説明

パネル取り付け金具、及び電波吸収壁、並びに電波吸収パネルの取り付け方法、及び電波吸収壁の施工方法

【課題】本発明は、パネル取り付け金具、及び電波吸収壁、並びに電波吸収パネルの取り付け方法、及び電波吸収壁の施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のパネル取り付け金具28は、電波吸収パネル10の隅部を支持する一対のU字状溝44、46からなる連設部38、電波吸収パネル10の平面方向の位置を拘束する閉塞部材40、及び電波吸収パネル10の脱落を防止するカバープレート42から構成されている。よって、ガラス製の電波吸収パネル10をH鋼支柱26に容易に取り付けることができる。連設部38に連設された一対のU字状溝44、46は、面が垂直方向に並置された3枚の側板と、該側板の2枚の間にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板と、で構成されているため、不要電波の反射面の面積が大幅に削減されている。よって、従来のH鋼支柱に電波吸収パネルを落とし込む施工方法と比較して、不要電波の吸収率を大幅に上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に不要電波を吸収するための電波吸収パネルを躯体に取り付けるためのパネル取り付け金具、及びこのパネル取り付け金具によって取り付けられた複数枚の電波吸収パネルからなる電波吸収壁、並びに電波吸収パネルを、パネル取り付け金具を用いて躯体に取り付ける電波吸収パネルの取り付け方法、及びパネル取り付け金具を用いた電波吸収壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノンストップ料金所やフリーフローETCは、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の一つであるDSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域通信)を利用した、ETC(Electronic Toll Collection)の発達によって、広く普及している。
【0003】
このノンストップ料金所やフリーフローETCで利用されるアンテナ設備周囲には、道路構造物における電波多重反射に起因するシステム誤動作を防止するために、電波吸収パネルが躯体(構造体)に設置されていることが多い。すなわち、DSRCは、5.8GHzの電波を使用しているが、この電波の乱反射に起因する不要電波による機器の誤動作低減を目的に、システムの周囲には、不要電波を吸収する多数枚の電波吸収パネルからなる電波吸収体(壁、天井、キャノピー)が設置されている。電波吸収パネルは、ノンストップ料金所のキャノピー下部で最も多く使われている。この部分には、例えばカーボンを添加した発泡ポリエチレン、有機繊維質の電波吸収体が用いられている。
また、複数のETCレーンがある場合、その隔壁に電波吸収パネルが設けられることがあり、その場合には、安全性の確保のために視認性が求められることから、透明の樹脂性電波吸収パネルが特許文献1の如く知られている。
【0004】
特許文献1には、ポリカーボネート製の電波吸収パネルが例示されており、躯体への施工については、電波吸収パネルにボルト孔をあけ、ボルトで躯体に固定したり、金属やFRPなどの枠材によりパネル化し、これをH鋼支柱やケースに落とし込んだりする施工方法が行われている。また、ボルト孔があけられた電波吸収パネルを、躯体にボルトで固定する例が特許文献2にも開示されている。
【0005】
このように樹脂製の電波吸収パネルをボルトで躯体に固定する場合、ボルト孔からの水分の浸入による抵抗膜の劣化、ポリカーボネートと抵抗膜との層間剥離の問題が懸念されるため、ボルト孔にシール材を設置することが特許文献3の如く開示されている。
【特許文献1】“ETC用透明電波吸収パネルの開発” 三菱電線工業時報 第101号 P51
【特許文献2】特開2002−146964号公報、
【特許文献3】特開2003−289220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発泡系、有機繊維質系の電波吸収体はその耐久性維持などの目的で、ケースに入れられ、ケースに取付け機構を設けられることが多いが、ケースの利用はコストアップに繋がるという欠点があった。なお、ケースに電波吸収パネルを落とし込む施工方法、及びH鋼支柱に電波吸収パネルを落とし込む施工方法は、例えば最下段に施工された電波吸収パネルが破損した場合、全ての電波吸収パネルをケースやH鋼支柱の上部から取り出さなくてはならないため、破損した電波吸収パネルの交換作業に手間がかかるという問題があった。
【0007】
また、樹脂製の電波吸収パネルにおけるボルト固定タイプの場合は、ボルト孔からの水浸入による抵抗膜の劣化等の問題があるため、ボルト孔にシール材を設置する必要があり、これもまた施工に手間がかかるという欠点があった。更に、ボルトの緩みも懸念され、この場合には電波吸収パネルが躯体から脱落するというおそれもあった。
【0008】
一方でガラス製の電波吸収パネルが提案されている。ガラス製の電波吸収パネルは、繊維系、発泡系の吸収体と異なり、剛性が高く、耐久性にも富むため、電波吸収パネルをケースに入れたり、前面に保護材を付けたりしなくても利用可能である。また、同様に剛性が高いポリカーボネート製吸収体と比較しもて、耐久性、耐擦傷性などに関して優れた性能を有する。
【0009】
しかしながら、ガラス製の電波吸収パネルに関しては、孔加工することが難しく、孔加工する場合には設置後にその部分に力がかかり、孔周りで高いガラス強度が必要となり強化ガラスを使用せざるを得ずコストアップに繋がるため、特許文献2に開示されたボルトによる施工方法を採択することが難しい。また、上述の如く、H鋼支柱にガラス製の電波吸収パネルを落とし込む施工方法も考えられるが、この施工方法では、電波吸収パネルがガラス製か樹脂製かによらず破損した電波吸収パネルの交換作業に手間がかかるとともに、電波吸収壁の電波到来面側にH鋼支柱の金属面が電波吸収壁の高さ方向に連続して露出するため、電波反射面が大面積となり、不要電波の吸収性能を損なうことなく施工ができないという問題もあった。
【0010】
