説明

パターン識別方法および識別装置

【課題】光学画像を用いる方式を採用した場合において、被識別物や被識別円形物の識別処理を行うにあたって処理負荷が小さく低コストであって、装置の低廉化及び小型化を図るパターン識別方法および識別装置を提供することにある。
【解決手段】被識別物等(硬貨、紙幣)の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データに基づく出力データ上に(ステップS503)、被識別物の表面の特定の選択領域として選択窓を予め設け(ステップS505)、その選択領域内の出力データの総和値を使ってその画像データの特徴量を抽出することで(ステップS506〜S509)、被識別物の表面の模様パターンを識別する(ステップS510〜S512)ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別対象となる被識別物又は被識別円形物(以下、「被識別物等」という。)の特徴的な模様に関する光学画像のパターンデータ列を解析することによって、その被識別物等の種類または真贋を判定するパターン識別方法および識別装置に関するものであって、特に、被識別物等の種類または真贋を判定する際に実行される画像処理の負荷軽減を考慮しつつ鑑別性能を向上させるものである。
【0002】
ここで、被識別物とは、被識別円形物を含む概念であり、例えば、硬貨、ゲームトークンや紙幣などが挙げられる。また、被識別円形物とは、円形を呈する被識別物のことであり、例えば、硬貨やゲームトークンなどが挙げられる。
【背景技術】
【0003】
一般に、自動販売機、自動券売機、ゲーム機、両替機など、硬貨や紙幣などの被識別物等を取り扱う各種装置には、投入された硬貨等の被識別物等の種類または真贋を判定する識別装置が設けられている。近年、硬貨や紙幣の偽造・変造犯罪が多発し社会問題化する中で、識別装置に対する高機能化ニーズは益々強くなってきており、様々なタイプの識別装置が提案されている。
【0004】
例えば、特開昭62−245495号公報(特許文献1)、特開2001−188932号公報(特許文献2)、特開2001−188933号公報(特許文献3)、特願昭61−90547号公報(特許文献4)、特願平11−375532号公報(特許文献5)、或いは特願平11−375533号公報(特許文献6)などには、硬貨表面の凹凸形状を検知することによって硬貨のパターン識別を行うようにした方式のものが開示されており、特に、特許文献1に開示された方式にあっては、硬貨の中心を通過する位置に配置されたセンサが硬貨の凹凸形状を検出して、これに予め記憶された基準凹凸パターンと照合して一致するか否かによって硬貨の真贋を判定するようにしたものである。
【0005】
また、特許第2803930号公報(特許文献7)においては、光学的に読み取った硬貨表面の模様の光学画像から得たパターンデータを、予め記憶されている基準の画像パターンデータと比較することによって、金種または真贋を判定するようにした方式のものが開示されている。
【0006】
さらに、特開平10−302111号公報(特許文献8)、特許第2792703号公報(特許文献9)においては、光学的に読み取った紙幣表面の模様の光学画像から得たパターンデータを、予め記憶されている基準の画像パターンデータと比較(パターンマッチング処理)することによって、金種または真贋を判定するようにした方式のものが開示されている。
【0007】
図18は、被識別物等の模様を光学的に読み取った光学画像からパターンデータを得るようにした従来のパターン識別方法の概略フロー図の一例である。なお、ここでは被識別物等の一例として硬貨(円形物)を採用する。
【0008】
図18において、従来のパターン識別方法は、まず初めに硬貨の材質と外径とを検出することによって金種の仮決定を行い(ステップS1)、その後に、硬貨表面の模様に関する画像パターンデータを用いることにより金種の本決定を行うようにしている(ステップS2)。
【0009】
ここで、上述した金種の本決定を行う手順を説明する。まず被識別物等としての硬貨の模様を光学的に検出して、例えば図19(a)に示されているような硬貨Cの光学画像を得る。その後、この光学画像の水平および垂直の射影を形成して、それぞれのカーブの両端点を検出し、それらの座標値の算術平均から硬貨の中心位置を求める。次に、その求めた中心位置を基準として、硬貨Cの模様に関する光学画像上に、この硬貨Cの種類に関する特徴的な模様を含むリング状の検出領域Vを設定する。そして、このリング状の検出領域Vに対応する光学画像の環状領域から、周方向に沿って画像パターンデータ列を順に切り出していく。その切り出した画像パターンデータ列F(評価データ)は、長方形の行列として保存される。
【0010】
一方、受け付けるべき硬貨Cの基準データとしては、画像パターンデータ列Fに対応する同サイズの表用・裏用の2種類の基準パターンデータT,Tを予め用意しておき、画像パターンデータ列Fを、この2種類の基準パターンデータT,Tと照合することにより類似性を算出していく。この基準パターンデータT,Tとの照合作業は、図19(b),(c)のように、硬貨Cの表・裏に関してそれぞれ行うこととし、その結果として得られた類似性の尺度には、次の式で表されるような正規化相関係数rがしばしば用いられる。
【数1】

【0011】
このようにして、第1番目の画素について得た相関値をrとした後、画素を1画素ずつ順次シフトしていきながら同様の操作をN回繰り返し、それによって相関値の系列(r,r,・・・r)を得る。そして、このN個の相関値のうちで最大のものを検出して類似度rに設定し、その類似度rが、予め設定しておいた閾値Rよりも大きければ、現在評価中の硬貨を既に仮決定した金種に一致するものと判定し、それを正式な金種として受け入れる。一方、上述した類似度rが閾値rよりも小さければ、仮決定した金種に一致しないものと判定し、それを排除する。
【0012】
【特許文献1】特開昭62−245495号公報
【特許文献2】特開2001−188932号公報
【特許文献3】特開2001−188933号公報
【特許文献4】特願昭61−90547号公報
【特許文献5】特願平11−375532号公報
【特許文献6】特願平11−375533号公報
【特許文献7】特許第2803930号公報
【特許文献8】特開平10−302111号公報
【特許文献9】特許第2792703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したパターン識別方法では以下の問題がある。
【0014】
まず、硬貨表面の凹凸形状を検知することによって硬貨の識別を行うようにした方式を採用した場合には、得られる情報が基本的に1チャンネルのラインであり、精度向上のためには多数個のチャンネルを用意するか、別の特徴量を抽出するセンサと組み合わせるなどの工夫を要するためコストがかさむといった問題がある。
【0015】
また、光学画像を用いる方式を採用した場合には、大量のパターンデータを複雑に演算処理する画像処理ステップを要することから、実用的な識別精度や処理時間を確保するためには大容量の記憶素子や高速な演算素子を導入することが必要となり、結局、装置が大型で高価のものにならざるを得ない、といったコストの問題が残存することとなる。加えて、実際に投入される硬貨や挿入される紙幣などの被識別物等は、表面が滑らかで反射率の高い部分や、使用経歴によって磨耗や汚れが進み硬貨表面の特徴部分の反射率が低下している部分があり、同じ種類のものであっても光学画像上のコントラストは大きく変動していることから、濃淡処理等の画像処理ステップも必要となり、装置の低廉化及び小型化を図ることが困難である。
【0016】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学画像を用いる方式を採用した場合において、被識別物等の識別処理を行うにあたって処理負荷が小さく低コストであって、装置の低廉化及び小型化を図るパターン識別方法および識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上のような課題を解決するために、本発明は、被識別物等の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データに基づく出力データ上に、被識別物等の表面の特定の選択領域(第1の選択領域及び第2の選択領域)を予め設け、その選択領域内の出力データの総和値を使ってその画像データの特徴量を抽出することで、被識別物等の表面の模様パターンを識別することを特徴とする。
【0018】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0019】
(1) 識別対象となる被識別物の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データを一定のピッチで抽出し、抽出して得られた出力データを解析することで、この被識別物の表面の模様パターンを識別するパターン識別方法において、前記出力データ上に、当該出力データの複数の極大値を含み、かつ、それらの極大値が前記模様パターンに応じた位置関係となるように配列された第1の選択領域と、当該出力データの複数の極小値を含み、かつ、それらの極小値が前記模様パターンに応じた位置関係となるように配列された第2の選択領域と、を予め設定し、前記第1の選択領域内の出力データの第1の総和値と、前記第2の選択領域内の出力データの第2の総和値と、を求める総和演算処理を実行し、前記出力データと、前記第1の選択領域及び前記第2の選択領域と、を前記一定のピッチで相対的に移動させる毎に前記総和演算処理を実行することによって、前記第1の総和値のデータ列である第1の総和データ列と、前記第2の総和値のデータ列である第2の総和データ列と、を求め、前記第1の総和データ列の各要素と、それに対応する前記第2の総和データ列の各要素と、の差分を計算することによって差分データ列を算出し、前記差分データ列の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0020】
本発明によれば、光学画像を用いた被識別物のパターン識別方法において、被識別物の撮像によって得られた画像データを一定のピッチ(例えば5ピクセルごと)で抽出して得られた出力データ上に、その出力データの極大値を含む第1の選択領域と、その出力データの極小値を含む第2の選択領域と、を予め設定し、その第1の選択領域内の出力データの第1の総和値と、その第2の選択領域内の出力データの第2の総和値と、を求める総和演算処理を実行し、出力データと、第1の選択領域及び第2の選択領域と、を上述した一定のピッチで相対的に移動させる毎に総和演算処理を実行することによって、第1の総和値のデータ列である第1の総和データ列と、第2の総和値のデータ列である第2の総和データ列と、を求め、第1の総和データ列の各要素と、それに対応する第2の総和データ列の各要素と、の差分を計算することによって差分データ列を算出し、その差分データ列を解析することとしたから、抽出した出力データのみを識別処理対象とすることで演算量を削減することができる結果、識別処理の更なる高速化を図りつつ装置の小型化・低廉化を図ることができる。
【0021】
