説明

パピローマウイルスワクチン

本発明は、少なくとも1種類のパピローマウイルスによって引き起こされる持続性パピローマウイルス感染症に罹っている患者の治療を目的とする薬剤を調製するための少なくとも1種類のパピローマウイルスE2ポリペプチドをコードする核酸分子、またはベクター、感染性ウイルス粒子またはそれらの組成物の使用に関する。本発明は、パピローマウイルスE1ポリペプチドをコードする第一のヌクレオチド配列とパピローマウイルスE2ポリペプチドをコードする第二のヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子を含んでなるベクターであって、天然状態では第二のヌクレオチドの5'部分に100%同一である第一のヌクレオチドの3'部分が上記部分の間の同一性率が多くても75%となるように修飾されていることを特徴とするベクターも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パピローマウイルス感染症の治療を目的とする薬剤を調製するための少なくとも1種類のパピローマウイルスE2ポリペプチドをコードする核酸分子またはベクターまたは感染性ウイルス粒子の使用に関する。本発明は、免疫療法の分野において、更に詳細には持続性パピローマウイルス感染症に罹っている患者の治療について極めて重要なものである。
【背景技術】
【0002】
パピローマウイルスは多数の高等生物で単離されており、皮膚および粘膜上皮組織に感染する。現在では、100を上回るヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子型がヒトで確認されており(Stoler, 2000, Int. J. Gynecol. Path 19, 16-28)、通常は良性腫瘍(例えば、HPV-6およびHPV-11)と関連する「低リスク」遺伝子型と前癌病変(例えば、頚部上皮内癌CIN)へ進行し最終的には悪性腫瘍へ進行する可能性を有する病変と関連している「高リスク」遺伝子型に分類することができる。例えば、頚部癌の99%超がHPVDNAを含み、5個の「高リスク」HPV (HR-HPV)遺伝子型が主原因として認められており、世界中で診断された侵襲性頚部癌の約70%にHPV-16およびHPV-18が検出されており(Clifford et al, 2003, Br J Cancer 88, 63-73)、HPV-31、HPV-33およびHPV-45は追加の10%を占めている(Cohen et al., 2005, Science 308, 618-621)。
【0003】
パピローマウイルスは、タンパク質キャプシドで囲まれた小型のDNAウイルスである(例えば、Pfister, 1987,「パポバウイルス: パピローマウイルス」, SalzmanおよびHowley監修, Plenum Press,New York, p 1-38を参照されたい)。ゲノムは、初期(E)、後期(L)および転写領域(long control領域; LCR)の3個の機能領域からなる約7900塩基対の二本鎖の環状DNAである。LCRは、エンハンサーおよびプロモーターのような転写調節配列を含む。後期領域はそれぞれ主要および微量キャプシドタンパク質である構造タンパク質L1およびL2タンパク質をコードし、初期領域はウイルス複製、転写および細胞形質転換を制御する核に主として見出される調節タンパク質(E1-E7)をコードする。
【0004】
E1タンパク質は、パピローマウイルスゲノムによってコードされる最大(HPV-16 E1は長さが649アミノ酸である)かつ最も保存されたタンパク質である。E1は、ATP依存性ヘリカーゼ活性を有するDNA結合リンタンパク質であり、ウイルス複製を刺激するには二量体化とE2との相互作用が必要である(DesaintesおよびDemeret, 1996, Semin. Cancer Biol. 7, 339-347; Wilson et al, 2002, Virus Gene 24, 275-290)。ヘリカーゼ活性は、E1のC末端ドメインおよび中央ドメインにおけるDNA結合ドメインに配置されている。E2タンパク質(HPV-16 E2は長さが365アミノ酸である)は、ウイルス遺伝子転写を調節しDNA複製を制御する多機能性DNA結合リンタンパク質である(Bechtold et al., 2003, J. Virol. 77, 2021-2028)。ウイルス転写の調節には、二量体化とE2二量体のE2結合部位(コンセンサスACCN6GGT配列)への結合が必要であり、この状況によってウイルス転写がトランス活性化されるかまたは抑制されるかが決定される(Ham et al., 1991, Trends Biochem. Sci. 16, 440-444; Mc Bride et al., 1991, J. Biol. Chem. 266, 18411-18444)。E2はまた、E6およびE7腫瘍タンパク質の発現を制御するHPV-16 p97プロモーターも抑制する。最後に、E2は、娘細胞におけるウイルスゲノムの分配に関与している。HPV-16 E2のN末端ドメインは、トランス活性化、E1との相互作用および複製の刺激に関与しており、一方、C末端ドメインはDNA結合および二量体化に関与している(McBride et al., 1989, Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 86, 510-514)。E4によってコードされたタンパク質は細胞質のケラチンネットワークに結合して分断し、ウイルス成熟にある役割を果たしている。E5タンパク質の機能は、未だに論議の的となっている。E6およびE7タンパク質は、これらのウイルスタンパク質のそれぞれ細胞腫瘍抑制遺伝子産物p53および網膜芽細胞腫(Rb)への結合によるHR-HPVに感染した細胞の発癌性形質転換に関与している(Kanda et al., 1988, J. Virol. 62, 610-613; Vousden et al., 1988, Oncogene Res. 3, 1-9; Bedell et al., 1987, J. Virol. 61, 3635-3640)(Howley, 1996, 「パピローマウイルスおよびその複製」, p 2045-2076. B.N. Fields, D. M. KnipeおよびP.M. Howley (監修), 「ウイルス学」, 第3版. Lippincott-Raven Press, New York, N.Y.に概説されている)。
【0005】
HPV感染症は、最も頻繁に性的に感染する感染症の1つであり、性的に活性な成人の約25%がHPVに感染している(Woodman et al., 2001, The Lancet 357, 1831-1836)。被験者の約80%では、6-12ヶ月以内に自発的にウイルスが根絶される(Ho et al, 1998,N Engl J Med 338, 423-428)。しかしながら、残りの20%では、HPV感染症は前癌CIN病変へと進行し、診断をいけなければ浸潤癌となる可能性がある(O'Shaughnessy et al., 2002, Clinical Cancer Research 2, 314-346)。新形成誘発機構は、細胞染色体におけるHPVゲノムの組込みを伴うと思われる(Cullen et al., 1991, J. Virol. 65, 606-612)。ほとんどの場合に、これは、E1/E2領域におけるHPVゲノムDNAの分断、E2抑制作用からのE6/E7プロモーターの解放、およびその結果としてのE6およびE7発現および細胞形質転換のアップレギュレーションを生じる。
【0006】
HPV感染症の予防を目的とする予防ワクチンは、今や発売間近になっている。それらは、ウイルスが主として中和抗体の誘導により宿主細胞に浸透する前に遮断するためのウイルス表面で発現するキャプシドタンパク質をターゲットとする。それらは、一般に組換えによって産生されるL1タンパク質に依存しており、このタンパク質は自発的に再集合してVLP(ウイルス様粒子)となる。MerckおよびGlaxoSmithKline(GSK)製の2種類のHPVワクチンは成功裏に第III相臨床試験を終了しており、種特異的頚部感染症の予防にほぼ100%の効力を示している。GSK製ワクチンはHPV-16およびHPV-18のVLP混合物を含んでなり、一方Merck製ワクチンは性器疣を引き起こすHPV-6およびHPV-11由来のVLPも含んでいた。
【0007】
しかしながら、既にHPVに感染した被験者は予防接種は望ましくなく、治療用ワクチンは発癌の可能性がある進行している病変の危険性のある感染患者の治療に関心がある。発癌活性は感染細胞におけるHPV E6およびE7遺伝子の発現に帰因しているので、努力の多くはその発現のブロックまたはこれらの形質転換遺伝子産物に対する細胞性免疫応答の誘導に向けられてきた。例えば、アンチセンスRNA(Steele et al., 1993, Cancer Res 53, 2330-2337; Ile et al., 1997, Cancer Res. 57, 3993-3999; Choo et al., 2000, Gynecol. Oncol. 78, 293-301)、リボザイム(Chen et al., 1996, Cancer gen Ther. 3, 18-23; Pan et al., 2004, Mol. Ther. 9, 596-606)、siRNA(Butz et al., 2003, Oncogene 22, 5938-5945; Koivusalo et al., 2005, Mol. Pharmacol. 68, 372-382)、免疫原性ペプチド(Feltkamp et al., 1993, Eur. J. Immunol. 23, 2242-2249)、E6および/またはE7をコードするプラスミド(Peng et al., 2004, J. Virol. 78, 8468-8476)およびウイルスベクター(WO90/10459号明細書; WO99/03885号明細書; Kaufmann et al., 2002, Clinical Cancer Res. 8, 3676-3685)の使用による多数の方法が文献に記載されている。
【0008】
E2タンパク質はHPV 感染の初期段階で発現するので、治療用予防接種の第二の潜在的ターゲットである。ワタオウサギパピローマウイルス(CRPV)に感染したウサギで行った前臨床研究では、E2発現後に提供されたパピローマウイルス関連病巣にして防護が示された。例えば、CRPVE2タンパク質を発現する組換えアデノウイルスベクターを投与したところ、恐らくは細胞性免疫によりCRPV誘導パピローマおよび感染症が除去された(Brandsma et al, 2004, J. Virol. 78, 116-123)。防護免疫は投与経路によって変化することが示されているが(Han et al., 2000, Vaccine 18, 2937-2944)、CRPV E1およびE2タンパク質をコードするDNAの投与は、CRPV誘導皮膚乳頭腫の癌への進化を防止しまたは少なくとも遅らせる上でも有効であった(Han et al, 2000, J. Virol. 74, 9712-9716)。パピローマウイルス関連病巣を治療するためのE2の治療潜在能力は、HPVに暴露されたヒト被験者でも支持された。抗E2特異性T-ヘルパー免疫は健康な被験者で頻繁に検出されており(De Jong et al., 2002, Cancer Res. 62, 472-479)、一方、E2およびE6に対する損なわれたCD4+ T-細胞免疫はHPV-16関連頚部癌の女性で観察された(De Jong et al., 2004, Cancer Res. 64, 5449-5455)。
【0009】
第II相臨床試験は、ウシパピローマウイルス(BPV)E2タンパク質をコードする組換えMVA(修飾ウイルスアンカラ)ベクターを用いてHPV関連高悪性度CIN 2および3の患者で継続中である。ウイルス粒子はCIN病巣に直接投与され、E6およびE7を発現する細胞にE2が産生されることによってアポトーシスを生じることが予想される。CIN病巣の後退は、治療を受けた患者の大多数で実際に観察された。しかしながら、幾つかの場合には、ウイルスDNAは除去されず、病巣の再発が1後に認められた(Garcia-Ilernandez et al., 2006, Cancer Gene Ther. 13, 592-597)。
【0010】
HPVは、持続的感染性、その高い罹患率、およびHPVによって誘導される癌のかなりの罹病率により、多年にわたり世界的な深刻な健康上の脅威となり続けると予想することができる。実際に、持続性HR-HPV感染症の女性は、非乾癬女性または自発的ウイルスクリアランスを達成した女性と比較してCIN病巣を発展させる200倍までの極めて高いリスクを有することが明らかにされている(Bory et al., 2002, Int J Cancer 102, 519-525)。
【0011】
HPV感染症は、一般に変則スクリーニング(例えば、Pap塗抹試験)の後に検出される。今日では、HPV感染症診断の唯一の医学的利点は、より頻繁な追跡調査の手段であり、病巣(例えば、高悪性度CIN2/3)が生じたならば直ちにこれを検出した後ループ電気外科的切除(LEEP)およびコーンバイオプシー(円錐切除)などの除去法によって除去することができる。このような方法は全体的には90%有効であるが、産科的合併症の危険性がある(例えば、生殖年齢の女性の出産能力について発生する可能性がある)。医学的見地では完全に満足なものではないことに加えて、この状況は患者を不快(不安)にもする。
【0012】
従って、特に前癌病巣に続いて癌に進展するこの個体群における高リスクの観点において、持続性HPV感染症患者の治療用ワクチンを開発する必要がある。
【0013】
従って、本発明は、この点に関して大きく進歩している。本発明は、HR-HPV遺伝子型によって引き起こされる感染症から早期に防護する非侵襲性で安全な方法を提供する。この方法は、パピローマウイルス関連病巣が出現する前に感染患者を治療し、その結果として前癌および悪性腫瘍の展開する危険性を減少させる利点を有している。本発明は、好都合なことには、患者の安心感を向上させ(例えば、病巣調査に関連した不安感を減少させ)ながら、従来の除去法に関連した危険性(例えば、産科的合併症)を減少させることができる。重要なことには、本発明は、感染性パピローマウイルスおよびその関連単離体の根絶により、HPV-再感染による将来的再発の危険性を減少させることもできる。
【0014】
この技術的問題点は、特許請求の範囲に記載の態様を用意することによって解決される。
【0015】
本発明の他の態様、特徴および利点は、本発明の現在のところは好ましい態様の下記の説明から明らかになるであろう。
【0016】
従って、第一の態様では、本発明は、少なくとも1種類のパピローマウイルスによって引き起こされる持続性パピローマウイルス感染症に罹っている宿主生物の治療を目的とする薬剤を調製するための、少なくとも1種類のパピローマウイルスE2ポリペプチドをコードする核酸分子、または上記核酸分子を含んでなるベクターまたは感染性ウイルス粒子の使用を提供する。本発明は、宿主生物における持続性パピローマウイルス感染症の治療に使用するための上記核酸分子、ベクターまたは感染性ウイルス粒子にも関する。一態様によれば、上記核酸分子、ベクターまたは感染性ウイルス粒子は、宿主生物を少なくとも1種類のパピローマウイルスへ暴露後であってパピローマウイルス関連病巣の検出/出現前に投与される。
【0017】
本明細書を通して用いられる技術用語は、文脈が他のことを規定しない限り「少なくとも1種類の」、「少なくとも最初の」、「1以上の」または「複数の」引用化合物または段階等を含む意味で用いられる。例えば、「パピローマウイルスE2ポリペプチド」という用語は、独特の一種類のパピローマウイルスE2ポリペプチド、複数のパピローマウイルスE2ポリペプチドであって、それらの混合物を含めて包含する。
【0018】
本明細書で用いられる「および/または」という用語は、「および」、「または」および「上記用語によって結合される要素の総てまたは任意の他の組合せ」の意味を包含する。
【0019】
本明細書で用いられる「約」または「およそ」という用語は、所定の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、更に好ましくは5%以内であることを意味する。
【0020】
「アミノ酸」と「残基」という用語は同義語であり、天然アミノ酸並びにアミノ酸類似体(例えば、非天然、合成および修飾アミノ酸であって、DまたはL光学異性体を含む)を包含する。
【0021】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、ペプチド結合を介して結合した9個以上のアミノ酸を含んでなるアミノ酸残基のポリマーを表すために互換的に用いられる。ポリマーは線状、分岐状または環状であることができ、天然に存在するおよび/またはアミノ酸類似体を含んでなることがあり、非アミノ酸が割り込むことがある。一般的には、アミノ酸ポリマーが長ければ(例えば、50個を上回るアミノ酸残基)、ポリペプチドまたはタンパク質と呼ぶのが好ましく、一方、50個以下のアミノ酸であれば、これは「ペプチド」と呼ばれる。
【0022】
本発明に関して、「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド配列」という用語は互換的に用いられ、ポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)(例えば、cDNA、ゲノムDNA、プラスミド、ベクター、ウイルスゲノム、単離DNA、プローブ、プライマーおよびそれらの任意の混合物)またはポリリボヌクレオチド(RNA)分子(例えば、mRNA、アンチセンスRNA)または混合ポリリボ-ポリデオキシリボヌクレオチドの任意の長さのポリマーを画定する。それらは、一本鎖または二本鎖の線状または環状の天然または合成ポリヌクレオチドを包含する。更に、ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体のような天然に存在しないヌクレオチドを含んでなることがあり(修飾の例として、米国特許第5,525,711号明細書、米国特許第4,711,955号明細書またはEPA 302 175号明細書を参照されたい)、非ヌクレオチド成分が割り込むことがある。存在する場合には、ヌクレオチドに対する修飾は重合の前または後に行うことができる。
【0023】
本明細書で用いられる「含んでなる」という用語を生成物、組成物および方法を定義するのに用いるときには、この用語は、生成物、組成物および方法が引用した成分または段階を含むが、他のものを排除しないことを意味するものとする。「から本質的になる」とは、任意の本質的に重要なもの以外の成分または段階を除外することを意味する。従って、列挙した成分から本質的になる組成物は、微量混入物および薬学上許容可能なキャリヤーを除外しない。「からなる」とは、他の成分の微量を上回る要素または段階を除外することを意味する。例えば、ポリペプチドが列挙したアミノ酸配列以外のアミノ酸を含まないときには、ポリペプチドはアミノ酸配列「からなる」。アミノ酸配列がごく少数の追加アミノ酸残基、典型的には約1-約50程度の追加残基と共に存在するときには、ポリペプチドはアミノ酸配列「から本質的になる」。アミノ酸配列がポリペプチドの最終アミノ酸配列の少なくとも一部であるときには、ポリペプチドはアミノ酸配列を「含んでなる」。このようなポリペプチドは、数個-数百個の追加アミノ酸残基を有することができる。このような追加アミノ酸残基はポリペプチド輸送に役割を果たしており、ポリペプチド産生または精製を促進し、とりわけ半減期を長くする可能性がある。同じことは、ヌクレオチド配列にも当てはまる。
