説明

パッシブマトリックス型表示装置

【課題】パッシブマトリックス型表示装置に、低輝度側の調光制御を安定的にかつ安価に実施できる調光機能を付加する。
【解決手段】パッシブマトリックス型表示装置1において、第一方向CD(カラム方向)に配列す複数の発光素子Eを並列接続するデータ電極Aに対し、通電電流量を制御しつつ駆動電流Iが供給される。そして、そのデータ電極Aに供給される駆動電流Iの一部を、表示エリア120外にて該データ電極Aから分岐する形で設けられた調光素子E’に調光電流Idとして分配通電することにより、データ電極Aを流れる駆動電流Iの総量を変化させずに、そのデータ電極Aに接続された個々の発光素子Eの通電電流量を変更できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子などの発光素子により画素が構成され、かつ画面明るさの調光機能を有したパッシブマトリックス型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平10−222127号公報
【特許文献2】特開2005−77656号公報
【0003】
発光素子を用いた自発光型表示装置は、発光素子としてLEDや無機EL素子を用いたものが知られている。また、オーディオ等で使われる情報表示パネルや自動車用の計器パネルなどには、近年、発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示装置も多く用いられるようになってきている。複雑なパターンを表示するには、複数の発光素子を縦横に配置したマトリックス型表示装置が採用される。このようなマトリックス型表示装置には、データ電極(カラム電極)と走査電極(ロー電極)とを単純格子状に形成し、走査電極の選択期間だけ素子をデューティ駆動する形で発光させるパッシブマトリックス型と、個々の素子に一対一に対応するスイッチングトランジスタを設け、各トランジスタにより対応する素子をスタティック駆動するアクティブマトリックス型との二種がある。パッシブマトリックス型の表示装置は構造が単純で安価であるため、自動車用の計器パネルなどにおける画像表示(例えば静止画表示)等に製品化が進んでいる。
【0004】
上記のような自発光型表示装置の場合、液晶表示装置などの非発光型表示装置と異なり、発光素子自体の出力輝度により直接的な調光が可能である。しかし、発光素子の劣化等により時間の経過とともに輝度が変動し、対策を施す必要がある。例えば、有機EL表示装置の場合、有機EL素子を構成する有機層と金属製の陰電極界面との間で劣化が生じたり、陰電極自体が腐食等により劣化したりして、輝度変動を生じやすい問題がある。特に、パッシブマトリックス型表示装置はデューティ駆動方式となるため各素子を瞬間的に高輝度で点灯させる必要があり、スタティック駆動型のものと比較して素子の劣化がより進みやすい傾向にある。
【0005】
素子に劣化が生じた場合、電源電圧の安定化等により対応する試みもなされているが、電源電圧の安定化だけでは各発光素子の輝度変動に十分対処することが従来困難であった。また、車載用の表示装置では電源となるバッテリー電圧が、負荷状況やオルタネータ−の使用状況、さらにはバッテリー自体の劣化等により大きな幅で変動しやすく、表示装置の駆動電圧ひいては出力輝度に直接的な影響が及びやすい問題がある。例えば、有機EL素子の場合、その電圧−輝度特性において輝度は指数関数的に変化する他、温度によっても特性が大きく変化する傾向にあることが知られている。他方、電流密度−輝度特性ではその電流密度にほぼ比例して輝度が増加する。これは、有機EL素子が整流素子であるダイオード要素と、これと直列に表れる内部抵抗要素とを等価回路的に含んでいるためである。輝度が電流密度に比例する点については、キャリア(電子/正孔)の発光再結合過程により電流エネルギーが光エネルギーに変換される量子力学的発光メカニズムにより、また、電流密度(すなわち、輝度)が電圧に対して非線形的に変化する点についてはダイオード特有の非オーミック特性により、さらに特性の温度依存性は、内部抵抗要素の抵抗温度依存性や、ダイオード要素におけるキャリアの熱的励起過程などにより説明されている。いずれにしろ、このような自発光型表示装置においては、個々の素子の出力輝度安定化を図ったり、ユーザーの好みに応じた輝度変更に対応したりするために調光機構を設けることが要望されている。
【0006】
パッシブパトリックス型表示装置では、可能な方法を大別すると、素子発光輝度を電圧調光制御する方式と、同じく電流調光制御する方式との2通りの方式がある。例えば、有機EL表示装置の場合、電圧駆動制御しようとすると、輝度の温特補償やパネルの温度ムラ軽減の他、電圧−輝度特性が急峻なため、微妙な電圧値の設定も考慮する必要がある。一方、電流駆動制御する場合は、温度補正を考慮する必要がなく、電流−輝度特性が線形であるため、電流値ひいては輝度の制御が容易である。すなわち、有機ELの駆動には特許文献1に開示されているような電流駆動が有利であり、調光を行う場合は特許文献2に開示されているように電流調光制御方式が一般的に用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、市販されている有機EL表示装置の定電流制御型ドライバICは電流制御範囲に制限があるため広い範囲での調光には無理があり、特に低輝度側の調光制御の安定性に欠ける難点がある。また、出力する電流値が小さくなるほど、出力チャンネル(データ(カラム)電極により並列接続された画素の組)間の輝度バラツキが大きくなる問題もある。
【0008】
本発明の課題は、パッシブマトリックス型表示装置に、低輝度側の調光制御を安定的にかつ安価に実施できる調光機能を付加することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のパッシブマトリックス型表示装置は、
表示エリア内にて第一方向に予め定められた間隔にて複数配列され、各々駆動電流を通電可能な発光接続状態と、駆動電流を通電不能な非発光接続状態との間で切り替え可能に設けられた走査電極と、
表示エリア内にて第一方向と交差する第二方向に予め定められた間隔にて複数配列されるデータ電極と、
個々のデータ電極が、各々駆動電流を通電可能な発光接続状態と、駆動電流を通電不能な非発光接続状態との間で切り替え可能に接続されるとともに、各データ電極に対し駆動電流を、通電電流量を予め定められた値に制御しつつ供給する駆動電流源と、
表示エリア内にて走査電極とデータ電極との各交差位置に形成される表示画素をなす複数の発光素子と、
予め定められた走査周期毎に複数の走査電極を、それら走査電極のうち選択されたものみが発光接続状態となり、かつ当該選択される走査電極がその配列上にて順次切り替わるように走査駆動する走査駆動回路と、
走査周期毎に、いずれの発光素子を発光させるかに応じて定まる特定のデータ電極を駆動電流源に選択的に接続するデータ駆動回路と、
表示エリア外に設けられ、各データ電極において発光素子と並列に接続され、駆動電流源から該データ電極を介して供給される駆動電流の一部が調光電流として分配通電可能に設けられた調光素子と、
該調光素子への調光電流の分配通電量を変更することにより、対応するデータ電極上の発光素子への駆動電流の通電量を調整して各発光素子の調光を行う調光制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
上記本発明のパッシブマトリックス型表示装置の構成によると、第一方向(カラム方向)に配列する複数の発光素子を並列接続するデータ電極に対し、通電電流量を制御しつつ駆動電流が供給される。そして、そのデータ電極に供給される駆動電流の一部を、表示エリア外にて該データ電極から分岐する形で設けられた調光素子に調光電流として分配通電することにより、データ電極を流れる駆動電流の総量を変化させずに、そのデータ電極に接続された個々の発光素子の通電電流量を変更できる。その結果、調光電流への分配比率を大きくすることで、パッシブマトリックス型表示装置の低輝度側の調光制御を安定的にかつ安価に実施できる。また、調光素子が表示エリア外に設けられるので、表示エリア内の発光素子のレイアウトを圧迫せずに済み、ひいては発光素子の集積密度への影響も生じない。
【0011】