また、第1の選択領域に含まれる被識別物の表面の模様部分のみならず、第2の選択領域に含まれる被識別物の表面の非模様部分からも特徴量を抽出し、模様部分から抽出された特徴量から非模様部分から抽出された特徴量を差し引いた差分データ列を解析することによって被識別物の表面の模様パターンを識別することから、被識別物の表面の模様部分から抽出される特徴量が強調され、その特徴部分の反射率が低下するなどの変動要素に起因した悪影響を軽減することができ、ひいては鑑別性能を向上させつつ装置の小型化・低廉化を図ることができる。
【0022】
なお、「被識別物」は、硬貨や紙幣のみならず、小切手,トラベラーズチェックなどの金券、免許証,パスポートなどのIDカード、公文書などの重要書類など、識別対象となる全ての物を含むものとする。例えば、硬貨はその表面の凹凸形状によって、紙幣等凹凸形状が検知し難いものは濃淡パターンによって、被識別物表面の特徴的な模様部分を検知することができる。
【0023】
また、本発明でいう「一定のピッチ」は、例えば被識別物が円形物である場合には、円周方向距離によって定めることもできるし、回転角度によって定めることも可能である。例えば、回転角度5度のピッチで画像データを抽出した場合、画像データの点数は、全部で72のデータ点数となる。また、例えば被識別物が長方形物である場合には、長軸方向、短軸方向、対角線方向の距離によって定めることが可能である。例えば、短軸方向1ピクセルのピッチで10ピクセル、長軸方向1ピクセルのピッチで10ピクセル抽出した場合には、画像データの点数は、全部で100のデータ点数となる。
【0024】
(2) 識別対象となる被識別円形物の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データにこの被識別円形物と同心のリング状検出領域を設定し、前記リング状検出領域における画像データを一定のピッチで抽出して得られた出力データを解析することで、被識別円形物の表面の模様パターンを識別するパターン識別方法において、前記出力データ上に、当該出力データの複数の極大値を含み、かつ、それらの極大値が前記模様パターンに応じた位置関係となるように配列された第1の選択領域と、当該出力データの複数の極小値を含み、かつ、それらの極小値が前記模様パターンに応じた位置関係となるように配列された第2の選択領域と、を予め設定し、前記第1の選択領域内の出力データの第1の総和値と、前記第2の選択領域内の出力データの第2の総和値と、を求める総和演算処理を実行し、前記出力データと、前記第1の選択領域及び前記第2の選択領域と、を前記一定のピッチで相対的に巡回させる毎に前記総和演算処理を実行することによって、前記第1の総和値のデータ列である第1の総和データ列と、前記第2の総和値のデータ列である第2の総和データ列と、を求め、前記第1の総和データ列の各要素と、それに対応する前記第2の総和データ列の各要素と、の差分を計算することによって差分データ列を算出し、前記差分データ列の解析を行うことによって被識別円形物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0025】
本発明によれば、光学画像を用いた被識別円形物のパターン識別方法において、被識別円形物の撮像によって得られた画像データ上に設定されたリング状検出領域内の要素からなる出力データ上に、その出力データの極大値を含む第1の選択領域と、その出力データの極小値を含む第2の選択領域と、を予め設定し、その第1の選択領域内の出力データの第1の総和値と、その第2の選択領域内の出力データの第2の総和値と、を求める総和演算処理を実行し、出力データと、第1の選択領域及び第2の選択領域と、を上述した一定のピッチで相対的に巡回させる毎に総和演算処理を実行することによって第1の総和値のデータ列である第1の総和データ列と、第2の総和値のデータ列である第2の総和データ列と、を求め、第1の総和データ列の各要素と、それに対応する第2の総和データ列の各要素と、の差分を計算することによって差分データ列を算出し、その差分データ列を解析することとしたから、特に、識別対象が硬貨などの円形物である場合に、リング状検出領域内の要素からなる出力データのみを識別処理対象とすることで演算量を削減することができる結果、識別処理の更なる高速化を図ることができるとともに、その円形物の表面の模様部分から抽出される特徴量を強調できることから鑑別性能を向上させることができる。
【0026】
なお、「リング状検出領域」は、被識別円形物と同心円状の検出領域に限定されるものではなく、被検出円形物と同心であって、かつ、特定の閉領域よりなるものであれば、如何なる形状(例えば楕円形状)であっても構わない。
【0027】
(3) 前記リング状検出領域を半径方向に沿って複数設定し、各リング状検出領域から得られる複数の差分データ列を解析することを特徴とするパターン識別方法。
【0028】
本発明によれば、被識別円形物の中心から半径方向に沿ってリング状検出領域を複数設定し、各リング状検出領域から得られる複数の差分データ列を解析することから、複数のリング状検出領域に基づいて硬貨の特徴量の抽出精度をより向上することができ、ひいては、鑑別性能を向上させることができる。
【0029】
(4) 前記差分データ列を特定入力データとして入力する第1ステップと、前記特定入力データ上に、当該特定入力データの極大値を含む第1の特定選択領域と、当該特定入力データの極小値を含む第2の特定選択領域と、を設定する第2ステップと、前記第1の特定選択領域内の特定入力データの第1の特定総和値と、前記第2の特定選択領域内の特定入力データの第2の特定総和値と、を求める特定総和演算処理を実行する第3ステップと、前記特定入力データと、前記第1の特定選択領域及び前記第2の特定選択領域と、を一定のピッチで相対的に移動させる毎に前記特定総和演算処理を実行することによって、前記第1の特定総和値のデータ列である第1の特定総和データ列と、前記第2の特定総和値のデータ列である第2の特定総和データ列と、を求める第4ステップと、前記第1の特定総和データ列の各要素と、それに対応する前記第2の特定総和データ列の各要素と、の差分を計算することによって特定差分データ列を算出する第5ステップと、からなる一連の処理が行われた後、前記特定差分データ列の解析の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0030】
本発明によれば、まず、上述した差分データ列を特定入力データとして入力する第1ステップ、次いで、第1の特定選択領域及び第2の特定選択領域を設定する第2ステップ、特定総和演算処理を実行する第3ステップ、第1の特定総和データ列及び第2の特定総和データ列を求める第4ステップ、特定差分データ列を算出する第5ステップ、という複数の処理が順々に行われた後、第5ステップで得られた特定差分データ列の解析を行うこととしたから、簡易な装置によって高速な識別処理が可能となるのに加え、その識別精度を向上させることが可能になる。
【0031】
(5) 前記特定差分データ列を特定入力データとして、前記第2ステップから前記第5ステップまでの処理を複数回繰り返し行った後に得られた特定差分データ列の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0032】
本発明によれば、上述した特定差分データ列を特定入力データとして、上述した第2ステップから第5ステップまでの処理を複数回繰り返し行った後に得られた特定差分データ列の解析を行うこととしたから、簡易な装置によって高速な識別処理が可能となるのに加え、その識別精度を更に向上させることが可能になる。
【0033】
(6) 前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の解析は、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列のピーク値を検出し、その検出したピーク値と所定の閾値との比較解析であることを特徴とするパターン識別方法。
【0034】
本発明によれば、差分データ列の解析法として、差分データ列のピーク値を検出し、その検出したピーク値と所定の閾値との比較解析を行うこと、又は、特定差分データ列の解析法として、特定差分データ列のピーク値を検出し、その検出したピーク値と所定の閾値との比較解析を行うこととしたから、低コストかつ簡便に被識別物や被識別円形物の特徴量の抽出精度を向上・安定化することができ、ひいては、鑑別性能を向上させることができる。
【0035】
(7) 前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の解析は、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列のピーク値をカウントし、そのカウントしたピーク値の総個数と所定の閾値との比較解析であることを特徴とするパターン識別方法。
【0036】
本発明によれば、差分データ列の解析法として、差分データ列のピーク値をカウントし、そのカウントしたピーク値の総個数と所定の閾値との比較解析を行うこと、又は、特定差分データ列の解析法として、特定差分データ列のピーク値をカウントし、そのカウントしたピーク値の総個数と所定の閾値との比較解析を行うこととしたから、低コストかつ簡便に被識別物や被識別円形物の特徴量の抽出精度を向上・安定化することができ、ひいては、鑑別性能を向上させることができる。
【0037】
(8) 前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の解析は、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列全体と、予め設定した基準総和データ列又は基準差分データ列との比較解析であることを特徴とするパターン識別方法。
【0038】
本発明によれば、差分データ列の解析法として、差分データ列全体と、予め設定した基準差分データ列との比較解析を行うこと、又は、特定差分データ列の解析法として、特定差分データ列全体と、予め設定した基準差分データ列との比較解析を行うこととしたから、低コストかつ簡便に被識別物や被識別円形物の特徴量の抽出精度を向上・安定化することができ、ひいては、鑑別性能を向上させることができる。
【0039】
(9) 前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の解析は、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列のピーク値を検出するとともに、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の平均値を求め、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列のピーク値から前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の平均値を減算した値と所定の閾値との比較解析であることを特徴とするパターン識別方法。
【0040】
本発明によれば、差分データ列の解析法として、差分データ列のピーク値から差分データ列の出力レベルの平均値を減算した値と所定の閾値との比較解析を行うこと、又は、特定差分データ列の解析法として、特定差分データ列のピーク値から特定差分データ列の出力レベルの平均値を減算した値と所定の閾値との比較解析を行うこととしたから、被識別物や被識別円形物の表面の特徴部分の反射率が全体的に低下した場合であっても、それらの特徴量の抽出精度をより安定化することができ、ひいては、鑑別性能を向上させることができる。
