説明

パネル穴への取り付け体、および、クランプ具

【課題】掛合位置から非掛合位置に向けた雄パーツの回動操作によってパネル穴との掛合を解除できるように構成された取り付け体において、弾性掛合爪に雄パーツのこの回動を解除可能に阻止する機能を併有させないようにする。
【解決手段】雌パーツ1に、非掛合位置に向けた雄パーツ2の回動を阻止するように、この雄パーツ2に形成されたターンロック部213のこの回動先側に向けたロック面213aに突き当たる受けロック面162を備えた受けターンロック部161が形成されていると共に、このターンロック部213及び受けターンロック部161の双方又はいずれか一方が、非掛合位置に向けた雄パーツ2の回動によって、ロック面213aと受けロック面162との突き当たりを解く向きに弾性変形されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のボディパネルなどのパネルに貫通状態に設けられたパネル穴にはめ込まれて、このパネルに取り付け用いられる取り付け体、および、かかる取り付け体を含んで構成されるクランプ具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
内装材取付孔に入れ込まれて保持片によって内装材に係合されるグロメット部材と、このグロメット部材に回転可能に入れ込まれると共にこのグロメット部材の側部に形成された間隙から外方に突き出されてパネル取付孔に係合される係合爪を備えたホルダー部材とから構成されたサンバイザーホルダーがある。(特許文献1参照)
【0003】
しかるに、かかるサンバイザーホルダーにあっては、パネル取付孔にはホルダー部材の係合爪のみによって係合されるものであり、グロメット部材自体はボディパネルには係合されないものであった。
【0004】
また、かかるサンバイザーホルダーにあっては、ホルダー部材の係合爪が前記間隙から突き出された係合位置からホルダー部材を略90度ひねり回し操作すると、この係合爪の側部がこの間隙の縁に押し当てられて係合爪が内向きに撓み込まされてグロメット部材内に入り込みパネル取付孔とこの係合爪との係合が解かれるようになっているが、係合爪はホルダー部材のひねり回しによってこの係合爪に作用されるホルダー部材の軸線を巡る向きの力では撓み込みにくいため、この係合の解除に相応の力を必要とさせるものであった。(すなわち、解除のためのひねり回し操作におけるトルクが大きくなる。)こうした観点から、かかるサンバイザーホルダーにあっては、前記係合爪に解除用傾斜面を形成させているが、このような傾斜面は係合爪の係合代の減少をもたらすものとなる。
【特許文献1】特開2002−36873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、雌パーツと、この雌パーツ内に回動可能に入れ込まれると共に雌パーツの側部に形成された通し部を通じて外方に突き出してパネル穴に掛合される弾性掛合爪を備えた脚部を有した雄パーツとによって構成され、通し部から弾性掛合爪を突き出させた掛合位置からこの弾性掛合爪を雌パーツ内に引き込ませる非掛合位置に向けた雄パーツの回動操作によってパネル穴と雄パーツとの掛合を解除できるように構成されたこの種のパネル穴への取り付け体において、かかる弾性掛合爪に雄パーツのこの回動を解除可能に阻止する機能を併有させないようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、この発明にあっては、パネル穴への取り付け体を、以下の(1)〜(5)の構成を備えたものとした。
(1)パネル穴にはめ込まれてこのパネル穴に掛合固定される雌パーツと、
(2)頭部とこの雌パーツに入れ込まれる脚部とを有すると共に、この脚部に雌パーツの側部に形成された通し部から外方に突き出してパネル穴に掛合される弾性掛合爪を備えた雄パーツとを備えており、
(3)雌パーツの内部には、雄パーツの脚部を回動軸としたこの雄パーツの回動を案内する案内面が形成されており、雄パーツは弾性掛合爪を通し部から突き出した掛合位置からこの弾性掛合爪を雌パーツ内に引き込ませる非掛合位置に向けた回動可能に雌パーツに組み合わされるようになっており、
(4)しかも、雌パーツに、非掛合位置に向けた雄パーツの回動を阻止するように、この雄パーツに形成されたターンロック部のこの回動先側に向けたロック面に突き当たる受けロック面を備えた受けターンロック部が形成されていると共に、
(5)このターンロック部及び受けターンロック部の双方又はいずれか一方が、非掛合位置に向けた雄パーツの回動操作によって、ロック面と受けロック面との突き当たりを解く向きに弾性変形されるようになっている。
【0007】