このように特にガラス製の電波吸収パネルの場合には、電波吸収パネルを躯体へ容易に取り付けるための施工方法、及び不要電波の吸収性能を従来のH鋼支柱に落し込む施工法と比較して上げる施工方法が見出されていなかった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ガラス製の電波吸収パネルを躯体に容易に取り付けることができるとともに、従来のH鋼支柱に電波吸収パネルを落とし込む施工方法と比較して、不要電波の吸収率を上げることができるパネル取り付け金具、及び電波吸収壁、並びに電波吸収パネルの取り付け方法、及び電波吸収壁の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のパネル取り付け金具は、前記目的を達成するために、ガラス製の電波吸収パネルの複数枚を略水平方向に隣接させて立設し躯体に取り付けるためのパネル取り付け金具であって、略水平方向に隣接する前記電波吸収パネルの隣接部において異なる電波吸収パネルの下隅部同士または上隅部同士を支持する2つのU字状溝を、面が垂直方向に並置された3枚の側板と該側板の2枚の間にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板とで構成した、連設部と、前記連設部の一方のU字状溝の長さ方向に開放されている2つの側面のうち片方を塞ぐ閉塞部材と、前記連設部の他方のU字状溝の長さ方向に開放されている2つの側面のうち前記閉塞部材がある側面側の反対側の側面に着脱可能に設けられ、前記電波吸収パネルを前記連設部に支持させた後に取り付けられるカバープレートと、を具備したことを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、躯体に固定されているパネル取り付け金具に、ガラス製の電波吸収パネルの隅部のみを支持させて電波吸収パネルを施工する。このパネル取り付け金具は、2つのU字状溝が連設されている連設部を有しており、このU字状溝に電波吸収パネルの隅部を支持させて電波吸収パネルを躯体に取り付ける。
【0014】
このように本発明のパネル取り付け金具によれば、電波吸収パネルの隅部を支持する一対のU字状溝からなる連設部、電波吸収パネルの略面内方向の位置を拘束する閉塞部材、及び電波吸収パネルの脱落を防止するカバープレートから構成されているので、ガラス製の電波吸収パネルを躯体に容易に取り付けることができる。また、連設部に連設された一対のU字状溝は、略水平方向に隣接する前記電波吸収パネルの隣接部において異なる電波吸収パネルの下隅部同士または上隅部同士を支持する2つのU字状溝を、面が垂直方向に並置された3枚の側板と該側板の2枚の間にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板とで構成していることから、電波吸収壁の電波到来面側には、一対のU字状溝を形成する面のうち一つのU字状溝を形成する面のみ露出される。そして、その露出面は、電波吸収パネルの隅部のみ露出されているため、H鋼支柱による電波吸収パネルの支持形態と比較して、不要電波の反射面の面積が大幅に削減されている。よって、本発明のパネル取り付け金具によれば、従来のH鋼支柱に電波吸収パネルを落とし込む施工方法と比較して、不要電波の吸収率を大幅に上げることができる。
【0015】
また、本発明のパネル取り付け金具は、前記連設部のU字状溝が該U字状溝の底部に対して対称で対になっていることが好ましい。これにより、一つのパネル取り付け金具によって、上下左右に隣接する電波吸収パネルの最大で四つの隅部を支持することができるので、電波吸収壁を施工する際に使用するパネル取り付け金具の使用個数を大幅に削減することができる。
【0016】
更に、本発明のパネル取り付け金具は、ガラス製の電波吸収パネルの複数枚を略水平方向と略垂直方向に隣接させて立設し躯体に取り付けるためのパネル取り付け金具であって、略水平方向と略垂直方向に隣接する4枚の前記電波吸収パネルの隣接部において異なる電波吸収パネルの2つの下隅部と2つの上隅部をそれぞれ支持する上方向に開口した2つおよび下方向開口した2つの計4つのU字状溝を、面が垂直方向に並置された3枚の側板と該側板の2枚の間であってかつ端部ではない位置にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板とで構成した、連設部と、前記連設部の上下に対となっている2つのU字状溝の長さ方向に開放されている2つの側面のうち片方を塞ぐ閉塞部材と、前記連設部の他方の対の2つのU字状溝の長さ方向に開放されている2つの側面のうち前記閉塞部材がある側面側の反対側の側面に着脱可能に設けられ、前記電波吸収パネルを前記連設部に支持させた後に取り付けられるカバープレートと、を具備することが好ましい。
【0017】
本発明のパネル取り付け金具によれば、4枚の電波吸収パネルの隅部を支持する4つのU字状溝からなる連設部、電波吸収パネルの略面内方向の位置を拘束する閉塞部材、及び電波吸収パネルの脱落を防止するカバープレートから構成されているので、ガラス製の電波吸収パネルを躯体に容易に取り付けることができる。また、連設部に連設されたU字状溝は、略水平方向と略垂直方向に隣接する前記電波吸収パネルの隣接部において異なる電波吸収パネルの2つの下隅部と2つの上隅部をそれぞれ支持する計4つのU字状溝を、面が垂直方向に並置された3枚の側板と該側板の2枚の間であってかつ端部ではない位置にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板とで構成していることから、電波吸収壁の電波到来面側には、4つのU字状溝を形成する面のうち2つのU字状溝を形成する面のみ露出される。そして、その露出面は、電波吸収パネルの隅部のみ露出されているため、H鋼支柱による電波吸収パネルの支持形態と比較して、不要電波の反射面の面積が大幅に削減されている。よって、本発明のパネル取り付け金具によれば、従来のH鋼支柱に電波吸収パネルを落とし込む施工方法と比較して、不要電波の吸収率を大幅に上げることができる。さらに、一つのパネル取り付け金具によって、上下左右に隣接する電波吸収パネルの最大で四つの隅部を支持することができるので、電波吸収壁を施工する際に使用するパネル取り付け金具の使用個数を大幅に削減することができる。
【0018】
更に、本発明のパネル取り付け金具は、該パネル取り付け金具の面であって、電波が到来する側の面の縦辺と横辺の長さが、それぞれ30mm以上で、到来電波の2波長以下であることが好ましい。その面の一辺の長さが到来電波の2波長以下であると、その面による不要電波の反射を小さく抑えることができる。また、パネル取り付け金具に電波吸収パネルを支持させる飲み込み深さから、一辺が30mm以上の長さが必要となる。
【0019】
