低廉である。1つのプロセス例において、3.6 x 3.6mmの正方形から成る10.7 x 7.2cmの格子(図15C)を、0.1gのPDMSしか使用せずに約120秒で形成することができる(このコストはほぼ$0.01であり、卓上リソグラフィ法又はクリーンルーム・リソグラフィ法の例によって同じパターンを形成するために使用されるポリマーよりも、それぞれ$0.25及び$0.04だけ安い)。
【0145】
スタンピング法の実施態様はまた、種々様々な材料を許す。この技術は、例えばPDMS、パラフィンワックス(融点58〜60℃)、及びNorland光学接着剤(NOA)、UV光で硬化することができるウレタン系接着剤(Norland Products, Inc.)を使用して、パターンを生成することに関して実証されている。
【0146】
表4は、種々の実施態様例に基づいて、疎水性バリアで多孔質親水性媒体をパターン化するための推定コストを比較する情報を含む。比較的高分解能の方法(クリーンルーム・フォトリソグラフィ及び卓上フォトリソグラフィ)のコストは、例えば、比較的低廉なネガティブ・フォトレジスト(例えばSCフォトレジスト、Arch Chemicals, Inc.)を使用することによって、及び/又は、(例えば印刷サービスからマスクを購入する代わりに)インクジェット・プリンタを使用してマスクを印刷することによって、及び/又は、標準的な100W水銀灯(例えばBlakレイ長波UVランプB100 AP、ほぼ$514)を使用してフォトレジストを露光することにより、軽減することができる。比較的低い分解能(幅広)の構成要件を有する単一のパターンの複数のコピーを製造するために、ほとんどあらゆる所望のデザインで供給元から購入することができるスタンプ(ゴム又はプラスチック)を使用することができる(ゴムスタンプはほぼ$25である)。いくつかの実施態様の場合、疎水性ポリマーとして、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が使用される。また種々の多孔質媒体、例えばKimberly-Clark硬質ロール・ペーパー・タオルとWhatman No.1濾紙とを比較するが、他の紙を用いても同様の結果が得られると思われる。Kimberly-Clarkペーパー・タオルは、流体を良好に運ぶ、入手可能な比較的低廉な紙源である。
【表4】
【0147】
多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを形成するために、他の方法を用いることもできる。例えば、パターンに従って媒体に液体を被着することができる。液体はそれ自体疎水性であってよく、或いは、乾くと又は更なる処理を施すと疎水性固形物に変化することが可能であってもよい。例えば、液体は、商業的に入手可能な防水処理用溶液であってよい。この溶液は親水性であり、従って紙を湿潤するが、しかし乾くと疎水性固形物を形成する。又は液体は、重合すると疎水性固形物を形成するモノマーであってもよい。
【0148】
液体は、多くの種々異なる方法で、パターンに従って被着されてよい。例えば、液体は、例えばエアブラシによって噴霧されるか、又はステンシルを介して堆積されてよい。或いは、例えば液体は、良く知られている「シルクスクリーン」技術を用いて堆積されてもよい。或いは、リソグラフィによりパターン化された紙片を、別の紙片のための「スタンプ」として使用することができる。例えば、パターン化紙片を、例えば上記のように、リソグラフィでパターン化することにより、疎水性領域と親水性領域とを形成することができる。次いで、パターン化された紙を、指定された紙部分だけ、典型的には親水性部分だけが溶液によって湿潤されるように、液体で浸すことができる。次いで、パターン化され浸漬された紙を別の(パターン化されていない)紙片と接触させる。この別の紙片内には液体がしみこみ、ひいてはパターンが転写される。インクジェット印刷は、パターンに従って紙上に液体を堆積するために用いることができる別の方法である。或いは、紙上にパターンを「描く」ためにプロッターを使用することもできる。上記実施態様の共通の特徴は、パターン化領域を横切る横方向流体流に対するバリアを形成するために、紙を実質的に透過するのに十分な液体を紙上に堆積することが必要である点である。
【0149】
パターンに従って紙に液体を被着するときに分解能サイズを制限し得る1つの要因は、液体が紙の厚さを通ってしみこむのに伴って横方向にも流れ、ひいては所期構成要件のエッジをぼやけさせることである。この問題は、紙の底面に真空を印加することにより或る程度軽減することができる。このように真空を印加すると、紙の厚さを通る液体の輸送速度を高くすることができ、ひいては液体が横方向に広がり得る時間を制限する。
【0150】
ワックスは、クロマトグラフィ紙内部に疎水性チャネルを形成するために潜在的に使用することができる、フォトレジストに対する1つの低廉な、容易に利用可能な代替物である。例えば、ワックスペーパーのワックスは、パターンに従ってクロマトグラフィ紙に転写することができる。いくつかの実施態様の場合、これは、2片のワックスペーパーの間に、パターン化されるべき紙をサンドイッチすることにより行われ、所望のパターンが、加熱された器具を使用してワックスペーパー上に「書き込まれる」。この方法は、2片のワックスペーパーから少量のワックスを紙の両側に転写する。次いで、紙を熱板上で加熱することにより、紙の厚さを通してワックスを溶融させ、疎水性バリアを形成することができる。又は、例えば、ワックス中に浸された糸を、パターンに従ってクロマトグラフィ紙に縫い通し、そして続いて、ワックスで紙が局所的に飽和するように、ワックスを溶融させることもできる。
【0151】
言うまでもなく、本発明の範囲が上記実施態様に限定されることはなく、また本発明は、記載されているものの改変形及び改善形を含む。添付の特許請求の範囲に、他の実施態様が含まれる。
【技術分野】
【0001】
政府支援に関する声明
この研究は、National Institutes of Health (NIH) (GM065364)によって支援された。National Science Foundation (NSF)によって支援されたMaterials Research Science and Engineering Centers (MRSEC)の共同施設が、授与番号DMR-0213805のもとで使用された。この研究はまた、NSFの博士号取得前奨学金(A. W. M)、Damon Runyon Cancer Research Foundation Fellowship (DRG-1805-04)(S. T. P)、American Cancer Society (S. W. T.)の博士号取得後奨学金、National Science and Engineering Research Council (NSERC)の博士号取得後奨学金(S. J. V.)、Massachusetts Technology Transfer Center (M. J. B.)のTechnology Investigation Award、Sao Paulo State Research Funding Agency- FAPESP (E. C.)によって支援された。
【0002】
関連出願
本出願は、2007年4月26日付けで出願された、「Patterned Paper as a Platform for Inexpensive, Low Volume, Portable Bioassays and Methods of Making Same」と題される米国仮特許出願第60/914,252号明細書(この明細書の内容全体を参考のため本明細書中に引用する)の、35U.S.C.§199(e)に基づく優先権を主張し、また2006年10月18日付けで出願された、「Patterned Paper as a Platform for Inexpensive, Low Volume, Portable Bioassays and Methods of Making Same」と題される米国仮特許出願第60/852,751号明細書(この明細書の内容全体を参考のため本明細書中に引用する)の、35U.S.C.§199(e)に基づく優先権を主張する。
【0003】
この開示は概ね、多孔質媒体に基づくバイオアッセイ装置、該バイオアッセイ装置の製造方法、及び該バイオアッセイ装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
生物学的流体の分析は、個体及び個体群の健康状態をモニタリングするのに有用である。しかし、これらの測定は、発展途上国、緊急事態、又は在宅介護環境に見いだされるような遠隔地で実施するのが難しい場合がある。慣習的な研究室用機器は、生体試料の定量的測定を可能にはするが、しかしこれらの機器は典型的には、遠隔地には適していない。それというのもこれらは、大型であり、高価であり、また典型的には熟練者及びかなりの量の生体試料を必要とするからである。
【0005】
他のタイプのバイオアッセイ・プラットフォームが、慣習的な機器の代わりとなるものを提供するが、しかしこれらもまた或る状況では限界がある。例えば、マイクロ流体素子は、生物学的・化学的スクリーニングにおいて有用であり得る。ウェル及び/又はチャネルを含有するガラス系及びポリマー系双方のマイクロ流体素子が開発されている。しかしながら、慣習的なマイクロ流体素子は、シンプルになるように構成されている場合でも、典型的には、使用のためにポンプ及び外部検出器を必要とする。
【0006】
「ディップスティック」は概念的には判りやすいが、一般に、低コスト環境に対しては余りにも高価であり、また一般には、正確な測定を行うことを可能にするためには、比較的大量の試料、例えば約5mLの試料を必要とする。このような大量の試料は多くの状況において、特に未熟児及び幼児からは容易に得られない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1観点において、バイオアッセイ装置は、毛管作用によって流体を輸送することができる多孔質親水性媒体;及び、多孔質媒体内の1又は複数の検出領域で終わるチャネルを画定する、多孔質親水性媒体内に埋め込まれた流体不浸透性バリアを含む。1又は複数の実施態様の場合、多孔質親水性媒体は、流体中に存在する被分析物の可視的指示を可能にするように処理される。
【0008】
1観点において、アッセイ装置は、多孔質親水性媒体;多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリア;及びアッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【0009】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部のチャネル領域の境界を画定し、チャネル領域がアッセイ領域に流体連通されている。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部の試料堆積領域の境界を画定し、チャネルは、試料堆積領域とアッセイ領域との間の、多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する。バリアはさらに、複数のアッセイ領域の境界を画定する。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部の複数のチャネル領域の境界を画定し、そしてさらに、試料堆積領域の境界を画定し、各チャネルは、試料堆積領域と複数のアッセイ領域のうちの対応アッセイ領域との間の、多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する。アッセイ装置は、アッセイ領域のうちの少なくともいくつかのアッセイ領域内にアッセイ試薬を含む。バリアは、複数のアッセイ領域のうちのアッセイ領域を互いに物理的に分離する。アッセイ試薬は、アッセイ領域内で多孔質親水性媒体に共有結合されている。アッセイ試薬は、該アッセイ領域内で該多孔質親水性媒体に非共有結合されている。アッセイ試薬は、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される。アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される。フォトレジストはネガティブ・フォトレジストを含む。多孔質親水性媒体は、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む。多孔質親水性媒体は可撓性である。バリアの少なくとも1つの寸法は、約5cm〜約100μmである。バリアの少なくとも1つの寸法は、約300μm〜約100μmである。バリアの少なくとも1つの寸法は、約300μm未満である。チャネルの少なくとも1つの横方向寸法は、約750μm〜約100μmである。チャネルの少なくとも1つの横方向寸法は、約250μm〜約100μmである。チャネルの少なくとも1つの横方向寸法は、約250μm未満である。アッセイ装置は、アッセイ領域のデジタル画像を得ることができる撮像装置を含む。アッセイ装置は、撮像装置と通信するプロセッサを含み、該プロセッサは、アッセイ領域のデジタル画像に基づいて、アッセイ領域内の被分析物に関する情報を得ることができる。プロセッサは、アッセイ領域のデジタル画像内の強度に基づいて、被分析物に関する情報を得ることができる。アッセイ装置は、さらに、多孔質親水性媒体上の層を含み、層は少なくとも1つの開口を含む。開口は、アッセイ領域への流体通路の少なくとも一部を形成する。
【0010】
1観点において、アッセイ装置は、多孔質親水性媒体;多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を完全に画定する、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して約1mm〜約100μmの幅を有する流体不浸透性バリア;及びアッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【0011】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。アッセイ試薬は、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される。アッセイ試薬は、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される。バリアは、フォトレジスト及び硬化性ポリマーのうちの一方を含む。多孔質親水性媒体は、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む。バリアの少なくとも1つの横方向寸法は、約300μm〜約100μmである。バリアの少なくとも1つの横方向寸法が、約300μm未満である。アッセイ装置はさらに、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過する複数の流体不浸透性バリアを含み、各バリアが約1mm〜約100μmの幅を有しており、各バリアがそれぞれ、多孔質親水性媒体内部の対応アッセイ領域の境界を完全に画定し;アッセイ装置がさらに、各アッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【0012】
1観点において、アッセイ装置は、多孔質親水性媒体;多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して所定の長さと当該バリアの長さに沿って約10%未満だけ変化する幅とを有する流体不浸透性バリア;及びアッセイ領域内のアッセイ試薬を含む。
【0013】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部のチャネル領域の境界を画定し、チャネル領域はアッセイ領域に流体連通されている。バリアはさらに、多孔質親水性媒体内部の試料堆積領域の境界を画定し、チャネルは、試料堆積領域とアッセイ領域との間の、多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する。アッセイ試薬は、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される。アッセイ試薬は、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの1つの存在に対して反応するように選択される。バリアは、フォトレジスト及び硬化性ポリマーのうちの一方を含む。多孔質親水性媒体は、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む。バリアの幅は約300μm未満である。バリアの幅は、バリアの長さに沿って約5%未満だけ変化する。チャネル領域の幅は、約750μm〜約100μmである。チャネル領域は、所定の長さとチャネルの長さに沿って約10%未満だけ変化する幅とを有する。チャネル領域は、所定の長さとチャネルの長さに沿って約5%未満だけ変化する幅とを有する。
【0014】
1観点において、装置の製造方法は、多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ;飽和済媒体を所定の光パターンに当て;所定の光パターンに基づいて媒体の領域からフォトレジストを除去することにより、領域の境界を形成する残留フォトレジストから成るバリアを画定し、所定の光パターンは、バリアが領域内のアッセイ領域を画定するように選択され;そしてアッセイ領域内にアッセイ試薬を用意することを含む。
【0015】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。バリアは実質的に流体不浸透性である。所定の光パターンを、バリアが領域を完全に包囲するように選択する。所定の光パターンを、バリアが領域の第1部分の境界を形成するように選択し、多孔質親水性媒体のエッジは、領域の第2部分の境界を形成する。試薬を用意することが、試薬をアッセイ領域に共有結合することを含む。試薬を用意することが、試薬をアッセイ領域に非共有結合することを含む。アッセイ領域が液体の存在における試薬の輸送特性に基づく形状を有するように、所定の光パターンを選択する。アッセイ試薬は、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される。アッセイ試薬は、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される。バリアが領域内のチャネル領域を画定するように、所定の光パターンを選択する。チャネル領域の少なくとも1つの横方向寸法が、約750μm〜約100μmである。バリアが領域内の試料堆積領域を画定するように、所定の光パターンを選択する。多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させることが、溶媒中の該フォトレジストの溶液を媒体に被着し、続いて溶媒を実質的に蒸発させることを含む。飽和済媒体を所定の光パターンに当てることが、領域に光を照射し、且つバリアには光を実質的に照射しないことを含む。飽和済媒体を所定の光パターンに当てることが、バリアに光を照射し、且つ領域には光を実質的に照射しないことを含む。フォトレジストを除去することが、所定の光パターンに基づいて媒体の複数の領域からフォトレジストを除去することにより、対応領域の境界を形成する残留フォトレジストから成る複数のバリアを画定することを含む。第2多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ;飽和済媒体を所定の光パターンに当て;所定の光パターンに基づいて第2媒体の領域からフォトレジストを除去することにより、領域の境界を形成する残留フォトレジストから成るバリアを画定し;第2媒体から成るバリアと、前記第1媒体から成るバリアとを実質的に整合し;そして第1媒体を第2媒体に接着する。第1媒体の領域内に、標的被分析物に対して反応するように選択された試薬を被着する。試薬と標的被分析物との反応を色指示するのを可能にするように選択された標識付き抗体及び標識付きタンパク質のうちの一方を、第2媒体の領域内に用意する。多孔質親水性媒体上の層を用意し、層は、バリアの位置に基づいて整合された少なくとも1つの開口を含む。バリアの少なくとも1つの寸法が約5cm〜約100μmとなるように、所定の光パターンを選択することを含む。バリアの少なくとも1つの寸法が約250μm未満となるように、所定の光パターンを選択する。多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む。所定の光パターンに基づいて媒体の複数の領域からフォトレジストを除去することにより、対応する複数の領域の境界を形成する残留フォトレジストから成る複数のバリアを画定し、所定の光パターンは、複数のバリアが、領域内の対応する複数のアッセイ領域を画定するように選択され;そしてアッセイ領域のうちの少なくともいくつかにアッセイ試薬を用意する。
【0016】
1観点において、装置の製造方法は、所定のパターンのスタンプに硬化性ポリマーを塗布し;ポリマー塗布済のスタンプを、所定の厚さを有する多孔質親水性媒体上に押しつけ、硬化性ポリマーは所定のパターンに従って、媒体の厚さを実質的に透過し;媒体内にアッセイ領域を画定する、該媒体内に埋め込まれた流体不浸透性バリアを形成するように、硬化性ポリマーを硬化させ;そしてアッセイ領域内に試薬を用意することを含む。
【0017】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。硬化性ポリマーはポリ(ジメチル−シロキサン)(PDMS)を含む。バリアが領域を完全に包囲するように、所定のパターンを選択する。
【0018】