【0024】
「宿主細胞」という用語は、例えば、組織または器官における単離細胞細胞、細胞の群、並びに細胞の特定の組織を包含するように広義に理解されるべきである。このような細胞は、一次、形質転換または培養細胞であることができる。それらは、原核生物(例えば、Escherichia coli)、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces pombeまたはPichia pastoris)、真核生物(例えば、昆虫、植物およびヒト細胞などの哺乳類)であることができる。「宿主細胞」という用語は、本発明で用いられる核酸分子、ベクターまたは感染性ウイルス粒子の受容者であることができるまたはである細胞およびそれらの細胞の子孫を包含する。
【0025】
「宿主生物」という用語は、脊椎動物の一員、特に哺乳類、特に家畜、農場飼育動物、スポーツ動物、およびヒトなどの霊長類を表す。好ましくは、宿主生物は、少なくとも1種類のパピローマウイルスによって引き起こされる持続性パピローマウイルス感染症に罹っている患者である。
【0026】
「パピローマウイルス」は、パピローマウイルス亜科に属するウイルスを表す。この定義は、ウシ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ヒト以外の霊長類および齧歯類を含むがこれらに限定されないヒト以外の種起源の動物パピローマウイルス並びにヒトパピローマウイルス(HPV)を包含する。
【0027】
「HPV」は、更に具体的にはヒト種起源および/またはヒトに感染することができるパピローマウイルスを表す。100を上回るHPV遺伝子型が現在確認されており、それらは単離の年代順に番号が付けられている。慣例により、HPVの分類はそれらのゲノムの関連性の程度に基づいている。系統発生樹は、利用可能なヌクレオチド配列の整列から構築した(Van Ranst et al, 1992, J. Gen. Virol. 73, 2653; De Villiers et al, 2004, Virology 324, 17-27)。HPVは、「高リスク」(HR-HPV)および「低リスク」(LR-HPV)に分けられる。HR-HPVは、悪性病巣へと進行する潜在的可能性を有する病巣を生じることがある細胞の形質転換に強く関連しているHPVを表す。HR-HPVの種類には、HPV-16、HPV-18、HPV-30、HPV-31、HPV-33、HPV-35、HPV- 39、HPV-45、HPV-51、HPV-52、HPV-56、HPV-58、HPV-59、HPV-66、HPV-68、HPV-70およびHPV-85が挙げられるが、これらに限定されない。LR-HPVは、悪性病巣へと進行する潜在的可能性が低い疣贅のような良性病巣を生じることがある弱い細胞の形質転換を有するHPVを表す。LR-HPVの種類には、HPV-6およびHPV-11が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
パピローマウイルスは、天然の任意の供給源から単離、クローニングしまたは誘導することができる。このような供給源としては、生物学的試料、培養細胞並びに組換え材料が挙げられる。本明細書で用いられる「生物学的試料」は、パピローマウイルスの供給源としてまたは診断またはモニター分析法に用いることができるパピローマウイルスに暴露されたことがある宿主生物から集めた様々な試料を包含する。本発明に関して、生物学的試料は、収集した後に任意の方法で、例えば、試薬による処理、可溶化またはある種の成分(例えば、ポリペプチドまたは核酸分子)の濃縮によって処理しておくことができる。この定義は、生物学的流体(例えば、血液、血漿、血清)、液体試料(例えば、膣の頚部流体、細胞学的試料)、固形組織試料(例えば、組織切片、生験標本)、および組織培養物を包含する。「培養細胞」という用語は、培養における細胞(例えば、ATCCで入手可能なCaSki 細胞)、細胞上清および細胞溶解物を包含する。組換え材料としては、パピローマウイルス(例えば、受託機関で入手可能)、パピローマウイルスゲノム、ゲノムまたはcDNAライブラリー、パピローマウイルスゲノムの(複数の)断片を含むプラスミド、またはそれらの要素を含むことが知られている任意の従来技術におけるベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
一般的情報として、多数のパピローマウイルスゲノムのヌクレオチド配列およびコードされたポリペプチドのアミノ酸配列は文献に記載されており、 are利用可能な in専門のデーターバンクで入手可能であり、例えば、HPV-16に関してはGenbank受託番号NC_01526およびK02718、HPV-18に関してはNC_001357およびX05015、HPV-31に関してはJ04353、HPV-33に関してはM12732、HPV-35に関してはNC_001529、HPV-39に関してはNC_001535、HPV-45に関してはX74479、HPV-51に関してはNC_001533、HPV-52に関してはNC_001592、HPV-56に関してはX74483、HPV-58に関してはD90400、HPV-59に関してはNC_001635、HPV-68に関してはX67160およびM73258、HPV-70に関してはU21941、およびHPV-85に関してはAF131950である。
【0030】
本明細書で用いられる「パピローマウイルスE2ポリペプチド」という用語は、天然のE2ポリペプチド(すなわち、天然でのパピローマウイルス供給源におけるE2 ORFから発現したもの)、修飾E2ポリペプチドおよびそれらの免疫原性ペプチドを包含する。
【0031】
免疫原性E2ペプチドは少なくとも9個のアミノ酸を有しており、この用語はE2エピトープ(例えば、欧州特許第523 395号明細書に記載されているような、MHCクラスIおよび/またはクラスII依存経路によって免疫応答を誘導しまたは活性化することができる特異的アミノ酸モティーフ)、マルチ-エピトープ構築体(例えば、WO2005/089164号明細書に記載)、および切端E2ポリペプチドを包含する。切端は1 - 300アミノ酸残基の間で変動することがあり、連続的または非連続的であることができ、N末端および/またはC末端および/または内部にあることができる。
【0032】
本発明の使用における核酸分子によってコードされるE2ポリペプチドは、任意のパピローマウイルス遺伝子型に由来し、特に好ましくは、上記したものからなる群から選択されるようなHR-HPV遺伝子型、更に詳細にはHPV-16、HPV-18、HPV-33またはHPV-52、またはそれらの任意の組合せ(例えば、HPV-16およびHPV-18の両方)に由来することがある。多数の天然E2ポリペプチドが文献に記載されており、例えば、Cole et al. (1987, J. Mol.Biol. 193, 599-608)にHPV-18 E2、Seedorf et al. (1985, Virology, 145, 181-185)およびKennedy et al. (1991, J. Virol, 65, 2093-2097)にHPV-16 E2、Goldsborough et al. (1989, Virology 171, 306-311)にHPV-31 E2、Cole et al. (1986, J. Virol, 58,991-995)にHPV-33 E2、およびChen et al (1982,Nature 299,529-534)およびDanos et al (1983, J. Virol. 46, 557-566)にウシパピローマウイルスBPV-1 E2が記載されている。実例として、HPV-16 E2ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号:1に示す。
【0033】
しかしながら、本発明はこれらの具体例としての配列に限定されない。実際に、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は様々なパピローマウイルス単離体の間で変動することができ、この天然遺伝子変動は下記のような非天然修飾と同様に本発明の範囲内に含まれる。「修飾」という用語は、1以上のヌクレオチド残基の欠失、置換または付加、またはこれらの可能性の任意の組合せを包含する。幾つかの修飾が考えられるときには、それらは連続残基および/または非連続残基に関係する可能性がある。修飾は、本発明の使用における核酸分子で、位置指定突然変異誘発(例えば、Amersham, Les Ullis,フランス製のSculptor商品名イン・ビトロ突然変異誘発システムを使用)、PCR突然変異誘発、DNAシャッフリングおよび化学合成法(例えば、合成核酸分子を生じる)のような当業者に知られている多数の方法によって生じさせることができる。
【0034】
本発明によって予想される修飾は、コードされたE2パピローマウイルスのアミノ酸配列を変化させないサイレント修飾並びに対応する天然のアミノ酸配列と比較して修飾アミノ酸配列を生じるコードされたE2ポリペプチドに翻訳される修飾を包含する。
【0035】
コードされたE2ポリペプチドのレベルでサイレントである修飾は、典型的にはE2コード配列の1以上のコドンを同じアミノ酸をコードする1以上のコドンで置換することによって行われる。ユニークコドンはMetまたはTrp残基をコードし、6種類のコドンを用いてアルギニン、ロイシンまたはセリンをコードすることができ、4種類のコドンを用いてアラニン、グリシン、プロリン、トレオニンおよびバリンをコードすることができることは当該技術分野で周知である。従って、アミノ酸配列を変更することなくE2をコードするヌクレオチド配列を修飾することが可能である。このような修飾は、所定の宿主細胞または生物、例えば、ヒト宿主細胞を含む哺乳類におけるパピローマウイルスE2ポリペプチドの発現を向上させることを目的とすることが望ましい。このような修飾の代表例としては、コドン最適化によるまれに用いられるコドンの抑制、発現レベルに負の影響を与えることが予想されるネガティブ配列要素の抑制、および/または本発明で用いられる核酸分子またはベクターの安定性に負の影響を与えることが予想される相同配列の抑制が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
典型的には、コドン最適化は、目的とする宿主細胞でまれに用いられるコドンに対応する1以上の「天然」(例えば、HPV)コドンを一層頻繁に用いられる同じアミノ酸をコードする1種類以上のコドンに置き換えることによって行われる。発現増加は部分的置換によっても行うことができるので、まれに用いられるコドンに対応する総ての天然コドンを置き換える必要はない。更に、最適化コドンの使用に厳密に固執することから幾分ずれることにより、(複数の)制限部位の生成する核酸分子への導入に適応させることができる。このようなコドンによって最適化した核酸分子は、例えば、WO01/14416号明細書、WO02/08435号明細書およびWO03/018055号明細書のような文献に記載されている。
【0037】
本発明に関連して抑制するのに適しているネガティブ配列要素の代表例としては、極めて高い(>80%)または極めて低い(<30%)GC含量を有する領域、極めて高いAT含量を有する領域、不安定な直接または逆方向反復配列、RNA二次構造および/または内部TATAボックス、χ部位、リボソームエントリー部位および/またはスプライシングドナー/アクセプター部位のような内部の不可解な調節要素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明で用いられる核酸分子またはベクターにおける相同配列の存在は、特にベクター産生段階中にその安定性に負の影響を与えることが予想される。組換えは相同配列の間に起こり、恐らく2つの相同配列の間に構成された部分が失われる可能性がある。本明細書で用いられる「相同配列」という用語は、少なくとも40、好都合には少なくとも45、好ましくは少なくとも50、更に好ましくは少なくとも55、または更に一層好ましくは少なくとも59の連続ヌクレオチドにわたって互いに高度の同一性を保持しているヌクレオチド配列を表す。高度の同一性は、75%または75%を上回り、好都合には80%または80%を上回り、望ましくは85%または85%を上回り、好ましくは90%または90%を上回り、更に好ましくは95% または95%を上回り、更に一層好ましくは97%または97%を上回る(例えば、100%の配列同一性)。2個のヌクレオチド配列の間の同一性率は、最適配列のために導入が必要なギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮すれば、配列によって共有される同一位置の数の関数である。ヌクレオチド配列間の同一性率を決定するには、GCG Wisconsinパッケージのような様々なコンピュータープログラムおよび数学的アルゴリズムが当該技術分野で利用可能である。
【0039】
2個の相同ヌクレオチド配列間の相同性は、好ましくは相同配列の少なくとも一方におけるコドンの使用を縮重して上記相同配列間の同一性率が75%未満まで減少するようにすることによって抑制される。これは、相同部分に存在する1以上の「天然」(例えば、HPV)コドンを同じアミノ酸をコードする1以上のコドンで置き換えることによって行うことができる。相同性は部分置換によって十分に減少させることができるので、総ての天然コドンを縮重させる必要はない。本発明で用いられる核酸分子またはベクターがヌクレオチドおよびアミノ酸配列が相対的に保存され(例えば、HPV-16およびHPV-18 E2ポリペプチドのような2以上のE2ポリペプチドをコードする配列)または共通部分を含む(例えば、59ヌクレオチドを共同して共有しているHPV-16 E1およびE2をコードする配列)2種類のパピローマウイルスポリペプチドをコードするときには、このような修飾は特に有用である。このような態様の代表例を配列番号:6に示し、E1およびE2をコードする配列のいずれにも存在する59ヌクレオチドの部分に対応する縮重配列の一例を提供する。
【0040】
コードされたE2ポリペプチドのレベルで翻訳する修飾は、E2ポリペプチドの1以上のアミノ酸残基の突然変異を生じる。好都合には、修飾E2ポリペプチドは、完全長アミノ酸配列または(例えば、長さが少なくとも9、20、50、100、200、300アミノ酸の)その断片にわたって対応する天然のポリペプチドと高度のアミノ酸配列同一性を保持し、75%または75%を上回り、好都合には80%または80%を上回り、望ましくは85%または85%を上回り、好ましくは90%または90%を上回り、更に好ましくは95% または95%を上回り、更に一層好ましくは97%または97%を上回る(例えば、100%の配列同一性)。2つのポリペプチド間の同一性率は、最適配列のために導入が必要なギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮すれば、配列によって共有される同一位置の数の関数である。アミノ酸配列間の同一性率を決定するには、例えば、NCBIで利用可能なW2H HUSARソフトウェアおよびBlastプログラム(例えば、Altschul et al, 1997,Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402; Altschul et al., 2005, FEBS J. 272, 5101-5109)のような様々なコンピュータープログラムおよび数学的アルゴリズムが当該技術分野で利用可能である。
【0041】
一態様では、本発明で用いられる核酸分子は、天然のE2ポリペプチドの生物活性の少なくとも1つを欠き、更に詳細にはウイルス複製および/または転写の活性化を欠いているE2ポリペプチドをコードするように修飾される。このような生物活性にとって決定的なアミノ酸は、構造および機能分析のようなごく普通の方法によって確認することができ、当業者であれば所定の生物活性を減少させまたは廃止することができる突然変異の種類を容易に決定することができる。E2の転写活性化および複製活性に関与している残基はN末端部分にあり、C末端部分はウイルスDNAおよび二量体化に関するE2結合部位の認識に関与していることは当該技術分野で周知である。本明細書で用いられるE2のN末端部分としては、イニシエーターMetから出発する最初の220個のアミノ酸残基が挙げられる。例えば、位置指定突然変異誘発またはPCR法によって始め、ウイルス複製を調節するE2N末端部分内の1以上のアミノ酸残基を欠失または置換して、E2複製機能を減少または廃止しパピローマウイルスゲノムの複製を欠くE2ポリペプチドを生成させることができる。あるいはまたは組み合わせて、転写活性化に関与するE2N末端部分内の1以上のアミノ酸残基を欠失または置換して、パピローマウイルスプロモーターから転写活性化するE2の能力を有意に減少させまたは廃止することができる。適当な欠損E2ポリペプチドの代表例は、Demeret et al. (1995,Nucleic Acids Res. 23, 4777-4784)、Sakai et al. (1996, J. Virol. 70, 1602-1611)、Brokaw et al. (1996, J. Virology 70, 23-29)およびFerguson et al. (1996, J. Virology 70, 4193-4199)のような当業者が利用可能な文献に記載されている。E2複製および転写活性化活性の減少または欠落は、当業者に知られている標準的方法を用いる適当な分析法で容易に決定することができる(Sakai et al., 1996, J. Virol. 70, 1602- 1611)。
【0042】
本発明で用いられる核酸によってコードされる好ましい複製欠損E2ポリペプチドはHPV-16に由来し、少なくとも39位のGlu残基(E39)が変更されており、例えば、Glu以外の任意のアミノ酸残基に置換されていることを除き配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含んでなる。転写活性化を欠くもう一つの好ましいE2ポリペプチドはHPV-16に由来し、少なくとも73位(I73)のIle残基が変更されており、例えば、Ile以外の任意のアミノ酸残基に置換されていることを除き配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含んでなる。複製および転写活性化を両方とも欠く更に一層好ましいE2ポリペプチドはHPV-16に由来し、少なくとも39位のGlu残基(E39)および73位(I73)のIle残基が変更されており、例えば、それぞれ39および73位のGluおよびIle以外の任意のアミノ酸残基に置換されていることを除き配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含んでなる。更に好ましくは、39位のGlu残基および/または73位のIle残基は、Ala残基で置換されている(E39Aおよび/またはI73A)。本発明に関連して、このような欠損E2ポリペプチドは任意のパピローマウイルスに由来する可能性があり、HPV-16 E2に関して記載された修飾を別のパピローマウイルス遺伝子型に由来するE2ポリペプチドに適合させることは熟練者が容易に行い得るものである(例えば、HPV-16 E2の39位および/または73位と同等の位置に配置されているアミノ酸残基は、配列比較によって確認し、標準的手法によって修飾することができる)。例示目的のために、これらの残基は、HPV-18 E2ではそれぞれ43位のGluおよび77位のIle、HPV-33およびHPV-52では39位のGluおよび73位のIleに対応する。