【0041】
(10) (1)から(9)のいずれか記載のパターン識別方法を用いて、被識別物又は被識別円形物の真贋を判定するパターン識別方法。
【0042】
本発明によれば、上述したパターン識別方法を用いて、被識別物の真贋を判定したり、被識別円形物の真贋を判定することとなるから、例えば、硬貨や紙幣等の偽造・変造を短時間で精度よく見極めることができる。
【0043】
(11) (1)から(9)のいずれか記載のパターン識別方法を用いて、被識別物又は被識別円形物の表面の模様パターンを識別する識別手段を備えたことを特徴とする識別装置。
【0044】
本発明によれば、被識別物や被識別円形物の識別装置に、上述したような識別方法を用いた識別手段を備えたことから、高速処理かつ低コストを実現し、鑑別性能の向上した被識別物の識別装置を提供することができる。
【0045】
(12) 前記識別手段の識別結果により、被識別物又は被識別円形物の真贋を判定する真贋判定手段を備えたことを特徴とする識別装置。
【0046】
本発明によれば、上述したパターン識別方法を用いて、被識別物や被識別円形物の表面の模様パターンを識別し、その識別結果により、真贋判定手段が被識別物の真贋を判定したり、被識別円形物の真贋を判定することとなるから、例えば、硬貨や紙幣等の偽造・変造を短時間で精度よく見極めることができる。
【0047】
その他、本発明は、以下のものを提供することもできる。
【0048】
識別対象となる被識別物の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データに基づく出力データを解析することで、この被識別物の表面の模様パターンを識別するパターン識別方法において、前記出力データ上に、当該出力データの極大値又は極小値を含む選択領域を予め設定し、前記選択領域内の出力データの総和値を求める総和演算処理を実行し、前記総和値に基づいて被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0049】
本発明によれば、光学画像を用いた被識別物のパターン識別方法において、被識別物の撮像によって得られた画像データを加工して得られた出力データ上に、その出力データの極大値又は極小値を含む選択領域を予め設定し、その選択領域内の出力データの総和値を求める総和演算処理を実行し、その総和値に基づいて被識別物の表面の模様パターンを識別することとしたから、簡易な装置によって高速な識別処理が可能となる。
【0050】
すなわち、被識別物表面の凹凸形状や濃淡パターンの特徴を検知することによって被識別物の識別を行う、というコストがかさむ方式を採用せず、被識別物表面の特徴的な模様部分を含む選択領域に含まれる画素値の総和値に基づいて被識別物の識別を行う、という加算処理を基本構成とする方式を採用していることから、処理負担を嵩張らせることなく装置の低廉化及び小型化に資することができる。
【0051】
前記総和値と所定の閾値とを比較解析することで被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0052】
本発明によれば、上述した総和値と所定の閾値とを比較解析することで、被識別物の表面の模様パターンを識別することとしたから、低コストかつ簡便に被識別物の特徴量の抽出精度を向上・安定化することができ、ひいては鑑別性能の向上に繋がることとなる。
【0053】
なお、「所定の閾値」は、真の被識別物に対して本発明に係るパターン識別方法を実行し、最適な値をとるものとする。
【0054】
識別対象となる被識別物の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データを一定のピッチで抽出し、抽出して得られた出力データを解析することで、この被識別物の表面の模様パターンを識別するパターン識別方法において、前記出力データ上に、当該出力データの極大値又は極小値を含む選択領域を予め設定し、前記選択領域内の出力データの総和値を求める総和演算処理を実行し、前記出力データと前記選択領域とを前記一定のピッチで相対的に移動させる毎に前記総和演算処理を実行することによって前記総和値のデータ列である総和データ列を求め、その総和データ列の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0055】
本発明によれば、光学画像を用いた被識別物のパターン識別方法において、被識別物の撮像によって得られた画像データを一定のピッチ(例えば5ピクセルごと)で抽出し、抽出して得られた出力データ上に、その出力データの極大値又は極小値を含む選択領域を予め設定し、その選択領域内の出力データの総和値を求める総和演算処理を実行し、出力データと選択領域とを上述の一定のピッチで相対的に移動させる毎に総和演算処理を実行することによって上述した総和値のデータ列である総和データ列を求め、その総和データ列を解析することとしたから、抽出した出力データのみを識別処理対象とすることで演算量を削減することができる結果、識別処理の更なる高速化を図ることができる。
【0056】
また、抽出した出力データと選択領域とを相対的に移動させ、抽出した出力データの特徴部と選択領域とが一致したときにピーク値をとるデータ列(総和データ列)を求めることとしたから、変動要素(硬貨表面の特徴部分の反射率の低下、紙幣表面の使用経歴による磨耗や汚れなど)の識別処理を行う上での悪影響を低減することができ、ひいては鑑別性能を向上させることができる。
【0057】
識別対象となる被識別円形物の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データ上にこの被識別円形物と同心のリング状検出領域を設定し、前記リング状検出領域における画像データを一定のピッチで抽出して得られた出力データを解析することで、被識別円形物の表面の模様パターンを識別するパターン識別方法において、前記出力データ上に、当該出力データの極大値又は極小値を含む選択領域を予め設定し、前記選択領域内の出力データの総和値を求める総和演算処理を実行し、前記出力データと前記選択領域とを前記一定のピッチで相対的に巡回させる毎に前記総和演算処理を実行することによって前記総和値のデータ列である総和データ列を求め、前記総和データ列の解析を行うことによって被識別円形物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0058】
本発明によれば、光学画像を用いた被識別円形物のパターン識別方法において、被識別円形物の撮像によって得られた画像データ上に設定されたリング状検出領域内の要素からなる出力データ上に、その出力データの極大値又は極小値を含む選択領域を予め設定し、その選択領域内の出力データの総和値を求める総和演算処理を実行し、出力データと選択領域とを上述の一定のピッチで相対的に巡回させる毎に総和演算処理を実行することによって上述した総和値のデータ列である総和データ列を求め、その総和データ列を解析することとしたから、特に、識別対象が硬貨などの円形物である場合に、リング状検出領域内の要素からなる出力データのみを識別処理対象とすることで演算量を削減することができる結果、識別処理の更なる高速化を図ることができる。すなわち、円形物の特徴部分に関する解析が、基本的に加算処理のみで直接的に行われることとなり、簡易な装置によって高速な識別処理が可能となるとともに、円形物の使用の経歴等による影響が低減されることから、識別性能の向上が図られるようになっている。
【0059】
前記総和データ列を特定入力データとして入力する第1ステップと、前記特定入力データ上に、当該特定入力データの極大値又は極小値を含む特定選択領域を設定する第2ステップと、前記特定選択領域内の特定入力データの特定総和値を求める特定総和演算処理を実行する第3ステップと、前記特定入力データと前記特定選択領域とを一定のピッチで相対的に移動させる毎に前記特定総和演算処理を実行することによって前記特定総和値のデータ列である特定総和データ列を求める第4ステップと、からなる一連の処理が行われた後、前記特定総和データ列の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0060】
本発明によれば、まず、上述した総和データ列を特定入力データとして入力する第1ステップ、次いで、特定選択領域を設定する第2ステップ、特定総和演算処理を実行する第3ステップ、特定総和データ列を求める第4ステップ、という複数の処理が順々に行われた後、第4ステップで得られた特定総和データ列の解析を行うこととしたから、簡易な装置によって高速な識別処理が可能となるのに加え、その識別精度を向上させることが可能になる。
【0061】
なお、前記総和データ列を特定入力データとして入力する第1ステップを行った後に第2ステップ以降の個々の処理を行い、被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法を提供することができるし、また、前記差分データ列を特定入力データとして入力する第1ステップを行った後に第2ステップ以降の個々の処理を行い、被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法を提供することもできるし、また、前記総和データ列を特定入力データとして入力する第1ステップを行った後に第2ステップ以降の個々の処理を行い、被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法を提供することもできるし、また、前記差分データ列を特定入力データとして入力する第1ステップを行った後に第2ステップ以降の個々の処理を行い、被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法を提供することもできる。
【0062】
このように、「総和データ列」または「差分データ列」に対してさらに'特定選択領域設定'→'(第2次)特定総和演算処理'→'(第2次)特定総和データ列'(以上、処理Aとする)→'(第2次)特定総和データ列に特定選択領域設定'→'(第3次)特定総和演算処理'→'(第3次)特定総和データ列'→・・・のように処理Aを繰り返して得られた第i次特定総和データ列(iは2以上)を解析して模様パターンを識別したり、「総和データ列」または「差分データ列」に対してさらに'第1、第2の特定選択領域設定'→'(第2次)特定総和演算処理'→' (第2次)特定総和データ列'→' (第2次)特定差分データ列'(以上、処理Bとする)→' (第2次)特定差分データ列に第1、第2の特定選択領域設定'→'(第3次)特定総和演算処理'→'(第3次)特定総和データ列'→'(第3次)特定差分データ列'・・・のように処理Bを繰り返して得られた第i次特定差分データ列(iは2以上)を解析して模様パターンを識別したり、処理A→処理B→処理Aあるいは、処理A→処理B→処理Bのように処理Aと処理Bとを混合させて得られた第i次特定総和データ列あるいは第i次特定差分データ列を解析して模様パターンを識別したりすることによって、その識別精度を向上させることが可能になる。