調光素子は同一の電圧で駆動された場合の発光輝度が発光素子よりも小さいか又は発光しない素子にて構成することができる。これにより、表示エリア外の調光素子からの目障りな不要発光が抑制され、発光素子の表示内容の視認も妨げられ難くなる。一方、調光素子を調光電流の通電により発光する素子により構成することも可能であるが、この場合は、当該調光素子からの発光光束が表示エリアの視認方向へ漏出することを阻止する遮蔽部を設けておくことで、同様の効果を達成できる。
【0012】
発光素子は、例えば発光ダイオードや無機EL素子により構成することも可能であるが、有機EL素子を採用することで軽量・薄型・大面積の自発光型表示装置を安価に構成することができる。また、有機EL素子の場合、有機層と金属製の陰電極界面との間で劣化が生じたり、陰電極自体が腐食等により劣化したりして、輝度変動を生じやすい問題があり、パッシブマトリックス型表示装置はデューティ駆動方式となるため各素子を瞬間的に高輝度で点灯させる必要があるため、劣化がさらに進みやすい。従って、調光素子により輝度調整する本発明の効果を一層顕著に発揮することができる。
【0013】
この場合、複数の有機EL素子は、表示エリアの面内方向に各々連続形成された複数層からなる有機積層体により一体化することができる。これにより、多数の発光素子により共用化される有機積層体を、蒸着や高周波スパッタリングなどの気相成膜法(低分子材料を使用する場合に有効)や溶液塗布法(分子材料を使用する場合に有効)により、複雑なパターニングを行うことなく簡単に形成できる。この場合、走査電極群は該有機積層体の一方に、データ電極群は有機積層体の他方に配置することができ、調光素子は該有機積層体の少なくとも一部の層を流用する形で形成することができる。このように構成することで、発光素子の製造時に調光素子の製造工程を容易に組み入れることができ、発光素子の形成時に調光素子に流用される層を一括形成できるので、調光素子が新たに追加された構造を有しているにも拘わらず、その製造工程の大幅な簡略化を図ることができる。
【0014】
この場合、調光素子は、有機積層体の一部の層を省略するか、又該一部の層を他材料からなる層にて置換することにより、同一の電圧で駆動された場合の発光輝度が発光素子よりも小さいか又は発光しない素子として簡単に形成することができる。例えば、発光素子をなす有機積層体が、電子輸送性材料層、発光層及び正孔輸送性材料層がこの順で積層され、電子輸送性材料側の主表面に走査電極及びデータ電極の一方をなす陰極が、正孔輸送性材料層側の主表面に走査電極及びデータ電極の他方をなす陽極がそれぞれ形成される場合、調光素子は、少なくとも発光層を省略ないし他材料からなる層にて置換することにより、発光を効果的に抑制することができる。
【0015】
発光素子をなす有機積層体において電子輸送性材料層は、発光層と接して配置される電子輸送層と、陰極と接して配置されるとともに自身の電子親和力Ac1と陰極の仕事関数φcとの差Δε1≡φc−Ac1が、電子輸送層の電子親和力Ac1と陰極の仕事関数φcとの差Δε2≡φc−Ac2よりも小さい電子注入層とを有するものとして構成できる。これにより、陰極と発光層との間にて各層間に形成される電子注入に関与するエネルギー障壁の高さが減じられ、素子の駆動電圧の低減に寄与する。
【0016】
この場合、調光素子は、有機積層体から発光層と、電子輸送性材料層のうち少なくとも電子輸送層とが省略され、かつ正孔輸送性材料層は残した構成を有するものとして構成することができる。正孔輸送性材料層は、発光再結合確率は低いものの正孔輸送に由来した電気伝導性自体は良好であり、発光層と電子輸送層との省略により、非発光型で通電容量も比較的大きい調光素子を容易に構成することができる。この場合、調光素子は、電子注入層もさらに省略された構造とすることが望ましい。このようにすると、電子注入層の省略により陰極と有機層との間の電子注入エネルギー障壁は却って増大するが、これによって正孔輸送性材料層には正孔がより優位に注入されることになるため不要な発光再結合が生じにくくなり、調光素子としてはより好都合となるからである。
【0017】
発光素子をなす有機積層体において正孔輸送性材料層は、発光層と接して配置される正孔輸送層と、陽極と接して配置されるとともに、自身のイオン化ポテンシャルEc3と陽極の仕事関数φaとの差ΔE1≡Ec3−φaが、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルEc4と陽極の仕事関数φaとの差ΔE2≡Ec4−φaよりも小さい正孔注入層とを有するものとして構成できる。これにより、陽極と発光層との間にて各層間に形成される正孔注入に関与するエネルギー障壁の高さが減じられ、素子の駆動電圧の低減に寄与する。
【0018】
この場合、調光素子に含まれる正孔輸送性材料層は正孔輸送層と正孔注入層との少なくともいずれかにて構成すればよい。すなわち、調光素子は、発光素子の構造を部分的には引き継いでいるものの、発光機能向上に係る要請はもはや存在しないから、正孔輸送性材料層と陽極との間の正孔注入に関与するエネルギー障壁プロファイルについても発光素子に拮抗する適正化は必ずしも必要ではなくなる。従って、発光素子の正孔輸送層と正孔注入層のうち、正孔輸送層のみを調光素子の正孔輸送性材料層に流用してもよいし、逆に正孔注入層のみを正孔輸送性材料層に流用してもよいのである。もちろん、発光素子と同様に、正孔輸送層と正孔注入層との積層構造として正孔輸送性材料層を構成することも可能である。
【0019】
調光素子に含まれる正孔輸送性材料層は、特に、自身のイオン化ポテンシャルEcxと陽極の仕事関数φaとの差ΔEx≡Ecx−φaが、自身の電子親和力Acxと陰極の仕事関数φcとの差Δεx≡φc−Acxよりも小さい有機材料にて構成することが望ましい。このような材料を選択することで、正孔輸送性材料層への電子注入がさらに抑制され、不要な発光再結合が生じにくくなる。当該有機材料の具体例として、例えば、トリフェニルアミン化合物を本発明に好適に採用できる。
【0020】
次に、発光素子をなす有機積層体において発光層は、ホスト材料中に蛍光量子収率を向上させるドーパントを添加したものとして形成することができる。これにより、発光素子の発光効率が高められ素子寿命の向上にも寄与する。この場合、調光素子は、有機積層体において発光層が、ドーパントの添加量が該発光層より少ない代替有機層にて置換されたものとすることができる。これにより、調光素子における不要な発光を効果的に抑制することができる。
【0021】
また、調光素子は、有機積層体の発光層を、電子輸送性有機材料と正孔輸送性有機材料との混合物にて構成された代替有機層にて置換したものとすることができる。発光素子の発光層を電子輸送性有機材料と正孔輸送性有機材料との混合物からなる代替有機層にて置き換えた場合、代替有機層に注入された電子と正孔は、該層内に混合・分散しあった形で存在する電子輸送性有機材料相領域と正孔輸送性有機材料相領域とにそれぞれ局在化した形で移動する。その結果、層内でそれらのキャリアが互いに発光再結合する確率は減じられるが、各相領域での対応キャリアの移動度自体は大きいので、良好な導電性は確保した上で調光素子における不要な発光を効果的に抑制することができる。
【0022】
例えば、発光素子をなす有機積層体において電子輸送性材料層が、発光層と接して配置される電子輸送層と、陰極と接して配置されるとともに自身の電子親和力Ac1と陰極の仕事関数φcとの差Δε1≡φc−Ac1が、電子輸送層の電子親和力Ac2と陰極の仕事関数φcとの差Δε2≡φc−Ac2よりも小さい電子注入層とを有し、また、正孔輸送性材料層が、発光層と接して配置される正孔輸送層と、陽極と接して配置されるとともに、自身のイオン化ポテンシャルEc3と陽極の仕事関数φaとの差ΔE1≡Ec3−φaが、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルEc4と陽極の仕事関数φaとの差ΔE2≡Ec4−φaよりも小さい正孔注入層とを有し、調光素子の代替有機層を、発光層をなす電子輸送性有機材料に正孔輸送性材料層をなす正孔輸送性有機材料を混合したものでとして構成することができる。この方法によると、代替有機層の構成材料を、発光層をなす電子輸送性有機材料と正孔輸送性材料層をなす正孔輸送性有機材料との間で共通化できる。特に、気相成膜法により代替有機層を構成する場合は、成膜装置内に代替有機層専用の材料源を組み込む必要がなくなり、成膜工程及び成膜装置の簡略化を図ることができる。
【0023】
