説明

パドル電流測定値フィードバックのみを使用したジャイロなし遷移軌道太陽捕捉

【課題】宇宙船が自身を操作して、太陽電池パネルを最大の太陽曝露回転姿勢に方位転換させることができるように、パドル電流測定値フィードバックのみを使用した、ジャイロなし遷移軌道太陽捕捉のシステム及び方法を提供する。
【解決手段】太陽電池パドル電流フィードバックのみを姿勢制御のための唯一の閉ループフィードバックセンサとして使用して宇宙船操作を制御することを含む。宇宙船の回転軸方位及び回転速度を制御するために、回転コントローラが使用される。回転コントローラは、宇宙船の回転軸方位を慣性固定方向と一致させ、モーメンタムベクトルを利用して所定の回転速度で回転するように命令する。さらに、宇宙船本体の角速度及び宇宙船の姿勢を推定する方法は、太陽電池アレイ電流及び宇宙船のモーメンタムの組み合わせを、太陽電池パドル電流フィードバックを唯一の閉ループフィードバックセンサとするコスト関数として利用する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
宇宙産業において、遷移軌道上の静止衛星の姿勢制御は重大な事象である。ミッション軌道を目標とする円形の静止軌道に方向付けるには、通常約2週間かかる。その間、衛星は遠地点及び近地点において一連の主エンジン燃焼を経て軌道を上昇させなければならず、その際衛星自体は、衛星のx軸又はz軸の周りを一定の回転速度で回転安定化されなければならない。これは、所望の姿勢を維持するために、主エンジンが燃焼している間に十分な動的回転剛性を得ることが目的である。通常の衛星用制御アクチュエータは、リアクションホイール及びスラスタである。採用される通常のフィードバックセンサは、ジャイロ、太陽センサ、及びスタートラッカーである。ミッションの要求を満たすために、これらのアクチュエータ及びセンサを種々に組み合わせることにより、衛星が遷移軌道ミッション全体において確実に、一定の速度で回転し、一定の慣性姿勢を2〜3度以内に維持するようにする。しかしながら、機能の限界、又はジャイロの故障により、宇宙船の姿勢制御システムはシステムの安定性及び故障自律性の領域において劇的な課題に直面する可能性がある。ジャイロを使用しない衛星の姿勢制御に取り組むための様々な姿勢制御システム(ACS)の構成が、紙上に提案されている。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、ジャイロを使用しない遷移軌道上の太陽捕捉に関するものである。具体的には、本開示は、パドル電流測定値フィードバックのみを使用した、ジャイロを使用しない遷移軌道上の太陽捕捉に関するものである。本開示は、パドル電流フィードバックのみを、姿勢を制御するための唯一の閉ループフィードバックセンサとして使用した、宇宙船の操作を制御するためのシステム及び方法を教示する。これらのシステム及び方法を用いることによって、宇宙船が自身を操作して、太陽電池パネルを最大の太陽曝露回転姿勢に向かせることができる。本開示は、例えばジャイロ、太陽/地球センサ、又はスタートラッカー等の全ての従来のフィードバックセンサを使用せずに、宇宙船の太陽捕捉操作を駆動するための新しいパドル電流フィードバックを基にした制御システムを教示する。
【0003】
この新しい提案を明示するために、衛星の姿勢が宇宙空間において不明である時の重大な救命操作、太陽捕捉が使用される。アルゴリズム自体は、衛星の太陽電池パネルを最大受電姿勢に配置するために、パドル電流測定値フィードバックと、地球中心の慣性座標フレーム(ECI)における太陽の単位ベクトルの天体暦知識にのみ依存する。速度及び四元数は、パドル電流ベースの最適化アルゴリズムを介して推定される。本開示は、パドル電流に基づいて最適速度及び姿勢の推定値をどのように導き出すかを教示する。加えて、推定量に使用されるべき回転制御に好適な制御法則が開示される。
【0004】
一実施形態によれば、宇宙船操作を制御する方法は、太陽電池パドル電流フィードバックを姿勢制御のための唯一の閉ループフィードバックセンサとして使用し、回転コントローラで宇宙船の回転軸方位と回転速度を制御することを含む。
【0005】
別の実施形態によれば、宇宙船本体の角速度と宇宙船の姿勢を推定する方法は、太陽電池アレイ電流と宇宙船のモーメンタムの組み合わせを使用し、太陽電池パドル電流フィードバックを唯一の閉ループフィードバックセンサとして使用することを含む。
【0006】
さらに別の実施形態によれば、宇宙船操作を制御するシステムは、少なくとも1つの太陽電池パネル、リアクションホイール及びスラスタを有する宇宙船を含み、宇宙船は、太陽電池パドル電流フィードバックを、姿勢を制御するための唯一の閉ループフィードバックセンサとして使用し、宇宙船の回転軸方位及び回転速度を制御するために回転コントローラを使用する。
【0007】
上述した本開示の特徴及び利点は、添付の図面と合わせて下記の説明を参照することによってさらに明らかとなる。添付の図面において同じ参照番号は同じ要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本開示の少なくとも1つの実施形態による、太陽電力を受けて宇宙船の電池用のパドル電流を発生させる宇宙船の太陽電池パドルを示す図である。
【図2】図2は本開示の少なくとも1つの実施形態による、パドル電流測定値フィードバックのみを使用した太陽捕捉を達成するためのプロセスフロー図である。
【図3】図3は本開示の少なくとも1つの実施形態による、宇宙船の回転軸を目標の方向及び大きさに変更するのに回転コントローラが使用するオフセットベクトルを示す図である。
【図4A】図4Aは本開示の少なくとも1つの実施形態による、無制御の回転コントローラの動作において起こる揺れを示す図である。
【図4B】図4Bは本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラが適用された時に、一定のベクトルにらせん運動している回転軸を示す図である。
【図5】図5は本開示の少なくとも1つの実施形態による、揺れながらのらせん運動からゼロまでの角速度の時間履歴を示す図である。
【図6】図6は本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラを使用した宇宙船の方向転換を示す図である。
【図7】図7は本開示の少なくとも1つの実施形態による、慣性モーメント(MOI)推定量を使用して推定された慣性マトリックスの対角線要素及び非対角要素のパーセントエラーを含む表を示す。
【図8A】図8Aは本開示の少なくとも1つの実施形態による、真理方向余弦マトリックス(DCM)が使用され、ホイールモーメンタムが変化しない、推定された慣性マトリックス要素のパーセントエラーの時間履歴を示す図である。
【図8B】図8Bは本開示の少なくとも1つの実施形態による、真理DCMが使用され、ホイールモーメンタムが変化する、推定された慣性マトリックス要素のパーセントエラーの時間履歴を示す図である。
【図8C】図8Cは本開示の少なくとも1つの実施形態による、推定DCMが使用され、ホイールモーメンタムが変化しない、推定された慣性マトリックス要素のパーセントエラーの時間履歴を示す図である。
【図8D】図8Dは本開示の少なくとも1つの実施形態による、推定DCMが使用され、ホイールモーメンタムが変化する、推定された慣性マトリックス要素のパーセントエラーの時間履歴を示す図である。
【図9】図9は本開示の少なくとも1つの実施形態による、候補座標フレームの非一意性を表す図である。
【図10A】図10Aは本開示の少なくとも1つの実施形態による、速度及び四元数の推定値が真理初期条件を有する真理値と一致する、角速度ベクトルの三次元(3D)飛行軌道を示す図である。
【図10B】図10Bは本開示の少なくとも1つの実施形態による、速度及び四元数の推定値が真理初期条件を有する真理値と一致する、四元数の最後の三要素の3D飛行軌道を示す図である。
【図11A】図11Aは本開示の少なくとも1つの実施形態による、速度及び四元数の推定値が摂動初期条件での真理値に収束する、角速度ベクトルの3D飛行軌道を示す図である。
【図11B】図11Bは本開示の少なくとも1つの実施形態による、速度及び四元数の推定値が摂動初期条件での真理値に収束する、速度ベクトルの3番目の成分を示す図である。
【図11C】図11Cは本開示の少なくとも1つの実施形態による、速度及び四元数の推定値が摂動初期条件での真理値に収束する、q(2、3、4)の3D飛行軌道を示す図である。
【図11D】図11Dは本開示の少なくとも1つの実施形態による、速度及び四元数の推定値が摂動初期条件での真理値に収束する、四元数の4番目の成分を示す図である。
【図12A】図12Aは本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラ、MOI推定量、及びパドル電流速度及び四元数推定量を使用したキーホール太陽捕捉操作のSimulinkシミュレーション結果の角速度接近モーメンタムを示す図である。
【図12B】図12Bは本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラ、MOI推定量、及びパドル電流速度及び四元数推定量を使用したキーホール太陽捕捉操作のSimulinkシミュレーション結果の真理及び推定パドル電流を示す図である。
【図12C】図12Cは本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラ、MOI推定量、及びパドル電流速度及び四元数推定量を使用したキーホール太陽捕捉操作のSimulinkシミュレーション結果の真理及び推定角速度を示す図である。
【図12D】図12Dは本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラ、MOI推定量、及びパドル電流速度及び四元数推定量を使用したキーホール太陽捕捉操作のSimulinkシミュレーション結果の真理及び推定四元数を示す図である。
【図13A】図13Aは本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラ、MOI推定量、及び太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量を使用した太陽捕捉操作の高忠実性非線形シミュレーション結果の、非制御の場合に揺れが起きることを示す図である。
【図13B】図13Bは本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラ、MOI推定量、及び太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量を使用した太陽捕捉操作の高忠実性非線形シミュレーション結果の、回転軸が一定のベクトルにらせん運動する、つまり角速度ベクトルが目標モーメンタムに近づく様子を示す図である。
【図13C】図13Cは本開示の少なくとも1つの実施形態による、回転コントローラ、MOI推定量、及び太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量を使用した太陽捕捉操作の高忠実性非線形シミュレーション結果の、宇宙船本体の真理角速度及び推定角速度(ラジアン/秒)及び太陽電池パドル電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語