【0063】
前記特定総和データ列を特定入力データとして、前記第2ステップから前記第4ステップまでの処理を複数回繰り返し行った後に得られた特定総和データ列の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【0064】
本発明によれば、上述した特定総和データ列を特定入力データとして、上述した第2ステップから第4ステップまでの処理を複数回繰り返し行った後に得られた特定総和データ列の解析を行うこととしたから、簡易な装置によって高速な識別処理が可能となるのに加え、その識別精度を更に向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0065】
本発明に係るパターン識別方法および識別装置は、以上説明したように、被識別物等の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データに基づく出力データ上に、被識別物等の表面の特定の選択領域を予め設け、その選択領域内の出力データの総和値を使ってその画像データの特徴量を抽出する、というものであり、識別処理が基本的に加減算から構成され、従来から必要とされてきたDSPや専用のハードウェアを必要としないことから、識別アルゴリズムを安価に実装することができ、ひいては装置の低廉化及び小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0067】
[識別装置の内部構造]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る識別装置の内部に設けられた硬貨搬送路の概略構造を示した平面図である。
【0068】
図1において、平面略「く」の状に折り曲げられた形状の硬貨搬送路1には、図示右端側の搬送入口部1aから図示左方側に向かって送られてきた被識別円形物としての硬貨Cを支持する底面摺動板1bが設けられているとともに、その底面摺動板1bの直上に搬送ベルト2が配置されている。
【0069】
底面摺動板1bの一端部には、この底面摺動板1bの縁部に沿うようにしてガイド3が立設されているとともに、そのガイド3に対して硬貨Cを押し付ける硬貨規制レバー4が、硬貨搬送路1の折れ曲がり部分においてピン4aによって回動可能に軸支されている。硬貨規制レバー4は、底面摺動板1b上に支持されながら送られてくる硬貨Cを、バネ等の付勢手段(図示せず)によって、上述のガイド3側に押し付けるように構成されていて、硬貨規制レバー4が配置された部位から搬送方向下流側に向かって送り出された硬貨Cは、上述のガイド3に対して外周面部を接触させた状態を維持しながら順次搬送されるようになっている。
【0070】
硬貨搬送路1には、硬貨Cの表面に形成された模様を検出するための光学式コインセンサ装置CSUが取り付けられている。この光学式コインセンサ装置CSUは、例えば、特開平5−143826号公報に開示されたものと同様のCCDエリアセンサを備えたものである。
【0071】
ここで、上述した搬送ベルト2と光学式コインセンサ装置CSUの詳細について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る識別装置の内部に設けられた硬貨搬送路1の側面断面図である。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る識別装置の内部に設けられた光学式コインセンサ装置CSUの概略構造を表した拡大側面図である。
【0072】
図2において、搬送ベルト2は、下側ベルト部分2aと底面摺動板1bとの間に硬貨Cの厚さ分に相当する隙間が画成されるように略並行に対面する配置関係になされており、この搬送ベルト2と底面摺動板1bとの間に硬貨Cを挟持しながら、搬送ベルト2の延在方向に向かって硬貨Cを搬送させるように構成されている。
【0073】
また、図3において、底面摺動板1b上に沿って送られてきた硬貨Cがセンサ位置1c上に到達すると、その硬貨Cを、内部に撮像素子を備えたセンサ本体5が検知することにより、センサ位置1cを環状に取り巻くように配置された照明6が点灯し、硬貨Cからの反射光をセンサ本体5内に取り込む。その結果、硬貨Cの表面に形成されている模様に関する光学画像が得られる。そして、この光学画像を用いて金種または真贋の判定が行われることとなる。
【0074】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る識別装置の内部に設けられた紙幣搬送路の概略構造を示した平面図である。
【0075】
図4において、紙幣がベルトによって搬送される紙幣搬送路20には、図示左端側に設けられた紙幣繰出し機構21と、紙幣の表面に形成された模様を検出するための光学式紙幣センサ装置CSUと、紙幣の種類に応じて紙幣を選別する紙幣分岐機構23と、紙幣の種類に応じて紙幣を蓄積する紙幣蓄積機構24と、が設けられている。
【0076】
このような機構が設けられた紙幣搬送路20は、上述した硬貨搬送路1と同様に動作する。すなわち、まず、紙幣繰出し機構21によって取り込まれた紙幣は、紙幣搬送路20によって奥の方(図の右方)へ搬送され、紙幣センサ装置CSUの位置に到達すると照明が点灯し、紙幣からの反射光が紙幣センサ装置CSUに取り込まれる。その結果、紙幣の表面に形成されている模様に関する光学画像が得られ、この光学画像を用いて金種または真贋の判定が行われる。なお、この光学画像が得られた後、紙幣は紙幣分岐機構23によって種類ごとに分類され、紙幣蓄積機構24に蓄積される。
【0077】
[識別装置の電気的構成]
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る識別装置の電気的構成を示すブロック図である。なお、上述した第1の実施形態に係る識別装置(硬貨識別装置)の電気的構成と、上述した第2の実施形態に係る識別装置(紙幣識別装置)の電気的構成とは基本的に同様であるため、ここでは上述した第1の実施形態に係る識別装置の電気的構成について説明する。
【0078】
図5において、本発明の第1の実施の形態に係る識別装置には、中央処理装置(以下、CPUと略す)41と、硬貨Cを撮像する画像撮像部42と、硬貨Cを照らす照明部43と、硬貨Cを搬送する硬貨(紙幣)搬送部44と、が備えられている。また、CPU41は、画像撮像部42からの画像データを取り込む画像取込制御部41aと、画像取込制御部41aによって取り込まれた画像データを含め種々の画像データを記憶する画像記憶部41bと、画像記憶部41bに記憶された画像データを処理するデータ処理部41cと、データ処理部41cの処理結果に基づき硬貨Cの真贋を判定する真贋判定部41dに加え、照明部43を制御する照明制御部41eと、硬貨(紙幣)搬送部44を制御する搬送制御部41fと、を有している。
【0079】
なお、図5において、画像記憶部41bは、CPU41内の1次キャッシュ(2次キャッシュ)等から構成されているが、画像データを記憶する機能を有する限り、DRAM、SDRAM等のCPU41外の記憶手段から構成されるものであっても構わない。
【0080】
以上のような電気的構成において、以下、本発明の第1の実施の形態に係るパターン識別方法、及び本発明の第2の実施の形態に係るパターン識別方法について説明する。
【0081】
[第1の実施の形態に係るパターン識別方法]
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るパターン識別方法についてのフロー図である。なお、ここでは、円形物(硬貨C)の一例として100円硬貨を用いて説明する。
【0082】
図6において、まず、硬貨Cの光学画像データの取込みが行われる(ステップS501)。より具体的には、CPU41内の搬送制御部41fからの指令に基づき硬貨(紙幣)搬送部44は硬貨Cを搬送し、硬貨Cが所定の位置に搬送されたとき、照明制御部41eからの指令に基づき照明部43は硬貨Cの表面全体を照らし、硬貨C表面からの反射光が画像撮像部42(例えばイメージセンサ)に入力されたとき、画像取込制御部41aは硬貨Cの光学画像を取り込み、この光学画像を画像記憶部41bに記憶する。なお、一般的に、かかる光学画像は、X−Y座標上に1画素約0.13ミリメートル平方の高密度画像を構成し、AD変換によって輝度(明るさ)が256階調となるように分解(多値化)され、輝度をZ軸とする3次元データとして画像記憶部41b(例えばフレームメモリ)に記憶される。
【0083】
次いで、硬貨中心点の検出が行われる(ステップS502)。より具体的には、データ処理部41cは、ステップS501によって画像記憶部41bに記憶された光学画像データを読み出し、光学画像をX軸方向及びY軸方向に射影することによって、それぞれの方向についてエッジの中点を算出し、その結果、X軸方向についてのエッジの中点をX座標、Y軸方向についてのエッジの中点をY座標として硬貨Cの中心座標を求める。
【0084】
次いで、リングデータの切り出しが行われる(ステップS503)。より具体的には、まず、データ処理部41cは、ステップS502において求めた硬貨Cの中心座標を基準として、硬貨Cの光学画像上に、100円硬貨の特徴的な模様を含むリング状検出領域Vを設定する(図7参照)。ここで、リング状検出領域Vでは、硬貨Cの外周側より5本のリング状検出領域V,V,V,V,Vが同心円状に設定されており、これらのリング状検出領域V,V,V,V,Vは、受け付けるべき硬貨Cの特徴的或いは非特徴的な模様の位置に応じて予め用意されるものとする。そして、データ処理部41cは、各リング状検出領域V,V,V,V,Vにおいて、一定の角度ピッチでリング状に光学画像データを切り出す。図7においては、角度ピッチ5度の間隔で、各リング状検出領域あたり72箇所の検出点が環状に切り出され、各リング状検出領域における画像データを一定のピッチで抽出して得られた出力データとしてのリングデータDからDが、それぞれ生成される。なお、出力データとは、画像の輝度データはもとより、輝度データを処理して2次的に得られる微分出力画像や2階微分画像等のことを示す。
【0085】
なお、図7に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るパターン識別方法においては、リングデータは5本生成されることとしたが、リングデータの切り出し本数は何本でも構わない。また、リングデータの切り出しに当たってエッジ強調処理を行っていないが、例えば3×3画素の空間フィルタを用いて微分処理を施し、各検出点を強調するような処理をステップS503の処理に含ませても構わない。
【0086】
次いで、リングデータDからDの圧縮が行われる(ステップS504)。より具体的には、データ処理部41cは、各切り出し角度において、リングデータDからDのデータの平均値を算出し、当該算出データを要素とする1次元の出力データ、すなわちリングデータDを取得する。本処理によれば、例えば、100円硬貨の特定の一点にのみ汚れが付着することによって、この部分の反射率が低下した場合であっても、リングデータDにおいては、当該変動要素(反射率の低下)の悪影響がそれほど及ばなくなる、といった利益を得ることができる。なお、必要に応じてリングデータDのダイナミックレンジが均一となるように、レベル値の正規化を行うこともできる。
