説明

パラメトリック射出成形のシステムおよび方法

【課題】本発明は、射出成形製造プロセスによって製造された製品の本質を管理するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、リアルタイムに収集された射出成形プロセスデータに対する多変量解析を実施すること、およびリアルタイムデータが所定の製造管理限界内にあるか否かを決定することを含む。リアルタイム製造データが管理限界を超えたときには、該プロセスは管理されない状態とみなされ、管理されない状態の下で製造された製品は、射出成形製造プロセスからリアルタイムに取り除かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して射出成形製造プロセスによって製造される製品の品質を管理するための方法とシステムに関する。特に製造パラメータの解析を実施し、製造パラメータが所定の管理限界を超える場合にはプロセスから欠陥製品を取り除く、パラメトリックなリリースの方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形作業によって製造された製品の品質を評価するために、様々なプロセスおよび製品パラメータをモニターすることは周知である。最終製品の検査による品質管理は、例えば、一般的には、射出成形作業の下工程で為される。最終製品の検査は、しかしながら、成形プロセスおよび全工程に渡る何らの変動も考慮していない。結果として、事後的な製品検査は、任意の製造された欠陥製品に関与する要因を決定するためのメカニズムを提供することができない。
【0003】
統計的プロセス管理(SPC)がまた、射出成形プロセスが管理限界内で行われているか否かを決定するために、プロセス変数をモニターし、測定し、および解析するために、射出成形プロセスに適用されてきた。SPCが、管理されていない状態を、製造が再始動される前にその原因が明らかにされ修正されるべきと決定した場合には、製造プロセスは一般的には停止される。これは重大な製造中断時間を発生させ、それは製造エコノミに不利益をもたらす。さらに、SPCは製造中にモニターされる全てのプロセス変数の間の相関関係を明らかにする能力を持たない。従って、SPCでモニターされるプロセスが、異常サイクル中に検出されない欠陥製品を製造することがあり得る。
【0004】
従って、射出成形プロセスによって製造された製品に欠陥があるか否かを決定し、その後プロセスから欠陥製品を取り除く、製造プロセスパラメータを解析するシステムと方法に対するニーズが存在する。さらに、全体製造プロセスを停止することなく稼動する欠陥製品の識別、および取り除きのシステムおよび方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、射出成形プロセスのための方法とシステムを提供する。
【0006】
本発明の実施形態においては、射出成形プロセスによって製造された製品の品質管理のための方法が提供される。該方法は、射出成形プロセスデータから射出成形プロセスモデルを生成することを含む。射出モデルプロセスデータは、手動でデータ格納デバイスの中に入力され得るか、または自動的に射出モデルプロセスから収集されその後格納され得る。射出成形プロセスモデルの生成は製造プロセスのための管理限界を規定する。さらに、該方法は、リアルタイム射出成形プロセスデータを収集し、リアルタイム射出成形プロセスデータが管理限界内にあるか否かを決定することを含む。リアルタイムプロセスデータが管理限界を超えるときには、プロセスは管理されていない状態とみなされ、該方法は射出成形プロセスから、管理されていない状態の下で製造された製品を取り除く。実施形態では、リアルタイムプロセスデータが管理限界を超えたことの決定およびその後のプロセスからの製品の取り除きは、リアルタイムに生じる。このことは、射出成形プロセスの管理を製品品質と有用に結合する。
【0007】
本発明の別の実施形態においては、射出成形製造プロセスによって製造された製品をパラメトリックにリリースするための方法が提供され、該方法は、リアルタイム製造データを射出成形製造プロセスから収集し、リアルタイム製造データを所定の製造管理限界と比較することを含む。さらに、該方法は、リアルタイム製造データが所定の製造管理限界内にあるか否かを決定し、リアルタイム製造データが管理限界を超えるときに製造されたすべての欠陥製品を射出成形製造プロセスから取り除くことを含む。実施形態においては、欠陥製品がプロセスから取り除かれるときに、射出成形プロセスは、進行するかあるいは製品を製造することを続ける。
【0008】
本発明のさらなる実施形態においては、射出成形製造プロセスによって製造された製品の品質を管理するための自動化されたシステムが提供される。該システムは、所定の射出成形製造管理限界を生成するデータ解析モジュール、リアルタイム射出成形製造プロセスデータを収集するデータ収集デバイスを含む。予報モジュールはリアルタイム射出成形プロセスデータが管理限界内にあるか否かを決定する。予報モジュールと動作的に通信する分岐デバイスは、リアルタイム射出成形製造プロセスデータが管理限界を超えるときに製造された、全ての欠陥を含む可能性のある製品を取り除く。
【0009】
本発明の追加的な特徴および利点は、以下の「発明を実施するための最良の形態」において記述され明確になる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
射出成形プロセスによって製造された製品の品質を管理するための方法であって、
管理限界を有する射出成形プロセスモデルを、射出成形プロセスデータから生成することと、
リアルタイム射出成形プロセスデータを収集することと、
該リアルタイム射出成形プロセスデータが該管理限界内にあるかどうかを決定することと、
該リアルタイムデータプロセスデータが該管理限界を超える場合には、該射出成形プロセスから該製品を取り除くことと、
を包含する方法。
(項目2)
前記決定することおよび前記取り除くことが実質的に同時に生じる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記射出成形プロセスデータおよび前記リアルタイム射出成形プロセスデータは、サイクルタイム、溶融温度、充填時間、溶融圧力、冷却時間、パックタイム、静止金型温度、移動金型温度、射出時間、保持時間、噴射速度、ショットクッション、充填圧力、パック圧力、保持圧力、バック圧力、マシン分解、移動油圧力、位置移動、バレル温度、ノズル温度およびそれらの組み合わせから成るグループのうちから選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記射出成形プロセスデータをデータベースに格納することをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記射出成形プロセスを生成することは、前記射出成形プロセスデータに対する多変量解析を実施するステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記多変量解析を実施することは、主成分分析を実施すること、ホテリングT値を計算すること、DModX値を計算すること、潜在構造への投射解析を実施すること、およびそれらの組み合わせからなるグループのうちから選択される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記射出成形プロセスデータを少なくとも1つの代理変数に変換し、該少なくとも1つの代理変数に対するホテリングT値およびDModX値を計算するステップを包含する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記管理限界は、前記少なくとも1つの代理変数に対する前記ホテリングT値および前記DModX値によって定義される、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記リアルタイム射出成形プロセスデータに対するホテリングT値およびDModX値を計算し、これらの値を前記管理限界と比較するステップを包含する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記リアルタイム射出成形プロセスデータに対する前記ホテリングT値または前記DModX値のうちどちらか一方が、前記少なくとも1つの代理変数に対する該ホテリングT値または該DModX値を超える場合には、前記管理限界が超えられる、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記リアルタイム射出成形プロセスデータと前記格納された射出成形プロセスデータとを組み合わせること、および該組み合わされた射出成形プロセスデータに対する多変量解析を実施することによって、前記管理限界を調整するステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記リアルタイム射出成形プロセスを収集することおよび前記管理限界を調整することは実質的に同時に生じる、項目11に記載の方法。
(項目13)
射出成形製造プロセスによって製造された製品をパラメトリックにリリースするための方法であって、
該射出成形製造プロセスからリアルタイム製造データを収集することと、
該リアルタイム製造データを所定の製造管理限界と比較することと、
該リアルタイム製造データが該所定の製造管理限界内にあるか否かを決定することと、

