説明

パラジクロロベンゼンの製造方法

【課題】本願発明は、高いパラジクロロベンゼン選択率と高い塩素転化率の両方を同時に満足するパラジクロロベンゼンの新規な製造方法を提供する。
【解決の手段】ルイス酸触媒および助触媒の存在下、ベンゼン及び/又はクロロベンゼンを塩素分子により核塩素化反応させるパラジクロロベンゼンの製造方法であって、あらかじめベンゼン及び/又はクロロベンゼンとルイス酸触媒と助触媒との混合溶液を反応器に連続供給し、更に、塩素ガスを別のラインから前記反応器に連続供給し、撹拌しながら反応させ、パラジクロロベンゼンが生成した反応液を連続的に抜き出す、パラジクロロベンゼンの製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベンゼン及び/又はクロロベンゼンを塩素分子により核塩素化反応させてパラジクロロベンゼンを製造する際に、高い選択性でかつ未反応の塩素分子を著しく低減できる製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パラジクロロベンゼンはエンジニアリングプラスチックであるポリフェニレンサルファイド(Poly Phenylene Sulfide、いわゆるPPS)の原料であり、工業的価値が高く、また近年急激にその需要が伸びている。
【0003】
従来から液相において、ルイス酸触媒の存在下、ベンゼンやクロロベンゼンを塩素分子により塩素化することでパラジクロロベンゼンを製造する方法が知られている。例えば特許文献1には、ルイス酸に塩化第二鉄、助触媒に二塩化二硫黄を用い、反応温度35〜37℃を維持しながら塩素ガスでクロロベンゼンを塩素化することで75%の選択率でパラジクロロベンゼンを製造できる記載がある。この製法は塩素転化率が比較的高いが、工業的に需要が少ないオルトジクロロベンゼンが25%生成する。
【0004】
又、特許文献2には、ベンゼンまたはクロロベンゼンとルイス酸とN−クロロカルボニルフェノチアジンを反応器に仕込み、塩素ガスを導入して塩素化するバッチ式のパラジクロロベンゼンの製造方法が記載されている。その明細書にはベンゼンを原料とし、触媒として塩化第二鉄、助触媒としてN−クロロカルボニルフェノチアジンを用い、60℃の反応温度を維持しながら塩素化すると、パラジクロロベンゼンの選択率が82%程度に達すると記載されている。しかし、この手法では難溶性の第二塩化鉄/N−クロロカルボニルフェノチアジン錯体が生成し、反応液に十分溶解せずに沈殿する為、触媒濃度が低下して、塩素化の活性が下がり、又、反応液からこの沈殿物を濾過などにより取り除く必要がある。導入した塩素の総量及び反応液組成から計算できる塩素転化率は90%であり、排ガス(副生塩酸)に多量の未反応塩素が同伴し、工業化する場合に、副生塩酸の精製設備が必要となる、塩素ガスの原単位が悪化する、装置腐食が起き易くなるなどの問題がある。
【0005】
更に、特許文献3には反応器にベンゼンと塩化アルミニウムとフェノチアジン類を仕込んだ後、50℃を維持しながら塩素ガスを導入して2〜3時間かけて塩素化するバッチ式のパラジクロロベンゼンの製造方法が記載されており、塩素化度1.62まで塩素化したときパラジクロロベンゼンの選択率が86%程度に達すると記載されている。しかし、塩素転化率の記載がなく導入した塩素総量の記載も無いので塩素転化率を計り知ることもできず反応活性が不明である。また、ルイス酸の塩化アルミニウムは原料のベンゼンに溶存する微量の水分と即座に反応してベンゼンに不溶の水酸化アルミニウムに変わり、ルイス酸としてもはや作用しなくなることが一般的に知られている。この特許文献3にはベンゼンは乾燥及び/又は蒸留処理を行い完全に脱水したものを使用するとの記載があり(第6項)、塩化アルミニウムをルイス酸として使用する場合には操作が煩雑となる。
【0006】