【0043】
もう一つの態様では、本発明で用いられる核酸分子は、E2のN末端、C末端またはNおよびC末端の両方における1以上の融合パートナーへのパピローマウイルスE2ポリペプチドの融合をコードするように修飾される。融合パートナーは、パピローマウイルスに由来しまたは由来しない可能性がある。融合は、遺伝学的手段、すなわち、E2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と融合パートナーをコードするヌクレオチド配列をイン・フレーム(in frame)で融合し、融合したコード配列の発現が単一ポリペプチドを生じるようにすることによって行うことができる。融合は直接的(すなわち、間に追加アミノ酸残基なしで)またはE2ポリペプチドを融合パートナーに結合させるリンカーペプチドを介するものであることができる。リンカーの存在は、融合タンパク質の正確な形成、折り畳みおよび/または機能化(functioning)を促進することがある。本発明による適当なリンカーは、2 - 30アミノ酸長であり、グリシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、アラニンおよび/またはプロリンのようなアミノ酸残基から構成されている(例えば、Wiederrecht et al, 1988, Cell 54, 841、Aumailly et al, 1990 FEBS Lett. 262, 82、およびDekker et al., 1993,Nature 362, 852を参照されたい)。
【0044】
適当な非パピローマウイルス融合パートナーとしては、カルレティキュリン(Cheng et al., 2001, J. Clin. Invest. 108, 669-678)、結核菌熱ショックタンパク質70 (HSP70)(Chen et al., 2000, Cancer Res. 60, 1035-1042)、ユビキチン(Rodriguez et al., 1997, J. Virol. 71, 8497-8503)および緑膿菌外毒素A(ETA(dIII))のトランスロケーションドメインのような細菌毒素(Hung et al., 2001 Cancer Res. 61, 3698-3703)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
適当なパピローマウイルス融合パートナーは、後期または初期の任意のパピローマウイルスポリペプチドまたはそれらの任意の断片であることができる。好ましい融合パートナーは、E1、E2、E4、E5、E6およびE7またはそれらの混合物からなる群から選択される初期HPVポリペプチドに由来する。E2ポリペプチドおよびパピローマウイルス融合パートナーは、HPV-16 E1およびE2ポリペプチドの融合のような同じパピローマウイルス遺伝子型に由来することがある。あるいは、E2ポリペプチドとパピローマウイルス融合パートナーは、異なるパピローマウイルス遺伝子型に由来することがあり、代表例はHPV-16 E2およびHPV-18 E2ポリペプチドの融合体である。
【0046】
上記定義の修飾とは独立してまたは共同して、本発明で用いられる核酸分子は、コードされたE2ポリペプチドの加工、安定性および/または溶解性に好都合な追加修飾、例えば、潜在的開裂部位の抑制、潜在的グリコリル化部位の抑制および/または発現する宿主細胞の表面でのコードされたE2ポリペプチドの提示を含んでなることもある。例えば、潜在的グリコリル化部位は、潜在的N-グリコシル化部位(例えば、Asn-Val-Ser-Valモティーフを含んでなる)を確認し、1以上のアミノ酸残基を異なる残基に置換して(例えば、Ser残基をGlyまたはAla残基で置換して)真核宿主細胞または生物で発現してグリコシル化することができないE2ポリペプチドを提供することによって抑制することができる。
【0047】
好ましい態様では、本発明で用いられる核酸分子は、膜によって提示されるE2ポリペプチドをコードし、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスII提示、従って宿主細胞または生物におけるその潜在的免疫原性を向上させるように修飾される。膜提示によってHPV-16E6およびE7ポリペプチドの治療効果を向上させることができることは、以前に示されている(例えば、WO99/03885号明細書を参照されたい)。典型的な核局在化シグナルは確認されていないが、パピローマウイルスE2ポリペプチドは核タンパク質である。膜提示は、E2ポリペプチドを分泌(すなわち、シグナルペプチド)および膜固着配列に融合させることによって行うことができる。このような配列は、当該技術分野で知られている。簡単に言えば、分泌配列は、一般に膜によって提示されるまたは分泌されるポリペプチドのN末端に存在し、小胞体(ER)への移動を開始する。それらは、15 - 35個の本質的に疎水性のアミノ酸を含んでなり、次いで特異的なERに配置されたエンドペプチダーゼによって除去され、成熟したポリペプチドを生じる。膜固定配列は通常は高度に疎水性であり、ポリペプチドを細胞膜に固定する働きをする(例えば、Branden and Tooze, 1991, 「タンパク質構造入門(Introduction to Protein Structure)」p. 202-214, NY Garlandを参照されたい)。
【0048】
本発明に関して用いることができる膜固定および/または分泌配列の選択は、広大である。それらは、狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質または麻疹ウイルスFタンパク質のような任意の膜固定および/または分泌ポリペプチド(例えば、細胞性またはウイルスポリペプチド)から得ることができ、または合成によるものであってもよい。分泌配列の好ましい挿入部位は、翻訳開始のコドンの下流のN末端であり、膜固定配列のそれは、例えば停止コドンの直ぐ上流のC末端である。更に、リンカーペプチドを用いて、分泌配列および/または膜固定配列をE2ポリペプチドに連結することができる。
【0049】
本発明で用いられる核酸によってコードされる膜をターゲットとするE2ポリペプチドは、添付の実施例の部分に示すように、狂犬病糖タンパク質の分泌および膜固着配列への融合によって好ましく修飾される。
【0050】
本発明で用いられる好ましいベクターは、
HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
HPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
HPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター
を包含する。
【0051】
特に好ましい態様によれば、E2ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を含んでなり、から本質的になり、あるいはからなる。参考として、配列番号:2のポリペプチドは、狂犬病糖タンパク質分泌(2位から23位まで)および膜固着配列(388位から453位まで)に融合した複製およびトランス活性化活性を欠いたHPV-16 E2ポリペプチド(24位から387位まで)(61位のGlu残基および95位のIle残基の天然のE2ポリペプチドのそれぞれ39位および73位におけるGluおよびIle残基に対応するAla残基による修飾)を含んでなる。
【0052】
本発明は、異なるパピローマウイルス遺伝子型に由来する少なくとも2個のE2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクターまたは感染性粒子、およびパピローマウイルス感染症、特にHR-HPVによる持続性感染症の治療を目的とする薬剤を調製するためのこのようなベクターまたは感染性粒子の使用をも包含する。好都合な態様では、「少なくとも2」とは、2、3または4であり、コードされたE2ポリペプチドのそれぞれは異なる遺伝子型のHR-HPVに由来する。独立してまたは共同して、E2ポリペプチドは、好ましくは上記のように修飾される(例えば、複製および/または転写活性化および/または膜提示の欠損)。少なくとも2個のE2ポリペプチドをコードする核酸分子は、独立した調節配列下に置くことができ、または互いに融合させて単一ポリペプチド鎖で発現させることができる。本明細書に記載の代表例としては、HPV-16およびHPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター並びにHPV-16、HPV-18、HPV-33およびHPV-52E2ポリペプチドをコードする独立した調節配列下に置かれた核酸分子を含んでなるベクターが挙げられる。本発明のまたは本発明で用いられるベクターがE2ポリペプチドをコードする2個以上の核酸分子を含んでなるときには、E2をコードするヌクレオチド配列は縮重して、互いに相同性率が75%未満を示すようにすることが推奨される。好ましくは、上記のE2をコードする核酸分子は、75%または75%を上回る同一性率を示す40以上の(例えば、50、55、59、70またはそれらを上回る)連続ヌクレオチドの部分を含まない。
【0053】
本発明の特異態様では、本明細書に記載の核酸分子、ベクターまたは感染性粒子を、1種類以上の追加のポリペプチドまたはこのような追加ポリペプチドをコードする1以上の核酸、ベクター、または感染性ウイルス粒子と組み合わせて用いることもできる。望ましくは、追加ポリペプチドは、上記活性剤によって提供される治療活性を強化することができる。このような追加ポリペプチドをコードする核酸は、本発明で用いられるベクターまたは本明細書に記載のものの1つのような独立したベクターに挿入することができ、その発現を本明細書に記載されているような適当な調節配列の制御下に置くことができる。追加ポリペプチドは、パピローマウイルス起源または非パピローマウイルス起源のものでよい。
【0054】
適当な非パピローマウイルスの追加ポリペプチドとしては、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-18、IL-21、IFNg)および自殺遺伝子産物(例えば、Caruso et al, 1993, Proc.Natl. Acad. Sci. USA90, 20 7024-7028に記載のHSV-1のチミジンキナーゼ、WO 99/54481号明細書に記載のFCU-1)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
適当なパピローマウイルス追加ポリペプチドとしては、E1、E2、E4、E5、E6およびE7、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される任意の初期HPVポリペプチド(または断片)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の一態様では、パピローマウイルス追加ポリペプチドは、上記核酸によってコードされるE2ポリペプチドと同じパピローマウイルス遺伝子型に由来することができる(例えば、HPV-16由来のE1およびE2ポリペプチド)。
【0057】
あるいは、本発明のもう一つの態様では、パピローマウイルス追加ポリペプチドは、上記核酸によってコードされるE2ポリペプチドとは異なるパピローマウイルス遺伝子型に由来するができる。好都合には、上記E2ポリペプチドはHPV-16に由来し、上記追加パピローマウイルスポリペプチドはHPV-18に由来する。
【0058】
パピローマウイルス追加ポリペプチドは天然のものまたは対応する天然配列と比較して修飾されたものであることができる。例えば、追加ポリペプチドは、抗原活性を保持したままその/それらのそれぞれの生物活性(例えば、酵素活性)を減少しまたは廃止するように修飾することができる。下記の修飾の具体例は、HPV-16パピローマウイルスポリペプチドに関して示しているが、熟練者であれば、これらの典型的な突然変異を他のパピローマウイルス遺伝子型の対応するポリペプチドに置き換えることができる。更に、パピローマウイルス追加ポリペプチドは、WO99/03885号明細書においても同様にE2に関して上記した細胞膜に提示されるように修飾することもできる。
【0059】
パピローマウイルス追加ポリペプチドの適当な例は、対応する天然のE1ポリペプチドと比較して1以上の突然変異を含んでなりウイルス複製の刺激を欠損した修飾E1ポリペプチドである。望ましくは、修飾E1ポリペプチドは、Yasugi et al. (1997, J. Virol 71, 5942-5951)によって報告されたHPV-16 E1の変異体W439R、Y412F、G482DおよびG496Rのような天然のE1ポリペプチドの412、439、482および/または496位における残基のいずれか1個の突然変異を含んでなり、特に好ましくは、482位のGly残基がAsp残基で置換されたことを除き天然のHPV-16 E1ポリペプチドのアミノ酸配列 を含んでなるG482D変異体である(例えば、配列番号:3に示される配列を有する修飾E1ポリペプチド)。もう一つの典型的な修飾E1ポリペプチドは、489位のGly残基Asp残基で置換したHPV-18 E1ポリペプチドを含んでなる。
【0060】
パピローマウイルス追加ポリペプチドのもう一つの適当な例は、非発癌性でありかつ細胞腫瘍抑制遺伝子産物p53に結合するように変更された修飾E6ポリペプチドである。パピローマウイルス追加ポリペプチドの更にもう一つの適当な例は、非発癌性でありかつ細胞腫瘍抑制遺伝子産物Rbに結合するように変更された修飾E7ポリペプチドである。このような非発癌性変異体は、例えばPim et al. (1994, Oncogene 9, 1869-1876)、Munger et al. (1989, EMBO J. 8, 4099-4105), Crook et al. (1991, Cell 67, 547-556)、Heck et al. (1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA89, 4442-4446)およびPhelps et al. (1992, J. Virol. 66, 2148-2427)に記載されている。好ましい非発癌性E6ポリペプチドはHPV-16に由来し、残基118 - 122(CPEEK)(+1は最初のMet残基から出発する天然のHPV-16E6ポリペプチドの最初のアミノ酸を表す)を欠損している。好ましい非発癌性E7ポリペプチドはHPV-16に由来し、残基21 - 26(DLYCYE)(+1は天然のHPV-16 E7ポリペプチドの最初のアミノ酸を表す)を欠損している。
【0061】
好ましくは、本発明で用いられるパピローマウイルス追加ポリペプチドは、独立してまたは共同して配列番号:3-5に示されるアミノ酸配列のいずれかを含んでなるポリペプチドからなる群から選択される。更に具体的には、配列番号:3は、複製活性(G482D)を欠いた膜によって提示されるHPV-16 E1ポリペプチドのアミノ酸配列を提供する。配列番号:4は、膜によって提示される非発癌HPV-16 E6ポリペプチドのアミノ酸配列を提供し、配列番号:5は、膜によって提示される非発癌HPV-16 E7ポリペプチドのアミノ酸配列を提供する。
【0062】
天然のもの(例えば、HPV-16またはHPV-18ゲノム)に関しては、E1をコードする核酸分子の3'末端はE2をコードする核酸分子の5'末端に59ヌクレオチドにわたって重複している。好ましい態様によれば、E2をコードする核酸分子に重複しているE1をコードする核酸分子は、重複しているE1-配列と75%未満の同一性率を示すように修飾される。望ましくは、修飾は、ヌクレオチドレベルのE1をコードする核酸分子において、コドン使用を縮重することによって行われ、アミノ酸レベルではサイレントであり、すなわち、このような修飾コードされたパピローマウイルスではE1ポリペプチドを翻訳しない。HPV-16E1をコードする核酸分子の3'末端にあり天然のものに関してHPV-16 E2をコードする核酸分子の5'部分と重複している59bp部分に導入することができる修飾の代表例を、配列番号:6に示す。
【0063】
本発明は、少なくともパピローマウイルスE1ポリペプチドをコードする核酸分子と少なくともパピローマウイルスE2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクターまたは感染性ウイルス粒子(例えば、本明細書に記載の持続性パピローマウイルス感染症の治療に用いる)であって、天然状態では上記E2をコードする核酸分子の5'部分と100%同一である上記E1をコードする核酸分子の3'部分が上記E2をコードする核酸分子の上記部分との同一性率が75%未満となるように修飾することを特徴とするものにも関する。もう一つの態様では、本発明は、少なくともパピローマウイルスE1ポリペプチドをコードする核酸分子と少なくともパピローマウイルスE2をコードする核酸分子を含んでなるベクターまたは感染性粒子であって、E1をコードする核酸分子とE2をコードする核酸分子 do not comprise a部分 of 同一性率が75%であるかまたは75%を上回る40以上(例えば、45、50、55、59、70)の連続ヌクレオチドの部分を含まないことを特徴とするものにも関する。
【0064】
この態様による好ましいベクターは、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなりかつ(ii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子をも含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iii) HPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iii) HPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iii) HPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(iii) HPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iv) HPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(ii) HPV-16 E1ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-16 E1ポリペプチドをコードする核酸分子、(iii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iv) HPV-18 E1ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(ii) HPV-16E6ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(ii) HPV-16E7ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-16 E1ポリペプチドをコードする核酸分子、(iii) HPV-16E6ポリペプチドをコードする核酸分子および(iv) HPV-16E7ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、および
