説明

パターン転写装置及びパターン転写方法

【課題】被転写材料にパターン転写して得られる製品(デバイス)の性能を安定化させることができるパターン転写装置を提供する。
【解決手段】本発明のパターン転写装置1Aは、微細な凹凸パターンのパターン転写前にモールド2又は被転写材料3に所定の表面処理を施す前処理機構(離型剤供給機構7)と、前記前処理機構によって施された前記表面処理に関する情報を、前記被転写材料3のパターン転写された領域と関連付けした位置に記録する情報記録機構12と、記録された前記情報を読み出す判読機構13と、前記判読機構13によって判読した前記情報に基づいて、前記パターン転写された領域の前記被転写材料3に所定の後処理を施す後処理機構14と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸パターンをナノインプリント法で被転写材料に転写するパターン転写装置及びパターン転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの反射防止フィルム、導光板等の光学部品、細胞培養シート等のバイオデバイス、太陽電池、発光装置等の電子デバイスにおいては、その性能の向上を図り、そして所望の機能を発現させるために、各種材料の表面に微細な凹凸パターンを形成した部材が使用されている。
従来、微細な凹凸パターンを形成する技術としては、ナノインプリント技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1参照)。
このナノインプリント技術とは、ナノメートルサイズの微細な凹凸パターンを有するモールドを、基板の表面に塗布した樹脂に型押しして転写する技術である。ちなみに、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1の転写技術は、樹脂に平板状のモールドをスタンプ式に押し付けるものである。
【0003】
また、ローラータイプのモールドを使用した転写技術も知られている(例えば、特許文献3及び非特許文献2参照)。この転写技術によれば、連続的に回転するモールドに被転写材料を連続して供給することができるので、平板状のモールドを使用したスタンプ式の転写技術(例えば、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1参照)と比較して、転写工程を高速化することができる。
【0004】
また、本発明者らは、ベルトタイプのモールドを使用した転写技術を開示している(特許文献4及び特許文献5参照)。この転写技術によれば、被転写材料に対してベルトタイプのモールドが供給されることによって、平板状のモールドを使用したスタンプ式の転写技術(例えば、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1参照)と比較して、転写工程を高速化しつつ、パターン転写精度を、より向上させることができる。
【0005】
ところで、ナノインプリント技術においては、一般に、モールドと被転写材料とが付着してしまうことを防止するために、モールドの表面の化学種と共有結合するようなフッ素系材料等からなる離型層を予めモールド全体に形成する。このような離型層は、パターン転写を繰り返すにつれて離型層を構成する材料が脱落して離型性が徐々に低下していく。そのため、モールドの転写不良やモールドに目詰まりが生じると、モールドを新しいものと交換したり、モールドの表面に新たに離型層を形成する再生処理を行ったりする必要がある。
【0006】
これに対して、特許文献4及び特許文献5の転写技術では、パターン転写を複数回繰り返した後のモールド表面に、このモールド表面の化学種と共有結合するのではなく、モールド表面に吸着する非反応型離型剤を逐次供給する。したがって、この転写技術によれば、モールドの離型性の低下を防止することができると共に、モールドの転写不良や目詰まりを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5259926号明細書
【特許文献2】米国特許第5772905号明細書
【特許文献3】特開2006−326948号公報
【特許文献4】特開2009−158731号公報
【特許文献5】特開2009−078521号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S.Y.Chou et al.,Appl.Phys.Lett.、vol.67,p.3114(1995)