特許文献4にはカリウムを担持させたL型ゼオライトを触媒に用い、原料にクロロベンゼンを用いて、70℃で塩素ガスを吹き込んでパラジクロロベンゼンを製造する方法が記載されている。この方法では反応初期にパラジクロロベンゼンの選択率が87.6%に達すると記載がある。しかし、このときの塩素転化率は99.3%と低く、更に反応を繰り返すごとに80%台にまで塩素転化率が低下している。この原因は一般的に知られているが、ゼオライト法では多塩素化物が生成しこれがゼオライトの細孔を塞ぎ触媒活性を低下させるからである。またこの製法では反応後、反応液をろ過してゼオライト触媒を取り除く操作が必要となり操作が煩雑となる。
【0007】
このように液相でベンゼンやクロロベンゼンを塩素分子により塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法として、鉄、アルミ、アンチモン金属のハロゲン化物であるルイス酸触媒と助触媒である硫黄、フェノチアジン類との組み合わせ、またはゼオライト触媒を使用した製法が開示されている。しかし、これらは高いパラジクロロベンゼンの選択率と高い塩素転化率の両方を同時に満足するものではなくどちらかを妥協せざるを得ない製法であった。また従来技術はバッチ式反応のため、反応後に反応液の抜出し行い、抜出し完了を待った後、原料および触媒を追加して再度塩素化反応を行う生産性の低い製法であった。
【0008】
【特許文献1】米国特許第3226447号(実施例5)
【特許文献2】特開昭59−206051号公報)(実施例3)
【特許文献3】特開2004−91440号公報(実施例1、実施例2)
【特許文献4】特開昭62−87536号公報(実施例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術の課題を鑑みて、高いパラジクロロベンゼン選択率と高い塩素転化率の両方を同時に満足するパラジクロロベンゼンの新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、ルイス酸触媒および助触媒の存在下、ベンゼン及び/又はクロロベンゼンを塩素分子により核塩素化反応させるパラジクロロベンゼンの製造方法であって、あらかじめベンゼン及び/又はクロロベンゼンとルイス酸触媒と助触媒との混合溶液を反応器に連続供給し、更に、塩素ガスを別のラインから前記反応器に連続供給し、撹拌しながら反応させ、パラジクロロベンゼンが生成した反応液を連続的に抜き出す反応形式を採用すれば、意外なことに高いパラジクロロベンゼン選択率と高い塩素転化率の両方を同時に満足することを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、ルイス酸触媒および助触媒の存在下、ベンゼン及び/又はクロロベンゼンを塩素分子により核塩素化反応させるパラジクロロベンゼンの製造方法であって、あらかじめベンゼン及び/又はクロロベンゼンとルイス酸触媒と助触媒との混合溶液を反応器に連続供給し、更に、塩素ガスを別のラインから前記反応器に連続供給し、撹拌しながら反応させ、パラジクロロベンゼンが生成した反応液を連続的に抜き出す、パラジクロロベンゼンの製造方法である。
【0012】
ここで、図1には本発明の実施態様の一例として連続式反応装置が挙げられている。図1では、反応器(1)へ、ベンゼンとクロロベンゼンとルイス酸触媒と助触媒との混合溶液の貯槽(11)から、ポンプ(12)により、連続的に供給する工程が示されている。また反応器(1)へ、塩素ガスを供給できる液化塩素ボンベ(16)から、マスフローコントローラ(13)を使って、吹き込み口(6)より、連続的に供給する工程が示されている。
【0013】
本発明においては、反応器中の反応液を撹拌しつつパラジクロロベンゼンが生成した反応液を反応器より連続的に抜き出す工程からなることが好ましい。
【0014】
ここで、原料となるベンゼン及び/又はクロロベンゼン、塩素、ルイス酸触媒および助触媒が反応器(1)へ連続的に供給され、反応器(1)を撹拌モーター(3)の駆動力を使って撹拌羽根(2)により反応器内を撹拌し、反応を進行させる。撹拌効率を向上させるために邪魔板(4)を反応器(1)に設置しても良い。
