説明

パターン描画装置

【課題】マスクを装置の外部に搬送することなく検査及び収納し、それにより、搬送に伴うマスクの汚れや損傷を防止することができるパターン描画装置を提供する。
【解決手段】パターン描画装置1は、マスク検査部60、マスク洗浄部70、およびストッカー部50を装置内に備えるとともに、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32g、マスク検査部60、マスク洗浄部70、およびストッカー部50の間でマスクMを搬送するマスク搬送機構40を備える。このため、マスクMをパターン描画装置1の外部に搬送することなく検査、洗浄、および収納することができ、これにより、搬送に伴うマスクMの汚れや損傷を防止することができる。また、パターン描画装置1の外部にマスクMの搬送経路を確保する必要がないため、工程全体の作業スペースを低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用ガラス基板、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、半導体基板、磁気/光ディスク用基板等の基板の表面にパターンを描画するパターン描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の製造工程では、感光材料が塗布された基板の表面に光を照射することにより、基板の表面に所定のパターンを描画するパターン描画装置が使用されている。パターン描画装置は、基板を載置するステージと、ステージ上に載置された基板の上面に光を照射する複数の光学ヘッドとを備え、ステージとともに基板を水平方向に移動させつつ、複数の光学ヘッドから光を照射することにより、基板の上面に所定のパターンを描画する。
【0003】
パターン描画装置の各光学ヘッドには、描画すべきパターンに応じた透光部と遮光部とを有するガラス板であるマスクが搭載されている。パターン描画装置は、光源から出射された光を、各光学ヘッドに搭載されたマスクを介して基板の上面に照射することにより、マスク上のパターンを基板の上面に投影する。
【0004】
このような従来のパターン描画装置については、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−145745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のパターン描画装置において、各光学ヘッドに搭載されるマスクは、描画すべきパターンに応じて交換される。しかしながら、従来では、使用前後のマスクを保管するストッカーが、パターン描画装置から離れた位置に設置されていた。したがって、各光学ヘッドに搭載されたマスクを交換するときには、人の手あるいは搬送台車(MGV)により、ストッカーとパターン描画装置との間でマスクを搬送しなければならなかった。特に、大型のマスクを使用する場合には、工程毎に使用される複数枚のマスクを保管するスペースをパターン描画装置の近傍に確保するのは困難であるため、パターン描画装置から離れた場所に複数枚のマスクを保管せざるを得なかった。
【0007】
また、パターン描画装置の各光学ヘッドに搭載されるマスクは、汚れや損傷の有無を確認するために、定期的あるいは必要に応じて検査される。しかしながら、このような検査工程は、描画工程を含む一連の生産工程とは別の場所で行われるのが一般的である。このため、従来では、マスクの検査を行うための検査装置も、パターン描画装置から離れた位置に設置されていた。したがって、マスクを検査するときにも、人の手あるいは搬送台車(MGV)により、パターン描画装置と検査装置との間でマスクを搬送しなければならなかった。
【0008】
このように、従来では、パターン描画装置とその外部に設置されたストッカーあるいは検査装置との間で、マスクを搬送する必要があった。このため、マスクを搬送する際に、マスクの表面に新たな汚れや損傷が発生する恐れがあった。また、パターン描画装置とストッカーおよび検査装置との間にマスクの搬送経路を確保する必要があるため、工程全体の作業スペースが大きくなってしまうという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、マスクを装置の外部に搬送することなく検査及び収納し、それにより、搬送に伴うマスクの汚れや損傷を防止することができるパターン描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、透光部と遮光部とを有するマスクを介して基板の表面に光を照射することにより、基板の表面にパターンを描画するパターン描画装置であって、前記マスクを保持する保持部を有し、前記保持部に保持された前記マスクを介して基板の表面に光を照射する複数の光学ヘッドと、前記複数の光学ヘッドと異なる位置において、前記マスクの検査を行うマスク検査部と、前記マスクを収納するストッカー部と、所定のハンドにより前記マスクを保持しつつ、前記複数の光学ヘッドと、前記マスク検査部と、前記ストッカー部との間で前記マスクを搬送するマスク搬送手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のパターン描画装置であって、前記マスク搬送手段は、前記ハンドを前記複数の光学ヘッドの配列方向に沿って移動させる移動手段を有し、前記移動手段による前記ハンドの移動経路の端部近傍に、前記マスク検査部および前記ストッカー部の少なくとも一方が配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のパターン描画装置であって、前記マスクの洗浄を行うマスク洗浄部を更に備え、前記マスク搬送手段は、前記複数の光学ヘッドと、前記マスク検査部と、前記ストッカー部と、前記マスク洗浄部との間で前記マスクを搬送することを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のパターン描画装置であって、前記マスク洗浄部は、前記マスクに対して紫外線を照射する紫外線照射部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項3または請求項4に記載のパターン描画装置であって、前記マスク洗浄部は、前記マスクに対して薬液による洗浄処理、純水によるリンス処理、および乾燥処理を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項3から請求項5までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、前記マスク検査部による前記マスクの検査結果に基づいて、前記マスク搬送手段による前記マスクの前記マスク洗浄部への搬送を実行するか否かを選択する制御部を更に備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、前記マスク検査部は、前記マスクに対して光を照射しつつ、前記マスクを透過する光を観察することにより、前記マスクの汚れを検出することを特徴とする。