説明

パネル体及び庇

【課題】 ネジ等を使用せず、嵌合させるだけでパネル同士を精度良く確実に連結でき、しかもパネル間からの水漏れを防止できるパネル体の提供。
【解決手段】隣接して配置される一方及び他方のパネル1,2を備え、一方のパネル1は、他方のパネル2側の側部に嵌合部4を有し、嵌合部4は、底板部4aと、底板部の先端部より立ち上がる立ち上がり部4bと、立ち上がり部の先端部より内側に斜め下向きにのびる当接片4cを有し、他方のパネル2は、一方のパネル1側の側部に嵌合部6を有し、嵌合部は、天板部6aと、天板部の先端部より垂下する垂下部6bと、垂下部の先端部より内側に斜め上向きにのびる当接片6cとを有し、一方のパネルの嵌合部4に対して他方のパネルの嵌合部6を上方より嵌合させる際に当接片4c,6c同士が押し合って弾性変形し、パネル同士が面一になると当接片4c,6cが復帰して当接片の先端部4d,6d同士が面接触し、且つ立ち上がり部4bの先端部が天板部6aに、垂下部6bの先端部が底板部4aにそれぞれ当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネルを嵌合連結して構成されるパネル体と、そのパネル体を用いる庇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物の庇として、アルミニウム合金の中空押出形材よりなるパネルを幅方向に複数連結して構成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。この庇は、図7に示すように、パネル90の側面上部に嵌合片91a,91bを、側面下部に重合片92a,92bをそれぞれ側方に突出して設けてあり、隣接するパネル90の嵌合片91a,91bを互いに嵌合させると共に、重合片92a,92bを重ね合わせてネジ93で固定することにより、隣接するパネル同士を連結している。嵌合片同士の嵌合部には、パネル間からの雨漏りを防止するため、シールパッキン94を設置してシールしている。
上記の庇は、パネルの重合片同士をビスで固定したり、嵌合部にシールパッキンを設置したりする必要があるため、施工に多くの手間と時間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−31696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、ネジ等を使用せず、嵌合させるだけでパネル同士を精度良く確実に連結でき、しかもパネル間からの水漏れを防止できるパネル体及び庇の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明によるパネル体は、隣接して配置される一方及び他方のパネルを備え、一方のパネルは、他方のパネル側の側部に嵌合部を有し、嵌合部は、底板部と、底板部の先端部より立ち上がる立ち上がり部と、立ち上がり部の先端部より内側に斜め下向きにのびる当接片を有し、他方のパネルは、一方のパネル側の側部に嵌合部を有し、嵌合部は、天板部と、天板部の先端部より垂下する垂下部と、垂下部の先端部より内側に斜め上向きにのびる当接片を有し、一方のパネルの嵌合部に対して他方のパネルの嵌合部を上方より嵌合させる際に当接片同士が押し合って弾性変形し、パネル同士が面一になると当接片が復帰して当接片の先端部同士が面接触し、且つ立ち上がり部の先端部が天板部に、垂下部の先端部が底板部にそれぞれ当接することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明によるパネル体は、請求項1記載の発明の構成に加え、一方のパネルの側板と嵌合部の底板部と立ち上がり部とで囲まれる空間を、パネル間に浸入した水を排水するための樋として機能させることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明によるパネル体は、請求項1又は2記載の発明の構成に加え、一方及び他方のパネルは、それぞれ押出成形により一体成形したものであり、且つ一方のパネルの嵌合部と他方のパネルの嵌合部を同一形状としたことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明による庇は、請求項1〜3の何れかに記載のパネル体を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によるパネル体は、一方及び他方のパネルの嵌合部同士を嵌合させる際に当接片同士が押し合って弾性変形し、パネル同士が面一になると当接片が復帰して当接片の先端部同士が面接触し、且つ立ち上がり部の先端部が天板部に、垂下部の先端部が底板部にそれぞれ当接するため、ビス等で固定することなく、隣接するパネル同士を精度良く確実に嵌合連結できる。また、一方のパネルの嵌合部が、底板部の先端部より立ち上がる立ち上がり部を有していることで、パネル間に浸入した水はその嵌合部内に溜まるため、パネル間からの水漏れを防止できる。