【0015】
反応形式は上記のように攪拌羽根による内部攪拌式でも良いし、また一般的に行われている方式であるが、攪拌羽根を用いないで反応器にバイパスラインとポンプを設置して液循環する流動攪拌方式でも可能で要は塩素と原料及び反応液の混合が十分に行われさえすれば良い。
【0016】
また本発明では、反応生成物であるパラジクロロベンゼンが生成した反応液を反応器(1)より連続的に抜き出すため、図1に見られるように、オーバーフロー反応液取り出し口(6)より反応液を抜き出すと良い。本発明に係るパラジクロロベンゼン製造の反応液を連続的に抜き出すことができるものであれば特に限定されない。このような連続的な抜き出し工程により、連続的にパラジクロロベンゼンを得られるとともに、供給塩素と反応液中の原料の滞留時間設定により反応効率を適切に制御できるからである。
【0017】
本発明に用いられる原料であるベンゼン、クロロベンゼンは市販品を使用でき、それぞれ単独、あるいは両社の混合物のいずれも使用できる。脱水処理をしていない市販の工業用ベンゼン、クロロベンゼンには水分が100ppm程度含まれるが、これらをそのまま使用してよい。また蒸留操作により水分を除去したり、乾燥後又は乾燥剤の存在下に蒸留したものを使用しても良い。
【0018】
本発明においては、ルイス酸触媒として三塩化アンチモンを使用し、助触媒としてフェノチアジン類化合物を使用することが好ましい。
【0019】
本発明に用いられるルイス酸触媒である三塩化アンチモンは市販品を使用できる。反応液の三塩化アンチモン濃度は100〜2000ppmが好ましく、特に200〜1000ppmが好ましい。
【0020】
本発明に用いられるフェノチアジン類化合物は市販品を使用してもよく、またフランス特許第1192168号、WO97/43041号公報に記載の方法又はこれらに準じた方法で種々の置換基を有するフェノチアジン類を調製することができる。
【0021】
本発明において、助触媒は以下の式(1)で表されるフェノチアジン類化合物(式中、mおよびnは各々独立して0〜3の整数のいずれかを表す。)であることが好ましい。
【0022】
【化1】

より具体的には、フェノチアジン類化合物は、N−クロロカルボニルフェノチアジン、N−カルボン酸フェニルエステルフェノチアジン、N−カルボン酸メチルエステルフェノチアジン、N−カルボン酸エチルエステルフェノチアジン及びこれらのフェノチアジン核の核塩素化物が挙げられる。特にN−クロロカルボニルフェノチアジンが安価で汎用的であり好ましい。
【0023】
フェノチアジン類の使用量は三塩化アンチモンに対して0.25〜2.0倍モルが好ましい。少ないと十分なパラ選択率が得られず、多いとコストがかかる。
【0024】
反応液にフィードする液は原料のベンゼン及び/又はクロロベンゼンと触媒の三塩化アンチモンと助触媒のフェノチアジン類化合物の混合物であり、これらは室温で混合し攪拌すれば容易に均一溶解できる。また、時間が経過しても均一溶液のままで維持でき、触媒性能も低下しない。
【0025】
核塩素化に使用する塩素は、気体状または液体状塩素を用い、好ましい塩素化度の値は0.5〜2.0の範囲であり、特に1〜1.7が好ましい。大きすぎるとトリクロロベンゼンの副生量が増え、小さすぎるとパラジクロロベンゼンの生産性が低下する。
【0026】
反応温度は30〜80℃が好ましく、特に50〜70℃が好ましい。低すぎると塩素化の反応速度が低下し、高すぎると塩素が十分溶解しない。
【0027】
本発明において溶媒を使用することもできる。好ましい溶媒として、オルトジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタンなどの塩素化化合物が挙げられる。
【0028】
本発明ではルイス酸触媒として三塩化アンチモンを使用し、助触媒としてフェノチアジン類を使用する。
【発明の効果】