【非特許文献2】Hua Tan et al.,J.Vac.Sci.Technol.B16(6),p.3926(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、非反応型離型剤をモールド表面に逐次供給する離型処理(特許文献4及び特許文献5参照)においては、パターン転写するたびにモールド表面の非反応型離型剤が被転写材料の表面に移動する。そして、この非反応型離型剤の移動量、言い換えれば、被転写材料表面への非反応型離型剤の付着量は、非反応型離型剤をモールド表面に供給した直後と、複数回のパターン転写を繰り返した後とでは異なる。そのため、被転写材料にパターン転写して得られた製品(デバイス)の性能にバラツキを生じさせる虞がある。
また、このようなモールド表面に対する離型処理に限らず、パターン転写を連続的に行いつつ、モールド又は被転写材料に所定の処理を施す場合においてもこれと同様に、得られる製品(デバイス)の性能にバラツキを生じさせる虞がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、被転写材料にパターン転写して得られる製品(デバイス)の性能を安定化させることができるパターン転写装置及びパターン転写方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する本発明は、微細な凹凸パターンを有するモールドを被転写材料に押圧した後に前記モールドを前記被転写材料から剥離することで前記被転写材料の表面に前記凹凸パターンを転写するパターン転写装置であって、パターン転写前に前記モールド又は前記被転写材料に所定の表面処理を施す前処理機構と、前記前処理機構によって施された前記表面処理に関する情報を、前記被転写材料のパターン転写された領域と関連付けした位置に記録する情報記録機構と、記録された前記情報を読み出す判読機構と、前記判読機構によって判読した前記情報に基づいて、前記パターン転写された領域の前記被転写材料に所定の後処理を施す後処理機構と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記課題を解決する本発明は、微細な凹凸パターンを有するモールドを被転写材料に押圧した後に前記モールドを前記被転写材料から剥離することで前記被転写材料の表面に前記凹凸パターンを転写するパターン転写方法であって、パターン転写前に前記モールド又は前記被転写材料に所定の表面処理を施す前処理工程と、前記前処理工程によって施された前記表面処理に関する情報を識別マークとして前記被転写材料のパターン転写した領域と関連付けされた位置に記録する情報記録工程と、前記前処理工程によって施された前記表面処理に関する情報を、前記被転写材料のパターン転写された領域と関連付けした位置に記録する情報記録工程と、前記情報を読み取る判読工程と、前記判読工程によって判読した前記情報に基づいて、前記パターン転写された領域の前記被転写材料に所定の後処理を施す後処理工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被転写材料にパターン転写して得られる製品(デバイス)の性能を安定化させることができるパターン転写装置及びパターン転写方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパターン転写装置を模式的に示す構成説明図である。
【図2】図1のパターン転写装置の情報記録機構の周辺を示す部分斜視図である。
【図3】図2に示す情報記録機構の変形例を示すパターン転写装置の部分斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るパターン転写装置を模式的に示す構成説明図である。
【図5】図4のパターン転写装置の情報記録機構の周辺を示す部分斜視図である。
【図6】図5に示す情報記録機構の変形例を示すパターン転写装置の部分斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るパターン転写装置を模式的に示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第1実施形態から第3実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
構成説明図である図1に示すように、本実施形態に係るパターン転写装置1Aは、モールド2を予め定められたモールド搬送経路15に沿って搬送するモールド搬送機構10と、被転写材料3を予め定められた被転写材料搬送経路16に沿って搬送する被転写材料搬送機構11と、モールド2と被転写材料3とを互いに押圧するための押圧機構4Aと、モールド2に離型剤を供給する離型剤供給機構7と、情報記録機構12と、判読機構13と、後処理機構14と、を備えている。
【0016】
