説明

パラジウム触媒が充填されたフローリアクターを用いるカップリング反応

【課題】 複雑な触媒固定化操作を必要とせず、高い収率を与える、不均一系パラジウム触媒を用いたカップリング反応を提供する。
【解決手段】 パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行う方法であって、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行う方法に関するものである。パラジウム触媒を用いる化学反応は数多く知られているが、なかでもカップリング反応は、炭素―炭素の結合を形成する手法の一つとして、有機化合物の合成に欠かせない反応である。
【背景技術】
【0002】
パラジウム触媒を用いるカップリング反応には、例えば、Mizoroki-Heck反応、Sonogashira反応、 Suzuki-Miyaura反応、Stille反応がある。これらカップリング反応においては、一般に、パラジウム触媒は、触媒が反応溶液中に溶解した均一系触媒として使用される。
【0003】
パラジウム化合物は高価であるため、繰り返しての使用が求められる。しかしながら、均一系の反応では、反応溶液中にパラジウム触媒が溶解しており、パラジウム触媒を反応溶液から分離するためには煩雑な操作が必要となる。そこで近年、固体の状態でパラジウム触媒を用いること、すなわち、パラジウム触媒を不均一系触媒として用いることが検討されはじめている。不均一系触媒には、反応終了後に濾過という操作だけで反応溶液とパラジウム触媒とを分離出来る長所がある。
【0004】
非特許文献1には、活性炭に担持した固体のパラジウム触媒を用い、回分式反応器にて薗頭カップリング反応を実施した結果が報告されている。しかしながら、反応時間6時間での目的生成物の収率は77%と低い。
非特許文献2には、活性炭に担持した固体のパラジウム触媒を用い、回分式反応器にてブロモベンゼンとアクリル酸メチルのMizoroki-Heckカップリング反応を実施した結果が報告されている。しかしながら、反応温度160℃、反応時間12時間での目的生成物の収率はわずか36%である。このように、固体のパラジウム触媒を回分式反応器で用いても、溶液中の反応基質と固体触媒との接触効率が足りず、収率が低いという問題があった。
【0005】
また、回分式反応器の問題を解決する方法として、マイクロリアクターを用いることが提案されている。
例えば、非特許文献3には、基質が流通するマイクロリアクターの流路表面に、パラジウム金属を担持させて、カップリング反応を行う方法が報告されている。しかしながら、パラジウム金属が流路に担持されているので、パラジウム金属が触媒活性を失った場合には、パラジウム担持流路を有するマイクロリアクターを交換しなければならないという問題がある。また、この方法では、触媒は、粒子の形状ではない。
非特許文献4には、触媒がイオン交換樹脂に固定化されている粒子を充填したマイクロフローリアクター中で、カップリング反応を行う方法が報告されている。しかしながら、この方法には、生成物の収率が低い、および触媒の固定化が煩雑であるという欠点がある。
非特許文献5には、イオン交換樹脂を流路に充填した後、パラジウム触媒をイオン交換樹脂表面に固定し、これを触媒とするカップリング反応が報告されている。しかしながら、パラジウム触媒を固定化する操作が必要である上に、生成物の収率が低いという問題がある。
【0006】
【非特許文献1】R. G. Heidenreich et al., Synlett, 2002, 7, 1118-1122.
【非特許文献2】M. Arai et al., Reaction Kinetics and Catalysis Letters, 2004, 81, 281-289.
【非特許文献3】G. M. Greenway et al., Sensors and Actuators B, 2000, 63, 153-158.
【非特許文献4】S. J. Haswell et al., Lab on a Chip, 2001, 1, 164-166.