上記の構成では、調光素子は代替有機層の陽極側に発光素子と同一の正孔輸送層及び正孔注入層を設け、同じく陰極側に発光素子と同一の電子輸送層及び電子注入層とを設けることで、当該代替有機層を用いた調光素子の導電特性を向上でき、高密度の調光電流が通電可能となるほか、発光素子に近い通電特性を実現できることから、調光制御も容易となる利点がある。
【0024】
この場合、調光素子の代替有機層の陽極側に接する形で正孔輸送層を設け、他方、該代替有機層の陰極側に接する形で発光層をなす電子輸送性有機材料単独よりなる副電子輸送層を設け、さらに、該副電子輸送層の陰極側に接する形で発光素子と同一の電子輸送層及び電子注入層とを設けるとさらによい。調光素子の代替有機層は、発光素子の発光層部と比較して、これを構成する電子輸送性有機材料に正孔輸送性有機材料が混合されている分だけ、電子輸送層との間の電子伝導準位の差が大きくなり、直接電子輸送層を接触させるとエネルギー障壁高さが多少大きくなってしまう難点がある。そこで、上記のように、代替有機層の陽極側に発光層をなす電子輸送性有機材料単独よりなる副電子輸送層を介挿することで、当該エネルギー障壁高さの増大を効果的に抑制することができる。
【0025】
次に、本発明のパッシブマトリックス型表示装置において駆動電流源は、各データ電極上に個別に設けられた定電流回路を含むものとして構成することができる。データ電極を流れる電流量は、同時に選択される走査電極(すなわち発光素子)の数が一定(例えば1つ)なので、上記のような定電流回路を設けることにより、データ電極を介して並列接続される発光素子と調光素子との合計電流を一定にできる。従って、調光素子側に流れる電流値に応じて発光素子の電流値ひいては輝度を一義的に決定でき、調光制御の簡略化を図ることができる。
【0026】
各データ電極に対応する複数の調光素子は、走査電極の配列末端に隣接配置された調光用電極により、当該調光用電極と各データ電極との交差位置にて互いに並列接続することができる。調光制御手段は該調光用電極を介して調光電流の分配通電量を変更するものとできる。このようにすると、表示内容に応じて任意に通電選択される1ないし複数のデータ電極に対し、それらに接続される調光素子への通電量を、共通の調光用電極を介して一括制御することができる。
【0027】
この場合、調光用電極は、調光電流を通電可能な第一接続状態と、調光電流を通電不能な第二接続状態との間で切り替え可能に設けることができ、調光制御手段は、該調光用電極を第一接続状態と第二接続状態との間で切り替える調光用切替制御手段を有してなるものとして構成することができる。上記構成により、各調光素子への分配電流の通電・遮断を、調光用電極を介して一括して切り替えることが可能となり、ひいては該データ電極につながる各発光素子の輝度レベルを、該分配電流の通電・遮断に応じてステップ切替することができる。
【0028】
この場合、調光用切替制御手段は、走査駆動回路による走査電極の切り替え駆動期間中(例えば、1フレーム(ないしフィールド)の走査期間)においては、発光素子の調光レベルに応じ調光用電極を第一接続状態と第二接続状態とのいずれかに連続的に保持するものとすることができる。これにより、各走査電極につながる発光素子に対し、調光電流の分配通電量を一律に設定でき、各走査電極に同じ仕様の発光素子が接続されていれば、どの発光素子も一様に調光できる。また、同一フレーム(ないしフィールド)内では第一接続状態と第二接続状態との切り替え制御が不要となるので、調光制御シーケンスの簡略化を図ることができる。
【0029】
また、調光用電極により並列接続された調光素子群は、これを複数組設けることができる。この場合、各データ電極に生ずる調光電流の分配通電量として互いに異なる値が得られるよう、各々1又は複数の調光素子群を含む調光素子設定パターンを複数通り定めることができる。調光用電極切替制御手段は、指示された調光レベルに応じそれら複数の調光素子設定パターンのいずれかを選択し、該選択された調光素子設定パターンに属する調光素子群を一括して第一接続状態となすものとして構成できる。調光用電極により並列接続された調光素子群を複数組設け、データ電極に接続するそれら調光素子群の組み合わせを任意に変更することで、各組み合わせに対応した種々のレベルに調光電流を簡単に、調整できる。
【0030】
具体的には、調光用電極切替制御手段により選択可能な調光素子設定パターンとして、含まれる調光素子群の数が互いに異なるものを定めることができる。データ電極に接続する調光用電極の数、ひいては調光素子群の数を変更することにより、接続する調光素子群の数に応じてきめ細かい調光が可能となる。例えば、互いに異なる数の調光素子群からなる調光素子設定パターンは各調光素子が電圧−電流特性の互いに等しいものからなる場合、調光用電極切替制御手段は、指示された調光レベルにおいて発光素子の減光レベルが大きくなるほど、より多くの調光素子群からなる調光素子設定パターンを選択するものとする。接続する調光素子群の数が多いほど調光電流を多く流すことができ、より大きな減光レベルを達成することができる。
【0031】
他方、各調光素子群において一つの調光用電極に接続される複数の調光素子を電圧−電流密度特性の互いに等しいものとなし、かつ、複数の調光素子群の一部のものが残余の調光素子群よりも通電断面積の大きい調光素子にて構成することも可能である。この場合、調光用電極切替制御手段は、指示された調光レベルにおいて発光素子の減光レベルが大きくなるほど、通電断面積の大きい調光素子からなる調光素子群を含む調光素子設定パターンを選択するものとして構成できる。通電断面積の大きい調光素子からなる調光素子群を選択することで、調光電流レベルを一括して増加させることができ、設定可能な調光レベルの種類や変更幅を拡張することができる。
【0032】
次に、調光制御手段は、調光用電極上を流れる通電電流量を、駆動電流源に接続されるデータ電極の個数に応じて可変制御する電流制御回路を有するものとして構成することができる。この構成によると、駆動電流源に接続されるデータ電極の個数に応じて調光用電極上の調光電流量を電流制御回路により調整するようにしたから、調光用電極につながるデータ電極の数によらず、各調光素子に通電される調光電流の安定化を図ることができ、ひいては安定な調光状態を実現することができる。
【0033】
また、調光制御手段は、データ電極を介して調光素子を流れる電流量を調光レベルに応じて可変制御する電流制御回路を有するものとして構成してもよい。この構成によると、調光用電極(調光素子群)の接続組み合わせを変更しなくとも、各調光素子を流れる調光電流量が電流制御回路により任意の値に可変制御できるので、よりきめ細かい(ひいては連続的な)調光が可能となる。具体的には、調光制御手段は、調光レベルを指示するための制御電圧入力を受けて該制御電圧に対応した制御電流を流す入力側トランジスタと、各データ電極上の各調光素子に一対一に対応して設けられるとともに、入力側トランジスタにベースを共用化する形で接続され、制御電流に一義的に対応した値の調光電流を各調光素子に個別に流す出力側トランジスタとを有したカレントミラー回路を含むものとして構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のパッシブマトリックス型表示装置1の一実施例を示す回路図である。該パッシブマトリックス型表示装置1は、次のようなものを備えて構成されている。
・走査電極B(配列上の複数個のものを区別するために、図ではB,B,‥,Bと表示):表示エリア120内にて第一方向CDに予め定められた間隔にて複数配列され、各々駆動電流Iを通電可能な発光接続状態と、駆動電流Iを通電不能な非発光接続状態との間で切り替え可能に設けられている。
・データ電極A(配列上の複数個のものを区別するために、図では添え字を用いてA,A,‥,Aと表示):表示エリア120内にて第一方向CDと交差する第二方向RDに予め定められた間隔にて複数配列される。
【0035】
・駆動電流源:個々のデータ電極Aが、各々総電流Itを通電可能な発光接続状態と、総電流Itを通電不能な非発光接続状態との間で切り替え可能に接続されるとともに、各データ電極Aに対し電流を、通電電流量を予め定められた値に制御しつつ供給する。安定化電源Vc(あるいはバッテリー+B)と、各データ電極A,A,‥,Aに個別に対応する形で該安定化電源Vcに接続された定電流回路7とを含む。
【0036】