【0010】
請求項2記載の発明によるパネル体は、一方のパネルの側板と嵌合部の底板部と立ち上がり部とで囲まれる空間を、パネル間に浸入した水を排水するための樋として機能させることで、パネル間に浸入した水の排水性が良好になる。
【0011】
請求項3記載の発明によるパネル体は、一方及び他方のパネルをそれぞれ押出成形により一体成形することで、嵌合部を一体に有するパネルを精度良く安価に製作でき、しかも一方のパネルの嵌合部と他方のパネルの嵌合部を同一形状としたことで、両嵌合部の当接片が一様に変形・復帰し、嵌合の精度及び安定性を高められる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明のパネル体を利用することで、パネル同士を嵌合させるだけで精度良く確実に連結でき、尚且つパネル間からの雨漏りを防止できるため、施工性を向上することができ、建物の庇として特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】パネル同士を嵌合するときの様子を順に示す正面図である。
【図2】図4の庇のA−A線縦断面図である。
【図3】図4の庇のB−B線縦断面図である。
【図4】庇の斜視図である。
【図5】庇の組立て方法を示す斜視図である。
【図6】隣接するパネルを分離した状態で示す正面図である。
【図7】従来の庇のパネルの連結構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2〜4は、本発明のパネル体を建物の庇に応用する場合の実施形態を示している。この庇は、図2に示すように、建物の外壁10に固定される支持部11と、支持部11により外壁10から前方に張り出すように片持ち支持されるパネル体12と、パネル体12の前端部に取付けた樋部材13とを備えている。パネル体12は、図3,4に示すように、アルミニウム合金の中空押出形材よりなる右端パネル1、複数の中間パネル2,2,…、左端パネル3を、各パネルの側部に設けた嵌合部4,6で嵌合連結して構成されている。パネル体12は、図2に示すように、前方に向かうにつれて僅かに下方に傾斜するように設置してある。
【0015】
右端パネル1は、図6に示すように、天板14と底板15と左右の側板16a,16bとで矩形の中空部が形成され、左側の側部に上向き嵌合部4が形成してある。天板14は、左側の側板16aよりも僅かに左側に突出している。上向き嵌合部4は、底板15と連続する底板部4aと、底板部4aの先端部より垂直に立ち上がる立ち上がり部4bと、立ち上がり部4bの先端部より内側に斜め下向きにのびる当接片4cとを有している。当接片4cは、先端部をさらに内側に曲げて当接部4dが形成してある。立ち上がり部4bの上端部には、上向き突起17aと、横向き突起17bが形成してある。図6中にハッチングをした、左側の側板16aと底板部4aと立ち上がり部4bとで囲まれる空間5は、パネル間に浸入した雨水が溜まる樋空間となっている。
【0016】
中間パネル2は、図3と図6に示すように、天板14と底板15と左右の側板16a,16bとで矩形の中空部が形成され、中空部内に複数の補強リブ18が設けてある。天板14は左側の側板16aよりも僅かに左側に突出しており、底板15は右側の側板16bよりも僅かに右側に突出している。中間パネル2の右側の側部には下向き嵌合部6が形成してあり、左側の側部には上向き嵌合部4が形成してある。
下向き嵌合部6は、先に説明した上向き嵌合部4を、正面から見て180°回転した形状となっており、天板14と連続する天板部6aと、天板部6aの先端部より垂直に垂下する垂下部6bと、垂下部6bの先端部より内側に斜め上向きにのびる当接片6cとを有している。当接片6cは、先端部をさらに内側に曲げて当接部6dが形成してある。垂下部6bの下端部には、下向き突起19aと、横向き突起19bが形成してある。上向き嵌合部4は、右端パネル1の上向き嵌合部4と同一形状となっている。