=座標フレームbにおいて分解されたベクトル

=座標フレームAから座標フレームBまでの方向余弦マトリックス

=座標フレームAに対する座標フレームBの角速度ベクトル
ECI又はeci=地球中心慣性座標フレーム
【0010】
回転コントローラ
宇宙船の回転軸方位及び回転速度を制御するためのコントローラが開示のシステムに使用される。このコントローラは、1)コントローラゲインの符号を変えることによって宇宙船に主軸又は最小慣性主軸に沿って回転するように命令する、及び2)回転軸方位を慣性固定方向に一致させて、モーメンタムオフセットベクトルを使用して特定の回転速度で回転するように命令するために使用できる。コントローラは、慣性モーメント(MOI)推定量、及びパドル電流ベースの速度及び四元数推定量とともに、全ての他のセンサを要せず、パドル電流フィードバックのみを使用して太陽捕捉操作を行うために、宇宙船を駆動させるのに使用することができる。一又は複数の実施形態では、図1は宇宙船の太陽電池パドルが太陽電力を受けて宇宙船の電池用のパドル電流を発生させる様子を図示する。また、ある実施形態では、図2はパドル電流測定値フィードバックのみを使用した太陽捕捉を行うためのプロセスフロー図を示す。この図は、回転コントローラを制御するのに使用されているパドル電流及びMOI推定量を示す。
【0011】
回転コントローラは下記の構造を有する:

【0012】
回転コントローラは、ゲインkctrlのマトリックス値が使用される場合、宇宙船に中間慣性主軸を含む3つの主軸のうちのいずれかに沿って回転するように命令するのに使用することができる(付録参照)。
【0013】
宇宙船に応用されたトルク命令は

であり、リアクションホイールモーメンタムはwhlctrlであり、kctrlはスカラーコントローラゲインであり、Iは宇宙船の慣性であり、

は宇宙船本体の固定フレームにおいて分解された、ECI座標フレームから宇宙船本体の固定座標フレームまでの角速度ベクトルであり、offsetは宇宙船の回転軸を所望の方位及び大きさに合わせるよう命令するためのオフセットベクトルである。図3は、回転コントローラが、宇宙船の回転軸を目標の方向及び大きさに変更するのに使用するオフセットベクトルを示す。制御法則の方程式、方程式(1)は、offset=0が成り立つ時、制御トルクが角速度ベクトルωがIωと一致している時のみゼロであること、つまりωは慣性マトリックスIの主軸のうちの一つと一致しなければならず、そうでない限りコントローラがモーメンタム及びトルク生成の命令の発信を停止しないことを示す。
【0014】
定理1 回転コントローラは、

として

である時に、下記の特性を有する。
1.

である時に、最大慣性主軸回転は安定平衡であり、最小慣性主軸回転及び中間慣性主軸回転は不安定平衡である。
2.

である時に、最小慣性主軸回転は安定平衡であり、最大慣性主軸回転及び中間慣性主軸回転は不安定平衡である。
【0015】
証明 慣性I、角速度ω、及び外部トルクτを有する剛体においては、剛体運動の力学はオイラー方程式によって表される:

制御法則、方程式(1)を方程式(2)によって表された剛体力学に適用すると、

が得られる。
【0016】
オフセットがない、つまりhoffset≡0である時、3つの主軸回転は定常解

又は方程式(3)の平衡である。平衡の安定性特性を証明するには、単純のために、I=diag([J、J、J])と仮定する。ここでJ、J、JはI、I、Iの置換である。第1主軸周囲の回転の安定性が調べられる。平衡ω=[ω、0、0]に対するわずかな摂動として、角速度ベクトルは任意に小さい大きさのε、ω、ωに対して[ω+ε、ω、ωとなり、それと同時に

がゼロベクトルから、任意に小さい大きさ



に変わると考える。方程式(3)はここで

となり、
この方程式においては

である。
【0017】
方程式(4)の特性方程式は

であり、この方程式の根は

である。
最大慣性主軸及び最小慣性主軸回転においては、dが常に正であるため、方程式(5)から下記の結論が得られる。
【0018】
ケース1: [ω、0、0]は最大慣性主軸回転である、すなわちJ>J>J又はJ>J>J (I=J、I=J、I=J 又はI=J、I=J、I=J)である。

は、

又は

であり、

を意味する、つまりこれは最大慣性主軸回転が安定平衡であることを意味する。

は、

又は

であり、

を意味する、つまりこれは最大慣性主軸回転が不安定平衡であることを意味する。
ケース2: [ω、0、0]は最小慣性主軸回転である、すなわちJ>J>J 又はJ>J>Jである。

は、

又は

であり、

を意味する、つまりこれは最小慣性主軸回転が不安定平衡であることを意味する。

は、

又は

であり、

を意味する、つまりこれは最小慣性主軸回転が安定平衡であることを意味する。
ケース3:
[ω、0、0]は中間慣性主軸回転である、すなわちJ>J>J 又はJ>J>Jである。

は中間慣性主軸において

であることを意味するため、

又は

のいずれかが

を与え、これは、λが少なくとも1つの正根を有し、したがって中間慣性主軸回転が不安定平衡であることを意味する。Q.E.D.
【0019】
方程式(1)における非ゼロのオフセットモーメンタムoffsetを使用して、宇宙船の回転軸を図3に示す目的のベクトル