かかる構成によれば、パネル穴に掛合固定された雌パーツ内に脚部を入れ込ませた雄パーツの弾性掛合爪を雌パーツの通し部を通じてパネル穴に掛合させることができ、これにより、パネル穴に雄パーツを留め付けることができる。また、このように留め付けられた雄パーツを非掛合位置に向けて雌パーツ内で回動させることにより、弾性掛合爪を雌パーツ内に引き込ませることができ、これにより、雌パーツをパネル穴に残しながら雄パーツとパネル穴との掛合を解いてパネル穴から雄パーツを取り外すことができる。また、かかる雄パーツの非掛合位置に向けた回動は、ターンロック部のロック面と受けターンロック部の受けロック面との突き当たりによって阻止されることから、予期せず雄パーツが回動されてパネル穴と雄パーツとの留め付け状態が解かれてしまうことはない。その一方で、雄パーツの前記非掛合位置に向けた回動は、前記弾性変形によるロック面と受けロック面との突き当たりを解くことによって確保させることができる。雄パーツの弾性掛合爪は前記非掛合位置に向けた回動により雌パーツ内に引き込み可能な状態でこの雌パーツの通し部から外方に突き出されるが、ターンロック部と受けターンロック部はこの弾性掛合爪及び通し部とは別個に形成されており、非掛合位置に向けた雄パーツの回動の阻止を通し部に弾性掛合爪を突き当てさせることにより実現させる訳ではないので、この回動にあたって弾性掛合爪を無理に変形させてしまうことはなく、この回動のための弾性変形を生じ易くすることができると共に、弾性掛合爪の掛合代(掛合面)を減らすようなこの弾性掛合爪の変形を案内する案内面などをこの弾性掛合爪に形成させる必要もない。
【0008】
前記ターンロック部が、雄パーツの脚部における弾性掛合爪の形成位置よりも先に形成されていると共に、
受けターンロック部が、雌パーツにおける案内面の形成位置より奥に形成されているようにしておくこともある。
【0009】
このようにしておけば、ターンロック部及び受けターンロック部を、弾性掛合爪及び通し部とは異なる位置に、合理的にレイアウトさせることができる。
【0010】
前記受けターンロック部を、片一端を雌パーツの内壁に一体に連接させて雄パーツの脚部の回動先側に向けて弧状に延びると共に、片他端に受けロック面を備えた弾性片として構成させておくこともある。
【0011】
このようにした場合、かかる弾性片は雄パーツの回動方向に沿って弧状に延び、また、一定の長さを有することから、掛合位置にある雄パーツを非掛合位置に向けて回動させることに伴って、ロック面と受けロック面との突き当たりを解くように、かかる弾性片は円滑に変形され、雄パーツとパネル穴との掛合をスムースに解くことができる。
【0012】
前記雌パーツが、開放された筒一端に外向きに突き出すフランジを備えた角穴状をなすパネル穴に整合した外郭形状を持った角筒状をなすように構成されていると共に、
この雌パーツにおける四つの側部の内の、背中合わせの向きにある一対の側部にそれぞれ通し部が形成され、
かつ、残りの二つの側部にそれぞれ、フランジに向いた掛合面を備えた弾性掛合片が形成されているようにしておくこともある。
【0013】
このようにした場合、前記パネル穴に取り付け体を雌パーツの筒他端側を先にして入れ込ませることに伴って、弾性掛合片を一旦内向きに撓み込ませた後のこの弾性掛合片がこのパネル穴内に入り込んだ位置での弾発によって、この弾性掛合片とフランジとの間でパネル穴を内外から挟み込んで、このパネル穴にワンタッチで取り付け体を嵌め付けることができる。また、雌パーツの通し部から外方に突き出された雄パーツの弾性掛合爪もパネル穴に掛合されるところ、この弾性掛合爪は雌パーツの四つの側部の内の背中合わせの向きにある二つの側部側においてパネル穴に掛合され、雌パーツの残りの二つの側部においては前記のように弾性掛合片がパネル穴に掛合されることから、取り付け体をパネル穴に安定的にはめ込ませることができる。また、雄パーツを前記非掛合位置に向けて回動操作させるにあたって、パネル穴内において雌パーツが連れ回りしてしまうことはない。また、非掛合位置まで回動された雄パーツを雌パーツ内から抜き出しても雌パーツとパネル穴との掛合が解かれることはなく、抜き出した雄パーツ、あるいは、交換用の雄パーツの脚部をこのようにパネル穴に掛合されている雌パーツ内に入れ込ませることにより、所期のパネル穴へのはめ込み状態を再度容易に作り出すことができる。さらに、パネル穴に対し雌パーツのみを先にはめ込んだ状態から雄パーツの脚部を雌パーツ内に入れ込ませてのパネル穴への取り付けをなすこともできる。
【0014】
また、この発明にかかるクランプ具は、以上の構成を備えたパネル穴への取り付け体における雄パーツの頭部に、線状体、管状体、又は棒状体のクランプ部を形成させてなるものである。