1観点において、液体試料中の被分析物の存在を割り出すためのアッセイを実施する方法は、多孔質親水性媒体と、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリアと、被分析物の存在に対する可視的な応答を可能にするように選択された、アッセイ領域内のアッセイ試薬と、を含むアッセイ装置上に液体試料を堆積し;アッセイ領域の画像を得;そしてアッセイ領域の画像に基づいて、液体中の被分析物の存在を割り出すことを含む。
【0019】
1又は複数の実施態様は、下記特徴のうちの1つ又は複数を含む。液体中の被分析物の存在を割り出すことは、アッセイ領域の画像の少なくとも一部の平均強度を得、そして、平均強度に基づいて液体中の被分析物の存在を割り出すことを含む。アッセイ領域の画像を得ることが、カメラ付き電話機、デジタルカメラ、及びスキャナーのうちの1つを用いてアッセイ領域を撮像することを含む。アッセイ領域の画像に基づいて被分析物の存在を割り出すことが、画像を遠隔研究室に伝送し、そして液体中の被分析物の存在に関して、遠隔研究室から情報を得ることを含む。アッセイ領域の画像を得ることが、カメラ付き電話機を用いてアッセイ領域を撮像することを含み、そしてアッセイ領域の画像に基づいて被分析物の存在を割り出すことが、カメラ付き電話機を介して遠隔研究室に画像を伝送することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1A〜1Eは、いくつかの実施態様によるラテラルフロー式バイオアッセイ装置の画像である。
【図2】図2は、いくつかの実施態様による、種々の濃度の被分析物を含有する溶液に曝露されたラテラルフロー式バイオアッセイ装置の画像である。
【図3】図3A〜3Cは、いくつかの実施態様による、被分析物を含有する溶液に対する曝露の前及び後に撮影された、土埃、植物の花粉、及びグラファイト粉末で汚染されたラテラルフロー式バイオアッセイ装置を示す図である。
【図4】図4は、いくつかの実施態様による、体液中のグルコース及びタンパク質の存在を測定する際に使用するためのラテラルフロー式バイオアッセイ装置を示す平面図である。
【図5】図5は、いくつかの実施態様による、体液中の被分析物、例えばグルコース及びタンパク質の存在を定量的に測定するためにラテラルフロー式バイオアッセイ装置を使用するステップを示す図である。
【図6】図6は、いくつかの実施態様による、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置を使用して、種々の濃度のグルコース及びタンパク質を有する体液中のグルコース及びタンパク質の存在を定量的に測定した結果を示す図である。
【図7】図7は、いくつかの実施態様による、トレハロースの有無を伴って、体液中のグルコース及びタンパク質の存在を定量的に測定する際のフロー装置の長期安定性を示す図である。
【図8】図8A及び8Bは、いくつかの実施態様による、フロースルー式バイオアッセイ装置を示す斜視図である。
【図9】図9A及び9Bは、いくつかの実施態様による、フロースルー式バイオアッセイ装置の一例をそれぞれ示す正面図及び背面図である。
【図10】図10は、いくつかの実施態様による、フロースルー式バイオアッセイ装置を組み立てる方法の一例を示す図である。
【図11】図11は、いくつかの実施態様による、クリーンルーム内でフォトリソグラフィを用いて多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを設けるための手順の一例を示す図である。
【図12】図12は、いくつかの実施態様による、研究室内でフォトリソグラフィを用いて多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを設けるための手順の一例を示す図である。
【図13】図13は、いくつかの実施態様による、マイクロコンタクト印刷を用いて多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを設けるための手順の一例を示す図である。
【図14】図14A〜14Bは、いくつかの実施態様による、種々のパターン化法を用いて得られた疎水性バリアを示す画像である。
【図15】図15A〜15Cは、いくつかの実施態様による、種々のパターン化法を用いて形成された紙内へのパターン化疎水性バリアによって境界を形成されたほぼ3.6x3.6mmの正方形から成る格子を示す画像である。
【図16】図16A〜16Bは、いくつかの実施態様による、種々のパターン化法を用いて形成された、機能デバイスを提供する比較的狭いバリアの幅を示す画像である。
【図17】図17Aは、いくつかの実施態様による、カメラ付き電話機とともに使用するためのレンズの一例を示す画像であり、図17B〜17Cは、いくつかの実施態様による、それぞれ図17Aのレンズを用いてそして用いずに撮影されたバイオアッセイ装置の画像である。
【図18】図18Aは、いくつかの実施態様による、三次元バイオアッセイ装置を示す斜視図であり、図18Bは、いくつかの実施態様による、着色液体に曝露している間の、異なる時点における三次元バイオアッセイ装置例を示す画像である。
【図19】図19は、いくつかの実施態様による、三次元バイオアッセイ装置を示す斜視図である。
【図20】図20は、いくつかの実施態様による、ラテラル式バイオアッセイ装置内の層を示す平面図及び斜視図である。
【図21】図21A〜21Fは、いくつかの実施態様による、着色液体に曝露している間の、異なる時点における図20のラテラル式バイオアッセイ装置を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
概要
本発明の実施態様は、パターン化多孔質媒体に基づくラテラルフロー式及びフロースルー式バイオアッセイ装置、該装置の製造方法、及び該装置の使用方法を提供する。
【0022】
いくつかの観点において、親水性媒体を疎水性バリアでパターン化することにより、体液に対する多重バイオアッセイを実施するための、低コストで持ち運び可能な、そして技術的にシンプルな種類のプラットフォームを提供する。バイオアッセイのための有用な親水性媒体の一例は紙であり、紙は低廉で、容易に商業的に入手可能であり、使い捨て可能であり、液体を素早く運び、またいくつかの慣習的なプラットフォームのように注意深い取り扱いを必要としない。紙又はその他の多孔質親水性媒体は、疎水性バリアでパターン化される。疎水性バリアは、生物学的流体の空間的なコントロールを可能にし、またバリアが画定する領域内部の毛管作用による流体輸送を可能にする。疎水性バリアは高分子、例えば硬化性ポリマー又はフォトレジストであってよく、画定領域内部の多孔質親水性媒体の厚さ全体にわたって実質的に不浸透性のバリアを提供する。ポリマー又はガラス内に空の流体チャネル又はウェルを含む慣習的なマイクロ流体素子とは異なり、これらのバリアによって境界を形成された領域は空ではなく、多孔質親水性媒体から形成されているか、又は多孔質親水性媒体を含有している。
【0023】
慣習的な装置とはさらに異なり、バイオアッセイ装置のいくつかの実施態様は、多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ、飽和済媒体を所定の光パターンに当て、そしてパターンに基づいてフォトレジストを除去し、フォトレジストから成る疎水性バリアを形成することによって製造される。光パターンは、アッセイ領域、チャネル領域、及び試料堆積領域などを画定するように選択することができる。これらの領域の境界は、疎水性バリアによって少なくとも部分的に画定される。フォトレジストは半導体と一緒に従来から使用されているが、発明者は、驚くべきことに、多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ、そしてそのフォトレジスト上にフォトリソグラフィを施すと、慣習的なアッセイ製造技術を用いては入手することができない高品質構成要件の製作が可能になることを発見した。典型的な慣習的なアッセイ製造技術は、所定のパターンに従って液体を多孔質媒体に被着し、次いで液体を硬化させることにより構成要件を形成することを伴う。しかし、液体が被着されると、液体は媒体内部で横方向に広がり、ひいては構成要件における定義を損なうことになる。フォトリソグラフィは、所定のパターンに従って液体を被着することに依存することはなく、従って、従来入手可能なものよりも著しく高い構成要件分解能を提供する。例えば、このフォトリソグラフィ技術を用いれば、スクリーン印刷技術を用いて製造し得るものよりも著しく小さな構成要件、例えば厚さ約1mm〜約100μm、例えば厚さ約300μm〜約100μm、又はそれ未満のバリアを製造することができる。加えて、この技術は、その長さに沿って顕著に変化することのない構成要件、例えばその長さに沿って約10%未満、約5%未満、またはそれ未満だけ変化する幅を有するバリアを形成することができる。逆に言えば、このようなバリアによって画定されたチャネルも、その長さに沿って顕著に変化することはなく、例えばその長さに沿って約10%未満、約5%未満、またはそれ未満だけ変化する幅を有することになる。バイオアッセイ装置の他の実施態様は、他の製造方法、例えばソフト・リソグラフィに基づく。これらの製造方法は、下に詳細に説明するように、慣習的なアッセイ装置製造技術を用いては入手できない有用な利点及び改善された構成要件分解能を提供する。
【0024】
親水性媒体の、境界を形成された領域は、バイオアッセイ装置内の1又は複数のアッセイ領域を画定するために使用することができる。バイオアッセイ装置のアッセイ領域は、試薬で処理することができる。試薬は、生物学的流体中に被分析物の存在に対して応答し、被分析物の存在のインジケータとして役立つことができる。アッセイの多くの実施態様は、複雑及び高価な設備を使用することなしに容易に利用できるように意図されているので、いくつかの実施態様では、被分析物に対する装置の応答は、肉眼で見ることができる。例えば、親水性媒体は、被分析物の存在のカラーインジケータを提供するように、アッセイ領域内で処理することができる。インジケータは、被分析物の存在において有色になる分子、被分析物の存在において色が変化する分子、又は被分析物の存在において蛍光、燐光、又はルミネッセンスを発する分子を含んでよい。他の実施態様の場合、タンパク質、抗体、又はその他の被分析物の存在を割り出すために、放射線測定、磁気測定、光学測定、及び/又は電気測定を用いることができる。
【0025】
いくつかの実施態様の場合、特定のタンパク質を検出するために、親水性媒体のアッセイ領域を、タンパク質と選択的に結合又は相互作用する試薬、例えば小分子で誘導体化することができる。或いは、例えば特定の抗体を検出するために、親水性媒体のアッセイ領域を、抗体と選択的に結合又は相互作用する試薬、例えば抗原で誘導体化することができる。例えば、ビード又はガラス・スライド上に分子を固定化するために用いられるものと同様の化学的性質を利用して、又は炭水化物に分子を結合するために用いられる化学的性質を利用して、親水性媒体に、小分子及び/又はタンパク質のような試薬を親水性媒体に共有結合することができる。別の実施態様の場合、試薬を溶液から被着し、そして溶媒を蒸発させておくことにより、試薬を被着且つ/又は固定化することができる。試薬は、他の非共有結合的相互作用によって多孔質媒体上に物理的に吸収することにより固定化することができる。一般に、被分析物を検出するために、バイオアッセイ装置とともに種々様々な試薬を使用することができ、これらの試薬は種々の好適な方法によって被着することができる。これらの試薬は、抗体、核酸、アプタマー、分子インプリント・ポリマー、化学受容体、タンパク質、ペプチド、無機化合物、及び有機小分子を含んでもよい。これらの試薬は、非特異的相互作用によって非共有結合的に、又は共有結合的に(エステル、アミド、イミン、エーテルとして、又は炭素−炭素、炭素−窒素、炭素−酸素、又は酸素−窒素結合によって)紙に吸着させることもできる。
【0026】
しかし、被分析物が予め標識付けされていなければ、或る被分析物と或る試薬との相互作用により、目に見える色変化が生じない場合がある。ステイン又は標識付けされたタンパク質、抗体、核酸、又は、アッセイ領域内の試薬に結合した後の標的被分析物に結合して目に見える色変化を生じさせる他の試薬を添加するように、装置をさらに処理することができる。このことは、例えば、ステイン又は標識付き試薬を既に含有する別個の区域を装置に設けることにより実現することができる。この別個の区域は、アッセイ領域内の試薬に結合した後の標的被分析物に、ステイン又は標識付き試薬を容易に導入することができるメカニズムを含む。或いは、例えば、装置に別個のチャネルを設けることもできる。この別個のチャネルは、ステイン又は標識付き試薬を、紙の異なる領域から、アッセイ領域内の試薬に結合した後の標的被分析物中に流入させるように使用することができる。1実施態様の場合、この流れは、水滴、又はその他の流体とともに開始される。別の実施態様の場合、試薬と標識付き試薬とは、装置内の同じ場所、例えばアッセイ領域内に被着される。
【0027】
バイオアッセイ装置は、ラテラルフロー形態、フロースルー形態、これら2つの組み合わせ、又は三次元形態を成すことができる。ラテラルフロー式バイオアッセイ装置の場合、液体は、毛管作用によって横方向に装置を貫流し、例えば、試料を装置内に導入することができる媒体の試料堆積領域から、被分析物の存在を検出することができる媒体のアッセイ領域へ、疎水性バリアによって画定されたチャネルを介して貫流する。疎水性バリアが液体の流路を画定するので、バリア・パターンを適切に選択することにより、多重アッセイをもたらすことができる。多重アッセイでは、液体は媒体の試料堆積領域から、疎水性バリアによって画定された複数のチャネルを介して、複数のアッセイ領域へ流れる。比較的少量の液体(例えば10μL未満)が装置の所期領域の全てに流れるのを可能にするのに十分に狭くチャネルが形成されるように、バリアをさらにパターン化することもできる。但し、バリアの最小構成要件サイズは、下で詳細に説明するように、選択された製作技術に或る程度依存する。
【0028】
フロースルー式バイオアッセイ装置は典型的には、複数の層を含んでおり、これらの層のうちの少なくとも1つは、疎水性バリアでパターン化された多孔質親水性媒体である。使用中、液体は1つの層から別の層へ鉛直方向に流れ、そして疎水性バリアは、液体の横方向流を抑制する。多孔質親水性媒体の1又は複数の区域を処理することにより、標的被分析物に対するアッセイを提供する、例えば被分析物の存在の可視インジケータ(又は他の検出可能なインジケータ)を提供することができる。いくつかの実施態様の場合、装置の1つの層がステイン又は標識付き試薬で処理される。このステイン又は標識付き試薬は、例えば被分析物が別の層内の試薬と相互作用した後に被分析物の存在のカラーインジケータを提供する。なお、いくつかの実施態様は、液体の横方向流及び貫流の両方を含むことができる。
【0029】
多くの観点において、一滴の液体、例えば針で刺した指から採取した一滴の血液で、被分析物の存在に対する単純なイエス/ノーの答えを提供するアッセイ、又は、例えばアッセイの強度を較正カラーチャートと視覚的比較又はデジタル比較することによる、試料中に存在する被分析物の量の半定量的測定を行うには十分である。しかし、液体中の被分析物を定量的測定するためには、定義された流体量が典型的には装置内に堆積される。このようにいくつかの実施態様の場合、定義された流体量を受容する試料ウェルを含むように紙をパターン化することにより、定義された流体量(又はかなり正確な読み取りを可能にするのに十分に、定義量に近い量)を得ることができる。例えば全血試料の場合、被検者の指を針で刺し、次いで、試料ウェルがいっぱいになるまで試料ウェルに指を押しつけ、こうして定義量の申し分のない近似値を提供することもできる。
【0030】
いくつかの実施態様は、装置の比色分析応答強度に基づいて被分析物の量に関する情報を得るために、液体の堆積後のバイオアッセイ装置を撮像するために使用することができる装置を含む。いくつか実施態様の場合、この装置は、携帯電話通信チャネルを介して、現場以外の人員と通信リンクを確立することができ、この人員は、この装置によって得られた画像に基づいて分析を行う。
【0031】
いくつかの観点において、このようなバイオアッセイ装置は、親水性媒体中にパターン化水性バリアを生成するシンプルな方法を用いて製作することができる。例えば、いくつか実施態様の場合、親水性媒体はフォトレジスト中に浸され、そして、フォトリソグラフィを用いてフォトレジストをパターン化することにより、バリアを形成する。フォトリソグラフィはクリーンルーム内に実施することができ、又は下で実証するように、クリーンルーム以外で、例えば典型的な研究室環境で実施することもでき、しかもこの場合、製作されたバリアの品質に顕著な影響を及ぼすことはなく、またコストが著しく低減される。他の実施態様の場合、マイクロコンタクト印刷を用いてバリアを画定する。この場合、画定パターンの「スタンプ」にポリマーを「インク着け」し、そしてこのスタンプを親水性媒体上に押しつけ、また親水性媒体中に押し込むので、ポリマーは媒体にしみ通り、ひいてはその画定パターンのバリアを形成する。他の製作技術を用いることもでき、これらのうちのいくつかを下で説明する。装置の所期用途及び用いられる具体的なバリア製作技術に応じて、バリアの幅は、約200μmを上回ることができ、またバリアは、数ミクロンオーダー、例えば約50μm、又は最大で数ミリメートル又はそれ以上の幅を有するチャネルを画定することができる。
【0032】
いくつかの実施態様は、多孔質親水性媒体としてクロマトグラフィ紙を含む一方、一般には、毛管作用によって流体を運ぶ任意の基材、及び選択されたパターン化法と適合可能な任意の基材、例えばニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、布地、及び多孔質ポリマーフィルムが使用されてよい。例えばニトロセルロースアセテート、及びセルロースアセテートは、流体診断において共通して使用される良く知られた膜であるが、しかしフォトリソグラフィにおいて典型的に使用される溶媒とは適合できないので、下で詳細に論じるように、パターン化のためには他の方法がより好適である場合がある。加えて、親水性媒体及び疎水性バリア領域は、試験条件、例えば温度、pH、及び/又はイオン強度と適合可能な材料を使用して調製することができる。
【0033】
先ず、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置のいくつかの実施態様及びこの装置の使用について説明する。次いで、フロースルー式バイオアッセイ装置のいくつかの実施態様及びこの装置の使用について説明する。次いで多孔質親水性媒体内にパターン化疎水性バリアを形成する方法のいくつかの実施態様について説明する。
【0034】
ラテラルフロー式バイオアッセイ装置
図1Aは、本発明のいくつかの実施態様による、親水性媒体と疎水性バリアとを有するラテラルフロー式バイオアッセイ装置のアレイ100の画像である。各装置110は、1又は複数のパターン化疎水性バリア130、例えばフォトリソグラフィによりパターン化され硬化されたフォトレジスト、及び多孔質媒体120、例えばクロマトグラフィ紙を含んでいる。疎水性バリア130は、バイオアッセイを実施するために使用することができる媒体120内の領域を画定する。図示の実施態様の場合、バリア130は、体液を堆積することができ、また毛管作用によって流体を運ぶためのチャネルとして役立つ試料堆積領域140と、体液が流入する複数のアッセイ領域150とを画定している。下で詳細に説明するように、特定の用途のためのアッセイを提供するために、例えば尿中の糖の存在を指示するために、アッセイ領域150を処理することができる。図1Aはクロマトグラフィ紙から成る単一の7.5cmディスクから製造された10個の個々の装置110を示している。ただし、紙のサイズ、並びに装置の数及びタイプは、所与の用途に合わせて適宜に選ぶことができる。
【0035】
図1Bは、毛管作用により約5μLのWaterman赤インクを吸収した後の、図1Aのバイオアッセイ装置110のうちの1つの画像である。試料堆積領域140は、毛管作用によって試料を吸収し、そしてパターン化された疎水性バリア130は試料を3つのアッセイ領域150に導いた。画像が示すように、バリア130は、明確に画定された領域内部に、試料流を実質的に制限する。下で詳細に説明するように、装置のパターン化領域は、比較的小さなサイズに製作することができるので、バリア130によって画定された領域140,150を十分に満たすために必要な液体は、比較的少量(例えば10μL未満)にすぎず、一般に、装置の種々の形態は、装置のサイズ、及び装置内部の構成要件のサイズに応じて、装置を満たすために約0.1μL〜100μLの流体を必要とすることがある。
【0036】
いくつかの実施態様の場合、親水性媒体、例えば紙の1又は複数の領域は、適切な試薬を添加することにより、生物学的アッセイのために誘導体化される。図1Cは、バイオアッセイ装置160の1実施態様の画像である。この装置において、アッセイ領域170及び180は、診断用途のための異なる試薬でスポッティングされており、また第3のアッセイ領域190は対照である。図示の実施態様において、領域170は、J.D. Peele, R.H. Gadsden, R. Crews, Clin. Chem. 1977, 23, 2242-2246 (この内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されたものから適応させたグルコース・アッセイのために調製される。下で詳細に説明するように、アッセイ装置は、0.3μLの0.6Mヨウ化カリウム、及びこれに続いて0.3μLの1:5ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ/グルコースオキシダーゼ溶液(溶液1mL当たり15単位のタンパク質)をアッセイ領域170にスポッティングすることにより、調製される。アッセイ装置をグルコースに曝露すると、グルコースは、水及び酸素の存在においてグルコースオキシダーゼによって酸化されることによりグルコン酸及び過酸化水素を提供する。次いで、過酸化水素がホースラディッシュ・ペルオキシダーゼによって還元されて水になると同時に、ヨウ化物が酸化されることによりヨウ素になる。その結果、グルコースの存在に伴って、透明から茶色に可視的に色が変化する。