また、本発明のパネル取り付け金具には、前記カバープレートを上下方向に挿入するための溝が形成されていることが好ましい。これにより、上下方向に連設された複数の電波吸収パネルの全長に渡って、カバープレートを上部から下部に向けて前記溝に順次挿入していくことにより、上下方向に連設された複数のパネル取り付け金具に1枚のカバープレート、又は分割された複数枚のカバープレートが装着される。このように、カバープレートを上下方向に挿入するための溝をパネル取り付け金具に形成することによって、上下方向に連設された複数のパネル取り付け金具に対するカバープレートの装着作業が容易になる。
【0020】
本発明の電波吸収壁は、本発明のパネル取り付け金具によって略矩形状に構成されて躯体に取り付けられる複数枚の前記電波吸収パネルからなる電波吸収壁であって、前記パネル取り付け金具は、前記電波吸収パネルの隅部を支持する位置で、かつ前記閉塞部材が同じ方向で、前記躯体に固定され、複数枚の前記電波吸収パネルの各パネルの左右辺の一方の辺の隅部は、該隅部を支持する位置の前記パネル取り付け金具の連設部のうち閉塞部材があるU字状溝に支持され、前記左右辺の他方の辺の隅部は、該他方の辺の隅部を支持する位置の別の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記カバープレートがあるU字状溝に支持され、前記カバープレートは、上下方向に連設された前記電波吸収パネルの全長に渡って、該カバープレートを取り付ける方の連設部のU字状溝の開放されている一方の側面に連続して取り付けられることを特徴としている。
【0021】
本発明の電波吸収壁によれば、本発明のパネル取り付け金具を使用して電波吸収パネルを取り付けることにより構築されるため、電波吸収壁の施工が容易になり、また、従来のH鋼支柱に電波吸収パネルを落とし込む施工方法と比較して、不要電波の吸収率を大幅に上げることができる。
【0022】
本発明の電波吸収壁において、前記電波吸収パネルは、前記躯体で形成される面に対する該電波吸収パネルの傾斜角が、電波到来方向に向かって1〜10°となるように固定されることが好ましい。これにより、電波吸収パネルを取り付け金物に取り付けやすいため電波吸収壁の施工性、取り付け金具の大きさ、電波吸収パネルの収まりなどの問題の発生が少ない。また、この構成は、到来電波を連設部のカバープレートの方に直接到達させず、反射させないようにすることが出来る。
【0023】
本発明の電波吸収壁において、上下方向に隣接する前記電波吸収パネルは、互いに10mm以上で到来電波の1波長以下の間隔を有して前記パネル取り付け金具に固定されることが好ましい。上下に隣接する電波吸収パネルの間隔が10mm未満であると、電波吸収パネルの施工が困難になり、また、到来電波の1波長を超えると電波が透過し易くなるからである。
【0024】
本発明の電波吸収壁において、前記パネル取り付け金具には、前記電波吸収パネルに連結された該電波吸収パネル落下防止用ワイヤが取り付けられていることが好ましい。このように電波吸収パネルを、落下防止ワイヤを介してパネル取り付け金具に連結することにより、電波吸収パネルがパネル取り付け金具から万が一脱落した際における、電波吸収パネルの電波吸収壁からの脱落を防止することができる。脱落防止ワイヤの本数、連結位置、及び長さは適宜であるが、パネル取り付け金具から脱落した電波吸収パネルが、路面に落下しないように設定することがより好ましい。
【0025】
本発明の電波吸収壁において、前記カバープレートは、その長さ方向に分割されていることが好ましい。このようにカバープレートを長さ方向に分割することにより、例えば、最上部の電波吸収パネルを交換する際に、上部に位置するカバープレートのみをパネル取り付け金具から取り外せばよいので、分割されていない1本のカバープレートの場合と比較して、電波吸収パネルの交換作業が容易になる。
【0026】
本発明の電波吸収パネルの取り付け方法によれば、本発明のパネル取り付け金具を用い、前記電波吸収パネルの左右辺の一方の辺の隅部を、該隅部を支持する位置の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記カバープレートを取り付ける方のU字状溝に貫通挿入し、前記左右辺の他方の辺の隅部を、該他方の辺の隅部を支持する位置の別の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記閉塞部材のある方のU字状溝に向けて傾動して、該閉塞部材のある方のU字状溝に挿入し、前記カバープレートを、該カバープレートを取り付ける方の連設部のU字状溝の開放されている一方の側面に取り付け、前記電波吸収パネルの隅部を前記パネル取り付け金具に固定することを特徴としている。
【0027】
すなわち、本発明の電波吸収パネルの取り付け方法によれば、電波吸収パネルの左右辺の一方の辺の隅部を、カバープレートを取り付ける方のU字状溝に貫通挿入し、この後、電波吸収パネルの左右辺の他方の辺の隅部を、閉塞部材のある方のU字状溝に挿入して、電波吸収パネルをパネル取り付け金具に支持させる。この後、カバープレートを連設部のU字状溝の開放されている一方の側面に取り付け、電波吸収パネルの隅部をパネル取り付け金具に固定する。この固定方法は、ボルトではなく、セッティングブロック、及びガスケット、湿式シール材等の水密性部材を用いて行うことが好ましい。また、既設の電波吸収パネルを交換する場合には、カバープレートをパネル取り付け金具から取り外し、先に説明した取り付け手順とは逆の手順で電波吸収パネルを動かすことにより、交換する電波吸収パネルをパネル取り付け金具から容易に取り外すことができる。
【0028】
本発明の電波吸収壁の施工方法によれば、本発明のパネル取り付け金具を用い、前記パネル取り付け金具を、前記電波吸収パネルの隅部を支持する位置で、かつ前記閉塞部材が同じ方向で、前記躯体に固定し、前記電波吸収パネルの左右辺の一方の辺の隅部を、該隅部を支持する位置の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記カバープレートを取り付ける方のU字状溝に貫通挿入し、前記左右辺の他方の辺の隅部を、該他方の辺の隅部を支持する位置の別の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記閉塞部のある方のU字状溝に向けて傾動して、該閉塞部のある方のU字状溝に挿入し、前記カバープレートを、上下方向に連設された前記電波吸収パネルの全長に渡って、該カバープレートを取り付ける方の連設部のU字状溝の開放されている一方の側面に連続して取り付け、前記電波吸収パネルからなる前記電波吸収壁を構成することを特徴としている。
【0029】