図6に示すように、左側の側板16aと当接片4cとの間の隙間S1は、下向き嵌合部6の横向き突起19bの先端から当接片6cまでの幅W1よりも小さくなっており、右側の側板16bと当接片6cとの間の隙間S2は、上向き嵌合部4の横向き突起17bから当接片4cまでの幅W2よりも小さくなっている。
【0017】
左端パネル3は、図3に示すように、右端パネル1を正面から見て180°回転したような形状であり、天板14と底板15と左右の側板16a,16bとで矩形の中空部が形成され、右側の側部に下向き嵌合部6が形成してある。底板15は、右側の側板16bよりも僅かに右側に突出している。下向き嵌合部6は、先に説明した中間パネル2の下向き嵌合部6と同一形状となっている。
【0018】
図1は、パネル同士を嵌合連結するときの様子を示している。図1(a)に示すように、上向き嵌合部4の上方に下向き嵌合部6を対向して配置し、下向き嵌合部6に上方から力を加えて両嵌合部4,6を嵌合させる。図1(b)に示すように、嵌合の途中では当接片4c,6c同士が押し合って弾性変形する。さらに深く嵌合させると、図1(c)に示すように、左右のパネル1,2が面一になるのと同時に、当接片4c,6cが復帰してその先端部に設けた当接部4d,6d同士が面接触する状態になる。このとき、上向き突起17aが天板部6aに、下向き突起19aが底板部4aにそれぞれ当接する。さらに、上向き嵌合部4の底板部4aの先端は左側のパネル2の底板15の突出した側端面に密着し、下向き嵌合部6の天板部6aの先端は右側のパネル1の天板14の突出した側端面に密着している。立ち上がり部4bと側板16bとの間、垂下部6bと側板16aとの間には、それぞれ隙間aが形成されている。図1は、右端パネル1と中間パネル2とを嵌合させる場合を示しているが、中間パネル2同士、中間パネル2と左端パネル3を嵌合させる場合もこれと同様である。なお、嵌合させる際には、図5に示すように、左右のパネル2,2の上面間に板20を当て、木槌21等で上から叩くことで簡単に嵌合できる。
【0019】
このように、当接片4c,6cが弾性変形・復帰するのに伴って上向き嵌合部4と下向き嵌合部6が嵌合するようにしたので、嵌合させるだけで隣接するパネル同士を精度良く確実に連結することができ、従来のようにネジ等で固定する手間を省くことができる。また、上向き嵌合部4により樋空間5を構成しているため、パネル間に浸入した雨水が樋空間5に溜まり、パネル間の隙間をシールしなくてもパネル間からの雨漏りを防止できる。さらに、嵌合部4,6に天板部6aと底板部4aをそれぞれ有し、各パネル1,2,3の天板14と底板15が天板部6aと底板部4aを介して隙間なく面一状に配置されるため、パネル間にゴミ等が溜まったり、連結部で折れ曲がったりするのを防止できる。
【0020】
支持部11は、図2に示すように、パネル体12の下面を受ける受け金具22と、パネル体12の上面を押さえる押さえ金具23とを有し、両金具22,23間にパネル体12を挟み込んでボルト24とナット25で固定している。受け金具22は、庇の横幅と略同一の長さを有し、押さえ金具23は、図5に示すように、隣接する3枚のパネルに跨る一定の長さに切断したものを間隔をおいて設置しており、ボルト24は3枚のパネルの真ん中のパネル2に挿通している。受け金具22と押さえ金具23は、カバー材26a,26bを取付けて被ってある。
【0021】
パネル体12の前端面には、図2に示すように、横幅全長に渡って樋取付レール27がビス28で取付けられ、樋部材13は樋取付レール27に前方から係止し、上方からビス29で固定して取付けてある。樋部材13は、パネル体12の上面を流下する雨水を受ける樋本体13aと、樋本体13aの後方に一体に形成され、パネル間に形成される樋空間5からの雨水を受ける補助樋部13bとを有している。樋部材13の両端部は、蓋体30を取付けて塞いである。
【0022】