【0037】
領域180は、M.J. Pugia, J.A. Lott, J.A. Profitt, T.K. Cast, J. Clin. Lab. Anal. 1999, 13, 180-187 (この内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されたものから適応させたタンパク質アッセイのために調製される。下で詳細に説明するように、アッセイ装置は、0.3μLのプライミング溶液(0.3μL)(92%体積の水、8体積%のエタノール、2.5g/Lのポリビニルアルコール、及びpH 1.8の250mMクエン酸緩衝剤)、及びこれに続いて0.3μLの試薬溶液(95%体積%のエタノール、5%体積%の水、3.3mMテトラブロモフェノール・ブルー)を領域180にスポッティングすることにより調製される。タンパク質アッセイは、テトラブロモフェノール・ブルー(TBPB)がイオン化してタンパク質と結合するときに、その色が変化することに基づいている。この場合の陽性の結果は、色が黄色から青に変わることにより示される。
【0038】
領域190は対照ウェルとして使用することができ、ヨウ化物でスポッティングされるが、しかし酵素溶液ではスポッティングされず、又は酵素溶液でスポッティングされるが、しかしヨウ化物ではスポッティングされない。
【0039】
この実施態様の例において、試薬は毛管によってスポッティングされたが、ピペット、又はマイクロアレイで使用されるようなピンを使用することにより、アッセイ装置を大量生産することもできる。試薬を堆積するために、インクジェット印刷を用いることもできる。スポッティングされた試薬は、装置を使用する前に少なくとも3分にわたって室温で空気乾燥させておいた。
【0040】
図1Dは、グルコース及びタンパク質を含有しない5μLの人工尿溶液に曝露した後の、図1Cのバイオアッセイ装置の画像である。具体的には、5μLの試料溶液をマイクロピペットでペトリ皿に移し、装置の底部を溶液中に浸し、そして装置を毛管作用によって紙内に吸収させた。Brooks及びKeevilによって提供された製法(T. Brooks, C.W. Keevil, Lett. Appl. Microbiol. 1997, 24, 203-206。その内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に従って、人工尿溶液を調製した。人工尿溶液は、全てMillipore精製水中で混合された1.1mM乳酸、2.0mMクエン酸、25mM重炭酸ナトリウム、170mM尿素、2.5mM塩化カルシウム、90mM塩化ナトリウム、2.0mM硫酸マグネシウム、10mM硫酸ナトリウム、7.0mMリン酸二水素カリウム、7.0mMリン酸水素二カリウム、及び25mM塩化アンモニウムを含有した。溶液のpHは、1.0M塩酸を添加することにより、6.0に調節した。全ての試薬はSigma-Aldrichから入手した。
【0041】
図1Eは、さらに550mMグルコース及び75μMウシ血清アルブミン(BSA)を含む5μLの上記人工尿溶液に曝露した後の、図1Cのバイオアッセイ装置の画像である。対照領域190には、ヨウ化カリウム溶液をスポッティングしたが、酵素溶液はスポッティングしなかった。グルコース・アッセイ領域170及びタンパク質領域180の両方は、溶液中のそれぞれの被分析物の存在に対して可視応答を示すのに対して、対照領域190は、有意な応答を示さない。酵素溶液を含有するがしかしヨウ化物を含有しない同様の対照も、実質的に同じ結果をもたらした(データは示さず)。
【0042】
アッセイの安定性を見極めるために、時間及び温度の変動条件下で、上記試験を繰り返した。この特定の実施態様の場合、約0℃又は約23℃で約15日間にわたってアルミニウム・フォイル内に包まれた状態で保存したときに、タンパク質アッセイは、保存温度及び時間とは無関係に同程度の結果をもたらすことが判った。グルコース・アッセイは、保存条件に対して若干高い感受性を有するように見え、23℃で保存した場合、試薬をスポッティングしてから約24時間後に実施されるアッセイに対しては、信号の低下を示した。しかし、グルコース・アッセイ装置を約30日間にわたって約0℃で保存したときには、このアッセイは、最初に行ったとの同程度の結果をもたらした。
【0043】
図2は、図1Cに示されたバイオアッセイ例において実施された一連の試験を示している。具体的には、5μLの試験溶液中に各装置の底部を浸すことにより、臨床的に該当する範囲のグルコース及びタンパク質(グルコースは2.5〜500mM、BSAは0.38〜75μM)を含有する人工尿の試料に、バイオアッセイ装置を曝露した。流体は、約1分以内に、パターン化疎水性バリアによって画定された領域のほぼ全体を満たした。アッセイ装置を乾燥させ、可視インジケータはほぼ10〜11分後にほぼ完全に発現した。結果として生じたインジケータの強度は、試料中のグルコース及びタンパク質の量にほぼ相当した。一般に、検出可能な応答をもたらす、例えば可視の色変化をもたらす最低被分析物濃度は、アッセイ感受性の下限を定義する。ここで実施された試験において、色変化は、2.5mMのグルコース及び0.38μMのBSAで可視である。このことは、アッセイが少なくともこの値に対して(またおそらくはこれよりも低い値に対して)感受性であることを示す。これと比較して、典型的な商業的に入手可能なディップスティックは、5mMの低さのグルコース、又は0.75μMの低さのタンパク質を検出する。このように、上記のバイオアッセイ装置例は、少なくとも、これらのディップスティックと同じ感受性を有する。さらに、このアッセイ・フォーマットは、2つ又は3つの被分析物の測定を一度に行うことを可能にするのに対して、ディップスティックは典型的には、単一の被分析物の測定に制限される。
【0044】
一般に、変動する被分析物濃度を用いて測定を行うことにより、測定に対応する標準曲線を割り出すことができる。従って、所与のタンパク質又は抗体の濃度を、可視の色変化又は強度と相関することができ、定量的測定を可能にする。但し、タンパク質又は抗体の存在を見極めるための慣習的な放射線測定、光学測定、及び/又は電気測定はこのプラットフォームとは相容れず、或る環境において有用である場合がある。
【0045】
典型的な使用中、液体試料は、滅菌条件下で測定されない場合がある。例えば、吹き付けるダストやその他の粒状不純物が液体及び/又は装置に接触するおそれがある。多孔質親水性媒体を含有するバイオアッセイ装置の1つの有用な特徴は、媒体が、生体試料にとって有害であり得る少なくともいくつかの不純物を除去するためのフィルタとしても役立つことである。図3A〜3Cは、図1Cに示されたラテラルフロー式装置の画像であり、これらの装置はさらに、それぞれ土埃、植物の花粉、及びグラファイト粉末で汚染されている。これらの汚染物質は、屋外で試料を典型的に採取し分析している間に直面し得る条件に近似する。汚染物質の堆積後、550mMのグルコース及び75μMのBSAを含有する人工尿試料に装置を曝露した。図3A〜3Cが示すように、これらの粒子は実質的にチャネルを上って移動することはなく、また、アッセイを著しく妨害することもない。
【0046】
一般に、特定の実施態様の構成に応じて、バイオアッセイ装置に液体試料を導入するための少なくとも2つの方法がある。例えばいくつかの実施態様は、多孔質親水性媒体のエッジによって境界形成された試料堆積領域を含んでいる。試料は、試料堆積領域のこのエッジを液体中に浸すことにより、このような装置に導入することができる。次いで液体は、1又は複数のアッセイ領域へ横方向に流れる。他の実施態様は、装置に対して中心に配置され、そしてバリアによって少なくとも部分的に画定された境界を有する1又は複数の試料堆積領域を含んでいるので、試料堆積領域のこのエッジを液体中に浸す代わりに、液滴を中心の試料堆積領域に被着することができる。次いで液体は、1又は複数のアッセイ領域へ横方向に流れる。このような装置は、別個の滅菌試料保存容器を必要とすることなしに使用することができる。このことは、保存容器内部に比較的多量の液体試料を提供するために患者にかかる負担を軽減するだけでなく、液体の取り扱い及び処分のために医療従事者にかかる負担をも軽減する。
【0047】
図20は、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置2000の例を示す頂面図及び底面図である。装置は、ボトム層2010に貼り合わされるか又は他の形式で接着されたトップ層2020を含んでいる。装置の頂面図から判るように、トップ層2020は、実質的に液体不浸透性の材料、例えばドライフィルム・フォトレジストを含み、この材料中には、試料捕集のために使用することができるチャネル2020’が設けられている。例示された実施態様の場合、チャネル2020’は中心開口を含んでおり、この開口から、いくつかの狭い開口が放射線状に延びている。ボトム層2010は、多孔質親水性媒体、例えば紙と、パターン化疎水性バリア、例えば本明細書中に詳細に説明するようなパターン化フォトレジストとを含んでおり、これらのバリアは、中心の試料吸収区域を含む試験ゾーン2010’を画定しており、この試料吸収区域からは、いくつかのチャネルが放射線状に延びて、それぞれのアッセイ区域で終わっている。
【0048】
装置2000は、いくつかの実施態様によれば、図20に示したように形成することができる。先ずボトム層2010を形成するために、下で詳細に説明するように、疎水性材料、例えばフォトレジスト2011で飽和させた親水性媒体を用意する。次いで、飽和させた媒体2011を、装置2000内の疎水性バリアの所期パターンに従って選択されたパターンを有するマスク2040を通して、UV又は他の好適な光に当て、次いで、下で詳細に説明するように、疎水性材料を現像することにより層2010を形成する。層2010は、試験ゾーン2010’を画定するパターン化疎水性バリアと、試験ゾーン2010’に接触することなしに装置を取り扱うために使用することができる紙タブとを含む。試験ゾーン2010’のチャネルの端部に設けられた円形アッセイ領域は、被分析物と反応するように、上及び下で詳細に説明したように処理することができる。
【0049】
次に、トップ層2020を形成するために、パターン化を行うことができる疎水性材料層、例えばドライフィルム・フォトレジストを用意する。次いで、材料2021を、試料捕集チャネル2020’の所期パターンに従って選択されたパターンを有するマスク2050を通して、UV又は他の好適な光に当て、次いで、下で詳細に説明するように、疎水性材料を現像することにより層2020を形成する。層2020は、試料捕集チャネル2020’を含む領域2021’と、試料捕集チャネル2020’に接触することなしに装置を取り扱うために使用することができるプラスチック裏当て材を含む領域2021’’とを含む。なお、トップ層及びボトム層は、所望の順番で、又は所望の通り並行して形成することができる。
【0050】
次いで、トップ層2020をボトム層2010に、例えばこれらを貼り合わせることにより接着し、これにより装置2000を形成する。トップ層とボトム層とは、領域2021’’が領域2011’に重なり、そして領域2011’が領域2021’に重なるように整合される。図示の実施態様の場合、試料捕集チャネル2020’の中心開口が、試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域に重なる。しかし、試料捕集チャネル2020’の中心開口から放射線状に延びる狭い開口は、試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域から放射線状に延びるチャネル又はアッセイ区域に重ならない。その代わりに、チャネル2020’の狭い開口は、試験ゾーン2010’のチャネル及びアッセイ区域から横方向にずらされているので、液体は、チャネル2020’の狭い開口のうちの1つから試験ゾーン2010’のチャネル及びアッセイ区域のうちの1つに直接的に流入することは実質的にできない。その代わりに、チャネル2020’の狭い開口は、流体を、試料捕集チャネル2020’の中心開口に向かって流れさせ、この中心開口から、液体は試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域内に流入し、そしてこの区域から、試験ゾーン2010の複数のチャネル及びアッセイ区域を下る。
【0051】
1つの例において、Whatman濾紙1をフォトレジストで飽和させ;約10分間にわたって約95℃で紙をベーキングし;紙をマスクと押し合わせ(2片のガラスの間で);紙を、マスクを通してUV光に当て;約10分間にわたって約95℃で紙をベーキングし;約30分間にわたってプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に紙を浸すことにより、露光されていないフォトレジストを洗い流し;そして紙をプロパン−2−オールで洗浄することにより、ボトム層2010を形成した。次いで紙を約25℃で乾燥させ、次いで約500torrで約10秒間にわたってプラズマ酸化することにより、チャネル及び試験ゾーンの親水性を改善した。
【0052】
同じ例において、先ずドライフィルム・フォトレジストを得ることによって、ボトム層2010を形成した。ドライフィルム・フォトレジストは、透明プラスチック・シートによって両面が保護された淡青色のプラスチックから成るロール(Riston(登録商標)、Dupontから入手)として入手される。フォトレジストを、マスク(透明体上に印刷)を通してUV光に当て;一方の側からプラスチック・シートを取り除き;そして約0.85wt%のNa2CO3の水溶液で、露光されていないフォトレジストを洗い流すことにより、フォトレジストをパターン化した。パターン化されたフォトレジストに、約1秒間にわたって3M Spray Mount(登録商標)接着剤を噴霧し、これをボトム層2010に対して手で整合し、そして2つの層を約100℃で貼り合わせた。エアブラシを使用して、装置が僅かに湿って見えるまで、装置の上側にポリエチレンイミン(MW=20,000)のほぼ7wt%のエタノール溶液を被着した。次いで、窒素流を装置上に吹き付けることにより、被膜を乾燥させた。ポリエチレンイミン被膜は、ドライフィルム・フォトレジスト内のスポークの親水性を高めた。
【0053】
図21A〜21Fは、着色水に曝露している間の、異なる時点における上記手順例を用いて製作されたバイオアッセイ装置の画像である。図21Aは、水に対する曝露前の、装置の頂面を示す画像である。図21Bは、トップ層2020の試料捕集チャネル2020’内の狭い開口のうちの1つに約5μLの水を堆積した直後に得られた装置の頂面を示す画像である。図21Cは、その後の装置の頂面を示す画像であり、着色水が、これが堆積された狭い開口に沿って、試料捕集チャネル2020’の中心開口内へ、そしてボトム層2010の試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域内へ移動することを示している。
【0054】
図21D〜21Fは、着色水が試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域に達した後の、異なる時点に撮影された装置の底部側の連続画像である。図21Dは、着色水が試験ゾーン2010’の中心試料吸収区域から、中心区域から放射線状に延びるチャネル内に流入した後の着色水を示している。図21Eは、着色水がこれらのチャネルからアッセイ領域内へ部分的に流入した後の着色水を示している。図21Fは、これが中心試料吸収区域、チャネル、及び試験ゾーン2010’のアッセイ領域内を実質的に完全に満たした後の着色水を示している。この実施態様の場合、試験ゾーン2010’を完全に満たすには約5μLの水で十分であった。
【0055】
多孔質媒体は粒子を濾過することができるので、これらは全血試料に対する診断を実施するために使用することもできる。赤血球の存在は典型的には、従来の診断を面倒にし、例えば遠心分離又は凝固を必要とする。本明細書中に記載された装置のいくつかの実施態様の場合、多孔質媒体は、赤血球を濾過により除去し、そして血液流体成分のチャネル内への自由な流入を許すように選択することができる。或いは、赤血球との結合を促進し、赤血球がチャネルを塞ぐのを防止するために、紙をさらに処理することもできる。一般に、紙の有孔率は、紙を通って輸送され得る粒子のサイズを決定することになる。例えば、タンパク質及び小分子は典型的には、紙を通って容易に移動することができるのに対して、孔サイズのオーダーの粒子は濾過により除去することができる。
【0056】
被分析物の有無に関する可視インジケータを提供する上で、比色試験が一般に助けとなるが、体液、例えば尿中の被分析物のレベルを定量的に測定するためのプラットフォームとして、ラテラルフロー式装置を使用することもできる。低廉且つ持ち運び可能なバイオアッセイ装置を用いて複数の被分析物を同時に定量する能力は、在宅介護環境、緊急事態、及び発展途上国、並びに研究室及び病院環境において疾患を識別してモニタリングするのに潜在的に有用である。
【0057】
いくつかの実施態様の場合、定量的データを得るために、バイオアッセイ装置は、液体に対する曝露後、そして比色分析結果が出た後、例えばデスクトップ・スキャナー、ポータブル・スキャナー(例えばビジネス・カード・スキャナー)、デジタルカメラ、又はカメラ付き電話機を使用して撮像される。スキャナーは、これらが比較的低廉であり、高い分解能を有し、走査された画像の焦点が典型的には合っており、そして画像の強度が典型的には照明条件によって影響されないので、バイオアッセイの結果を記録するのに有用である。デジタルカメラは、記録されたデジタル画像の強度が照明条件によって影響されることがあり、また、カメラの焦点を再現可能に合わせる能力が或る環境では操作者に依存することがあるものの、持ち運び可能であり、そしてますます低価格、軽量、そして強力になってきている。
【0058】
カメラ付き電話機は典型的には、デジタルカメラと同様の構成要件を有しており、また、記録された画像を、既存の通信インフラ(例えば携帯電話チャネル)を通して、現場から離れた研究室へ電子的に伝送されることをも可能にする。この研究室では、データを専門家によって分析することができる。専門家は次いで、分析結果を(例えばリアルタイムで)試験管理者に戻すことができる。
【0059】
カメラ付き電話機のいくつかのモデルは、自動フォーカシングすることができ、被写体、例えばバイオアッセイ装置に十分に焦点を合わせるために付加的なレンズを必要としないのに対して、いくつかのカメラ付き電話機は、カメラに余りにも近接した被写体には焦点を合わせることができないカメラを含んでいる。いくつかの実施態様は、カメラの正面に配置されたレンズを含む。このレンズは、カメラが、カメラに比較的近接した被写体の十分に焦点の合った画像を撮影するのを可能にすることができる。図17Aは、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)から形成された一例としてのレンズ1710の画像である。レンズ1710は、カメラ付き電話機上のレンズに可逆的にシールすることができる。レンズ1710は、PDMSベースと硬化剤(Sylgard(登録商標) 184シリコーン・エラストマー・キット)との10:1混合物を使用して製作し、これを30分間にわたって真空下に置くことにより混合物から気泡を除去した。ペトリ皿1720の底に約5μLのPDMSを置き、そして上側を下に向けて60℃で2時間にわたって硬化させることにより凹PDMSレンズを作成した。PDMSレンズ1710をペトリ皿1720からピンセットで取り出し、カメラ付き電話機のレンズ上に置いた。カメラ付き電話機と装置との間の距離を調節することにより、カメラ付き電話機の焦点を装置に合わせた。一般に、レンズの焦点距離は、PDMSレンズの曲率半径を変化させることにより、例えば、ペトリ皿よりも親水性が高い又は低い表面上でPDMSを硬化させることにより、調節することができる。より高親水性の表面は、曲率半径がより大きい、そして焦点距離がより長いレンズをもたらすことになる。曲率半径がより小さいレンズは、上側を下に向ける代わりに、表側を上側に向けてPDMSを硬化させることにより得ることもできる。画像の焦点を合わせるために、適切な焦点距離を有する収束レンズ(例えば平凸レンズ、両凸レンズ、フレネルレンズ)を、カメラ付き電話機の正面に置くこともできる。
【0060】
図17Bは、カメラ付き電話機(Samsung Traceカメラ付き電話機の自動モード、1.3メガ画素)のレンズ上にレンズ1710を置き、そしてバイオアッセイ装置から約4cm上方にカメラ付き電話機を保持することにより得られた画像1730である。図17Cは、図17Bにおける画像と同じカメラ付き電話機と同じ装置からの距離とで撮影された同じバイオアッセイ装置の画像1740である。画像1730は、PDMSレンズの結果として、画像1740よりも著しく明瞭である。
【0061】
いくつかの実施態様の場合、アッセイの結果が一旦デジタル・フォーマットに変換されたら、各試験ゾーンにおいて発現した色の強度を、例えばAdobe(登録商標) Photoshop(登録商標)、又は別の画像分析プログラムを用いて測定する。次いで、被分析物の濃度を計算するために、色の強度を較正曲線と比較する。
【0062】
図4は、一例としてのバイオアッセイ装置400を概略的に示している。このバイオアッセイ装置400は、試料を多孔質親水性媒体(例えば紙)内に運ぶ中央チャネル410と、それぞれがアッセイ試薬を含有する4つの別個の試験区域420,421,430,431内に試料を導く4つの側方チャネルとを含む。この構成は、各アッセイのために必要とされる試料の量を低減するために比較的狭いチャネル(約0.75mm幅)を含んでいる。一般に、チャネルが広ければ広いほど、アッセイを実施するために必要な試料量は多くなる。試験区域420,421は、上記タンパク質アッセイで処理し、そして試験区域430,431は、上記グルコース・アッセイで処理される。