【0029】
1)塩素転化率が高く、副生塩酸(排ガス)に同伴する塩素濃度を極めて低くできるため、その除外設備が不要か必要としても簡単にできる。
2)排ガス中に含まれる未反応塩素による装置腐食を抑制できる。
3)パラジクロロベンゼンの選択率(生産性)が向上する。
4)オルトジクロロベンゼンの副生量が減り装置をコンパクトにできる。
5)原料の供給および反応液の抜出しを連続して行えるのでパラジクロロベンゼンの生産性が向上する。
6)触媒と助触媒を混ぜても難溶解性の錯体が沈殿しないので、触媒と助触媒の濃度のコントロールが容易である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
【0031】
実施例1
実施例1で使用した連続式反応装置を図1に示す。
【0032】
オーバーフロー反応液取り出し口(15)、邪魔板(4、4枚)、攪拌機(3)、攪拌羽根(2)、上部に約5℃を維持する冷却管(7)が付いた円筒状ガラス製容器(反応器)(1)を使用した。反応器の外径は10cmで、底から高さ15cmの位置に反応液オーバーフローラインが設置されており、攪拌羽根は2段で4枚設置されている。貯槽(11)に4200gのベンゼン、2811gのクロロベンゼン(ベンゼンとクロロベンゼンのwt比=60/40)、ルイス酸として5.23gの三塩化アンチモンを溶解した(三塩化アンチモンの濃度は745wtppm)。使用したベンゼン中に存在する水分は160ppm、クロロベンゼン中に存在する水分は120ppmであった。以下の実施例および比較例についても上記水分を含んだベンゼン、クロロベンゼンを使用した。
【0033】
次に貯槽(11)に助触媒のフェノチアジン類として5.99gのN−クロロカルボニルフェノチアジンを添加後(N−クロロカルボニルフェノチアジン/三塩化アンチモンモル比=1.0)、攪拌した。貯槽(11)は均一溶液となった。貯槽(11)の液をポンプ(12)を使用して反応器に197g/Hrの速度で連続的にフィードしながら、別ラインより、液化塩素ボンベ(16)からマスフローコントローラ(13)により流量調節して、塩素ガスを攪拌下187g/Hrの速度で反応器底部から吹き込み60℃を維持しながら連続フィードした。
【0034】
上記条件で反応液の液体積はオーバーフローラインまで1.16リットル、反応液の反応器での滞在時間は5Hrで、反応途中、反応液は茶色で澄んでいた。
【0035】
副生塩酸ガスを含む排ガス(8)は、冷却管(7)を通して反応器(1)の上部に放出され、その冷却管(7)に5℃の水を供給口(9)から供給し、排出口(10)から排出することにより排ガスに同伴するベンゼン、クロロベンゼンの量を抑制した。
【0036】
20時間の塩素化反応後、排ガス中の未反応塩素をo−トリジン法で分析したところ7volppm(塩素転化率99.9993%)であった。またオーバーフローした反応液をガスクロマトグラフィー分析およびアンチモン分析(ICP法)したところ以下の重量組成であった。
【0037】
ベンゼン4.7%、クロロベンゼン29.7%、p−ジクロロベンゼン55.2%、o−ジクロロベンゼン10.1%、m−ジクロロベンゼン0.08%、トリクロロベンゼン0.28%、三塩化アンチモン507ppm。
【0038】
上記組成から計算するとパラ選択率(p−ジクロロベンゼン/(o−ジクロロベンゼン+p−ジクロロベンゼン)×100)は84.5%、塩素化度(ベンゼン環に置換したCl(モル)/ベンゼン環(モル))は1.51であった。
【0039】
比較例1
実施例1と同じ反応装置を使用した。
【0040】
