説明

パテ組成物及びこれを用いて補修した化粧合板

【課題】水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を主成分とすることにより、比較的短時間で完全に硬化するとともに、優れたサンダー特性が得られる。
【解決手段】パテ組成物は、水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を含む。上記水性エマルジョンのガラス転移温度は40〜80℃であり、ポリビニルアルコールは固形分換算でパテ組成物100質量部に対して0.3〜3.5質量部含まれる。また無機充填剤はパテ組成物100質量部に対して60〜80質量部含まれる。更にパテ組成物の固形分濃度は70〜90質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部等からなる欠陥部を有する合板の表面を補修するために用いられ、ホルムアルデヒドを含まない水性のパテ組成物と、このパテ組成物を用いて補修した化粧合板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合板の表面には導管、節穴、干割れ、プレスマーク等、種々の欠陥部(凹凸)が存在する。このため外観により等級区分される製品では、上記欠陥部の存在により低グレード品とみなされたり、或いは合板表面に紙、突き板、プラスチックシート等を二次的に接着する場合、上記欠陥部の影響が製品の表面に現れて見栄えを損う問題点があった。例えば、合板表面に厚さ数十μm〜数百μmという極めて薄い紙や突き板を貼る場合、接着した後或いは塗装した後に、割れや節穴、場合によっては導管までもが、突き板等の凹凸として現われて、美観を損なう問題点があった。このような欠点を解消する手段として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等をベースとしたパテ組成物を上記欠陥部(凹部)に充填する方法が採用されている。欠陥部に充填した後のパテの乾燥は、主として水や有機溶剤の揮散に基づくため、硬化した後に、塗膜が陥没する目ヤセが発生したり、塗膜にクラックが発生する問題点があった。
【0003】
一方、パテ組成物の塗工方法としては、ぺースト状のパテ組成物を補修剤として合板の欠陥部に人手によりコテ等を用いて塗り込む方法と、合板の全面にナイフコーター等を用いて機械的に塗布する方法とがある。これら2つの方法とも、合板の欠陥部にパテ組成物を充填して硬化した後、パテ組成物の余剰分はサンダーにより研削して除去される。この場合、補修剤として塗膜の柔らかい樹脂等をベースとしたパテ組成物を用いると、比較的少ない数百枚程度の合板をサンダー処理した段階でサンドペーパーに目詰まりが発生するため、サンドペーパーの交換頻度が多くなり、いわゆるサンダー特性が低下してしまい、合板の生産性が低下する問題点があった。
【0004】
この点を解消するために、木材、合板等の木質板面に、最低造膜温度が5℃以上である水性ラテックス、ホルムアルデヒド系樹脂、発泡剤、充填剤及び専用硬化剤からなる発泡性塗布剤を、塗布面をならい加圧しつつ全面に塗布し、この板面の導管、割れ、溝、虫食い穴、プレスマーク等の欠陥部に塗布剤を充填した、サンダー特性の良い補修、目止め方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このサンダー特性の良い補修、目止め方法では、従来、2工程で行っていた目止め工程と補修工程を1工程で何ら支障なく行うことができる。また使用する補修兼目止め用塗布剤は可用時間も長く、得られた皮膜も適度の硬度を有するため、サンダー仕上げ処理も容易であり、平滑性に優れかつ加工適性の良好な木質板が得られる。
【0005】
また、導管、割れ、ヘアクラック、ピンホール等の凹面を有する合板、集成材などの木製ボード類表面に、パテを塗布して補修し目止めする際に、固形分が78〜85%でありその中に13〜20%のホルムアルデヒド系樹脂を含有する主剤と、硬化剤とを混合してパテを調製し、このパテを塗布して硬化させる、木製ボード類の表面補修・目止め方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この木製ボード類の表面補修・目止め方法では、主剤が、ホルムアルデヒド系樹脂と充填剤とからなる。このように構成された木製ボード類の表面補修・目止め方法では、木材に対する良好な接着性、作業性、更には経済性を有するホルムアルデヒド系樹脂の利点を生かし、導管、割れ、ヘアクラック、ピンホール等の凹面を有する合板、集成材などの木製ボード類表面の補修・目止め用途に対するホルムアルデヒド系樹脂のもつ欠点を改善することが可能となる、即ち上記パテを塗布して硬化させた木製ボード類では、発泡、目ヤセ、割れが発生せず、かつ凝集力、耐水性、耐久性が向上する。
【特許文献1】特開平3−267174号公報(請求項1、明細書第5頁右下欄2行目〜8行目)
【特許文献2】特開平5−064769号公報(請求項1、段落[0018])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の特許文献1及び特許文献2に示された方法では、熱硬化型のホルムアルデヒド系樹脂を使用しているため、完全に硬化するまで比較的長い時間を要する不具合があった。また、上記従来の特許文献1及び特許文献2に示された方法では、いずれもホルムアルデヒドを含んでおり、環境への影響を考慮すると好ましくない問題点もあった。
【0007】