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、前記マスク検査部は、前記マスク搬送手段の搬送経路の途中において、前記ハンドに保持された前記マスクを検査することを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、基板に対する描画処理が実行されていないときに、前記複数の光学ヘッドの前記保持部に保持された前記マスクを検査する補助検査手段を更に備えることを特徴とする。
【0019】
請求項10に係る発明は、請求項1から請求項9までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、前記ストッカー部は、前記複数の光学ヘッドに同時に搭載される複数枚のマスクを一括して収納するカセットを有することを特徴とする。
【0020】
請求項11に係る発明は、請求項10に記載のパターン描画装置であって、前記カセットは、前記複数の光学ヘッドに同時に搭載される複数枚のマスクと、予備のマスクとを一括して収納することを特徴とする。
【0021】
請求項12に係る発明は、請求項1から請求項11までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、HEPAフィルタによる雰囲気制御がなされた環境に設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜12に記載の発明によれば、パターン描画装置は、複数の光学ヘッドと異なる位置において、マスクの検査を行うマスク検査部と、マスクを収納するストッカー部と、所定のハンドによりマスクを保持しつつ、複数の光学ヘッドと、マスク検査部と、ストッカー部との間でマスクを搬送するマスク搬送手段と、を備える。このため、マスクを装置の外部に搬送することなく検査及び収納することができ、これにより、搬送に伴うマスクの汚れや損傷を防止することができる。
【0023】
特に、請求項2に記載の発明によれば、マスク搬送手段は、ハンドを複数の光学ヘッドの配列方向に沿って移動させる移動手段を有し、移動手段によるハンドの移動経路の端部近傍に、マスク検査部およびストッカー部の少なくとも一方が配置されている。このため、複数の光学ヘッドの配列方向に沿ったハンドの移動軸を利用して、マスク検査部又はストッカー部へのマスクの搬送を行うことができる。
【0024】
特に、請求項3に記載の発明によれば、マスク搬送手段は、複数の光学ヘッドと、マスク検査部と、ストッカー部と、マスク洗浄部との間でマスクを搬送する。このため、マスクを装置の外部に搬送することなく検査、洗浄、及び収納することができ、これにより、搬送に伴うマスクの汚れや損傷を更に防止することができる。
【0025】
特に、請求項4に記載の発明によれば、マスク洗浄部は、マスクに対して紫外線を照射する紫外線照射部を有する。このため、マスクを装置の外部へ搬送することなく、マスクに対して紫外線による洗浄処理を行うことができる。
【0026】
特に、請求項5に記載の発明によれば、マスク洗浄部は、マスクに対して薬液による洗浄処理、純水によるリンス処理、および乾燥処理を行う。このため、マスクを装置の外部へ搬送することなく、マスクに対して薬液による洗浄処理、純水によるリンス処理、および乾燥処理を行うことができる。
【0027】
特に、請求項6に記載の発明によれば、パターン描画装置は、マスク検査部によるマスクの検査結果に基づいて、マスク搬送手段によるマスクのマスク洗浄部への搬送を実行するか否かを選択する制御部を更に備える。このため、洗浄が必要なマスクのみを効率よく洗浄することができる。
【0028】
特に、請求項7に記載の発明によれば、マスク検査部は、マスクに対して光を照射しつつ、マスクを透過する光を観察することにより、マスクの汚れを検出する。このため、パターンの投影に影響するマスク上の汚れを良好に検出することができる。
【0029】
特に、請求項8に記載の発明によれば、マスク検査部は、マスク搬送手段の搬送経路の途中において、ハンドに保持されたマスクを検査する。このため、ハンドから他の保持具へマスクを移載することなく、迅速にマスクを検査することができる。
【0030】
特に、請求項9に記載の発明によれば、パターン描画装置は、基板に対する描画処理が実行されていないときに、複数の光学ヘッドの保持部に保持されたマスクを検査する補助検査手段を更に備える。このため、基板に対する描画処理の合間の時間には、光学ヘッドからマスクを搬出することなくマスクを検査することができる。
【0031】
特に、請求項10に記載の発明によれば、ストッカー部は、複数の光学ヘッドに同時に搭載される複数枚のマスクを一括して収納するカセットを有する。このため、マスクを品種毎にカセットに収納して管理することができる。
【0032】
特に、請求項11に記載の発明によれば、カセットは、複数の光学ヘッドに同時に搭載される複数枚のマスクと、予備のマスクとを一括して収納する。このため、複数の光学ヘッドに搭載された複数枚のマスクのうちの一部のマスクが使用できなくなっても、予備のマスクを使用して描画処理を継続することができる。
【0033】
特に、請求項12に記載の発明によれば、パターン描画装置は、HEPAフィルタによる雰囲気制御がなされた環境に設置される。このため、マスク搬送手段によるマスクの搬送途中や、ストッカー部におけるマスクの収納時に、マスクにパーティクルが付着することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照される図1〜図4および図7〜図9には、装置内の各部の位置関係や動作方向を明確化するために、共通のXYZ直交座標系が示されている。
【0035】
<1.パターン描画装置の全体構成>