・発光素子E(二次元配列上の複数個のものを区別するために、図では二次元配列添え字を用いて、E1、1,E2、1,‥,En、1,‥,等と表示):表示エリア120内にて走査電極B,B,‥,Bとデータ電極A,A,‥,Aとの各交差位置に形成され、表示画素をなす。本実施形態では有機EL素子として構成されている。詳細構造については後述する。
【0037】
・走査駆動回路10:予め定められた走査周期毎に複数の走査電極B,B,‥,Bを、それら走査電極B,B,‥,Bのうち選択されたもののみが発光接続状態となり、かつ当該選択される走査電極Bがその配列上にて順次切り替わるように走査駆動する。走査電極B,B,‥,Bの末端を、接地(発光接続状態に対応)と逆バイアス電源(非発光接続状態に対応)とのいずれかに選択的に接続するSPDTスイッチ群Y,Y,‥,Yからなる走査スイッチ回路10として構成されている。制御回路200からの走査信号SSを受けて、図14に示すごとく、1フレーム(インタレース方式の場合は1フィールド)の走査周期T内にて、一定の時間間隔にて順次発光接続状態(通電状態)に切り替えられる。なお、フレーム間には一定の非表示期間(全ての走査電極B,B,‥,Bが遮断状態となる期間)が設定される。
【0038】
・データ駆動回路9:走査周期毎に、いずれの発光素子Eを発光させるかに応じて定まる特定のデータ電極Aを駆動電流源に選択的に接続する。A,A,‥,Aの電源接続側の端部を、駆動電流源側(点灯状態に対応)と接地側(消灯状態に対応)とのいずれかに選択的に接続するSPDTスイッチ群X,X,‥,Xからなる走査スイッチ回路10として構成されている。制御回路200からのデータ信号DSを受けて、走査電極B,B,‥,Bの各選択期間にて点灯させるべき発光素子に対応するスイッチXを選択的に点灯状態位置に設定する。具体的には、選択された走査電極Bに対応する水平同期信号を検出し、その水平同期信号を基準として画素転送クロックを計数することにより各表示画素に対応するデータ電極Aを特定し、そのデータ電極Aに対応する画素(発光素子E)の点灯状態を表わす表示データの二値パルスレベルに基づいて、当該データ電極Aに対応するSPDTスイッチXの切り替えを指令する。
【0039】
・調光素子E’(二次元配列上の複数個のものを区別するために、図では二次元配列添え字を用いて、E’1、1,E’2、1,‥,等と表示):表示エリア120外に設けられ、各データ電極Aにおいて発光素子Eと並列に接続され、駆動電流源7から該データ電極Aを介して供給される総電流Itの一部が調光電流Idとして分配通電可能に設けられている。データ電極Aが定電流回路7に接続されており、データ電極A上の総電流Itは一定に保持される。データ電極Aに調光電流Idが流れる場合、総電流Itからこの調光電流Idを減算した残余の電流が駆動電流I(≡It−Id)であり、これが選択中の走査電極Bに対応する発光素子Ei,jに通電される。調光素子E’の構造の詳細については後述する。
【0040】
・調光制御手段11:調光素子E’への調光電流Idの分配通電量を変更することにより、対応するデータ電極A上の発光素子Eへの駆動電流Iの通電量を調整して各発光素子Eの調光を行う。データ電極A,A,‥,Aに対応する複数の調光素子E’1、1,E’1、2,‥,は、走査電極B,B,‥,Bの配列末端に隣接配置された調光用電極B’、B’により、当該調光用電極B’、B’と各データ電極A,A,‥,Aとの交差位置にて互いに並列接続されている。調光制御手段11は該調光用電極B’を介して調光電流Idの分配通電量を変更する。
【0041】
各調光用電極B’は、調光電流Idを通電可能な第一接続状態と、調光電流Idを通電不能な第二接続状態との間で切り替え可能であり、調光制御手段は、該調光用電極B’を第一接続状態と第二接続状態との間で切り替える調光用切替制御手段として機能する。具体的には、調光用電極B’、B’の末端を、接地(通電状態に対応)と逆バイアス電源(遮断状態に対応)とのいずれかに選択的に接続するSPDTスイッチ群Y’,Y’からなる調光スイッチ回路11を有し、制御回路200からの調光信号LSを受け、該調光信号LSの内容に対応した調光電流Idが流れるように、SPDTスイッチ群Y’,Y’を切り替え制御する。
【0042】
複数の有機EL素子Eは、図4に示すように、表示エリアの面内方向に各々連続形成された複数層からなる有機積層体150により一体化されている。各発光素子Eにより共用化される有機積層体150は、蒸着や高周波スパッタリングなどの気相成膜法(低分子材料を使用する場合に有効)や溶液塗布法(分子材料を使用する場合に有効)により形成される。走査電極B群は該有機積層体150の一方の主表面上に、データ電極A群は有機積層体150の他方の主表面上に配置されている。
【0043】
図3は、有機EL素子Eの一つの断面構造を模式的に示すものである。該有機EL素子Eは基材をなすガラス基板10上に形成され、駆動電流源に接続されるデータ電極Aが陽極20であり、接地される走査電極B及び調光用電極B’が陰極である。陽極20は、有機積層体150への正孔の注入が進みやすいよう、仕事関数φの大きい材料で構成される。本実施形態では、陽極20をインジウムスズ酸化物(ITO:Indium-Tin Oxide)で構成しているが、酸化亜鉛、インジウム亜鉛酸化物などの他の酸化物層であってもよい。また、陰極80は有機積層体150への電子の注入が進みやすいよう、仕事関数φの小さいことが必要である。本実施形態では、陰極80をAl(アルミニウム)で構成しているが、Alに対しAlよりも仕事関数の小さい金属を添加した合金(例えばAlLi)のほか、MgIn、MgAgなどの合金も使用することが可能である。
【0044】
有機積層体150は、陰極80側から電子輸送性材料層160、発光層50及び正孔輸送性材料層140がこの順で積層された周知の構造を有する。図13は有機積層体150のエネルギー構造を模式的に示すもので、電子輸送性材料層160は、発光層50と接して配置される電子輸送層60と、陰極80と接して配置されるとともに自身の電子親和力Ac1と陰極80の仕事関数φcとの差Δε1≡φc−Ac1が、電子輸送層60の電子親和力Ac1と陰極80の仕事関数φcとの差Δε2≡φc−Ac2よりも小さい電子注入層70とを有する。これにより、陰極80と発光層50との間にて各層間に形成される電子注入に関与するエネルギー障壁の高さが減じられている。また、発光層50から電子輸送層60への正孔注入を生じにくくするために、電子輸送層60は、そのイオン化ポテンシャルEc2と発光層50のイオン化ポテンシャルEc0との差δE2(≡Ec2−Ec0)が、後述の正孔輸送層40のイオン化ポテンシャルEc4と発光層50のイオン化ポテンシャルEc0との差δE4(≡Ec0−Ec4)よりも大きくなるように選択することで、発光層50への正孔の閉じ込め効果が高められ、該発光層中での電子−正孔の発光再結合確率を向上することに寄与する。
【0045】
電子輸送層60及び電子注入層70の構成材料は、周知のものが採用できる。電子輸送層60は、例えばアルミキリノール錯体(具体例としては、トリス(8−キノリラト)アルミニウム(いわゆる、Alq3))やアントラセン誘導体からなる有機材料を採用できる。また、電子注入層70はアルカリ金属(Li、Na、K、Csなど)、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Baなど)、及びそれら金属の無機化合物(例えば、酸化物(LiOなど)やハロゲン化物(例えばLiF)など)で構成することができる。
【0046】
次に、正孔輸送性材料層140は、発光層50と接して配置される正孔輸送層40と、陽極20と接して配置されるとともに、自身のイオン化ポテンシャルEc3と陽極20の仕事関数φaとの差ΔE1≡Ec3−φaが、正孔輸送層40のイオン化ポテンシャルEc4と陽極20の仕事関数φaとの差ΔE2≡Ec4−φaよりも小さい正孔注入層30とを有するものとして構成できる。これにより、陽極20と発光層50との間にて各層間に形成される正孔注入に関与するエネルギー障壁の高さが減じられ、素子の駆動電圧の低減に寄与する。また、発光層50から正孔輸送層40への電子注入を生じにくくするために、正孔輸送層40は、発光層50の電子親和力Ac0と該正孔輸送層40の電子親和力Ac4との差δE4(≡Ac0−Ac4)が、電子輸送層60の電子親和力Ac2と発光層50の電子親和力Ac0との差δE4(≡Ec2−Ec0:図13では該値は負値であり、電子輸送に関してオーミック接合となっている)よりも大きくなるように選択することで、発光層50への電子の閉じ込め効果が高められ、該発光層中での電子−正孔の発光再結合確率を向上することに寄与する。