【0015】
かかるクランプ具によれば、クランプ部を備えた雄パーツを非掛合位置に向けて回動させることで、パネル穴に雌パーツを残しつつ、パネル穴から取り外すことができる。特に、クランプ部に破損などが生じた場合、雄パーツを交換することで容易に所期のクランプ具として利用できるようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかるパネル穴への取り付け体にあっては、パネル穴に対する雄パーツの弾性掛合爪の掛合を解く雄パーツの非掛合位置に向けた回動の阻止を、この弾性掛合爪とは別個に設けたターンロック部によってなさしめるようにしていることから、かかる弾性掛合爪に雄パーツのこの回動を解除可能に阻止する機能を併有させた場合に生じてしまう不都合を生じさせることがない。また、この発明にかかるクランプ具にあっては、クランプ部に破損などが生じた場合に、容易かつ適切にクランプ部を備えた雄パーツの交換をなすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1ないし図27に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
なお、ここで図1、および、図3ないし図11は、実施の形態にかかる取り付け体Tを含んで構成されたクランプ具Taをそれぞれ示しており、特に、図1は、かかるクランプ具Taをパネル穴Paに取り付けた使用状態を、また、図5は、図4の雄パーツ2が掛合位置にある状態から雄パーツ2を非掛合位置に向けて回動させ始めた状態を、それぞれ示している。また、図12ないし図19は、かかる雄パーツ2を、図20ないし図26は、雌パーツ1を、それぞれ示している。また、図27は、かかるクランプ具Taを、サンバイザーSの軸Saを保持するサンバイザークリップとして用いた場合のその使用の様子を示している。
【0019】
この実施の形態にかかるパネル穴Paへの取り付け体Tは、自動車のボディパネルPなどのパネルに貫通状態に設けられたパネル穴Paにはめ込まれて、このパネルに取り付け用いられるものである。
【0020】
また、かかる取り付け体Tは、パネル穴Paを備えた二枚以上のパネルのそれらのパネル穴Paにはめ込まれて、このはめ込みによってこの二枚以上のパネルを取り付け体Tを介して組み付け合わせるようにも用いることができるものである。
【0021】
また、かかる取り付け体Tは、パネル穴Paを備えたパネルと、このパネルの一面に備えられる貫通穴を備えた部品とを、この貫通穴にパネル穴Paを連通させた状態でこのパネル穴Paにはめ込まれることにより、この取り付け体Tを介して組み付け合わせるようにも用いることができるものである。
【0022】
また、この実施の形態にかかるクランプ具Taは、かかる取り付け体Tを含んで構成されるものであって、そのクランプ部3をもって線状体、管状体、又は棒状体を保持して、このクランプ具Taを介してこれらを前記パネルなどに支持させるように用いられるものである。
【0023】
図示の例にあっては、かかる取り付け体Tは、車室内側にマット状をなす内装材Mの張り込まれた自動車のボディパネルPに形成されたパネル穴Paに、この内装材Mに形成された貫通穴Maを通じてこの車室内側からはめ込まれて、このボディパネルPにはめ込み固定されるようになっている。(図1)また、図示の例では、かかる取り付け体Tを構成する後述する雄パーツ2の頭部20にクランプ部3が形成されており、かかる取り付け体Tがクランプ具Taとして機能するようになっている。図示の例では、かかるクランプ具Taのクランプ部3は、自動車の車室内に設けられるサンバイザーSの軸Saを抜き出し可能に保持するのに適した構造を持つようになっている。(図27)
【0024】
図示の例にあっては、かかるクランプ部3は、雄パーツ2の頭部20における脚部21の形成側と反対の側に形成されている。かかるクランプ部3は、フック状をなす下部張り出し部30によって形成された前方に開放された保持凹部31と、片上端を頭部の上部に一体に連接させて片下端をこの保持凹部31の底側に位置づけさせた押さえ片32とを有しており、線状体、管状体、又は棒状体の側部をこの保持凹部31に入れ込むことにより、この押さえ片32の片下端側と下部張り出し部30の先端内面との間において、これを抜き出し可能に保持するように構成されている。
【0025】
かかる取り付け体Tは、雌パーツ1と、雄パーツ2とから構成されている。
【0026】
雌パーツ1は、パネル穴Paにはめ込まれてこのパネル穴Paに掛合固定されるように構成されている。
【0027】