なお、本実施形態での離型剤供給機構7は、ロール8dからロール8aに向かう区間のモールド搬送経路15上で離型剤をモールド2に供給するように配置されているが、離型剤供給機構7の配置位置はこれに限定されるものではなく、ロール8cからロール8dに向かう区間、又はロール8aからロール8bに向かう区間のモールド搬送経路15上で離型剤を供給するように配置されていてもよい。また、離型剤供給機構7は、モールド搬送経路15上で複数箇所に配置されていてもよい。また、離型剤供給機構7としては、モールド2の凹凸パターンの表面に離型剤を付与して離型層を形成することができればいかなる構成であってもよく、例えば、離型剤にモールド2を浸漬し、又は離型剤をモールド2に塗布する構成が挙げられる。ちなみに、塗布する方式としては、例えば、スプレー式、インクジェット式、ディスペンサー式、ブラシ式等のいずれであってもよい。なお、常温で固体の離型剤については、適当な溶媒又は分散媒によって溶液又は分散液を調製して使用することができる。
【0017】
離型剤供給機構7から供給される離型剤としては、モールド2の表面の化学種と共有結合しない、いわゆる非反応型離型剤が望ましく、具体的にはフッ素系離型剤が望ましい。中でも、分子末端に極性基を有するフッ素系離型剤が望ましく、特に、水酸基、エーテル基及びエステル基の少なくとも1種を分子末端に有するフッ素系離型剤が望ましい。
【0018】
本実施形態でのモールド2は、ベルト状に形成されると共に環状になってエンドレスベルト状のモールド2となっている。このモールド2は、被転写材料3と接する環状の外側となる面に、被転写材料3に転写する微細な凹凸パターン(図示省略)を有している。この凹凸パターンは、その凹部と凸部が繰り返して連続に形成されたパターンであり、凹部の深さ(又は凸部の高さ)、凹部の幅(又は凸部の幅)、凹部同士の間隔(又は凸部同士の間隔)がナノメートルオーダで形成されている。
ちなみに、その凹凸形状は、このパターン転写装置1Aで得られる微細構造体の用途に応じて適宜に設定することができ、例えば、柱状、穴状、ラメラ状(襞状)等が挙げられる。また、凹凸パターンは、モールド2の全周に亘って形成されていてもよいし、モールド2の一部に形成されていてもよい。
【0019】
本実施形態でのモールド2の材質としては、可撓性を有すると共に、要求される強度と加工精度を実現できるものであれば特に制限は無い。例えば、各種金属、各種樹脂等が挙げられる。金属としては、ニッケルが望ましく、樹脂としては、ポリイミド樹脂及び光硬化性樹脂が望ましい。また、このようなモールド2は、前記した凹凸パターンが形成されるニッケル等の金属やポリイミド樹脂等の樹脂と、これを支持する、例えば、ステンレス、芳香族ポリアミド樹脂(例えばケブラー(登録商標)樹脂)等のベース部材が一体となった複合積層体とすることができる。
【0020】
本実施形態でのモールド搬送機構10は、環状のモールド2が掛け渡される複数のロール8a,8b,8c,8dと、これらのロール8a,8b,8c,8dを予め定められた回転角度ごとに断続的に回転駆動するステッピングモータ等の駆動機構(図示省略)とで構成されている。本実施形態でのロール8a,8b,8c,8dは、環状のモールド2の内側と接するように配置されている。
【0021】
前記した駆動機構は、各ロール8a,8b,8c,8dを反時計周りに断続的に回転(左回転)させることでモールド2を断続的に左回転させて、後記する押圧機構4Aへモールド2を、所定の長さごとに断続的に、かつエンドレスに送り込むようになっている。ロール8a,8b,8c,8dの駆動機構(図示省略)の回転角度は、例えば、押圧機構4Aへ送り込まれるモールド2の長さが予め定められた長さとなるように設定されている。なお、図1中、符号Xを付した矢印はモールド2の搬送方向を示している。
【0022】
4つのロール8a,8b,8c,8dのうち、後記する被転写材料搬送機構11によって搬送される被転写材料3にモールド2を押し当てるように配置される2つのロール8b,8cは、搬送されるモールド2の上流側のロール8bでモールド2を被転写材料3と接するように送り込み、下流側のロール8cでモールド2を被転写材料3から引き離すように機能している。なお、これらのロール8a,8b,8c,8dは、この4つに限定されるものではなく、前記したロール8b,8cの機能を有するものを少なくとも有していれば、3つ又は5以上であってもよい。
【0023】
