説明

パラジウムイオン吸着剤、及びそれを用いたパラジウムの分離回収方法

【課題】有機溶媒を使用する必要のない固−液型パラジウムイオン吸着剤、及びそれを用いたパラジウムの選択的な分離・回収方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)等で示されるアミド含有環状スルフィド化合物からなる、又はこれを担体に固定化させた吸着剤を用いて、パラジウムを選択的に分離回収する。


[上記式(1)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、mは1又は2の整数を表し、nは各々独立して、1〜12の整数を表し、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアミド含有環状スルフィド化合物から成るパラジウムイオン吸着剤、前記アミド含有環状スルフィド化合物を担体に固定化したパラジウムイオン吸着剤、及びそれを用いたパラジウムの分離方法、回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用触媒や自動車排ガス浄化触媒や多くの電化製品には、パラジウムが用いられている。パラジウムは高価であり、資源としても有用であることから、従来から使用後に回収してリサイクルすることが行われてきている。最近では資源の保全を考えて、回収及びリサイクルすることの重要性が一層増加している。
【0003】
パラジウムを回収するために、沈殿分離法、イオン交換法、電解析出法、溶媒抽出法等の多くの方法が開発されており、これらのうち溶媒抽出法が経済性及び操作性の点から広く採用されている。例えば、水溶液中のパラジウムイオンを油溶性の抽出剤を溶解した有機溶媒と液−液接触させることによりパラジウムイオンを有機相側に抽出する方法が知られている。抽出剤としては、ジアルキルスルフィド等の硫黄含有有機化合物用いられている(例えば、特許文献1参照)。また、抽出速度を改善させるため、ジアルキルスルフィドの硫黄近傍にアミド基を導入する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、上記した溶媒抽出法は、多量の有機溶剤を使用することから、安全性や環境負荷の面で課題を有する。
【0005】
このため、特定のチオエーテルをリガンド(ligand)とし、それをスチレン誘導体のポリマー(例えば、ポリメチルスチレン)に固定化して水不溶性の固体状の高分子型スルフィド化合物とし、それをパラジウムイオンを含む水溶液中に直接添加してパラジウムイオンの吸着を行う、有機溶媒を用いない方法(吸着法)が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載の吸着法では、吸着剤のパラジウム吸着量が吸着剤1gあたり4mg(0.04mmol)と低いという問題があった。
【0007】
上記したとおり、パラジウムを回収するために、溶媒抽出法が経済性及び操作性の点から広く採用されているが、有機溶媒の使用が必須であるという課題を有する。
【0008】
一方、水に不溶性の高分子型キレート剤やイオン交換樹脂を用いる吸着法は、有機溶媒を用いずに金属分離が行えるという利点があるが、特定の金属に対する選択性が低い場合が多い。例えば、特許文献3に記載の高分子スルフィド型化合物により、複数の金属が混在する溶液中からパラジウムを選択的に分離したという知見は、特許文献3には開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−279264号公報
【特許文献2】国際公開第2005/083131号パンフレット
【特許文献3】特開平5−105973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の溶媒抽出法における、液−液型パラジウム抽出剤の抽出性能及び選択性を併せ持ち、且つ有機溶媒を使用する必要のない固−液型パラジウムイオン吸着剤、及びそれを用いたパラジウムの選択的な分離方法、回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のアミド含有環状スルフィド化合物からなる吸着剤、又はこのアミド含有環状スルフィド化合物を多孔質担体に担持してなる吸着剤を見出した。さらにこれらの吸着剤を用いて、パラジウムの分離回収を行うことで、上記した課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下に示すとおりのパラジウムイオン吸着剤、及びそれを用いたパラジウムの分離方法、回収方法である。
【0013】
[1]下記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物からなるパラジウムイオン吸着剤。
【0014】
【化1】

[上記式(1)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、mは1又は2の整数を表し、nは各々独立して、1〜12の整数を表し、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]
[2]一般式(1)において、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基を表し、かつカルボニル基−硫黄原子間のnが各々独立して、1〜4の整数を表すことを特徴とする上記[1]に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【0015】
[3]下記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物からなるパラジウムイオン吸着剤。
【0016】
【化2】

[上記式(2)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは各々独立して、1〜4の整数を表す。また上記式中、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]
[4]一般式(2)において、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基を表すことを特徴とする上記[3]に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【0017】
[5]下記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は下記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を担体に固定化したパラジウムイオン吸着剤。
【0018】
【化3】

[上記式(1)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、mは1又は2の整数を表し、nは各々独立して、1〜12の整数を表し、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]
【0019】
【化4】