図1および図2は、本発明の一実施形態に係るパターン描画装置1の側面図および上面図である。このパターン描画装置1は、液晶表示装置のカラーフィルタを製造する工程において、カラーフィルタ用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)9の上面に液晶表示装置の画素となる規則性パターンを描画するための装置である。
【0036】
図1および図2に示したように、パターン描画装置1は、基板9を保持するステージ10と、ステージ10に連結されたステージ駆動部20と、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gを有するヘッド部30と、各光学ヘッド32a,32b,…,32gに搭載されるマスクMを搬送するマスク搬送機構40と、マスクMを収納するストッカー部50と、マスクMを検査するマスク検査部60と、マスクMを洗浄するマスク洗浄部70と、装置内の各部の動作を制御する制御部80とを備えている。
【0037】
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に基板9を水平姿勢に載置して保持するための保持部である。ステージ10の上面には複数の吸引孔(図示省略)が形成されている。このため、ステージ10上に基板9を載置したときには、吸引孔の吸引圧により基板9はステージ10の上面に固定保持される。なお、ステージ10上に保持された基板9の表面には、カラーレジスト等の感光材料の層が形成されている。
【0038】
ステージ駆動部20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向)に移動させるための機構である。ステージ駆動部20は、ステージ10を回転させる回転機構21と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23と、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25と、を有している。
【0039】
回転機構21は、ステージ10の−Y側の端辺に取り付けられた移動子と、支持プレート22の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ21aを有している。また、ステージ10の中央部下面側と支持プレート22との間には回転軸21bが設けられている。このため、リニアモータ21aを動作させると、固定子に沿って移動子が副走査方向に移動し、支持プレート22上の回転軸21bを中心としてステージ10が所定角度の範囲内で回転する。
【0040】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ23aを有している。また、支持プレート22とベースプレート24との間には、副走査方向にのびる一対のガイド部23bが設けられている。このため、リニアモータ23aを動作させると、ベースプレート24上のガイド部23bに沿って支持プレート22が副走査方向に移動する。
【0041】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子と本装置1の基台11上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ25aを有している。また、ベースプレート24と基台11との間には、主走査方向にのびる一対のガイド部25bが設けられている。このため、リニアモータ25aを動作させると、基台11上のガイド部25bに沿ってベースプレート24が主走査方向に移動する。
【0042】
ヘッド部30は、ステージ10上に保持された基板9の上面に向けてパルス光を照射するための機構である。ヘッド部30は、ステージ10およびステージ駆動部20を跨ぐようにして基台11上に架設されたフレーム31と、フレーム31に副走査方向に沿って等間隔に取り付けられた7つの光学ヘッド32a,32b,…,32gとを有する。7つの光学ヘッド32a,32b,…,32gは、照明光学系33を介して1つのレーザ発振器34に接続されている。また、レーザ発振器34には、レーザ発振器34のオンオフ駆動を行うレーザ駆動部35が接続されている。レーザ駆動部35を動作させると、レーザ発振器34からパルス光が発振され、発振されたパルス光は照明光学系33を介して各光学ヘッド32a,32b,…,32gの内部に導入される。
【0043】
各光学ヘッド32a,32b,…,32gの内部には、照明光学系33から導入されたパルス光を下方へ向けて出射するための出射部36と、パルス光を部分的に遮光するためのマスクユニット37と、パルス光を基板9の上面に結像させるための投影光学系38とが設けられている。マスクユニット37には、描画すべきパターンに応じた透光部と遮光部とを有するガラス板であるマスクMが搭載(保持)されている。出射部36から出射されたパルス光は、マスクユニット37を通過する際にマスクM上のパターンに応じて遮光され、所定のパターン形状に成形された光束として投影光学系38へ入射する。そして、投影光学系38を介してパルス光が基板9の上面に照射され、基板9上の感光材料を露光することにより、基板9の上面にパターンが描画される。
【0044】
本実施形態のパターン描画装置1は、このように、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gを備え、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gにより基板9の上面を分担して描画する。このため、各光学ヘッド32a,32b,…,32gに搭載されるマスクMを、例えば100mm×150mm程度の小片とすることができる。これにより、マスクMの搬送、検査、洗浄、および収納を、装置内の狭小なスペースで行うことが可能となる。また、後述するように、複数枚のマスクMを個別に搬送、検査、洗浄、および収納することが可能となる。
【0045】
図1中に概念的に示したように、各光学ヘッド32a,32b,…,32gには、マスク搬送機構40との間でマスクMの受け渡しを行う際に、マスクユニット37を−Y側へ進出させるマスク移動機構37aが設けられている。マスク移動機構37aは、例えば、主走査方向にのびるガイドレールと、リニアモータとを組み合わせた機構として実現される。マスク移動機構37aを動作させると、マスクユニット37は、各光学ヘッド32a,32b,…,32gの内部の位置(図1の位置)と、各光学ヘッド32a,32b,…,32gの−Y側に突き出した位置との間で進退移動する。
【0046】