【0087】
次いで、選択窓の設定が行われる(ステップS505)。より具体的には、データ処理部41cは、リングデータD上に、リングデータDの極大値が含まれる範囲を抽出する第1の選択領域としての選択窓(以下、正窓と略す)Wと、リングデータDの極小値が含まれる範囲を抽出する第2の選択領域としての選択窓(以下、負窓と略す)Wと、を設定する。ここで、この正窓Wと負窓Wの設定パターンは、金種に応じて予めROM等のメモリに記憶されており、金種の仮決定の段階で、金種に応じてどの設定パターンが選択されるべきかが決定される。例えば、金種の仮決定の段階で100円硬貨であると推定された場合には、100円硬貨を任意の角度だけ回転したときに、100円硬貨の特徴的な模様上に正窓Wが、100円硬貨の非特徴的な部分に負窓Wがくるような設定パターンが選択される。例えば、図8においては、100円硬貨が時計回りに90度回転したときに、100円硬貨の特徴的な部分(「日」「本」「国」「百」「円」の部分)の特徴量が正窓Wより抽出でき、100円硬貨の非特徴的な部分(「日」「本」「国」「百」「円」以外の平らな部分)の特徴量が負窓Wより抽出できる。なお、図8においては、正窓Wの形状を同心円状とし、負窓Wの形状を三角形状としたが、本発明では特にこれらの形状に限られることなく、例えば楕円等の形状の窓であっても構わない。また、正窓Wと負窓Wの数を複数設定したが、単数であっても構わない。
【0088】
次いで、総和演算処理が行われる(ステップS506)。より具体的には、データ処理部41cは、ステップS505において設定された正窓Wの中にあるリングデータDの総和値Sと、ステップS505において設定された負窓Wの中にあるリングデータDの総和値Sと、を算出する。
【0089】
次いで、減算処理が行われる(ステップS507)。より具体的には、データ処理部41cは、ステップS506において算出した総和値Sから総和値Sを減算する。そして、この減算処理によって得られた値を差分データ列ΔLの最初の要素としてRAM等のメモリに記憶する。なお、選択領域として正窓Wのみを採用し、選択領域として負窓Wを採用しない場合には、このステップS507の処理は行われないこととなる。
【0090】
次いで、リングデータDを円周方向に360度シフトしたか否か、すなわち、例えば図8において、リングデータDと、正窓W及び負窓Wと、を相対的に1ポイントずつ72回巡回させたか否かを判断する(ステップS508)。より具体的には、データ処理部41cは、予め初期化された変数i(例えばi=1)を用いて、1ポイント巡回させるごとにこの変数iをインクリメントし、この変数iが所定の値(図7ではi=72)を超えたか否かによって、円周方向に360度シフトしたか否を判断する。
【0091】
なお、ステップS508においては、正窓W及び負窓Wを円周方向に1ピッチずつずらしながら全周にわたるように円周方向に360度シフトさせることとしたが、例えば正窓W及び負窓Wが左右対称に設けられている場合などは、正窓W及び負窓Wを円周方向に1ピッチずつずらしながら半周にわたるように180度だけシフトさせることとしてもよい。これより、演算量を削減することができ、ひいては円形物の識別処理を高速化することができる。
【0092】
ステップS508において、データ処理部41cは、リングデータDを円周方向に360度シフトしていないと判別した場合には、リングデータDと、正窓W及び負窓Wと、を相対的に1ポイントずつ巡回させた後に(ステップS509)、処理をステップS506の総和演算処理に戻し、その総和演算処理の算出結果を用いて減算処理を行い(ステップS507)、この減算処理によって得られた値を差分データ列ΔLの次の要素としてRAM等のメモリに記憶し、再びステップS508の処理を行う。
【0093】
一方で、データ処理部41cは、ステップS508において、リングデータDを円周方向に360度シフトしたと判別した場合には、所定の閾値を超えたか否かの識別処理を行う(ステップS510)。この識別処理は、上述の処理によって得られた差分データ列ΔLのピーク値と所定の閾値Tとを比較し、閾値Tよりも大きければ、その情報が真贋判定部41dに送信されて真貨であると判定され(ステップS511)、閾値Tよりも小さければ、その情報が真贋判定部41dに送信されて偽貨であると判定される(ステップS512)。これより、硬貨Cの真贋を識別することが可能となる。
【0094】
ここで、ステップS510においては、閾値Tと比較する対象として差分データ列ΔLのピーク値を用いているが、この差分データ列ΔLのピーク値は、リングデータDと、正窓W及び負窓Wと、を相対的に1ポイントずつ巡回させている場合において、正窓Wの中に100円硬貨の特徴的な模様があり、かつ、負窓Wの中に100円硬貨の非特徴的な部分があるときの値となる。すなわち、図8においては、ステップS509の処理を18回繰り返したとき(リングデータDが時計回りに90度シフトしたとき)に、差分データ列ΔLはピーク値をとることとなる。そして、このピーク値は、ステップS507の減算処理に起因して、差分データ列ΔLのピーク値以外の値と比べて相対的に大きなものとなっている。従って、低コストかつ簡便に100円硬貨の特徴量の抽出精度を向上・安定化することができ、ひいては、鑑別性能を向上させることができる。
【0095】
また、ステップS510においては、差分データ列ΔLのピーク値と所定の閾値Tとを比較する識別処理を行っているが、本発明はこれに限られることなく、例えば差分データ列ΔLのピーク値の総個数を所定の閾値と比較する識別処理であってもよいし、差分データ列ΔL全体を予め設定した基準差分データ列と比較する識別処理であってもよい。このような差分データ列のピーク値や総個数の情報は予めROM等のメモリに記憶されている。
【0096】
なお、図8のおいては、上述のピーク値は、差分データ列ΔLの最大値を採っているが、差分データ列ΔLの最小値を採ることも可能である。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係るパターン識別方法では、照射角度の浅い照明を用いており、硬貨表面の模様部分で輝度値が大きくなるため差分データ列ΔLの最大値がピーク値となっているが、逆に、照射角度の深い照明を用いた場合には、硬貨表面の非模様部分で輝度値が大きくなるため差分データ列ΔLの最小値がピーク値となる。
【0097】
また、図6においては、ステップS507の減算処理をステップS506の総和演算処理の直後に行うこととしているが、ステップS510の識別処理の直前に行うこととしてもよい。かかる例によれば、総和値Sからなるデータ列の各要素から総和値Sからなるデータ列の対応する各要素を減算することとなるため、図6のフロー図では差分データ列ΔLは1要素ずつ順次生成されるのに対し、差分データ列ΔLは一度に全部生成されることとなる。
【0098】
また、図6に示すステップS510の識別処理において、差分データ列ΔLのピーク値を所定の閾値と比較解析するのではなく、差分データ列ΔLのピーク値から差分データ列ΔLの輝度レベル(出力レベル)の平均値を減算した値を所定の閾値と比較解析することもできる。そうすると、例えば長年の使用により硬貨表面が経年変化し、硬貨表面の特徴部分の反射率が全体的に低下した場合であっても、閾値の設定変更をすることなく継続的に同じ閾値を用い続けることができるため、閾値の設定変更に起因した設定誤差によって硬貨の抽出精度が低下するのを防ぐことができ、ひいては鑑別性能を向上させることができる。
【0099】
さらに、図6のステップS510の識別処理においては、ステップS506〜ステップS509の処理によって得られた差分データ列ΔLのピーク値と所定の閾値Tとを比較しているが、この差分データ列ΔL上に、差分データ列ΔLの極大値又は極小値を含む選択領域を更に設定し、ステップS506〜ステップS509の処理と同様の処理を行うことによって得られたデータ列のピーク値と所定の閾値Tとを比較してもよい。このようにすることで、識別精度をより向上させることができる。
【0100】
例えば、図6のフロー図で示すステップS508の処理と、ステップS510の処理と、の間に図9に示すサブルーチンを挿入する。まず、図6のステップS508の処理によって得られた差分データ列ΔLを特定入力データとして、この特定入力データ上に、この特定入力データの極大値を含む第1の特定選択領域と、この特定入力データの極小値を含む第2の特定選択領域が設定される(ステップS201)。
【0101】
次いで、ステップS201によって設定された第1の特定選択領域内の特定入力データの第1の特定総和値と、ステップS201によって設定された第2の特定選択領域内の特定入力データの第2の特定総和値と、を求める特定総和演算処理が実行される(ステップS202)。
【0102】
次いで、第1の特定総和値から第2の特定総和値を減ずる減算処理が行われる(ステップS203)。なお、この減算処理によって得られた値を特定差分データ列ΔL'の最初の要素としてRAM等のメモリに記憶する。
【0103】
次いで、差分データ列ΔLと特定選択領域とを相対的に所定のデータ点数だけシフトさせたか否かが判断される(ステップS204)。ステップS204において、所定のデータ点数だけシフトさせていないと判定された場合には、差分データ列ΔLと特定選択領域を相対的に1データずつシフトさせた後に(ステップS205)、処理をステップS202の特定総和演算処理に戻し、その特定総和演算処理の算出結果を用いて減算処理を行い(ステップS203)、この減算処理によって得られた値を特定差分データ列ΔL'の次の要素としてRAM等のメモリに記憶し、再びステップS204の処理を行う。
【0104】
一方で、ステップS204において、所定のデータ点数だけシフトさせたと判定された場合には、識別精度は十分か否かが判断される(ステップS206)。ステップS206において、識別精度が不十分であると判定された場合には、処理をステップS201に戻し、上述した一連の処理をもう一度繰り返す。
【0105】
最後に、ステップS206において識別精度が十分であると判定された場合には、処理を図6のステップS510に戻す。このようにすることで、識別精度をより向上させることができる。
【0106】
なお、図9では減算処理(ステップS203)が存在するが、特定入力データとして総和データ列を用いる場合には、この減算処理を省けばよい。また、特定入力データとして、最初は差分データ列ΔLが採用されているが、繰り返し処理(ステップS206)が行われた後は、特定差分データ列ΔL'が採用されることとなる。
【0107】
[変形例]
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る他のパターン識別方法についてのフロー図である。この他のパターン識別方法は、受け付けるべき円形物表面の空間的特徴が表面と裏面とで異なる場合において、リングデータDの切り出し半径R、正窓Wと負窓W、及び閾値Tのパラメータ組を表/裏面用の2種類予め用意しておき、これらを用いることによって、撮像された円形物の光学画像が表面であると裏面であるとに拘わらず、円形物の真贋を識別し得るものである。以下、この他の識別方法を具体的に説明する。
【0108】
図10において、まず、光学画像データの取込みが行われる(ステップS801)。そして、硬貨中心点の検出が行われる(ステップS802)。なお、上述したステップS501,S502と同様の処理が行われるので、その説明を省略する。