[上記式(2)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは各々独立して、1〜4の整数を表す。また上記式中、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]
[6]一般式(1)において、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基を表し、かつカルボニル基−硫黄原子間のnが各々独立して、1〜4の整数を表すことを特徴とする上記[5]に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【0020】
[7]一般式(2)において、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基を表すことを特徴とする上記[5]に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【0021】
[8]担体がシリカゲルであることを特徴とする上記[5]乃至[7]のいずれかに記載のパラジウムの分離方法。
【0022】
[9]上記[1]乃至[8]のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤を、パラジウムを含有する水溶液と接触させ、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させることを特徴とするパラジウムの分離方法。
【0023】
[10]上記[1]乃至[8]のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤を、パラジウムを含有する水溶液と接触させ、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させ、次いで前記パラジウムイオン吸着剤に吸着したパラジウムを、溶出液により溶出して、パラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするパラジウムの回収方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明のパラジウムイオン吸着剤(以下、「本発明の吸着剤」と称する場合がある。)は、
上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物そのもの、
上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物そのもの、
上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を担体に固定化させたもの、又は
上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を担体に固定させたもの
である。
【0025】
上記一般式(1)又は一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物は、従来の油状のジアルキルスルフィド等のスルフィド型パラジウム抽出剤と違って固体であり、且つ水溶性が極めて低いという特徴を有するため、有機溶媒に溶解させることなく直接パラジウムイオンを含む水溶液中に添加して、パラジウムイオンの吸着を行うことができる。
【0026】
本発明のパラジウムイオン吸着剤は、パラジウムに対して高い親和性を有し、パラジウム以外に白金、ロジウム等の複数の白金族金属イオンが混在する場合に、パラジウムイオンを特に高選択的に吸着するという特徴を有する。
【0027】
一方、本発明のパラジウムの分離方法、回収方法によれば、パラジウムイオンを含む水溶液中からパラジウムを、本発明のパラジウムイオン吸着剤に効率良く且つ選択的に吸着させることができ、更に溶出液を用いることで、前記吸着剤に吸着したパラジウムを効率的に回収することができる。
【0028】
また、本発明のパラジウムの分離方法、回収方法によれば、有機溶媒を用いることなく、工業用触媒や自動車排ガス浄化触媒中のパラジウムを効率良く且つ選択的に吸着回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1におけるパラジウムイオン吸着剤のアミド含有スルフィド量と金属吸着率との関係を示す図である。
【図2】実施例7におけるパラジウムイオン吸着剤のアミド含有スルフィド量と金属吸着率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明において、吸着、分離、回収又は抽出等されるパラジウムは、処理対象となる被対象溶液中においての形態はイオンである。よって、本明細書中において「パラジウム」と記載する場合も、それが「パラジウムイオン」を意味する場合がある。
【0031】
まず、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物について説明する。
【0032】
上記一般式(1)において、Rで示される置換基は、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基(これらの基は分岐していても差し支えない。)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。これらのうち、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数5〜8の脂環式炭化水素基、炭素数6〜8の芳香族炭化水素基が好ましい。パラジウム吸着能の点では、Rで示される置換基の全てが水素原子のものがさらに好ましい。また、m=1の場合、パラジウムイオン吸着剤としての耐久性の点では、Rで示される置換基の1つ以上が、上記した、メチル基、エチル基、炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数5〜8の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜8の芳香族炭化水素基であるものがさらに好ましい。
【0033】
炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)、ヘプタデシル基(ステアリル基)、オクタデシル基、オレイル基、ノナデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、1−ヘプチニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−メチル−1−プロペニル基等が挙げられる。
【0034】
炭素数3〜10の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘキサトリエニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基等が挙げられる。
【0035】
炭素数6〜14の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ビフェニリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)中、mは1又は2の整数を表す。
【0037】
上記一般式(1)中、nは各々独立して、1〜12の整数を表す。上記一般式(1)において、カルボニル基−硫黄原子間のメチレン数を表すnは1〜4の整数であることが好ましく、1又は2の場合が特に好ましい。
【0038】
上記一般式(1)中、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。
【0039】
上記一般式(1)において、Lは、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。
【0040】
炭素数3〜8のアルキレン基としては、例えば、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられ、直鎖状、分枝状、環状のものを含む。
【0041】
環状のアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキサジエニレン基、シクロヘキサトリエニレン基、シクロオクテニレン基、シクロオクタジエニレン基等が挙げられる。
【0042】
また、炭素数6〜14のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、トリレン基、キシリレン基、クメニレン基、ベンジレン基、フェネチレン基、スチリレン基、シンナミレン基、ビフェニリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。
【0043】
これらのうち、Lとしては、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基であることが好ましく、特に1,3−プロピレン基である場合に最も高いパラジウム吸着性能を有する。
【0044】
上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物の製造法としては、特に限定するものではないが、m=1である化合物は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、下記式(3)
【0045】
【化5】

(式中、R、Lは上記と同じ定義である。)
で示される化合物に、塩基性条件下で下記式(4)
【0046】
【化6】

(式中、nは上記と同じ定義である。)
で示される化合物を反応させ、下記式(5)
【0047】
【化7】

(式中、R、L、nは上記と同じ定義である。)
で示される化合物を得、次に上記式(5)で示される化合物に、塩基性条件下でチオ安息香酸を反応させて、下記式(6)
【0048】
【化8】