【非特許文献5】W. Solodenko et al., European Journal of Organic Chemistry, 2004, 3601-3610.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複雑な触媒固定化操作を必要とせず、高い収率を与える、不均一系の固体パラジウム触媒を用いたカップリング反応を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることによって、反応基質と固体触媒との接触を改善させることが可能となり、カップリング反応の収率を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行う方法であって、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることを特徴とする方法に関する。
本発明は、流通式マイクロリアクターにおいて、パラジウム触媒の存在下で第1基質および第2基質からカップリング反応生成物を製造する方法であって、
固体粒子のパラジウム触媒がマイクロリアクターに充填されている方法にも関する。
さらに、本発明は、固体粒子のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターにも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カップリング生成物の収率が高い。
本発明によれば、激しい物理的撹拌などを用いずに、反応基質と固体触媒との接触を改善できる。
回分式反応器に比較して、高い安全性で、高温および高圧の反応条件を使用できる。
【0011】
また、本発明によれば、カップリング反応の際に生じる反応熱を効率的に除去できる。
さらに、本発明によれば、パラジウム触媒の分離工程に必要なエネルギーやコストが省略できる。
本発明においては、固体パラジウム触媒をマイクロリアクターの壁面に固着していないため、触媒の交換が簡単に行える。また、激しい物理的撹拌による固体触媒の粉砕も生じないため、反応後の触媒回収も容易に行える。回収後の触媒を再生し、再び反応に使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において用いられる流通式マイクロリアクターとは、固体パラジウム触媒とそれを保持する反応管から構成される。この反応管内部に充填された固体パラジウム触媒は微粒子の形状であるので、反応管の内部にマイクロメートルからナノメートルスケール(例えば、2千μm〜2nm)の微小な流路が形成され、ここを反応基質溶液が流れていく過程で高効率の触媒反応が進行する。反応管は、一般に、チューブ状の形状をした管である。反応管(断面は、一般に、円形形状である。)の直径(内径)の上限は、100mm、例えば50mm、特に20mm、特別には10mmであってよい。反応管の直径の下限は、特に限定されないが、例えば、0.1mm〜3.0mm、特に1.0mmであってよい。
反応管の長さ(粒状パラジウム触媒が充填されている部分の長さ)の下限は、1cm、例えば5cm、特に10cm、特別には15cmであり、マイクロリアクターの長さの上限は、500cm、例えば200cm、特に100cm、特別には50cmである。
反応管は、種々の材質からできていてよい。材質の例は、
樹脂(例えば、フッ素樹脂(例示すれば、ポリテトラフルオロエチレン、テフゼル(登録商標、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体))、ピーク(PEEK)樹脂、ポリフェニルスルフォン)、
金属(ステンレス、チタニウム、ハステロイ(登録商標))、
酸化物(例えば、フューズドシリカなどの無機酸化物)である。
【0013】
流通式マイクロリアクターには、粒状のパラジウム触媒が充填されている。パラジウム触媒は、金属パラジウムが担体(または支持体)に担持されているものである。担体は、炭素(特に、活性炭)、金属酸化物、炭化ケイ素であることが好ましい。金属酸化物の例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム又はそれらの混合物である。金属酸化物の別の例としては、アルミナ、シリカ、ゼオライト、メソポーラスモレキュラーシーブ、ガラス(特に、多孔質ガラス)、クレーなどが挙げられる。
【0014】
パラジウム触媒は、粒子の形態である。パラジウム触媒は、触媒総重量に対して0.1〜20重量%、例えば0.3〜10重量%、特に2.0〜5.0重量%のパラジウムを含有する。触媒粒子の形状は、特に限定されないが、球状、柱状、膜状などである。パラジウム触媒の粒子の平均寸法(特に、平均最大寸法)は、一般に0.1μm〜3000μm、例えば1.0μm〜100μm、特に10μm〜30μmであってよい。
パラジウム触媒は、通常の公知の方法に従って、例えば、担体を金属化合物の溶液に浸漬することによって調製できる。
パラジウム触媒としては、市販品を使用することができる。パラジウム触媒の市販品の例は、N.E.Chemcat(株)から入手できるAER型、BNA型、STD型、Degussaから入手できるE105CA/W型、E10N/D型、E101R/D型である。本発明には、容易に得られるパラジウム触媒市販品を用いることができるという利点がある。
【0015】
本発明は、パラジウム触媒によって触媒されるあらゆるカップリング反応に使用できる。
第1基質と第2基質とのカップリング反応によって、カップリング反応生成物が得られる。第1基質は、パラジウムに対して酸化的付加を行いうる化合物であり、第2基質は、脱離する基を有する化合物である。
第1基質、第2基質および反応生成物が次式のとおりであることが好ましい。
R−X +A−R’ → R−R’
【0016】
Rは、不飽和または飽和の脂肪族基(炭素数:例えば、1〜20)、芳香族基(炭素数:例えば、6〜40)、芳香脂肪族基(炭素数:例えば、7〜40)である。R’はどのような基であってもよいが、炭素原子を有する有機基であることが好ましい。R’の例は、Rと同様のものである。RおよびR’は、構成原子(例えば、環構成原子)として酸素および/または窒素を有していてもよい。RおよびR’は、置換基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。Xは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナートである。Aは、脱離する基である。脱離する基の例は、水素原子;銅などの金属原子;ホウ素原子、スズ原子またはケイ素原子を有する基である。