また、ヘッド部30の下方位置には、各光学ヘッド32a,32b,…,32gから照射されるパルス光を撮影する照射光撮影部39が設けられている。照射光撮影部39は、CCDカメラ39aと、ベースプレート24の+Y側の端辺に固定されたガイドレール39bと、ガイドレール39bに沿ってCCDカメラ39aを副走査方向に移動させるカメラ移動機構39cとを有する。カメラ移動機構39cは、例えば、CCDカメラ39aとガイドレール39bとの間に設けられたリニアモータとして実現される。
【0047】
照射光撮影部39による撮影を行うときには、まず、CCDカメラ39aがヘッド部30の下方に位置するように(図1および図2の状態となるように)、ベースプレート24を移動させる。そして、ガイドレール39bに沿ってCCDカメラ39aを副走査方向に移動させつつ、各光学ヘッド32a,32b,…,32gからパルス光を照射し、照射されたパルス光をCCDカメラ39aにより撮影する。CCDカメラ39aにより取得された画像データは、制御部80へ送信され、各光学ヘッド32a,32b,…,32gに搭載されたマスクMの状態を検査するために使用される。
【0048】
マスク搬送機構40は、マスクMを保持しつつ、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32g、ストッカー部50、マスク検査部60、およびマスク洗浄部70の間でマスクMを搬送するための機構である。マスク搬送機構40は、マスクMを保持するハンド41と、図1中に概念的に示したハンド移動機構42とを有する。ハンド41は、上下に一対の保持爪を有し、一対の保持爪によりマスクMの端部を摘むことにより、マスクMを水平姿勢に保持する。
【0049】
ハンド移動機構42は、副走査方向にのびる搬送主軸42aに沿って、光学ヘッド32a,32b,…,32gの−Y側の位置、ストッカー部50の−Y側の位置、および、マスク洗浄部70の−X側の位置の間で、ハンド41を移動させる。ハンド41と光学ヘッド32a,32b,…,32gとの間でマスクMの受け渡しを行うときには、−Y側へ進出させたマスクユニット37に対してハンド41を−X側から接近させ、ハンド41からマスクユニット37へのマスクMの移載またはマスクユニット37からハンド41へのマスクMの移載を行う。
【0050】
また、ハンド移動機構42は、ストッカー部50の−Y側の位置において、ハンド41を鉛直軸周りに回転させるとともに、主走査方向に移動させることができる。ハンド41とストッカー部50との間でマスクMの受け渡しを行うときには、ストッカー部50にセットされたカセット51に対して、ハンド41を−Y側から接近させ、ハンド41からカセット51へのマスクMの移載またはカセット51からハンド41へのマスクMの移載を行う。
【0051】
また、ハンド移動機構42は、マスク洗浄部70の−X側の位置において、マスク洗浄部70の搬入口711に対向する位置と、マスク洗浄部70の搬出口712に対向する位置との間で、ハンド41を昇降移動させることができる(図3および図4参照)。マスク洗浄部70へマスクMを搬入するときには、搬入口711の−X側の位置から搬入口711を介してマスク洗浄部70の内部へハンド41の先端を進入させ、ハンド41からマスク洗浄部70へのマスクMの移載を行う。また、マスク洗浄部70からマスクMを搬出するときには、搬出口712の−X側の位置から搬出口712を介してマスク洗浄部70の内部へハンド41の先端を進入させ、マスク洗浄部70からハンド41へのマスクMの移載を行う。
【0052】
ハンド移動機構42は、例えば、ハンド41の搬送経路に沿って敷設されたガイドレールと、ガイドレール上においてハンド41を移動させるリニアモータと、鉛直軸周りにハンド41を回転させる回転モータとを組み合わせた機構として実現することができる。
【0053】
ストッカー部50は、使用前後のマスクMや、予備のマスクMを収納しておくための機構である。ストッカー部50には、複数枚のマスクMを上下に多段に収納可能なカセット51が、副走査方向(マスク搬送機構40の搬送主軸42aの方向)に沿って3つ配列されている。各カセット51には、単一の品種を描画する際に、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gに同時に搭載される7枚のマスクMと、1枚の予備のマスクMとが一括して収納される。すなわち、複数枚のマスクMは品種毎(パターン毎)に3つのカセット51に分けて収納され、1つのカセット51には同一の品種(同一のパターン)の8枚のマスクMが収納される。
【0054】
図2中に概念的に示したように、ストッカー部50には、3つのカセット51を個別に昇降移動させるカセット昇降機構52が接続されている。カセット昇降機構52は、例えば、鉛直方向に沿って立設されたボールネジと、ボールネジを回転させるモータとを組み合わせた機構として実現される。マスク搬送機構40のハンド41がカセット51からのマスクMの取り出し又はカセット51へのマスクMの収納を行うときには、カセット昇降機構52は、カセット51を昇降移動させることにより、マスクMの取り出し又は収納を行う段の高さをハンド41の高さに一致させる。
【0055】
マスク検査部60は、光学ヘッド32a,32b,…,32gの外部においてマスクMの検査を行うための機構である。図3は、マスク検査部60とその近傍を−Y側から見た側面図である。図3に示したように、マスク検査部60は、マスクMの搬送経路上に設定された検査位置IPの下方から検査位置IPへ向けて検査光を照射する投光部61と、検査位置IPの上方において検査光を撮影する検査用カメラ62とを有する。マスクMの検査を行うときには、まず、マスク搬送機構40がマスクMを検査位置IPに配置する。そして、投光部61から検査光を照射するとともに、マスクMを透過した検査光を検査用カメラ62で撮影し、取得された画像データを制御部80において解析することにより、マスクM上に付着したパーティクル等の汚れを検出する。
【0056】
このように、マスク検査部60は、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gとは異なる位置において、かつ、ステージ10の移動と干渉しない位置において、マスクMの検査を行う。このため、描画処理の進行中であっても、描画処理から独立してマスクMを検査することができる。また、特に、本実施形態のマスク検査部60は、マスク搬送機構40によるマスクMの搬送経路の途中において、ハンド41に保持された状態のマスクMを検査する。このため、ハンド41から他の保持具へマスクを移載することなく、迅速にマスクMを検査することができる。