(式中、Bzはベンゾイル基を表し、R、L、nは上記と同じ定義である。)
で示される化合物を得、次に、上記式(5)で表される化合物と上記式(6)で示される化合物を塩基性条件下で反応させることにより、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物(m=1)を得ることができる。
【0049】
また、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物のうち、m=1である化合物は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、上記したとおり合成した上記式(6)で表される化合物と下記式(7)
【0050】
【化9】

(式中、nは上記と同じ定義である。)
で示される化合物を塩基性条件下で反応させることにより、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物(m=2)を得ることができる。
【0051】
上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物は固体であり、且つ水溶性が極めて低いため、パラジウムイオンを含む水溶液にそのまま添加して吸着を行うことができる。水溶液中に白金イオンやロジウムイオン等の他の白金族金属イオンが混在している場合、パラジウムイオンが高い選択性で吸着される。
【0052】
次に、上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物について説明する。
【0053】
上記一般式(2)において、Rで示される置換基は、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基(これらの基は分岐していても差し支えない。)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。これらのうち、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数5〜8の脂環式炭化水素基、炭素数6〜8の芳香族炭化水素基が好ましい。パラジウム吸着能の点では、Rで示される置換基の全てが水素原子のものがさらに好ましい。また、パラジウムイオン吸着剤としての耐久性の点では、Rで示される置換基の1つ以上が、上記した、メチル基、エチル基、炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数5〜8の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜8の芳香族炭化水素基であるものがさらに好ましい。
【0054】
炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)、ヘプタデシル基(ステアリル基)、オクタデシル基、オレイル基、ノナデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、1−ヘプチニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−メチル−1−プロペニル基等が挙げられる。
【0055】
炭素数3〜10の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘキサトリエニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基等が挙げられる。
【0056】
炭素数6〜14の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ビフェニリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0057】
上記一般式(2)において、nで示されるカルボニル基−硫黄原子間のメチレン数は1〜4の整数であり、1又は2の場合が特に好ましい。
【0058】
上記一般式(2)において、Lは、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。
【0059】
炭素数3〜8のアルキレン基としては、例えば、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられ、直鎖状、分枝状、環状のものを含む。
【0060】
環状のアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキサジエニレン基、シクロヘキサトリエニレン基、シクロオクテニレン基、シクロオクタジエニレン基等が挙げられる。
【0061】
また、炭素数6〜14のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、トリレン基、キシリレン基、クメニレン基、ベンジレン基、フェネチレン基、スチリレン基、シンナミレン基、ビフェニリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。
【0062】
これらのうち、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基であることが好ましく、特に1,3−プロピレン基である場合に最も高いパラジウム吸着性能を有する。
【0063】
上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物の製造法としては、特に限定するものではないが、例えば、上記した上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物(m=1)と同様の方法により、製造することができる。
【0064】
上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物は固体であり、且つ水溶性が極めて低いため、パラジウムイオンを含む水溶液にそのまま添加して吸着を行うことができる。水溶液中に白金イオンやロジウムイオン等の他の白金族金属イオンが混在している場合、パラジウムイオンが高い選択性で吸着される。
【0065】
次に、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を、担体に固定化させたパラジウムイオン吸着剤について説明する。
【0066】
本発明においては、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を、そのままパラジウムイオン吸着剤として使用可能であるが、操作性の向上やカラムクロマトグラフィーの充填剤として使用する等の目的に応じて、任意の担体に固定化してもよい。
【0067】
本発明において、担体としては、水に不溶性のものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の高分子担体や、活性炭、シリカゲル、珪藻土、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、マグネシア、ポリシロキサン等の無機担体が挙げられる。
【0068】
ここで、架橋ポリスチレンとは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等のモノビニル芳香族化合物とジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ビスビニルジフェニル、ビスビニルフェニルエタン等のポリビニル芳香族化合物との架橋共重合体を主体とするものであり、これらの共重合体にグリセロールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、等のメタクリル酸エステルが共重合されていてもよい。
【0069】
本発明においては、これらの担体のうち、シリカゲルが特に好ましい。
【0070】
本発明において用いられる担体の形状としては、球状(例えば、球状粒子等)、粒状、繊維状、顆粒状、モノリスカラム、中空糸、膜状(例えば、平膜など)等の一般的に分離基材として使用される形状が利用可能であり、特に限定するものではないが、これらのうち、球状、膜状、粒状、繊維状のものが好ましい。球状粒子はカラム法やバッチ法で使用する際、その使用体積を自由に設定できることから、特に好ましく使用できる。
【0071】
担体として球状粒子を用いる場合、その平均粒径としては通常1μm〜10mmの範囲、好ましくは2μm〜1mmの範囲であり、平均細孔径としては通常1nm〜1μmの範囲、好ましくは1nm〜300nmの範囲である。
【0072】
この場合、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を担体へ固定化する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を担体に物理的に吸着させて担持する方法や、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を担体に化学的に結合させ固定化する方法が挙げられる。
【0073】
本発明の吸着剤は、例えば、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を、ジメチルスルホキシド等の溶媒に溶解させ、次いで上記した担体を加え、アミド含有環状スルフィド化合物を当該担体に含浸させて、更に溶媒を留去することにより、製造することができる。
【0074】
用いる溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等が好適なものとして挙げられる。
【0075】
また、例えば、担体が架橋ポリスチレンの場合には、クロロメチルスチレンとジビルベンゼンとの架橋ポリスチレンである、ポリクロロメチルスチレン(PCMS)と、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物とを塩基性条件下で反応させることにより、本発明の吸着剤を製造することができる。
【0076】
反応を塩基性条件下で行うための塩基としては、特に限定するものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等が好適なものとして挙げられる。
【0077】
本発明の吸着剤において、担体へのアミド含有環状スルフィド化合物の固定化率(担持率)は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、本発明の吸着剤に対して、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は上記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物が1〜50重量%の範囲で固定化(担持)されているのが好ましく、5〜30重量%の範囲がさらに好ましい。
【0078】
さらに、本発明のパラジウムの分離方法について説明する。
【0079】
本発明のパラジウムの分離方法は、本発明の吸着剤をパラジウムを含有する水溶液と接触させ、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させることを特徴とする。
【0080】
本発明のパラジウムの分離方法において、パラジウムを含む白金族金属(パラジウム、白金、ロジウム等)の水溶液中の濃度は、効率のよいパラジウムの吸着を行うためには、溶液中の濃度が1〜10000ppmの範囲であることが好ましく、10〜1000ppmの範囲であることがさらに好ましい。
【0081】
また、本発明のパラジウムの回収方法は、本発明の吸着剤をパラジウムを含有する水溶液と接触させて、パラジウムを前記吸着剤に吸着させ、次いで前記吸着剤に吸着したパラジウムを、溶出液により溶出して、パラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とする。
【0082】
上記したパラジウムの分離方法、回収方法において、処理対象となる被対象溶液としては、例えば、自動車排ガス処理触媒を溶解した水溶液や、白金族金属の湿式精錬工程における酸浸出後溶液を用いることができる。これらの被対象溶液はパラジウム、白金、ロジウム等の白金族金属を含有するものであるが、これらのうちパラジウム以外の成分は必須というものではない。
【0083】
ここで、被対象溶液中に含有される白金族金属の形態は、金属イオン(例えば、2価金属イオン等)の状態で溶液中に含有される。
【0084】
本発明の吸着剤によりパラジウムを吸着するためには、まず、上記の被対象溶液に本発明の吸着剤を添加する。この際にこの溶液を攪拌することが望ましい。また、被対象溶液は酸性であることが好ましく、塩酸酸性であることがさらに好ましい。被対象溶液の塩酸濃度としては、本発明の吸着剤は広範な塩酸濃度範囲で使用可能であり、特に限定するものではないが、0.1〜5mol/Lの範囲が好ましい。この範囲の塩酸濃度であれば、パラジウムの吸着効率を損なうことなく吸着を実施することができる。さらに好ましい塩素濃度は、0.5〜3mol/Lの範囲である。
【0085】
また、上記したパラジウムの分離方法、回収方法において、被対象溶液中のパラジウムに対し、本発明の吸着剤を、上記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物換算で、等モル量以上用いるのが好ましい。
【0086】
前記の操作により本発明の吸着剤に吸着されたパラジウムを、溶出液により溶出して、パラジウムを含む水溶液を得ることで、パラジウムを回収する。パラジウムの溶出液としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニア水、チオ尿素水溶液、チオ尿素水溶液と塩酸の混合水溶液等を好適に用いることができる。また、エチレンジアミン水溶液もパラジウムの溶出液として好適に使用することができる。
【0087】
パラジウムを吸着したパラジウムイオン吸着剤とその溶出液の使用量については、特に限定するものではないが、当該吸着剤に対して溶出液が50〜1000モル倍の範囲が好ましい。
【0088】
本発明に係る吸着剤を用いてパラジウムを吸着した場合には、前記の溶出液を用いることにより、パラジウムを水溶液として回収することができる。
【実施例】
【0089】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例において、H−NMR(核磁気共鳴)はVarian社製、Gemini−200で測定した。
【0090】
また、実施例における、パラジウム吸着量の単位「mmol/g−Ligand」は、Ligand 1g当たりの、吸着したパラジウムのモル数を意味し、「Ligand」とはアミド含有環状スルフィド化合物を意味する。
【0091】
合成例1.
アミド含有環状スルフィド化合物の合成例として、1,5,11,15−テトラアザ−6,10,16,20−テトラオキソ−8,18−ジチアシクロエイコサン[以下、化合物(8)と称する。]の合成例を以下に記す。
【0092】
【化10】