【0109】
次いで、表面用パラメータの選択処理が行われる(ステップS803)。より具体的には、データ処理部41cは、予めROM等のメモリに記憶されている表面用の切り出し半径R,表面用の正窓W,表面用の負窓W,表面用の判定閾値Tを選択し、RAM等のメモリにセットする。
【0110】
次いで、リングデータの切り出し(ステップS804)、リングデータの圧縮(ステップS805)、選択窓の設定(ステップS806)、総和演算処理(ステップS807)、減算処理(ステップS808)、リングデータDと正窓W及び負窓Wとの相対的巡回演算(ステップS809及びステップS810)、のそれぞれの処理が行われるが、これらの処理は上述した図6におけるステップS503〜ステップS509の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0111】
次いで、データ処理部41cは、ステップS509においてリングデータDを円周方向に360度シフトしたと判別した場合には、閾値を超えたか否かの識別処理を行う(ステップS811)。この識別処理は、上述の処理によって得られた差分データ列ΔLのピーク値と閾値Tとを比較し、閾値Tよりも大きければ真貨であると判別し(ステップS822)、閾値Tよりも小さければ、真貨ではないか、或いは撮像した光学画像が硬貨Cの裏面である可能性があると判別する。後者の場合、処理はステップS812に移される。
【0112】
ここで、ステップS811において閾値Tを超えてないと判別された場合、裏面用パラメータの選択処理が行われる(ステップS812)。より具体的には、データ処理部41cは、予めROM等のメモリに記憶されている裏面用の切り出し半径R',裏面用の正窓W',裏面用の負窓W',裏面用の判定閾値T'を選択し、RAM等のメモリにセット(表面用パラメータの上に上書き)する。
【0113】
次いで、リングデータの切り出し(ステップS813)、リングデータの圧縮(ステップS814)、選択窓の設定(ステップS815)、総和演算処理(ステップS816)、減算処理(ステップS817)、リングデータD'と正窓W'及び負窓W'との相対的巡回演算(ステップS818及びステップS819)、のそれぞれの処理が行われるが、これらの処理は上述したステップS804〜ステップS810の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0114】
次いで、データ処理部41cは、ステップS818において、リングデータD'を円周方向に360度シフトしたと判定した場合には、閾値を超えたか否かの識別処理を行う(ステップS820)。この識別処理は、上述の処理によって得られた差分データ列ΔL'のピーク値と閾値T'とを比較し、閾値T'よりも大きければ真貨であると判別し(ステップS822)、閾値T'よりも小さければ偽貨であると判別する(ステップS821)。最終的に真贋判定部41dにより真貨か偽貨を判別した後、本サブルーチンを直ちに終了する。
【0115】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る他のパターン識別方法によれば、受け付けるべき円形物表面の空間的特徴が表裏面で異なる場合であっても、円形物の真贋を識別することが可能となる。
【0116】
[他の変形例]
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る他のパターン識別方法についてのフロー図である。この他のパターン識別方法は、複数箇所(複数のリングエリア)からリングデータDを求めることとし、各リングエリアに対応したリングデータDの切り出し半径R、正窓Wと負窓W、及び閾値Tのパラメータ組を予め用意しておき、これらを用いて各リングエリアに対応した差分データ列ΔLの総和演算を行うことによって、硬貨表面の空間的特徴部分がより強調され、より精度よく円形物の真贋を識別し得るものである。例えば、図17に示すように、リング状検出領域V及びリング状検出領域V'の2つのリングエリアからリングデータを求めることができる。以下、この他のパターン識別方法について具体的に説明する。
【0117】
図11において、まず、光学画像データの取込みが行われる(ステップS901)。そして、硬貨中心点の検出が行われる(ステップS802)。なお、上述したステップS501,S502と同様の処理が行われるので、その説明を省略する。
【0118】
次いで、複数のリングエリアの全てについて、差分データ列ΔLを計算したか否かが判断される(ステップS903)。より具体的には、データ処理部41cは、予め初期化された変数k(例えばk=1)を用いて、1ポイント巡回させるごとにこの変数kをインクリメントし、この変数kが予め定められたリングエリアの総数を超えたか否かによって判断する。
【0119】
データ処理部41cは、ステップS903においてまだ全てのリングエリアについて差分データ列ΔLを計算していないと判定した場合には、各リングエリア用のパラメータの選択処理が行われる(ステップS904)。より具体的には、データ処理部41cは、予めROM等のメモリに記憶されている各リングエリア用の切り出し半径R,各リングエリア用の正窓W,各リングエリア用の負窓Wを選択し、RAM等のメモリにセットする。
【0120】
次いで、リングデータの切り出し(ステップS905)、リングデータの圧縮(ステップS906)、選択窓の設定(ステップS907)、総和演算処理(ステップS908)、減算処理(ステップS909)、リングデータDと正窓W及び負窓Wとの相対的巡回演算(ステップS910及びステップS911)、のそれぞれが行われるが、これらの処理は上述したステップS503〜ステップS509の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0121】
次いで、データ処理部41cは、ステップS903において全てのリングエリアについて差分データ列ΔLを計算していないと判定した場合には、角度別総和演算処理を行う(ステップS912)。より具体的には、データ処理部41cは、上述したステップS908〜ステップS911において計算された各リングエリアについての差分データ列ΔLを角度別に加算した差分総和データ列ΔSLを生成する。ここで、この差分総和データ列ΔSLは、特定の角度においてピーク値をもつ複数の差分データ列ΔLの全てを加算したものであるから、そのピーク値は、総和演算を行う前の各差分データ列ΔL単独のピーク値と比してより強調された(大きな)値となる。
【0122】
最後に、上述のステップS912の角度別総和演算処理が行われた後に、硬貨Cの識別処理が行われる(ステップS913)。より具体的には、データ処理部41cは、差分総和データ列ΔSLのピーク値と所定の閾値Tとを比較し、閾値Tよりも大きければ、その情報を真贋判定部41dに送信して真貨であると判定され(ステップS514)、閾値Tよりも小さければ、その情報を真贋判定部41dに送信して偽貨であると判定される(ステップS515)。これより、硬貨Cの真贋を識別することが可能となる。
【0123】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る他のパターン識別方法によれば、ステップS912の角度別総和演算処理によって得られた差分総和データ列ΔSLのピーク値が、当該総和演算を行う前の各差分データ列ΔL単独のピーク値と比してより強調された(大きな)値となるため、鑑別性能を向上させることができる。
【0124】
[第2の実施の形態に係るパターン識別方法]
図12は、本発明の第2の実施の形態に係るパターン識別方法についてのフロー図である。なお、ここでは、四角物(紙幣)の一例として1000円札を用いて説明する。
【0125】
図12において、まず、紙幣の光学画像データの取込みが行われる(ステップS1001)。より具体的には、CPU41内の搬送制御部41fからの指令に基づき硬貨(紙幣)搬送部44(紙幣繰出し機構21)は紙幣を搬送し、紙幣が所定の位置に搬送されたとき、照明制御部41eからの指令に基づき照明部43は紙幣の表面全体を照らし、紙幣の表面からの反射光が画像撮像部42(例えばイメージセンサ)に入力されたとき、画像取込制御部41aは紙幣の光学画像を取り込み、この光学画像を画像記憶部41bに記憶する。
【0126】
次いで、金銭データの切り出しが行われる(ステップS1002)。より具体的には、データ処理部41cは、紙幣の光学画像上に、1000円札の特徴的な模様を含む右隅において、一定のピッチ(例えば1画素毎)で長方形状に光学画像データを切り出す(図12参照)。
【0127】
次いで、選択窓の設定が行われる(ステップS1003)。より具体的には、データ処理部41cは、ステップS1002の処理によって切り出された金銭データ上に、極大値が含まれる範囲を抽出する第1の選択領域としての選択窓(正窓)Wと、極小値が含まれる範囲を抽出する第2の選択領域としての選択窓(負窓)Wと、を設定する。ここで、この正窓Wと負窓Wの設定パターンは、予めROM等のメモリに記憶されており、金種の仮決定の段階で、どの設定パターンが選択されるべきかが決定される。例えば、金種の仮決定の段階で1000円札であると推定された場合には、1000円札に対して正窓W及び負窓Wを相対移動させたときに、1000円札の特徴的な模様上に正窓Wが、1000円札の非特徴的な部分に負窓Wがくるような設定パターンが選択される。例えば、図14(a)においては、正窓W及び負窓Wが交互に設定された選択領域が1000円札の中央付近にあるときに、1000円札の特徴的な部分(「1000」の数字の部分(濃淡パターンが濃い部分))の特徴量が正窓Wより抽出でき、1000円札の非特徴的な部分(「1000」の数字以外の部分(濃淡パターンが淡い部分))の特徴量が負窓Wより抽出できる。すなわち、正窓W及び負窓Wが交互に設定された選択領域が図14(a)に示す位置にあるときのレベル値出力は、図14(b)に示すような波形となる。正窓Wより抽出された特徴量(レベル値)の出力は、負窓Wより抽出された特徴量(レベル値)の出力より高いことが分かる。
【0128】
なお、図14では濃度の高い部分を加算対象として選択している。また、図14において、正窓Wの形状を正方形状とし、負窓Wの形状も正方形状としたが、本発明では特にこれらの形状に限られることなく、例えば円、楕円、台形等の形状の窓であっても構わない。また、正窓Wと負窓Wの数を複数設定したが、それぞれ単数であっても構わない。
【0129】
次いで、総和演算処理が行われる(ステップS1004)。より具体的には、データ処理部41cは、ステップS1003において設定された正窓Wの中にある金銭データの総和値Sと、ステップS1003において設定された負窓Wの中にある金銭データの総和値Sと、を算出する。
【0130】
次いで、減算処理が行われる(ステップS1005)。より具体的には、データ処理部41cは、ステップS1004において算出した総和値Sから総和値Sを減算する。そして、この減算処理によって得られた値を差分データ列ΔLの最初の要素としてRAM等のメモリに記憶する。なお、選択領域として正窓Wのみを採用し、選択領域として負窓Wを採用しない場合には、このステップS507の処理は行われず、ステップS1004において算出した総和値Sそのものが総和データ列の最初の要素としてRAM等のメモリに記憶される。
