説明

パッシブキーレスエントリー装置

【課題】携帯機が車両から離れていく場合に交信不良等により意図しない施錠がなされることを防止することのできるパッシブキーレスエントリー装置を提供する。
【解決手段】車両に設けられた車両側装置2から所定時間周期でリクエスト信号を送信し、携帯機5がリクエスト信号を受信するとアンサー信号を送信し、車両側装置でアンサー信号を受信した場合或いは受信しない場合に所定の制御を行う制御部10を備え、携帯機は車両側装置から送信されたリクエスト信号の強度を検出する携帯機制御部20を備え、携帯機制御部はリクエスト信号の強度が所定値より大きい場合には、直ちにその旨の情報を含む信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機と車両側装置の間で無線通信を行うことによりドアの施錠及び解錠を行うパッシブキーレスエントリー装置に関し、特に携帯機が車両から所定距離以上離れた場合にドアの施錠を行うパッシブキーレスエントリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パッシブキーレスエントリー装置においては、自動車等の車両に車両側装置を設け、運転者が携帯する携帯機との間で無線通信を行って、認証が成立した場合にドアの施錠・解錠を行うようにしている。また、携帯機は一つの車両に対して複数個用意される。
【0003】
車両側で携帯機の位置が所定の領域にあるかを検出するために、車両側装置と携帯機との間では所定時間周期で通信が行われる。この際、車両側装置から所定時間間隔でリクエスト信号が送信され、携帯機が所定の領域内に位置する場合にはリクエスト信号を受信し、該受信した携帯機は、各携帯機に固有の認証符号の情報を含むアンサー信号を送信し、車両側装置でそれを受信し認証を行なう。
【0004】
従来は、車両側装置で携帯機からの固有の認証符号を受信できなくなったときにドアを施錠することとしており、これは携帯機を持った使用者が車両から離れていって信号の強度が弱くなり、やがて通信ができなくなる場合を想定している。このようなパッシブキーレスエントリー装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2003−253938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、携帯機からの信号を受信できなくなるのは、携帯機が車両から離れた場合に限られない。これは例えば、遮蔽物等が存在することによる携帯機と車両側装置の交信不良の場合にも発生しうるし、また携帯機の電池が切れた場合にも発生しうる。これらの場合にもドアの施錠がなされるため、本来施錠すべきでない場合に意図しない施錠がなされる可能性がある。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、携帯機が車両から離れていく場合に交信不良等により意図しない施錠がなされることを防止することのできるパッシブキーレスエントリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るパッシブキーレスエントリー装置は、車両に設けられた車両側装置から所定時間周期でリクエスト信号を送信し、携帯機が前記リクエスト信号を受信するとアンサー信号を送信し、前記車両側装置で前記アンサー信号を受信した場合或いは受信しない場合に所定の制御を行う制御部を備えたパッシブキーレスエントリー装置において、
前記携帯機は前記車両側装置から送信されたリクエスト信号の強度を検出する携帯機制御部を備え、該携帯機制御部あるいは前記制御部は前記リクエスト信号の強度が所定値以下あるいは所定値未満の場合には、直ちにその旨の情報を含む信号を携帯機制御部によって送信することを特徴として構成されている。
【0008】
また、本発明に係るパッシブキーレスエントリー装置は、前記車両側装置の制御部は前記携帯機から前記強度が所定値以下あるいは所定値未満の情報を含む信号を受信した場合に、前記車両のドアを施錠させる制御を行うことを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るパッシブキーレスエントリー装置によれば、携帯機は車両側装置から送信されたリクエスト信号の強度を検出する携帯機制御部を備え、携帯機制御部はリクエスト信号の強度が所定値以下あるいは所定値未満の場合には、直ちにその旨の情報を含む信号を送信することにより、携帯機が車両から離れていく場合に交信不良等により意図しない施錠がなされることを防止することができる。
【0010】