【0047】
正孔輸送層40及び正孔注入層30の構成材料は、周知のものが採用できる。正孔注入層30は、例えば銅フタロシアニンのほか、下記化1にて表わされる構造の化合物1などで構成できる。
【0048】
【化1】

【0049】
また、正孔輸送層40は、トリフェニルアミン化合物、例えば下記化2にて表わされる構造の化合物2や、あるいは下記化3にて表わされる構造の化合物3などで構成できる。
【0050】
【化2】

【0051】
【化3】

【0052】
発光層50は、電子移動度が正孔移動度よりも高い材料(つまり、電子輸送性材料)をホスト材料として選ぶことで、正孔輸送層との界面付近で効果的に電子と正孔との再結合が生じ、発光効率を高めることができる。発光層50を構成するこのような電子輸送性材料としては、前述のアルミキリノール錯体(例えば、Alq3)や、下記化4であらわされる化合物4など、種々のものを採用できる。
【0053】
【化4】

【0054】
また、発光層50は、ホスト材料中に蛍光量子収率を向上させるドーパント(ゲスト材料)を添加したものとして形成することができる。これにより、発光素子Eの発光効率が高められ、素子寿命の向上にも寄与する。このようなドーパントも周知のものが採用でき、例えば、下記化5の構造を有するルブレンのほか、クマリン誘導体、DCMあるいはキナクリドンなども採用可能である。
【0055】
【化5】

【0056】
図1において、調光素子E’は、図4あるいは図7の有機積層体150の、少なくとも一部の層を流用する形で形成されている。前述のごとく、有機積層体150を構成する各有機材料層(図3では、正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50及び電子輸送層60)は、蒸着や高周波スパッタリングなどの気相成膜法(低分子材料を使用する場合に有効)や溶液塗布法(分子材料を使用する場合に有効)により形成されるが、発光素子Eの形成時に調光素子E’に流用される層を一括形成できる利点がある。
【0057】
この観点にて調光素子E’は、有機積層体150の一部の層を省略するか、又該一部の層を他材料からなる層にて置換することにより、同一の電圧で駆動された場合の発光輝度が発光素子Eよりも小さいか又は発光しない素子として、種々の形態に形成することができる。発光素子Eをなす有機積層体150が、図3のように構成される場合、調光素子E’は、少なくとも発光層50を省略ないし他材料からなる層にて置換することにより、発光を効果的に抑制することができる。
【0058】
図5及び図6は、調光素子E’を、図3の有機積層体150から発光層50と、電子輸送性材料層160のうち少なくとも電子輸送層60とを省略し、かつ正孔輸送性材料層140は残した構成を有するものとして構成した例である。正孔輸送性材料層140は、発光再結合確率は低いものの正孔輸送に由来した電気伝導性自体は良好であり、発光層50と電子輸送層60との省略により、非発光型で通電容量も比較的大きい調光素子E’を容易に構成することができる。図5の調光素子E’は、電子注入層70もさらに省略された構造となっている。このようにすると、電子注入層70の省略により陰極80と有機層との間の電子注入エネルギー障壁は却って増大するが、これによって正孔輸送性材料層140には正孔がより優位に注入されることになるため不要な発光再結合が生じにくくなり、調光素子E’としてはより好都合となるからである。
【0059】
図5及び図6のいずれの構成においても、調光素子E’に含まれる正孔輸送性材料層140は、正孔輸送層40と正孔注入層30との少なくともいずれかにて構成できる。すなわち、調光素子E’は、発光素子Eの構造を部分的には引き継いでいるものの、発光機能向上に係る要請はもはや存在しないから、正孔輸送性材料層140と陽極20との間の正孔注入に関与するエネルギー障壁プロファイルについても発光素子Eに拮抗する適正化は必ずしも必要ではなくなる。例えば、発光素子Eの正孔輸送層40と正孔注入層30のうち、正孔注入層30のみを流用した調光素子E’では、陽極20から正孔注入層30への正孔注入に対するエネルギー障壁が小さくできる利点があるが、正孔注入層30を省略して正孔輸送層40のみを流用する構成も可能であるし、正孔注入層30と正孔輸送層40とが積層されたものを調光素子E’に引き継いでもよい。
【0060】
陽極20をITOとし、陰極80をAlで構成した場合、前述の化合物1、2、3のイオン化ポテンシャル(Ec)と電子親和力(Ac)及びITO、Alの仕事関数(以下φ)と、各化合物のEc/AcとITOないしAlとの仕事関数φとの差をまとめて示すと表1のごとくとなる。表中の負値はエネルギ−障壁が存在せず、電極との間にオ−ミック接合が得られることを示す。
【0061】
【表1】

【0062】
有機EL素子の場合、陽極からは有機層に正孔が注入され、陰極からは電子が有機層内に注入される。この注入された正孔と電子が有機層内で再結合することにより発光する。表1から、上記化合物のEcと陽極のφの差が陰極のφと各化合物のAcよりも小さいことで、相対的には電子注入エネルギ−障壁の方が大きくなる。このため、これらの化合物からなる正孔輸送性材料層140を陽極と陰極で挟んだ構造(図5)においては、正孔が電子よりも注入されやすくなる結果、正孔電流デバイスとして機能し有機層内で正孔と電子が再結合する確率はほとんどない。このため、原理的には発光しないデバイスとなる。
【0063】
なお、図6のように、陰極80と上記正孔輸送性材料層140との間に電子注入層70を挿入すると、陰極80との界面での電子注入エネルギ−障壁が低下するため、正孔輸送性材料層140中に電子が注入されやすくなって、調光素子E’としては望まざる発光再結合が起こりやすくなる場合がある。従って、図5のごとく、電子注入層は省略したほうがより望ましい。正孔輸送材料として用いられるトリフェニルアミン化合物は、Ec及びAcが比較的小さいため、陽極20をなすITOとの正孔注入エネルギ−障壁は小さく、陰極80をなすAlとの電子注入エネルギ−障壁を大きく取ることができるため、このような正孔輸送材料を上記電極で挟んだ図5の構造では、正孔電流デバイスを容易に得ることができる。
【0064】
次に、図7の調光素子E’は、有機積層体150において発光層50が、ドーパントの添加量が該発光層50より少ない代替有機層50’にて置換されたものとして構成した例である。これにより、調光素子E’における不要な発光を効果的に抑制することができる。図7において代替有機層50’は、図3の発光層50がドーパントとして含有しているルブレンの添加がなされておらず、発光が抑制されている。
【0065】
また、図8の調光素子E’は、有機積層体150の発光層50を、電子輸送性有機材料と正孔輸送性有機材料との混合物にて構成された代替有機層50”にて置換したものである。発光素子Eの発光層50を電子輸送性有機材料と正孔輸送性有機材料との混合物からなる代替有機層50”にて置き換えた場合、代替有機層50”に注入された電子と正孔は、該層内に混合・分散しあった形で存在する電子輸送性有機材料相領域と正孔輸送性有機材料相領域とにそれぞれ局在化した形で移動する。その結果、層内でそれらのキャリアが互いに発光再結合する確率は減じられるが、各相領域での対応キャリアの移動度自体は大きいので、良好な導電性は確保した上で調光素子E’における不要な発光を効果的に抑制することができる。
【0066】
具体的には、図3の発光素子Eの有機積層体150を参照すべき構造と考えて、図8の調光素子E’の代替有機層50”は、発光層50をなす電子輸送性有機材料(化合物4)に正孔輸送性材料層140をなす正孔輸送性有機材料(化合物2又は3)を混合したものでとして構成されている。代替有機層50”の構成材料を、発光層50をなす電子輸送性有機材料と正孔輸送性材料層140をなす正孔輸送性有機材料との間で共通化できる。特に、気相成膜法により代替有機層50”を構成する場合は、成膜装置内に代替有機層50”専用の材料源を組み込む必要がなくなり、成膜工程及び成膜装置の簡略化を図ることができる。
【0067】