【0057】
マスク洗浄部70は、マスクMを洗浄してマスクMの表面に付着した汚れを除去するための機構である。図4は、マスク洗浄部70の内部の構成を模式的に示した図である。図4に示したように、マスク洗浄部70は、マスクMを洗浄するための処理空間を内包するチャンバ71と、チャンバ71の内部に配置されたUV洗浄処理部72、薬液洗浄処理部73、リンス処理部74、乾燥処理部75、下段コンベア76、リフタ77、および上段コンベア78とを有する。チャンバ71の−X側の側面には、マスクMを搬入するための搬入口711と、マスクMを搬出するための搬出口712とが、それぞれ下段と上段とに形成されている。搬入口711および搬出口712には、それぞれ開閉シャッタが設けられている。
【0058】
チャンバ71の内部には、搬入口711側から奥側へかけて、UV洗浄処理部72、薬液洗浄処理部73、リンス処理部74、および乾燥処理部75が順に配置されている。ハンド41から搬入口711を介してチャンバ71の内部に搬入されたマスクMは、下段コンベア76により搬送されつつ、UV洗浄処理部72、薬液洗浄処理部73、リンス処理部74、および乾燥処理部75において、それぞれ、紫外線の照射による洗浄処理、薬液による洗浄処理、純水によるリンス処理、およびエアナイフによる乾燥処理を受ける。そして、乾燥後のマスクMはリフタ77により上段へ引き上げられ、その後、上段コンベア78により奥側から搬出口712側へ搬送されて、搬出口712を介して再びハンド41に渡される。
【0059】
マスク洗浄部70の搬入口711付近は、洗浄前のマスクMを搬送するエリアであり、また、薬液や純水のミストが飛散するエリアでもあるため、比較的清浄度が低い場合がある。この点について、本実施形態では、搬入口711とは別個に搬出口712を設けている。このため、搬入口711付近にパーティクルやミストが存在したとしても、そのパーティクルやミストが洗浄後のマスクMに付着することはない。また、本実施形態では、チャンバ71の内部の圧力は、チャンバ71の外部の圧力よりもやや低くなるように制御されている。このため、搬入口711や搬出口712を開放したときにも、チャンバ71の内部から搬入口711又は搬出口712を介してチャンバ71の外部(描画処理を行う領域)へパーティクルやミストが飛散することはない。
【0060】
制御部80は、パターン描画装置1の上記各部の動作を制御するための情報処理部である。図5は、パターン描画装置1の上記各部と制御部80との間の接続構成を示したブロック図である。図5に示したように、制御部80は、上記の回転機構21、副走査機構23、主走査機構25、レーザ駆動部35、照明光学系33、投影光学系38、マスク移動機構37a、CCDカメラ39a、カメラ移動機構39c、ハンド移動機構42、カセット昇降機構52、マスク検査部60、およびマスク洗浄部70と電気的に接続されており、これらの動作を制御する。なお、制御部80は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータにより構成され、コンピュータにインストールされたプログラムや種々の入力データに従ってコンピュータが動作することにより上記各部の制御を行う。
【0061】
このようなパターン描画装置1において描画処理を行うときには、入力された描画データに従い、ステージ10を主走査方向および副走査方向に移動させつつ、各光学ヘッド32a,32b,…,32gからパルス光を照射することにより、基板9の上面にパターンを描画する。具体的には、まず、ステージ10を主走査方向に移動させつつ、各光学ヘッド32a,32b,…,32gからパルス光を照射する。これにより、基板9の上面には所定の露光幅(例えば50mm幅)で複数本のパターン群が主走査方向に描画される。1回の主走査方向への描画が終了すると、パターン描画装置1は、ステージ10を副走査方向に露光幅分だけ移動させ、ステージ10を再び主走査方向に移動させつつ、各光学ヘッド32a,32b,…,32gからパルス光を照射する。このように、パターン描画装置1は、光学ヘッド32a,32b,…,32gの露光幅分ずつ基板9を副走査方向にずらしながら、主走査方向への描画を所定回数(例えば4回)繰り返すことにより、基板9の上面にカラーフィルタ用の規則性パターンを描画する。
【0062】
<2.マスクの検査、洗浄、および交換について>
このパターン描画装置1は、各光学ヘッド32a,32b,…,32gに搭載されたマスクMを個別に検査し、必要に応じてマスクMの洗浄や交換を行う機能を有する。以下では、このようなマスクMの検査、洗浄、および交換の動作の一例について、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の一連の動作は、制御部80が装置内の各部を動作制御することにより、進行する。
【0063】
まず、パターン描画装置1は、検査対象となる光学ヘッド(以下、「光学ヘッド32n」と表記する。)からマスクMを取り出す(ステップS1)。具体的には、マスク搬送機構40のハンド41を光学ヘッド32nの近傍位置まで移動させるとともに、光学ヘッド32nのマスクユニット37を−Y側へ進出させる。そして、マスクユニット37に保持されたマスクMを、ハンド41が摘んで取り出す。マスクユニット37からハンド41へマスクMが移載されると、マスクユニット37は+Y側へ後退する。
【0064】
次に、パターン描画装置1は、光学ヘッド32nから取り出したマスクMの検査を行う(ステップS2)。具体的には、パターン描画装置1は、ハンド41を+X側へ移動させ、マスクMを検査位置IPに配置する。そして、マスク検査部60の投光部61から検査光を照射するとともに、マスクMを通過した検査光を検査用カメラ62で撮影する。検査用カメラ62により取得された画像データは、制御部80に送信され、制御部80において解析される。これにより、マスクM上の汚れが検出される。
【0065】
続いて、パターン描画装置1の制御部80は、ステップS2の検査において、汚れの検出があったか否かを判定する(ステップS3)。汚れの検出がなかったと判定された場合には、当該マスクMは、マスク洗浄部70やストッカー部50に搬送されることなく、光学ヘッド32nに戻される(ステップS4)。具体的には、マスク搬送機構40のハンド41を再び光学ヘッド32nの近傍位置まで移動させるとともに、光学ヘッド32nのマスクユニット37を−Y側へ進出させ、ハンド41に保持されたマスクMをマスクユニット37上に移載する。
【0066】