次に、この庇の施工手順を説明する。まず、建物の外壁10に受け金具22と押さえ金具23をアンカーボルト31a,31bで取付ける。押さえ金具23は、最初は仮止めの状態にしておき、パネルを挟んだ後に本固定する。次に、右端から3枚のパネル(右端パネル1、中間パネル2,2)を予め嵌合させ、嵌合させたパネル1,2,2を押さえ金具23と受け金具22間に差し込み、後端を受け金具22の前面に突き当て、ボルト24とナット25で固定する。その後、図5に示すように、中間パネル2を一枚ずつ順番に嵌合させて取付ける。嵌合させる際には、これから取付けるパネル2を既に取付けられたパネル2に対して前方にずらした状態で嵌合させ、その後、嵌合させたパネル2を前方から木槌で叩き、右側のパネル2と前端が揃う位置までスライドさせる。このとき、図1(c)に示すように、上向き嵌合部4の立ち上がり部4bと側壁16bとの間、下向き嵌合部6の垂下部6bと側板16aとの間に隙間aが形成されているため、嵌合状態で容易にスライドできる。全てのパネル1,2,3を取付けたら、パネル体12前端面に樋取付レール27を取付け、樋部材13を取付ける。その後、支持部11にカバー材26a,26bを取り付け、上カバー材26aと外壁10との隙間、カバー材26a,26bとパネル体12上下面との隙間、樋部材13の後端とパネル体12下面との隙間にコーキング材32を充填する。
【0023】
本庇は以上に述べたように、嵌合部4,6を嵌合させるだけで隣接するパネル同士を精度良く確実に連結でき、パネル同士をネジ等で固定する必要がなく、また上向き嵌合部4の内側がパネル間に浸入した雨水を受ける樋空間5として機能するため、パネル間からの雨漏りを防止できる。これにより、従来のように隣接するパネル同士をビス等で固定したり、パネル間をシールしたりする必要がなくなり、庇の施工を短時間で簡単に行えるようになる。庇の横幅は、中間パネル2の数を変えることで適宜調整でき、庇の張り出し長さは各パネル1,2,3の長さを変えることで調整できる。
【0024】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。パネル体の用途としては、庇に限らず、壁や天井、床等に用いることもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 右端パネル(一方のパネル)
2 中間パネル(他方のパネル)
3 左端パネル
4 上向き嵌合部
4a 底板部
4b 立ち上がり部
4c 当接片
4d 当接部(当接片の先端部)
5 樋空間
6 下向き嵌合部
6a 天板部
6b 垂下部
6c 当接片
6d 当接部(当接片の先端部)
12 パネル体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して配置される一方及び他方のパネルを備え、一方のパネルは、他方のパネル側の側部に嵌合部を有し、嵌合部は、底板部と、底板部の先端部より立ち上がる立ち上がり部と、立ち上がり部の先端部より内側に斜め下向きにのびる当接片を有し、他方のパネルは、一方のパネル側の側部に嵌合部を有し、嵌合部は、天板部と、天板部の先端部より垂下する垂下部と、垂下部の先端部より内側に斜め上向きにのびる当接片を有し、一方のパネルの嵌合部に対して他方のパネルの嵌合部を上方より嵌合させる際に当接片同士が押し合って弾性変形し、パネル同士が面一になると当接片が復帰して当接片の先端部同士が面接触し、且つ立ち上がり部の先端部が天板部に、垂下部の先端部が底板部にそれぞれ当接することを特徴とするパネル体。
【請求項2】
一方のパネルの側板と嵌合部の底板部と立ち上がり部とで囲まれる空間を、パネル間に浸入した水を排水するための樋として機能させることを特徴とする請求項1記載のパネル体。
【請求項3】
一方及び他方のパネルは、それぞれ押出成形により一体成形したものであり、且つ一方のパネルの嵌合部と他方のパネルの嵌合部を同一形状としたことを特徴とする請求項1又は2記載のパネル体。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のパネル体を用いたことを特徴とする庇。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−185217(P2010−185217A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29774(P2009−29774)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(307021715)三協マテリアル株式会社 (17)
【出願人】(591181562)株式会社共和 (23)
【Fターム(参考)】