具体的には、調光素子E’は、代替有機層50”の陽極20側に接する形で正孔輸送層40を設け、他方、該代替有機層50”の陽極20側に接する形で発光層50をなす電子輸送性有機材料(化合物4)単独よりなる副電子輸送層61を設け、さらに、該副電子輸送層61の陽極20側に接する形で発光素子Eと同一の電子輸送層60及び電子注入層70とを設けている。調光素子E’の代替有機層50”は、発光素子Eの発光層50部と比較して、これを構成する電子輸送性有機材料に正孔輸送性有機材料が混合されている分だけ、電子輸送層60との間の電子伝導準位の差が大きくなり、直接電子輸送層60を接触させるとエネルギー障壁高さが多少大きくなってしまう難点がある。しかし、上記のように、代替有機層50”の陽極20側に発光層50をなす電子輸送性有機材料単独よりなる副電子輸送層61を介挿することで、当該エネルギー障壁高さの増大を効果的に抑制することができる。
【0068】
なお、図8の調光素子E’の代替有機層50”は、図3の発光素子Eの発光層50と同様に、ドーパント(ルブレン)を添加しているが、図9は、代替有機層50”へのドーパント添加を省略した調光素子E’の例を示すものである。
【0069】
以下、図1のパッシブマトリックス型表示装置1における調光方法の実例について説明する。図1において各調光用電極B’は、対応するスイッチY’により、いずれも独立して通電状態(第一接続状態)と遮断状態(第二接続状態)との間で切り替え可能である。各調光用電極B’により並列接続された調光素子群E’mは、いずれも、通電断面積が発光素子Eと同一である。なぜなら、調光用電極B’は走査電極Bと同一幅の陰極80(図4参照)として構成され、データ電極Aをなす陽極20と調光用電極B’との交差面積は、走査電極Bとの交差面積と等しくなるからである。
【0070】
仮に全ての調光用電極B’を遮断状態とすれば、調光用電極B’に分配される調光電流Idはゼロとなり、駆動電流IはItとなる(第一調光素子設定パターン)。これが、発光素子Eに流れる最大電流となる。そして、図1のように、調光用電極B’のみを通電状態にすれば、データ電極Aを流れる総電流をItとすると、選択中の走査電極Bに流れる駆動電流Iと、調光用電極B’に分配される調光電流Idとは等しくなり、総電流Itが一定であるから、駆動電流IはIt/2となる(第二調光素子設定パターン)。つまり、調光用電極B’のみを通電状態にすることで、発光素子Eの発光量を最大値の1/2に減光することができる。また、図2のように、2つの調光用電極B’,B’をいずれも通電状態にすれば、総電流Itが等分配されることを考慮すれば、駆動電流IはIt/3となり、発光素子Eの発光量を最大値の1/3に減光することができる。(第三調光素子設定パターン)。
【0071】
このように、調光用電極B’により並列接続された調光素子群E’mを複数組設け、データ電極Aに接続するそれら調光素子群E’mの組み合わせを任意に変更することで、各組み合わせに対応した種々のレベルに調光電流Idを簡単に調整できる。また、上記第一〜第三調光素子設定パターンは、それぞれ通電する調光素子群E’mの数が互いに異なる。すなわち、データ電極Aに接続する調光用電極B’の数、ひいては調光素子群E’mの数を変更することにより、接続する調光素子群E’mの数に応じてきめ細かい調光が可能となる。そして、各調光素子E’が電圧−電流特性の互いに等しいものとして形成されるから、導通状態とする調光用電極B’(調光素子群E’m)の数が多いほど調光電流Idを多く流すことができ、より大きな減光レベルを達成することができる。
【0072】
他方、図10に示すように、各調光素子群E’mにおいて一つの調光用電極B’に接続される複数の調光素子E’を電圧−電流特性の互いに等しいものとなし、かつ、複数の調光素子群E’mの一部のものが残余の調光素子群E’mよりも通電断面積の大きい調光素子E’にて構成することも可能である。この場合、通電断面積の大きい調光素子E’からなる調光素子群E’mを選択することで、調光電流Idレベルを一括して増加させることができ、設定可能な調光レベルの種類や変更幅を拡張することができる。
【0073】
図10においては、調光用電極B’につながる調光素子E’が、調光用電極B’につながる調光素子E’、及び走査電極Bにつながる発光素子Eの3倍の通電断面積を有しており、調光用電極B’のみを導通状態にした場合は、調光用電極B’のみを導通状態にした場合よりも3倍の調光電流が流れ、発光素子Eの駆動電流Iを一挙に最大値の1/4に減少させることができる(つまり、1/4の減光が可能である)。このような調光素子E’は、調光用電極B’の幅を、調光用電極B’あるいは走査電極Bの幅よりも大きく(つまり、3倍)に形成することで簡単に作ることができる。
【0074】
図11Aは、調光用電極B’上を流れる通電電流量を、駆動電流源7に接続されるデータ電極Aの個数に応じて可変制御する電流制御回路107を設けた例である。この構成によると、駆動電流源7に接続されるデータ電極Aの個数に応じて調光用電極B’上の調光電流Id量を電流制御回路107により調整するようにしたから、調光用電極B’につながるデータ電極Aの数によらず、各調光素子E’に通電される調光電流Idの安定化を図ることができ、ひいては安定な調光状態を実現することができる。
【0075】
図11Aの回路において電流制御回路107は、調光用電極B’上にて各データ電極Aからの電流が合流する位置に設けられている。そして、各走査電極Bの選択期間においてデータ電極Aから電流制御回路107に流れ込む総電流は、どのデータ電極Aが駆動電流源に接続されているか、つまり点灯状態とされる発光素子Eの個数に比例して増加する。そこで、制御回路200は、画素転送クロックに基づいて順次転送されてくる、各画素の表示データの二値パルスレベルのうち、「点灯」に対応するレベルのものの個数をカウンタ計数し、そのカウンタ値を参照して制御電流レベル値を決定し、電流制御回路107に指示する(制御信号CS:ここでは、指示電流レベルを示すアナログ信号である)。電流制御回路107は、その指示値に応じて点灯状態とされる発光素子Eの個数に比例した調光電流を調光用電極B’に流す。これにより、走査電極B上の発光素子Eの点灯個数によらず、点灯させるべき発光素子Eに対応した調光素子E’には一定の調光電流を流すことができる。
【0076】
この場合、調光素子E’1個当たりの基準調光電流値を決めておき、電流制御回路107への指示電流レベルを、各調光素子E’に流れる調光電流の該基準調光電流値に対する比率が変化するように調整すれば、発光素子Eの発光レベルを該指示電流レベルに応じて変更することも可能である。すなわち、電流制御回路107は、データ電極Aを介して調光素子E’を流れる電流量を、要求される調光レベルに応じて可変制御するものとして機能する。なお、調光用電極B’を遮断状態とすれば発光素子Eは最大輝度で点灯する。
【0077】
一方、図11Bの構成は、選択中の走査電極Bにつながる点灯状態の発光素子Eの個数を計数せずとも、指示電流レベルに応じて一定の調光電流を対応する各調光素子E’に通電できるようにした回路の例である。すなわち、該構成では、調光レベルを指示するための制御電圧入力CSを受けて該制御電圧に対応した制御電流を流す入力側トランジスタT0と、各データ電極A上の各調光素子E’に一対一に対応して設けられるとともに、入力側トランジスタTにベースを共用化する形で接続され、制御電流に一義的に対応した値の調光電流Idを各調光素子E’に個別に流す出力側トランジスタT〜Tとを有したカレントミラー回路にて電流制御回路207が構成されている。
【0078】
制御電圧入力CSは指示電流レベルを反映した電圧レベルであり、電圧電流変換回路201を介して電流信号に変換され、カレントミラー回路にて各出力側トランジスタT〜Tに同一レベルの電流が流れるようになっている。制御電圧入力CSを調光レベルに応じて変更すると、入力側トランジスタT及び各出力側トランジスタT〜Tを流れる電流も可変され、所望のレベルの調光電流を各調光素子E’に供給できる。制御電圧入力CSを連続的に変化させれば、調光電流レベルひいては発光素子Eの点灯強度も連続的に変化させることができる。なお、制御電圧入力CSをゼロにすれば調光電流もほぼゼロにできるので、この場合は、調光用のスイッチY’(スイッチ回路11)も省略することができる。
【0079】