HPV-16 E1、E2、E6およびE7ポリペプチドおよびHPV-18 E1、E2、E6およびE7ポリペプチドをコードする核酸分子
からなる群から選択されるベクターを包含する。
【0065】
望ましくは、コードされたE2ポリペプチドは、膜によって提示されかつ複製および転写活性化活性を欠いている。好ましくは、HPV-16 E2ポリペプチドは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を含んでなり、あるいはから本質的になり、あるいはからなり、および/またはHPV-18 E2ポリペプチドは、配列番号:29に示されるアミノ酸配列を含んでなり、あるいはから本質的になり、あるいはからなり、および/またはHPV-33E2ポリペプチドは、配列番号:30に示されるアミノ酸配列を含んでなり、あるいはから本質的になり、あるいはからなり、および/またはHPV-52 E2ポリペプチドは、配列番号:31に示されるアミノ酸配列を含んでなり、あるいはから本質的になり、あるいはからなる。
【0066】
独立してまたは共同して、コードされたE1ポリペプチドは、膜によって提示されかつ複製活性を欠いている。好ましくは、HPV-16 E1ポリペプチドは、配列番号:3に示されるアミノ酸配列を含んでなり、あるいはから本質的になり、あるいはからなり、および/またはHPV-18 E1ポリペプチドは、配列番号:32に示されるアミノ酸配列を含んでなり、あるいはから本質的になり、あるいはからなる。コードされたE6および/またはE7ポリペプチドは、膜によって提示されかつ非発癌性である。好ましくは、HPV-16E6ポリペプチドは、配列番号:4に示されるアミノ酸配列を含んでなり、あるいはから本質的になり、あるいはからなり、および/またはHPV-16 E7ポリペプチドは、配列番号:5に示されるアミノ酸配列を含んでなり、あるいはから本質的になり、あるいはからなる。
【0067】
更に好ましくは、HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:8に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、から本質的になり、またはからなり、および/またはHPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:33に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、から本質的になり、またはからなり、および/またはHPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:34または配列番号:35に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、から本質的になりまたはからなり、および/またはHPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:36または配列番号:37に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、から本質的になりまたはからなり、および/またはHPV-16 E1ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:7に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、から本質的になりまたはからなり(HPV-16 E2の重複部分との相同性を減少させる縮重配列)、および/またはHPV-18 E1ポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号:38に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、から本質的になりまたはからなる(HPV-16 E1をコードする配列との相同性を減少させる縮重配列)。
【0068】
E2ポリペプチドをコードする2個以上の核酸分子を含んでなるベクターに関する態様に関して本明細書で説明したように、E2をコードするヌクレオチド配列は、互いに、好ましくは完全長配列にわたって相同性率が75%未満となるように縮重することが推奨される。上記E2をコードする核酸分子は、同一性率が75%であるかまたは75%を上回る40以上(例えば、45、50、55、59、70またはそれ以上)の連続ヌクレオチドの部分を含まないことが好ましい。上記のヌクレオチド配列は、この態様を満たす。
【0069】
本発明のベクターまたは感染性ウイルス粒子で用いられるまたはに含まれる(複数の)核酸分子は、当該技術分野で利用可能な配列データーおよび本明細書で提供される配列情報を用いて生成させることができる。それは、HPVを含む細胞(例えば、CRL-1550の受託番号でATCCで利用可能なCaSki細胞)または上記のような任意のパピローマウイルス供給源から従来の分子生物学またはPCRの手法によって直接単離することができ、必要ならば、通常の突然変異誘発法により本明細書に記載の方法で更に修飾することができる(例えば、特定の宿主細胞での発現を最適化し、欠損変異体を生成するなど)。あるいは、本発明で用いられる(複数の)核酸分子は、自動工程による化学合成によって生成させることもできる(例えば、Edge, 1981, Nature 292, 756; Nambair et al, 1984, Science 223, 1299; Jay et al, 1984, J. Biol. Chem. 259, 6311に記載の重複する合成オリゴヌクレオチドから組み立て)。
【0070】
もう一つの態様では、本発明で用いられるまたは本発明のベクターまたは感染性ウイルス粒子に含まれる(1もしくは複数の)核酸分子は、宿主細胞または生物でコードされたポリペプチドの発現に適当な形態であり、これは、(1もしくは複数の)核酸分子が発現に必要な1以上の調節配列によって制御されていることを意味する。
【0071】
本明細書で用いられる「調節配列」という用語は、核酸またはその誘導体の1つ(すなわち、mRNA)の複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または宿主細胞への輸送など所定の宿主細胞における核酸分子を発現させ、寄与しまたは調節する任意の配列を表す。このような調節配列は、当該技術分野で周知である(例えば、Goeddel, 1990, 「遺伝子発現技術: 酵素学の方法(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology)」 185, Academic Press, San Diegoを参照されたい)。当業者であれば、調節配列の選択は、ベクターの種類、宿主細胞、所望な発現レベルなどのような因子によって変化し得ることが分かるであろう。本発明に関して、調節配列は、発現される核酸分子に操作可能に連結する。「操作可能に」とは、核酸分子が宿主細胞または生物においてその発現を行わせる方法で調節配列に連結することを意味する。
【0072】
プロモーターは特に重要であり、本発明は、多くの種類の宿主細胞での核酸分子の発現を指定する構成的プロモーターおよびある種の宿主細胞または特異的事象または外来因子に応答してのみ(例えば、温度、栄養添加剤、ホルモンまたは他のリガンドにより)発現を指定するプロモーターの使用を包含する。適当なプロモーターは文献に広汎に記載されており、RSV(ラウス肉腫ウイルス)、SV40(シミアンウイルス-40)、CMV(サイトメガロウイルス)およびMLP(主要後期プロモーター)のような更に特異的なウイルスプロモーターを引用することができる。ポックスウイルスベクターで用いられる好ましいプロモーターとしては、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11およびK1L、初期および後期ポックスウイルスプロモーターの間のキメラプロモーター、並びにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097)、Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているような合成プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
当業者であれば、核酸分子の発現を制御する調節配列は、転写の適正な開始、調節および/または終結(例えば、ポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば、核局在化シグナル配列)、プロセシング(例えば、スプライシングシグナル)、安定性(例えば、イントロンおよび非コード5'および3'配列)、および宿主細胞または生物への翻訳(例えば、3分されたリーダー配列、リボソーム結合部位、シャイン-ダルガーノ配列など)の追加要素を含んでなることもあることを理解されるであろう。
【0074】
本発明に関して、核酸分子の1以上のコピーは本発明で用いられる上記ベクターまたは感染性ウイルス粒子に含ませることができる。
【0075】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、染色体外(例えば、エピソーム)、マルチコピーおよび組込みベクター(すなわち、宿主染色体に組込まれる)などのウイルス並びに非ウイルス(例えば、プラスミドDNA)ベクターを定義する。本発明に関して特に重要なものは、遺伝子療法に用いるベクター(すなわち、核酸分子を宿主生物に送達することができる)並びに様々な発現系で用いられる発現ベクターである。ウイルスベクターに関しては、本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、完全なウイルスゲノム、その部分、または下記の修飾ウイルスゲノム、並びにそれから生成したウイルス粒子(例えば、感染性ウイルス粒子を産生するためのウイルスキャプシドにパッケージされたウイルスベクター)などのウイルス 起源の少なくとも1種類の要素を含んでなる任意の核酸分子を表す。
【0076】
適当な非ウイルス性ベクターとしては、pREP4、pCEP4(Invitrogene)、pCI(Promega)、pCDM8(Seed, 1987, Nature 329, 840)、pVAXおよびpgWiz(Gene Therapy System Inc; Himoudi et al, 2002, J. Virol. 76, 12735-12746)のようなプラスミドが挙げられる。
【0077】
ウイルスベクターは様々な種類のウイルス、特に レトロウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルスおよび泡沫状ウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来することがある。ウイルスベクターは複製コンピテントであることができ、または遺伝学的に無能化して複製欠損または複製障害となるようにすることができる。本明細書で用いられる「複製コンピテント」という用語は、複製選択的および条件的に複製するウイルスベクターであって、遺伝子工学処理により特異的宿主細胞(例えば、腫瘍細胞)に一層良好なまたは選択的に複製するものを包含する。
【0078】
一態様では、本発明で用いられるベクターは、アデノウイルスベクターである(総説については、「遺伝子療法のためのアデノウイルスベクター(Adenoviral vectors for gene therapy)」, 2002, D. CurielおよびJ. Douglas監修, Academic Pressを参照されたい)。それは様々なヒトまたは動物供給源に由来する可能性があり、アデノウイルス血清型1 - 51由来の任意の血清型を用いることができる。特に好ましいものは、ヒトアデノウイルス2 (Ad2)、5 (Ad5)、6 (Ad6)、11 (Ad11)、24 (Ad24)および35 (Ad35)である。このようなアデノウイルスは、the American Type Culture Collection (ATCC, Rockville, Md.)から入手可能であり、それらの配列、組織および産生方法を記載している多数の公表文献の主題であり、熟練者であればそれらを応用することができる(例えば、米国特許第6,133,028号明細書、米国特許第6,110,735号明細書、WO 02/40665号明細書、WO 00/50573号明細書、欧州特許第1016711号明細書、Vogels et al., 2003, J. Virol. 77, 8263-8271を参照されたい)。
【0079】
本発明で用いられるアデノウイルスベクターは、複製コンピテントであることができる。多数の複製コンピテントアデノウイルスベクターの例は、当業者であれば容易に利用可能である(Hernandez-Alcoceba et al., 2000, Human Gene Ther. 11, 2009-2024; Nemunaitis et al., 2001, Gene Ther. 8, 746-759; Alemany et al., 2000, Nature 30 Biotechnology 18, 723-727)。例えば、それらは、E1A CR2ドメインにおける欠失(例えば、WO00/24408号明細書)および/または天然のE1および/または E4プロモーターの組織、腫瘍または細胞状態特異的プロモーターに置き換えることによって(例えば、米国特許第5,998,205号明細書、WO99/25860号明細書、米国特許第5,698,443号明細書、WO00/46355号明細書、WO00/15820号明細書およびWO01/36650号明細書)野生型アデノウイルスゲノムから遺伝子工学処理を行うことができる。
【0080】
あるいは、本発明で用いられるアデノウイルスベクターは、複製欠損である(例えば、WO94/28152号明細書、Lusky et al, 1998, J. Virol 72, 2022-2032を参照されたい)。好ましい複製欠損アデノウイルスベクターは、E1欠損であり(例えば、米国特許第6,136,594号明細書および米国特許第6,013,638号明細書)、E1欠失は約459 - 3328位または約459 - 3510位に伸張している(受託番号M 73260でGeneBankにおよびChroboczek et al., 1992, Virol. 186, 280-285に開示されているヒトアデノウイルス5型の配列に関して)。クローニング能力は、(例えば、非本質的E3領域または他の本質的E2, E4領域における)アデノウイルスゲノムの追加部分を欠失することによって更に向上させることができる。本発明で用いられる核酸分子の挿入は、Chartier et al. (1996, J. Virol. 70, 4805-4810)に記載されているようにアデノウイルスゲノムの任意の位置における相同組換えによって行うことができる。好ましくは、それは、E1領域の代わりに挿入される。それは、問題の領域の天然の転写方向に対してセンスまたはアンチセンス配向で配置することができる。
【0081】
もう一つの好ましい態様では、本発明で用いられるベクターはポックスウイルスベクターである(例えば、Cox et al. 「ヒト遺伝子療法におけるウイルス(Viruses in Human Gene Therapy」J. M. Hos監修, Carolina Academic Pressを参照されたい)。それは、ポックスウイルス科の任意の一員、特にカナリヤポックス(例えば、WO95/27780号明細書に記載のALVAC)、トリポックス(例えば、Paoletti et al., 1995, Dev. Biol. Stand. 84, 159-163に記載のTROVAC)またはワクシニアウイルスから得ることができ、後者が好ましい。適当なワクシニアウイルスとしては、コペンハーゲン株(Goebel et al., 1990, Virol. 179, 247-266および517-563; Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)、ワイス株、NYVAC(WO92/15672号明細書およびTartaglia et al., 1992, Virology 188, 217-232)、および高度に減衰した修飾Ankara (MVA)株(Mayr et al., 1975, Infection 3, 6-16)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
ポックスウイルスゲノムにおける発現に必要な核酸分子および関連した調節要素を挿入するための基本的手法は、当業者が入手し得る多数の文献に記載されている(Paul et al., 2002, Cancer Gene Ther. 9, 470-477; Piccini et al., 1987, Methods of Enzymology 153, 545-563; 米国特許第4,769,330号明細書; 米国特許第4,772,848号明細書; 米国特許第4,603,112号明細書; 米国特許第5,100,587号明細書および米国特許第5,179,993号明細書)。通常は、ウイルスゲノムおよび挿入する核酸を有するプラスミドの両方に存在する重複配列間の(すなわち、所望な挿入部位に隣接する)相同組換えによって進行する。本発明で用いられる核酸分子は、好ましくは、ポックスウイルスゲノムの非本質的座に挿入して、組換えポックスウイルスが生存可能でありかつ感染性を有したままであるようにする。非本質的領域は、非コード遺伝子間領域であるか、または不活性化または欠失がウイルス増殖、複製または感染を余り損なわない任意の遺伝子である。欠損機能が、例えば、ポックスウイルスゲノムで欠失した補完配列に対応するものを有するヘルパー%細胞系を用いることによってウイルス粒子の産生中にイン・トランスで供給される場合には、本質的ウイルス座における挿入を考えることもできる。
【0083】