この実施の形態にあっては、かかる雌パーツ1は、開放された筒一端に外向きに突き出すフランジ10を備えた角穴状をなすパネル穴Paに整合した外郭形状を持った角筒状をなすように構成されていると共に、
この雌パーツ1における四つの側部11…11の内の、背中合わせの向きにある一対の側部11、11にそれぞれ後述する雄パーツ2の弾性掛合爪211の通し部12が形成され、
かつ、残りの二つの側部11、11にそれぞれ、フランジ10に向いた掛合面131を備えた弾性掛合片13が形成されている。
【0028】
具体的には、図示の例にあっては、かかる雌パーツ1は、筒一端と筒他端とを共に開放させている。また、四つの側部11…11の内、前記通し部12が形成されている二つの側部11、11を巾広とし、弾性掛合片13が形成されている残りの二つの側部11、11をそれよりも巾狭とするように構成されている。
【0029】
図示の例では、雌パーツ1は、その筒軸方向の略中程の位置に形成された仕切り板部14によって、筒一端側の手前室15と、筒他端側の奥室16とに区分されている。この仕切り板部14の中央部には、略丸穴状をなす雄パーツ2の脚部21の通し穴141が形成されており、雌パーツ1の筒一端からこの雌パーツ1内に入れ込まれた雄パーツ2の脚部21の先端側は、この通し穴141を通じて手前室15を通って奥室16に入り込むようになっている。
【0030】
また、前記通し部12は、図示の例では、前記巾広の側部11を貫通する方形穴として構成されている。この通し部12は、その上縁を前記フランジ10の基部に位置させ、かつ、下縁を仕切り板部14の形成位置よりやや上方に位置させており、雌パーツ1の手前室15に連通されている。
【0031】
図示の例では、雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の一方に形成された通し部12における雌パーツ1の筒軸方向に沿った通し部12の右縁121は、この雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の他方に形成された通し部12における雌パーツ1の筒軸方向に沿った通し部12の左縁122よりも右側に位置され、
また、雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の一方に形成された通し部12における雌パーツ1の筒軸方向に沿った通し部12の左縁122は、この雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の他方に形成された通し部12における雌パーツ1の筒軸方向に沿った通し部12の右縁121よりも右側に位置されるようになっている。(図25)
【0032】
また、手前室15内には、雌パーツ1の巾狭の側部11の内面との間に間隔を開けて、仕切り板部14から雌パーツ1の筒一端側に向けて突き出す案内板部151が、前記通し穴141を挟んだ両側にそれぞれ形成されている。そして、このように形成された案内板部151の通し穴141に向けられた側の板面が、後述する雄パーツ2の回動を案内する案内面152として機能するようになっている。
【0033】
一対の案内板部151、151の一方は、雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の一方に形成された通し部12の右縁121と、この雌パーツ1の一対の巾広の側部の他方に形成された通し部12の左縁122との間に亘るように形成されている。
【0034】
また、一対の案内板部151、151の他方は、雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の他方に形成された通し部12の右縁121と、この雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の一方に形成された通し部12の左縁122との間に亘るように形成されている。
【0035】
また、かかる一対の案内板部151、151はそれぞれ、通し部12の左縁122との連接箇所に近づくに連れて、巾狭の側部11との間の間隔を広げる向きに湾曲されている。
【0036】
図示の例では、後述するように、雌パーツ1の筒一端からこの雌パーツ1内に脚部21を入れ込ませた雄パーツ2の、この脚部21に設けられた弾性掛合爪211は、前記通し部12の左縁122側に偏ってこの通し部12から外方に突き出されてパネル穴Paに掛合されるようになっており、(掛合位置/図3)この掛合位置にある雄パーツ2は、この弾性掛合爪211を通し部12の右縁121側から雌パーツ1内に入れ込ませる向きにのみ回動可能となっている。
【0037】