本発明の目的は、水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を主成分とすることにより、比較的短時間で完全に硬化する、パテ組成物及びこれを用いて補修した化粧合板を提供することにある。本発明の別の目的は、サンダー特性に優れ、またホルムアルデヒドを含まず、環境に悪影響を及さない、パテ組成物及びこれを用いて補修した化粧合板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を含むパテ組成物の改良である。その特徴ある構成は、水性エマルジョンのガラス転移温度が40〜80℃であり、ポリビニルアルコールを固形分換算でパテ組成物100質量部に対して0.3〜3.5質量部含み、無機充填剤をパテ組成物100質量部に対して60〜80質量部含み、パテ組成物の固形分濃度が70〜90質量%であるところにある。この請求項1に記載されたパテ組成物では、このパテ組成物を、表面に欠陥部のある合板の表面に塗布して乾燥した後に研磨等することにより、平滑な合板を得ることができる。またパテ組成物が水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を主成分とするので、比較的短時間で完全に硬化する。また上記パテ組成物は塗布適性及びサンダー特性が優れているため、合板の補修及びその合板を用いた化粧合板の生産性を向上できる。更に上記パテ組成物を、表面に欠陥部のある合板の表面全体にナイフコーター等で塗布して乾燥した後に研磨等して、合板の欠陥部を補修し、更に合板の表面に突き板を貼付することにより、平滑な突き板貼りの化粧合板が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パテ組成物の水性エマルジョンのガラス転移温度が40〜80℃であり、ポリビニルアルコールを固形分換算でパテ組成物100質量部に対して0.3〜3.5質量部含み、無機充填剤をパテ組成物100質量部に対して60〜80質量部含み、更にパテ組成物の固形分濃度が70〜90質量%であるので、このパテ組成物を、表面に欠陥部のある合板の表面に塗布して乾燥した後に研磨等することにより、平滑な合板を得ることができる。またパテ組成物が水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を主成分とするので、比較的短時間で完全に硬化する。また上記パテ組成物は塗布適性及びサンダー特性が優れているため、合板の補修及びその合板を用いた化粧合板の生産性を向上できる。更に上記パテ組成物を、合板の表面全体に塗布し乾燥し研磨等して合板の欠陥部を補修した後に、合板の表面に突き板を貼付することにより、平滑な突き板貼りの化粧合板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。パテ組成物は、水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を含む。水性エマルジョンとしては、酢酸ビニル系、(メタ)アクリル酸エステル系、エチレン−酢酸ビニル系、スチレン−ブタジエン系、スチレン−アクリル系、アクリルニトリル−ブタジエン系等が主に挙げられる。また水性エマルジョンとしては、水性ウレタン樹脂等も使用できる。これらの水性エマルジョンは1種類に限らず、2種類以上を併用してもよい。更に水性エマルジョンのガラス転移温度(Tg)は40〜80℃、好ましくは50〜70℃であり、水性エマルジョン中の分散成分の平均粒径は0.05〜3.0μm、好ましくは0.1〜2.5μmである。なお、本発明において、水性エマルジョン中の分散性分の平均粒径は、例えばレーザ光回折法を利用した粒度分布測定装置等を用いて、重量平均値として求めることができる。ここで、水性エマルジョンのガラス転移温度を40〜80℃の範囲内に限定したのは、40℃未満では乾燥後の塗膜が柔らか過ぎてサンドペーパーの目詰まりが発生し易くなり、80℃を超えると塗膜が硬くなり過ぎてサンダー処理に高い圧力を作用させる必要がありサンドペーパーが痛み易いからである。また水性エマルジョンの平均粒径を0.05〜3.0μmの範囲内に限定したのは、0.05μm未満ではパテ組成物の粘度が上昇して機械による塗布が難しくなり、3.0μmを超えると塗膜の強度が低下するからである。なお、水性エマルジョンは固形分換算でパテ組成物100質量部に対して2〜6質量部含まれることが好ましい。ここで、水性エマルジョンを固形分換算で2〜6質量部の範囲内に限定したのは、2質量部未満では凝集力が不足して欠陥部に充填した塗膜にクラックが発生するおそれがあり、6質量部を超えると塗膜が硬くなり過ぎてサンダー特性に悪影響を及ぼすからである。
【0011】
ポリビニルアルコールは固形分換算でパテ組成物100質量部に対して0.3〜3.5質量部、好ましくは0.5〜2.5質量部含まれる。ここで、ポリビニルアルコールを固形分換算で0.3〜3.5質量部の範囲内に限定したのは、0.3質量部未満では塗布適性に悪影響を及ぼし、3.5質量部を超えると耐水性が低下するからである。上記パテ組成物にポリビニルアルコールを含むことにより、造膜性が向上し、その結果、合板の欠陥部(凹部)に充填されたパテ組成物は、乾燥工程において速やかに乾燥して塗膜が形成されるため、目ヤセやクラックの発生を防止することが可能となる。またポリビニルアルコールのケン化度は80〜98%、好ましくは85〜93%であり、ポリビニルアルコールの重合度は500〜3500、好ましくは700〜3000である。ここで、ポリビニルアルコールのケン化度を80〜98%の範囲内に限定したのは、80%未満では塗膜の耐水性が低下し、98%を超えるとパテ組成物の低温時の粘度安定性が悪くなるからである。またポリビニルアルコールの重合度を500〜3500の範囲内に限定したのは、500未満では塗膜の耐水性が低下し、3500を超えるとパテ組成物の粘度が上昇して塗布適性に悪影響を及ぼすからである。