第一工程:ジアシル化体(5a)の合成.
200mLナス型フラスコに1,3−プロパンジアミン(3a)3.71g(50mmol)、水50g、ジエチルエ−テル20gを量り取り、これに20%水酸化ナトリウム水溶液24.00g(120mmol)を加えた。この混合物に対し、クロロ塩化アセチル(4a)13.55g(120mmol)を0℃にて1時間かけて滴下し、更に0℃で1時間攪拌した。生じた白色固体をろ取した後、水、ジエチルエ−テルで順次洗浄し、上記式(5a)で示されるジアシル化体[以下、ジアシル化体(5a)と称する。]を収量10.41g、収率91.7%で得た。
【0093】
H−NMR(DMSO−d)δ:1.55(2H,quintet,J=7.0Hz),3.03−3.10(4H,m),4.03(4H,s),8.22(2H,brs)。
【0094】
第二工程:ジチオエステル化体(6a)の合成.
100mLナス型フラスコに炭酸カリウム2.65g(19.2mmol)、水40gを量り取り、これにチオ安息香酸2.65g(19.2mmol)を加えて40℃で30分間攪拌した。これに上記ジアシル化体(5a)1.82g(8mmol)及びテトラヒドロフラン(THF)10gを加え、40℃で3時間攪拌した。その後更に0℃で1時間攪拌し、生じた白色固体をろ取した後、水で洗浄し、上記式(6a)で示されるジチオエステル化体[以下、ジチオエステル化体(6a)と称する。]を収量3.51g、収率95.6%で得た。
【0095】
H−NMR(CDCl)δ:1.65(2H,quintet,J=6.2Hz),3.23−3.32(4H,m),3.74(4H,s),6.88(2H,brs),7.43−7.52(4H,m),7.57−7.66(2H,m),7.95−8.00(4H,m)。
【0096】
第三工程:化合物(8)の合成.
50mLナス型フラスコに上記ジチオエステル化体(6a)2.15(5mmol)、メタノ−ル20gを量り取り、これに20%水酸化ナトリウム水溶液2.00g(10mmol)を加え、窒素気流下室温で2時間攪拌した。これに上記ジアシル化体(5a)1.14g(5mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。生じた白色固体をろ取した後、水、メタノ−ルで順次洗浄し、上記式(8)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物[以下、化合物(8)と称する。]を収量1.43g、収率76.1%で得た。
【0097】
H−NMR(DMSO−d)δ:1.50−1.57(4H,m),3.01−3.10(8H,m),3.19(8H,s),8.05(4H,brs)。
【0098】
合成例2.
第一工程において、1,3−プロパンジアミン3.71gの代わりに1,2−エチレンジアミン3.01gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(9)
【0099】
【化11】