コペンハーゲンワクシニアウイルスを用いるときには、核酸分子はチミジンキナーゼ遺伝子(tk)に好ましく挿入される(Hruby et al., 1983, Proc.Natl. Acad. Sci USA 80, 3411-3415; Weir et al., 1983, J. Virol. 46, 530-537)。しかしながら、例えば、ヘマグルチニン遺伝子(Guo et al., 1989, J. Virol. 63, 4189-4198)、K1L座、u遺伝子(Zhou et al., 1990, J. Gen. Virol. 71, 2185-2190)または自発的または遺伝子工学処理された様々な欠失が文献に記載されているワクシニアウイルスゲノム左末端の他の挿入部位も適当である(Altenburger et al., 1989, Archives Virol. 105, 15-27; Moss et al. 1981, J. Virol. 40, 387-395 ; Panicali et al., 1981, J. Virol. 37, 1000-1010; Perkus et al, 1989, J. Virol. 63, 3829-3836 ; Perkus et al, 1990, Virol. 179, 276-286 ; Perkus et al, 1991, Virol. 180, 406-410)。
【0084】
MVAを用いるときには、核酸分子は、MVAゲノムに存在する同定された欠失I - VIIのいずれか1つ(Antoine et al., 1998, Virology 244, 365-396)並びにD4R座に挿入することができるが、欠失IIまたはIIIにおける挿入が好ましい(Meyer et al., 1991, J. Gen. Virol. 72, 1031-1038; Sutter et al., 1994, Vaccine 12, 1032-1040)。
【0085】
トリポックスウイルスを用いるときには、チミジンキナーゼ遺伝子内の挿入が考えられるが、核酸分子は好ましくはORF 7および9の間にある遺伝子間領域に導入される(例えば、欧州特許第314 569号明細書および米国特許第5,180,675号明細書を参照されたい)。
【0086】
好ましくは、本発明のまたは本発明による使用におけるベクターは、ワクシニアウイルスベクターであり、特に好ましくはMVAベクターである。更に好ましくは、(1もしくは複数の)核酸分子は、欠失IIIに、特に上記核酸分子が同じプロモーターによって制御されているときには最終的には逆方向で挿入される。E2および/またはE7をコードする(1もしくは複数の)核酸分子はワクシニアH5Rプロモーター下に置かれ、E1および/またはE6をコードする(1もしくは複数の)核酸分子がp7.5Kプロモーターの制御下に置かれるのが好ましい。
【0087】
本発明は、脂質またはポリマーに複合体形成してリポソーム、リポプレックスまたはナノ粒子のような粒状構造体を形成するベクターの使用も包含する。このような手法は、当該技術分野で利用可能である(例えば、Arangoa et al., 2003, Gene Ther. 10:5-14; E1iaz et al., 2002, Gene Ther. 9, 1230-1237およびBetageri et al., 1993, 「リポソーム薬剤送達系(Liposome drug delivery systems)」, Technomic Publishing Company, Incを参照されたい)。
【0088】
本発明は、上記核酸分子またはベクターを含んでなる感染性ウイルス粒子、および本明細書に記載のそれらの使用にも関する。
【0089】
典型的には、このようなウイルス粒子は、適当な条件下で当該技術分野で周知の方法を用いて培養された適当な細胞系で産生される。感染性ウイルス粒子の産生について知られている様々な方法の詳細な説明は、ここでは行わないことにする。
【0090】
ウイルスベクターが欠損を有するときには、感染性粒子は通常は補完細胞系またはヘルパーウイルスであって、非機能ウイルス遺伝子をイン・トランスで供給するものを用いることによって産生される。例えば、E1欠失アデノウイルスベクターを補完するのに適当な細胞系としては、293 細胞(Graham et al., 1997, J. Gen. Virol. 36, 59-72)、並びにPER-C6 細胞(Fallaux et al., 1998, Human Gene Ther. 9, 1909-1917)およびPER-C6誘導体が挙げられる。ポックスウイルスベクターの増殖に適当な細胞はトリ細胞であり、最も好ましくは受精卵から得たニワトリ胚から調製した一次ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)である。プロデューサー細胞は、従来の醗酵バイオリアクター、フラスコおよびペトリ皿で、適当な温度、pHおよび酸素含量条件にて培養することができる。
【0091】
感染性ウイルス粒子は、培養上清またはリーシス後の細胞から回収することができる。それらは、標準的方法(例えば、WO96/27677号明細書、WO98/00524号明細書、WO98/22588号明細書、WO98/26048号明細書、WO00/40702号明細書、欧州特許第1016700号明細書およびWO00/50573号明細書に記載のクロマトグラフィー、超遠心分離)によって更に精製することができる。
【0092】
本発明は、特定のターゲット細胞を優先的にターゲットとするように修飾された核酸分子、ベクターまたはウイルス粒子の使用も包含する(例えば、Wickam et al., 1997, J. Virol. 71, 8221-8229; Arnberg et al., 1997, Virol. 227, 239-244; Michael et al., 1995, Gene Therapy 2, 660-668; WO94/10323; WO02/96939号明細書および欧州特許第1 146 125号明細書を参照されたい)。ターゲッティングしたベクターおよびウイルス粒子の特徴は、それらの表面に細胞特異的マーカー(例えば、HPV感染細胞)、組織特異的マーカー(例えば、上皮細胞に特異的なマーカー)、並びにウイルス(例えば、HPV)抗原のような細胞性の表面が露出した成分を認識して結合することができるリガンドが存在することである。適当なリガンドの例としては、HPV抗原ドメインに指定された抗体またはその断片が挙げられる。細胞ターゲッティングは、ウイルス(例えば、アデノウイルス繊維、ペントン、pIXまたはワクシニアpl4遺伝子産物)の表面に存在するポリペプチドに遺伝子操作によりリガンドを挿入することによって行うことができる。
【0093】
本発明は、本明細書で定義された方法で使用するための上記核酸分子、ベクターまたは感染性ウイルス粒子を含んでなる宿主細胞にも関する。
【0094】
本発明で用いられる核酸分子、ベクターおよび感染性ウイルス粒子は、当該技術分野で知られている任意の方法によって宿主細胞に導入することができる。このような方法としては、マイクロ注射(Capechi et al, 1980, Cell 22, 479-15 488)、CaPCVによるトランスフェクション(Chen and Okayama, 1987, Mol. Cell Biol. 7, 2745-2752)、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、電気穿孔(Chu et al., 1987, Nucleic Acid Res. 15, 1311-1326)、リポフェクション/リポソーム融合(Feigner et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 7413-7417)、粒子衝撃(Yang et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 9568-9572)、遺伝子ガン、形質導入、ウイルス感染、並びに様々な手段による宿主生物への直接投与が挙げられるが、これらに限定されない。更に、上記のように、それらをポリカチオン性ポリマー(例えば、キトサン、ポリメタクリレート、PEIなど)およびカチオン性脂質(例えば、DC-Chol/DOPE, Promega社から発売されているトランスフェクタムリポフェクチン)のようなトランスフェクション試薬と共に用いて宿主細胞または生物への導入を促進することができる。
【0095】
本発明のもう一つの態様では、上記核酸分子、ベクターまたは感染性ウイルス粒子 (本明細書では「活性剤」とも表す)、またはそれらの任意の組合せが組成物に含まれている。このような組合せとしては、異なる遺伝子型のE2ポリペプチドをコードするベクターまたはウイルス粒子が挙げられる。
【0096】
好都合には、組成物は、治療上有効量の活性剤、薬学上許容可能なビヒクルをも含んでなる医薬組成物である。本明細書で用いられる「治療上有効量」とは、通常は治療が望まれる疾患または疾病に関連した1以上の症状の緩和に十分な用量である。例えば、治療上有効量は、免疫応答または免疫系の活性化を誘導して抗HPV応答を展開するのに必要な量とすることができる。本明細書で用いられる「薬学上許容可能なビヒクル」とは、任意のおよび総てのキャリヤー、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌薬、および吸収遅延剤など、医薬投与に適合するものを包含することを指している。
【0097】
望ましくは、本発明で用いられる組成物は、ヒトまたは動物での使用を目的として処方される。それは、好ましくは等張、低張または弱高張希釈剤に含まれ、イオン強度は比較的低い。適当な希釈剤の典型例としては、滅菌水、生理塩水(例えば、塩化ナトリウム)リンゲル溶液、グルコース、トレハロースまたはサッカロース溶液、ハンク溶液、および他の生理学的にバランスのとれた水性塩溶液が挙げられる(例えば、Remington著:「薬学の科学と実際(The Science and Practice of Pharmacy)」, A. Gennaro, Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい)。更に、組成物は、生理的または弱塩基性pH(例えば、約pH 7 - 約pH 9)で緩衝させることができる。適当な緩衝剤としては、リン酸緩衝剤(例えば、PBS)、重炭酸塩緩衝剤およびTris-HCl緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本発明に特に適合する処方物としては、
o 1Mサッカロース、150 mM NaCl、1mM MgCl2、54 mg/1 Tween 80、10 mM Tris- HCl pH 8.5(特に、活性剤がアデノウイルスベクターであるとき)、
o 10 mg/mlマンニトール、1 mg/ml HSA、20 mM Tris, pH 7.2、および150 mM NaCl、および
o 生理食塩水
が挙げられる。
【0098】
このような処方物は、凍結(例えば、-70℃、-20℃)、冷凍(例えば、4℃)または周囲温度で本発明で用いられる組成物の安定性の保存に特に適している。本発明で用いられる組成物は、固形形態で処方することもできる。固形(例えば、乾燥粉末状または凍結乾燥)組成物は、真空乾燥および凍結乾燥などの工程によって得ることができる。それらは、通常は使用前に適当なビヒクルで再構成される。
【0099】
組成物は、例えば、処方物のpH、浸透性、粘性、透明性、色、無菌性、安定性、溶解速度を変更または維持し、ヒトまたは動物の生体への放出または吸収を変更または維持し、粘膜バリヤーを通る輸送または特定器官への浸透を促進するなどの所望な薬学的または薬学動態特性を提供するための1以上の 薬学上許容可能な賦形剤を含むこともある。例えば、膣投与に適する組成物は、最終的に粘膜の細孔径を増加するのに有用な1以上の吸収エンハンサーを含むことができる。
【0100】
更に、本発明で用いられる組成物は、ヒトにおける全身または粘膜投与に適した1以上のアジュバントを含んでなることがある。好ましくは、アジュバントは活性剤に対する免疫、特にTLR-7、TLR-8およびTLR-9のようなトール様受容体(TLR)を介するT細胞性免疫を刺激することができる。有用なアジュバントの代表例としては、ミョウバン、フロイントの完全および不完全アジュバント(IFA)のような無機油エマルション、リポポリサッカリドまたはその誘導体(Ribi et al, 1986,「細菌外毒素の免疫学および免疫薬理学(Immunology and Immunopharmacology of Bacterial Endotoxins)」, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)、QS21のようなサポニン(Sumino et al., 1998, J. Virol. 72, 4931-4939; WO 98/56415号明細書)、Imiquimodのようなイミダゾキノリン化合物(Suader, 2000, J. Am Acad Dermatol. 43, S6-S11)、lH-イミダゾ(4, 5-c)キノロン-4-アミン誘導体(Aldara商品名)および関連化合物S-27609(Smorlesi, 2005, Gene Ther. 12, 1324-1332)、CpGのようなシトシンリン酸グアノシンオリゴデオキシヌクレオチド(Chu et al., 1997, J. Exp. Med. 186:1623; Tritel et al., 2003, J. Immunol. 171:2358-2547)、およびIC-31のようなカチオン性ペプチド(Kritsch et al., 2005, J. Chromatogr Anal. Technol Biomed Life Sci 822, 263-270)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明で用いられる組成物は、全身、局所および粘膜投与などの様々な投与様式によって投与することができる。全身投与は、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、血管内、動脈内注射のような任意の手段によって行うことができる。注射は、従来の注射器および針または当該技術分野で利用可能な任意の他の装置を用いて行うことができる。粘膜投与は、口腔、鼻内、気管内、肺内、膣内または直腸内経路によって行うことができる。局所投与は、経皮手段(例えば、パッチなど)を用いて行うことができる。本発明で用いられる組成物は、好ましくは注射に適した形態に処方され、筋肉内または皮下投与が好ましい。
【0102】
適当な投薬量は、様々なパラメーター、特に投与様式、用いる活性剤、宿主生物の年齢、健康および体重、同時に行う治療の種類、および/または治療の頻度によって適合させることができる。治療に適当な投薬量の決定に必要な計算は、関連状況を考慮して実施者によって日常的に更に改良される。一般的指針としては、アデノウイルス粒子についての適当な投薬量は約105 - 約1013 iu(感染単位)、望ましくは約107 - 約1012 iu、および好ましくは約108 - 約1011 iuの範囲である。MVA粒子について適当な投薬量は、約104 - 約1010 pfu(プラーク形成単位)であり、望ましくは約105 - 約109 pfuであり、好ましくは約106 - 約108 pfuの範囲である。ベクタープラスミドは、10 μg - 20 mg、好ましくは100 μg - 2 mgの用量で投与することができる。
【0103】
更に、投与は、数時間、数日間および/または数週間にわたる標準的プロトコル、投薬量および養生法に準じて単一用量あるいは複数用量で行うことができる。更に、投与は、ボーラス注射または連続輸液によることができる。例えば、宿主生物は、上記核酸分子、ベクター、感染性粒子または組成物の少なくとも2回(例えば、2 - 10回)の投与により治療することができる。好ましくは、最初のシリーズの投与は、数日から4週間の期間内に連続して行った後、二回目のシリーズの投与(例えば、1または2回の投与)を、最初のシリーズの最終投与の1-6ヶ月以内に行う。第二のシリーズの投与のそれぞれの時間間隔は、数日から4週間とすることができる。好ましい態様では、最初のシリーズの投与は1週間間隔で3回の連続投与を含んでなり、第二のシリーズは、最初のシリーズ後の4-6ヶ月以内の1回の投与を含んでなる。一般的指針として、MVA感染性粒子を本発明に準じて用いるときには、投与は好ましくは106 - 5 x 108 pfuのMVA粒子の用量を用いる皮下経路による。
【0104】
上記のように、本明細書に記載の核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物、またはそれらの組合せは、好ましくは宿主生物(患者)を少なくとも1種類のパピローマウイルスに暴露した後であってパピローマウイルス関連病巣の検出/出現前に投与される。換言すれば、HPV感染症を有するが腫瘍形成にまで進行していない宿主生物は、腫瘍形成および最終的には癌へ進行する機会を防止しまたは減少させるための本発明による使用の適当な候補である。
【0105】
「暴露」とは、宿主生物と感染の可能性がある少なくとも1種類のパピローマウイルスとの遭遇を表す。多数の診断方法が現在では当該技術分野で利用可能であり、パピローマウイルス感染症を診断することができる。例えば、生物学的試料をパピローマウイルス感染症の危険性のある宿主生物から集めて、パピローマウイルス、ウイルス核酸(例えば、DNAまたはmRNA)および/またはウイルス抗原の存在について分析することができる。このような方法としては、PCR、イン・シテュー・ハイブリダイゼーション、免疫蛍光、ELISAが挙げられるが、これらに限定されず、多数の診断試験が現在利用可能である。適当な試験の代表例としては、LiPAシステム(WO99/14377号明細書; Labo Biomedical製品,オランダ)、Hybrid Capture II(登録商標)試験(HCII; Digene Corp, USAは13 HR- HPVについてのDNA検出を可能にする)、Linear Array(登録商標)試験(Rocheは37 HPV遺伝子型検査を可能にする)、Thin Prep System(Cytyc Corporate; Marlborough, MA)、PreTect-HPV Proofer(登録商標)(NorChip AS, NorwayはHPV-16、HPV-18、HPV-31、HPV-33およびHPV-45についてのE6/E7 mRNA検出を可能にする)、PCR/RT-PCRシステム、およびPretet et al. (2004, J. Clin. Virol. 31, 140-147)またはMonnier-Benoit et al.(2006, J. Clin. Virol. 31, 140-147)に記載のリアルタイムPCRが挙げられるが、これらに限定されない。適当なプライマーは、当業者に知られているかまたは検出したパピローマウイルスのヌクレオチド配列に基づいて容易に合成することができる。
【0106】