本発明の電波吸収壁の施工方法によれば、まず、パネル取り付け金具を、電波吸収パネルの隅部を支持する位置で、かつ閉塞部材が同じ方向となるように躯体に固定する。この後、電波吸収パネルの取り付け方法に則ってパネル取り付け金具で電波吸収パネルを支持していき、カバープレートを取り付け、電波吸収壁を構築する。
【0030】
本発明の電波吸収壁の施工方法によれば、前記カバープレートは、その長さ方向に分割されており、前記分割されたカバープレートのうち最下部の連設部に取り付ける該カバープレートから順に挿入することが好ましい。これにより、例えば、最上部の電波吸収パネルを交換する際に、上部に位置するカバープレートのみをパネル取り付け金具から取り外せばよい。したがって、分割されていない1本のカバープレートの場合と比較して、電波吸収パネルの交換作業が容易になる。
【0031】
本発明の電波吸収壁の施工方法によれば、前記パネル取り付け金具は、長尺の金具取り付け部材に固定され、該金具取り付け部材を介して前記躯体に固定されることが好ましい。パネル取り付け金具の躯体への取り付け形態として、パネル取り付け金具を溶接等で躯体に直接固着してもよいが、金具取り付け部材にパネル取り付け金具を予め固定しておき、これを電波吸収壁の施工の際に、躯体に固定するようにしてもよい。パネル取り付け金具を1個ずつ躯体に現場で固定する施工方法よりも、パネル取り付け金具の製造工場で金具取り付け部材に固定しておくことにより、現場では金具取り付け部材のみを躯体に固定するだけでよいので、現場での施工作業性が向上する。
【発明の効果】
【0032】
以上の如く本発明によれば、ガラス製の電波吸収パネルを躯体に容易に取り付けることができるとともに、従来のH鋼支柱に電波吸収パネルを落とし込む施工方法と比較して、不要電波の吸収率を上げることができるパネル取り付け金具を提供することができ、また、このパネル取り付け金具を使用した施工の容易な電波吸収壁、並びにこのパネル取り付け金具を使用した施工の容易な電波吸収パネルの取り付け方法、及びこのパネル取り付け金具を使用した施工の容易な電波吸収壁の施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明に係るパネル取り付け金具、及び電波吸収壁、並びに電波吸収パネルの取り付け方法、及び電波吸収壁の施工方法の一例としてETCを例に取り、好ましい実施の形態を説明する。
【0034】
図1は、実施の形態のガラス製の電波吸収パネル10の断面図である。また、
図2は、ETC施設の一例としてフリーフローETCの概略を示したもので、路側アンテナ12周辺の側壁面に、複数枚の電波吸収パネル10、10…からなる電波吸収壁14が設置されている。なお、この電波吸収パネル10が設置されるETC施設は路側アンテナ12に限定されず、料金所アイランドの透明の隔壁等のETC施設に設置することもできる。
【0035】
電波吸収パネル10は、図1の如くPVB又はEVA製の樹脂シートである中間膜16を2枚の非強化ガラス板18、20によって挟み込むことにより構成された合わせガラスである。ここでガラス板18は電波入射側のガラス板あり、ガラス板18の中間膜16との接触面には所定の抵抗値を有する導電膜22が形成され、ガラス板20の中間膜16との接触面には所定の抵抗値を有する導電膜24が形成されている。
【0036】
導電膜22のシート抵抗値は、導電膜24のシート抵抗値よりも大きく設定され、吸収対象とする電波が導電膜22を透過し、導電膜24で反射され、反射された電波によって相殺されるように構成されている。
【0037】
これらの導電膜22、24は透視性を有し、Sn、InおよびZnからなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物を主成分とする膜であり、例えばFドープSnO2(ここで単に酸化錫ともいう)、アンチモンドープSnO2 、SnドープIn23 (ITO)、アルミドープZnO、ガリウムドープZnOなどを挙げることができる。実施の形態では、透明の酸化錫(SnO)であり、CVD法によりガラス面にコーティングされている。
【0038】
電波吸収パネル10の製造方法は、酸化錫の導電膜22、24がCVD法によりコーティングされた2枚のガラス板18、20によって中間膜16を挟み込み、これをオートクレーブにて所定の温度に加熱するとともに所定の圧力でプレスすることにより製造される。この製法は、合わせガラスの製法と基本的に同一である。
【0039】
樹脂シートである中間膜16は、建築用の合わせガラスに使われるPVB、EVA膜等が利用される。ガラス小口が露出する場合は、水の影響が少ないEVA膜の利用が適している。
【0040】
図3は、電波到来方向から見た電波吸収壁14の正面図であり、図4は図3の電波吸収壁14をA−A線から見た電波吸収壁14の平面図、図5は図4に示した平面図の要部拡大断面図である。なお、図3は、縦3列横6列の電波吸収パネル10、10…からなる電波吸収壁14を例示しているが、電波吸収壁14のサイズはこの形態に限定されるものではない。
【0041】
図4、図5に示すように電波吸収パネル10、10…は、実施の形態のパネル取り付け金具28、28…にその隅部が支持されて、躯体を構成する4本のH鋼支柱26、26…に取り付けられている。これらのパネル取り付け金具28、28…は溶接、又はボルト等によりH鋼支柱26、26…に直接固定されている。なお、後述するように取り付け金具は、取り付け金具を取り付ける他の部材を介して、躯体に固定してもよい。
【0042】
図5、図6に示したパネル取り付け金具28は、電波吸収壁14において壁の内側に固定される10個のパネル取り付け金具である。また、電波吸収壁14において、その4隅部に固定されるパネル取り付け金具は、図7に示すパネル取り付け金具30である。更に、電波吸収壁14において、上隅部を除く上辺側に固定されるパネル取り付け金具は、図8に示すパネル取り付け金具32である。更にまた、電波吸収壁14において、下隅部を除く下辺側に固定されるパネル取り付け金具は、図9に示すパネル取り付け金具34である。また、電波吸収壁14の4隅部を除く左右の辺部に固定されるパネル取り付け金具は、図10に示すパネル取り付け金具36である。
【0043】
ここでは、本発明の特徴が具現化されている図5、図6のパネル取り付け金具28の構成について説明する。なお、図7〜図10に示したパネル取り付け金具30、32、34、36の構成は後述するが、文中においてパネル取り付け金具28と同一、又は類似の機能を有する部分については同一の符号を付して説明する。
【0044】
パネル取り付け金具28は、図6に示すように連設部38、閉塞部材40、及びカバープレート42(図5参照)から構成される。