本実施形態での被転写材料3は、長尺のベルト状に形成されたものであって、熱可塑性樹脂製のフィルム材で形成されている。この熱可塑性樹脂としては、このパターン転写装置1Aで得られる微細構造体の用途に応じて適宜に選択することができ、中でもガラス転移温度Tgが100℃から160℃程度のものが望ましく、具体的には、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。この被転写材料3は、次に説明する被転写材料搬送機構11の送出しリール9aに巻回されて収納されている。なお、本実施形態での被転写材料3は、熱可塑性樹脂で形成された単一層からなるフィルム材を想定しているが、少なくとも一方の最外層が熱可塑性樹脂で形成された多層構成であってもよい。
【0024】
本実施形態での被転写材料搬送機構11は、前記した被転写材料3を巻回して収納する送出しリール9aと、この送出しリール9aから送り出された被転写材料3を巻き取る巻取りリール9bと、少なくとも被転写材料3を巻き取るように巻取りリール9bを予め定められた回転角度ごとに断続的に回転駆動するステッピングモータ等の駆動機構(図示省略)とを備えている。この駆動機構は、巻取りリール9bを予め定められた回転角度ごとに断続的に回転させることで、予め定められた所定の長さごとに断続的に被転写材料3を巻き取るように構成されている。言い換えれば、巻取りリール9bは、駆動機構によって、被転写材料3を予め定められた長さごとに送出しリール9aから引き出して、後記する押圧機構4Aへ送り込むようになっている。なお、図1中、符号Yを付した矢印は被転写材料3の搬送方向を示している。
【0025】
本実施形態での巻取りリール9bの駆動機構は、前記したロール8a,8b,8c,8dの駆動機構と同期して、被転写材料3を押圧機構4Aへ送り込むタイミングを、モールド2を押圧機構4Aへ送り込むタイミングと一致させると共に、押圧機構4Aへ送り込む被転写材料3の長さと、押圧機構4Aへ送り込むモールド2の長さとを一致させている。
つまり、本実施形態に係るパターン転写装置1Aは、モールド2と被転写材料3とを重ね合わせた状態で押圧機構4Aに送り込むようになっている。なお、本実施形態では巻取りリール9bにのみ駆動機構を設けているが、巻取りリール9bの回転に同期して送出しリール9aを回転させる駆動機構を備えていてもよい。
【0026】
また、モールド2と被転写材料3とが密着している場合には、被転写材料搬送機構11に前記駆動機構を設けていないとしても、モールド搬送機構10を駆動させてモールド2を押圧機構4Aへ送り込むことによって、モールド2と被転写材料3とを同時に搬送することも可能である。また、被転写材料搬送機構11には、被転写材料3に弛みが生じないようにする張力調整機構(図示省略)を備えていてもよい。

【0027】
本実施形態での押圧機構4Aは、ロール8bとロール8cとの間で搬送されるモールド2と、この搬送区間のモールド2に重ね合わせられるように搬送される被転写材料3とを挟み込んで押圧するように構成されている。この押圧機構4Aは、ロール8bとロール8cとの間の区間で、モールド2及び被転写材料3を挟み込むように対向して配置される上側押圧部材6a及び下側押圧部材6bと、上側押圧部材6a及び下側押圧部材6bを、モールド2及び被転写材料3に押し付け、又はこれらから離反するように移動させる駆動装置(図示省略)とを備えている。ちなみに、この駆動装置の押し付けと離反の動作は、モールド2及び被転写材料3の搬送が停止している際に行われる。
【0028】
また、上側押圧部材6aには、ヒータ(図示省略)が内蔵されている。このヒータは、被転写材料3に押し付けられたモールド2を介して被転写材料3を加熱することによって、被転写材料3(熱可塑性樹脂)をそのガラス転移温度Tg以上に昇温するものである。なお、本実施形態では、上側押圧部材6aにのみヒータを配置することを想定しているが、下側押圧部材6bにのみヒータを配置する構成であってもよいし、両方の上側押圧部材6a及び下側押圧部材6bにヒータを配置する構成であってもよい。
このような押圧機構4Aによれば、モールド2の微細な凹凸パターンを被転写材料3に転写することができる。
【0029】
本実施形態での情報記録機構12は、押圧機構4Aの上側押圧部材6a及び下側押圧部材6bと横並びに配置される上側押圧部材19aと下側押圧部材19bとを備えている。
次に参照する図2は、図1のパターン転写装置の情報記録機構の周辺を示す部分斜視図である。
【0030】
図2に示すように、上側押圧部材19aと下側押圧部材19bは、モールド2と並走するように被転写材料3に重ねられる情報記録用モールド20と、被転写材料3とを挟んで押圧するように構成されている。そして、上側押圧部材19a及び下側押圧部材19bの少なくともいずれか一方にヒータが配置されている。そして、所定のタイミングで情報記録用モールド20と被転写材料3とを挟んで押圧することで、被転写材料3のパターン転写された領域と関連付けされた位置に対して、文字や記号などの情報を刻印で記録するようになっている。