で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を調製した(収量1.74g、ジアミンからの収率71.1%)。
【0100】
H−NMR(DMSO−d)δ:1.34−1.42(8H,m),3.01−3.10(8H,m),3.18(8H,s),8.03(4H,brs)。
【0101】
合成例3.
第一工程において、1,3−プロパンジアミン3.71gの代わりに1,4−ブタンジアミン4.41gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(10)
【0102】
【化12】

で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を調製した(収量1.96g、ジアミンからの収率78.5%)。
【0103】
H−NMR(DMSO−d)δ:1.50−1.57(4H,m),3.01−3.10(8H,m),3.19(8H,s),8.05(4H,brs)。
【0104】
合成例4.
第一工程において、1,3−プロパンジアミン3.71gの代わりに1,2−シクロヘキサンジアミン5.71gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(11)
【0105】
【化13】

で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を調製した(収量2.26g、ジアミンからの収率89%)。
【0106】
H−NMR(DMSO−d)δ:1.17−1.28(8H,m),1.61−1.87(8H,m),3.16(8H,s),7.86(4H,brs),4H未検出(水のピークとオーバーラップしていると推定)。
【0107】
合成例5.
第一工程において、1,3−プロパンジアミン3.71gの代わりに1,2−フェニレンジアミン5.41gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(12)
【0108】
【化14】

で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を調製した(収量1.88g、ジアミンからの収率75.7%)。
【0109】
H−NMR(DMSO−d)δ:7.11−7.21(4H,m),7.50−7.60(4H,m),9.59(4H,brs),未検出の8H(水のピークとオーバーラップしていると推定した)。
【0110】
合成例6.
第一工程において、1,3−プロパンジアミン3.71gの代わりに1,2−エチレンジアミン3.01g及び3−クロロ塩化プロピオニル15.24gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(13)
【0111】
【化15】

で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を調製した(収量1.95g、ジアミンからの収率55.5%)。
【0112】
H−NMR(DMSO−d)δ:2.28−2.35(8H,m),2.64−2.71(8H,m),3.08−3.15(8H,m),7.76(4H,brs)。
【0113】
合成例7.
第一工程において、1,3−プロパンジアミン3.71gの代わりに牛脂プロピレンジアミン(花王社製、商品名:ジアミン RRT)9.51g及びクロロ塩化アセチル8.47gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(5b)
【0114】
【化16】

[上記式(5b)において、Rで示される置換基は、牛脂由来の長鎖アルキル基(例えば、セチル基、ステアリル基、オレイル基等を含む。)である。]
で示されるジアシル化体を収量12.59g、収率89.3%で得た。
【0115】
次に第三工程において、ジアシル化体(5a)1.14gの代わりに前述のジアシル化体(5b)12.58gとジチオエステル化体(6a)11.53gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(14)
【0116】
【化17】