貯槽(11)に4796gのベンゼンと3347gのクロロベンゼン(ベンゼンとクロロベンゼンのwt比=59/41)とルイス酸として3.65gの塩化第二鉄を溶解した(塩化第二鉄の濃度は450wtppm)。使用したベンゼン中に存在する水分は160ppm、クロロベンゼン中に存在する水分は120ppmであった。(以下の実施例および比較例についても上記水分を含んだベンゼン、クロロベンゼンを使用した)。貯槽(11)にフェノチアジン類として7.07gのN−クロロカルボニルフェノチアジンを添加後(N−クロロカルボニルフェノチアジン/塩化第二鉄モル比=1.2)、攪拌した。1Hr後、貯槽(11)の底部や側壁部にはフロッグ状の白色沈殿物が確認された。貯槽(11)の上澄み液をポンプ(12)を使用して反応器に200g/Hrの速度で連続的にフィードしながら、別ラインより、液化塩素ボンベ(16)からマスフローコントローラ(13)により流量調節して、塩素ガスを攪拌下187g/Hrの速度で反応器底部から吹き込み60℃を維持しながら連続フィードした。上記条件で反応液の液体積はオーバーフローラインまで1.16リットル、反応液の反応器での滞在時間は5Hrとなった。
【0041】
副生塩酸ガスを含む排ガス(8)は、冷却管(7)を通して反応器(1)の上部に放出され、その冷却管(7)に5℃の水を供給口(9)から供給し、排出口(10)から排出することにより排ガスに同伴するベンゼン、クロロベンゼンの量を抑制した。
【0042】
20時間の塩素化反応後、排ガス中の未反応塩素を2N水酸化ナトリウム水溶液に排ガスを一定時間吸収させてヨウ素滴定法で分析した結果、31.1vol%(塩素転化率68.9%)であった。またオーバーフローした反応液をガスクロマトグラフィー分析および鉄濃度分析(o−フェナントロリン法)したところ以下の重量組成であった。
【0043】
ベンゼン10.8%、クロロベンゼン50.9%、p−ジクロロベンゼン32.2%、o−ジクロロベンゼン6.0%、m−ジクロロベンゼン0.1%、トリクロロベンゼン0.1%、塩化第二鉄140ppm。
【0044】
上記組成から計算するとパラ選択率は84.3%、塩素化度は1.14であった。
【0045】
比較例2
N−クロロカルボニルフェノチアジンの添加量を2.95gにする(N−クロロカルボニルフェノチアジン/塩化第二鉄モル比=0.5)、以外は比較例1と同様の操作をした。N−クロロカルボニルフェノチアジンの添加後、貯槽(11)の底部や側壁部にはフロッグ状の白色沈殿物が確認された。
【0046】
比較例1と同様の操作を行い、20時間の塩素化反応後、排ガス中の未反応塩素をo−トリジン法で分析したところ、1000volppm(塩素転化率99.9%)であった。またオーバーフローした反応液をガスクロマトグラフィー分析および鉄濃度分析(o−フェナントロリン法)したところ以下の重量組成であった。
【0047】
ベンゼン6.2%、クロロベンゼン37.1%、p−ジクロロベンゼン32.1%、o−ジクロロベンゼン31.0%、m−ジクロロベンゼン1.35%、トリクロロベンゼン2.2%、塩化第二鉄215ppm。上記組成から計算するとパラ選択率は60.5%、塩素化度は1.49であった。
【0048】
比較例3
比較例3で使用したバッチ式反応装置を図2に示す。
【0049】
邪魔板(4、4枚)、攪拌機(3)、攪拌羽根(2)、上部に約5℃を維持する冷却管(7)が付いた円筒状ガラス製容器(反応器)(1)を使用した。反応器の外径は7.5cmで、攪拌羽根は2段で4枚設置されている。この反応器に393gのベンゼンと15gのクロロベンゼン(ベンゼンとクロロベンゼンのwt比=96/4)と0.20gの塩化第二鉄(塩化第二鉄の濃度は490wtppm)と0.38gのN−クロロカルボニルフェノチアジン(N−クロロカルボニルフェノチアジンの濃度は930wtppm)を仕込んだ(N−クロロカルボニルフェノチアジン/塩化第二鉄モル比=1.2)。また別のラインより、液化塩素ボンベ(17)からマスフローコントローラ(14)により流量調節して、攪拌下、塩素ガスを114g/Hrの速度で反応器底部から計4.5Hrかけて吹き込み、反応温度を60℃に維持した。
【0050】
副生塩酸ガスを含む排ガス(8)は、冷却管(7)を通して反応器(1)の上部に放出され、その冷却管(7)に5℃の水を供給口(9)から供給し、水の排出口(10)から排出することにより排出口(10)から排出することにより排ガスに同伴するベンゼン、クロロベンゼンの量を抑制した。