すなわち、図示の例では、一対の案内板部151、151における通し部12の右縁121との連接箇所間のピッチxは、後述するように、雄パーツ2の脚部21の直径方向両側に形成された弾性掛合爪211の頂部211e間のピッチよりもやや狭いピッチとなっているが、一対の案内板部151、151における通し部12の左縁122との連接箇所間のピッチyはより狭いピッチとなっており、(図25)これにより、掛合位置にある雄パーツ2は、この弾性掛合爪211を通し部12の右縁121側から雌パーツ1内に入れ込ませる向きにのみ回動可能となっている。そして、この向きの回動によって、つまり、非掛合位置への回動によって、雄パーツ2の弾性掛合片13とパネル穴Paとの掛合が解かれるようになっている。
【0038】
また、図示の例では、雌パーツ1の一対の巾狭の側部11、11にそれぞれ、前記仕切り板部14の形成箇所から雌パーツ1の筒一端に亘り、かつ、この筒一端において溝一端を外方に開放させた一対の割溝132、132によって、この一対の割溝132、132間に弾性掛合片13が形成されている。
【0039】
図示の例では、かかる弾性掛合片13の外面部には、フランジ10よりもやや低いレベルにあってこのフランジ10に向いた掛合面131と、頂部134を挟んだこの掛合面131と反対の側に、この頂部134に近づくに連れて次第に外向きに張り出す傾斜面133とを持った掛合部が形成されている。そして、図示の例では、略長方形の角穴状をなすパネル穴Pa(図2)の一対の短辺間のピッチよりも、雌パーツ1の一対の弾性掛合片13の掛合部の頂部134間のピッチがやや大きくなるようにしてある。また、雌パーツ1のフランジ10から筒他端までの間はかかるパネル穴Paに入り込む太さとなっているが、かかるフランジ10はこのパネル穴Paに入り込まない外径を持つように構成されている。
【0040】
これにより、この実施の形態にあっては、前記パネル穴Paに取り付け体Tを雌パーツ1の筒他端側を先にして入れ込ませることに伴って、弾性掛合片13を一旦内向きに撓み込ませた後のこの弾性掛合片13の掛合面131がこのパネル穴Pa内に入り込んだ位置での弾発によって、この掛合面131とフランジ10との間でパネル穴Paを内外から挟み込んで、このパネル穴Paにワンタッチで取り付け体Tを嵌め付けることができる。また、雌パーツ1の通し部12から外方に突き出された雄パーツ2の弾性掛合爪211もパネル穴Paに掛合されるところ、この弾性掛合爪211は雌パーツ1の四つの側部11…11の内の背中合わせの向きにある二つの側部11、11側においてパネル穴Paに掛合され、雌パーツ1の残りの二つの側部11、11においては前記のように弾性掛合片13がパネル穴Paに掛合されることから、取り付け体Tをパネル穴Paに安定的にはめ込ませることができる。また、雄パーツ2を前記非掛合位置に向けて回動操作させるにあたって、パネル穴Pa内において雌パーツ1が連れ回りしてしまうことはない。また、非掛合位置まで回動された雄パーツ2を雌パーツ1内から抜き出しても雌パーツ1とパネル穴Paとの掛合が解かれることはなく、抜き出した雄パーツ2、あるいは、交換用の雄パーツ2の脚部21をこのようにパネル穴Paに掛合されている雌パーツ1内に入れ込ませることにより、所期のパネル穴Paへのはめ込み状態を再度容易に作り出すことができる。さらに、パネル穴Paに対し雌パーツ1のみを先にはめ込んだ状態から雄パーツ2の脚部21を雌パーツ1内に入れ込ませてのパネル穴Paへの取り付けをなすこともできる。
【0041】
一方、雄パーツ2は、頭部20とこの雌パーツ1に入れ込まれる脚部21とを有すると共に、この脚部21に雌パーツ1の側部に形成された通し部12から外方に突き出してパネル穴Paに掛合される弾性掛合爪211を備えている。
【0042】
この実施の形態にあっては、頭部20は、その一面側の略中央部に、脚部21の基部を一体に連接させていると共に、その他面側に前記クランプ部3を一体に備えている。
【0043】
図示の例にあっては、脚部21は、頭部20の一面に対し略直交する向きに突き出すように設けられている。また、かかる脚部21は、その基部からその長さ方向略中程の位置までを円筒状部212とし、そこから先を後述するターンロック部213としている。この脚部21は、雌パーツ1の筒一端からこの雌パーツ1内に入れ込まれ、入れ込まれた雄パーツ2の円筒状部212は雌パーツ1の手前室15内の一対の案内板部151、151間に位置され、ターンロック部213は通し穴141を通って奥室16内に位置される。
【0044】