によって指し示された方向に向かせることができ、ここでhtotalは、宇宙船の総角運動量ベクトルである。宇宙船の角速度の大きさの最終値はhs/c,cmdによって指定可能である。
【0020】
方程式(1)で表される非線形回転コントローラにより、制御力学が非制御の剛体力学のω×Iω特性を保持することが可能になる。シミュレーション結果では、アクチュエータが飽和しバングバングコントローラのように動作した時でさえも、回転コントローラによって制御された閉ループシステムの反応はスムースであることが示された。一又は複数の実施形態では、図4A及び4Bは回転コントローラの性能を示す。具体的には、図4Aは、非制御の回転コントローラの動作中に起こる揺れを示し、図4Bは回転コントローラが適用された時に回転軸が一定のベクトルに螺旋運動する様子を示す。揺れは全く制御されていない時に起こり、提案のコントローラが適用された時に徐々に消失する。これらの図においては、飛行軌道は四角い箱型アイコンから開始し、アスタリスク(*)で終了する。さらに、これらの図面では、太線はECIにおけるωの単位ベクトルであり、実線はECIにおける宇宙船本体のy軸であり、点線は、収束を示すのに使用される、最後の200秒の実線を示す。
【0021】
ある実施形態では、図5は宇宙船の角速度ベクトルの時間履歴を示す。回転コントローラは500秒において適用される。図からわかるように、最大慣性主軸(X軸)回転は、コントローラの適用後約500秒で達成される。
【0022】
回転コントローラを使用し、そのゲイン値の符号を単純に変更することによって、宇宙船を方向転換させることができる。一又は複数の実施形態では、図6は、回転コントローラによって行われるXからZまで、また次に、ZからXまでの方向転換操作を示す。最初は、正のコントローラゲインの40が使用され、約5000秒で宇宙船の回転が最大慣性主軸(X軸)から最小慣性主軸(Z軸)回転に変化する。次に、負のコントローラゲインの−200及び−100が使用され、10000秒で宇宙船の回転が最小慣性主軸(Z軸)から最大慣性主軸(X軸)回転に変化する。目標の制御トルクは、より大きいゲイン強度が使用された時にさらに大きくなる。この図面において、一番上のグラフは角速度(度/秒)を示し、上から2番目のグラフは最初の2つのモーメンタムホイールのホイール速度(rpm)を示し、上から3番目のグラフは残りの2つのモーメンタムホイールのホイール速度(rpm)を示し、上から4番目のグラフは最初の2つのモーメンタムホイールへのホイールトルク命令を示し、一番下のグラフは残りの2つのモーメンタムホイールへのホイールトルク命令を示す。この図ではまた、薄い線はx成分であり、実線はy成分であり、太線はz成分である。
【0023】
慣性(MOI)推定量
回転コントローラには、宇宙空間で変化しうる宇宙船の慣性の知識が要求される。回転コントローラ、及びパドルベースの速度及び四元数推定量に使用される慣性(MOI)推定量が開示されている。MOI推定量は、角運動量保存則

に基づいて導きだされ、
ここでIは慣性マトリックスであり、ωは角速度ベクトルであり、hwhlはリアクションホイールのモーメンタムであり、eciHはECIフレームで表された宇宙船の総角運動量である。

及び

を定義すると、方程式(6)は

と等しく、

は任意に選んだ数であり、上記方程式において、

である。
【0024】
したがって、線形最小二乗最適化法を使用して、上述したMOI推定量の問題を解くことができる。ここで留意すべきは、

は任意に選んだ数であるが、

のkが解かれると、スケールされていないマトリックスIを回復することができることである。パラメータベクトル

のアップデートに、下記の再帰最小二乗解法が使用される。

ここで

及び

である。
【0025】
MOI推定量には、宇宙船の姿勢の方向余弦マトリックス(DCM)

の情報及び角速度ωの情報が要求される。一又は複数の実施形態では、図7は慣性(MOI)推定量を使用した推定慣性マトリックスの対角及び非対角要素のパーセントエラーを含む表を示す。図7にまとめられているように、真理DCM及び角速度が使用される時に、より高い正確度に到達可能である。さらに、リアクションホイールモーメンタムの変化により測定値が励起されるため、これによってもまたより良い正確度が得られる。記載した結果は、高忠実性非線形モデルシミュレーションを行うことによって得られた。シミュレーション結果の時間履歴は、図8A、8B、8C、及び8Dに図示されている。
【0026】
具体的には、図8Aは真理方向余弦マトリックス(DCM)が使用され、ホイールモーメンタムが変化しない、推定慣性マトリックス要素のパーセントエラーの時間履歴を示し、図8Bは真理DCMが使用され、ホイールモーメンタムが変化する、推定慣性マトリックス要素のパーセントエラーの時間履歴を示し、図8Cは推定DCMが使用され、ホイールモーメンタムが変化しない、推定慣性マトリックス要素のパーセントエラーの時間履歴を示し、図8Dは推定DCMが使用され、ホイールモーメンタムが変化する、推定慣性マトリックス要素のパーセントエラーの時間履歴を示す。各グラフに示されている様々な異なる線は、異なるアップデート期間を表している。図から分かるように、正確度及び収束時間に対するアップデート期間の影響は目立たない。MOI推定量による慣性マトリックス要素の推定値は数百秒内に収束し、パラメータのアップデート期間とは無関係である。
【0027】
変数kを使用しないMOI推定量の代替形態は:

であり、上記方程式においては、

である。
【0028】
太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量
宇宙船本体の角速度及び四元数を推定するための、提案された速度及び四元数推定量は、太陽電池パドル電流測定値のみを使用し、他の全てのセンサを必要としない。この太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定器は、下記の方程式から成る:

上記方程式において、

は角速度ベクトル推定値であり、

は宇宙船の推定慣性マトリックスであり、hwhlはリアクションホイールモーメンタムであり、

はホイールトルク及び外部トルク(数量は全て宇宙船本体の固定座標フレームで表示されている)情報間の差であり、kθ、kξ及びkは正のスカラー推定量定数であり、θ及びξはエラー訂正項であり、SZはz軸が太陽を指している任意の慣性固定座標フレームであり、

はSZフレームに対する宇宙船の固定本体フレームの変換四元数の推定値である。太陽電池パドル電流は、太陽電池パドル電流がc=Imaxcosφであると仮定すると、c=2Imax(q+q)として表すことができ、上記式においてφは宇宙船本体の固定y軸と太陽光線との間の角度である。方程式(7)では、

が推定パドル電流であり、cが測定パドル電流であり、

として、

となる。
【0029】
ここで留意すべきは、本明細書で使用される四元数は下記形式q=[cos(ρ/2);sin(ρ/2)u]を仮定するものであり、ここでρは回転角度であり、uは回転軸に沿った単位ベクトルである。
【0030】
推定量の導出
一又は複数の実施形態において、図9は候補座標フレームの非一意性を示す。この図においては、y軸が錐体上にある全ての宇宙船の姿勢は、太陽光線角度に対して同じy軸を有する。したがって、y軸が太陽光線と一致した時に最大電流が得られると仮定すると、発生する全ての太陽電池パドル電流の大きさは同じになる。
【0031】
図9に示すように、太陽電池パドル電流の大きさが宇宙船本体の固定y軸と太陽光線との間の角度の余弦値に比例すると仮定されるため、同じ測定パドル電流を発生させる宇宙船の姿勢は一意的ではない。一意解を得るために、選択されたコスト関数は方程式(8)に示すようにパドル電流エラー項

に加えて角運動量エラー項を含む。

【0032】
宇宙船の姿勢及び角速度は特定の角運動量から一意的に決定することはまだできないが、方程式(7)によって明記された速度と四元数の関係により、訂正項がゼロである時に一意解の存在を引き出すことができるはずである。
【0033】
時間に対する方程式(8)のLの微分により、

が得られ、上記方程式において

である。
【0034】
したがって、方程式(7)に示すように、コスト関数Lを最小化するθ及びξの最適選択は、幾つかの

及び

に対してθ=−kθG及びξ=−kξWである。上記選択により下記の結果が得られる。

が成り立つ時に、

が得られる。
【0035】
上記式では推定量の安定性は示されていない。しかしながら、dL/dtのテイラー級数を調べることにより、方程式(7)が局所的に安定していることを示すことができる。