【0063】
この構成のいくつかの構成要件は、この構成を、例えば在宅介護環境又は遠隔環境における使用に適したものにする。ほぼ3mm長の中央チャネル410は、上記装置と同様に、生体試料から粒状物質を濾過し、そして中央チャネル410の張り出した下側区分は、試料の吸収を容易にする。この一例としての装置全体は、1.6x1.6cmの紙片に収まることができるので、この装置は小型且つ持ち運び可能であるだけでなく、軽量(ほぼ35mg)でもある。試験区域420,421,430,431の上方の空いた区域は、装置のラベリング及び操作のために使用することができる。
【0064】
この図示の例において、利用される具体的なグルコース・アッセイ及びタンパク質アッセイに対して特異的ないくつかの構成要件もある。液体は、グルコース・アッセイのための試薬を溶媒先端とともに動かすのに対して、これらの液体はタンパク質のための試薬を動かすことはない。図4の構成は、このような示差挙動に対応するため、そしてアッセイ定量化能力を高くための2つのタイプの試験ゾーンを含む。グルコース・アッセイのために、試験区域の端部に試薬を集中させるために、試験領域430,431内にダイヤモンド様形状を提供する。タンパク質アッセイのためには、データの比較的一貫した分析のための画定領域を提供するために、試験領域420,421内に方形様形状を提供する。一般に、このような構成例を用いて4種の異なるバイオアッセイを実施することもできるが、しかしここでは各装置上で2部ずつ、2種のアッセイを提供する。加えて、図4の実施態様の場合、チャネル及び試験ゾーンのサイズは、目に見えるように十分に大きく、しかしそれと同時に、アッセイを実施するために必要となる流体の量を、扱いやすい量(例えば約5μL)の試料、例えば涙液、又は一滴の尿に制限するのに十分に小さくなるように、設定され構成された。
【0065】
一般に、チャネル及び/又はアッセイ領域の形状及びサイズは、液体のタイプ及び/又は被分析物及び/又は装置が使用される際の検出方法に従って選択することができる。例えば、被分析物に対する装置の応答が、装置を撮像し、そしてコンピュータ・ソフトウェアで画像を分析することによって測定されることになっている場合には、撮像システムが分析を実施するのに十分な量の、被分析物に対する応答に関する情報を得ることができる限り、チャネル及びアッセイ領域は、人間の目に見えることを必ずしも必要とはしない。或いは、上記例におけるように、試薬が装置に被着された液体と一緒に移動する場合、試薬を捕捉し且つ/又は集中させるように、アッセイ領域を成形することもできる。或いは、上記例におけるように、試薬がアッセイ領域内部で比較的定置である場合、画像分析ソフトウェアが容易に分析することができる区域を提供するように、アッセイ領域を成形することもできる。
【0066】
図5は、尿中のグルコース及びタンパク質のレベルを定量化するための手順例500を示している。先ず、バイオアッセイ装置を液体510に曝露し、例えば既知の濃度のグルコース及びタンパク質を有する人工尿試料溶液(ウシ血清アルブミンBSA)約5.0μL中に浸す。1つの例において、溶液及び浸漬手順は上記のものと同じであった。
【0067】
次いで、曝露済バイオアッセイ装置を撮像する(520)。1つの例において、アッセイ開始から30分後に、Nikon D50デジタルSLRカメラの手動モードでフラッシュを伴って(6.1メガ画素);又はSony Ericsson W660iカメラ付き電話機の自動モードでフラッシュを伴わずに(オートフォーカスで2.0メガ画素);又はSamsung Traceカメラ付き電話機の自動モード(1.3メガ画素)でPDMSレンズとともに、装置を撮影した。装置をまた、Epson Perfection 1640SUスキャナーを用いてデフォルト設定値(カラーフォト、600dpi)で;そしてDocketport 465枚葉紙フィード型ポータブル・スキャナーを用いてデフォルト設定値(カラー、600dpi)で走査した。これらの例は非限定的であり、他の撮像装置を使用することもできる。
【0068】
次いで、画像を任意には8ビット・グレースケールに変換する(530)か、又はカラーフォーマット、例えばCMYKに、例えばAdobe(登録商標) Photoshop(登録商標)を用いて変換する(530’)。次いで、画像内の試験領域を選択する(540)。1つの例において、タンパク質アッセイに対しては方形マーキーツールを用いて、そしてグルコース・アッセイに対しては多角形投げ縄ツールを用いて、試験領域をマウスで選択した。タンパク質アッセイに対しては、試験区域全体を、2.5x1.5mm幅の方形で選択した。グルコース・アッセイに対しては、パターンの先端の三角形を選択した。
【0069】
次に、各試験区域内部の画素強度の算術平均を用いることにより、比色応答を定量化した(550)。これらの平均強度を、スポッティングされた試薬を有するが、しかし試料に曝露されてはいない装置の平均強度から差し引いた。但し、分析ステップのうちのいくつか又は全ては自動化することができる。例えば、コンピュータ上で実行するソフトウェアを使用することにより、続いて分析されるべき画像の領域を自動的に選択することができる。或いは、例えば、画像の分析全体を自動化することができ、すなわち、コンピュータ・プログラムは自動的に、画像の領域を選択し、平均画素強度を測定し、そして濃度曲線から誘導された等式を使用して、画素強度を濃度に変換することもできる。
【0070】
図6は、本発明のいくつかの実施態様による、人工尿中の種々異なる濃度のグルコース及びタンパク質に対して得られた信号を示している。0〜20mMのグルコース濃度を測定した。タンパク質アッセイを、0〜60μMのBSA濃度を使用して実施し、図面の下側にグラフで示す。グラフは、デスクトップ・スキャナー(四角)、ポータブル・スキャナー(白四角)、デジタルカメラ(丸)、及びオートフォーカス付きカメラ付き電話機(白丸)を使用して得られたデータを含み、差し込み図は、データの線形領域をより詳細に示す。各データ点は12回のアッセイの平均であり、誤差バーはこれらの測定値の相対標準偏差を表す。データの線形領域は直線とフィットし;各直線に対応する勾配(m)、切片(b)、及びR2値は次の通りである:グルコース(デスクトップ・スキャナー)(m=16.6,b=−1.54,R2=0.991)、グルコース(ポータブル・スキャナー)(m=18.0,b=2.95,R2=0.986)、グルコース(デジタルカメラ)(m=8.96,b=−2.12,R2=0.983)、グルコース(カメラ付き電話機)(m=6.17,b=0.186,R2=0.986)、タンパク質(デスクトップ・スキャナー)(m=1.16,b=12.8,R2=0.982)、タンパク質(ポータブル・スキャナー)(m=1.07,b=14.0,R2=0.954)、タンパク質(デジタルカメラ)(m=0.771,b=14.5,R2=0.980)、タンパク質(カメラ付き電話機)(m=0.379,b=17.0,R2=0.950)。
【0071】
図6に示すように、一例としてのグルコース・アッセイ及びタンパク質アッセイから得られた信号は、被分析物の濃度とほぼ線形に相関する。この図面に示されたデータ点及び誤差バーは、1つの被分析物濃度当たり少なくとも12回の測定から得られた、それぞれ平均値及び標準偏差値である。各データ集合の線形最小二乗適合は、決定係数(R2)0.95〜0.99をもたらす。応答は、0〜5mMのグルコース及び5〜60μMのBSAでほぼ線形であるが、しかしより高い濃度の被分析物で横ばいになることにより、線形性から逸脱する。スキャナー又はカメラを使用することにより測定されたグルコースの濃度範囲は、尿中に臨床的に検出されるグルコース濃度範囲全体(1〜56mM)には跨らない。しかし、0.8mMを上回る尿中グルコースレベルでさえ疾患を示すので、低レベルのグルコースを検出することが役立つ場合がある。グルコース・アッセイの線形範囲(0〜5mM)は、尿中の低濃度のグルコースを定量的に測定するのを可能にする。タンパク質の検出のための線形範囲もまた臨床使用に適している。このアッセイは、糸球体疾患([タンパク質]>35μM)と、腎尿細管疾患(10μM<[タンパク質]<20μM)と、微量アルブミン尿(0.3μM<[タンパク質]<2μM)とを区別するのに十分な感受性を有していると思われる。但し、試薬の濃度を変化させることにより、又はパターンの中央チャネルを短くして試験ウェルと装置の底部との間の距離を制限することにより、グルコース及びタンパク質の他の濃度を定量的に検出することが可能である。
【0072】
図6がさらに示すように、信号の強度は、デジタルカメラ及びカメラ付き電話機の方が、特定の照明条件を有するデスクトップ・スキャナー及びポータブル・スキャナーよりも一貫して小さかったが、しかし決定係数間の類似性、及びグルコース及びタンパク質データの勾配間の一貫した関係は、高品質デジタルカメラが、定量的データを獲得する際にスキャナーとほぼ等しい効果を有していることを示唆する。例えば、人工尿試料中のBSA及びグルコースのレベルを定量化するために、スキャナー及びカメラから得られた較正曲線を比較した。4.5mMのグルコースと45μMのBSAとを含有する試料を12回アッセイし、4.3±0.4mMのグルコース及び46±5μMのBSAという結果(スキャナーの較正曲線を使用)、及び4.5±0.8mMのグルコース及び48±6μMのBSAという結果(カメラの較正曲線を使用)をもたらした。従って両技術は、統計学的に見て同程度の結果をもたらす。
【0073】
手順の一例において、デジタルカメラ及びカメラ付き電話機からのデータが照明条件に或る程度依存するので、既知の濃度を有する人工尿試料を試験することにより、各データ集合を較正した。この既知の試料に対する信号強度を、図6に示された曲線から予期される値と比較し、これにより、較正曲線に適合するように試験データを調節するために使用される応答係数を得た。
【0074】
一般に、種々のバイオアッセイ装置を分析するために、画像分析プロトコル、例えば上記プロトコル例を用いることができ、このようなプロトコルは記載の実施態様に限定されるものではない。デジタル撮像することができる、何らかの形式で被分析物の存在に対して応答するいかなる装置も、上記手順の適応形を用いて分析することができる。例えば、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置、フロースルー式バイオアッセイ装置、及び三次元バイオアッセイ装置の他の構成を分析することもできる。
【0075】
上記のようにバイオアッセイ装置の性能は、粒状汚染物質の存在によって顕著に影響を及ぼされることはない。表1は、土埃、おがくず、又は植物の花粉で汚染された一例としての人工尿試料(4.5mMのグルコース及び50μMのBSA)の定量的分析をまとめた結果を示す。各汚染物質を、デジタルカメラ及びスキャナーの両方を使用して6回測定し、図6に示された較正線を使用して、デジタル信号を濃度に変換した。それぞれの事例において、汚染物質は、グルコースの濃度に対してほとんど影響を及ぼさず(誤差≦6%)、また植物の花粉だけがタンパク質の濃度に対して影響を及ぼした(誤差≦13%)。これは、試料中に溶解され応答の増大を引き起こす、花に由来する何らかのタンパク質から生じた結果であった。
【表1】
【0076】
上記のように、定量的測定を行うために、分析される試料の量に関して少なくとも何らかのコントロールが必要とされる。しかしながら、いくつかの環境、例えば遠隔地では、5μlの試料を調量することができるマイクロピペットを入手できない場合がある。バイオアッセイ装置上のチャネルと試験ゾーンとの組み合わせ表面積が多くの実施態様において一定なので、装置を未知量の試料中に浸し、そして試料が試験ゾーンを満たしたらすぐに装置を取り出すことにより、被分析物を定量的に得ることができる。表2は、ほぼ20μLの人工尿をペトリ皿に移し、装置の底部を試料中に浸し、そして試料が試験ゾーンを満たしたらすぐに装置を試料から取り出す方法を用いた、3つの異なる濃度のグルコース及びタンパク質の測定の結果を示す。装置をペーパータオル上に平らに置き、30分後に装置を上述のように撮像した。この方法を用いた測定の誤差は、固定量の試料を使用した測定よりも若干大きいが、しかし被分析物のレベルをなおも定量的に検出することができる。
【表2】
【0077】
パターン化された紙とスキャナー又はデジタルカメラ検出器との組み合わせは、在宅介護環境における、又は第1応答者による疾患の定量的検出のためのいくつかの利点を提供する。この実施態様は、尿中のグルコース及びタンパク質を検出するときに、正確且つ定量的な結果を提供することが判っている(誤差≦15%)。これらの結果はまた、この低廉、且つシンプルであり、また持ち運び可能な紙に基づく技術が、試験システムにおいて十分に定量的であるので、医学関連状況において有用であることを実証する。
【0078】
いくつかの装置例において、グルコース・アッセイの結果は、装置上に試薬をスポッティングした後、時間経過とともに感受性が低くなることが観察された(装置を室温で保存したとき)。遠隔地において有用となるであろう分析装置は、少なくとも数日間、好ましくは数週間は安定であり続ける試薬を含むことが望ましい。グルコース・アッセイのための試薬の安定性を高めるために、他の用途においてタンパク質をこれらの活性形において安定化する能力が知られている二糖であるトレハロースを添加することができる。図7は、(酵素が添加される前に)トレハロースが紙上にスポッティングされたいくつかの実施態様の例において、2週間にわたって(装置が室温で保存されたときでさえも)酵素活性の損失は観察されなかったのに対して、トレハロースなしで調製されたいくつかの実施態様の例では、グルコース・アッセイの信号強度は時間経過とともに線形に減少することを示している。具体的には、トレハロースの存在において、(人工尿中4.5mMのグルコースを検出する場合)グルコース・アッセイに対する信号強度は、装置に試薬をスポッティングし、次いで装置を室温で保存すると、約30日にわたってほぼ一定であった。グラフ上の値は6回の測定の平均であり、そして誤差バーはこれらの平均からの標準偏差を表す。タンパク質アッセイは、信号の損失なしに2か月にわたって室温で保存することができる(データは示さず)。言うまでもなく、トレハロースは、機能デバイスを提供するためには必要ではなく、また多くの他の処理を用いてアッセイの安定性を高めることもできる。
【0079】
上記実施態様の多孔質媒体は、グルコース及びタンパク質を検出するために誘導体化された種々異なる領域を含むが、一般に、媒体は、多くの他の被分析物を同様に測定するために好適に誘導体化することができ、シンプルで低廉な試験の利用可能性が有用であるような種々の用途において使用することができる。
【0080】
例えば、いくつかの実施態様の場合、バイオアッセイ装置は、幼児、例えば未熟児のための尿分析を実施するために使用される。幼児、特に未熟児から十分な量の尿を得ることは、従来の技術では難しい。従来の技術は、幼児のおむつ内の適宜の場所に綿ボールを入れ、3時間後におむつを開き、綿ボールを取り出し、できるだけ多くの尿(典型的には一滴の一部にすぎない量)を成人用サイズの尿分析ディップスティック上に絞り出す。この方法は、被検査物が典型的には少なくとも部分的に蒸発し、このことが被分析物の濃度、並びに溶液の比重(ひいては移動度)に影響を及ぼすことを含む、種々様々な問題を招く。加えて、被分析物は酸化することがあり、このことは、タンパク質、グルコース、pH、及び/又は測定値の結果に影響を及ぼすおそれがある。
【0081】
対照的に、本発明の実施態様は、幼児、例えば未熟児からの尿試料を捕捉して分析するために容易に使用することができる装置を提供する。1実施態様の場合、所望のアッセイのために調製されたラテラルフロー式バイオアッセイ装置が、おむつ内の適宜の場所に配置され、この装置はおむつの外面に通じる紙チャネルを含む。幼児が排尿すると、尿は装置及び紙チャネルを通って流れ、看護師、技術者、又は医師が読むことができる外部比色分析インジケータを表示する。このような装置は、コストが低い理由から、おむつ内に容易に含むことができる。さらに、装置を読み取るために、幼児に対する取り扱いは必要とならない。なぜならば色/アッセイはおむつの外面上で生じるからである。このような点は、未熟児にとっては特に有用であり得る。なぜならば、取り扱いは例えば呼吸、温度、及び/又はストレス・レベルの問題を引き起こすおそれがあるからである。加えて、その結果は排尿直後に入手することができ、これにより、計画されたおむつ交換(典型的には3時間毎)まで試験を実施するのを待つ必要がなくなること、そして従来のアッセイで発生するおそれのある潜在的な試料劣化を低減することの両方の結果が得られる。いくつかの実施態様の場合、可視インジケータは、結果を素早く読み取ることができるように、尿が分析されていることを指示するために、特に明るく形成されている。
【0082】
おむつに基づく装置内に種々様々なアッセイを組み込むことができる。例えば上記グルコース及び/又はタンパク質試験を含むことができる。いくつかの実施態様の場合、幼児、例えば未熟児の尿中の血管内皮成長因子(VEGF)レベルをモニタリングすることができる。VEGFレベルは、網膜疾患の発生のインジケータである。未熟児における網膜疾患の従来の診断法は、幼児網膜専門眼科医による毎週又は隔週の15分間の検査である。このような検査は高価であり、しかも幼児に悪影響を及ぼす。尿中のVEGF及びその他の成長因子(例えばIGF−1、又はインスリン様成長因子I)の検出は、S. K. Smith, Hum. Reprod. Update 1998, 4, 509-519(この内容を参考のため本明細書中に引用する)に開示されているように、未熟児網膜症、糖尿病、癌、及び移植を診断するのに有用である。VEGF及びその他の成長因子は、妊娠ストリップ試験が尿中のベータ−HCGを検出するのと同様にパターン化紙技術で検出することもできる。
【0083】
他の実施態様の場合、装置は、動物、例えば実験動物、又は獣医師のもとに連れていかれたペットの尿分析を行うために使用することができる。従来、動物は排尿するまで締め付けられ且つ/又はくすぐられ、尿が捕集され、次いで人間の成人用の尿検査ディップスティック上に堆積される。対照的に、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置は、比較的小さな紙「シュレッド」片として形成し、ケージの床上にまき散らすことができる。この床上で動物は排尿することができる。このような比色試験は、糖尿病又は腎臓疾患の早期診断が有用である実験動物におけるタンパク質及びグルコースを測定するのに役立つことができる。獣医環境では、肥満の猫や犬の糖尿病の検出は、従来は実施するのが難しいことのあった有用な試験である。
【0084】
他の実施態様の場合、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置は、脳脊髄液(CSF)を分析するために、例えば患者が髄膜炎を有しているかどうかを割り出すために使用することができる。一般に、髄膜炎の診断は、CSFの培養、CSF中にどれほど多くの白血球があるかどうかを割り出すための細胞カウント、及びCSFのタンパク質及びグルコースのレベルの測定を含む。これらの3つのファクターは、ウィルス性髄膜炎対細菌性/寄生虫性/真菌性髄膜炎の病因を割り出す上で有用であり得る。CSFは典型的には、特に小児においては、大量に入手することはできない(数mL)。さらに、CSFを培養することの必要性に優先権が与えられ、化学アッセイのための試料(グルコース、タンパク質)はほとんど又は全く残されない。従来の化学分析装置は、数μLの被検査物に対してグルコース/タンパク質測定を実施することができるが、このような試験は高価であり、発展途上国内では典型的には利用できない。対照的に、ラテラルフロー式バイオアッセイ装置は、CSFからのタンパク質及びグルコースの半定量的読み取り値を低廉且つ迅速に提供することができる。例えば、資源の乏しい熱帯環境のために適用すると、CSF中のタンパク質及びグルコースのレベルをスクリーニングすることにより、ウィルス髄膜炎から脳マラリアを区別することが可能になるはずである。これらの障害は大幅に異なる治療を必要とし、適切な区別により、患者が不要の投薬及びそれらの重大な副作用を被らないようにすることができる。
【0085】
いくつかの実施態様の場合、装置は、母乳分析のために、例えば母乳中のタンパク質、脂肪、及びグルコースのレベルを割り出すために使用することができる。このような分析は、十分なカロリーを獲得するために、授乳期の母親が授乳量/搾乳量を調節するのを助けることができる。このことは、栄養摂取が成長の遅れを巻き返すために重大であるような未熟児には特に重要である。
【0086】
他の実施態様の場合、装置は、再生医療用途で、例えば肝臓、膵臓、島細胞、及びその他の外分泌/内分泌器官の小さな「組織」を代償療法の目的で発生させる際に使用することができる。これらの少数の細胞の産出量をモニタリングすること、例えば肝細胞の小さな培養物からのアルブミン産出量を測定することは困難な場合がある。比較的小さな被検査物を測定するために、触媒化学反応、例えばELISAを装置内に組み込むことができる。ELISA型アッセイ装置は、ラテラルフロー式装置又はフロースルー式装置の形態を成していることができる。ここでは、例えば酵素標識付き抗体を装置上の所定の領域内に堆積し、次いで生物学的流体が装置を通って運ばれるのに伴ってこの生物学的流体によってこれらの抗体を溶媒和することができる。標識付き抗体は、試料中の抗原に結合することができ、そしてこの複合体はさらに、基質に取り付けられる(共有結合)か又は付着(非共有結合)された抗体に結合する。抗体に取り付けられた酵素のための基質は、装置内の別個のチャネルを通して提供するか、又は生物学的流体が装置を通過した後で試薬を手で添加することにより、提供することもできる。