この円筒状部212の直径方向両側にそれぞれ、前記弾性掛合爪211が形成されている。かかる弾性掛合爪211は、図示の例にあっては、円筒状部212の筒軸方向に沿った一対の縦割り溝211a、211aと、この一対の縦割り溝211a、211aにおける頭部20側に位置される溝端間に亘る横割溝211bとによって区分されたこの円筒状部212の一部の外面部に形成されている。この弾性掛合爪211は、頭部に向いた掛合面211cと、頂部211eを挟んだこの掛合面211cと反対の側にこの頂部211eに近づくに連れて次第に外向きに張り出す傾斜面211dとを有している。
【0045】
この雄パーツ2の一対の弾性掛合爪211、211の頂部211e間のピッチは、雌パーツ1の巾広の側部11の内面および外面間のピッチよりも大きくなるようにしてある。そして、図示の例にあっては、前記雌パーツ1内に、この雌パーツ1の巾広の側部11に弾性掛合爪211が向き合う向きで雄パーツ2の脚部21を入れ込むことにより、この巾広の側部11の内面に弾性掛合爪211が突き当てられて円筒状部212の一部を一旦内向きに撓み込ませた後の、この弾性掛合爪211が雌パーツ1の通し部12に入り込み可能な位置での弾性復帰によって、この通し部12に弾性掛合爪211が掛合されて雄パーツ2と雌パーツ1とが留め付け合わされると共に、このように通し部12から突き出される弾性掛合爪211によって、雄パーツ2をまたパネル穴Paに掛合させることができるようにしている。すなわち、図示の例にあっては、前記パネル穴Paの一対の長辺間のピッチよりも一対の弾性掛合爪211、211の頂部211e間のピッチがやや大きくなるようにしてあり、取り付け体Tをこのパネル穴Paに入れ込ませることにより、かかる弾性掛合爪211を一旦内向きに撓み込ませた後のこの弾性掛合爪211の掛合面211cがこのパネル穴Pa内に入り込んだ位置での弾発によって雄パーツ2自体もパネル穴Paにワンタッチで留め付けられるようになっている。
【0046】
そして、雌パーツ1の内部には、雄パーツ2の脚部21を回動軸としたこの雄パーツ2の回動を案内する前記案内面152が形成されており、雄パーツ2は前記のように弾性掛合爪211を通し部12から突き出した掛合位置からこの弾性掛合爪211を雌パーツ1内に引き込ませる非掛合位置に向けた回動可能に雌パーツ1に組み合わされるようになっている。
【0047】
また、かかる雌パーツ1には、非掛合位置に向けた雄パーツ2の回動を阻止するように、この雄パーツ2に形成されたターンロック部213のこの回動先側に向けたロック面213aに突き当たる受けロック面162を備えた受けターンロック部161が形成されている。
【0048】
図示の例にあっては、かかるターンロック部213は、雄パーツ2の脚部21の直径方向両側にそれぞれ形成されると共に、前記円筒状部212の末端に基端を一体に連接させて突き出す延設片213bによって構成されている。
【0049】
この延設片213bは、円筒状部212の外周面が位置される仮想の円の円弧に略倣った外面と内面とを持った湾曲板部213cと、この湾曲板部213cの一方縁部に沿って設けられると共に、この一方縁部から前記仮想の円の円心に向けて突き出すように形成された折り返し板部213dとを有している。一対の延設片213bの一方の折り返し板部213dと一対の延設片213bの他方の他方縁部との間、および、一対の延設片213bの他方の折り返し板部213dと一対の延設片213bの一方の他方縁部との間にはそれぞれ、間隙213eが形成されており、この間隙213eに臨んだ折り返し板部213dの外面が前記ロック面213aとして機能するようになっている。
【0050】
そして、この実施の形態にあっては、前記受けターンロック部161が、非掛合位置に向けた雄パーツ2の回動によって、ロック面213aと受けロック面162との突き当たりを解く向きに弾性変形されるようになっている。
【0051】
図示の例にあっては、かかる受けターンロック部161は、雌パーツ1の奥室16内に形成されている。そして、かかる受けターンロック部161は、雌パーツ1の通し部12から弾性掛合爪211を外方に突き出させるようにしてこの雌パーツ1内に脚部21を入れ込ませた雄パーツ2の掛合位置において、前記ターンロック部213のロック面213aに前記のように突き当たる受けロック面162を有している。
【0052】