本明細書で用いられる「パピローマウイルス関連病巣」とは、パピローマウイルスの感染によって引き起こされる任意の疾患または疾病を表す。この用語は、前癌並びに悪性病巣を包含する。前癌病巣の代表例としては、CIN、外陰上皮内新生腫瘍(VIN)、肛門上皮内腫瘍(AIN)、陰茎上皮内腫瘍(PIN)、および膣上皮内腫瘍(VaIN)のような様々な組織で検出することができる低、中または高悪性度の上皮内腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。悪性病巣の代表例としては、頚部癌、肛門癌、膣癌、陰茎癌および口腔癌が挙げられるが、これらに限定されない。パピローマウイルスに関連した前癌および悪性病巣は、直接検診(例えば、最終的に酢酸投与後のコルポスコピー)によって可視化し、または臨床医が一般に行っている方法(例えば、パパニコラウスミアスクリーニング、細胞学試料から異常細胞の検出)によって診断することができる。例えば、コルポスコピーによって可視化した好酸球領域または病巣の局所生験材料を集めて、形態学的異常性(例えば、上皮過形成、顕著な核異常など)を検査することができる。本発明に関連して、パピローマウイルス関連病巣は、ASCUS(良・悪性不明の異型扁平上皮細胞)のような中等度異常を包含しない。
【0107】
好ましい態様によれば、本明細書に記載の核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物、またはそれらの組合せは、少なくとも1種類のパピローマウイルス、特にHR-HPV、特に好ましくはHPV-16、HPV-18、HPV-33またはHPV-52、またはそれらの任意の組合せ(例えば、HPV-16とHPV-18の両方)によって引き起こされる持続性感染症の治療に用いられる。本発明に関連して、E2ポリペプチドは感染性パピローマウイルスまたは感染性パピローマウイルスと交差反応するパピローマウイルスに由来することがある。
【0108】
様々なHR-HPVのE2ポリペプチド間でアミノ酸配列が保存されるため、交差反応性は特にHPV16とHPV31、HPV33、HPV35、HPV52およびHPV58との間で期待された。一態様では、本発明は、核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子またはHPV-16由来のE2ポリペプチドをコードする組成物を用いて、HPV16、HPV31、HPV33、HPV35、HPV52およびHPV58の少なくとも1つによって引き起こされる感染症に罹っている患者を治療する。
【0109】
同様に、交差反応性は、HPV-18とHPV-39、HPV-45、HPV-51、HPV-56、HPV-59、HPV-68、HPV-70,およびHPV-85との間に期待することができる。もう一つの態様では、本発明は、核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子またはHPV-18に由来するE2ポリペプチドをコードする組成物を用いて、HPV-18、HPV-39、HPV-45、HPV-51、HPV-56、HPV-59、HPV-68、HPV-70およびHPV-85の少なくとも1つによって引き起こされる感染症に罹っている患者を治療する。
【0110】
本明細書で用いられる「持続性パピローマウイルス感染症」とは、パピローマウイルスに暴露した後に自発的ウイルス根絶を達成したことのない宿主生物におけるパピローマウイルス感染症の無症候期に対応する。臨床的徴候(例えば、前癌および/または悪性パピローマウイルス関連病巣)は見られないが、パピローマウイルスまたはその要素の少なくとも1つ(例えば、核酸、抗原など)が、数ヶ月、例えば、少なくとも6ヶ月、好都合には少なくとも8ヶ月、好ましくは少なくとも10ヶ月、更に好ましくは少なくとも12ヶ月だけ間隔を置いた2回の連続試験で宿主生物に検出されるとき、持続性パピローマウイルス感染症が確立される。無症候期は、正常な細胞学(ASCUSのような中等度異常は許容される)を特徴とする。例えば、パプ塗抹標本は正常であるが約6ヶ月間隔のHCII試験が陽性の患者では、持続性パピローマウイルス感染症が確立されている。
【0111】
一態様では、上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物を本明細書に記載の様式に準じて用い、このような活性剤を用いないのと比較して治療を受ける宿主生物を誘導または活性化する。
【0112】
誘導または活性化した免疫応答は、特異的および/または非特異的であることができかつ体液性および/または細胞性であることができる。体液性応答としては少なくとも1個のパピローマウイルスポリペプチドに対する抗体産生が挙げられ、細胞性応答としては Tヘルパー細胞および/またはCTL応答および/またはサイトカイン産生の刺激が挙げられる。好ましくは、誘導または活性化した免疫応答は、少なくとも1種類の感染性パピローマウイルスに対して抗ウイルス応答を提供するのに有効である。
【0113】
治療した宿主生物における免疫応答を誘導または活性化する上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物の能力を、当該技術分野で標準的な様々な分析法によってイン・ビトロまたはイン・ビボで評価することができる(免疫応答の開始および活性化の評価に利用可能な手法の一般的説明については、例えば、Coligan et al., 1992 and 1994,「免疫学の最新のプロトコル(Current Protocols in Immunology)」; J Wiley & Sons Inc, National Institute of Healthを参照されたい)。細胞性免疫の測定は、CD4+およびCD8+ T細胞由来などの活性化エフェクター細胞によって分泌されるサイトカインプロフィールの測定(例えば、ELIspotによるIL-10またはIFNg産生細胞の定量)、免疫エフェクター細胞の活性化状態の測定(例えば、古典的[3H]チミジン摂取によるT細胞増殖分析)、感受性被験者における抗原特異的Tリンパ球の分析(例えば、細胞毒性分析法におけるペプチド特異的リーシス)によって行うことができる。細胞性応答を刺激する能力は、例えば、同系マウス(例えば、H2Db)またはトランスジェニックマウス(例えば、HLA A2およびHLA B7)でELISPOT、四量体に基づく分析法またはT細胞性免疫の分析のための他の標準的手法によって評価することもできる。体液性応答は、抗体結合および/または競合分析法によって測定することができる(例えば、Harlow, 1989, 「抗体(Antibodies)」, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい)。例えば、免疫学的ツール、例えば、治療を行った宿主生物で抗E2抗体を検出するためのELISAを開発することができる。
【0114】
もう一つの態様では、上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物を本明細書に記載の様式に準じて用いて、このような活性化を用いないのと比較して、感染性パピローマウイルスの少なくとも1種類に対する抗ウイルス応答を提供する。
【0115】
本明細書で用いられる「抗ウイルス応答」とは、治療した生物における通常はパピローマウイルス感染症に関連した徴候の減少または除去を表す。例えば、抗ウイルス応答は、ウイルス感染症を制御し、少なくとも1種類の感染性パピローマウイルスを減少させまたは取り除き、および/または感染細胞またはパピローマウイルス遺伝子配列を発現するもの(特に、潜在的発癌E6およびE7遺伝子)を減少させまたは取り除く上記活性剤の能力によって確かめることができる。これは、使用前と比較して処理を行う宿主生物から集めた生物学的試料におけるパピローマウイルス感染症を示すマーカー、例えば、パピローマウイルス、ウイルス核酸および/またはウイルス抗原の検出可能なレベルを有意に減少させまたは欠くことによって評価することができる。減少または除去は、本発明による使用の停止後の時点で測定したマーカーのレベルを未処理感染症を表す使用前に測定したマーカーのレベルと比較することによって示される。好ましい態様では、抗ウイルス応答は、本発明による使用の停止後に数ヶ月間治療を行う宿主生物から集めた生物学的試料で測定したパピローマウイルス、ウイルス核酸および/または抗原が検出されないようにする。
【0116】
抗ウイルス応答は、パピローマウイルスに感染した生物で典型的に展開する病巣の出現、大きさおよび/または重篤度を有意に減少させる上記活性剤の能力によっても確かめられる。本明細書で用いられる「減少させる」とは、本明細書で定義されるパピローマウイルス関連病巣の出現、大きさおよび/または重篤度の展開を予防し、先送りし、妨げ、遅くし、遅延させおよび/または延期させることを意味する。パピローマウイルス関連病巣の出現、大きさおよび/または重篤度を減少させる上記活性剤の能力は、治療した宿主生物の定期的追跡調査によって評価することができる。好ましくは、減少は、治療した宿主生物が does not develop for本発明による使用を終了した後少なくとも1年間、好都合には少なくとも2年間、好ましくは少なくとも3年間、更に好ましくは少なくとも5年間、パピローマウイルス関連病巣(例えば、組織学的に確認されたCIN病巣)を全く展開しないようにする。更に好ましくは、本発明による使用によって、治療した宿主生物における除去手続き(例えば、円錐切除)の必要を遅らせまたは除くことができる。
【0117】
一般的には、宿主生物における活性剤の最後の投与と抗ウイルス応答の検出とを引き離す期間は、パピローマウイルス感染症の履歴、使用様式および/または治療を行う宿主生物によって変化する可能性がある。好ましくは、期間は、3ヶ月-数年、特に好ましくは少なくとも3ヶ月、好都合には少なくとも4ヶ月、望ましくは少なくとも5ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月更に好ましくは少なくとも1年の問題である。例えば、Digen HCIIなどによって頚部試料で検出されるHPV DNAについて治療される前に陽性の宿主生物が上記活性剤を最後に投与した後少なくとも6ヶ月間同じパピローマウイルスについて陰性であることが検出されているときには、抗ウイルス応答が確かめられる。
【0118】
本発明は、上記宿主生物における少なくとも1種類の感染性パピローマウイルスに対する免疫応答を誘導しまたは活性化しまたは広げる方法であって、上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物の治療上有効量を上記生物に投与して上記免疫応答を誘導しまたは活性化しまたは広げることを含んでなり、上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物をパピローマウイルスへ暴露した後であって、パピローマウイルス関連病巣の検出/出現前に投与することを特徴とする方法にも関する。好ましくは、誘導または活性化した免疫応答は、上記で定義したように、少なくとも1種類の感染性パピローマウイルスに対する抗ウイルス応答を提供する。
【0119】
一態様では、本発明による方法または使用は、1以上の従来の治療様式と共に行うことができる。多数の治療方法は、宿主生物に広域介入(broader based intervention)を提供する。それらの投与は、本発明で用いられる核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物より先に、と同時にまたはの後に行うことができる。
【0120】
もう一つの態様では、本発明による方法または使用は、1以上のプライマーおよび1以上ブースターの連続投与を含んでなるプライム・ブースト治療様式によって行うことができる。典型的には、プライマーおよびブースターは、少なくとも1個の免疫原性ドメインを共通して含んでなりまたはコードする異なるビヒクルを用いる。プライマーが最初に宿主生物に投与され、ブースターが次に1日-12ヶ月の期間の後に同じ宿主生物に投与される。本発明による方法または使用は、プライマーを1-10回連続投与した後、ブースターを1-10回連続投与することを含んでなることができる。更に、プライマーおよびブースターは、同一または異なる投与経路、例えば、MVAベクターについては皮下注射、DNAプラスミドおよびアデノウイルスベクターについては筋肉内注射によって同一部位または代替部位に投与することができる。
【0121】
本発明に関して、上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物を用いて、抗パピローマウイルス免疫応答を刺激しまたは増大させまたは刺激しかつ増大させることができる。例えば、上記で定義したアデノウイルスベクターまたは粒子をプライマーとして用い、上記で定義したMVAベクターまたは粒子をブースターとして用いることができ、またはその逆を行うこともできる。上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物を、本発明の組成物と共通の抗原性ドメインをコードするまたはを含んでなる従来技術分野の材料のいずれかと組み合わせて用いることも可能である。このような材料の供給源は広汎でありペプチド、タンパク質(例えば、組換えによって産生したE2ポリペプチド)、ウイルスベクター、プラスミドDNA、ウイルス様粒子のようなタンパク質性粒子、放射線処理をした細胞のような細胞性材料などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
本発明を例示的に説明してきたが、使用されている用語は制限よりはむしろ説明の単語の性質となることを意味する。明らかに、本発明の多くの修飾および変更が、上記の教示の観点から可能である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲内では、本明細書に具体的に記載されているものとは異なる方法で実施することができることを理解すべきである。
【0123】
上記特許明細書、公表文献およびデーターベースエントリーの総ては、それぞれの個々の特許明細書、公表文献またはエントリーが具体的かつ個別的に参考として引用されることが示されるのと同じ程度までそれらの全体が参考として本明細書に具体的に引用される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】膜によって提示される欠損HPV-16 E2ポリペプチドをコードするプラスミド pTG 17408の模式的表現。
【図2】膜によって提示される複製欠損HPV-16 E1ポリペプチドをコードするプラスミドpTG 17409であって、そのヌクレオチド配列がHPV-16 E2コード配列に共通の59ヌクレオチドの部分で縮重しているものの模式的表現。
【図3】MVATG17408 (MVA-E2)またはネガティブコントロールMVA-N33を投与したマウスにおけるELISPOTによって検出されるE2特異的IFNg Th1応答。
【0125】
下記の実施例は、本発明の例示に役立つ。
【実施例】
【0126】
下記の構築は、Maniatis et al.(1989,「実験室マニュアル(Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)に詳記されている一般的遺伝子工学処理を行った分子クローニング法に準じて、または商業キットを用いるときには製造業者の推奨に準じて行う。PCR増幅法は、当業者に知られている(例えば、「PCRプロトコル: 方法および応用の指針(PCR protocols -A guide to methods and applications)」, 1990, Innis, Gelfand, Sninsky and White著, Academic Pressを参照されたい)。アンピシリン耐性遺伝子を有する組換えプラスミドは、抗生物質100 μg/mlを補足した寒天または液体培地上でE. coli C600 (Stratagene)、BJ5183 (Hanahan, 1983, J. Mol. Biol. 166, 557-580)およびNM522中で複製する。クローニングを相同組換えによって行うときには、BJ5183株を用いるのが好ましい(Bubek et al., 1993, Nucleic acid Res. 21, 3601-3602)。
【0127】
組換えワクシニアウイルスの構築は、上記引用文献の分野およびMackett et al. (1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 7415-7419)およびMackett et al.(1984, J. Virol. 49, 857-864)の従来の手法に準じて行う。E. coliの選択遺伝子 gpt (キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)(Falkner and Moss, 1988, J. Virol. 62, 1849-1854)を用いて、組換えワクシニアウイルスの選択を促進する。
【実施例1】
【0128】
HPV-16 E2遺伝子を発現する組換えMVAベクターの構築
【0129】
HPV16 E2遺伝子のクローニング
HPV16 E2をコードするヌクレオチド配列を、CaSki細胞(ATCC CRL-1550)から単離したゲノムDNAからクローニングした。E2遺伝子を、プライマーOTG 16809(配列番号:9)およびOTG 16810(配列番号:10)を用いて増幅した。生成する断片をBamHIおよびEcoBIによって消化し、同じ酵素によって制限したpGEX2T(Amersham Biosciences)に挿入し、pTG17239を生じた。クローニングしたE2遺伝子のシークエンシングでは、HPV16 E2プロトタイプ配列(Genbank NC-01526に記載)と比較して5つの突然変異を示した。2個の突然変異はサイレントであり、3個の非サイレント突然変異(T210I、S219P、K310T)はQuikChange Site Directed Mutagenesisキット(Stratagene)を用いて修正し、pTG17268を生じた。
【0130】
HPV-16 E2ポリペプチドの修飾
pTG 17268に組込まれたE2ヌクレオチド配列を位置指定突然変異誘発によって修飾し、E2*と呼ばれるHPV-16 E2変異体(E39AおよびI73A)を生成した。更に具体的には、E2複製機能を39位のGlu残基をAlaで置換することによって廃止し、トランス活性化機能を73位のIle残基をAlaで置換することによって廃止した。生成するプラスミドpTG17318は、HPV-16 E2*をコードする修飾配列を含んでなる。
【0131】
HPV-16 E2*を、そのN末端でペプチドシグナルに融合しかつそのC末端で狂犬病ウイルス単離物の糖タンパク質由来の膜固着配列(Genbank ay009097)に融合して、発現する宿主細胞におけるHPV-16 E2*を血漿膜表面へ提示するようにした。SS-E2*-TMRと呼ばれる膜に提示されるE2欠損変異体をコードするヌクレオチド配列(配列番号:8)を、下記のプライマーOTG17500(配列番号:11)、OTG17501(配列番号:12)、OTG17502(配列番号:13)、OTG17503(配列番号:14)、OTG17504(配列番号:15)およびOTG17505(配列番号:16)を用いるトリプルPCRによって再組立した。再組立配列をpBS由来のベクター(Stratagene)に挿入して、pTG17360を得た後、pH5Rプロモーターの下流のワクシニア転移プラスミドでクローニングし(Rosel et al, 1986, J Virol. 60, 436-449)、pTG17408を得た(図1).