上記方程式において、q*及びω*は真理四元数及び角速度ベクトルである。これは下記のように表すことができる。

上記においては、

が成り立ち、rは1×3行ベクトルであり、

であり、



のi番目の行である。
【0036】
したがって、マトリックス

は正定値である。このため、

及び

が真理値q*及びω*に十分近い時、

が成り立ち、これはパドル電流ベースの速度及び四元数推定量の局所的安定を意味する。留意すべきは、本明細書における安定が、速度及び四元数推定値がそれらの真理値近辺に留まることを意味することである。
【0037】
開示の太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量の安定性及び収束特性を検証するために、2つのSimulinkシミュレーションを行った。少なくとも1つの実施形態では、図10A及び10Bにおいて、真理初期条件を使用して推定量の安定性が検証される。具体的には、図10Aは角速度ベクトルの3D飛行軌道を示し、ここで速度及び四元数推定値は真理初期条件での真理値と一致し、図10Bは四元数の最後の三要素の3D飛行軌道を示し、ここで速度及び四元数推定値は真理初期条件での真理値と一致する。これらの図面においては、実線は真理値を表し、太線は推定値を表す。これらの図に示すように、推定角速度及び四元数ベクトルはシミュレーション全体の表示において真理値と一致し、発散の兆しは見られなかった。
【0038】
一又は複数の実施形態では、図11A、11B、11C、及び11Dは摂動初期条件を使用した推定量の収束を示す。具体的には、図11Aは、速度及び四元数の推定値が摂動初期条件での真理値に収束する、角速度ベクトルの3D飛行軌道を示し、図11Bは速度及び四元数の推定値が摂動初期条件での真理値に収束する、速度ベクトルの3番目の成分を示し、図11Cは速度及び四元数の推定値が摂動初期条件での真理値に収束する、q(2、3、4)の3D飛行軌道を示し、図11Dは速度及び四元数の推定値が摂動初期条件での真理値に収束する、四元数の4番目の成分を示す。図11A及び11Cに関しては、実線は真理値を表し、太線は推定値を表す。また、これらの図においては、アスタリスク(*)は線の開始点を示し、四角い箱型アイコンは線の終了点を表す。図11B及び11Dに関しては、実線は真理値を表し、点線は推定値を表す。これらの図においては、推定角速度及び四元数ベクトルがこれらの真理値へ収束している様子が示されている。
【0039】
シミュレーション結果
この項では、センサを全く使用せず、パドル電流フィードバックと太陽単位ベクトルの天体歴知識のみを使用し、どのようにして方程式(7)によって表された提案の太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量(R&Q推定量)を使用して、宇宙船を駆動し衛星の太陽電池パネルを最大受電姿勢に配置することができるかを実例説明する。
【0040】
太陽捕捉操作計画については、1つはSimulinkを使用し、もう1つは高忠実性非線形モデルを使用した2つのシミュレーションが行われる。R&Q推定量によって生成された速度及び四元数推定値は、操作のために方程式(1)の回転コントローラにおいて使用される。太陽単位ベクトルの天体歴知識と所望の太陽光線回転速度を使用して、図9に示すようにオフセット角運動量が計算される。オフセットモーメンタムの導関数はリアクションホイールに対するトルク命令として使用される。導関数の離散近似は実施において使用される。
【0041】
Simulinkシミュレーション
太陽捕捉操作はキーホール姿勢、すなわち太陽電池パドルから太陽が見えない衛星位置から200秒において開始する。初期の角速度及び四元数推定値は、操作の開始時には全くエラーが含まれないと前提する。MOI推定量から生成された慣性マトリックス推定値が回転コントローラ及びR&Q推定量において使用される。
【0042】
シミュレーションの結果が図12A、12B、12C、及び12Dに表示されている。具体的には、図12Aは、回転コントローラ、MOI推定量、及びパドル電流速度及び四元数推定量を使用したキーホール太陽捕捉操作のSimulinkシミュレーション結果の角速度接近モーメンタムを示し;図12Bは回転コントローラ、MOI推定量、及びパドル電流速度及び四元数推定量を使用したキーホール太陽捕捉操作のSimulinkシミュレーション結果の真理及び推定パドル電流を示し;図12Cは回転コントローラ、MOI推定量、及びパドル電流速度及び四元数推定量を使用したキーホール太陽捕捉操作のSimulinkシミュレーション結果の真理及び推定角速度を示し;図12Dは回転コントローラ、MOI推定量、及びパドル電流速度及び四元数推定量を使用したキーホール太陽捕捉操作のSimulinkシミュレーション結果の真理及び推定四元数を示す。
【0043】
図12Aに関しては、飛行軌道は四角い箱型アイコンから始まり、アスタリスク(*)で終わる。また図12Aに関しては、点線はECIにおける宇宙船のモーメンタムを表し、太線はECIにおける単位ベクトルωを表し、実線はECIにおける宇宙船本体のy軸を表し、破線は実線の最後の200秒を示している。図12B、12C,及び12Dに関しては、破線は真理値を示し、実線は推定値を示す。図12Bのパドル電流の描画から分かるように、太陽電池パドル電流は最初ゼロであり、操作が開始された時に電流の発生が開始する。パドル電流は約600秒で定常状態に到達する。図12C及び12Dの描画はまた、推定角速度及び四元数が真理値に近い数値となっていることも示す。