これにより、この実施の形態にかかる取り付け体Tによれば、パネル穴Paに掛合固定された雌パーツ1内に脚部21を入れ込ませた雄パーツ2の弾性掛合爪211を雌パーツ1の通し部12を通じてパネル穴Paに掛合させることができ、これにより、パネル穴Paに雄パーツ2を留め付けることができる。また、このように留め付けられた雄パーツ2を非掛合位置に向けて雌パーツ1内で回動させることにより、弾性掛合爪211を雌パーツ1内に引き込ませることができ、これにより、雌パーツ1をパネル穴Paに残しながら雄パーツ2とパネル穴Paとの掛合を解いてパネル穴Paから雄パーツ2を取り外すことができる。また、かかる雄パーツ2の非掛合位置に向けた回動は、ターンロック部213のロック面213aと受けターンロック部161の受けロック面162との突き当たりによって阻止されることから、予期せず雄パーツ2が回動されてパネル穴Paと雄パーツ2との留め付け状態が解かれてしまうことはない。その一方で、雄パーツ2の前記非掛合位置に向けた回動は、前記弾性変形によるロック面213aと受けロック面162との突き当たりを解くことによって確保させることができる。雄パーツ2の弾性掛合爪211は前記非掛合位置に向けた回動により雌パーツ1内に引き込み可能な状態でこの雌パーツ1の通し部12から外方に突き出されるが、ターンロック部213と受けターンロック部161はこの弾性掛合爪211及び通し部12とは別個に形成されており、非掛合位置に向けた雄パーツ2の回動の阻止を通し部12に弾性掛合爪211を突き当てさせることにより実現させる訳ではないので、この回動にあたって弾性掛合爪211を無理に変形させてしまうことはなく、この回動のための弾性変形を生じ易くすることができると共に、弾性掛合爪211の掛合代を減らすようなこの弾性掛合爪211の変形を案内する案内面152などをこの弾性掛合爪211に形成させる必要もない。
【0053】
この実施の形態にあっては、ターンロック部213が、雄パーツ2の脚部21における弾性掛合爪211の形成位置、つまり、円筒状部212よりも先に形成されていると共に、
受けターンロック部161が、雌パーツ1における案内面152の形成位置、つまり、手前室15より奥の奥室16に形成されている。
【0054】
これにより、この実施の形態にあっては、ターンロック部213及び受けターンロック部161を、弾性掛合爪211及び通し部12とは異なる位置に、合理的にレイアウトさせることができるようになっている。
【0055】
また、この実施の形態にあっては、前記受けターンロック部161が、片一端を雌パーツ1の内壁に一体に連接させて雄パーツ2の脚部21の回動先側に向けて弧状に延びると共に、片他端に受けロック面162を備えた弾性片163として構成されている。
【0056】
図示の例にあっては、雌パーツ1の奥室16における通し穴141を挟んだ両側にそれぞれ、かかる弾性片163が形成されている。いずれの弾性片163も、その片他端の内面側に頭部164を有しており、この頭部164における片一端側に向けられた面が前記受けロック面162として機能されるようになっている。また、いずれの弾性片163も、通し穴141に沿うように湾曲されており、雌パーツ1を筒一端側から視た状態において、この弾性片163の頭部164のみを通し穴141内に臨ませるように構成されている。また、一対の弾性片163、163の一方は、雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の一方の内壁に片一端を一体に連接させ、かつ、一対の弾性片163、163の他方は、雌パーツ1の一対の巾広の側部11、11の他方の内壁に片一端を一体に連接させている。そして、図示の例にあっては、雌パーツ1内にこの雌パーツ1の通し部12から弾性掛合爪211を突き出させる向きで脚部21を入れ込まれた雄パーツ2のターンロック部213を構成する一対の延設片213b、213bの一方のロック面213aがこの一対の弾性片163、163の一方の受けロック面162に接し、かつ、このターンロック部213を構成する一対の延設片213b、213bの他方のロック面213aがこの一対の弾性片163、163の他方の受けロック面162に接するようになっている。そして、前記掛合位置から非掛合位置に向けて雄パーツ2を回動させると、雄パーツ2のロック面213aが受けロック面162に押し付けられ、この押し付けによって弾性片163がその片他端を外向きに広がり出させるように弾性変形され、この変形によりロック面213aと受けロック面162との突き当たりが解かれて雄パーツ2の非掛合位置までの回動が許容されるようになっている。
【0057】
かかる弾性片163は雄パーツ2の回動方向に沿って弧状に延び、また、一定の長さを有することから、掛合位置にある雄パーツ2を非掛合位置に向けて回動させることに伴って、ロック面213aと受けロック面162との突き当たりを解くように、かかる弾性片163は円滑に変形される。
【0058】
以上に説明した取り付け体Tを含んで構成されるクランプ具Taは、クランプ部3を備えた雄パーツ2を非掛合位置に向けて回動させることで、パネル穴Paに雌パーツ1を残しつつ、パネル穴Paから取り外すことができる。特に、クランプ部3に破損などが生じた場合、雄パーツ2を交換することで容易に所期のクランプ具Taとして利用できるようにすることができる。