【0031】
なお、本発明での情報記録機構12は、このような側押圧部材19a及び下側押圧部材19bの構成に限定されずに、例えば、インクジェットによる印字、印章による刻印、操作型レーザによる直接描画のほか、所望の文字や記号、磁気情報などを記したシールの貼り付けなどの方法によって、被転写材料3の表面に情報を記録するものであってもよい。
このような情報記録機構12の位置についても、押圧機構4Aと横並びの位置に限定されずに、被転写材料搬送経路16上のいずれかの位置に配置することができる。
【0032】
本実施形態での判読機構13は、前記の情報記録機構12によって所定の情報を記録した被転写材料3が搬送される方向に配置されている。この判読機構13は、被転写材料3に記録された文字や記号などの情報を読み取るために設けられており、例えば、カメラなどの撮像装置や磁気情報の読取り装置によって前記の文字や記号を読み取る。
【0033】
本実施形態での後処理機構14は、前記の判読機構13によって所定の情報を読み取った被転写材料3が搬送される方向に配置されている。この後処理機構14は、例えば被転写材料3のパターン転写した領域を打ち抜くための打ち抜き機のほか、所定の波長の光を照射するランプ、加熱用ヒータ、所定の気体や液体材料を被転写材料3の表面に供給する機構等がある。なお、これらの後処理機構14は、前記の判読機構13によって読み取った文字や記号情報に基づいて動作内容が定まるよう制御される。例えば、本実施形態における後処理機構14が打ち抜き機であれば、判読機構13で読み取った情報によって被転写材料3の打ち抜き位置を変えたり、打ち抜いて得られた被転写材料3の個片部を読み取った情報に従って選別することができる。例えば、前記したように、一定回数のパターン転写毎に離型処理を施す場合、離型処理してから経過したパターン転写回数によって被転写材料3の表面に付着する離型剤の量が異なる場合がある。そこで、前記の離型処理してから経過したパターン転写回数を情報記録機構12で記録し、この記録情報を判読機構13で読み取り、後処理機構14(打ち抜き機)で選別して、被転写材料3の個片部を回収することができる。このとき、製品(デバイス)の要求仕様を満たす条件を記録した個片部のみを回収すれば、特性の揃ったものだけを自動的に選択して得ることができ、被転写材料3にパターン転写して得られる製品(デバイス)の性能を安定化させることができる。
また、後処理機構14は、このような打ち抜き機に限定されずに、例えば、被転写材料3のパターン転写した領域に、保護コーティングを施す後処理を行うための機構であってもよい。
【0034】
また、情報記録用モールド20には、被転写材料3に転写する記録情報を複数並べて配置、形成しておき、パターン転写時には情報記録用モールド20の所望の記録情報が設けられた領域を、上側押圧部材19aと下側押圧部材19bによって被転写材料3に押圧されるように、図示しない移動機構で情報記録用モールド20を移動させて、記録情報を転写することができる。
【0035】
また、図2に示すように、モールド2と情報記録用モールド20とは、被転写材料3の同一平面上に配置されているが、お互いに被転写材料3の相対する表面にそれぞれ配置されてもよい。また、モールド2と情報記録用モールド20が被転写材料3の同一平面上にのみ配置されているが、モールド2と情報記録用モールド20の一方か、或いは両方が被転写材料3の両面に配置されてもよい。このほか、情報記録用モールド20を用いずに、例えば上側押圧部材19aと下側押圧部材19bの少なくともいずれか一方の、被転写材料3と接する表面上に配置するように、記録情報が変更可能な印章部材を内蔵させておき、この印章部材によって被転写材料3に刻印することによっても情報の記録が可能である。
【0036】
また、図2では情報記録機構12が押圧部材からなり、パターン転写用の押圧機構4Aとは独立して制御する場合の例を示したが、情報記録機構の変形例の部分斜視図である図3に示すように、押圧機構4Aの上側押圧部材6aと下側押圧部材6bを拡張して、情報記録用モールド20を一括して加圧することによっても、必要な情報を記録することができる。また、情報記録用モールド20を用いず、これに相当する位置の上側押圧部材6aと下側押圧部材6bの少なくともいずれか一方に、前述のような印章部材を内蔵させておき、モールド2によるパターン転写と、内蔵した印章部材による刻印とを同時に施してもよい。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0038】