【0045】
連設部38は、上方向に開口した2つのU字状溝44、46および下方向開口した2つのU字状溝44、46の計4つのU字状溝を、面が垂直方向に並置された3枚の側板50、50A、54と、それらの側板の2枚の間(50と50Aとの間、および50Aと54との間)にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板48、52と、で構成している。
【0046】
上方向に開口したU字状溝44は、U字状溝の底部である支持板48と、U字の立ち上がり部の一方である側板50と、U字の立ち上がり部の他方である側板50Aからなり、U字状溝の長さ方向(電波吸収パネルの略面内方向)に開放されている2つの側面のうち、一方は閉塞部材40で閉塞され、他方はそのまま開放されている。同様に、上方向に開口したU字状溝44に連設される上方向に開口したU字状溝46は、U字の底部である支持板52と、U字の立ち上がり部の一方である側板54と、U字の立ち上がり部の他方である側板50Aからなり、U字状溝の長さ方向(電波吸収パネルの略面内方向)に開放されている2つの側面のうち、一方はカバープレート42(図6には図示していない)がU字状溝44の閉塞部材40がある側と反対側の側面の方に着脱され、他方のU字状溝44の開放されている側と反対側の側面の方はそのまま開放されている。
【0047】
下方向に開口したU字状溝44と46は、上方向に開口したU字状溝44と46と同様の構成である。ただし、電波吸収パネルの2枚を略水平方向に隣接させる場合には、支持板48、52を側板50、50A、54の端部のうちどちらかの端部に水平に位置させてもよい(図8と図9参照)。なお、図8においては、この支持板を、2枚の支持板が一体となって端部に位置する支持板47で表している。また、図9においては、支持板48、52としているが、図8と同様に2枚の支持板を一体として端部に位置させてもよい。
【0048】
他方で、電波吸収パネルの4枚を略水平方向および略垂直方向に隣接させる場合には、支持体48、52を図6のように、側板50、50A、54の端部ではない位置にそれぞれ水平に位置させる。この場合、上方向に開口したU字状溝44、46と下方向に開口したU字状溝44、46は、そのU字状溝の底部に対して対称、すなわち上下で対に形成されることが好ましい。なお、実施の形態のパネル取り付け金具28は、U字状溝44、46を上下対称で一体に形成したが、上下別々に分離された構造であってもよい。しかしながら、U字状溝44、46を上下対称で対に形成すると、一つのパネル取り付け金具28によって、上下左右に隣接する電波吸収パネル10、10の最大で4つの隅部を支持することができるので、電波吸収壁14を施工する際に使用するパネル取り付け金具28の使用個数を大幅に削減することができるという利点がある。
【0049】
側板50Aと側板54との対向面には、カバープレート42を上下方向から挿入するためのガイド溝56、56が形成されている。すなわち、カバープレート42は、連設部38のU字状溝44、46のうち、閉塞部材40のないU字状溝46の開放した側面に着脱自在に取り付けられる。このカバープレート42は、電波吸収パネル10を連設部38のU字状溝44、46に支持させた後に取り付けられる。
【0050】
次に、H鋼支柱26、26に固定されたパネル取り付け金具28、28に対する電波吸収パネル10の取り付け方法について、図11を参照して説明する。なお、パネル取り付け金具28〜36は、電波吸収パネル10の隅部を支持する位置で、かつ閉塞部材40が上下方向で同じ方向(重なる方向)となるようにH鋼支柱26に予め固定されている。
【0051】
まず、図11(A)で示すように、電波吸収パネル10の右辺の隅部10Aを、この隅部10Aを支持する右側のパネル取り付け金具28の連設部のうちカバープレート42が取り付けられるU字状溝46に貫通挿入する。
【0052】
次に、電波吸収パネル10の左辺の隅部10Bを、この隅部10Bを支持する左側のパネル取り付け金具28の連設部のうち閉塞部材40のあるU字状溝44に向けて傾動し、この隅部10Bを図11(B)で示すように、閉塞部材40のあるU字状溝44に挿入する。これにより、電波吸収パネル10の両隅部10A、10Bが左右のパネル取り付け金具28、28に支持される。
【0053】
次いで、図11(C)の如く、カバープレート42を、右側のパネル取り付け金具28のU字状溝46の開放した側面に取り付け、パネル取り付け金具28、28から電波吸収パネル10の脱落を防止する。以上の作業により、電波吸収パネル10がパネル取り付け金具28、28によって支持されてH鋼支柱26、26に取り付けられる。
【0054】
このように複数枚の電波吸収パネル10、10…を上記作業手順で取り付けていくことにより、電波吸収パネルを1枚ずつボルト固定する施工方法と比較して、電波吸収壁14を容易に施工することができる。なお、このような電波吸収パネル10の取り付けは、電波吸収パネル10の4隅部に配置されている4個のパネル取り付け金具28、28…に対して行われている。
【0055】
一方、既設の電波吸収パネル10を交換する場合には、カバープレート42をパネル取り付け金具28から取り外し、図11で説明した取り付け手順とは逆の手順で電波吸収パネル10を動かすことにより、交換する電波吸収パネル10をパネル取り付け金具28、28から容易に取り外すことができる。
【0056】
ところで、カバープレート42は図12に示すように、H鋼支柱26の最上部に固定されているパネル取り付け金具32に形成されたガイド溝56、56から下方向に全長に渡って挿入される。これにより、カバープレート42は、パネル取り付け金具32の下方に位置するパネル取り付け金具28、28…のガイド溝56、56に沿って順次挿入されていき、各パネル取り付け金具28、28…のU字状溝46の開放した側面を閉塞する。そして、カバープレート42は、H鋼支柱26の最下段に固定されている、図9のパネル取り付け金具34のU字状溝46に形成されているガイド溝56、56に挿入され、カバープレート42の下端がU字状溝46の支持板52に当接する。これにより、カバープレート42の挿入作業が終了する。
【0057】
なお、カバープレート42がパネル取り付け金具28、32、34から容易に脱落しないようにカバープレート42を、ボルトを使用してパネル取り付け金具28、32、34のうち少なくとも一つのパネル取り付け金具28、32、34に固定してもよい。また、カバープレート42の所定の位置に、図12の如く開口部42Aを形成し、この開口部42Aに着脱用治具を挿入してカバープレート42をパネル取り付け金具に対して脱着することが好ましい。カバープレート42を着脱させる手段は、開口部42Aに限定されるものではなく、例えば、カバープレート42の所定の位置に把手を取り付けてもよい。