なお、図12に示すように、調光素子E’は、調光電流Idの通電により発光する素子により構成してもよい。特に、調光素子E’を発光素子Eと同一の素子(つまり、積層構造が共通の素子)として構成すれば、調光素子E’に対応した部分の層のパターニング等が一切不要となり、製造工程の大幅な簡略化を図ることができるし、調光素子E’の通電特性をと発光素子Eに一致させることができるので、調光制御仕様の簡略化も図ることができる。しかし、この場合、調光素子E’は発光素子Eと同一の強度にて発光するので、調光素子E’からの発光光束が表示エリア120の視認方向へ漏出することを阻止する遮蔽部15を設ける必要がある。この遮蔽部15は、例えば遮光性の筐体の一部として形成してもよいし、遮光性フィルムや塗装膜にて構成するなど、種々の形態が可能である。
【0080】
次に、調光を行う場合、調光電流を流す調光電極B’は、複数フレームにまたがって連続的に通電状態としてもよいし、非表示期間は遮断状態とすることもできる(この場合も、各フレーム期間内では連続的に通電状態とされる)。他方、各走査電極Bの選択期間と同期して断続的に通電状態とすることも可能であり、例えば調光素子E’の寿命向上等に有効となる場合がある。また、図14(1)〜(5)に示すように、一部の走査線を飛び越して通電状態とすることができる。つまり、1フレーム内にて一部の走査電極Bの選択期間のみ、これと同期して調光電極B’を通電状態とするのである。これにより、例えば一定本数置きに画素列からなる走査線を減光でき、1フレームの平均的な明るさを、減光する走査線の数に応じて調整できるようになる。一方、(6)に示すように、走査電極Bの選択期間(つまり、対応する発光素子Eの発光期間)に対し、走査電極Bの通電期間を一定のデューティ比ηで縮小するPWM制御を行うことも可能であり、これにより、各走査線を一様に減光することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のパッシブマトリックス型表示装置の第一実施形態を示す回路図。
【図2】図1のパッシブマトリックス型表示装置の別の動作状態を示す回路図。
【図3】有機EL素子として構成された発光素子の一例を示す積層模式図。
【図4】積層体の立体構造を示す一部切欠斜視図。
【図5】調光素子の第一例を示す積層模式図。
【図6】調光素子の第二例を示す積層模式図。
【図7】調光素子の第三例を示す積層模式図。
【図8】調光素子の第四例を示す積層模式図。
【図9】調光素子の第五例を示す積層模式図。
【図10】本発明のパッシブマトリックス型表示装置の第二実施形態を示す回路図。
【図11A】本発明のパッシブマトリックス型表示装置の第三実施形態を示す回路図。
【図11B】本発明のパッシブマトリックス型表示装置の第四実施形態を示す回路図。
【図12】本発明のパッシブマトリックス型表示装置の第五実施形態を示す回路図。
【図13】本発明のパッシブマトリックス型表示装置の第四実施形態を示す回路図。 有機EL素子の有機積層体エネルギー構造を模式的に示す図。
【図14】発光素子の点灯と同期制御する場合の、調光素子の種々の通電パターンを示すタイミング図。
【符号の説明】
【0082】
1 パッシブマトリックス型表示装置
7 定電流回路(駆動電流源)
9 データ駆動回路
10 走査駆動回路
11 調光スイッチ回路(調光制御手段)
20 陽極
30 正孔注入層
40 正孔輸送層
50 発光層
50’,50” 代替有機層
60 電子輸送層
70 電子注入層
80 陰極
107,207 電流制御回路
120 表示エリア
140 正孔輸送性材料層
150 有機積層体
160 電子輸送性材料層
B 走査電極
A データ電極
E 発光素子
E’ 調光素子
CD 第一方向
RD 第二方向
I 駆動電流
It 総電流
Id 調光電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示エリア内にて第一方向に予め定められた間隔にて複数配列され、各々駆動電流を通電可能な発光接続状態と、前記駆動電流を通電不能な非発光接続状態との間で切り替え可能に設けられた走査電極と、
表示エリア内にて前記第一方向と交差する第二方向に予め定められた間隔にて複数配列されるデータ電極と、
個々の前記データ電極が、各々駆動電流を通電可能な発光接続状態と、前記駆動電流を通電不能な非発光接続状態との間で切り替え可能に接続されるとともに、各データ電極に対し電流を、通電電流量を予め定められた値に制御しつつ供給する駆動電流源と、
前記表示エリア内にて前記走査電極と前記データ電極との各交差位置に形成される表示画素をなす複数の発光素子と、
予め定められた走査周期毎に複数の前記走査電極を、それら走査電極のうち選択されたものみが前記発光接続状態となり、かつ当該選択される走査電極がその配列上にて順次切り替わるように走査駆動する走査駆動回路と、
前記走査周期毎に、いずれの発光素子を発光させるかに応じて定まる特定の前記データ電極を駆動電流源に選択的に接続するデータ駆動回路と、
前記表示エリア外に設けられ、各前記データ電極において前記発光素子と並列に接続され、前記駆動電流源から該データ電極を介して供給される前記総電流の一部が調光電流として分配通電可能に設けられた調光素子と、
該調光素子への前記調光電流の分配通電量を変更することにより、対応するデータ電極上の発光素子への駆動電流の通電量を調整して各発光素子の調光を行う調光制御手段と、
を備えてなることを特徴とするパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項2】
前記調光素子は同一の電圧で駆動された場合の発光輝度が前記発光素子よりも小さいか又は発光しない素子にて構成される請求項1に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項3】
前記調光素子は前記調光電流の通電により発光する素子により構成されるとともに、当該調光素子からの発光光束が前記表示エリアの視認方向へ漏出することを阻止する遮蔽部が設けられている請求項1又は請求項2に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項4】
前記発光素子が有機EL素子である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項5】
複数の前記有機EL素子は前記表示エリアの面内方向に各々連続形成された複数層からなる有機積層体により一体化されてなり、前記操作電極群が前記有機積層体の一方の主表面側に、前記データ電極群が前記有機積層体の他方の主表面側に配置されてなり、前記調光素子は該有機積層体の少なくとも一部の層を流用する形で形成されてなる請求項4記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項6】
前記調光素子は、前記有機積層体の一部の層を省略するか、又該一部の層を他材料からなる層にて置換することにより、同一の電圧で駆動された場合の発光輝度が前記発光素子よりも小さいか又は発光しない素子として形成されてなる請求項5記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項7】
前記発光素子をなす前記有機積層体は、電子輸送性材料層、発光層及び正孔輸送性材料層がこの順で積層され、前記電子輸送性材料層側に前記走査電極及び前記データ電極の一方をなす陰極が、前記正孔輸送性材料層側に前記走査電極及び前記データ電極の他方をなす陽極がそれぞれ形成されるとともに、前記調光素子は、少なくとも前記発光層が省略ないし他材料からなる層にて置換されたものである請求項6記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項8】
前記発光素子をなす前記有機積層体において前記電子輸送性材料層が、前記発光層と接して配置される電子輸送層と、前記陰極と接して配置されるとともに自身の電子親和力Ac1と前記陰極の仕事関数φcとの差Δε1≡φc−Ac1が、前記電子輸送層の電子親和力Ac1と前記陰極の仕事関数φcとの差Δε2≡φc−Ac2よりも小さい電子注入層とを有し、前記調光素子が、前記有機積層体から前記発光層と、前記電子輸送性材料層のうち少なくとも前記電子輸送層とが省略され、かつ前記正孔輸送性材料層は残した構成を有してなる請求項7記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項9】
前記調光素子は前記電子注入層がさらに省略された構造を有する請求項8記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項10】