構成説明図である図4に示すように、本実施形態に係るパターン転写装置1Bは、図1に示す上側押圧部材6a及び下側押圧部材6bとで構成される押圧機構4Aに代えて、上側ロール5a及び下側ロール5bとで構成される押圧機構4Bを備え、図1に示す上側押圧部材19aと下側押圧部材19bとで構成される情報記録機構12に代えて、後記する上側ロール21aと下側ロール21bとで構成される情報記録機構12を備える以外は、第1実施形態と同様に構成されている。ちなみに、ヒータは、上側ロール5a側に配置することを想定しているが、ヒータは、上側ロール5a及び下側ロール5bの少なくともいずれかに配置されていればよい。
【0039】
このパターン転写装置1Bでは、反時計周りに回転(左回転)する上側ロール5aと、時計回りに回転する(右回転)する下側ロール5bとの間に、重ね合わせられたモールド2及び被転写材料3が供給されて押圧されるようになっている。
【0040】
このパターン転写装置1Bは、第1実施形態に係るパターン転写装置1Aと同様の作用効果を奏することができると共に、次のような作用効果をも奏することができる。
このようなパターン転写装置1Bによれば、モールド2及び被転写材料3を連続して押圧機構4Bに送り込んで被転写材料3に凹凸パターンを形成することができる。したがって、このパターン転写装置1Bは、スタンプ式の押圧機構4Aを備える第1実施形態に係るパターン転写装置1A(図1参照)と比較して、凹凸パターンの転写速度を高めることができる。
図4中、符号21a及び符号21bは、次に説明する情報記録機構12としての上側ロール及び下側ロールである。
【0041】
次に参照する図5は、図4のパターン転写装置の情報記録機構の周辺を示す部分斜視図である。
図5に示すように、情報記録機構12を構成する上側ロール21aと下側ロール21bは、モールド2と並走するように被転写材料3に重ねられる情報記録用モールド20と、被転写材料3とを挟んで押圧するように構成されている。そして、上側ロール21a及び下側ロール21bの少なくともいずれか一方にヒータが配置されている。そして、所定のタイミングで情報記録用モールド20と被転写材料3とを挟んで押圧することで、被転写材料3のパターン転写された領域と関連付けされた位置に対して、文字や記号などの情報を刻印で記録するようになっている。
【0042】
また、情報記録用モールド20には、被転写材料3に転写する記録情報を複数並べて配置、形成しておき、パターン転写時には情報記録用モールド20の所望の記録情報が設けられた領域を、上側ロール21aと下側ロール21bによって被転写材料3に押圧されるように、図示しない移動機構で情報記録用モールド20を移動させて、記録情報を転写することができる。
【0043】
また、図5に示すように、モールド2と情報記録用モールド20とは、被転写材料3の同一平面上に配置されているが、お互いに被転写材料3の相対する面(表裏面)にそれぞれ配置されてもよい。また、モールド2と情報記録用モールド20が被転写材料3の同一平面上にのみ配置されているが、モールド2と情報記録用モールド20の一方か、或いは両方が被転写材料3の両面に配置されてもよい。
【0044】
また、図5では情報記録機構12が上側ロール21a及び下側ロール21bからなり、パターン転写用の押圧機構4Bとは独立して制御する場合の例を示したが、情報記録機構の変形例の部分斜視図である図6に示すように、押圧機構4Bの上側ロール5aと下側ロール5bを拡張して、情報記録用モールド20を一括して加圧することによっても、必要な情報を記録することができる。また、情報記録用モールド20を用いず、これに相当する位置の上側ロール21aと下側ロール21bの少なくともいずれか一方に、前述のような印章部材を内蔵させておき、モールド2によるパターン転写と、内蔵した印章部材による刻印とを同時に施してもよい。
【0045】
なお、図5では押圧機構4Bと情報記録機構12を概ね並列に配置しているが、パターン転写した箇所と情報を記録する位置が被転写材料3の送り方向Yに沿って一方がシフトして配置されてもよい。その場合、本実施形態においては、被転写材料3は連続的に搬送され続けるため、押圧機構4Bによって被転写材料3にパターン転写した領域が情報記録機構12の位置に到達した時点で、パターン転写領域に関連付けられる位置に情報が記録できるようにする必要がある。つまり、モールド2が有する凹凸パターンと、情報記録用モールド20が有する凹凸パターンが配置される周期とは、同一の周期であるか、一方の凹凸パターンの間隔の整数倍に相当する周期で配置することが望ましい。