【0017】
第1基質のパラジウムへの酸化的付加によってR−X結合が切断され、中間体:R−Pd−Xが生成される。第1基質はハロゲン含有化合物であることが好ましい。したがって、パラジウムに対する酸化的付加のために切断される結合がハロゲン−炭素結合であることが好ましい。
【0018】
カップリング反応の具体例は、次のとおりである。
(1)R−X + HC=CH−R” → R−HC=CH−R”
(Mizoroki-Heckカップリング反応)
(2)R−X + HC≡C−R” → R−C≡C−R”
(Sonogashiraカップリング反応)
(3)R−X + A−R” → R−R”
(Suzuki-Miyauraカップリング反応およびStilleクロスカップリング反応)
Suzuki-Miyauraカップリング反応は、次のような反応であることが好ましい。
R−X + A−HC=CH → R−HC=CH
【0019】
上記式において、
RおよびR”の例は、不飽和または飽和の脂肪族基(炭素数:例えば、1〜20)、芳香族基(炭素数:例えば、6〜40)、芳香脂肪族基(炭素数:例えば、7〜40)である。RおよびR”は、構成原子(例えば、環構成原子)として酸素および/または窒素を有していてもよい。脂肪族基、芳香族基および芳香脂肪族基は、置換基で置換されていても置換されていなくてもどちらでもよい。置換基の例は、ヒドロキシル基、オキシアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基又は シリル基である。置換基の炭素数は、一般に、0〜40である。RおよびR”の具体例は、アルキル基(炭素数:例えば、1〜20)、アリール基(炭素数:例えば、6〜40)、アルケニル基(炭素数:例えば、2〜20)、アルキニル基(炭素数:例えば、2〜20)である。
Xは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナートである。
は、脱離する基、例えば、−BL(Bはホウ素原子、Lは、ヒドロキシル基、アルキル基(炭素数は例えば、1〜8))、−SnBu(Snはスズ原子、Buはブチル基である。)、−SiEtX'2(Siはスズ原子、Etはエチル基、X'は塩素などのハロゲン原子)である。
【0020】
第1基質の具体例は、ニトロブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ブロモアセトフェン、メトキシヨードベンゼン、ブロモピリジンである。
第2基質の具体例は、
二重結合を有する化合物として、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン、α―メチルスチレン、アクリロニトリル、α―メチルアクリロニトリル、
三重結合を有する化合物として、フェニルアセチレン、1−ヘキシン、1−ヘプチン、5−ヒドロキシペンチン、
二重結合も三重結合も有しない化合物として、9−オクチル−9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンである。
本発明において、第2基質の量は、第1基質1モルに対して、0.5〜3モル、例えば0.8〜2.0モル、特に1モルである。
【0021】
カップリング反応においては、基質のみで反応を行うことができるが、溶媒(一般に、有機溶媒)を使用してもよい。溶媒は、カップリング反応に対して不活性であることが好ましい。溶媒の例は、脂肪族炭化水素(例えば、オクタンおよびシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン)、ケトン(例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール)、含窒素化合物(例えば、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ピロリジンやピリジンなどのアミン系溶媒)、である。溶媒は、基質および反応生成物を溶解することが好ましい。溶媒は、塩基として働くものであってもよい。溶媒の1気圧での沸点は、好ましくは130℃以上、例えば130〜210℃である。溶媒の量は、基質(第1基質および第2基質の合計)1重量部に対して、0.1〜100重量部、例えば1〜10重量部であってよい。
カップリング反応においては、塩基が存在してもよい。塩基の具体例は、アルカリ金属塩(例えば、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、アミン(例えば、ピペリジン、ピリジン、トリエチルアミン)、水酸化物(例えば、水酸化カリウム)、である。塩基の量は、第1基質1当量に対して、1当量以上、例えば1.0〜10当量であってよい。
【0022】
カップリング反応の反応温度は、例えば、10〜300℃、特に100〜210℃であってよい。反応時間(滞留時間)は、例えば1.0〜300分、特に10〜180分、特別には30〜120分であってよい。基質混合物(基質および必要により存在する溶媒および塩基)の流速は、例えば、内径が0.2〜5mmのマイクロリアクターの場合に特に、0.001〜10mL/h、特別に0.1〜1.0mL/hであってよい。
【0023】
本発明においては、微小な流路を有する反応管によって構成されるマイクロリアクターを用いる。
図1は、本発明で用いる反応装置の概略を示す。反応装置は、シリンジポンプ10およびマイクロリアクター20を有する。マイクロリアクター20において、粒状のパラジウム触媒(Pd/C、すなわち、炭素に担持されたパラジウム)が、Xcmの距離にわたって充填されている。
図2は、マイクロリアクター20の一部分の拡大断面図である。粒状のパラジウム触媒22がマイクロリアクター中に充填されている。基質24は矢印の方向(右方向)に流動する。
【0024】
本発明においては、
(1)マイクロリアクターの入口から基質を導入し、