[上記式(5b)において、Rで示される置換基は、牛脂由来の長鎖アルキル基(例えば、セチル基、ステアリル基、オレイル基等を含む。)である。]
で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を収量15.40g、収率92.9%で得た[上記式(14)において、Rで示される置換基は、牛脂由来の長鎖アルキル基(セチル基、ステアリル基、オレイル基等)である]。
【0117】
H−NMR(CDCl)δ:0.85−0.91(m,牛脂アルキル基由来ピーク),1.25−1.31(m,牛脂アルキル基由来ピーク),1.50−2.03(m,牛脂アルキル基由来ピーク),3.26−3.52(m,18H),5.32−5.38(m,牛脂アルキル基由来ピーク),7.36(1H,brs),7.58(1H,brs),7.70(1H,brs),未検出の4H(牛脂アルキル基由来ピークとオーバーラップしていると推定した)。
【0118】
合成例8.
第三工程において、ジアシル化体(5a)1.14gの代わりに1,6−ジブロモヘキサン1.43gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(15)
【0119】
【化18】

で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を調製した(収量1.16g、ジアミンからの収率70.0%)。
【0120】
H−NMR(DMSO−d)δ:1.34−1.39(8H,m),1.50−1.63(12H,m),2.55−2.61(8H,m),3.05−3.17(16H,m),8.00−8.04(4H,brs)。
【0121】
合成例9.
第三工程において、ジアシル化体(5a)1.14gの代わりに1,9−ジブロモノナン1.43gを用いる以外は、合成例1と同様にして、下記式(16)
【0122】
【化19】

で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を調製した(収量1.34g、ジアミンからの収率71.1%)。
【0123】
H−NMR(CDCl)δ:1.28−1.39(20H,m),1.53−1.80(12H,m),2.51−2.58(8H,m),3.23(8H,s),3.29−3.41(8H,m),7.36(4H,brs)。
【0124】
実施例1.
パラジウム、白金、及びロジウムを各々50mg/L含む1mol/L塩酸溶液10mLに、合成例1で合成したアミド含有環状スルフィド化合物を10mg添加して室温で1時間攪拌した。その後、孔径0.45μmのメンブレンフィルタ−を用いてろ過し、ろ液中の残存金属濃度をICP発光分光器(Perkin Elmaer社製、製品名:OPTIMA3300DV)にて測定した。残存金属濃度と攪拌前の初濃度とから、各金属の吸着率を求めた結果、パラジウム吸着率は96.0%、白金吸着率は7.0%、ロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。
【0125】
なお、アミド含有環状スルフィド化合物の使用量を5mg、2.5mgと低減した場合でもパラジウム選択的な吸着が見られた。アミド含有環状スルフィド化合物を2.5mg使用したときの、アミド含有環状スルフィド化合物1g当たりのパラジウム吸着量は、0.8mmol/g−Ligandであった。以上の結果(パラジウムイオン吸着剤のアミド含有スルフィド量と金属吸着率との関係)を図1に示す。
【0126】
実施例2.
合成例2で合成したアミド含有環状スルフィド化合物を吸着剤として10mg用い、実施例1と同様にパラジウム、白金、及びロジウムの吸着を行った結果、パラジウム吸着率は64.8%、白金吸着率は3.8%、ロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。
【0127】
実施例3.
合成例3で合成したアミド含有環状スルフィド化合物を吸着剤として10mg用い、実施例1と同様にパラジウム、白金、及びロジウムの吸着を行った結果、パラジウム吸着率は80.4%、白金吸着率は4.6%、ロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。
【0128】
実施例4.
合成例4で合成したアミド含有環状スルフィド化合物を吸着剤として10mg用い、実施例1と同様に行った結果、パラジウム吸着率は57.0%、白金吸着率は0%、ロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。
【0129】
実施例5.
合成例5で合成したアミド含有環状スルフィド化合物を吸着剤として10mg用い、実施例1と同様に行った結果、パラジウム吸着率は33.6%、白金吸着率は1.0%、ロジウム吸着率は1.2%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。
【0130】
実施例6.
合成例6で合成したアミド含有環状スルフィド化合物を吸着剤として10mg用い、実施例2と同様に行った結果、パラジウム吸着率は48.4%、白金吸着率は1.6%、ロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。
【0131】
実施例7.
50mLナス型フラスコに合成例1で合成したアミド含有環状スルフィド化合物0.2g、ジメチルスルホキシド(DMSO)10gを量り取り、50℃で1時間攪拌した。その後シリカゲル(和光純薬工業社製、商品名:ワコ−ゲルC−300)1.8gを加え、更に50℃で1時間攪拌した。DMSOを減圧下にて留去した後、得られた白色粉末を水で洗浄し、さらに室温で減圧乾燥することによりアミド含有環状スルフィド化合物を10重量%の割合で含浸担持させたシリカゲルを調製した。これをパラジウムイオン吸着剤として100mg用い(そのうち、当該アミド含有環状スルフィド化合物を10mg含有していた)、実施例1と同様にパラジウム、白金、及びロジウムの吸着を行った。その結果、パラジウム吸着率は98.6%、白金吸着率は3.8%、ロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。
【0132】
なお、パラジウムイオン吸着剤100mg中のアミド含有環状スルフィド化合物の固定化量(担持量)を5mg、2.5mgと低減した場合でも、パラジウムの選択的な吸着が見られた。すなわち、アミド含有環状スルフィド化合物を2.5mg使用したときの、アミド含有環状スルフィド化合物1g当たりのパラジウム吸着量は、1.5mmol/g−Ligandであった。以上の結果(パラジウムイオン吸着剤のアミド含有スルフィド量と金属吸着率との関係)を図2に示す。
【0133】
実施例8.
実施例7に示されるパラジウムイオン吸着剤を100mg用いた金属吸着試験に引き続き、使用後の、パラジウム及び白金を吸着したパラジウムイオン吸着剤10mgを、表1に示す各種溶出液10mL中室温にて1時間攪拌し、金属を水層に溶出させた。その後、孔径0.45μmのメンブレンフィルタ−を用いてろ過し、ろ液中の溶出金属濃度をICP発光分光器(Perkin Elmaer社製、商品名:OPTIMA3300DV)にて測定した。溶出金属濃度と攪拌前の初濃度とから、各金属の溶出率を求めた。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