【0012】
無機充填剤はパテ組成物100質量部に対して60〜80質量部含まれる。また無機充填剤は、炭酸カルシウムであることが好ましく、その平均粒径は1.0〜15.0μm、好ましくは3.0〜12.0μmである。なお、本発明において、炭酸カルシウムの平均粒径とは、粒度分布から求めた質量50%に相当する粒径のことである。ここで、無機充填剤の添加量を60〜80質量部の範囲内に限定したのは、60質量部未満では塗膜の硬化収縮による目ヤセが発生し易くなり、80質量%を超えるとパテ組成物の粘度が上昇して流動性が乏しくなり、機械による塗布を行うことができなくなるからである。また無機充填剤の平均粒径を1.0〜15.0μmの範囲内に限定したのは、1.0μm未満ではパテ組成物の粘度が上昇して機械塗布が難しくなり、15.0μmを超えると塗膜の平滑性が悪くなるとともにナイフコーターのナイフが傷み易くなるからである。なお、炭酸カルシウムの一部を、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム等の炭酸化合物や、クレー、カオリン、ガラスバルーン、酸化チタン等の無機充填剤で置き換えてもよい。また炭酸カルシウムの一部を、木粉、米粉、小麦粉、コーンスターチ、ゴム粒子、中空状高分子粒子等の有機充填剤に置き換えることも可能である。上記充填剤の添加量によりパテ組成物の固形分濃度を制御することができるけれども、パテ組成物の固形分濃度は70〜90質量%、好ましくは76〜84質量%に設定される。ここで、パテ組成物の固形分濃度を70〜90質量%の範囲内に限定したのは、70質量%未満では塗膜の硬化収縮により目ヤセが発生し易くなり、90質量%を超えるとパテ組成物の粘度が上昇して流動性が乏しくなり機械による塗布を行うことができなくなるからである。
【0013】
上記パテ組成物には、パテ組成物100質量部に対して、0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜4質量%の多価イソシアネート化合物、又は0.05〜3質量部、好ましくは0.1〜2質量%のエポキシ化合物を添加することができる。これらの化合物を上記範囲内で添加することにより、パテ組成物に耐水性を付与できる。イソシアネート化合物としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(p−MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素添加TDI、水素添加MDI、水素添加XDI等のイソシアネート化合物や、これらのイソシアネート化合物の変成物(モノメリック及びポリメリックの各種異性体を含む。)や、上記イソシアネート化合物の混合物が挙げられる。またエポキシ化合物としては、エチレングリコールグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等の一般に多価アルコールのグリシジルエーテルと称されるエポキシ化合物や、これらの混合物等が挙げられる。
【0014】
このように構成されたパテ組成物を用いて化粧合板を製造する方法を説明する。先ず表面に欠陥部(凹部)のある合板の表面に、パテ組成物をナイフコーター等で塗布する。このとき上記パテ組成物は塗布適性が優れているため、パテ組成物を短時間で容易に合板に塗布できる。なお、パテ組成物をナイフコーター等により塗布するのではなく、コテ等を用いた人手により塗り混んでもよい。次いで上記合板に塗布したパテ組成物を加熱により乾燥して硬化する。この加熱は熱風タイプのドライヤーの使用が好適であり、乾燥温度は使用する水性エマルジョンのガラス転移温度より20℃以上高い温度が望ましい。またパテ組成物が水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を主成分としているので、短時間で完全に硬化する。次に合板の表面を研磨等することにより、合板の表面を平滑にする。このとき上記パテ組成物はサンダー特性が優れているため、サンダーに用いられるサンドペーパーの目詰りが発生し難く、サンドペーパーの交換頻度が少なくて済む。更に上記合板の表面に突き板を貼付する。これにより平滑な突き板貼りの化粧合板が得られる。
【実施例】
【0015】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
水性エマルジョンを次の方法で製造した。先ず撹拌装置、温度計、コンデンサ、滴下ロート及び窒素ガス通気管を備えた反応器に、水160gと、アニオン系乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(エマールO、花王(株)製)を2.0g仕込み、60℃に昇温した。次に撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10%水溶液12gを加えた後、モノマー成分として、アクリル酸10g、メタクリル酸メチル386g、アクリル酸ブチル89g、ドデシル硫酸ナトリウム6g及び水280gからなるモノマーエマルジョンを、滴下ロートにて反応容器内に4時間かけて連続滴下した。この間、重合温度は60±2℃に保った。滴下終了後75℃に3.5時間保持して反応を行なった。反応後、反応液を30℃に放冷し、25%アンモニア水5.5gを添加し、固形分濃度50質量%、粘度3500mPa・s、平均粒径0.20μm、pH7.5の安定性の良好な水性エマルジョンを得た。なお、この水性エマルジョンのガラス転移温度は60℃であった。一方、製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、上記水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例1とした。