前記発光素子をなす前記有機積層体において前記正孔輸送性材料層が、前記発光層と接して配置される正孔輸送層と、前記陽極と接して配置されるとともに、自身のイオン化ポテンシャルEc3と前記陽極の仕事関数φaとの差ΔE1≡Ec3−φaが、前記正孔輸送層のイオン化ポテンシャルEc4と前記陽極の仕事関数φaとの差ΔE2≡Ec4−φaよりも小さい正孔注入層とを有し、前記調光素子に含まれる前記正孔輸送性材料層は前記正孔輸送層と前記正孔注入層との少なくともいずれかよりなる請求項8又は請求項9に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項11】
前記調光素子に含まれる前記正孔輸送性材料層は、自身のイオン化ポテンシャルEcxと前記陽極の仕事関数φaとの差ΔEx≡Ecx−φaが、自身の電子親和力Acxと前記陰極の仕事関数φcとの差Δεx≡φc−Acxよりも小さい有機材料からなる請求項9又は請求項10に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項12】
前記有機材料がトルフェニルアミン化合物である請求項11記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項13】
前記発光素子をなす前記有機積層体において前記発光層は、ホスト材料中に蛍光量子収率を向上させるドーパントを添加したものとして形成され、前記調光素子は、前記有機積層体において前記発光層が、前記ドーパントの添加量が該発光層より少ない代替有機層にて置換されたものである請求項7記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項14】
前記調光素子は、前記有機積層体において前記発光層が、電子輸送性有機材料と正孔輸送性有機材料との混合物にて構成された代替有機層にて置換されたものである請求項13記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項15】
前記発光素子をなす前記有機積層体において前記電子輸送性材料層が、前記発光層と接して配置される電子輸送層と、前記陰極と接して配置されるとともに自身の電子親和力Ac1と前記陰極の仕事関数φcとの差Δε1≡φc−Ac1が、前記電子輸送層の電子親和力Ac2と前記陰極の仕事関数φcとの差Δε2≡φc−Ac2よりも小さい電子注入層とを有し、また、前記正孔輸送性材料層が、前記発光層と接して配置される正孔輸送層と、前記陽極と接して配置されるとともに、自身のイオン化ポテンシャルEc3と前記陽極の仕事関数φaとの差ΔE1≡Ec3−φaが、前記正孔輸送層のイオン化ポテンシャルEc4と前記陽極の仕事関数φaとの差ΔE2≡Ec4−φaよりも小さい正孔注入層とを有し、
前記調光素子の前記代替有機層は、前記発光層をなす電子輸送性有機材料に前記正孔輸送性材料層をなす正孔輸送性有機材料を混合したものである請求項14に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項16】
前記調光素子は前記代替有機層の陽極側に前記発光素子と同一の正孔輸送層及び正孔注入層が設けられ、同じく陰極側に前記発光素子と同一の電子輸送層及び電子注入層とが設けられている請求項15に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項17】
前記調光素子の前記代替有機層の陽極側に接する形で前記正孔輸送層が設けられ、他方、該代替有機層の陰極側に接する形で前記発光層をなす電子輸送性有機材料単独よりなる副電子輸送層が設けられ、さらに、該副電子輸送層の陰極側に接する形で前記発光素子と同一の電子輸送層及び電子注入層とが設けられている請求項16に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項18】
前記駆動電流源は、各前記データ電極毎に個別に設けられた定電流回路を含む請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項19】
各前記データ電極に対応する複数の前記調光素子が、前記走査電極の配列末端に隣接配置された調光用電極により、当該調光用電極と各前記データ電極との交差位置にて互いに並列接続されてなり、前記調光制御手段は該調光用電極を介して前記調光電流の分配通電量を変更するものである請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項20】
前記調光用電極は、前記調光電流を通電可能な第一接続状態と、前記調光電流を通電不能な第二接続状態との間で切り替え可能に設けられ、
前記調光制御手段は、該調光用電極を前記第一接続状態と前記第二接続状態との間で切り替える調光用切替制御手段を有してなる請求項19記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項21】
前記調光用切替制御手段は、前記走査駆動回路による前記走査電極の切り替え駆動期間中にて、前記発光素子の調光レベルに応じ前記調光用電極を前記第一接続状態と前記第二接続状態とのいずれかに連続的に保持するものである請求項20記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項22】
前記調光用電極により並列接続された調光素子群が複数組設けられるとともに、各前記データ電極に生ずる前記調光電流の分配通電量として互いに異なる値が得られるよう、各々1又は複数の前記調光素子群を含む調光素子設定パターンが複数通り定められ、前記調光用電極切替制御手段は、指示された調光レベルに応じそれら複数の調光素子設定パターンのいずれかを選択し、該選択された調光素子設定パターンに属する調光素子群を一括して前記第一接続状態となす請求項20又は請求項21に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項23】
前記調光用電極切替制御手段により選択可能な調光素子設定パターンとして、含まれる前記調光素子群の数が互いに異なるものが定められてなる請求項22記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項24】
互いに異なる数の前記調光素子群からなる前記調光素子設定パターンは各調光素子が電圧−電流特性の互いに等しいものからなり、前記調光用電極切替制御手段は、指示された調光レベルにおいて発光素子の減光レベルが大きくなるほど、より多くの調光素子群からなる調光素子設定パターンを選択するものである請求項23に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項25】
各前記調光素子群において一つの前記調光用電極に接続される複数の調光素子は電圧−電流密度特性の互いに等しいものからなり、かつ、複数の前記調光素子群の一部のものが残余の調光素子群よりも通電断面積の大きい調光素子にて構成され、前記調光用電極切替制御手段は、指示された調光レベルにおいて発光素子の減光レベルが大きくなるほど、通電断面積の大きい調光素子からなる調光素子群を含む調光素子設定パターンを選択する請求項22ないし請求項24のいずれか1項に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項26】
前記調光制御手段は、前記調光用電極上を流れる通電電流量を、駆動電流源に接続される前記データ電極の個数に応じて可変制御する電流制御回路を有する請求項1ないし請求項21のいずれか1項に記載のパッシブマトリックス型表示装置。
【請求項27】
前記調光制御手段は、前記データ電極を介して前記調光素子を流れる電流量を調光レベルに応じて可変制御する電流制御回路を有する請求項1ないし請求項26のいずれか1項に記載のパッシブマトリックス型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−51977(P2008−51977A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227124(P2006−227124)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】