表1から明らかなように、溶出液として1mol/Lチオ尿素/1mol/L塩酸溶液を用いた際に、定量的にパラジウム及び白金が溶出された。
【0135】
実施例9.
50mLナス型フラスコに合成例7で合成したアミド含有環状スルフィド化合物0.1g、及びテトラヒドロフラン(THF)10gを量り取り、40℃で30分間攪拌した。その後シリカゲル(富士シリシア化学社製、商品名:SMB 300−10)0.9gを加え、更に40℃で30分間攪拌した。THFを減圧下にて留去した後、得られた白色粉末を室温で減圧乾燥することにより当該アミド含有環状スルフィド化合物を10重量%の割合で含浸担持させたシリカゲルを調製した。
【0136】
これをパラジウムイオン吸着剤として25mg用い(そのうち、当該アミド含有環状スルフィド化合物を2.5mg含有していた)、実施例1と同様にパラジウム、白金、ロジウムの吸着を行った。その結果、パラジウム吸着率は73.3%、白金吸着率及びロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。この時のアミド含有環状スルフィド1g当たりのパラジウム吸着量は、1.4mmol/g−Ligandであった。
【0137】
実施例10.
50mLナス型フラスコに合成例7で合成したアミド含有環状スルフィド化合物0.1g、テトラヒドロフラン(THF)10gを量り取り、40℃で30分間攪拌した。その後アルミナ(和光純薬工業社製、商品名:活性アルミナ)0.9gを加え、更に40℃で30分間攪拌した。THFを減圧下にて留去した後、得られた白色粉末を室温で減圧乾燥することにより当該アミド含有環状スルフィド化合物を10重量%の割合で含浸担持させたアルミナを調製した。
【0138】
これをパラジウムイオン吸着剤として400mg用い(そのうち、当該アミド含有環状スルフィド化合物を40mg含有していた)パラジウムを500mg/L含む1mol/L塩酸溶液10mLに添加して室温で2時間攪拌した。
【0139】
このようにしてパラジウムを吸着させたパラジウムイオン吸着剤40mg(パラジウム含有量12.5mg/g)を、表2に示す各種溶出液10mL中、室温にて1時間攪拌し、金属を水層に溶出させた。その後、孔径0.45μmのメンブレンフィルタ−を用いてろ過し、ろ液中の溶出金属濃度をICP発光分光器(Perkin Elmaer社製、商品名:OPTIMA3300DV)にて測定した。溶出金属濃度と初期の金属濃度とから、パラジウム金属の溶出率を求めた。結果を表2に示す。
【0140】
【表2】