【0131】
次いで、金銭データを全部スキャンしたか否か、すなわち例えば図15(a)において、金銭データと、正窓W及び負窓Wと、を相対的に1ポイント(1画素)ずつ移動させ、縦方向及び横方向の全てをスキャンしたか否かを判断する(ステップS1006)。より具体的には、データ処理部41cは、予め初期化された変数i,j(例えばi,j=1)を用いて、レベル1(最上段の金銭データ)の左端から1ポイント右へ移動させるごとにこの変数iをインクリメントし、この変数iが所定の値(図15(a)では横方向のポイント数)を超えると、変数jのインクリメント(j=2)及び変数iの初期化(i=1)を行ってレベル2(上から2段目の金銭データ)へ移るが、この変数jが所定の値(図15ではj=16)を超えたか否かによって、金銭データを全部スキャンしたか否かを判断する。
【0132】
ステップS1006において、データ処理部41cは、金銭データを全部スキャンしていないと判別した場合には、金銭データと、正窓W及び負窓Wと、を相対的に1ポイントずつ右(或いは下)へ移動させた後に(ステップS1007)、処理をステップS1004の総和演算処理に戻し、その総和演算処理の算出結果を用いて減算処理を行い(ステップS1005)、この減算処理によって得られた値を差分データ列ΔLの次の要素としてRAM等のメモリに記憶し、再びステップS1006の処理を行う。
【0133】
ここで、本実施形態における金銭データは2次元行列になっていることから、ステップS1005の減算処理によって得られた差分データ(ステップS1005の減算処理を施さない場合には、ステップS1004において算出した総和値Sそのもの)も2次元行列になる。すなわち、図15(b)に示すように、例えば、横軸を相対移動させる量(ポイント数)、縦軸をステップS1005の減算処理によって得られた差分データとした場合において、L1では、差分データは全体的に低く濃度変化がほとんどないことから平坦な波形となる。同様に、L2〜L4までは、濃度変化がほとんどないことから平坦な波形となる。しかし、L5〜L11あたりでは、1000円札の特徴的な部分(「1000」の数字の部分)の特徴量が正窓Wより抽出され、1000円札の非特徴的な部分(「1000」の数字以外の平らな部分)の特徴量が負窓Wより抽出されるタイミングで、顕著なピーク値をもち、そこから左右へ相対移動させると極小値及び極大値が交互に表れるような波形となる。上述した差分データ列ΔLは、L1〜L16までの各レベルにおける波形(1次元差分データ)を順々に結合することによって求めることができ(図15(c)参照)、L1〜L16までの16区分の波形から構成される。
【0134】
一方で、データ処理部41cは、ステップS1006において、金銭データを全部スキャンしたと判別した場合には、所定の閾値を超えたか否かの識別処理を行う(ステップS1008)。この識別処理は、上述の処理によって得られた差分データ列ΔLのピーク値と所定の閾値Tとを比較し、閾値Tよりも大きければ真札であると判定し(ステップS1009)、閾値Tよりも小さければ偽札であると判定する(ステップS1010)。これより、紙幣の真贋を識別することが可能となる。
【0135】
ここで、ステップS1008においては、閾値Tと比較する対象として差分データ列ΔLのピーク値を用いているが、この差分データ列ΔLのピーク値は、金銭データと、正窓W及び負窓Wと、を相対的に1ポイントずつ移動させている場合において、正窓Wの中に1000円札の特徴的な模様があり、かつ、負窓Wの中に1000円札の非特徴的な部分があるときの値となる。すなわち、図15(c)においては、L5〜L11の各区分の中央付近で、差分データ列ΔLは複数のピーク値をとることとなる。従って、低コストかつ簡便に1000円札の特徴量の抽出精度を向上・安定化することができ、ひいては、鑑別性能を向上させることができる。
【0136】
なお、本発明の第2の実施の形態においては、正窓W及び負窓Wが交互に設定された選択領域は左右方向に線で形成され、この選択領域を左右方向に相対移動させながら総和演算処理を行うこととしたが、本発明はこれに限られず、正窓W及び負窓Wが交互に設定された選択領域を上下方向に線で形成し、この選択領域を上下方向に相対移動させながら総和演算処理を行うこととしてもよいし、正窓W及び負窓Wが交互に設定された選択領域を2次元面で形成し、この選択領域を左右方向或いは上下方向に相対移動させながら総和演算処理を行うこととしてもよい。
【0137】
また、本発明の第2の実施の形態においては、上述したステップS1001で取り込まれた光学画像データをそのまま用いているが、必要に応じて微分、平滑フィルタ等を介してフィルタリング処理を施すこととしてもよい。
【0138】
また、本発明の第1の実施の形態において述べたように、差分データ列ΔLの最大値ではなく最小値をピーク値として採用する、ステップS1005の減算処理をステップ1008の識別処理の直前に行う、差分データ列ΔLのピーク値から差分データ列ΔLの輝度レベル(出力レベル)の平均値を減算した値を所定の閾値と比較解析するなど、本発明の第2の実施の形態においても様々な応用例が考えられる。
【0139】
さらに、本発明の第1の実施の形態に係る変形例で述べた内容(紙幣の表面と裏面の両方で識別処理を行うこと)、本発明の第1の実施の形態に係る他の変形例で述べた内容(紙幣の表面の1箇所ではなく、複数の箇所から金銭データを抽出して識別処理を行うこと)は、本発明の第2の実施の形態においても適用可能である。また、搬送時の影響等で特徴的な部分あるいは非特徴的な部分の位置が円周方向で変わっていく円形物とは違い、紙幣のような四角物は搬送時の影響等で特徴的な部分あるいは非特徴的な部分の位置が変わることはない。従って、正窓Wまたは負窓Wを固定した状態で総和値S又は総和値Sを求め、これらを用いて紙幣の真贋を識別することもできる。この場合には、例えば、総和値S又は総和値Sを所定の閾値と比較解析することでその真贋を識別することができる。あるいは、総和値Sと総和値Sとの差の値を所定の閾値と比較解析してその真贋を識別してもよい。
【実施例1】
【0140】
以下、本発明の実施例について、実験によって得られたデータを用いて詳述する。なお、ここでは本発明の第1の実施の形態に係る識別装置による実験によって得られたデータを用いて詳述する。
【0141】
図16(a)は、本発明の実施例に係る100円硬貨の光学画像上に、同心円状の5本のリング状検出領域を設定し、所定の位置に、正窓Wと負窓Wを設定した様子を示す図である。ここで、100円硬貨の特徴的な模様上に正窓WP1〜正窓WP5が、100円硬貨の非特徴的な部分に負窓WN1〜負窓WN8がくるような設定パターンが選択されている。
【0142】
そして、正窓WP1〜正窓WP5及び負窓WN1〜負窓WN8のそれぞれにおいて、各切り出し角度において半径方向に圧縮処理を施してリングデータDを生成する(図5のステップS504参照)。ここで、このリングデータDのヒストグラムと各窓との対応関係を図16(b)に示す。図16(b)において、横軸(X軸)は、角度ピッチ5度で切り出した場合の検出点数(=72点)からなり、縦軸(Y軸)は、回転角度に対するリングデータDのヒストグラムからなり、薄い網目は正窓WP1〜正窓WP5の位置、濃い網目は負窓WN1〜負窓WN8を示す。図16(b)によれば、正窓WP1〜正窓WP5にはリングデータDの極大値が含まれており、負窓WN1〜負窓WN8にはリングデータDの極小値が含まれているのが分かる。
【0143】
次に、総和演算処理(図5のステップS506参照)及び減算処理(図5のステップS507参照)が行われ、正窓WP1〜正窓WP5の中にあるリングデータDの総和値S(図16(c)においてX=1におけるリングデータDの値)と、図5のステップS505において設定された負窓WN1〜負窓WN8の中にあるリングデータDの総和値S(図16(d)においてX=1におけるリングデータDの値)と、の差分データ、すなわちSからSを引いた値(図16(e)においてX=1におけるリングデータDの値)が算出される。
【0144】
次いで、リングデータDを時計回りにシフトさせ(図5のステップS508及びステップS509参照)、5度の角度ピッチで(検出点でいえば1ポイント)シフトさせるごとに、リングデータDの総和値S,総和値S,及び差分データが算出される。そうすると、シフトさせた量に対する総和値Sを示す図(図16(c))と、シフトさせた量に対する総和値Sを示す図(図16(d))と、シフトさせた量に対する差分データ、すなわち差分データ列ΔLを示す図(図16(e))のそれぞれの図が得られる。これらの図によれば、確かに、図16(c)におけるピーク値(X=1)と比べて、図16(e)におけるピーク値(X=1)の方が大きくなっており、このピーク値を円形物の真贋の識別に用いることによって鑑別性能が向上することが分かる。
【0145】
一方で、図16(f)は、排除すべき硬貨表面の光学画像から得られたリングデータDのヒストグラムと各窓との対応関係を示す図である。また、図16(g)は、図16(f)に示すリングデータDから求めた差分データ列ΔLを示す図である。図16(g)では、差分データ列ΔLのピーク値(=約−500)は、図16(e)に示す差分データ列ΔLのピーク値(=約1800)ほど大きいものではない。
【0146】
以上説明したように、受け付けるべき硬貨表面の光学画像から得られたリングデータDから求めた差分データ列ΔL(図16(e))のピーク値と、排除すべき硬貨表面の光学画像から切り出されたリングデータDから求めた差分データ列ΔL(図16(g))のピーク値と、の間には大きな差があり、この差を利用することによって、被識別物たる円形物の真贋の鑑別性能の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明に係るパターン識別方法は、被識別物や被識別円形物の種類または真贋を判定するにあたって実行される画像処理の負荷を軽減させることで、光学画像を用いる方式を採用した場合であっても、装置の低廉化及び小型化を図ることができるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る識別装置の内部に設けられた硬貨搬送路の概略構造を示した平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る識別装置の内部に設けられた硬貨搬送路の側面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る識別装置の内部に設けられた光学式コインセンサ装置の概略構造を表した拡大側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る識別装置の内部に設けられた紙幣搬送路の概略構造を示した平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る識別装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るパターン識別方法についてのフロー図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る識別装置に投入する円形物(硬貨)の光学画像の一例を表した図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る識別装置に投入する円形物(硬貨)の光学画像上に選択窓が設定された様子を示した図である。
