説明

パターン検査方法

【課題】 対象物が化学研磨品である場合であっても良好な検査ができるパターン検査方法を提供すること。
【解決手段】 パターン検査をする前に,プリント配線板1をソフトエッチングする。このソフトエッチングは,プリント配線板1のパターン部2の表面の微細な凹凸を除去し,平滑化する作用がある。このためソフトエッチングにより,パターン部2に光を照射したときの乱反射が減少し,パターン部2での輝度が高くなる。これにより,ソフトエッチング後のパターン部2の光反射率と,ソフトエッチングによる影響を受けない下地部3の光反射率との差が大きくなり,顕著なコントラストを得ることができる。その後,プリント配線板1に光を照射し,反射状況の相違によるパターン検査を実施する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,対象物の表面のパターンを検査するパターン検査方法に関する。さらに詳細には,対象物の研磨状態にかかわらず,パターンの箇所とそれ以外の箇所との間に顕著なコントラストが得られるパターン検査方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から,配線板等,表面にパターンを有するものについては,そのパターンの良否検査が行われている。このパターン検査は一般的に,対象物に光を照射し,その光の反射状況によりパターンの箇所とそれ以外の箇所とを識別することによりなされる。パターン検査の主たる対象物である配線板では,パターンの箇所は銅であり,それ以外の下地の部分は樹脂である。このため,パターンの箇所とそれ以外の箇所とで光の反射率が異なるので,両者を識別できるのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,前記した従来のパターン検査方法には,次のような問題点があった。すなわち,従来多用されていた配線板は,パターン形成後のパターンにジェットスクラブ研磨による仕上げを施したものであった。このためパターンの箇所の光反射率が高く(肉眼では新品の硬貨の表面のように見える),下地の光反射率との差が大きかったのである。ところが近年では,ジェットスクラブ研磨の代わりに化学研磨で仕上げたものが使用されるようになってきている。化学研磨品の場合には,パターンの箇所の光反射率がさほど高くないため(肉眼では使い古しの硬貨の表面のように見える),下地の光反射率との差が小さい。このため,肉眼による観察ならともかく,パターンの箇所とそれ以外の箇所との識別が不十分であった。
【0004】本発明は,前記した従来のパターン検査方法が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,対象物が化学研磨品である場合であっても良好な検査ができるパターン検査方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この課題の解決を目的としてなされた本発明のパターン検査方法では,まず,検査の対象物をソフトエッチングする。次に,ソフトエッチング後の対象物の表面に光を照射する。そして,パターンの箇所とそれ以外の箇所とでのその光の反射状況の相違に基づいてパターンの良否を検査する。
【0006】この検査方法では,対象物に光を照射する前に,対象物をソフトエッチングする。このソフトエッチングは,対象物のパターン箇所の表面の微細な凹凸を除去し,平滑化する作用がある。このためソフトエッチングにより,パターン箇所に光を照射したときの乱反射が減少し,パターン箇所での輝度が高くなる。これにより,パターン箇所の光反射率と,ソフトエッチングによる影響を受けないそれ以外の箇所の光反射率との差が大きくなり,顕著なコントラストを得ることができる。このため,光の反射状況の相違によりパターン箇所とそれ以外の箇所との識別ができ,パターンの検査をすることができる。
【0007】本発明は,検査の対象物の表面のパターンが化学研磨された銅パターンである場合に特に意義がある。さらに,ソフトエッチングを過酸化水素を含む酸性のエッチング液で行い,エッチング量を0.2〜1.0μmの範囲内とするとよい。この範囲内では,パターン箇所とそれ以外の箇所との間に十分なコントラストを得ることができ,良好なパターン検査を実施できる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は,検査の対象物が化学研磨されたプリント配線板である場合のパターン検査方法として本発明を具体化したものである。
【0009】本形態での検査の対象物は,図1に示すようなプリント配線板である。プリント配線板1の表面には,導体パターンであるパターン部2と,絶縁樹脂が露出している部分である下地部3とが含まれている。また,パターン部2は銅であり,化学研磨による仕上げ処理が施されている。
【0010】次に,上記プリント配線板1のパターン検査手順について説明する。まず,プリント配線板1のソフトエッチングをする。ここでいうソフトエッチングとは,パターン表面を光反射率の高い金属面とするため,銅を僅かに溶解させる処理のことである。エッチング液は,過酸化水素を含む酸性水溶液である。例えば,過酸化水素の濃度が10g/L程度,硫酸の濃度が45g/L程度あるものを用いる。本形態では,これにより,パターン部2の表面が平滑化され,光反射率の高い金属面が得られる。
【0011】図2は,ソフトエッチング処理前のパターン部2表面を撮影したSEM写真(撮影時倍率:20000倍)である。処理前の表面では,仕上げとしてあらかじめ行われている化学研磨処理による凹凸が目立っている。このため,パターン部2の表面に光を照射した場合に,光の乱反射成分が大きく高い輝度が得られない。一方,図3は,ソフトエッチング処理後のパターン部2の表面を撮影したSEM写真(同20000倍)である。処理後の表面では,化学研磨処理における凹凸が目立たなくなっている。このため,パターン部2の表面に光を照射した場合に,光の乱反射が少なく高い輝度が得られる。