【0016】
<実施例2>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水25質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)2質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は75質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例2とした。
<実施例3>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水21質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)6質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は79質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例3とした。
【0017】
<実施例4>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)0.3質量部(固形分換算)を水23.7質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は76.3質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例4とした。
<実施例5>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)3.5質量部(固形分換算)を水20.5質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は79.5質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例5とした。
【0018】
<実施例6>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水30質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム62質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は70質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例6とした。
<実施例7>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水12質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム80質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は88質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例7とした。
【0019】
<実施例8>
水性エマルジョンを次の方法で製造した。先ず撹拌装置、温度計、コンデンサ、滴下ロート及び窒素ガス通気管を備えた反応器に、水160gと、アニオン系乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(エマールO、花王(株)製)を2.0g仕込み、60℃に昇温した。次に撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10%水溶液12gを加えた後、モノマー成分として、アクリル酸10g、メタクリル酸メチル339g、アクリル酸ブチル136g、ドデシル硫酸ナトリウム6g及び水280gからなるモノマーエマルジョンを、滴下ロートにて反応容器内に4時間かけて連続滴下した。この間、重合温度は60±2℃に保った。滴下終了後75℃に3.5時間保持して反応を行なった。反応後、反応液を30℃に放冷し、25%アンモニア水5.5gを添加し、固形分濃度50質量%、粘度3500mPa・s、平均粒径0.20μm、pH7.5の安定性の良好な水性エマルジョンを得た。なお、この水性エマルジョンのガラス転移温度は40℃であった。一方、製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、上記水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:40℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例8とした。
【0020】
<実施例9>