また、本発明に係るパッシブキーレスエントリー装置によれば、車両側装置の制御部は携帯機から前記強度が所定値以下あるいは所定値未満の情報を含む信号を受信した場合に、車両のドアを施錠させる制御を行うことにより、携帯機が車両から離れると、直ちにドアを施錠することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるパッシブキーレスエントリー装置の概要図を示している。この図に示すように、本実施形態におけるパッシブキーレスエントリー装置は、ドア1aを有した車両1に設けられる車両側装置2と、車両側装置2に接続され車両1の各所に配置される送信アンテナ3と、車両側装置2に接続され車両1に配置される受信アンテナ4と、使用者が携帯する携帯機5とから構成されている。また、このパッシブキーレスエントリー装置は、使用者が携帯機5を携帯した状態で車両1に近づく、または車両1から離れることにより、携帯機5と車両側装置2の間で無線通信を行いドア1aの施錠・解錠を行う機能を有している。
【0012】
本実施形態では以下特に、使用者が携帯機5を携帯した状態で車両1から離れた際に、ドア1aの施錠を行うための構成及び動作について説明する。この場合、車両側装置2からは所定時間間隔でリクエスト信号が送信され、リクエスト信号を受信した携帯機5は、それに対して所定のアンサー信号を送信し、アンサー信号を受信した車両側装置2は、そのアンサー信号に基づき所定の制御を行う。
【0013】
携帯機5は一つの車両1について複数用意されており、また各携帯機5には例えば32ビットのそれぞれ固有の識別符号が付されている。携帯機5からのアンサー信号において、携帯機5に固有の識別符号を信号に含めることにより、車両側装置2において携帯機5の認証を行うと共に、どの携帯機5と通信しているかを識別することができる。このように携帯機5毎に固有な識別符号を含む携帯機5からのアンサー信号を、以下通常応答信号と言う。
【0014】
送信アンテナ3は、車両1の車内側と車外側にそれぞれ複数設けられる。リクエスト信号を送信する際には、全ての送信アンテナ3から電波が送信される。
【0015】
図2には、本実施形態におけるパッシブキーレスエントリー装置のブロック図を示している。この図に示すように、車両側装置2は、各部の制御を行う制御部10と、識別符号等を記憶するメモリ11と、各送信アンテナ3に電波を送信させる送信部12と、受信アンテナ4で受信した電波を信号として制御部10に出力する受信部13と、ドア1aの施錠・解錠動作を行うロック駆動部14とを備えている。
【0016】
携帯機5は、車両側装置2からのリクエスト信号を受信した際に各種制御を行う携帯機制御部20と、リクエスト信号を受信する携帯機受信部21と、車両側装置2に対してアンサー信号を送信する携帯機送信部22と、識別符号等を記憶したメモリ23とを備えている。また、携帯機受信部21と携帯機送信部22には、信号の送受信を行うアンテナ24が接続される。携帯機制御部20は、携帯機受信部21で受信したリクエスト信号の強度に基づいて、車両1からの距離を算出することができる。
【0017】
車両側装置2の制御部10は、アンサー信号として通常応答信号を受信した場合には、メモリ11を参照して携帯機5の認証を行うと共に、携帯機5が受信した信号強度の情報を基に、携帯機5が車両1から所定距離離れた境界線の内側にあるか外側にあるかを判定する。また、判定の方法としては、複数のアンテナからの信号強度の最小値が所定値以下、あるいは所定値未満となった時に境界線の外側に位置したと判定する。なお、3つのアンテナからの信号を受信すべきところ2つのアンテナからの信号しか受信されない場合であっても最小値が所定値以下となるのと同じである。
【0018】
ここで携帯機制御部20は、所定の強度以下あるいは未満と判定した場合には、車両1から所定距離離れた境界線の外側にあると判断できるので、携帯機5が車両1から遠ざかったものとして、アンサー信号に、所定の強度以下あるいは未満となった事を示す情報を含ませて送信する。該所定の強度以下あるいは未満か否かの情報は例えば2ビットで表され、アンサー信号の所定の位置に示して送信される。所定の該信号を車両側装置2の制御部10に入力されるとロック駆動部14にドア1aを施錠させるように制御し、リクエスト信号の送信を停止する。一方で携帯機5が車両1から所定距離離れた境界線の内側にあると判定した場合には、ドア1aの施錠は行わず、引き続き間欠的なリクエスト信号の送信を続ける。なお、降車の際のリクエスト信号の送信の開始は、エンジンが停止しアンロックとなっている場合に行なわれる。
【0019】
携帯機5がリクエスト信号を受信した際のフローについて以下詳細に説明する。図3には、携帯機5におけるフローチャートを示している。このフローチャートでは、携帯機5が車両側装置2からのリクエスト信号を受信した時点(S1)から始まっている。携帯機制御部20は、リクエスト信号を受信したらその強度を検知する(S2)。
【0020】
続いて、前述したように携帯機制御部20はS2で算出した強度が所定値より小さいか否かを判別する(S3)。ここで強度が所定値より小さいあるいは未満である場合には、携帯機5が車両1から充分に離れたものとして、通常応答信号にさらにこれを示す情報を加えた施錠応答信号をアンサー信号として携帯機送信部22に送信させ(S4)、そのままフローを終了する。強度が所定値より小さいあるいは未満である事を示す信号を車両側装置2が受信すると、制御部10は携帯機5固有の識別符号によって認証を行うと共に、ロック駆動部14にドア1aを施錠させる。なお、強度が所定値より小さいあるいは未満である事を示す信号は、結果としてはドア1aを施錠させるので、施錠の指令を示す信号としても良い。