【0044】
高忠実性非線形シミュレーション
このシミュレーション状況においては、ジャイロが500秒で故障し、太陽捕捉操作がジャイロの故障直後に開始すると仮定する。故障時の角速度及び四元数の推定値はR&Q推定量を初期化するのに使用され、SZフレーム(z軸が太陽を指している慣性固定座標フレーム)の総角運動量を計算するのに使用される。計算されたモーメンタムは推定量方程式(7)の補正項θに使用される。使用される慣性マトリックスの推定値は、先のシミュレーション操作で得られた対角要素において3%の誤差、そして非対角要素において10%の誤差を有する。
【0045】
シミュレーション結果は図13A、13B、及び13Cに表示されている。具体的には、図13Aは回転コントローラ、MOI推定量、及び太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量を使用した太陽捕捉操作の高忠実性非線形シミュレーション結果の、非制御の場合に揺れが起きることを示す。図13Aにおいては、飛行軌道は四角い箱型アイコンから始まり、アスタリスク(*)で終わる。また図13Aにおいては、薄線はECIにおける角速度の単位ベクトルを表し、実線はECIにおける宇宙船本体のy軸を表し、太線は収束を示すために実線の最後の200秒を表している。
【0046】
また、図13Bは回転コントローラ、MOI推定量、及び太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量を使用した太陽捕捉操作の高忠実性非線形シミュレーション結果の、回転軸が一定のベクトルにらせん運動する、つまり角速度ベクトルが目標モーメンタムに近づく様子を示す。図13Bにおいては、薄線は目標のモーメンタムに近づいている螺旋状の角速度ベクトルを表す。この図の描画はまた、シミュレーション全体において推定角速度が真理値に近い数値であり、回転軸が螺旋運動して太陽を指している目標のモーメンタムベクトルによって規定される所望の速度ベクトルに到達することも示している。
【0047】
加えて図13Cは、回転コントローラ、MOI推定量、及び太陽電池パドル電流ベースの速度及び四元数推定量を使用した太陽捕捉操作の高忠実性非線形シミュレーション結果の、宇宙船本体の真理角速度及び推定角速度(ラジアン/秒)及び太陽電池パドル電流を示す図である。この図においては、実線は真理値を表し、破線は宇宙船本体の角速度(ラジアン/秒)及び太陽電池パドル電流を表している。太陽電池パドル電流の描画から分かるように、太陽捕捉操作を達成するには約2500秒かかり、これはパドル電流が正弦定常状態に到達することによって示される。シミュレーションにおいては実際的なホイールトルク能力が利用されるため、捕捉時間は、Simulinkの結果よりもっと長い。宇宙船本体の固定z軸は慣性マトリックスの最小慣性主軸(最小慣性主軸は定常状態の回転軸であり、本体の固定y軸は最大電流を発生させるために、正確に太陽を指している必要がある)とぴったりとは一致しないため、定常状態の太陽電池パドル電流のピーク値は、最大可能値ではない。
【0048】
結論
本開示は、太陽電池パドル電流フィードバックのみを使用した衛星節約的太陽捕捉操作のシステム及び方法を教示する。本方法の予備調査は非常に期待できる結果を示している。開示された回転コントローラは、方位と回転軸を変える宇宙船操作に非常に有用であり得る。回転コントローラは単純な構造を持ち、十分な正確度を有する宇宙船の慣性マトリックス及び角速度推定値が入手可能である限り、安定性に問題はない。提案の太陽電池パドルベースの速度及び四元数推定量は慣性マトリックスの正確度の影響を受けるため、提案の慣性モーメント推定量が必要となる。方程式(8)に記載されたコスト関数のエラー訂正項の大きさを含む及び/又は太陽センサの使用により、性能を向上させ、引力領域を拡大し、太陽天体暦の必要をなくすことができる。
【0049】
例えば、最大慣性主軸及び最小慣性主軸周囲での2つの線形制御の使用又は最小慣性主軸周囲での単一の非線形制御の使用等の中間慣性主軸回転の安定化については従来の方法が幾つか存在する。開示の回転コントローラにより、付録に示すように、3つの主軸のうちのいずれかを安定させるための統一された対処方法が得られる。安定化の目的に加えて、開示のコントローラを使用して、回転軸を全ての初期角速度ベクトルから3つの主軸のうちのいずれかに変更することができる。中間慣性主軸回転の安定化は、宇宙船の総角運動量ベクトルが太陽光線と一致する又は太陽光線に対する角度が小さい時に、太陽捕捉操作において有用になりうる。この状況では、宇宙船を直接中間慣性主軸回転させることによって、オフセット角運動量を使わずに、一方の太陽電池パドルパネルを太陽に向けることが可能になる。でなければ、最大又は最小慣性主軸回転において、太陽光線に対して垂直なモーメンタムベクトルを動かすのに大きなオフセットモーメンタムが必要となり;必要なオフセットモーメンタムはリアクションホイールの能力を越えてしまう可能性がある。
【0050】
付録
下に記されるようにマトリックスゲイン値を使用すれば、開示された回転コントローラを使用して、中間慣性主軸回転を含む3つの主軸のうちのいずれか周囲における回転を安定化することができる。
【0051】
定理2