(2)マイクロリアクター中で基質を触媒と接触させてカップリング反応を行って反応生成物を生成させ、
(3)反応生成物がマイクロリアクター出口から出てくる。
【実施例】
【0025】
次に、実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例により制限されるものではない。
【0026】
製造例1
内径1.0mmのステンレス製チューブ(長さ:5cm、10cmまたは15cm)に、粒状パラジウム触媒を充填して、パラジウム充填マイクロリアクターを製造した。チューブの両末端のそれぞれにフィルターを装着し、チューブ内に粒状パラジウム触媒を保持した。得られたパラジウム充填マイクロリアクターを反応に用いた。
【0027】
実施例1
Mizoroki-Heckカップリング反応
パラジウム触媒として、Degussaから入手できるE105CA/W型(Pd量:5重量%、担体:カーボン、平均粒子寸法:20μm)を用いた。
p−ブロモニトロベンゼン(第1基質)0.505g(0.0025モル)、アクリル酸メチル(第2基質)0.253g(0.0025モル)、N−メチル−2−ピロリドン5.0mL、およびトリエチルアミン0.253g(0.0025モル)を混合し、溶液を得た。溶液をシリンジに装填した。シリンジから溶液を流速0.1mL/hでパラジウム充填マイクロリアクター(温度:140℃、長さ5cm)(マイクロリアクターには、乳鉢で微細粒にすりつぶした炭酸ナトリウム0.004g(0.000038モル)も充填されている。)に注入し、滞留時間20分で反応を行い、カップリング生成物を得た。収率は、92%であった。
【0028】
【化1】

【0029】
本実施例で得られた収率(92%)は、M. Arai et al., Reaction Kinetics and Catalysis Letters, 2004, 81, 281-289(非特許文献2)において、バッチ式でPd/C触媒を用いて160℃で12時間反応を行うことにより得られた収率36%よりも優れたものとなっている。
【0030】
実施例2
薗頭カップリング反応
パラジウム触媒として、N.E.Chemcat(株)から入手できるAER型を用いた。
ヨードベンゼン(第1基質)0.51g(0.0025モル)とフェニルアセチレン(第2基質)0.306g(0.003モル)(第1基質と第2基質のモル比1:1.2)に、ピロリジン0.213g(0.003モル)およびN,N−ジメチルアセトアミド5.0mLを混合し、シリンジに装填した。シリンジから溶液を流速0.1mL/hでパラジウム充填マイクロリアクター(温度:100℃)に注入し、反応を行い、カップリング生成物を得た。以下のような収率を得た。
【0031】
【化2】

【0032】
【表1】

【0033】
本実施例で得られた収率(99%)は、R. G. Heidenreich et al., Synlett, 2002, 7, 1118-1122(非特許文献1)において、バッチ式でPd/C触媒を用いて100℃で6時間反応を行うことにより得られた収率77%よりも優れたものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、工業薬品、医薬品、農薬などとして有用な有機化合物またはその中間体を容易かつ高収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明で用いる反応装置の概略を示す。
【図2】マイクロリアクターの一部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 シリンジポンプ
20 マイクロリアクター
22 粒状のパラジウム触媒
24 基質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行う方法であって、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることを特徴とする方法。
【請求項2】
流通式マイクロリアクターにおいて、パラジウム触媒の存在下で第1基質および第2基質からカップリング反応生成物を製造する方法であって、
固体粒子のパラジウム触媒がマイクロリアクターに充填されている方法。
【請求項3】
第1基質が、パラジウムに対して酸化的付加を行いうる化合物であり、第2基質が、脱離する基を有する化合物である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1基質、第2基質および反応生成物が次式:
R−X +A−R’ → R−R’
[式中,Rは、不飽和または飽和の脂肪族基、芳香族基、芳香脂肪族基、
R’は、炭素原子を有する有機基、
Xは、ハロゲン原子、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナート、
Aは、脱離する基である。]
で示される請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1基質が、ハロゲン含有化合物であり、ハロゲン−炭素結合を有する請求項2に記載の方法。
【請求項6】
基質と反応生成物との組み合わせが、
(1)R−X + HC=CH−R” → R−HC=CH−R”
(2)R−X + HC≡C−R” → R−C≡C−R”
または
(3)R−X + A−R” → R−R”
[RおよびR”は、不飽和または飽和の脂肪族基、芳香族基、芳香脂肪族基、
Xは、ハロゲン原子、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナート、
は、脱離する基である。]
である請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
固体粒子のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−193483(P2006−193483A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7861(P2005−7861)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】