【0087】
さらに他の実施態様の場合、装置は、眼科分野において、例えば、硝子体液(目の含有物)又は涙液膜内の成分を分析する際に使用することができる。このような分析は、種々様々な状態(例えば感染症、腫瘍、外傷、関節リウマチのような全身性炎症に対する応答)を診断するのに役立つことができる。例えば抗体及び/又はサイトカインのレベルを割り出すために、目の液体を素早く分析することができる。
【0088】
他の実施態様の場合、装置は、例えば胃内容物の胃食道逆流からの吸引を診断するために、気管支肺胞洗浄液中の成分を測定する際に使用することができる。
【0089】
一般に、装置は、植物、動物、及びヒトの代謝、ストレス、及び疾患の生化学マーカーを検出するのに適している。装置はまた、水及び土壌中の汚染及びその他の被分析物を検出するために使用することができ、その他の流体、例えば化粧品、油、燃料及びその他のものにおける被分析物を検出するのに適している。
【0090】
フロースルー式バイオアッセイ装置
いくつかの実施態様は概ね、疎水性バリアによって画定されたチャネル内で多孔質媒体中を液体試料が横方向に流れることによって動作するのに対して、いくつかの実施態様の場合、試料は、複数の親水性媒体層を貫通して、すなわち「フロースルー」形態で流れる。フロースルー式装置の場合、疎水性バリアは、液体が1つの層から別の層内に横断して流れるのに伴って、この液体を横方向に含有する。種々異なる多孔質媒体層は、所与の用途に適するように処理することができ、又は未処理のままにすることができる。
【0091】
図8Aは、本発明のいくつかの実施態様によるフロースルー式装置800を概略的に示す斜視図である。装置は上側及び下側の保護被膜810,850、任意のフィルタ820、及び多孔質媒体830,840を含んでいる。上側及び下側の保護被膜810,850は、装置の他の層を互いに隣接した状態で保持し、付加的な強度及び安定性を装置に提供し、装置からの蒸発を低減し、そして外部の汚染から他の層を保護する。上側の保護被膜810は開口815を含んでおり、この開口815を通して、液体試料を下側の層上に堆積することができる。上側及び下側の保護被膜は例えばポリマー被膜であってよい。有用な保護被膜の1つの例は、商業的に入手可能な粘着テープである。粘着テープは低廉であり、また接触した層の表面と容易に結合することになる。ラミネートも有用である。
【0092】
試料の濾過が必要になると思われるとき、例えばダスト又はその他の汚染物質の存在が予期される場合、又は装置を全血試料とともに使用し、赤血球の除去が望まれる場合、フィルタ820、例えばガラス繊維フィルタ又は他の商業的に入手可能なフィルタを任意に含むことができる。多孔質媒体830、例えばセルロース紙は、試薬をスポッティングするか又は他の形式で被着することができる領域835を画定する1又は複数のパターン化疎水性バリアを含む。多孔質媒体840、例えばセルロース紙も同様に、他の試薬をスポッティングするか又は他の形式で被着することができる領域845を画定する1又は複数の疎水性バリアを含む。いくつかの実施態様の場合、領域835内の試薬は試料中の被分析物と反応することにより、中間試薬を生成する。これらの中間試薬は過剰の流体と一緒に領域845内に入り、ここでこれらは、領域845内に予め吸収された第2試薬集合と反応する。いくつかの実施態様の場合、この第2の反応は色彩豊かな生成物を提供する。この層状構造は、被分析物が存在するまでは、領域835内の試料と領域845内の試料との接触を阻害する。
【0093】
図8Bは、本発明のいくつかの実施態様によるフロースルー式装置800’を概略的に示す斜視図である。装置は図8Aに示された装置と同様であり、上側及び下側の保護被膜810’,850’、任意のフィルタ820’、及び多孔質媒体830’,840’を含んでいる。これらは上記のものとほぼ同じであることが可能である。装置800’はさらに、装置の層820’,830’及び840’を通して液体を引き出すためのポンプとして作用する吸収性媒体860’を含む。いくつかの実施態様の場合、領域835’内の試薬は抗原であり、この抗原は生体試料中の抗体を検出するために使用することができる。他の実施態様の場合、試薬は、抗原を検出するための抗体であり、更なる実施態様の場合、試薬は核酸、アプタマー、分子インプリント・ポリマー、又は抗原に結合するように調製された他の化学受容体、例えば核酸、タンパク質、有機小分子、又は無機イオンである。領域845’内の試薬は、層840’に、(例えば前記化学的性質を用いて)共有結合的に又は(例えば非特異的な吸着を介して)非共有結合的に付着することができる。
【0094】
装置800’を使用して実施される一例としてアッセイは、生物学的流体をフィルタ820に添加することを伴い、流体はフィルタ内に分配され、過剰な流体がフィルタを通過し、そして層830’の領域内に分配される。過剰の流体は、層830’内に堆積された試薬、例えば標識付き二次抗体を溶解し、そしてこれらの試薬を層840’に運ぶ。流体中の被分析物、例えば抗体は、領域845’に取り付けられた受容体に結合し、そして領域835’からの標識付き試薬は被分析物に結合する。過剰の流体及び試薬は層860’内に運ばれる。この層860’は親水性であり、過剰の流体及び試薬を捕集するための領域として役立つ。任意には、一滴の水、緩衝剤、又はその他の洗浄流体をフィルタ820’に添加することにより、過剰の試薬を装置を通して層860’内に流し入れることができ、この洗浄ステップは、非特異的に結合された標識を除去し、そしてバックグラウンド信号を低減することができる。この装置は、免疫アッセイに適している。これらのうちの1つのアッセイは例えばELISAアッセイであってよい。ELISAアッセイの一例は、例えばホースラディッシュ・ペルオキシダーゼで標識付けされた酵素標識付き二次抗体を領域835’内に含むことになる。アッセイ完了後、試薬、例えばヨウ化物を領域845’に添加すると、例えばヨウ化物からヨウ素への変換を触媒して茶色をもたらすホースラディッシュ・ペルオキシダーゼによって、アッセイに対する信号を増幅することができる。
【0095】
但し、これらの層の全てが全ての実施態様に含まれる必要はない。例えば、いくつかの実施態様の場合、当該試料に対してバイオアッセイを実施するために、唯1つの多孔質媒体層、例えば図8Aの媒体830が必要とされる。他の実施態様は、図8A及び8Bに示されている層よりも多い層、又はこれらの層とは異なる層を含んでいてよい。また、複数の装置を所与の単位(例えば単一の多孔質媒体片上に)として提供することができる。この単位は、複数の診断試験が並行して又は順繰りに行われるのを容易に可能にする。下に詳細に説明するように、装置のそれぞれはそれ自体多重化されていてよく、このようにすると、多くの異なる種類の測定が一度に行われるのが可能になる。
【0096】
図9A及び9Bは、いくつかの実施態様による一例としての鉛直フロー式装置900のそれぞれ正面図及び背面図である。図9Aから明らかなように、装置は保護上層910、例えば粘着テープ、フィルタ920、及び多孔質媒体930、例えば濾紙を含む。保護上層910は、図8Aに示されているものと同様の開口を含み、この開口は、液体試料をフィルタ920、例えばガラス繊維フィルタ上に堆積することができる区域を提供する。保護上層910はまた任意には、多孔質媒体930のエッジを超えて延びる「タブ」を含み、装置の容易な取り扱いを可能にする。多孔質媒体930は、試料がフィルタ920に被着された後で貫流することができる領域(この画像では見ることはできない)を画定する疎水性バリアを含む。
【0097】
図9Bは装置900の背面図を示している。この装置は保護下層950と、試料分析のための領域935とを含んでいる。これらの領域935は、多孔質媒体930内の疎水性バリアによって画定されている。図示の実施態様の場合、異なるアッセイを提供するようにそれぞれ処理された4つの領域935がある。しかし、一般に、領域の他の形状及び数、及び他の形態も可能である。上記ラテラルフロー式装置とは異なり、ここでは、アッセイ領域は、疎水性バリアによって互いに分離されている。しかし、いくつかの実施態様は、互いに流体連通しているアッセイ領域を含む。このような実施態様は、組み合わせラテラルフロー式とフロースルー式とを組み合わせた装置として動作することができる。
【0098】
図10は、図9A〜9Bのラテラルフロー式装置を組み立てる手順例を示している。先ず、バイオアッセイ層とフィルタとを調製する(1010)。1つの例において、バイオアッセイ層は、パターン化バリアと、例えば上記のように、バリアによって画定された領域内にスポッティングされたアッセイ試薬とを有する多孔質媒体であり、そしてフィルタは、穴開け器を使用して調製された9mm直径のガラス繊維濾紙片(Whatman GF/C)である。フィルタをバイオアッセイ層上に整合する(1020)。保護層、例えば接着材を用意する(1030)。1つの例において、透明な粘着テープ(例えばScotchテープ)(7x1.9cm)に、このテープの一方の端部からほぼ7mmのところから、7mm直径の穴を開ける。次いでこの接着材を使用して、フィルタをバイオアッセイ層に付着させる(1040)。次いで接着材を連続して複数回折り曲げる(1050)ことにより、フィルタをバイオアッセイ層に固定し、この場合粘着テープの穴がガラス繊維フィルタの上に位置するようにし、また、テープの過剰の長さでバイオアッセイ層をくるむことにより装置をシールする。
【0099】
1つの例において、製作された装置は比較的軽量(例えば50mg)であり、また小型(約36x18x0.3mm)であるが、しかし、手で操作するのに十分に大きい。装置は、異なるアッセイで4つの領域935を処理することにより、肝機能のインジケータをもたらす4つのアッセイを実施するように構成された。
【0100】
米国特許第5,279,944号明細書(内容全体を参考のため本明細書に引用する)に報告された手順を改変した方法を用いて、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)を検出するように、製作された装置の第1領域935を処理した。アッセイは、L−アラニン及びアルファ−ケトグルタル酸の存在における(ALTによって触媒される)ピルビン酸の形成に依存する。ピルビン酸は続いて、ピルビン酸オキシダーゼと反応することにより、過酸化水素を生成する。過酸化水素は、4−アミノアンチピリジン及びジメチルアミノ安息香酸ナトリウムの存在においてホースラディッシュ・ペルオキシダーゼと反応することにより、4−N(1−イミノ−3−カルボキシ−5−N,Nジメチルアミノ−1,2−シクロヘキサンジオン)アンチピリンナトリウム塩を提供し、このアッセイ装置は、ALTが存在すると赤/紫色に転じる。
【0101】
下記の順番でアッセイ・ウェル内に下記溶液をスポッティングし、各溶液間に10分間の乾燥時間を置くことにより、1実施態様例において、紙上のALTアッセイを調製する:1)0.3μLの0.3MトレハロースのMillipore水溶液;2)L−アラニン(1M)、α−ケトグルタル酸(30mM)、KH2PO4(2mM)、MgCl2・6H2O(20mM)、及びチアミンピロリン酸(TPP)(2mM)を含有する0.3μLの200mM Tris−HCl緩衝剤(pH7.35)溶液;3)4−アミノアンチピリジン(2mM)及びジメチルアミノ安息香酸ナトリウム(10mM)を含有する0.3μLの200mM Tris−HCl緩衝剤(pH7.35)溶液;4)ピルビン酸オキシダーゼ(6U/ml)及びホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(6U/ml)を含有する0.3μLの200mM Tris−HCl緩衝剤(pH7.35)溶液。150mM NaClを含有する50mM リン酸ナトリウム緩衝剤(pH8.0)中のALTの溶液0.5μLを試験区域内にスポッティングすることにより、ALTに対応する較正曲線を調製した。
【0102】
J. Clin. Lab. Anal. 1999, 13, 180、及びAngew. Chem. Int. Ed. 2007, 46,1318に報告されたものを改変した手順を用いて、血漿中のタンパク質レベルを検出するために、製作された装置の第2領域935を処理した。具体的には、0.3μLの250mMクエン酸緩衝溶液(pH1.8)を試験区域内にスポッティングし、続いて10分間乾燥させ、次いで、4.5mMテトラブロモフェノール・ブルー(TBPB)のエタノール溶液0.3μLを添加し、紙を再び10分間にわたって乾燥させた。150mM NaClを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝剤(pH8.0)中のBSA(濃度範囲0.1〜2mM)の溶液0.5μLを試験区域内にスポッティングすることにより、較正曲線を調製した。
【0103】
“Rapid and Sensitive Colorimetric Method for Visualizing Biotin-Labeled DNA Probes Hydbridized to DNA or RNA Immobilized on Nitrocellulose: Bio-Blots”, Leary, J. J.; Brigati, D. J.; Ward, D. C., PNAS, Vol. 80, No. 13, 1983, pp. 4045-4049(この内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に記載されたものを改変したアッセイを用いて、血漿中のアルカリホスファターゼ(ALP)のレベルを検出するために、製作された装置の第3領域935を処理した。具体的には、0.3μLの500mM Tris緩衝剤(pH9.5)を紙試験区域内にスポッティングし、この区域を10分間にわたって乾燥させておき、次いで、70%ジメチルホルムアミド中の2.5%ニトロブルーテトラゾリウム0.3μLをスポッティングし、次いで10分間にわたって乾燥させ、そして100%DMA中の5%の5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート0.3μLをスポッティングした。試験区域を30分間にわたって乾燥させておいた。500mM Tris緩衝剤(pH9.5)中のアルカリホスファターゼの溶液0.5μLを試験区域内にスポッティングすることにより、較正曲線を調製した。
【0104】
米国特許第5,834,226号明細書(内容全体を参考のため本明細書中に引用する)に報告されたものを改変した手順を用いて、血漿中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルを検出するために、製作された装置の第4領域935を処理した。具体的には、蒸発を最小限に抑えるために試験基材の背面をテープでカバーしたあと、5%w/vトレハロースのMillipore水溶液2.0μLを試験区域内にスポッティングした。10分間にわたって乾燥させた後、0.0237M NaCl、及び4.5mM EDTA2ナトリウム塩を含有する200mM TRIS緩衝剤(pH8.0)中に1.0M L−システインスルフィン酸及び0.1M 2−ケトグルタル酸1ナトリウムを含有する溶液2.0μLを試験区域内にスポッティングした。さらに10分間にわたって乾燥させた後、2.0μLの色素溶液(0.25gのポリビニルアルコール、7.5mgのメチルグリーン、7.5mgのローダミンB、2.8mgのZnCl2を25.0mLの脱イオン水中に含有)及び0.06%Triton X−100を試験区域内にスポッティングした。150mM NaClを含有する50mM リン酸ナトリウム緩衝剤(pH8.0)中のアスパラギンアミノトランスフェラーゼ(濃度範囲0.05U/mL〜2.50U/mL)の溶液2.0μLを試験区域内にスポッティングすることにより、較正曲線を調製した。
【0105】
いくつかの実施態様の場合、ランセットを使用して指を刺すことにより得られた一滴の血液に、装置を曝露する。ここで血液は、(一滴の血液がフィルタ上に整合されるように)刺された指と親指との間に装置を保持することにより、装置に添加される。装置を約60秒間にわたって加圧することなしに保持し、次いで、約10秒間にわたって軽く圧迫する。約70秒後には、装置はもはや保持する必要はない。しかし約30分後まで、アッセイの結果は分析されない。アッセイの結果は、保護ケーシング(すなわちテープ)をパターン化紙から剥ぎ取ることにより観察される(このプロセスはまたガラス繊維フィルタを取り外す)。アッセイの結果は、カラーチャートと比較することにより定性的に視覚化することができ、或いは、上に詳しく説明したように、結果をデジタル化し分析することにより定量化することができる。
【0106】
多孔質媒体内にはいかなる所望のパターンをも画定することができるので、バイオアッセイの範囲を超えた幅広い用途が考えられる。例えば、多孔質媒体、例えば紙をパターン化することによりチャネルを形成し、続いて電界を印加することにより、これらのチャネル内の試料に対して電気泳動を実施することができる。電気泳動法に紙を使用することは良く知られており理解されているが、試料の経路長、ひいては試料中の荷電粒子間の分離度は従来、使用される紙の長さに限定されている。ここでは、紙は任意にパターン化することができるので、チャネルは、「ジグザグ」、又は紙の長さに対してチャネルの経路長を増大させる他のパターンを有するように製作することができる。さらに、パターン化は、チャネルが従来の紙に基づく電気泳動よりも顕著に狭くなるのを可能にするので、それだけ小さな試料サイズを用いることができる。
【0107】
いくつかの実施態様の場合、パターン化多孔質親水性媒体(例えば紙)から成る層と、絶縁材料(例えば両面テープ)から成る層とを互い違いに積み重ねることにより、三次元マイクロ流体装置を製造する。三次元マイクロ流体装置は流体を、パターン化紙層内部で横方向に運ぶか、又は2つのパターン化紙層の間で鉛直方向に運ぶことができる。絶縁材料層は、異なるパターン化紙層内の流体が互いに混ざり合わないことを保証する。流体が2つのパターン化紙層の間で鉛直方向に流れる必要があるところにはどこでも絶縁材料層に、開口を設けることができる。三次元マイクロ流体装置は、2つの異なるチャネルが、直接に物理的に接触することなしに互いに交差するのを可能にする。これは、単一層ラテラルフロー装置においては可能ではない特徴である。三次元装置はまた、任意の所期パターンを成す多数のウェル内に試料を分配するために有用である。三次元装置は、試料が鉛直方向に流れることができ、また装置の各層を試料の処理又は分析のために使用することができるので、多数の試料が処理又は分析されることになっている用途において有用である。紙層及びテープ層は薄い(1層当たり約100〜200μm)ので、装置のサイズを大幅に変えることなしに、いくつかの紙層及びテープ層を積み重ねることが可能である。
【0108】
図18Aは、三次元マイクロ流体装置1800の1実施態様の斜視図を概略的に示している。この装置は、2つのパターン化紙層1810及び1830と、開口を有する1つの絶縁材料層1820、例えば両面テープとを含んでいる。3つの層1810,1820,1830は互いに整合され接着されている。図18Bは、2つの異なる色の水性色素(グレースケール画像において一方が他方よりも明るく見える)を運ぶ図18Aの装置を示している。この装置は、色素が貫流する別個のチャネルが、2つの流体間でいかなる混合も生じることなしに、互いに交差するのを可能にする。
【0109】
図19は、三次元マイクロ流体装置1900の別の実施態様の斜視図を概略的に示している。この装置は、2つの試料を、特定のパターンを成す16個の試験ゾーンに分配するように構成された試料分配装置である。装置1900は、2つのパターン化紙層1910と、3つの絶縁材料層1920とを含んでいる。装置のトップ層1911は2つの試料のための2つの入口を含み、そして装置のボトム層1914は16個の試験ゾーンを含んでいる。装置の内層は、水平方向平面内に試料を分配する複数のチャネルを含んでいる。図19は、装置のトップ層1911上の2つの入口に液体を被着し、そして色素が装置を通ってボトム層1914上の16個の試験ゾーン内に流入するのを可能にした後の、2つの異なる色の水性色素(グレースケール画像において一方が他方よりも明るく見える)の流れを概略的に示している。装置の内層におけるチャネルを適切に配列することにより、試験ゾーン内の任意の試料パターンを得ることができる。
【0110】
多孔質親水性媒体内にパターン化疎水性バリアを設ける方法
いくつかの実施態様の場合、下で詳細に説明するように、必要となる設備が比較的少なく、ほとんどいずれの研究室内でも実施することができ、そして多くのタイプのパターン及び各パターンの複数のコピーを形成するのに十分に万能のパターン化法を用いて、多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを設けることができる。比較的製作しやすく、且つ低廉な成分を入手しやすいので、バイオアッセイ装置は、慣習的な装置、例えばディップスティックよりも著しく低コストで形成することができ、従って、何よりも、資源が制限されており、また装置のコスト及び持ち運び可能性が有用となるような遠隔地において疾患を検出するために役立つことができる。
【0111】
上記のように、多孔質親水性媒体、例えば紙内にマイクロ流体チャネルを製作するために、パターン化疎水性ポリマーは一般に、所望の区域内に液体を閉じ込めるために、紙のほぼ全厚を通って延びている。この制約は、紙をパターン化するために実際に用いることができる方法を制限する。例えば標準的なインクを使用する印刷方法は、紙内にチャネルを形成するのに適していないことがある。なぜならば、現在入手可能なインクは、紙の表面に付着するように構成されてはいるが、しかし紙内に吸収されるようには構成されていないからである。しかし、或る種のインクは、紙のほぼ全厚を通して吸収されるように構成することもできると考えられる。