は制御されるべき剛体の慣性マトリックスの3つの固有値であり、ωは平衡状態での回転速度であると仮定する。3つの主軸の臨界ゲイン値をそれぞれ


及び

とすると、CがI=Cdiag([I、I、I])Cを満たし、マトリックスゲイン値Kctrl=Cdiag([k、k、k])Cが成り立つ回転コントローラ

は、主要及び副ゲイン値の積の大きさが中間慣性主軸の臨界値の二乗よりも小さい時、すなわち

の時に、下記の特性を有する。

が成り立つ時、最大慣性主軸回転が唯一の安定平衡である。

が成り立つ時、最小慣性主軸回転が唯一の安定平衡である。

が成り立つ時、中間慣性主軸回転は安定平衡であり、最大慣性主軸回転及び最小慣性主軸回転は不安定平衡であり、ここでωは中間慣性主軸回転速度である。

が成り立つ時、中間慣性主軸回転が唯一の安定平衡であり、ここでωは中間慣性主軸回転速度である。
【0052】
証明
定理1で得られた証明に従い、平衡ω=[ω、0、0]に対するわずかな摂動として角速度ベクトルは任意に小さい大きさのε、ω、ωに対して[ω+ε、ω、ωとなり、それと同時に

がゼロベクトルから、任意に小さい大きさ


及び



に変わると仮定すると、動力学方程式は

となり、
この方程式においては

であり、J、J、JはI、I、Iの置換であり、g、g、gは同様に置換されたk、k、kのゲイン値である。
方程式(A.1)の積(PM/d)の特性方程式は

であり、この方程式の根は

である。
方程式(A.2)から下記の結論が得られる。
ケース1:[ω、0、0]は最大慣性主軸回転である、すなわちJ>J>J又はJ>J>J (I=J、I=J、I=J 又はI=J、I=J、I=J)である。

ここで

又は

が成り立つ、つまりこれは最大慣性主軸回転が安定平衡であることを意味する。

ここで

又は

が成り立つ、つまりこれは最大慣性主軸回転が不安定平衡であることを意味する。
ケース2:[ω、0、0]は最小慣性主軸回転である、すなわちJ>J>J 又はJ>J>J(I=J、I=J、I=J 又はI=J、I=J、I=J)である。