【0059】
なお、以上に説明した雄パーツ2および雌パーツ1の弾性変形特性を有する部分へのこの特性の付与は、典型的には、かかる雄パーツ2及び雌パーツ1をプラスチック成形品として構成することで容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】取り付け体T(クランプ具Ta)の使用状態を示した正面図
【図2】パネル穴Paの平面図
【図3】取り付け体T(クランプ具Ta)の斜視構成図
【図4】同斜視構成図(雄パーツ2が掛合位置にある状態)
【図5】同斜視構成図(雄パーツ2を非掛合位置に向けて回動させた状態)
【図6】同分離斜視構成図
【図7】取り付け体T(クランプ具Ta)の正面図
【図8】同左側面図
【図9】同平面図
【図10】同底面図
【図11】図9におけるA−A線断面図
【図12】雄パーツ2の正面図
【図13】同左側面図
【図14】同平面図
【図15】同底面図
【図16】図14におけるD−D線断面図
【図17】図14におけるE−E線断面図
【図18】図12におけるB−B線断面図
【図19】図12におけるC−C線断面図
【図20】雌パーツ1の平面図
【図21】同底面図
【図22】同正面図
【図23】同左側面図
【図24】図20におけるF−F線断面図
【図25】図22におけるG−G線断面図
【図26】図22におけるH−H線断面図
【図27】サンバイザーSの軸Saをクランプ具Taによって保持するようにした使用例を示した斜視構成図
【符号の説明】
【0061】
Pa パネル穴
T 取り付け体
1 雌パーツ
12 通し部
152 案内面
161 受けターンロック部
162 受けロック面
2 雄パーツ
20 頭部
21 脚部
211 弾性掛合爪
213 ターンロック部
213a ロック面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル穴にはめ込まれてこのパネル穴に掛合固定される雌パーツと、
頭部とこの雌パーツに入れ込まれる脚部とを有すると共に、この脚部に雌パーツの側部に形成された通し部から外方に突き出してパネル穴に掛合される弾性掛合爪を備えた雄パーツとを備えており、
雌パーツの内部には、雄パーツの脚部を回動軸としたこの雄パーツの回動を案内する案内面が形成されており、雄パーツは弾性掛合爪を通し部から突き出した掛合位置からこの弾性掛合爪を雌パーツ内に引き込ませる非掛合位置に向けた回動可能に雌パーツに組み合わされるようになっており、
しかも、雌パーツに、非掛合位置に向けた雄パーツの回動を阻止するように、この雄パーツに形成されたターンロック部のこの回動先側に向けたロック面に突き当たる受けロック面を備えた受けターンロック部が形成されていると共に、
このターンロック部及び受けターンロック部の双方又はいずれか一方が、非掛合位置に向けた雄パーツの回動操作によって、ロック面と受けロック面との突き当たりを解く向きに弾性変形されるようになっていることを特徴とするパネル穴への取り付け体。
【請求項2】
ターンロック部が、雄パーツの脚部における弾性掛合爪の形成位置よりも先に形成されていると共に、
受けターンロック部が、雌パーツにおける案内面の形成位置より奥に形成されていることを特徴とする請求項1記載のパネル穴への取り付け体。
【請求項3】
受けターンロック部が、片一端を雌パーツの内壁に一体に連接させて雄パーツの脚部の回動先側に向けて弧状に延びると共に、片他端に受けロック面を備えた弾性片として構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパネル穴への取り付け体。
【請求項4】
雌パーツが、開放された筒一端に外向きに突き出すフランジを備えた角穴状をなすパネル穴に整合した外郭形状を持った角筒状をなすように構成されていると共に、
この雌パーツにおける四つの側部の内の、背中合わせの向きにある一対の側部にそれぞれ通し部が形成され、
かつ、残りの二つの側部にそれぞれ、フランジに向いた掛合面を備えた弾性掛合片が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3記載のパネル穴への取り付け体。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のパネル穴への取り付け体における雄パーツの頭部に、線状体、管状体、又は棒状体のクランプ部を形成させてなることを特徴とするクランプ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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