【0058】
以上述べたように、実施の形態のパネル取り付け金具28によれば、電波吸収パネル10の隅部を支持する一対のU字状溝44、46からなる連設部38、電波吸収パネル10の面内方向の位置を拘束する閉塞部材40、及び電波吸収パネル10の脱落を防止するカバープレート42から構成されているので、ガラス製の電波吸収パネル10をH鋼支柱26に容易に取り付けることができる。
【0059】
また、連設部38に連設された一対のU字状溝44、46は、U字状溝を、面が垂直方向に並置された3枚の側板50、50A、54と該側板の2枚の間(50と50Aとの間、および50Aと54との間)にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板48、52とで構成していることから、電波吸収壁14の電波到来面側には、U字状溝46を形成する側板54の面のみ露出される。そして、その側板の面は、電波吸収パネル10の隅部に対応する位置でのみ露出されているため、H鋼支柱のみで支持する電波吸収パネルの支持形態と比較して、不要電波の反射面の面積が大幅に削減されている。よって、実施の形態のパネル取り付け金具28によれば、従来のH鋼支柱に電波吸収パネルを落とし込む施工方法と比較して、不要電波の吸収率を大幅に上げることができる。
【0060】
更に、パネル取り付け金具28には、カバープレート42を上下方向に挿入するための溝56、56が形成されているので、上下方向に連設された複数の電波吸収パネル10、10…の全長に渡って、カバープレート42を上部から下部に向けて装着することができる。このように、カバープレート42を上下方向に挿入するための溝56、56をパネル取り付け金具28に形成することにより、上下方向に連設された複数のパネル取り付け金具28、28…に対するカバープレート42の装着作業が容易になる。
【0061】
また、パネル取り付け金具28の側板54の面は、図6に示すように縦辺の長さaと横辺の長さbが、それぞれ30mm以上で、到来電波の2波長以下であることが好ましい。パネル取り付け金具28の側板54のその面は、電波到来面側に露出する面である。その側板54の面の一辺の長さa、bが到来電波の2波長以下であると、側板54の面による不要電波の反射を小さく抑えることができる。また、パネル取り付け金具28に電波吸収パネル10を支持させる飲み込み深さから、一辺が30mm以上の長さが必要となる。ここで、到来電波が5.8GHzの電波であれば、一辺の長さは約103.5mm以下となる。
【0062】
また、上記実施の形態では、図13(A)の如く、電波吸収壁14の高さに相当する一枚のカバープレート42を使用したが、これに限定されるものではない。例えば、図13(B)の如く、カバープレート42をその長さ方向に複数に分割し、分割されたカバープレート43、43…のうち最下部のパネル取り付け金具34(図9参照)に取り付けるカバープレート43から順に挿入することが好ましい。これにより、例えば、最上部の電波吸収パネル10を交換する際に、最上部に位置するカバープレート43のみをパネル取り付け金具28、32から取り外せばよい。したがって、分割されていない1本のカバープレート42の場合と比較して、電波吸収パネル10の交換作業が短時間で済む。カバープレート42の分割数は、電波吸収パネル10の一枚毎に分割してもよく、2枚毎に分割してもよい。
【0063】
図14は、パネル取り付け金具28、32、34を、長尺の金具取り付け部材58に予め固定し、この金具取り付け部材58をH鋼支柱26に固定した電波吸収壁14の別の施工例を示している。
【0064】
パネル取り付け金具28、32、34のH鋼支柱26への取り付け形態として、パネル取り付け金具28、32、34を溶接、ボルト等でH鋼支柱26に直接固着してもよいが、図14の如く金具取り付け部材58にパネル取り付け金具28、32、34を予め固定しておき、これを電波吸収壁14の施工の際に、H鋼支柱26に固定するようにしてもよい。パネル取り付け金具を1個ずつH鋼支柱26に現場にて固定する施工方法よりも、パネル取り付け金具の製造工場で金具取り付け部材58にパネル取り付け金具を予め固定しておくことにより、現場では金具取り付け部材58のみをH鋼支柱26に固定するだけでよいので、現場での施工作業性が向上する。これは左右の両端に位置するパネル取り付け金具30、36においても同様である。
【0065】
また、実施の形態の電波吸収壁14による電波吸収パネル10、10…は、図4に示すH鋼支柱26、26…で形成される二点鎖線の垂直面26A、すなわち躯体で形成される面に対し、電波吸収パネル10、10…の傾斜角θ1が、電波到来方向に向かって1〜10°となるように固定されていることが好ましい。この傾斜角度θ1が1〜10°であれば、電波吸収パネルを取り付け金物に挿入しやすいため電波吸収壁の施工がしやすく、取り付け金具は大きくなりすぎず、電波吸収パネルの収まりなどの問題の発生も少ない。また、この傾斜角度によって、到来電波を連設部38のカバープレート42の方に直接到達させず、反射させないようにすることが出来る。この傾斜角度θ1は、1〜5°がより好ましく、1〜3°がさらに好ましい。
【0066】
さらに、実施の形態の電波吸収壁14による電波吸収パネル10、10…は、到来する電波の電波吸収パネルに入射する角度θ2が、0〜80°となることが好ましい。ITS−DSRCでは、通信ゾーンを広げると指向軸角度は大きくなり、通信ゾーンに電波が入射する角度は広くなる。これらが道路側方の遮音壁、擁壁、道路上の高架下面、トンネル、側壁や、天井、および標識などの道路構造物に当たり、再反射することにより通信ゾーンを拡散するため、この入射角度が好ましい。この入射角度θ2は、5〜70°がより好ましく、10〜60°がさらに好ましい。
【0067】
図3に示した電波吸収壁14において、上下方向に隣接する電波吸収パネル10、10は、互いに10mm以上で到来電波の1波長以下の間隔sを有してパネル取り付け金具28に固定されることが好ましい。
【0068】
上下に隣接する電波吸収パネル10、10の間隔が10mm未満であると、前述した施工方法から、電波吸収パネル10をパネル取り付け金具28、28に対して挿抜する際に、上下に隣接する電波吸収パネル10、10と干渉するおそれがあるため、電波吸収パネル10の施工が困難になる。また、到来電波の1波長を超えると電波が透過し易くなるからである。ここで、到来電波が5.8GHzの電波であれば、その間隔sは約51.7mm以下となる。