表2から明らかなように、溶出液として1mol/Lチオ尿素/1mol/L塩酸溶液または10重量%エチレンジアミン水溶液を用いた際に、効率良くパラジウムが溶出された。
【0141】
実施例11.
50mLナス型フラスコに合成例8で合成したアミド含有環状スルフィド化合物0.1g、クロロホルム9mL及びメタノール1mLを量り取り、40℃で30分間攪拌した。その後シリカゲル(富士シリシア化学社製、商品名:MB5D 200−350)0.9gを加え、更に40℃で30分間攪拌した。THFを減圧下にて留去した後、得られた白色粉末を室温で減圧乾燥することにより当該アミド含有環状スルフィド化合物を10重量%の割合で含浸担持させたシリカゲルを調製した。
【0142】
これをパラジウムイオン吸着剤として25mg用い(そのうち、当該アミド含有環状スルフィド化合物を2.5mg含有していた)、実施例1と同様にパラジウム、白金、及びロジウムの吸着を行った。その結果、パラジウム吸着率は94.3%、白金吸着率は2.9%、ロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。この時のアミド含有環状スルフィド1g当たりのパラジウム吸着量は、1.8mmol/g−Ligandであった。
【0143】
実施例12.
50mLナス型フラスコに合成例9で合成したアミド含有環状スルフィド化合物0.1g、クロロホルム8mL及びメタノール2mLを量り取り、40℃で30分間攪拌した。その後シリカゲル(富士シリシア化学社製、商品名:MB5D 200−350)0.9gを加え、更に40℃で30分間攪拌した。THFを減圧下にて留去した後、得られた白色粉末を室温で減圧乾燥することにより当該アミド含有環状スルフィド化合物を10重量%の割合で含浸担持させたシリカゲルを調製した。
【0144】
これをパラジウムイオン吸着剤として25mg用い(そのうち、当該アミド含有環状スルフィド化合物を2.5mg含有していた。)、実施例1と同様にパラジウム、白金、及びロジウムの吸着を行った。その結果、パラジウム吸着率は99.7%、白金吸着率は17.6%、ロジウム吸着率は0%であり、パラジウムが高選択的に吸着された。この時のアミド含有環状スルフィド1g当たりのパラジウム吸着量は、1.9mmol/g−Ligandであった。
【0145】
実施例13.
50mLナス型フラスコに合成例7で合成したアミド含有環状スルフィド化合物0.27g、及びテトラヒドロフラン(THF)10gを量り取り、40℃で30分間攪拌した。その後シリカゲル(富士シリシア化学社製、商品名:キャリアクトQ−50)0.63gを加え、更に40℃で30分間攪拌した。THFを減圧下にて留去した後、得られた白色粉末を室温で減圧乾燥することにより当該アミド含有環状スルフィド化合物を30重量%の割合で含浸担持させたシリカゲルを調製した。
【0146】
このうちの0.3gを水に分散させた後、ガラス製の内径5mm、長さ100mmのカラムに充填した。300ppmの濃度に調製したパラジウムの1mol/L塩酸溶液をカラム上部から36mL/hの流速で75mL通液してパラジウム吸着を行い、カラム下部からの流出液中のパラジウム濃度をICP発光分光器(Perkin Elmaer社製、商品名:OPTIMA3300DV)にて測定してパラジウム吸着量を算出した。水20mLを通液してカラムを洗浄した後、1mol/Lの濃度に調製したチオ尿素の1mol/L塩酸溶液をカラム上部から36mL/hの流速で40mL通液してパラジウム脱着を行い、カラム下部からの流出液中のパラジウム濃度をICP発光分光器(Perkin Elmaer社製、商品名:OPTIMA3300DV)にて測定してパラジウム脱着量を算出した。その後水20mLを通液してカラムを洗浄した。以上のパラジウムに対する吸着及び脱着操作を1サイクルとして10回繰返し使用し、吸着剤の耐久性を評価した。結果を表3に示す。
【0147】
【表3】

表3から明らかなように、繰返し使用によるパラジウム吸着量の低下は僅かであり、10回目の使用時でも初回の約92%のパラジウム吸着量が見られた。尚、パラジウム脱着率(パラジウム脱着量のパラジウム吸着量に対する百分率)は毎回ほぼ100%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物からなるパラジウムイオン吸着剤。
【化1】

[上記式(1)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、mは1又は2の整数を表し、nは各々独立して、1〜12の整数を表し、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]
【請求項2】
一般式(1)において、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基を表し、かつカルボニル基−硫黄原子間のnが各々独立して、1〜4の整数を表すことを特徴とする請求項1に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【請求項3】
下記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物からなるパラジウムイオン吸着剤。
【化2】

[上記式(2)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは各々独立して、1〜4の整数を表す。また上記式中、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]
【請求項4】
一般式(2)において、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基を表すことを特徴とする請求項1に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【請求項5】
下記一般式(1)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物又は下記一般式(2)で示されるアミド含有環状スルフィド化合物を担体に固定化したパラジウムイオン吸着剤。
【化3】

[上記式(1)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、mは1又は2の整数を表し、nは各々独立して、1〜12の整数を表し、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]
【化4】

[上記式(2)中、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜30〜30の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは各々独立して、1〜4の整数を表す。また上記式中、Lは各々独立して、メチレン基、エチレン基、炭素数3〜8のアルキレン基、又は炭素数6〜14のアリーレン基を表す。]
【請求項6】
担体がシリカゲルであることを特徴とする請求項5に記載のパラジウムの分離方法。
【請求項7】
一般式(1)において、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基を表し、かつカルボニル基−硫黄原子間のnが各々独立して、1〜4の整数を表すことを特徴とする請求項5に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【請求項8】
一般式(2)において、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分枝状の鎖式炭化水素基を表すことを特徴とする請求項5に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤を、パラジウムを含有する水溶液と接触させ、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させることを特徴とするパラジウムの分離方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤を、パラジウムを含有する水溶液と接触させ、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させ、次いで前記パラジウムイオン吸着剤に吸着したパラジウムを、溶出液により溶出して、パラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするパラジウムの回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−62688(P2011−62688A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184290(P2010−184290)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】