ステップS4の後、パターン描画装置1の制御部80は、光学ヘッド32nが、検査すべき光学ヘッド32a,32b,…,32gのうちの最終の光学ヘッドであるか否かを判定する(ステップS5)。そして、光学ヘッド32nが最終の光学ヘッドであると判定された場合には、制御部80は、マスクMの検査、洗浄、および交換に関するパターン描画装置1の一連の動作を終了させる。
【0067】
また、ステップS5において、光学ヘッド32nが最終の光学ヘッドでないと判定された場合には、パターン描画装置1は、検査対象の光学ヘッド32nを変更し(ステップS6)、ステップS1に戻る。パターン描画装置1は、新たに検査対象として指定された光学ヘッド32nのマスクMについて、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0068】
一方、上記のステップS3において、汚れの検出があったと判定された場合には、パターン描画装置1は、マスク搬送機構40のハンド41を、更に+X方向および−Z方向に移動させ、マスク洗浄部70の搬入口711までマスクMを搬送する。そして、ハンド41から搬入口711を介してマスク洗浄部70の内部へマスクMを移載し、マスク洗浄部70の内部において、マスクに対して紫外線による洗浄処理、薬液による洗浄処理、純水によるリンス処理、およびエアナイフによる乾燥処理を順次に行う(ステップS7)。乾燥処理後のマスクMは、上段コンベア78により搬出口712付近まで搬送される。
【0069】
マスク洗浄部70によるマスクMの洗浄処理が行われている間に、パターン描画装置1は、ストッカー部50のカセット51から予備のマスクMを取り出し、予備のマスクMを光学ヘッド32nに搭載する(ステップS8)。具体的には、上記のステップS7においてマスク洗浄部70にマスクMを渡したハンド41を、ストッカー部50の近傍位置へ移動させ、カセット51に収納された予備のマスクMをハンド41により摘んで取り出す。そして、予備のマスクMを保持したハンド41を光学ヘッド32nの近傍位置まで移動させるとともに、光学ヘッド32nのマスクユニット37を−Y側へ進出させて、ハンド41に保持された予備のマスクMをマスクユニット37上に移載する。
【0070】
光学ヘッド32nに予備のマスクMが搭載されると、パターン描画装置1は、ハンド41を再び+X側へ移動させ、マスク洗浄部70の搬出口712の前でハンド41を待機させる。そして、マスク洗浄部70によるマスクMの洗浄処理が終了すると、洗浄処理後のマスクMをマスク洗浄部70から搬出口712を介してハンド41に移載する。その後、パターン描画装置1は、ハンド41をストッカー部50の近傍位置へ移動させ、洗浄後のマスクMをカセット51に収納し(ステップS9)、一連の処理を終了させる。
【0071】
以上のように、本実施形態のパターン描画装置1は、マスク検査部60、マスク洗浄部70、およびストッカー部50を装置内に備えるとともに、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32g、マスク検査部60、マスク洗浄部70、およびストッカー部50の間でマスクMを搬送するマスク搬送機構40を備える。このため、マスクMをパターン描画装置1の外部に搬送することなく検査、洗浄、および収納することができ、これにより、搬送に伴うマスクMの汚れや損傷を防止することができる。また、パターン描画装置1の外部にマスクMの搬送経路を確保する必要がないため、工程全体の作業スペースを低減させることができる。
【0072】
特に、本実施形態のマスク搬送機構40は、マスクMを、主として複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gの配列方向に沿って搬送する。そして、マスク検査部60、マスク洗浄部70、およびストッカー部50は、マスクMの搬送主軸42aの端部近傍に配置されている。このため、マスクMの搬送主軸42aを利用して、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gと、マスク検査部60、マスク洗浄部70、およびストッカー部50との双方へ、マスクMを搬送することができる。
【0073】
また、本実施形態のマスク搬送機構40、マスク検査部60、およびマスク洗浄部70は、いずれも、マスクMを1枚ずつ搬送、検査、および洗浄する。このため、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gに搭載されたマスクMのうち、所望のマスクMだけを搬送、検査、および洗浄することができる。また、1枚のマスクを洗浄している間は、ストッカー部50に予め収納された予備のマスクMを使用して描画処理を継続することができる。このため、パターン描画装置1の生産性を維持しつつ、マスクMの洗浄を行うことができる。
【0074】
また、本実施形態のパターン描画装置1は、マスク検査部60において複数枚のマスクMを順次に検査し、その検査結果に基づいて、マスクMをマスク洗浄部70へ搬送するか否かを判断する。このため、洗浄が必要なマスクMのみをマスク洗浄部70へ搬送して効率よく洗浄することができる。
【0075】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、装置内の各部の駆動機構の例として、モータとボールネジとを組み合わせた機構や、リニアモータを用いた機構を挙げたが、装置内の各部の駆動機構は、他の公知の駆動機構を利用して同等の動作を実現するものであってもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、マスク検査部60は、マスク搬送機構40の搬送経路上において、ハンド41に保持されたマスクMを検査するものであったが、マスク検査部60に固有の保持具を設け、ハンド41からマスク検査部60の保持具にマスクMを移載してマスクMを検査するようにしてもよい。その場合には、例えば、図7に示したように、マスクMの搬送主軸42aを挟んでストッカー部50に対向する位置に、マスク検査部60を配置すればよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、マスク洗浄部70は、マスク搬送機構40の搬送主軸42aに面する位置に配置され、マスク搬送機構40との間で直接マスクMの受け渡しをしていたが、マスク洗浄部70は、必ずしもマスク搬送機構40が直接アクセスできる位置に配置されていなくてもよい。例えば、図8に示したように、マスク洗浄部70とマスク検査部60とを連結し、マスク洗浄部70とマスク検査部60との間でマスクMの受け渡しを行うようにしてもよい。