【0069】
また、電波吸収壁14において、図13〜図15に示すように、パネル取り付け金具28には、電波吸収パネル10に連結された電波吸収パネル落下防止用ワイヤ60が取り付けられていることが好ましい。
【0070】
このように電波吸収パネル10を、落下防止ワイヤ60を介してパネル取り付け金具32、28等に連結することにより、電波吸収パネル10がパネル取り付け金具32、28等から万が一脱落した際における、電波吸収パネル10の電波吸収壁14からの脱落を防止することができる。なお、1枚の電波吸収パネル10における脱落防止ワイヤ60の本数、連結位置、及び長さは適宜であるが、パネル取り付け金具28、30等から脱落した電波吸収パネル10が、路面に落下しないように設定することがより好ましい。図15では、リブ62の左右の端部近傍に2本のワイヤ60、60が連結された例が示されている。
【0071】
なお、脱落防止ワイヤ60の一端はパネル取り付け金具側にボルト留め、リング状の取付金具、溶接等により直接固着されている。一方、脱落防止ワイヤ60の他端は、ガラス製の電波吸収パネル10に直接固定することが困難なため、図15に示すように、電波吸収パネル10の上縁部に嵌合されるリブ62にボルト留め、リング状の取付金具、溶接等によって直接固着されている。このリブ62は、電波吸収パネル10の下縁部にも嵌合され、電波吸収パネル10との嵌合爪64、64…は、電波到来面側に最小の面積で露出するように、所定の間隔をもって複数形成されている。
【0072】
図16には、パネル取り付け金具28と電波吸収パネル10との接合部の一例が縦断面図で示されている。
【0073】
同図に示すように電波吸収パネル10の縁部は、リブ62によって保持されているが、このリブ62に対して電波吸収パネル10の縁部は、セッティングブロック66を介して下縁が支持され、その両側がバックアップ材68、68を介して支持され、そのバックアップ材68、68上に水密性を担保するシール材70が打設されている。なお、符号72はリブ62のベースフレームである。
【0074】
そして、リブ62の縁部がパネル取り付け金具28に対して、セッティングブロック74を介して下縁が支持され、その両側がガスケット76と中空ガスケット78とを介して支持されている。
【0075】
なお、図5に示したパネル取り付け金具28と電波吸収パネル10との接合部は、図16に示した接合部の構造と若干異なるが基本的な構成は同一である。
【0076】
次に、パネル取り付け金具30〜36について説明する。
【0077】
図7に示すパネル取り付け金具30は、電波吸収壁14の4隅部に固定されるものであり、1枚の電波吸収パネル10の隅部を保持するU字状溝44のみ形成され、その側面の開放部は閉塞部材40によって閉塞されている。符号45は天板又は底板であり、電波吸収壁10の上隅部に取り付けられた場合には、天板として機能し、下隅部に取り付けられた場合には底板として機能する。
【0078】
図8に示したパネル取り付け金具32は、電波吸収壁14の上隅部を除く上辺側に固定されるものであり、U字状溝44、46が形成されている。符号47は支持板に相当し天板である。
【0079】
図9に示したパネル取り付け金具34は、電波吸収壁14の下隅部を除く下辺側に固定されるものであり、この構成については前述したのでここではその説明を省略する。
【0080】
図10に示したパネル取り付け金具36は、電波吸収壁14の4隅部を除く左右の辺部に固定されるものであり、U字状溝44、44のみが上下で対に構成されている。
【0081】
〔産業上の利用性〕
実施の形態では、非強化ガラス製の電波吸収パネル10を支持するパネル取り付け金具について説明したが、強化ガラス製の電波吸収パネルでも適用できる。しかしながら施工において、電波吸収パネルに孔あけ加工が不要なので、コスト的には非強化ガラスが有利である。また、ガラス製に限定されず、樹脂製の電波吸収パネルにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態に係る電波吸収パネルの断面図
【図2】ETC施設の概略構造図
【図3】電波到来方向から見た電波吸収壁の正面図
【図4】図3に示した電波吸収壁の平面図
【図5】図4に示した電波吸収壁の要部拡大断面図
【図6】実施の形態のパネル取り付け金具の斜視図
【図7】電波吸収壁の隅部に固定されるパネル取り付け金具の斜視図
【図8】電波吸収壁の上縁部に固定されるパネル取り付け金具の斜視図
【図9】電波吸収壁の下縁部に固定されるパネル取り付け金具の斜視図
【図10】電波吸収壁の左右縁部に固定されるパネル取り付け金具の斜視図
【図11】電波吸収パネルの取り付け手順を示した説明図
【図12】パネル取り付け金具にカバープレートが装着された要部斜視図
【図13】一枚と分割されたカバープレートを示した要部斜視図
【図14】金具取り付け部材にパネル取り付け金具が取り付けられた説明図
【図15】電波吸収パネルのリブに脱落防止ワイヤが連結された説明図
【図16】パネル取り付け金具と電波吸収パネルとの接合部の縦断面図
【符号の説明】
【0083】
10…電波吸収パネル、12…路側アンテナ、14…電波吸収壁、16…中間膜、18…ガラス板、20…ガラス板、22…導電膜、24…導電膜、26…H鋼支柱、28、30、32、34、36…パネル取り付け金具、38…連設部、40…閉塞部材、42…カバープレート、44、46…U字状溝、47、48、52…支持板、50、50A、54…側板、56…ガイド溝、58…金具取り付け部材、60…落下防止ワイヤ、62…リブ、64…嵌合爪、66…セッティングブロック、68…バックアップ材、70…シール材、72…ベースフレーム、74…セッティングブロック、76…ガスケット、78…中空ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製の電波吸収パネルの複数枚を略水平方向に隣接させて立設し躯体に取り付けるためのパネル取り付け金具であって、
略水平方向に隣接する前記電波吸収パネルの隣接部において異なる電波吸収パネルの下隅部同士または上隅部同士を支持する2つのU字状溝を、面が垂直方向に並置された3枚の側板と該側板の2枚の間にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板とで構成した、連設部と、
前記連設部の一方のU字状溝の長さ方向に開放されている2つの側面のうち片方を塞ぐ閉塞部材と、
前記連設部の他方のU字状溝の長さ方向に開放されている2つの側面のうち前記閉塞部材がある側面側の反対側の側面に着脱可能に設けられ、前記電波吸収パネルを前記連設部に支持させた後に取り付けられるカバープレートと、