【0132】
転移プラスミドは、転移するヌクレオチド配列を相同組換えによってMVAゲノムの欠失IIIに挿入することができるようにデザインされている。それは、MVA欠失IIIの周囲の隣接配列(BRG3およびBRD3)がクローニングされたプラスミドpTG1E(Braun et al., 2000, Gene Ther. 7, 1447-1457に記載)に由来し、上記配列はMVATGN33.1 DNAからPCRによって得た(Sutter and Moss, 1992, Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 89, 10847-10851)。転移プラスミドは、初期後期ワクシニアウイルス合成プロモーターp11K7.5(R. Wittek, University of Lausanneの厚意によって提供された)の制御下でのAequorea victoriaの強化された緑色蛍光タンパク質 (eGFP遺伝子、pEGP-Clから単離、Clontech)とEscherichia coliのキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子)との融合体も含む。キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼの合成により、GPT+組換えMVAはミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチンを含む選択培地でプラークを形成することができ(Falkner et al, 1988, J. Virol. 62, 1849-1854)、eGFPは組換えMVAプラークを可視化することができる。選択マーカーeGPP-GPTは、同じ配向の2つの相同配列の間にある。クローン選択を行うと、選択マーカーは数回の継代によって選択なしに容易に除去され、eGPP-GPT組換えMVAを増殖することができる。
【0133】
HPV-16 SS-E2*-TMR遺伝子を発現する組換えMVAの構築
MVATG17408ウイルスの生成は、MVATGN33.1(MOI 0.1 pfu/細胞)に感染しpTG17408でトランスフェクションした(標準的リン酸カルシウムDNA沈降による)一次ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)での相同組換えによって行った。ウイルス選択は、ミコフェノール酸,キサンチンおよびヒポキサンチンを含む選択培地の存在下にて3回のプラーク精製によって行った。上記のように、選択マーカーを非選択培地で継代することによって除去した。親MVAによる汚染がないことを、PCRによって確かめた。
【0134】
E2発現の分析は、ウェスタンブロット法によって行った。CEFをMVATG17408を用いてMOI 0.2で感染させ、24時間後に細胞を回収した。ウェスタンブロット分析は、市販のモノクローナル抗-E2抗体TVG271(Abeam)を用いて行った。見かけの分子量が55 kDaのタンパク質の発現が検出されたが、E2*-TMRの理論分子量は48.9 kDaである。エンドグリコシダーゼFで細胞抽出物を処理したところ、組換えタンパク質のサイズの減少が観察され、E2*-TMRはN-グリコシル化によって修飾されることを示唆していた。
【実施例2】
【0135】
HPV-16 E1遺伝子を発現する組換えMVAの構築
【0136】
HPV16 E1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、CaSki細胞DNA (ATCC CRL-1550)からクローニングした。更に具体的には、E1遺伝子を2つの部分E1a(nt 1 - 1102)およびE1b (nt 1001 - 1950)で増幅した。プライマーOTG 16811(配列番号:17)およびOTG 16814(配列番号:18)を用いてE1a断片を増幅し、これをBamRIおよびEcoRIによって消化し、同じ酵素によって制限されたpGEX2Tに挿入して、pTG17240を得た。E1b断片は、OTG16813(配列番号:19)およびOTG16812(配列番号:20)を用いて生成させ、BamHIおよびEcoRlによって消化した後、pGEX2Tに挿入し、pTG17241を得た。シークエンシングは、HPV-16 E1プロトタイプ配列(Genbank NC-01526に記載)と比較して4個の突然変異を示した。1つの突然変異はサイレントであり、E1aにある3個の非サイレント突然変異(K130Q、N185TおよびT220S)は位置指定突然変異誘発によって修正した。次に、完全なE1遺伝子を、BsrGIおよびEcoRIによって消化したpTG17241中で修正したE1a断片をクローニングすることによって再組立した。生成するプラスミドをpTG17289と命名した。
【0137】
HPV-16ゲノムでは、E1遺伝子の59の最後のヌクレオチドは、E2遺伝子の59の最初のヌクレオチドと同一である。これらの相同配列が存在すると、相同組換え事象を生じることがあり、従ってE1およびE2をコードするMVAベクターの産生段階の際に不安定となることがある。従って、E1をコードする配列のこの部分をコドン使用量の縮重によって修飾し、E2をコードする配列との配列相同性を減少させた。縮重配列は、縮重プライマーOTG17408(配列番号:21)およびOTG17409(配列番号:22)を用いるE1遺伝子の3'末端の増幅によって得た。増幅断片をNsiIおよびBglIIによって消化し、同じ酵素によって制限されたpTG17289に挿入し、pTG17340を得た。
【0138】
HPV-16で縮重したE1配列も位置指定突然変異誘発によって突然変異させ、HPV-16 E1の482位のGly残基をAsp残基(G482D、本明細書ではE1*とも呼ばれる)で置換することによって、コードされたE1ポリペプチドの複製機能を廃止し、pTG17373を得た。
【0139】
HPV-16 E1deg*配列も、ペプチドシグナルと狂犬病ウイルス単離物の糖タンパク質由来の膜固着配列(Genbank M38452に記載)との融合によって修飾し、血漿細胞表面のコードされたポリペプチドの発現を指定するようにした。SS-E1deg*-TMR配列は、下記のプライマーOTG17560(配列番号:23)、OTG17561(配列番号:24)、OTG17562(配列番号:25)、OTG17563(配列番号:26)、OTG17564 (配列番号:27)およびOTG17565(配列番号:28)を用いるトリプルPCRによって再構成した。生成する配列(配列番号:7)をpBS由来のベクター(Stratagene)に挿入し、pTG17404を得た。次いで、SS-E1deg*-TMR配列をp7.5Kプロモーターの下流の実施例1に記載の転移プラスミド(Cochran et al, 1985, J. Virol. 54: 30-37)にクローニングして、pTG17409を得た(図2)。
【0140】
MVATG17409ウイルスの生成は、CEFで実施例1に記載の相同組換えによって行った。
【実施例3】
【0141】
HPV-16 E1およびE2遺伝子を発現する組換えMVAの構築
【0142】
p7.5Kプロモーターによって制御されるSS-E1deg*-TMR配列をpTG17409から単離してpTG17408に挿入し、pTG17410を得た。
【0143】
MVATG17410ウイルスの生成は、CEFで実施例1に記載の相同組換えによって行った。
【実施例4】
【0144】
HPV-16 E1、E2、E6およびE7遺伝子を発現する組換えMVAの構築
【0145】
HPV-16E7遺伝子をWO99/03885号明細書に記載の方法で単離して修飾し、配列番号:5に示される非発癌性の膜指定E7ポリペプチドをコードした。非発癌性突然変異は、アミノ酸残基21-26(DLYCYE)の欠失およびペプチドシグナルと狂犬病ウイルスの糖タンパク質の膜固定配列との融合による膜指定によって行った。生成する配列を、初期-後期pH5Rプロモーターの制御下にてクローニングした。次に、発現カセットをpTG17410に導入し、pTG17482を生成した。
【0146】
HPV-16 E6遺伝子をWO99/03885号明細書に記載の方法で単離して修飾し、配列番号:4に示される非発癌性の膜指定E6ポリペプチドをコードした。非発癌性突然変異は、アミノ酸残基118-122(CPEEK)の欠失およびペプチドシグナルと麻疹ウイルスのFタンパク質の膜固定配列との融合による膜指定によって行った。生成する配列を、初期-後期p7.5Rプロモーターの制御下にてクローニングした。次に、発現カセットをpTG17482に導入し、pTG17483を生成した。
【0147】
MVATG 174783の生成は、実施例1に記載の方法で行った。
【実施例5】
【0148】
マウスにおけるHPV-16 E2特異的Th1応答の評価
【0149】
HPV-16 E2特異性Th1応答を、MVATG17408(MVA-E2)を投与したマウスでELISPOTによって評価した。SYFPEITHIおよびBIMASによって予想される、遺伝子型特異的、H2bによって制限された、およびヒトHLA-A0201によって制限されたMHCクラスIペプチドを選択して、E2に応答するIFNγ産生細胞を分析した。これらのペプチドを下表1に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
C57B1/6雌マウスに、5.107 pfuのMVATGN33(ネガティブコントロール)またはMVATG17408(MVA-E2)を3回(0、7および14日目)皮下投与により免疫した。脾臓を最初の免疫から21日後に採取し、5 μg/mlの濃度の上記ペプチドを用いてγ-IFN ELISPOTを行った。E1ispotは、Mabtech ABマウスIFNγ ELISPOTPLUSキット(Mabtech, フランス)を用いて、製造業者の指示に従って行った。スポットを、E1ispot reader Bioreader 4000 Pro-X(BIOSYS-Gmbh; Serlabo フランス)を用いて計数した。関係のないペプチドバックグラウンドを差し引いた後、結果を得た。
【0152】
図3に示されるように、MVA-N33を接種した動物で測定したバックグラウンド応答と比較して、4種類のペプチドは有意な数のIFNγ産生脾臓細胞を生じた。これら総てのペプチドはHPV16特異的である。F9VおよびN9IはマウスH2-Dbに関して定義し、A9LおよびT9VはヒトHLA-A201に関して定義した。A9Lペプチドは特異性CTL応答を誘導することが記載されている点に留意すべきである(Konya et al, 1997, J Gen Virol.78 2615-20)。
【0153】
結論として、ELISPOTによって示されるように、MVATG17408の皮下投与は、予防接種したマウスにおいてHPV16に対するT細胞応答を誘導する。
【実施例6】
【0154】
HPV-18 E1およびE2遺伝子(MVATG 17582)を発現する組換えMVAベクターの構築
【0155】
HPV-18 E1およびE2遺伝子を合成遺伝子として再構成し、天然のHPV-18 E1配列のオリゴヌクレオチド3'末端とHPV-18 E2配列の5'末端との両方に存在する59のヌクレオチドの部分で相同性が75%未満まで減少し、HPV-18 E1およびE2遺伝子産物(E1: G489D、E2: E43AおよびI77A)の酵素機能を廃止する突然変異を導入するようにデザインした。合成HPV-18 E1配列も、天然のHPV-16およびHPV-18配列によって共有される相同部分の相同性率が75%未満まで減少するようにデザインした。このため、 HPV-16およびHPV-18 E1およびE2遺伝子のヌクレオチド配列を整列させ、オリゴヌクレオチドを、相同性が6連続ヌクレオチド未満まで減少するようにデザインした。
【0156】
HPV-18 degE1*配列を、50個のオリゴヌクレオチドを再組立することによって再構成し、pBSベクターにおいてクローニングして、pTG17473を得た。次に、E1配列を、プライマーOTG15315(配列番号:39)、OTG17881(配列番号:40)、OTG17882(配列番号:41)、OTG17883(配列番号:42)、OTG17884(配列番号:43)およびOTG17885(配列番号:44)を用いるトリプルPCRによって麻疹ウイルスFタンパク質(SS- 18E1deg*-TMF)由来のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列に融合させた。SS18deg E1*-TMFポリペプチドをコードする生成する断片(配列番号:38)を、MVA転移ベクターにおいてp7.5Kプロモーターの制御下にてクローニングし、pTG17521を得た。
【0157】
HPV-18 degE2*配列を26個のオリゴヌクレオチドを組み立てることによって再構成し、pBSベクターにおいてクローニングして、pTG 17498を得た。シグナルおよび狂犬病ウイルス(ERA株; Genbank M38452)の糖タンパク質の膜固定ペプチドの融合は、プライマーOTG17875 (配列番号:45)、OTG17876(配列番号:46)、OTG17877(配列番号:47)、OTG17878(配列番号:48)、OTG17879(配列番号:49)およびOTG17880(配列番号:50)を用いるトリプルPCRによって行った。SS-18 E2*-TMRポリペプチドをコードする生成する断片(配列番号:33)を、pH5Rプロモーターの下流のMVA転移プラスミドに挿入して、pTG17552を得た。最後に、p7.5K-SS-E1deg*-TMFカセットを、pTG17552に挿入したpTG17521から単離し、pTG17582を得た。
【0158】
組換えMVATG17521、MVATG17552およびMVATG17582の生成は、上記の方法で行った。培養細胞の感染後、MVA構築体からのHPV-18 E1ポリペプチドの発現を、免疫したウサギから得た血清を用いるウェスタンブロット法によって確かめた。
【実施例7】
【0159】
HPV-16およびHPV-18 E1およびE2遺伝子(MVATG17583)を発現する多価組換えMVAベクターの構築
【0160】
p7.5K-SS-18E1deg*-TMFカセットおよびpH5R-SS-18 E2*-TMRカセットをpTG17410(p7.5K-SS-16E1deg*-TMRカセットおよびpH5R-SS-16 E2*-TMRを含む)に導入し、生成する転移プラスミドをpTG17583と命名した。MVATG17583の生成は、上記の方法によって行った。培養細胞のMVA TG17583感染の後、HPV-16 E1、HPV-16 E2およびHPV-18 E1ポリペプチドの発現を免疫したウサギから得た血清を用いるウェスタンブロット法によって確かめた。
【実施例8】
【0161】
HPV-33E2遺伝子を発現する組換えMVAベクターの構築
【0162】
HPV-33E2ポリペプチドをコードする合成遺伝子を、Geneart(Regensburg,ドイツ)によって合成した。この合成配列は、(i) HPV-16、HPV-18およびHPV-52由来のE2遺伝子で相同性率を75%未満まで減少させ(可能な相同部分を6連続ヌクレオチド未満まで減少したとき)および(ii) HPV-33遺伝子産物(E39AおよびI73 A)の酵素機能を廃止する突然変異を導入するようにデザインした。
【0163】
次に、HPV-33 degE2*配列を、狂犬病ウイルス(ERA株、Genbank M38452)の糖タンパク質のシグナルおよび膜固定ペプチドをコードするヌクレオチド配列と融合した。これは、プライマーOTG18962(配列番号:51)、OTG18963(配列番号:52)、OTG18964(配列番号:53)、OTG18965(配列番号:54)、OTG18966(配列番号:55)およびOTG18967(配列番号:56)を用いるトリプルPCRによって行った。SS-33degE2*-TMRポリペプチドをコードする生成する断片(配列番号:35)を、MVA転移ベクターにおいてp7.5Kプロモーターの制御下にてクローニングし、ウイルス粒子を上記の方法で得た。
【実施例9】
【0164】
HPV-52E2遺伝子を発現する組換えMVAベクターの構築
HPV-52E2ポリペプチドをコードする合成遺伝子をGeneart (Regensburg, ドイツ)によって合成した。この合成配列は、(i) HPV-16、HPV-18およびHPV-33由来のE2遺伝子で相同性率を75%未満まで減少させ(相同部分は、好ましくは6連続ヌクレオチド未満まで減少する)および(ii) HPV-52遺伝子産物(E39AおよびI73 A)の酵素機能を廃止する突然変異を導入するようにデザインした。
【0165】
次に、合成 HPV-52E2*deg配列を、プライマーOTG18968(配列番号:57)、OTG18969(配列番号:58)、OTG18970(配列番号:59)、OTG18971(配列番号:60)、OTG18972(配列番号:61)およびOTG18973(配列番号:62)を用いるトリプルPCRによって麻疹ウイルスFタンパク質(SS-52E2*deg-TMFを生成)のシグナルおよび膜固定ペプチドをコードするヌクレオチド配列と融合した。
【0166】
SS-52E2*deg-TMFポリペプチドをコードする生成する断片(配列番号:37)を、p7.5Kプロモーターの下流のMVA転移プラスミドに挿入し、ウイルス粒子を上記の方法によって生成した。
【実施例10】
【0167】
HPV-16、HPV-18、HPV-33およびHPV-52E2遺伝子を発現する組換えMVAベクターの構築
【0168】
膜によって提示される酵素欠損HPV-18 E2ポリペプチド(pTG17552から単離)をコードするpH5R-SS-18E2*-TMRカセット、膜によって提示される酵素欠損HPV-33 E2ポリペプチドをコードするp7.5K-SS-33degE2*-TMRカセットおよび 膜によって提示される酵素欠損HPV-52E2ポリペプチドをコードするp7.5K-SS-52degE2*-TMFカセットをpTG17408(pH5R-SS-16E2*-TMRカセットを含む)に導入し、ウイルス粒子を上記の方法で生成した。
【実施例11】
【0169】
組換えMVA構築物の治療効果を評価するための動物モデル
【0170】
CRPVモデルは、免疫能力にもかかわらずウイルス誘導乳頭腫が持続し、選択的宿主圧力下で侵襲性および転移性扁平上皮癌を生じる唯一の実験室モデルである(Brandsma, 1994, Intervirology 37, 189-190、およびBrandsma, 1996, 『ヒトパピローマウイルスワクチン開発のための動物モデル』, p. 69-78. C. Lacey(監修),「パピローマウイルス概説: パピローマウイルスの最新の研究」Leeds University Press, Leeds, 英国)。E2を発現するMVAをこのモデルで試験し、持続性パピローマウイルスに対する治療効果を評価することができた。しかしながら、HPVとCRPV抗原との間の交差防御が欠けているため、HPV-16抗原の代わりにCRPV抗原(Genbankに受託番号NC_001541で開示)を用いて組換えCRPV特異的MVA構築物を生成した。更に具体的には、下記の組換えMVA、すなわちpH5Rプロモーターによって制御される麻疹ウイルスF糖タンパク質(SR-CRPVE2-TMF)のシグナルおよび膜固定ペプチドと融合したCRPVE2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(参照配列)を含んでなる発現カセットを欠失IIIに挿入してなるMVATG17535、 p7.5Kプロモーターによって制御される狂犬病ウイルス糖タンパク質(SR-CRPVE1-TMR)のシグナルおよび膜固定ペプチドと融合したCRPV E1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(参照配列)を含んでなる発現カセットを欠失IIIに挿入してなるMVATG17534、およびCRPVE2(pH5R-SR-CRPVE2-TMF)およびCRPV E1(p7.5K-SR-CRPVE1-TMR)発現カセットを欠失IIIに挿入してなるMVATG17562を構築した。
【0171】
雌のニュージーランド白ウサギに、Helios遺伝子ガンシステム(Biorad)による粒子性DNA導入を用いて1日目にCRPV DNAを接種した。1.6 μmの金粒子を、製造業者によって指示されるようにウイルスDNAをコーティングし、ウサギの背中の3つの部位に0.1 μg/部位で、他の3つの部位に0.5 μg/部位で投与した。2、9および16日目に、候補のCRPV組換えMVAをウサギの背中に皮内投与した。疣贅発生を、1週毎に8-12週間観察した。