ここで

又は

が成り立つ、つまりこれは最小慣性主軸回転が不安定平衡であることを意味する。

ここで

又は

が成り立つ、つまりこれは最小慣性主軸回転が安定平衡であることを意味する。

これはλが少なくとも1つの正の根を有することを意味し、したがって、最大慣性主軸回転は不安定平衡であることを意味する。
ケース3:[ω、0、0]は中間慣性主軸回転

である、つまりこれはλが少なくとも1つの正の根を有することを意味し、したがって、最大慣性主軸回転は不安定平衡である。

のいずれかが

を意味する、つまりこれはλが少なくとも1つの正の根を有することを意味し、したがって中間慣性主軸回転は不安定平衡である。



を意味し、ここで

又は

が成り立つ、つまりこれは中間慣性主軸回転が不安定平衡であることを意味する。



を意味し、ここで

又は

が成り立つ、つまりこれは中間慣性主軸回転が安定平衡であることを意味する。
ケース4:[ω、0、0]は中間慣性主軸回転であり、ここでJ>J>J (I=J、I=J、I=J)及び

が成り立つ。ここでも

は中間慣性主軸について

であることを意味し、このため下記のように結論づけることができる:

のいずれかが

を意味する、つまりこれはλが少なくとも1つの正の根を有することを意味し、したがって、中間慣性主軸回転は不安定平衡である。



を意味し、ここで

又は

が成り立つので、これは中間慣性主軸回転が安定平衡であることを意味する。



を意味し、ここで

又は

が成り立つので、これは中間慣性主軸回転が不安定平衡であることを意味する。 Q.E.D.
【0053】
本発明の実施形態は下に記載されるように主張することもできる。
A9.宇宙船本体の角速度及び宇宙船の姿勢を推定する方法であって、本方法は:太陽電池アレイ電流と宇宙船のモーメンタムの組み合わせを使用し、太陽電池パドル電流フィードバックを唯一の閉ループフィードバックセンサとして使用することを含む。
A10.角速度ベクトル推定値、宇宙船の慣性マトリックス、及びリアクションホイールモーメンタムを用いる、請求項A9の方法。
【0054】
装置及び方法を、現在最も実際的で好適な実施形態と考えられる実施形態の観点から説明してきたが、当然ながら、本開示は開示された実施形態に限定される必要はない。請求項の精神及び範囲内に含まれる様々な修正物及び同様の配置構成を含むように意図されており、請求項の範囲は、上記全ての修正物及び同様の構造物を網羅するように広義解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙船操作を制御する方法であって:
太陽電池パドル電流フィードバックを、姿勢制御のための唯一の閉ループフィードバックセンサとして使用し;
回転コントローラで、宇宙船の回転軸方位と回転速度を制御する
ことを含む方法。
【請求項2】
回転コントローラが、宇宙船の回転軸方位を慣性固定方向と一致させ、モーメンタムベクトルを利用して所定の回転速度で回転するように命令する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
回転コントローラが、宇宙船に3つの主軸のうちのいずれかに沿って回転するように命令する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
回転コントローラが、コントローラゲインの符号を変えることによって宇宙船に宇宙船の最大慣性主軸に沿って回転するように命令する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
回転コントローラが、コントローラゲインの符号を変えることによって宇宙船に宇宙船の最小慣性主軸に沿って回転するように命令する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
回転コントローラが、オフセットベクトルを使用して、宇宙船の回転軸を目標の方向及び大きさに変更する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
閉ループシステムに対する回転コントローラの応答が、アクチュエータが飽和している時でさえも円滑に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
回転コントローラのゲイン値の符号を変えることによって、回転コントローラが宇宙船を方向転換させることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
宇宙船操作を制御するシステムであって:
少なくとも1つの太陽電池パネル、リアクションホイール、及びスラスタを有する宇宙船を備え、
当該宇宙船が、姿勢制御のための唯一の閉ループフィードバックセンサとして太陽電池パドル電流フィードバック;及び
宇宙船の回転軸方位及び回転速度を制御するための回転コントローラを使用するシステム。
【請求項10】
回転コントローラが、宇宙船の回転軸方位を慣性固定方向と一致させ、モーメンタムベクトルを利用して所定の回転速度で回転するように命令する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
回転コントローラが、宇宙船に3つの主軸のうちのいずれかに沿って回転するように命令する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
回転コントローラが、コントローラゲインの符号を変えることによって宇宙船に宇宙船の最大慣性主軸に沿って回転するように命令する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
回転コントローラが、コントローラゲインの符号を変えることによって宇宙船に宇宙船の最小慣性主軸に沿って回転するように命令する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
回転コントローラが、オフセットベクトルを使用して、宇宙船の回転軸を目標の方向及び大きさに変更する、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
閉ループシステムに対する回転コントローラの応答が、アクチュエータが飽和している時でさえも円滑に行われる、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
回転コントローラのゲイン値の符号を変えることによって、回転コントローラが宇宙船を方向転換させることができる、請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【公開番号】特開2011−42358(P2011−42358A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−171387(P2010−171387)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】