【0012】次に,パターン検査として,光学的外観検査を実施する。この光学的外観検査は,プリント配線板1に光を照射し,その光の反射状況の相違によりパターン部2の良否を検査するものである。本形態では,メイン光源としてハロゲンランプを使用する。
【0013】ここで,図4に示すようなプリント配線板1の一部のパターン検査をする場合の例を説明する。まず,ソフトエッチング処理後の検査体についての図4中Aで記した線上での輝度分布を図4(a)に示す。図4(a)中パターン部2上では,高い輝度が示されている。一方,下地部3では,低い輝度が示されている。このように輝度の高い部分と低い部分との差が十分にあり,適当な閾値を設定してパターン検査を実施することができる。一方,ソフトエッチング処理前の検査体についての輝度分布を図4(b)に示す。図4(b)では輝度の差が僅かしかない。さらに,仕上げ等の諸条件により個々の検査体ごとに輝度が全体に上下するため,適当な閾値を設定できない。このため,パターン検査を実施することができない。
【0014】続いて,本実施の形態におけるソフトエッチングについて,エッチング量毎の検査の可否,およびハロゲンランプに必要な電圧を測定した試験結果を簡単に説明する。ここで測定する電圧は,外観検査を良好に実施するために必要な電圧である。なお,エッチング量は時間で管理したものである。図5は,ソフトエッチング量の実験結果を示す表である。表中の第一列はエッチング量を,第二列はハロゲンランプの電圧を,第三列は光学的外観検査の可否を示す。まず,ソフトエッチングを行わない(ソフトエッチング量0.00μm)場合は,ハロゲンランプ電圧を15.0Vまで上げてもパターン部を検査できるコントラストを得ることはできなかった。このため,第三列は「否」である。次に,ソフトエッチング量を0.28μmとした場合は,ハロゲンランプ電圧を13.1Vとしたときにパターン部を検査できるコントラストを得ることができた。同様に,エッチング量を0.42,0.61,0.71,1.03μmとした場合は,それぞれハロゲンランプ電圧を12.2,12.2,11.3,10.7Vとしたときにパターン部を検査できるコントラストを得ることができた。このため,第三列は「可」である。
【0015】図5の結果をもとに,図6に,ソフトエッチング量と光源電圧との関係のグラフを示す。測定データより,ソフトエッチング量が少ないほど必要とする電圧が高くなることがわかる。例えば,13.5Vの電圧で検査するためには,0.2μm以上のエッチング量が必要であることがわかる。
【0016】以上詳細に説明したように本形態の検査方法では,検査対象であるプリント配線板1をソフトエッチングすることとしている。プリント配線板1のパターン部2は銅パターンであり,ソフトエッチングにより表面が平滑化される。次に,ソフトエッチングされたプリント基板1に対して光を照射することとしている。パターン部2は平滑化された金属面のため,光を反射することができる。すなわち,ソフトエッチングにより検査に必要なパターン部2と下地部3との間のコントラストを確保している。このため,光の反射状況の相違によりパターン部2と下地部3との識別ができ,パターン部2の良否を検査することができる。
【0017】また,ソフトエッチングのエッチング液は,過酸化水素を含む酸性の水溶液を使用することとしている。また,試験によりエッチング量は0.2〜1.0μmの範囲内であることがわかる。これにより,検査対象物が化学研磨品であるプリント配線板1の場合であっても,良好な検査ができるパターン検査方法が実現されている。
【0018】なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
【0019】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明によれば,対象物が化学研磨品である場合であっても良好な検査ができるパターン検査方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態において使用するプリント配線板である。
【図2】ソフトエッチング処理前の銅パターン表面を撮影したSEM写真である。
【図3】ソフトエッチング処理後の銅パターン表面を撮影したSEM写真である。
【図4】ソフトエッチング処理前後のプリント配線板の輝度分布である。
【図5】ソフトエッチング量の実験結果を示す表である。
【図6】ソフトエッチング量と光源電圧との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 プリント配線板
2 パターン部
3 下地部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 対象物の表面のパターンを検査する方法において,対象物をソフトエッチングし,ソフトエッチング後の対象物の表面に光を照射し,パターンの箇所とそれ以外の箇所とでのその光の反射状況の相違に基づいてパターンの良否を検査することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項2】 請求項1に記載するパターン検査方法において,対象物の表面のパターンが,化学研磨された銅パターンであり,ソフトエッチングを,過酸化水素を含む酸性のエッチング液で行い,エッチング量を0.2〜1.0μmの範囲内とすることを特徴とするパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−4662(P2003−4662A)
【公開日】平成15年1月8日(2003.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−193408(P2001−193408)
【出願日】平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】