また、マスク洗浄部70については、パターン描画装置1の外部に配置されていてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、ストッカー部50、マスク検査部60、およびマスク洗浄部70は、全て搬送主軸42aの一方(+X側)の端部付近に配置されていたが、これらが搬送主軸42aの両端部付近に振り分けられて配置されていてもよい。例えば、図9に示したように、搬送主軸42aの+X側の端部付近にストッカー部50が配置され、−X側の端部付近にマスク検査部60およびマスク洗浄部70が配置されていてもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、マスク洗浄部70により洗浄されたマスクMを、そのままストッカー部50へ搬送していたが、マスク洗浄部70により洗浄されたマスクMを、マスク検査部60へ搬送して再検査するようにしてもよい。このようにすれば、洗浄後のマスクMの状態を確認することができるとともに、マスク洗浄部70の動作状態の良否を確認することもできる。また、上記の実施形態では、マスク検査部60の検査結果により洗浄の要否を判断していたが、検査結果に関わらずマスクMをマスク洗浄部70へ搬送して洗浄し、洗浄後のマスクMを再度マスク検査部60へ搬送して検査するようにしてもよい。
【0080】
また、ストッカー部50に新たにカセット51をセットしたときには、カセット51に収納された各マスクMを検査部60において検査した上で、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gに搭載するようにしても良い。具体的には、各マスクMについて、例えば図10に示したような一連の動作を行えばよい。まず、パターン描画装置1は、ハンド41によりカセット51からマスクMを取り出し(ステップS11)、取り出したマスクMをマスク検査部60へ搬送して検査する(ステップS12)。制御部80は、ステップS12の検査において汚れの検出があったか否かを判定し(ステップS13)、汚れの検出がなかったと判定された場合には、ハンド41が当該マスクMを更に搬送して、光学ヘッド32nに搭載する(ステップS14)。一方、ステップS13において汚れの検出があったと判定された場合には、パターン描画装置1は、当該マスクMをマスク洗浄部70へ搬送して洗浄し(ステップS15)、洗浄後のマスクMを再びマスク検査部60へ搬送して検査する(ステップS16)。制御部80は、ステップS16の検査において汚れの検出があったか否かを判定し(ステップS17)、汚れの検出がなかったと判定された場合には、ハンド41が当該マスクMを更に搬送して、光学ヘッド32nに搭載する(ステップS14)。一方、ステップS17において汚れの検出があったと判定された場合には、パターン描画装置1は、アラームを発して装置管理者による対処を待つ(ステップS18)。
【0081】
また、上記の実施形態では、マスク検査部60は、マスクMを介して透過する検査光を観察する、いわゆる透過光検査を行うものであったが、マスク検査部60は、反射光検査等の他の検査方法によりマスクMを検査するものであってもよい。但し、透過光検査は、透過光によるパターンの投影に影響するマスクM上の汚れを良好に検出することができる点で望ましい。
【0082】
また、上記の実施形態では、照射光撮影部39はマスクMの検査に関与していなかったが、照射光撮影部39を補助的に利用してマスクMの検査を行ってもよい。具体的には、基板9に対する描画処理が実行されていないときに、複数の光学ヘッド32a,32b,…,32gから照射されるパルス光を照射光撮影部39により撮影し、その撮影結果に基づいてマスクMに付着した汚れを検出するようにしてもよい。このようにすれば、基板9に対する描画処理の合間の時間には、光学ヘッド32a,32b,…,32gからマスクMを搬出することなくマスクMを検査することができる。
【0083】
また、上記の実施形態では、マスク洗浄部70は、マスクMを搬入する搬入口711と、マスクMを搬出する搬出口712とを有していたが、マスク洗浄部70は、1つの搬入出口を介してマスクMの搬入と搬出とを行うものであってもよい。また、マスク洗浄部70は、上記のUV洗浄処理、薬液洗浄処理、リンス処理、および乾燥処理以外の処理によりマスクMの洗浄を行うものであってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、ストッカー部50の各カセット51に予備のマスクMを1枚ずつ収納していたが、各カセット51に収納される予備のマスクMは2枚以上であってもよい。また、ストッカー部50には、3つのカセット51が配置されていたが、ストッカー部50に配置されるカセットの数は、1つ、2つ、あるいは4つ以上であってもよい。また、ストッカー部50は、カセット51以外の収納器にマスクMを収納するものであってもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、パターン描画装置1の設置環境については特に言及しなかったが、パターン描画装置1は、温度、湿度、および清浄度が良好に管理されたクリーンルームに設置されることが望ましい。具体的には、HEPAフィルタにより清浄化された下降気流(ダウンフロー)が形成された、例えばclass10程度のクリーンルームに設置されることが望ましい。パターン描画装置1をこのようなクリーンルームに設置すれば、マスク搬送機構40による搬送の途中や、ストッカー部50におけるマスクMの収納時に、マスクMにパーティクルが付着することをより良好に防止することができる。
【0086】
また、図11に示したように、パターン描画装置1は、クリーンルームCRに設置されたクリーンベンチCBの内部に配置されていてもよい。図11の例では、クリーンベンチCBの上部にHEPAフィルタ90が設けられ、HEPAフィルタ90によりクリーンベンチCBの内部に清浄化された下降気流が形成されている。また、図11の例では、マスク洗浄部70は、クリーンベンチCBの側部に接続され、搬入口711および搬出口712がクリーンベンチCBの内部空間に面するようになっている。このようにすれば、クリーンベンチCBの内部の隔離された清浄な空間において、マスクMを搬送することができる。このため、マスクMにパーティクルが付着することを更に防止することができる。
【0087】