【0021】
S3において強度が所定値以下あるいは所定値未満で無い場合には、強度が所定値より大きいあるいは以上である事を示す信号応答信号を返信する(S5)。なお、この場合には信号を返信しないようにしても良い。
【0022】
本実施例においては、S3において携帯機5の受信強度が所定値以下あるいは所定値未満の場合には、直ちにこれを示す信号を送信し施錠するようにしたので、携帯機5が、車両1から所定距離離れたら直ちに施錠を行うことができる。
【0023】
さらに、S3において判定する強度の所定値を携帯機5と車両側装置2の通信可能距離よりも短くなるように設定し(例えば通信可能距離が2.5mならば所定ちとしては2mの地点における強度とする)設定し、強度が所定値以下あるいは所定値未満の場合には直ちにこれを示す信号を送信し該信号を受信しない限りは車両側ではロックを行なわないので、交信不良等により携帯機5からの信号を受信できなくなった場合であっても意図せず施錠が行われることを防止することができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態に限られるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。本実施形態では、判定の方法としては、複数のアンテナからの信号強度の最小値が所定値以下、あるいは所定値未満となった時に境界線の外側に位置したと判定しているが、各アンテナからの強度データの平均値、あるいは、あるいは各強度データを2乗して和をとる、さらに該和の平方根をとる、等としてもよい。強度データは車両からの距離が増えると低下するので、それらのいずれの場合であっても、携帯機が車両から所定以上の距離が離れたことを検知した事となる。
また、該判定の方法としてより正確に行うためには、以下のようにすることもできる。すなわち予め境界線の内側と外側において携帯機5が検出する各送信アンテナ3からの信号強度の情報を多数収集して、それぞれについてデータ群を作成しておき、携帯機5が実際に受信した信号強度の情報が、境界線の内側のデータ群と境界線の外側のデータ群のいずれに近似するかを統計的な手法を用いて判別し、それによって携帯機5が境界線の内側にあるか外側にあるかを判定する。この際の統計的な手法としては、例えば携帯機5からのデータと各データ群とのマハラノビス距離を算出し、どちらのデータ群に近似するかを対比する手法を用いることができる。
また、上記実施例においては、携帯機で所定値以下あるいは未満の判定を行っているが、該データを車両側に送信し車両側で判定しても良い。その場合には、車両側で所定値以下あるいは未満と判定した場合には、その結果を示す信号を携帯機に送信し、これを携帯機で受信したときに所定値以下あるいは所定未満を示す信号を送信するようにすれば良い。
また、本第1,2の実施例では複数のアンテナを設けているが、例えば運転席のドア等に1本のアンテナを設け該アンテナからの受信信号の強度データで判定する、としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態におけるパッシブキーレスエントリー装置の概要図である。
【図2】本実施形態におけるパッシブキーレスエントリー装置のブロック図である。
【図3】リクエスト信号を受信した携帯機のフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1 車両
2 車両側装置
5 携帯機
10 制御部
11 メモリ
20 携帯機制御部
21 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車両側装置から所定時間周期でリクエスト信号を送信し、携帯機が前記リクエスト信号を受信するとアンサー信号を送信し、前記車両側装置で前記アンサー信号を受信した場合或いは受信しない場合に所定の制御を行う制御部を備えたパッシブキーレスエントリー装置において、
前記携帯機は前記車両側装置から送信されたリクエスト信号の強度を検出する携帯機制御部を備え、該携帯機制御部あるいは前記制御部は前記リクエスト信号の強度が所定値以下あるいは所定値未満の場合には、直ちにその旨の情報を含む信号を携帯機制御部によって送信することを特徴とするパッシブキーレスエントリー装置。
【請求項2】
前記車両側装置の制御部は前記携帯機から前記強度が所定値以下あるいは所定値未満の情報を含む信号を受信した場合に、前記車両のドアを施錠させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載のパッシブキーレスエントリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−106577(P2008−106577A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292682(P2006−292682)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】