水性エマルジョンを次の方法で製造した。先ず撹拌装置、温度計、コンデンサ、滴下ロート及び窒素ガス通気管を備えた反応器に、水160gと、アニオン系乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(エマールO、花王(株)製)を2.0g仕込み、60℃に昇温した。次に撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10%水溶液12gを加えた後、モノマー成分として、アクリル酸10g、メタクリル酸メチル429g、アクリル酸ブチル46g、ドデシル硫酸ナトリウム6g及び水280gからなるモノマーエマルジョンを、滴下ロートにて反応容器内に4時間かけて連続滴下した。この間、重合温度は60±2℃に保った。滴下終了後75℃に3.5時間保持して反応を行なった。反応後、反応液を30℃に放冷し、25%アンモニア水5.5gを添加し、固形分濃度50質量%、粘度3500mPa・s、平均粒径0.20μm、pH7.5の安定性の良好な水性エマルジョンを得た。なお、この水性エマルジョンのガラス転移温度は80℃であった。一方、製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、上記水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:80℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を実施例9とした。
【0021】
<実施例10>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)0.05質量部を添加した。このパテ組成物を実施例10とした。
<実施例11>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。なお、イソシアネート(p-MDI)は添加しなかったけれども、エポキシ化合物として、エチレングリコールグリシジルエーテルをパテ組成物100質量部に対して0.05質量部を添加した。このパテ組成物を実施例11とした。
<実施例12>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。なお、イソシアネート(p-MDI)は添加しなかったけれども、エポキシ化合物として、エチレングリコールグリシジルエーテルをパテ組成物100質量部に対して3質量部を添加した。このパテ組成物を実施例12とした。
【0022】
<比較例1>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水26質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)1質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は74質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を比較例1とした。
<比較例2>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水20質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)2質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は80質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を比較例2とした。
【0023】
<比較例3>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)0.2質量部(固形分換算)を水23.8質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は76.2質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を比較例3とした。
<比較例4>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)5質量部(固形分換算)を水19質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は81質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を比較例4とした。
【0024】
<比較例5>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水37質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム55質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は63質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を比較例5とした。
<比較例6>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水7質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム85質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は93質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を比較例6とした。
【0025】
<比較例7>