【図9】図6のフロー図で示すステップS508の処理とステップS510の処理の間に挿入されるサブルーチンを示すフロー図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る他のパターン識別方法についてのフロー図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る他のパターン識別方法についてのフロー図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係るパターン識別方法についてのフロー図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る識別装置に挿入する四角物(紙幣)の光学画像の一例を表した図である。
【図14】(a)は本発明の第2の実施の形態に係る識別装置に挿入する四角物(紙幣)の光学画像上に選択窓が設定された様子を示した図である。 (b)は、選択領域が(a)に示す位置にあるときのレベル値出力を示す波形図である。
【図15】(a)本発明の第2の実施の形態に係る識別装置に挿入する四角物(紙幣)の光学画像から得られた金銭データをスキャンする様子を示した図である。 (b) 選択領域の相対移動量に対し、減算処理によって得られた差分データ差分データを示す波形図である。 (c) 選択領域の相対移動量に対し、1次元の差分データ列を示す波形図である。
【図16】(a)は、受け付けるべき硬貨表面の光学画像上に、リング状検出領域と正窓W及び負窓Wを設定した様子を示す図である。 (b)は、(a)の光学画像から得られたリングデータDのヒストグラムと各窓との対応関係を示す図である。 (c)は、(a)の光学画像から得られたリングデータDをシフトさせた量に対する総和値Sを示す図である。 (d)は、(a)の光学画像から得られたリングデータDをシフトさせた量に対する総和値Sを示す図である。 (e)は、(a)の光学画像から得られたリングデータDをシフトさせた量に対する差分データ列ΔLを示す図である。 (f)は、排除すべき硬貨表面の光学画像から得られたリングデータDのヒストグラムと各窓との対応関係を示す図である。 (g)は、(f)の光学画像から得られたリングデータDをシフトさせた量に対する差分データ列ΔLを示す図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係る他のパターン識別方法についての光学画像の一例を表した図である。
【図18】従来のパターン識別方法の識別手順を表した概略フロー図である。
【図19】従来のパターン識別方法の識別手順を模式的に表した工程説明図である。
【符号の説明】
【0149】
1 硬貨搬送路
20 紙幣搬送路
C 硬貨(円形物)
CSU 光学式コイン(紙幣)センサ装置(CCDエリアセンサ)
正窓
負窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別対象となる被識別物の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データを一定のピッチで抽出し、抽出して得られた出力データを解析することで、この被識別物の表面の模様パターンを識別するパターン識別方法において、
前記出力データ上に、当該出力データの複数の極大値を含み、かつ、それらの極大値が前記模様パターンに応じた位置関係となるように配列された第1の選択領域と、当該出力データの複数の極小値を含み、かつ、それらの極小値が前記模様パターンに応じた位置関係となるように配列された第2の選択領域と、を予め設定し、
前記第1の選択領域内の出力データの第1の総和値と、前記第2の選択領域内の出力データの第2の総和値と、を求める総和演算処理を実行し、
前記出力データと、前記第1の選択領域及び前記第2の選択領域と、を前記一定のピッチで相対的に移動させる毎に前記総和演算処理を実行することによって、前記第1の総和値のデータ列である第1の総和データ列と、前記第2の総和値のデータ列である第2の総和データ列と、を求め、
前記第1の総和データ列の各要素と、それに対応する前記第2の総和データ列の各要素と、の差分を計算することによって差分データ列を算出し、
前記差分データ列の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【請求項2】
識別対象となる被識別円形物の表面の模様パターンを撮像することによって得られた画像データにこの被識別円形物と同心のリング状検出領域を設定し、前記リング状検出領域における画像データを一定のピッチで抽出して得られた出力データを解析することで、被識別円形物の表面の模様パターンを識別するパターン識別方法において、
前記出力データ上に、当該出力データの複数の極大値を含み、かつ、それらの極大値が前記模様パターンに応じた位置関係となるように配列された第1の選択領域と、当該出力データの複数の極小値を含み、かつ、それらの極小値が前記模様パターンに応じた位置関係となるように配列された第2の選択領域と、を予め設定し、
前記第1の選択領域内の出力データの第1の総和値と、前記第2の選択領域内の出力データの第2の総和値と、を求める総和演算処理を実行し、
前記出力データと、前記第1の選択領域及び前記第2の選択領域と、を前記一定のピッチで相対的に巡回させる毎に前記総和演算処理を実行することによって、前記第1の総和値のデータ列である第1の総和データ列と、前記第2の総和値のデータ列である第2の総和データ列と、を求め、
前記第1の総和データ列の各要素と、それに対応する前記第2の総和データ列の各要素と、の差分を計算することによって差分データ列を算出し、
前記差分データ列の解析を行うことによって被識別円形物の表面の模様パターンを識別することを特徴とするパターン識別方法。
【請求項3】
前記リング状検出領域を半径方向に沿って複数設定し、各リング状検出領域から得られる複数の差分データ列を解析することを特徴とする請求項2記載のパターン識別方法。
【請求項4】
前記差分データ列を特定入力データとして入力する第1ステップと、
前記特定入力データ上に、当該特定入力データの極大値を含む第1の特定選択領域と、当該特定入力データの極小値を含む第2の特定選択領域と、を設定する第2ステップと、
前記第1の特定選択領域内の特定入力データの第1の特定総和値と、前記第2の特定選択領域内の特定入力データの第2の特定総和値と、を求める特定総和演算処理を実行する第3ステップと、
前記特定入力データと、前記第1の特定選択領域及び前記第2の特定選択領域と、を一定のピッチで相対的に移動させる毎に前記特定総和演算処理を実行することによって、前記第1の特定総和値のデータ列である第1の特定総和データ列と、前記第2の特定総和値のデータ列である第2の特定総和データ列と、を求める第4ステップと、
前記第1の特定総和データ列の各要素と、それに対応する前記第2の特定総和データ列の各要素と、の差分を計算することによって特定差分データ列を算出する第5ステップと、
からなる一連の処理が行われた後、前記特定差分データ列の解析の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のパターン識別方法。
【請求項5】
前記特定差分データ列を特定入力データとして、前記第2ステップから前記第5ステップまでの処理を複数回繰り返し行った後に得られた特定差分データ列の解析を行うことによって被識別物の表面の模様パターンを識別することを特徴とする請求項4記載のパターン識別方法。
【請求項6】
前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の解析は、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列のピーク値を検出し、その検出したピーク値と所定の閾値との比較解析であることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のパターン識別方法。
【請求項7】
前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の解析は、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列のピーク値をカウントし、そのカウントしたピーク値の総個数と所定の閾値との比較解析であることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のパターン識別方法。
【請求項8】
前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の解析は、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列全体と、予め設定した基準差分データ列との比較解析であることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のパターン識別方法。
【請求項9】
前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の解析は、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列のピーク値を検出するとともに、前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の平均値を求め、
前記差分データ列或いは前記特定差分データ列のピーク値から前記差分データ列或いは前記特定差分データ列の平均値を減算した値と所定の閾値との比較解析であることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のパターン識別方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか記載のパターン識別方法を用いて、被識別円形物の真贋を判定するパターン識別方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか記載のパターン識別方法を用いて、被識別円形物の表面の模様パターンを識別する識別手段を備えたことを特徴とする識別装置。
【請求項12】
前記識別手段の識別結果により、被識別円形物の真贋を判定する真贋判定手段を備えたことを特徴とする請求項11記載の識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−309793(P2006−309793A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198270(P2006−198270)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【分割の表示】特願2003−410628(P2003−410628)の分割
【原出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】