また、上記の実施形態では、パターン描画装置1は、7つの光学ヘッド32a,32b,…,32gを有するものであったが、光学ヘッドの数は7つに限定されるものではない。また、上記のパターン描画装置1は、カラーフィルタ用のガラス基板9を処理対象としていたが、本発明のパターン描画装置は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、半導体基板、磁気/光ディスク用基板等の他の基板を処理対象とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】パターン描画装置の側面図である。
【図2】パターン描画装置の上面図である。
【図3】マスク検査部とその近傍を−Y側から見た側面図である。
【図4】マスク洗浄部の内部の構成を模式的に示した図である。
【図5】パターン描画装置の各部と制御部との間の接続構成を示したブロック図である。
【図6】マスクの検査、洗浄、および交換の動作の流れを示したフローチャートである。
【図7】変形例に係るパターン描画装置の上面図である。
【図8】変形例に係るパターン描画装置の上面図である。
【図9】変形例に係るパターン描画装置の上面図である。
【図10】新たにセットされたカセットに収納されたマスクを光学ヘッドに搭載するときの動作の流れを示したフローチャートである。
【図11】パターン描画装置の設置環境の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0089】
1 パターン描画装置
9 基板
10 ステージ
20 ステージ駆動部
30 ヘッド部
32a,32b,…,32g 光学ヘッド
37 マスクユニット
39 照射光撮影部
40 マスク搬送機構
41 ハンド
42 ハンド移動機構
42a 搬送主軸
50 ストッカー部
51 カセット
60 マスク検査部
61 投光部
62 検査用カメラ
70 マスク洗浄部
711 搬入口
712 搬出口
72 UV洗浄処理部
73 薬液洗浄処理部
74 リンス処理部
75 乾燥処理部
80 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光部と遮光部とを有するマスクを介して基板の表面に光を照射することにより、基板の表面にパターンを描画するパターン描画装置であって、
前記マスクを保持する保持部を有し、前記保持部に保持された前記マスクを介して基板の表面に光を照射する複数の光学ヘッドと、
前記複数の光学ヘッドと異なる位置において、前記マスクの検査を行うマスク検査部と、
前記マスクを収納するストッカー部と、
所定のハンドにより前記マスクを保持しつつ、前記複数の光学ヘッドと、前記マスク検査部と、前記ストッカー部との間で前記マスクを搬送するマスク搬送手段と、
を備えることを特徴とするパターン描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン描画装置であって、
前記マスク搬送手段は、前記ハンドを前記複数の光学ヘッドの配列方向に沿って移動させる移動手段を有し、
前記移動手段による前記ハンドの移動経路の端部近傍に、前記マスク検査部および前記ストッカー部の少なくとも一方が配置されていることを特徴とするパターン描画装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパターン描画装置であって、
前記マスクの洗浄を行うマスク洗浄部を更に備え、
前記マスク搬送手段は、前記複数の光学ヘッドと、前記マスク検査部と、前記ストッカー部と、前記マスク洗浄部との間で前記マスクを搬送することを特徴とするパターン描画装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン描画装置であって、
前記マスク洗浄部は、前記マスクに対して紫外線を照射する紫外線照射部を有することを特徴とするパターン描画装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のパターン描画装置であって、
前記マスク洗浄部は、前記マスクに対して薬液による洗浄処理、純水によるリンス処理、および乾燥処理を行うことを特徴とするパターン描画装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
前記マスク検査部による前記マスクの検査結果に基づいて、前記マスク搬送手段による前記マスクの前記マスク洗浄部への搬送を実行するか否かを選択する制御部を更に備えることを特徴とするパターン描画装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
前記マスク検査部は、前記マスクに対して光を照射しつつ、前記マスクを透過する光を観察することにより、前記マスクの汚れを検出することを特徴とするパターン描画装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
前記マスク検査部は、前記マスク搬送手段の搬送経路の途中において、前記ハンドに保持された前記マスクを検査することを特徴とするパターン描画装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
基板に対する描画処理が実行されていないときに、前記複数の光学ヘッドの前記保持部に保持された前記マスクを検査する補助検査手段を更に備えることを特徴とするパターン描画装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
前記ストッカー部は、前記複数の光学ヘッドに同時に搭載される複数枚のマスクを一括して収納するカセットを有することを特徴とするパターン描画装置。
【請求項11】
請求項10に記載のパターン描画装置であって、
前記カセットは、前記複数の光学ヘッドに同時に搭載される複数枚のマスクと、予備のマスクとを一括して収納することを特徴とするパターン描画装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
HEPAフィルタによる雰囲気制御がなされた環境に設置されることを特徴とするパターン描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−253252(P2009−253252A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103376(P2008−103376)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】