水性エマルジョンを次の方法で製造した。先ず撹拌装置、温度計、コンデンサ、滴下ロート及び窒素ガス通気管を備えた反応器に、水160gと、アニオン系乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(エマールO、花王(株)製)を2.0g仕込み、60℃に昇温した。次に撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10%水溶液12gを加えた後、モノマー成分として、アクリル酸10g、メタクリル酸メチル312g、アクリル酸ブチル163g、ドデシル硫酸ナトリウム6g及び水280gからなるモノマーエマルジョンを、滴下ロートにて反応容器内に4時間かけて連続滴下した。この間、重合温度は60±2℃に保った。滴下終了後75℃に3.5時間保持して反応を行なった。反応後、反応液を30℃に放冷し、25%アンモニア水5.5gを添加し、固形分濃度50質量%、粘度3500mPa・s、平均粒径0.20μm、pH7.5の安定性の良好な水性エマルジョンを得た。なお、この水性エマルジョンのガラス転移温度は30℃であった。一方、製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、上記水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:40℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を比較例7とした。
【0026】
<比較例8>
水性エマルジョンを次の方法で製造した。先ず撹拌装置、温度計、コンデンサ、滴下ロート及び窒素ガス通気管を備えた反応器に、水160gと、アニオン系乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(エマールO、花王(株)製)を2.0g仕込み、60℃に昇温した。次に撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10%水溶液12gを加えた後、モノマー成分として、アクリル酸10g、メタクリル酸メチル448g、アクリル酸ブチル27g、ドデシル硫酸ナトリウム6g及び水280gからなるモノマーエマルジョンを、滴下ロートにて反応容器内に4時間かけて連続滴下した。この間、重合温度は60±2℃に保った。滴下終了後75℃に3.5時間保持して反応を行なった。反応後、反応液を30℃に放冷し、25%アンモニア水5.5gを添加し、固形分濃度50質量%、粘度3500mPa・s、平均粒径0.20μm、pH7.5の安定性の良好な水性エマルジョンを得た。なお、この水性エマルジョンのガラス転移温度は90℃であった。一方、製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、上記水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:80℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)5質量部を添加した。このパテ組成物を比較例8とした。
【0027】
<比較例9>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)0.04質量部を添加した。このパテ組成物を比較例9とした。
<比較例10>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。更に上記パテ組成物100質量部に対してイソシアネート(p-MDI)10質量部を添加した。このパテ組成物を比較例10とした。
【0028】
<比較例11>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。なお、イソシアネート(p-MDI)は添加しなかったけれども、エポキシ化合物として、エチレングリコールグリシジルエーテルをパテ組成物100質量部に対して0.04質量部を添加した。このパテ組成物を比較例11とした。
<比較例12>
製糊タンク中でポリビニルアルコール(商品名:PVA217S/(株)クラレ製、ケン化度88%、重合度1700)2質量部(固形分換算)を水22質量部に溶解し、実施例1の水性エマルジョン(ガラス転移温度Tg:60℃)5質量部(固形分換算)と、炭酸カルシウム70質量部と、分散剤(トリポリリン酸ソーダ)1質量部とを混合して撹拌してパテ組成物を製造した。このパテ組成物の固形分濃度は78質量%であった。なお、イソシアネート(p-MDI)は添加しなかったけれども、エポキシ化合物として、エチレングリコールグリシジルエーテルをパテ組成物100質量部に対して4質量部を添加した。このパテ組成物を比較例12とした。
【0029】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜12及び比較例1〜12のパテ組成物について、塗布適性、欠陥部(凹部)に充填した後の外観、サンダー特性、化粧合板の外観及び浸漬剥離の各試験を行った。
(a) 塗布適性試験
先ず欠陥部(凹部)を有する3×6尺サイズ・12mm厚の合板の表面全体にナイフコーターにて、実施例1〜12及び比較例1〜12のパテ組成物を100gそれぞれ塗布した。次に目視により塗布状態を観察し、塗布適性を評価した。
(b) 欠陥部(凹部)に充填した後の外観試験
上記(a)と同様に、欠陥部(凹部)を有する合板の表面全体にナイフコーターにて、実施例1〜12及び比較例1〜12のパテ組成物を100gそれぞれ塗布した後に、120℃にて乾燥させた。乾燥後、合板の欠陥部(凹部)に充填されたパテ組成物の外観を評価した。
(c) サンダー特性試験
パテ組成物を充填して乾燥した合板を室温にて3日間養生した後、ワイドベルトサンダー(ライン速度100m/分、サンダー回転速度20m/秒、サンドペーパー粒度120)にて過剰分のパテ組成物を研削した。2000枚の合板をそれぞれサンダー処理して、サンダー特性を評価した。
(d) 化粧合板の外観試験