【0046】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、図4の後処理機構14が打ち抜き機であれば、判読機構13で読み取った情報によって被転写材料3の打ち抜き位置を変えたり、打ち抜いて得られた被転写材料3の個片部を読み取った情報に従って選別することができる。このとき、製品(デバイス)の要求仕様を満たす条件を記録した個片部のみを回収すれば、特性の揃ったものだけを自動的に選択して得ることができ、被転写材料3にパターン転写して得られる製品(デバイス)の性能を安定化させることができる。
また、後処理機構14は、このような打ち抜き機に限定されずに、例えば、被転写材料3のパターン転写した領域に、保護コーティングを施す後処理を行うための機構であってもよい。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、前記第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0048】
構成説明図である図7に示すように、本実施形態に係るパターン転写装置1Cは、図4に示した構成における後処理機構として、被転写材料3に所定の波長の光を照射するための光照射機構22、被転写材料3に付着した離型剤を分解し得る溶剤を吹き付けるための清浄化機構24、被転写材料3のパターン転写した領域を選別して打ち抜き、回収するための回収機構26が設けられ、且つ、記録情報を読み取って各機構にフィードバックするための判読機構13、23、25がそれぞれ設けられている。
【0049】
このパターン転写装置1Cでは、押圧機構4Bによってパターン転写された被転写材料3の表面に情報記録機構12で情報を記録し、記録情報を判読機構13で読み取って光照射機構22に情報をフィードバックして、光の照射強度や照射時間などを制御してもよい。このとき、照射する光が離型剤を分解し得る波長になる光源を選択しておき、パターン転写直後の離型剤付着量に応じて光照射の条件を制御することで、光照射後の被転写材料3の表面の性状を同等にできる。このようにすれば、製品(デバイス)の要求仕様を満たすように特性の揃ったものだけを得ることができるため、製品(デバイス)の性能を安定化させることができる。
【0050】
また、前記の記録情報を判読機構23で読み取って清浄化機構24に情報をフィードバックして、溶剤の吹き付け量や吹き付け時間などを制御してもよい。このとき、パターン転写直後の離型剤付着量に応じて溶剤の吹き付け条件を制御することで、光照射後の被転写材料3の表面の性状を同等にできる。よって、前述の場合と同様に製品(デバイス)のの性能を安定化させることができる。
【0051】
さらに、前記の記録情報を判読機構25で読み取って回収機構26に情報をフィードバックして、被転写材料3の必要な領域、或いは不要な領域を選別して打ち抜き、回収することができる。よって、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、製品(デバイス)の要求仕様を満たす特性の揃ったものだけを自動的に選択して得ることができ、製品(デバイス)の性能を安定化させることができる。
【0052】
以上、本発明の第1実施形態ないし第3実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
本実施形態の情報記録機構12で被転写材料3に記録する情報として、モールド2に離型処理してからのパターン転写回数を挙げたが、本発明は離型処理に限定するものではなく、同様に一定のパターン転写回数毎に何らかの処理をモールド2もしくは被転写材料3に施したときのパターン転写の経過回数を記録して、後処理機構14による処理にフィードバックしてもよい。
【0053】
また、本実施形態ではパターン転写の経過回数を記録情報としたが、本発明はこれに限定されるものでなく、任意の前処理における処理条件などを記録して、後処理機構14にフィードバックしてもよい。
【0054】
また、前述のパターン転写の経過回数や任意の前処理条件などは、単独で記録するだけでなく、複数の情報を併せて記録してもよい。
【0055】
また、前述したような、後処理機構14にフィードバックするための記録情報だけでなく、例えば日付や時刻、パターン転写している場所の温度や湿度、モールドや被転写材料のロット情報などを併せて記録すれば、製品(デバイス)に不良が生じた際の来歴を調査するのに有用である。
【符号の説明】
【0056】
1A パターン転写装置
1B パターン転写装置
1C パターン転写装置
2 モールド
3 被転写材料
4A 押圧機構
4B 押圧機構
5a 上側ロール
5b 下側ロール
6a 上側押圧部材
6b 下側押圧部材
7 離型剤供給機構(前処理機構)
8a ロール
8b ロール
8c ロール
8d ロール
9a 送出しリール
9b 巻取りリール
10 モールド搬送機構
11 被転写材料搬送機構