【0112】
多孔質媒体、例えば紙の組成も、実際に用いることができるパターン化法を制限することがある。例えば、紙は典型的には、絡み合わされた繊維を含み、これらの繊維は、紙シートのx軸及びy軸において配向されており、z方向で互いに上下に積み重ねられている。この配列の結果、z方向と比較してx,y平面内で液体の広がりが増大し、このことは、パターン化された構成要件をぼやけさせる。モノマー、ポリマー、及び溶媒を適切に選ぶことにより、紙のこれらの特性を克服し、そして、紙の全厚を貫通する明確な構成要件のパターン化を可能にすることができる。
【0113】
いくつかの有用な紙パターン化法は、フォトリソグラフィに基づいており、クリーンルーム内又は研究室内で実施することができる。クリーンルーム・フォトリソグラフィは、紙内の高度に画定されたパターンを形成するのに効果的ではあるが、しかし比較的高価且つ低速であり、場合によってはその商業的な実行可能性をいくらか制限してしまう。他の方法、例えば研究室フォトリソグラフィ及びソフト・リソグラフィ(マイクロコンタクト印刷とも呼ばれる)は、高品質の装置をなおも製造しつつ、クリーンルームの必要をなくし、そして、製造業者側の設備及び専門知識に対する要件をわずかしか有さない。研究室フォトリソグラフィは、良好に分解されたチャネル及び小さな構成要件サイズを有するパターンを形成するのに有用である。ソフト・リソグラフィは典型的にはフォトリソグラフィに基づく方法よりも低廉であり、そして同じパターンの複数のコピーを比較的速やかに作成するのに有用である。
【0114】
いくつかの用途の場合、紙マイクロ流体装置の構成要件サイズが比較的大きく(例えば約1〜2mm幅のチャネルを有する)、この場合には、分解能はより低いが、しかしより高速のスタンピング技術で十分となる。他の用途の場合、ミクロンサイズの構成要件が使用されることになり、この場合には、低廉ではあるが、しかしより高分解能の方法が有用となる。ほとんどの用途の場合、装置は、1.5mm未満のサイズの構成要件を有することになる。しかし念のために述べておくと、本明細書中に記載されたシステム及び方法を用いて、チャネルの種々様々な形状及びサイズを形成することができる。両方の種類の用途において、パターン化方法が、低廉であり、高スループットを有し、そして製造するために高度な技術を有するユーザーを必要としないことが望ましい。
【0115】
下記考察では、本発明のいくつかの実施態様に基づく3つの紙パターン化法(クリーンルーム・リソグラフィ、卓上リソグラフィ、及びスタンピング)について記述し、各方法を用いて製造されたパターンの品質を、パターン形成コストとともに比較する。これらの比較は、紙マイクロ流体装置内で有用であり得るいくつかの構成要件、例えば曲線、直角、T字形接合部分、及び真直ぐなチャネルに関して行われる。また、親水性チャネル及び疎水性バリアの両方に対して、これらの構成要件の幅を変える。これらの構成要件の分解能及び均一性、並びに紙内の水の広がりを制御するパターンの能力を比較する。種々の例は、いくつかの方法を用いて製造することができるいくつかのタイプの構成要件を示すことを意図したものであり、これらは本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0116】
いくつかの実施態様の場合、クリーンルーム・リソグラフィを用いて、疎水性パターンを生成する。図11は、クロマトグラフィ紙をフォトレジストを用いてフォトリソグラフィによりパターン化することにより、紙内部に疎水性バリアを形成する方法の一例における工程を概略的に示している。
【0117】
図11に示された実施態様の場合、先ず、多孔質親水性媒体、例えばクロマトグラフィ紙(例えば約7.5cm直径及び約100μm厚)を用意する(1110)。紙は、リソグラフィ工程を生き延びるのに十分な厚さ及び強度を有するように、そしてまた、後続の所期用途と適合するように選択される。
【0118】
次に、紙をフォトレジスト中に浸し、前ベーキングする(1120)。1つの例において、フォトレジストが紙全体にしみこむのに十分な時間、例えば30秒〜1分間にわたって、約2mLのSU−8 2010フォトレジスト中に紙を浸す。いくつかの実施態様の場合、フォトレジストは紙を実質的に透過するか又は紙に実質的にしみ通るので、フォトレジストの画定部分が後で除去されると、紙上及び紙内に残った部分は、横方向流体流を実質的に通さないバリアを形成する。フォトリソグラフィと適合可能な他の光活性材料、例えばフォトポリマーを、パターンを画定するために紙を損傷することなしにこの材料を除去できる限り使用することもできる。フォトレジストで浸された紙を次いで任意には、例えば2000rpmで30秒間にわたって回転させることにより過剰のフォトレジストを除去する。過剰のフォトレジストを他の方法、例えば掻き取り又は加圧によって除去することができる。次に、紙を例えば95℃で5分間にわたってベーキングするか、又は空気乾燥させることにより、例えばSU−8製剤中のシクロペンタノンを除去する。
【0119】
次に、フォトレジストで浸された紙をフォトマスクの下に整合し、そしてフォトレジストを適切に反応させるように選択された波長のUV光に当てる(1130)。1つの例において、CAD/Art Services, Incから得られるフォトマスクを、マスク・アライナ(OL-2 Mask Aligner, AB-M, Inc)を使用して整合し、そして約10秒間にわたってマスクを通してほぼ405nmのUV光(50mW/cm2)に紙を当てる。別の例の場合、フォトマスクを、インクジェット・プリンタを使用して透明体上に直接に印刷する。
【0120】
次に、露光済紙を、例えば95℃で5分間にわたってベーキングする(1140)ことにより、フォトレジストを架橋するか又はその他の形でフォトレジストを適宜に処理する。
【0121】
次に、フォトレジストを現像し、そしてその結果としての集成体を任意にはプラズマ酸化する(1150)。1つの例において、露光済・後ベーキング済の紙をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に浸すことにより(5分)、そしてパターンを2−プロパノール(3x10mL)で洗浄することにより、重合されていないフォトレジストを除去する。現像過程は、紙(又はその他の多孔質媒体)内のフォトレジストから形成された疎水性バリアを残す。いくつかの環境において、フォトリソグラフィ過程に続いて、紙は、おそらくは紙に結合された残留レジストに起因して、処理前よりも高い疎水性を有する。所期用途にとって紙内の申し分のない親水性レベルに達するために適切な場合には、紙の表面全体に、任意には酸素プラズマ又はその他の適宜の処理を施すことにより、親水性を調節することができる。1つの例において、パターン化紙を10秒間にわたって600torrで酸素プラズマに当てる(SPI Plasma-Prep II, Structure Probe, Inc)。フォトレジストを除去した後、紙の親水性が所期目的にとって十分である実施態様の場合、この工程を実施する必要はない。いくつかの実施態様の場合、そのフォトレジスト及び処理は、紙の親水性の変化を低減又は排除するように選択される。
【0122】
次いで、結果として生じたパターン化紙をウェハーから切り取ることにより、個々のバイオアッセイ装置を形成し(1160)、そして上で詳細に説明したように、試薬をスポッティングし乾燥させることにより、誘導体化するか又はその他の形式で診断アッセイにおいて使用するために改変することができる(1170)。
【0123】
フォトレジストがそれを通して露光されるマスクは、完成したバイオアッセイ装置の所期用途にとって適するようにパターン化される。いくつかの実施態様の場合、マスクは、例えばほぼ1mmの幅を有する疎水性チャネルを画定するように、且つ/又は、所望の通りのアッセイ領域、例えば1〜10個又はこれよりも多いアッセイ領域を画定するようにパターン化される。装置はマイクロアレイ用途で使用されるようになっている実施態様の場合、装置は、50を上回る、100を上回る、又は数百を上回るアッセイ領域を含んでいてよい。アッセイ領域及びチャネルの両方を含む実施態様において、アッセイ領域は、チャネルと同一の広がりを有していてよく、或いは、チャネルから分岐していてもよい。パターン化領域は、必要に応じて、アッセイのタイプに関する情報をユーザーに提供するために種々異なる形状を有することもできる。一般に、チャネルを占有する紙又はその他の多孔質親水性媒体は、毛管作用によって流体をチャネルを通して輸送することができ、チャネルは、それだけで毛管作用を誘発することができる特定のサイズ又は形状を有する必要はない。しかしながら、チャネルが小さければ小さいほど、申し分のない測定を行うために必要となる試料は少なくなる。
【0124】
本明細書中に記載されたフォトリソグラフィ法を用いて、幅100μmのチャネルが達成されている。最小構成要件サイズはフォトリソグラフィ分解能によって理論上制限される一方、実験に基づくいくつかのパラメータが、この方法で実際に形成することができる構成要件のサイズを制限する。例えば紙は不透明であり比較的厚いので、典型的には、紙全体にわたるようにフォトレジストを露光するためには比較的長い露光時間を必要とする。このことはリソグラフィ分解能を多少低減する。それにもかかわらず、100μmよりも小さい構成要件サイズを容易に達成することができ、また著しく小さな構成要件(例えば100nm)が理論上可能である。
【0125】
「卓上(ベンチトップ)」又は「研究室」フォトリソグラフィを用いて多孔質親水性媒体中の疎水性バリアを設ける手順は、上記クリーンルーム・フォトリソグラフィと同じ原理の多くを用いるが、しかし一般により低廉であり、しかもよりシンプルに実施することができる。
【0126】
図12は、いくつかの実施態様による、多孔質親水性媒体中に疎水性バリアを設けるためのプロセスの一例を示している。先ず、多孔質親水性媒体を用意する(1210)。紙は、リソグラフィ工程を生き延びるのに十分な厚さ及び強度を有するように、そしてまた、後続の所期用途と適合するように選択される。コストを軽減するために、1つの例の場合、親水性媒体として10cm x 10cmのペーパータオル片を使用する。
【0127】
次に、紙をフォトレジスト中に浸し、そして乾燥させる(1220)。1つの例において、ガラス試験管の側面を使用して、1mLのSCフォトレジストをペーパータオル上に広げることにより、ペーパータオルの厚さを通してレジストのほぼ均一な被膜を得る。例えばペーパータオルで吸い取ることにより、過剰のレジストを除去し、そして次いでフォトレジストで浸された紙を25℃で10分間にわたって空気乾燥させる。フォトレジストの選択肢は、図11を参照して説明したものと概ね同じである。SCフォトレジストは典型的には、多くの他の種類の商業的に入手可能なフォトレジストよりも低廉であり、ひいては費用重視の用途において有用であり得る。自家製のフォトレジストも同様に好適である。
【0128】
次に、フォトレジストで浸された紙をフォトマスクの下に整合し、そしてフォトレジストを適切に反応させるように選択された波長のUV光に当てる(1230)。1つのプロセス例において、卓上リソグラフィのためのマスクは、デスクトップ・インジェット・プリンタ(HP Photosmart C3100)を使用して透明シート上にマスクを印刷することにより製造される。この例において、2つのガラス片間にマスクと紙とを締め付けることにより紙の上側に保持されたフォトマスクを通して、約3.5分間にわたって紙よりも12cm上方で保持された長波UVランプ、B 100 AP、UVP、ほぼ20mW/cm2からのUV光に紙を当てる。別の低廉なUV光源は、UV EPROM(消去可能プログラム可能リード・オンリ・メモリ)チップ消去ランプである。
【0129】
次に、フォトレジストを現像する(1240)。1つの例において、紙をキシレン(3分間)、及びジクロロメタン(3x3分)中に浸すことにより、重合されていないフォトレジストを除去した。現像過程は、紙(又はその他の多孔質媒体)内のフォトレジストから形成された疎水性バリアを残す。図12の実施態様におけるように、紙を任意には酸素プラズマで処理し、例えば紙を10秒間にわたって600torrで酸素プラズマに当てる(SPI Plasma-Prep II, Structure Probe, Inc)ことにより、その親水性を調節することができる。
【0130】
結果として生じたパターン化紙を次いで切り取り、そして上で詳細に説明したように、誘導体化することができる。
【0131】
他の実施態様の場合、ソフト・リソグラフィ/マイクロコンタクト印刷/スタンピングによって、多孔質親水性媒体中に疎水性バリアが設けられる。図13は、疎水性バリアを提供するためにソフト・リソグラフィを使用する方法の一例を示している。先ずスタンプを用意する(1310)。1つの例において、スタンプはプラスチックから形成され(Costar 384-ウェル・マイクロプレート、Corning)、また別の実施態様において、Rubber Stamps Netによって、3x3インチのスタンプに対して約$25のコストのゴムスタンプが注文製作され、これらのゴムスタンプは約0.35mm幅の構成要件に制限される。他の最小構成要件サイズが可能であると考えられ、これらのサイズは、用いられる製造技術及び材料によって制限される。
【0132】
次に、疎水性ポリマーをスタンプ上に塗ることにより、スタンプに「インク着け」する(1320)。1つの例において、白毛フラット絵筆#4を使用して、パターンの構成要件上に薄層状にポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(sylgard 184, 10:1エラストマー・ベース:硬化剤、3時間にわたって室温で硬化)を広げた。
【0133】
次に、ポリマーをインク着けされたスタンプを多孔質親水性媒体に押しつける(1330)。1つの例において、PDMSを塗布されたスタンプを10 x 10cmの紙片、Whatman No.1 濾紙と接触させ、ほぼ20秒間にわたって手で静かに押しつけ、次いでスタンプを取り外した。
【0134】
続いてポリマーを処理し、例えば硬化させた(1340)。上記例を続けて、紙内のPDMSを、使用前に室温で8時間にわたって硬化させた。
【0135】
クリーンルーム・リソグラフィ、研究室/卓上リソグラフィ、及びソフト・リソグラフィに関して上述した手順例を用いて形成されたパターン化済の構成要件の寸法を、立体顕微鏡(Leica MZ12)に取り付けられたNikonデジタルカメラDXM1200を使用してパターンを撮像し、Microsoft Powerpointにおいて画像を拡大し、画像を印刷し、そして定規を用いて構成要件を測定することにより、定量化した。図14A及び14Bは、それぞれクリーンルーム・リソグラフィ及び研究室リソグラフィを用いて形成された構成要件の画像である。表3は、画像から行われた測定をまとめたものであり、表3の報告値は倍率に対して較正されており、実寸法を表しており、これらの値はまた、パターン全体にわたって分布された位置で10回測定された同じパターンの3つのレプリカの平均である。
【表3】
【0136】
例11を参照しながら上述したクリーンルーム・リソグラフィで疎水性バリアをパターン化するための手順例は、比較的良好に画定された構成要件を生成し、これらの構成要件は、いくつかの実施態様の場合、図16Aに示されているように、親水性チャネルに関しては幅約150μm(実験値:158±13μm)という小ささで、そして疎水性壁に関しては幅約300μm(実験値:297±27μm)という小ささで形成することができる。一般に、疎水性壁は約150μmよりも小さく形成することもできるが、薄い壁は、親水性チャネル外部での水の拡散を制限するときの効率が、厚い壁よりも低い。
【0137】
クリーンルーム・リソグラフィは高品質の構成要件を生成しはするものの、スループット、費用、及びパターンを形成するのに必要な工程数に関して、卓上リソグラフィ及び卓上スタンピングよりも効率が多少低い。例えば、1プロセス例において、クリーンルーム・リソグラフィは、7.5cm濾紙片上に3.6 x 3.6mmの正方形から成る5 x 5cmの格子を形成するために、約0.5gのSU−8 2010フォトレジストを使用し(図15Aに示す)、この量のフォトレジストだけでほぼ$0.26かかる。図15Aに示された格子を製造するために用いられる製法例は、装置が完成して使用の準備ができる前に9つの工程を必要とする。
【0138】
クリーンルーム内のリソグラフィはまた、設備が典型的には特定の基材最大サイズに合わせて設計されているという実際的な制限を有している。例えばこの一例としての過程中に使用される設備は、直径7.5cmを上回る円形の紙片をパターン化するためには使用することができない。なぜならばマスク・アライナがより大きい基材に対応することができないからである。マスク・アライナがより大きければ、より大きい基材のパターン化が可能になるはずである。
【0139】
卓上リソグラフィは、構成要件のサイズがミリメートルである場合、マスクから紙片へ構成要件を転写することに関して、クリーンルーム・リソグラフィと同程度の忠実度を有している。例えば、表3に示すように、1mmの親水性チャネル及び疎水性壁を有するマスクは、チャネルが0.99±0.03mm幅であり、壁が1.02±0.03mm幅である紙内パターンをもたらす。
【0140】
しかしながら、卓上リソグラフィは、パターン全体にわたって等しいサイズの構成要件を提供するときに、クリーンルーム・リソグラフィよりも一貫性が若干低いことがある。例えば、いくつかの実施態様の場合、線幅の変動率は、卓上リソグラフィにおいて、クリーンルーム・リソグラフィよりも50%高い。卓上リソグラフィは、比較的狭い線幅のパターンを製造するときに、クリーンルーム・リソグラフィよりも効率が低いこともある。例えば、上記プロセス例を用いると、図16Bに示されているように、卓上リソグラフィを用いて漏れずに形成された最も狭い構成要件は、幅約100μm(実験値106±23μm)(親水性チャネル)、及び幅約150μm(実験値245±31μm)(疎水性壁)であった。
【0141】
しかし、卓上リソグラフィは、クリーンルーム・リソグラフィよりも著しく低廉であり、高スループットである。卓上リソグラフィを用いる一例としてのプロセスにおいて、3.6 x 3.6mmの正方形から成る10.7 x 7.2cmの格子を形成するために、0.5gのSCフォトレジストを使用した(図15B)。このコストはほぼ$0.05である(クリーンルーム・リソグラフィを用いた場合よりも$0.21だけ安い)。
【0142】
同じレジストはクリーンルーム法でも使用することができるので、卓上法の1つの有用な特徴は、レジストのコストにあるのではなく、設備のコスト、及びプロセスに対するスループットにある。例えば、いくつかのプロセス例では、卓上で同じ5 x 5cm格子を形成するために必要となる工程は、6つであり(クリーンルーム法よりも3つ少ない)、クリーンルーム内で格子を形成するために必要な時間よりもほぼ10分速く達成することができる。
【0143】
いくつかの実施態様の場合、スタンピング法は、クリーンルーム又は卓上のフォトリソグラフィよりも簡単且つ低廉な紙パターン化法ではあるが、しかし若干低品質のパターンを産出することがある。転写過程に加えて、スタンプ自体の品質が、結果として生じるパターンの品質に影響を及ぼすことがある。上記プロセス例では、商業的に購入したスタンプを使用したが、スタンプは研究室で、当業者に知られた技術を用いて(フォトリソグラフィによって形成された)マスターをレプリカ成形することにより、例えばポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)を使用して製造することもできる。
【0144】
いくつかの実施態様の場合、スタンピング法は、フォトリソグラフィ法よりも著しく低廉である。1つのプロセス例において、3.6 x 3.6mmの正方形から成る10.7 x 7.2cmの格子(図15C)を、0.1gのPDMSしか使用せずに約120秒で形成することができる(このコストはほぼ$0.01であり、卓上リソグラフィ法又はクリーンルーム・リソグラフィ法の例によって同じパターンを形成するために使用されるポリマーよりも、それぞれ$0.25及び$0.04だけ安い)。
【0145】
スタンピング法の実施態様はまた、種々様々な材料を許す。この技術は、例えばPDMS、パラフィンワックス(融点58〜60℃)、及びNorland光学接着剤(NOA)、UV光で硬化することができるウレタン系接着剤(Norland Products, Inc.)を使用して、パターンを生成することに関して実証されている。
【0146】
表4は、種々の実施態様例に基づいて、疎水性バリアで多孔質親水性媒体をパターン化するための推定コストを比較する情報を含む。比較的高分解能の方法(クリーンルーム・フォトリソグラフィ及び卓上フォトリソグラフィ)のコストは、例えば、比較的低廉なネガティブ・フォトレジスト(例えばSCフォトレジスト、Arch Chemicals, Inc.)を使用することによって、及び/又は、(例えば印刷サービスからマスクを購入する代わりに)インクジェット・プリンタを使用してマスクを印刷することによって、及び/又は、標準的な100W水銀灯(例えばBlakレイ長波UVランプB100 AP、ほぼ$514)を使用してフォトレジストを露光することにより、軽減することができる。比較的低い分解能(幅広)の構成要件を有する単一のパターンの複数のコピーを製造するために、ほとんどあらゆる所望のデザインで供給元から購入することができるスタンプ(ゴム又はプラスチック)を使用することができる(ゴムスタンプはほぼ$25である)。いくつかの実施態様の場合、疎水性ポリマーとして、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が使用される。また種々の多孔質媒体、例えばKimberly-Clark硬質ロール・ペーパー・タオルとWhatman No.1濾紙とを比較するが、他の紙を用いても同様の結果が得られると思われる。Kimberly-Clarkペーパー・タオルは、流体を良好に運ぶ、入手可能な比較的低廉な紙源である。