を具備した、パネル取り付け金具。
【請求項2】
前記パネル取り付け金具は、前記連設部のU字状溝が該U字状溝の底部に対して対称で対に構成されている請求項1に記載のパネル取り付け金具。
【請求項3】
ガラス製の電波吸収パネルの複数枚を略水平方向と略垂直方向に隣接させて立設し躯体に取り付けるためのパネル取り付け金具であって、
略水平方向と略垂直方向に隣接する4枚の前記電波吸収パネルの隣接部において異なる電波吸収パネルの2つの下隅部と2つの上隅部をそれぞれ支持する上方向に開口した2つおよび下方向開口した2つの計4つのU字状溝を、それぞれ垂直方向であり並置された3枚の側板と該側板の2枚の間であってかつ端部ではない位置にそれぞれ水平方向に設けられた2枚の支持板とで構成した、連設部と、
前記連設部の上下に対となっている2つのU字状溝の長さ方向に開放されている2つの側面のうち片方を塞ぐ閉塞部材と、
前記連設部の他方の対の2つのU字状溝の長さ方向に開放されている2つの側面のうち前記閉塞部材がある側面側の反対側の側面に着脱可能に設けられ、前記電波吸収パネルを前記連設部に支持させた後に取り付けられるカバープレートと、
を具備した、パネル取り付け金具。
【請求項4】
前記パネル取り付け金具の面であって、電波が到来する側の面の縦辺と横辺の長さが、それぞれ30mm以上で、到来電波の2波長以下である請求項1〜3のいずれかに記載のパネル取り付け金具。
【請求項5】
前記パネル取り付け金具には、前記カバープレートを上下方向に挿入するための溝が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載のパネル取り付け金具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のパネル取り付け金具によって略矩形状に構成されて躯体に取り付けられる複数枚の前記電波吸収パネルからなる電波吸収壁であって、
前記パネル取り付け金具は、前記電波吸収パネルの隅部を支持する位置で、かつ前記閉塞部材が同じ方向で、前記躯体に固定され、
複数枚の前記電波吸収パネルの各パネルの左右辺の一方の辺の隅部は、該隅部を支持する位置の前記パネル取り付け金具の連設部のうち閉塞部材があるU字状溝に支持され、前記左右辺の他方の辺の隅部は、該他方の辺の隅部を支持する位置の別の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記カバープレートがあるU字状溝に支持され、
前記カバープレートは、上下方向に連設された前記電波吸収パネルの全長に渡って、該カバープレートを取り付ける方の連設部のU字状溝の開放されている一方の側面に連続して取り付けられることを特徴とする電波吸収壁。
【請求項7】
前記電波吸収パネルは、前記躯体で形成される面に対する該電波吸収パネルの傾斜角が、電波到来方向に向かって1〜10°となるように固定される請求項6に記載の電波吸収壁。
【請求項8】
上下方向に隣接する前記電波吸収パネルは、互いに10mm以上で到来電波の1波長以下の間隔を有して前記パネル取り付け金具に固定される請求項6又は7に記載の電波吸収壁。
【請求項9】
前記パネル取り付け金具には、前記電波吸収パネルに連結された該電波吸収パネル落下防止用ワイヤが取り付けられている請求項6〜8のいずれかに記載の電波吸収壁。
【請求項10】
前記カバープレートは、その長さ方向に分割されている請求項6〜9のいずれかに記載の電波吸収壁。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載のパネル取り付け金具を用い、
前記電波吸収パネルの左右辺の一方の辺の隅部を、該隅部を支持する位置の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記カバープレートを取り付ける方のU字状溝に貫通挿入し、
前記左右辺の他方の辺の隅部を、該他方の辺の隅部を支持する位置の別の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記閉塞部材のある方のU字状溝に向けて傾動して、該閉塞部材のある方のU字状溝に挿入し、
前記カバープレートを、該カバープレートを取り付ける方の連設部のU字状溝の開放されている一方の側面に取り付け、
前記電波吸収パネルの隅部を前記パネル取り付け金具に固定することを特徴とする電波吸収パネルの取り付け方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載のパネル取り付け金具を用い、
前記パネル取り付け金具を、前記電波吸収パネルの隅部を支持する位置で、かつ前記閉塞部材が同じ方向で、前記躯体に固定し、
前記電波吸収パネルの左右辺の一方の辺の隅部を、該隅部を支持する位置の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記カバープレートを取り付ける方のU字状溝に貫通挿入し、
前記左右辺の他方の辺の隅部を、該他方の辺の隅部を支持する位置の別の前記パネル取り付け金具の連設部のうち前記閉塞部のある方のU字状溝に向けて傾動して、該閉塞部のある方のU字状溝に挿入し、
前記カバープレートを、上下方向に連設された前記電波吸収パネルの全長に渡って、該カバープレートを取り付ける方の連設部のU字状溝の開放されている一方の側面に連続して取り付け、
前記電波吸収パネルからなる前記電波吸収壁を構成することを特徴とする電波吸収壁の施工方法。
【請求項13】
前記カバープレートは、その長さ方向に分割されており、前記分割されたカバープレートのうち最下部の連設部に取り付ける該カバープレートから順に挿入する請求項12に記載の電波吸収壁の施工方法。
【請求項14】
前記パネル取り付け金具は、長尺の金具取り付け部材に固定され、該金具取り付け部材を介して前記躯体に固定される請求項12又は13に記載の電波吸収壁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−18997(P2010−18997A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180186(P2008−180186)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(599093524)旭ビルウォール株式会社 (19)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)
【Fターム(参考)】