12 情報記録機構
13 判読機構
14 後処理機構
15 モールド搬送経路
16 被転写材料搬送経路
19a 上側押圧部材
19b 下側押圧部材
20 情報記録用モールド
21a 上側ロール
21b 下側ロール
22 光照射機構
23 判読機構
24 清浄化機構
25 判読機構
26 回収機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な凹凸パターンを有するモールドを被転写材料に押圧した後に前記モールドを前記被転写材料から剥離することで前記被転写材料の表面に前記凹凸パターンを転写するパターン転写装置であって、
パターン転写前に前記モールド又は前記被転写材料に所定の表面処理を施す前処理機構と、
前記前処理機構によって施された前記表面処理に関する情報を、前記被転写材料のパターン転写された領域と関連付けした位置に記録する情報記録機構と、
記録された前記情報を読み出す判読機構と、
前記判読機構によって判読した前記情報に基づいて、前記パターン転写された領域の前記被転写材料に所定の後処理を施す後処理機構と、
を備えることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン転写装置において、
前記情報記録機構は、前記情報を、印字、刻印、及び貼付物の少なくともいずれか一つで記録することを特徴とするパターン転写装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のパターン転写装置において、
前記モールドがベルト状に形成されていることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパターン転写装置において、
前記前処理機構が、前記モールドの表面に離型剤を供給する離型剤供給機構であることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパターン転写装置において、
前記後処理機構が、
前記被転写材料のパターン転写された領域を打ち抜いて分離回収する回収機構、
前記被転写材料のパターン転写された領域に所定の波長の光を照射する光照射機構、及び前記被転写材料のパターン転写された領域に所定の液体又は気体を供給して洗浄する清浄化機構のうちの少なくとも一つの機構を備えて構成されていることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項6】
微細な凹凸パターンを有するモールドを被転写材料に押圧した後に前記モールドを前記被転写材料から剥離することで前記被転写材料の表面に前記凹凸パターンを転写するパターン転写方法であって、
パターン転写前に前記モールド又は前記被転写材料に所定の表面処理を施す前処理工程と、
前記前処理工程によって施された前記表面処理に関する情報を、前記被転写材料のパターン転写された領域と関連付けした位置に記録する情報記録工程と、
前記情報を読み取る判読工程と、
前記判読工程によって判読した前記情報に基づいて、前記パターン転写された領域の前記被転写材料に所定の後処理を施す後処理工程と、
を有することを特徴とするパターン転写方法。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン転写方法において、
前記情報記録工程は、前記情報を、印字、刻印、及び貼付物の少なくともいずれか一つで記録することを特徴とするパターン転写方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のパターン転写方法において、
前記前処理工程が、前記モールドの表面に離型剤を供給する離型剤供給工程であることを特徴とするパターン転写方法。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のパターン転写方法において、
前記後処理工程が、
前記被転写材料のパターン転写された領域を打ち抜いて分離回収する回収工程、
前記被転写材料のパターン転写された領域に所定の波長の光を照射する光照射工程、及び前記被転写材料のパターン転写された領域に所定の液体又は気体を供給して洗浄する清浄化工程のうちの少なくとも一つの工程を有することを特徴とするパターン転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218294(P2012−218294A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86252(P2011−86252)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】