【0051】
塩素転化率は反応開始1Hr目には99.78%であったが次第に低下し、3.0Hr目には94.4%、4.5Hr目には42.4%まで大幅に低下した。また反応に伴い反応液は赤色から褐色に変化し濁りが見られた。4.5Hr目の反応液の重量組成は以下であった。ベンゼン0.5%、クロロベンゼン51.7%、p−ジクロロベンゼン43.4%、o−ジクロロベンゼン8.5%、m−ジクロロベンゼン0.11%、トリクロロベンゼン0.06%。
【0052】
上記組成から計算するとパラ選択率83.6%、塩素化度1.42、塩素転化率91.1%であった。
【0053】
以下に実施例1及び比較例1〜2の結果を纏めた表1を作成した。
【0054】
【表1】

表1中、触媒/助触媒欄に示す「化合物A」はいずれもN−クロロカルボニルフェノチアジンを示す。P選択率は、p−DCB/(p−DCB+o−DCB)×100により算出される。塩素化度は、反応液中の塩素原子(モル)/反応液中のベンゼン核(モル)により算出される。また比較例3はバッチ式であり、実施例1、比較例1、比較例2はいずれも連続式による。原料とは、ベンゼン及び/又はクロロベンゼン、ルイス酸触媒、助触媒の混合物を示す。比較例3におけるCl転化率の数値は、1.0Hr(1時間)後および4.5Hr(4.5時間)後の値を、平均はこれらの値の平均値を示す。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1及び比較例1で使用した連続式反応装置を示す図である。
【図2】比較例2で使用したバッチ式反応装置を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1:反応器
2:攪拌羽根
3:攪拌モーター
4:邪魔板
5:湯浴
6:塩素ガス吹き込み口
7:冷却管
8:排ガス(副生塩酸)
9:冷却管への水の供給口
10:冷却管からの水の排出口
11:ベンゼン+クロロベンゼン+ルイス酸+フェノチアジン類化合物貯槽
12:ポンプ
13:マスフローコントローラ
14:温度計(熱電対)
15:オーバーフロー反応液取り出し口
16:液化塩素ボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルイス酸触媒および助触媒の存在下、ベンゼン及び/又はクロロベンゼンを塩素分子により核塩素化反応させるパラジクロロベンゼンの製造方法であって、あらかじめベンゼン及び/又はクロロベンゼンとルイス酸触媒と助触媒との混合溶液を反応器に連続供給し、更に、塩素ガスを別のラインから前記反応器に連続供給し、撹拌しながら反応させ、パラジクロロベンゼンが生成した反応液を連続的に抜き出す、パラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項2】
助触媒が以下の式(1)で表されるフェノチアジン類化合物である(式中、mおよびnは各々独立して0〜3の整数のいずれかを表す。)、請求項1に記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【化1】

【請求項3】
ルイス酸触媒が三塩化アンチモンである、請求項1または請求項2に記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項4】
反応器内の温度を50〜70℃とする、請求項1〜3のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−100571(P2010−100571A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274043(P2008−274043)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】