【表4】
【0147】
多孔質親水性媒体内に疎水性バリアを形成するために、他の方法を用いることもできる。例えば、パターンに従って媒体に液体を被着することができる。液体はそれ自体疎水性であってよく、或いは、乾くと又は更なる処理を施すと疎水性固形物に変化することが可能であってもよい。例えば、液体は、商業的に入手可能な防水処理用溶液であってよい。この溶液は親水性であり、従って紙を湿潤するが、しかし乾くと疎水性固形物を形成する。又は液体は、重合すると疎水性固形物を形成するモノマーであってもよい。
【0148】
液体は、多くの種々異なる方法で、パターンに従って被着されてよい。例えば、液体は、例えばエアブラシによって噴霧されるか、又はステンシルを介して堆積されてよい。或いは、例えば液体は、良く知られている「シルクスクリーン」技術を用いて堆積されてもよい。或いは、リソグラフィによりパターン化された紙片を、別の紙片のための「スタンプ」として使用することができる。例えば、パターン化紙片を、例えば上記のように、リソグラフィでパターン化することにより、疎水性領域と親水性領域とを形成することができる。次いで、パターン化された紙を、指定された紙部分だけ、典型的には親水性部分だけが溶液によって湿潤されるように、液体で浸すことができる。次いで、パターン化され浸漬された紙を別の(パターン化されていない)紙片と接触させる。この別の紙片内には液体がしみこみ、ひいてはパターンが転写される。インクジェット印刷は、パターンに従って紙上に液体を堆積するために用いることができる別の方法である。或いは、紙上にパターンを「描く」ためにプロッターを使用することもできる。上記実施態様の共通の特徴は、パターン化領域を横切る横方向流体流に対するバリアを形成するために、紙を実質的に透過するのに十分な液体を紙上に堆積することが必要である点である。
【0149】
パターンに従って紙に液体を被着するときに分解能サイズを制限し得る1つの要因は、液体が紙の厚さを通ってしみこむのに伴って横方向にも流れ、ひいては所期構成要件のエッジをぼやけさせることである。この問題は、紙の底面に真空を印加することにより或る程度軽減することができる。このように真空を印加すると、紙の厚さを通る液体の輸送速度を高くすることができ、ひいては液体が横方向に広がり得る時間を制限する。
【0150】
ワックスは、クロマトグラフィ紙内部に疎水性チャネルを形成するために潜在的に使用することができる、フォトレジストに対する1つの低廉な、容易に利用可能な代替物である。例えば、ワックスペーパーのワックスは、パターンに従ってクロマトグラフィ紙に転写することができる。いくつかの実施態様の場合、これは、2片のワックスペーパーの間に、パターン化されるべき紙をサンドイッチすることにより行われ、所望のパターンが、加熱された器具を使用してワックスペーパー上に「書き込まれる」。この方法は、2片のワックスペーパーから少量のワックスを紙の両側に転写する。次いで、紙を熱板上で加熱することにより、紙の厚さを通してワックスを溶融させ、疎水性バリアを形成することができる。又は、例えば、ワックス中に浸された糸を、パターンに従ってクロマトグラフィ紙に縫い通し、そして続いて、ワックスで紙が局所的に飽和するように、ワックスを溶融させることもできる。
【0151】
言うまでもなく、本発明の範囲が上記実施態様に限定されることはなく、また本発明は、記載されているものの改変形及び改善形を含む。添付の特許請求の範囲に、他の実施態様が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイ装置であって:
多孔質親水性媒体;
該多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して該多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリア;及び
該アッセイ領域内のアッセイ試薬
を含む、アッセイ装置。
【請求項2】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部のチャネル領域の境界を画定し、該チャネル領域がアッセイ領域に流体連通されている、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項3】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部の試料堆積領域の境界を画定し、チャネルが、試料堆積領域とアッセイ領域との間に多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する、請求項2に記載のアッセイ装置。
【請求項4】
前記バリアがさらに、複数のアッセイ領域の境界を画定する、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項5】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部の複数のチャネル領域の境界を画定し、そしてさらに、試料堆積領域の境界を画定し、各チャネルが試料堆積領域と複数のアッセイ領域のうちの対応アッセイ領域との間に多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する、請求項4に記載のアッセイ装置。
【請求項6】
前記アッセイ領域のうちの少なくともいくつかのアッセイ領域内にアッセイ試薬をさらに含む、請求項4に記載のアッセイ装置。
【請求項7】
前記バリアが、複数のアッセイ領域のうちのアッセイ領域を互いに物理的に分離する、請求項4に記載のアッセイ装置。
【請求項8】
前記アッセイ試薬が、アッセイ領域内で多孔質親水性媒体に共有結合されている、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項9】
前記アッセイ試薬が、アッセイ領域内で多孔質親水性媒体に非共有結合されている、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項10】
前記アッセイ試薬が、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項11】
前記アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項12】
前記フォトレジストがネガティブ・フォトレジストを含む、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項13】
前記多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項14】
前記多孔質親水性媒体が可撓性である、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項15】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が、約5cm〜約100μmである、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項16】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が、約300μm〜約100μmである、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項17】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が、約300μm未満である、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項18】
前記チャネルの少なくとも1つの横方向寸法が、約750μm〜約100μmである、請求項2に記載のアッセイ装置。
【請求項19】
前記チャネルの少なくとも1つの横方向寸法が、約250μm〜約100μmである、請求項2に記載のアッセイ装置。
【請求項20】
前記チャネルの少なくとも1つの横方向寸法が、約250μm未満である、請求項2に記載のアッセイ装置。
【請求項21】
前記アッセイ領域のデジタル画像を得ることができる撮像装置をさらに含む、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項22】
前記撮像装置と通信するプロセッサをさらに含み、該プロセッサは、アッセイ領域のデジタル画像に基づいて、該アッセイ領域内の被分析物に関する情報を得ることができる、請求項21に記載のアッセイ装置。
【請求項23】
前記プロセッサが、アッセイ領域のデジタル画像内の強度に基づいて、被分析物に関する情報を得ることができる、請求項22に記載のアッセイ装置。
【請求項24】
前記多孔質親水性媒体上の層をさらに含み、該層が少なくとも1つの開口を含む、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項25】
前記開口が、アッセイ領域への流体通路の少なくとも一部を形成する、請求項24に記載のアッセイ装置。
【請求項26】
アッセイ装置であって:
多孔質親水性媒体;
該多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を完全に画定する、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過し、そして約1mm〜約100μmの幅を有する流体不浸透性バリア;及び
該アッセイ領域内のアッセイ試薬
を含む、アッセイ装置。
【請求項27】
前記アッセイ試薬が、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項28】
前記アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項29】
前記バリアが、フォトレジスト及び硬化性ポリマーのうちの一方を含む、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項30】
前記多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項31】
前記バリアの少なくとも1つの横方向寸法が、約300μm〜約100μmである、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項32】
前記バリアの少なくとも1つの横方向寸法が、約300μm未満である、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項33】
多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過する複数の流体不浸透性バリアであって、各バリアが約1mm〜約100μmの幅を有しており、各バリアがそれぞれ多孔質親水性媒体内部の対応アッセイ領域の境界を完全に画定する流体不浸透性バリア;及び各アッセイ領域内のアッセイ試薬をさらに含む、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項34】
アッセイ装置であって:
多孔質親水性媒体;
該多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して所定の長さと当該バリアの長さに沿って約10%未満だけ変化する幅とを有する流体不浸透性バリア;及び
該アッセイ領域内のアッセイ試薬
を含む、アッセイ装置。
【請求項35】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部のチャネル領域の境界を画定し、該チャネル領域がアッセイ領域に流体連通されている、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項36】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部の試料堆積領域の境界を画定し、チャネルが該試料堆積領域とアッセイ領域との間に多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する、請求項35に記載のアッセイ装置。
【請求項37】
前記アッセイ試薬が、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項38】
前記アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの1つの存在に対して反応するように選択される、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項39】
前記バリアが、フォトレジスト及び硬化性ポリマーのうちの一方を含む、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項40】
前記多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項41】
前記バリアの幅が約300μm未満である、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項42】
前記バリアの幅が、バリアの長さに沿って約5%未満だけ変化する、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項43】
前記チャネル領域の幅が、約750μm〜約100μmである、請求項35に記載のアッセイ装置。
【請求項44】
前記チャネル領域が、所定の長さと該チャネルの長さに沿って約10%未満だけ変化する幅とを有する、請求項35に記載のアッセイ装置。
【請求項45】
前記チャネル領域が、所定の長さと該チャネルの長さに沿って約5%未満だけ変化する幅とを有する、請求項35に記載のアッセイ装置。
【請求項46】
装置の製造方法であって、該方法が:
多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ;
該飽和済媒体を所定の光パターンに当て;
該所定の光パターンに基づいて該媒体の領域からフォトレジストを除去することにより、該領域の境界を形成する残留フォトレジストから成るバリアを画定し、該所定の光パターンは、該バリアが該領域内のアッセイ領域を画定するように選択され;そして
該アッセイ領域内にアッセイ試薬を用意する
ことを含む、装置の製造方法。
【請求項47】
前記バリアが実質的に流体不浸透性である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記所定の光パターンを、バリアが領域を完全に包囲するように選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記所定の光パターンを、バリアが領域の第1部分の境界を形成するように選択することを含み、多孔質親水性媒体のエッジが領域の第2部分の境界を形成する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記試薬を用意する工程が、試薬をアッセイ領域に共有結合することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記試薬を用意する工程が、試薬をアッセイ領域に非共有結合することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記アッセイ領域が液体の存在における試薬の輸送特性に基づく形状を有するように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記試薬が、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記バリアが領域内のチャネル領域を画定するように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記チャネル領域の少なくとも1つの横方向寸法が、約750μm〜約100μmである、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記バリアが領域内の試料堆積領域を画定するように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
前記多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させる工程が、溶媒中のフォトレジストの溶液を媒体に被着し、続いて溶媒を実質的に蒸発させることを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
前記飽和済媒体を所定の光パターンに当てる工程が、領域に光を照射し、且つバリアには光を実質的に照射しないことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
前記飽和済媒体を所定の光パターンに当てる工程が、バリアに光を照射し、且つ領域には光を実質的に照射しないことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
前記フォトレジストを除去する工程が、所定の光パターンに基づいて媒体の複数の領域からフォトレジストを除去することにより、対応領域の境界を形成する残留フォトレジストから成る複数のバリアを画定することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
さらに:
第2多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ;
該飽和済媒体を所定の光パターンに当て;
該所定の光パターンに基づいて該第2媒体の領域からフォトレジストを除去することにより、該領域の境界を形成する残留フォトレジストから成るバリアを画定し;
該第2媒体から成るバリアと、前記第1媒体から成るバリアとを実質的に整合し;そして
該第1媒体を該第2媒体に接着する
ことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
前記第1媒体の領域内に、標的被分析物に対して反応するように選択された試薬を被着することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記試薬と標的被分析物との反応を色指示するのを可能にするように選択された標識付き抗体及び標識付きタンパク質のうちの一方を、第2媒体の領域内に用意することをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記多孔質親水性媒体上の層をさらに用意し、該層がバリアの位置に基づいて整合された少なくとも1つの開口を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項66】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が約5cm〜約100μmとなるように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項67】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が約250μm未満となるように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項68】
前記多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項69】
さらに:
前記所定の光パターンに基づいて媒体の複数の領域からフォトレジストを除去することにより、対応する複数の領域の境界を形成する残留フォトレジストから成る複数のバリアを画定し、該所定の光パターンは、該複数のバリアが、該領域内の対応する複数のアッセイ領域を画定するように選択され;そして
該アッセイ領域のうちの少なくともいくつかにアッセイ試薬を用意する
ことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項70】
装置の製造方法であって、該方法が:
所定のパターンのスタンプに硬化性ポリマーを塗布し;
ポリマー塗布済の該スタンプを、所定の厚さを有する多孔質親水性媒体上に押しつけ、該硬化性ポリマーは該所定のパターンに従って、該媒体の厚さを実質的に透過し;
該媒体内にアッセイ領域を画定する、該媒体内に埋め込まれた流体不浸透性バリアを形成するように、該硬化性ポリマーを硬化させ;そして
該アッセイ領域内に試薬を用意する
ことを含む、装置の製造方法。
【請求項71】
前記硬化性ポリマーがポリ(ジメチル−シロキサン)(PDMS)を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記バリアが領域を完全に包囲するように所定のパターンを選択することを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
液体試料中の被分析物の存在を割り出すためのアッセイを実施する方法であって、該方法が:
多孔質親水性媒体と、該多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して該多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリアと、該被分析物の存在に対する可視的な応答を可能にするように選択された、該アッセイ領域内のアッセイ試薬と、を含むアッセイ装置上に液体試料を堆積し;
該アッセイ領域の画像を得;そして
該アッセイ領域の画像に基づいて、該液体中の被分析物の存在を割り出す
ことを含む、
液体試料中の被分析物の存在を割り出すためのアッセイを実施する方法。
【請求項74】