【0172】
実験の終わりに、ウサギを屠殺して、CRPVを投与して乳頭腫を生じなかった表皮部位を摘出し、凍結した。DNAを抽出して、CRPV DNAの存在をPCR分析によって分析し、MVA予防接種がウイルスクリアランスを誘導するかどうかを測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のパピローマウイルスE2ポリペプチドまたはベクターまたは感染性ウイルス粒子をコードする核酸分子の使用であって、少なくとも1種類のパピローマウイルスによって引き起こされる持続性パピローマウイルス感染症に罹っている宿主生物の治療を目的とする薬剤を調製するための上記核酸分子を含んでなる使用。
【請求項2】
上記核酸分子、ベクターまたは感染性ウイルス粒子を、少なくとも1種類のパピローマウイルスに暴露した後であってパピローマウイルス関連病巣の検出/出現前に投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記の少なくとも1種類のパピローマウイルスE2ポリペプチドが、HPV-16、HPV-18、HPV-30、HPV-31、HPV-33、HPV-35、HPV-39、HPV-45、HPV-51、HPV-52、HPV-56、HPV-58、HPV-59、HPV-66、HPV-68、HPV-70およびHPV-85からなる群から選択されるHR-HPVから生じる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
上記の少なくとも1種類のパピローマウイルスE2ポリペプチドがHPV-16、HPV-18、HPV-33またはHPV-52、またはそれらの任意の組合せから生じる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
上記核酸分子が少なくとも輻射および/または転写活性化活性を欠いたE2ポリペプチドをコードするように修飾される、請求項1-4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
上記E2ポリペプチドがHPV-16から生じ、少なくとも39位(E39)のGlu残基および/または73位(I73)のIle残基がそれぞれの39および73位でGluおよびIle以外の任意のアミノ酸残基に置換されていることを除き、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
39位のGlu残基および/または73位のIle残基がAla残基で置換されている、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
上記核酸分子が、膜によって提示されるE2ポリペプチドをコードするように修飾される、請求項1-7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
上記膜によって提示されるE2ポリペプチドが、上記パピローマウイルスE2ポリペプチドの分泌および膜固着配列への融合によって修飾される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
上記分泌および/または膜固着配列が狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質または麻疹ウイルスFタンパク質から生じるか、または合成的なものである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
上記ベクターが、
HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
HPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
HPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター
からなる群から選択される、請求項4-10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
上記核酸分子が配列番号:2に示されるアミノ酸配列を含んでなるE2ポリペプチドをコードする、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
上記ベクターまたは感染性ウイルス粒子が、異なるパピローマウイルス遺伝子型に由来する少なくとも2種類のE2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなる、請求項1-12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
上記核酸、ベクター、感染性ウイルス粒子が、1種類以上の追加ポリペプチドまたは上記の追加ポリペプチドをコードする1種類以上の核酸、ベクター、または感染性ウイルス粒子と組み合わせて用いられる、請求項1-13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
上記の追加ポリペプチドがE1、E2、E4、E5、E6およびE7からなる群から選択される初期HPVポリペプチドである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
上記パピローマウイルスの追加ポリペプチドが、上記核酸分子によってコードされるE2ポリペプチドと同じパピローマウイルスに由来する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
上記パピローマウイルスの追加ポリペプチドが、上記核酸分子によってコードされるE2ポリペプチとは異なるパピローマウイルス遺伝子型に由来する、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
上記パピローマウイルスの追加ポリペプチドが対応する天然のE1ポリペプチドと比較して1個以上の修飾を含んでなりウイルス複製の刺激には不完全となるような修飾E1ポリペプチドであり、特に好ましくは、482位のGly残基がAsp残基で置換されていることを除き天然のHPV-16 E1ポリペプチドのアミノ酸配列を含んでなる修飾E1ポリペプチドである、請求項15-17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
上記パピローマウイルスの追加ポリペプチドが、非発癌性でありかつ細胞腫瘍抑制遺伝子産物p53に結合するために変化している修飾E6ポリペプチドである、請求項15-17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
上記パピローマウイルス追加ポリペプチドが、非発癌性でありかつ細胞腫瘍抑制遺伝子産物Rbに結合するために変化している修飾E7ポリペプチドである、請求項15-17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
上記パピローマウイルス追加ポリペプチドが配列番号:3-5に示されるアミノ酸配列のいずれかを含んでなるポリペプチドからなる群から選択される、請求項15-20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
パピローマウイルスE1ポリペプチドをコードする核酸分子とパピローマウイルスE2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクターであって、天然状態では上記E2をコードする核酸分子の5'部分と100%同一である上記E1をコードする核酸分子の3'部分が、上記E2をコードする核酸分子の上記部分と75%未満の同一性率を示すように修飾されることを特徴とする、ベクター。
【請求項23】
パピローマウイルスE1ポリペプチドをコードする核酸分子とパピローマウイルスE2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクターであって、上記E1をコードする核酸分子と上記E2をコードする核酸分子が75%または75%を上回る同一性率を示す40以上の隣接ヌクレオチドの部分を含まないことを特徴とする、ベクター。
【請求項24】
少なくとも2種類のパピローマウイルスE2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクターであって、上記E2をコードする核酸分子が75%または75%を上回る同一性率を示す40以上の隣接ヌクレオチドの部分を含まないことを特徴とする、ベクター。
【請求項25】
上記E1をコードする核酸分子が配列番号:6または配列番号:7に示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項22-24のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項26】
上記E2をコードする(複数の)核酸分子が請求項3-10および12のいずれか一項に記載のE2ポリペプチドをコードする、請求項22-25のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項27】
上記ベクターが、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなりかつ(ii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子をも含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iii) HPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iii) HPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iii) HPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(iii) HPV-33E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iv) HPV-52E2ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(ii) HPV-16 E1ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-16 E1ポリペプチドをコードする核酸分子、(iii) HPV-18 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(iv) HPV-18 E1ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(ii) HPV-16E6ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子および(ii) HPV-16E7ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、
(i) HPV-16 E2ポリペプチドをコードする核酸分子、(ii) HPV-16 E1ポリペプチドをコードする核酸分子、(iii) HPV-16E6ポリペプチドをコードする核酸分子および(iv) HPV-16E7ポリペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクター、および
HPV-16 E1、E2、E6およびE7ポリペプチドおよびHPV-18 E1、E2、E6およびE7ポリペプチドをコードする核酸分子
からなる群から選択される請求項22-26のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項28】
上記HPV-16 E2ポリペプチドが配列番号:2に示されるアミノ酸配列を含んでなり、および/または上記HPV-18 E2ポリペプチドが配列番号:29に示されるアミノ酸配列を含んでなり、および/または上記HPV-33E2ポリペプチドが配列番号:30に示されるアミノ酸配列を含んでなり、および/または上記HPV-52E2ポリペプチドが配列番号:31に示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項11に記載の使用または請求項27に記載のベクター。
【請求項29】
上記HPV-16 E1ポリペプチドが配列番号:3に示されるアミノ酸配列を含んでなり、および/または上記HPV-18 E1ポリペプチドが配列番号:32に示されるアミノ酸配列を含んでなり、および/または上記HPV-16E6ポリペプチドが配列番号:4に示されるアミノ酸配列を含んでなり、および/または上記HPV-16E7ポリペプチドが配列番号:5に示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項15-20のいずれか一項に記載の使用または請求項27または28に記載のベクター。
【請求項30】
HPV-16 E2ポリペプチドをコードする上記核酸分子が配列番号:8に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、および/またはHPV-18 E2ポリペプチドをコードする上記核酸分子が配列番号:33に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、および/またはHPV-33E2ポリペプチドをコードする上記核酸分子が配列番号:34または配列番号:35に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、および/またはHPV-52E2ポリペプチドをコードする上記核酸分子が配列番号:36または配列番号:37に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、および/またはHPV-16 E1ポリペプチドをコードする上記核酸分子が配列番号:7に示されるヌクレオチド配列を含んでなり、および/またはHPV-18 E1ポリペプチドをコードする上記核酸分子配列番号:38に示されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1-21のいずれか一項に記載の使用または請求項27-29のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項31】
請求項22-30のいずれか一項に記載のベクターの使用、または少なくとも1種類のパピローマウイルスによって引き起こされる持続性パピローマウイルス感染症に罹っている宿主生物の治療を目的とする薬剤を調製するための上記ベクターを含んでなる感染性ウイルス粒子。
【請求項32】
上記ベクターがカナリアポックスウイルス、鶏痘ウイルスまたはワクシニアウイルス由来のポックスウイルスベクターである、請求項1-21および28-31のいずれか一項に記載の使用、または請求項22-30のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項33】
上記ワクシニアウイルスがコペンハーゲン株、ワイス株、NYVACまたは改質アンカラ(MVA)株である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
上記ウイルスベクターがコペンハーゲンワクシニアウイルスに由来し、上記核酸分子をチミジンキナーゼ遺伝子に挿入する、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
上記ウイルスベクターがMVAワクシニアウイルスに由来し、上記核酸分子を欠失IIIに挿入する、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
上記E2および/またはE7をコードする1または複数の核酸分子をワクシニアH5Rプロモーター下に置き、E1および/またはE6をコードする1または複数の核酸分子をp7.5Kプロモーターの制御下に置く、請求項33-35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
上記核酸分子、ベクター、または感染性ウイルス粒子、またはそれらの任意の組合せが組成物に構成されている、請求項1-21および28-36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
上記組成物を注射に適した形態に処方する、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
上記注射が筋肉内または皮下投与によるものである、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
少なくとも1種類のHR-HPVによって引き起こされる持続性感染症を治療するための、請求項1-39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
上記核酸分子がHPV-16に由来するE2ポリペプチドをコードする、HPV16、HPV31、HPV33、HPV35、HPV52およびHPV58の少なくとも1種類によって引き起こされる感染症にかかっている宿主生物を治療するための、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
上記核酸分子がHPV-18に由来するE2ポリペプチドをコードする、HPV-18、HPV-39、HPV-45、HPV-51、HPV-56、HPV-59、HPV-68、HPV-70,およびHPV-85の少なくとも1種類によって引き起こされる感染症に罹っている宿主生物を治療するための、請求項40に記載の使用。
【請求項43】
上記使用が、数日から4週間までの期間内で逐次的に行われる第一の投与シリーズに次いで第一のシリーズの最後の投与後の1-6ヶ月間に行われる第二の投与シリーズを含んでなる、請求項1-21および28-42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
第一の投与シリーズが週間隔での3回の逐次投与を含んでなり、第二のシリーズが第一のシリーズ後の5または6ヶ月以内の1回の投与を含んでなる、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物を用いて、感染性パピローマウイルスの少なくとも1種類に対して抗ウイルス応答を提供する、請求項1-21および28-44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
上記核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子または組成物を用いて、動物またはヒト生物に免疫応答を誘発しまたは活性化する、請求項1-21および28-45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
動物またはヒト生物における持続性パピローマウイルス感染症の治療に用いるための、請求項22-30のいずれか一項に記載のベクターまたは感染性ウイルス粒子または組成物、または請求項1-21および28-46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
動物またはヒト生物における免疫応答を誘発または活性化に用いるための、請求項22-30のいずれか一項に記載のベクターまたは感染性ウイルス粒子または組成物、または請求項1-21および28-46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
動物またはヒト生物に抗ウイルス応答を提供するのに用いるための、請求項22-30のいずれか一項に記載のベクターまたは感染性ウイルス粒子または組成物、または請求項1-21および28-46のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−516287(P2010−516287A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547667(P2009−547667)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051032
【国際公開番号】WO2008/092854
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】