サンダー処理後の合板にロールコーターにて水性高分子−イソシアネート系接着剤(商品名:KR-134/AX-200/光洋産業株式会社製)100g/m2を塗布し、0.35mm厚のナラ突き板を貼り合わせ、温度110℃かつ圧力1MPaで60秒間圧締し、化粧合板を作製した。化粧合板表面の外観を目視にて評価した。
(e) 浸漬剥離試験
化粧合板の耐水性を評価するために化粧合板規格(JAS)の2類浸漬剥離試験を行った。具体的には、各試料合板から1辺が75mmの正方形状の試験片を4片ずつ作成し、試験片を70±3℃の温水中に2時間浸漬した後、60±3℃で3時間乾燥した。
【0030】
その結果を表2に示す。なお、表1には実施例1〜12及び比較例1〜12のパテ組成物の各成分の混合割合を示す。また、表2の塗布適性の試験において、『◎』はパテ組成物の塗布ムラがなく、非常に綺麗に均一に塗布できることを示し、『○』はパテ組成物の塗布ムラがなく、均一に塗布できることを示し、『×』はパテ組成物の塗布ムラがあることを示す。表2の欠陥部(凹部)に充填した後の外観の試験において、『◎』は欠陥部に充填した塗膜に目ヤセやクラックがなく、外観が非常に良いことを示し、『○』は塗膜に目ヤセやクラックがないことを示し、『×』は塗膜に目ヤセやクラックがあることを示す。表2のサンダー特性の試験において、『◎』は2000枚の合板の処理後、サンドペーパーに目詰まりがなく、サンドペーパーの劣化が非常に少ないことを示し、『○』は2000枚の合板の処理後、サンドペーパーに目詰まりがないことを示し、『×』は2000枚の合板の処理前に、サンドペーパーが目詰まりすることを示す。表2の化粧合板外観の試験において、『◎』は加工後の化粧合板の板面が平滑で欠陥部の凹凸が無く、表面性が非常に良いことを示し、『○』は加工後の化粧合板の板面が平滑で欠陥部の凹凸が無いことを示し、『×』は加工後の化粧合板の板面が平滑でなく欠陥部の凹凸があることを示す。表2の浸漬剥離の試験において、『◎』は塗膜の剥離が全く発生しなかったことを示し、『○』は塗膜の剥離した部分があったけれども、剥離しない部分の長さが2/3以上であったことを示し、『×』は塗膜の剥離した部分があり、剥離しない部分の長さが2/3未満であったことを示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

表2から明らかなように、比較例1では、水性エマルジョンが少な過ぎるため、欠陥部(凹部)に充填した後にクラックが生じ、比較例2では、水性エマルジョンが多過ぎるため、サンダー特性が悪かった。比較例3では、ポリビニルアルコールが少な過ぎるため、塗布適性が悪く、また欠陥部(凹部)に充填した後にクラックが生じ、比較例4では、ポリビニルアルコールが多過ぎるため、浸漬剥離試験に不合格であった。比較例5では、炭酸カルシウムが少なく、固形分濃度が低過ぎるため、欠陥部(凹部)に充填した後に目ヤセが生じ、比較例6では、炭酸カルシウムが多く、固形分濃度が高過ぎるため、塗布適性が悪く、その結果、欠陥部(凹部)に充填した後の外観も悪かった。比較例7では、水性エマルジョンのガラス転移温度が低過ぎるため、サンダー特性が悪く、比較例8では、水性エマルジョンのガラス転移温度が高過ぎるため、サンダー特性が悪かった。比較例9では、イソシアネート化合物の添加量が少な過ぎるため、塗膜が剥離してしまい剥離しない塗膜の長さが2/3未満であり、比較例10では、イソシアネート化合物の添加量が多過ぎるため、塗膜適性が悪く、その結果、欠陥部(凹部)に充填した後の外観も悪かった。比較例11では、エポキシ化合物の添加量が少な過ぎるため、塗膜が剥離してしまい剥離しない塗膜の長さが2/3未満であり、比較例12では、エポキシ化合物の添加量が多過ぎるため、塗膜適性が悪く、その結果、欠陥部(凹部)に充填した後の外観も悪かった。
【0033】
これらに対し、実施例1では、塗布ムラは発生せず、塗布適性には何ら問題が発生せず、塗膜に目ヤセやクラック等が発生することなく、綺麗に欠陥部(凹部)を充填することができた。また実施例1では、サンドペーパーの目詰まりは発生せず、平滑性についても何ら問題はなく、塗膜の剥離は発生しなかった。更に実施例2〜12では、塗布適性、欠陥部(凹部)に充填した後の外観、サンダー特性、化粧合板の外観、及び浸漬剥離の各試験について何ら問題は発生しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性エマルジョン、ポリビニルアルコール及び無機充填剤を含むパテ組成物において、
前記水性エマルジョンのガラス転移温度が40〜80℃であり、
前記ポリビニルアルコールを固形分換算で前記パテ組成物100質量部に対して0.3〜3.5質量部含み、
前記無機充填剤を前記パテ組成物100質量部に対して60〜80質量部含み、
前記パテ組成物の固形分濃度が70〜90質量%である
ことを特徴とするパテ組成物。
【請求項2】
無機充填剤が炭酸カルシウムであり、その平均粒径が1.0〜15.0μmである請求項1記載のパテ組成物。
【請求項3】
パテ組成物100質量部に対して、0.05〜5質量部の多価イソシアネート化合物又は0.05〜3質量部のエポキシ化合物を更に含む請求項1又は2記載のパテ組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載のパテ組成物が表面の欠陥部に充填された合板と、前記合板の表面に貼付された突き板とを備えた化粧合板。

【公開番号】特開2009−46542(P2009−46542A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212095(P2007−212095)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】