前記液体中の被分析物の存在を割り出す工程が、アッセイ領域の画像の少なくとも一部の平均強度を得、そして該平均強度に基づいて液体中の被分析物の存在を割り出すことを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記アッセイ領域の画像を得ることが、カメラ付き電話機、デジタルカメラ、及びスキャナーのうちの1つを用いて該アッセイ領域を撮像することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記アッセイ領域の画像に基づいて被分析物の存在を割り出すことが、該画像を遠隔研究室に伝送し、そして液体中の被分析物の存在に関して、該遠隔研究室から情報を得ることを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記アッセイ領域の画像を得ることが、カメラ付き電話機を用いて該アッセイ領域を撮像することを含み、そして該アッセイ領域の画像に基づいて被分析物の存在を割り出すことが、カメラ付き電話機を介して遠隔研究室に該画像を伝送することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項1】
アッセイ装置であって:
多孔質親水性媒体;
該多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して該多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリア;及び
該アッセイ領域内のアッセイ試薬
を含む、アッセイ装置。
【請求項2】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部のチャネル領域の境界を画定し、該チャネル領域がアッセイ領域に流体連通されている、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項3】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部の試料堆積領域の境界を画定し、チャネルが、試料堆積領域とアッセイ領域との間に多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する、請求項2に記載のアッセイ装置。
【請求項4】
前記バリアがさらに、複数のアッセイ領域の境界を画定する、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項5】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部の複数のチャネル領域の境界を画定し、そしてさらに、試料堆積領域の境界を画定し、各チャネルが試料堆積領域と複数のアッセイ領域のうちの対応アッセイ領域との間に多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する、請求項4に記載のアッセイ装置。
【請求項6】
前記アッセイ領域のうちの少なくともいくつかのアッセイ領域内にアッセイ試薬をさらに含む、請求項4に記載のアッセイ装置。
【請求項7】
前記バリアが、複数のアッセイ領域のうちのアッセイ領域を互いに物理的に分離する、請求項4に記載のアッセイ装置。
【請求項8】
前記アッセイ試薬が、アッセイ領域内で多孔質親水性媒体に共有結合されている、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項9】
前記アッセイ試薬が、アッセイ領域内で多孔質親水性媒体に非共有結合されている、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項10】
前記アッセイ試薬が、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項11】
前記アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項12】
前記フォトレジストがネガティブ・フォトレジストを含む、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項13】
前記多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項14】
前記多孔質親水性媒体が可撓性である、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項15】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が、約5cm〜約100μmである、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項16】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が、約300μm〜約100μmである、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項17】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が、約300μm未満である、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項18】
前記チャネルの少なくとも1つの横方向寸法が、約750μm〜約100μmである、請求項2に記載のアッセイ装置。
【請求項19】
前記チャネルの少なくとも1つの横方向寸法が、約250μm〜約100μmである、請求項2に記載のアッセイ装置。
【請求項20】
前記チャネルの少なくとも1つの横方向寸法が、約250μm未満である、請求項2に記載のアッセイ装置。
【請求項21】
前記アッセイ領域のデジタル画像を得ることができる撮像装置をさらに含む、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項22】
前記撮像装置と通信するプロセッサをさらに含み、該プロセッサは、アッセイ領域のデジタル画像に基づいて、該アッセイ領域内の被分析物に関する情報を得ることができる、請求項21に記載のアッセイ装置。
【請求項23】
前記プロセッサが、アッセイ領域のデジタル画像内の強度に基づいて、被分析物に関する情報を得ることができる、請求項22に記載のアッセイ装置。
【請求項24】
前記多孔質親水性媒体上の層をさらに含み、該層が少なくとも1つの開口を含む、請求項1に記載のアッセイ装置。
【請求項25】
前記開口が、アッセイ領域への流体通路の少なくとも一部を形成する、請求項24に記載のアッセイ装置。
【請求項26】
アッセイ装置であって:
多孔質親水性媒体;
該多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を完全に画定する、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過し、そして約1mm〜約100μmの幅を有する流体不浸透性バリア;及び
該アッセイ領域内のアッセイ試薬
を含む、アッセイ装置。
【請求項27】
前記アッセイ試薬が、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項28】
前記アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項29】
前記バリアが、フォトレジスト及び硬化性ポリマーのうちの一方を含む、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項30】
前記多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項31】
前記バリアの少なくとも1つの横方向寸法が、約300μm〜約100μmである、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項32】
前記バリアの少なくとも1つの横方向寸法が、約300μm未満である、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項33】
多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過する複数の流体不浸透性バリアであって、各バリアが約1mm〜約100μmの幅を有しており、各バリアがそれぞれ多孔質親水性媒体内部の対応アッセイ領域の境界を完全に画定する流体不浸透性バリア;及び各アッセイ領域内のアッセイ試薬をさらに含む、請求項26に記載のアッセイ装置。
【請求項34】
アッセイ装置であって:
多孔質親水性媒体;
該多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して所定の長さと当該バリアの長さに沿って約10%未満だけ変化する幅とを有する流体不浸透性バリア;及び
該アッセイ領域内のアッセイ試薬
を含む、アッセイ装置。
【請求項35】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部のチャネル領域の境界を画定し、該チャネル領域がアッセイ領域に流体連通されている、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項36】
前記バリアがさらに、多孔質親水性媒体内部の試料堆積領域の境界を画定し、チャネルが該試料堆積領域とアッセイ領域との間に多孔質親水性媒体内部の流体通路を提供する、請求項35に記載のアッセイ装置。
【請求項37】
前記アッセイ試薬が、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項38】
前記アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの1つの存在に対して反応するように選択される、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項39】
前記バリアが、フォトレジスト及び硬化性ポリマーのうちの一方を含む、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項40】
前記多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項41】
前記バリアの幅が約300μm未満である、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項42】
前記バリアの幅が、バリアの長さに沿って約5%未満だけ変化する、請求項34に記載のアッセイ装置。
【請求項43】
前記チャネル領域の幅が、約750μm〜約100μmである、請求項35に記載のアッセイ装置。
【請求項44】
前記チャネル領域が、所定の長さと該チャネルの長さに沿って約10%未満だけ変化する幅とを有する、請求項35に記載のアッセイ装置。
【請求項45】
前記チャネル領域が、所定の長さと該チャネルの長さに沿って約5%未満だけ変化する幅とを有する、請求項35に記載のアッセイ装置。
【請求項46】
装置の製造方法であって、該方法が:
多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ;
該飽和済媒体を所定の光パターンに当て;
該所定の光パターンに基づいて該媒体の領域からフォトレジストを除去することにより、該領域の境界を形成する残留フォトレジストから成るバリアを画定し、該所定の光パターンは、該バリアが該領域内のアッセイ領域を画定するように選択され;そして
該アッセイ領域内にアッセイ試薬を用意する
ことを含む、装置の製造方法。
【請求項47】
前記バリアが実質的に流体不浸透性である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記所定の光パターンを、バリアが領域を完全に包囲するように選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記所定の光パターンを、バリアが領域の第1部分の境界を形成するように選択することを含み、多孔質親水性媒体のエッジが領域の第2部分の境界を形成する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記試薬を用意する工程が、試薬をアッセイ領域に共有結合することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記試薬を用意する工程が、試薬をアッセイ領域に非共有結合することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記アッセイ領域が液体の存在における試薬の輸送特性に基づく形状を有するように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記試薬が、被分析物の存在を可視的に指示するのを可能にするように選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記アッセイ試薬が、グルコース、タンパク質、脂肪、血管内皮増殖因子、インスリン様成長因子I、抗体、及びサイトカインのうちの少なくとも1つの存在に対して反応するように選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記バリアが領域内のチャネル領域を画定するように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記チャネル領域の少なくとも1つの横方向寸法が、約750μm〜約100μmである、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記バリアが領域内の試料堆積領域を画定するように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
前記多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させる工程が、溶媒中のフォトレジストの溶液を媒体に被着し、続いて溶媒を実質的に蒸発させることを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
前記飽和済媒体を所定の光パターンに当てる工程が、領域に光を照射し、且つバリアには光を実質的に照射しないことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
前記飽和済媒体を所定の光パターンに当てる工程が、バリアに光を照射し、且つ領域には光を実質的に照射しないことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
前記フォトレジストを除去する工程が、所定の光パターンに基づいて媒体の複数の領域からフォトレジストを除去することにより、対応領域の境界を形成する残留フォトレジストから成る複数のバリアを画定することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
さらに:
第2多孔質親水性媒体をフォトレジストで飽和させ;
該飽和済媒体を所定の光パターンに当て;
該所定の光パターンに基づいて該第2媒体の領域からフォトレジストを除去することにより、該領域の境界を形成する残留フォトレジストから成るバリアを画定し;
該第2媒体から成るバリアと、前記第1媒体から成るバリアとを実質的に整合し;そして
該第1媒体を該第2媒体に接着する
ことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
前記第1媒体の領域内に、標的被分析物に対して反応するように選択された試薬を被着することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記試薬と標的被分析物との反応を色指示するのを可能にするように選択された標識付き抗体及び標識付きタンパク質のうちの一方を、第2媒体の領域内に用意することをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記多孔質親水性媒体上の層をさらに用意し、該層がバリアの位置に基づいて整合された少なくとも1つの開口を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項66】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が約5cm〜約100μmとなるように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項67】
前記バリアの少なくとも1つの寸法が約250μm未満となるように所定の光パターンを選択することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項68】
前記多孔質親水性媒体が、ニトロセルロースアセテート、セルロースアセテート、セルロース紙、濾紙、ティッシュペーパー、筆記用紙、ペーパータオル、布地、及び多孔質ポリマーフィルムのうちの1つを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項69】
さらに:
前記所定の光パターンに基づいて媒体の複数の領域からフォトレジストを除去することにより、対応する複数の領域の境界を形成する残留フォトレジストから成る複数のバリアを画定し、該所定の光パターンは、該複数のバリアが、該領域内の対応する複数のアッセイ領域を画定するように選択され;そして
該アッセイ領域のうちの少なくともいくつかにアッセイ試薬を用意する
ことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項70】
装置の製造方法であって、該方法が:
所定のパターンのスタンプに硬化性ポリマーを塗布し;
ポリマー塗布済の該スタンプを、所定の厚さを有する多孔質親水性媒体上に押しつけ、該硬化性ポリマーは該所定のパターンに従って、該媒体の厚さを実質的に透過し;
該媒体内にアッセイ領域を画定する、該媒体内に埋め込まれた流体不浸透性バリアを形成するように、該硬化性ポリマーを硬化させ;そして
該アッセイ領域内に試薬を用意する
ことを含む、装置の製造方法。
【請求項71】
前記硬化性ポリマーがポリ(ジメチル−シロキサン)(PDMS)を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記バリアが領域を完全に包囲するように所定のパターンを選択することを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
液体試料中の被分析物の存在を割り出すためのアッセイを実施する方法であって、該方法が:
多孔質親水性媒体と、該多孔質親水性媒体の厚さを実質的に透過して該多孔質親水性媒体内部のアッセイ領域の境界を画定する、重合フォトレジストを含む流体不浸透性バリアと、該被分析物の存在に対する可視的な応答を可能にするように選択された、該アッセイ領域内のアッセイ試薬と、を含むアッセイ装置上に液体試料を堆積し;
該アッセイ領域の画像を得;そして
該アッセイ領域の画像に基づいて、該液体中の被分析物の存在を割り出す
ことを含む、
液体試料中の被分析物の存在を割り出すためのアッセイを実施する方法。
【請求項74】
前記液体中の被分析物の存在を割り出す工程が、アッセイ領域の画像の少なくとも一部の平均強度を得、そして該平均強度に基づいて液体中の被分析物の存在を割り出すことを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記アッセイ領域の画像を得ることが、カメラ付き電話機、デジタルカメラ、及びスキャナーのうちの1つを用いて該アッセイ領域を撮像することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記アッセイ領域の画像に基づいて被分析物の存在を割り出すことが、該画像を遠隔研究室に伝送し、そして液体中の被分析物の存在に関して、該遠隔研究室から情報を得ることを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記アッセイ領域の画像を得ることが、カメラ付き電話機を用いて該アッセイ領域を撮像することを含み、そして該アッセイ領域の画像に基づいて被分析物の存在を割り出すことが、カメラ付き電話機を介して遠隔研究室に該画像を伝送することを含む、請求項73に記載の方法。
【図1】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A)】
【図17B)】
【図17C)】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図21E】
【図21F】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A)】
【図17B)】
【図17C)】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図21E】
【図21F】
【公表番号】特表2010−515877(P2010−515877A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533543(P2009−533543)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/081848
【国際公開番号】WO2008/049083
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/081848
【国際公開番号】WO2008/049083
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
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