該リアルタイム製造データが該管理限界を超えるときに製造されたすべての製品を、該射出成形製造プロセスから取り除くことと、
を包含する方法。
(項目14)
前記決定することおよび取り除くことは、実質的に同時に生じる、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記取り除くことの間に前記射出成形製造プロセスが進行する、項目13に記載の方法。
(項目16)
射出成形製造プロセスによって製造された製品の品質を管理するための自動化されたシステムであって、
所定の射出成形製造管理限界を生成するためのデータ解析モジュールと、
リアルタイム射出成形製造プロセスデータを収集するためのデータ収集デバイスと、
該リアルタイム射出成形プロセスデータが該管理限界内にあるか否かを決定するための予報モジュールと、
該予報モジュールと動作的に通信する分岐デバイスであって、該リアルタイム射出成形製造プロセスデータが該管理限界を超えるときに製造されたすべての製品を、該射出成形製造プロセスから取り除く、分岐デバイスと、
を備える自動化されたシステム。
(項目17)
該予報モジュールと動作的に通信するコントローラであって、
前記リアルタイム射出成形プロセスデータが前記管理限界を超える場合には、前記分岐デバイスに信号を送信するコントローラをさらに備える、項目16のシステム。
(項目18)
射出成形マシンから前記製品を取り除くためのトランスポーターをさらに備える、項目16に記載のシステム。
(項目19)
前記分岐デバイスは、前記トランスポーターから製品を取り除くゲートをさらに備える、項目18に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に従った射出成形プロセスに対する製品品質を管理するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、概して、射出成形プロセスによって製造された製品の品質を管理するためのパラメトリックリリースのシステムおよび方法に関する。パラメトリックリリースシステムは、製造された製品(つまり、リリースされた製品)が意図した品質であることを、製造プロセス中に収集される情報に基づいて保証するシステムである。製造プロセス中に監視されたデータは、製品の品質を望ましいレベルで保証するための、リアルタイムプロセス管理を維持するために使用される。パラメトリックリリースシステムによりリリースされた製品は、完成品のデータまたは完成品の検査に代えて、製造中に収集されたデータに基づく。図1を参照すると、そこでは同じ参照数字は同じ構造および要素を示すが、射出成形プロセスによって製造された製品の品質を管理するシステム10が描かれている。システム10は、射出成形製造プロセス12、データ格納デバイス14、データ解析モジュール16、データ収集デバイス18、予報モジュール20、コントローラ22、および分岐デバイス24を含む。
【0012】
射出成形製造プロセス12は射出成形マシン26を含む。射出成形マシンは当該分野において周知であり、一般的に、クランピングシステム、成形システム、スクリュー回転軸または油圧システムを有する射出システム、およびエジェクター軸を含む。射出成形マシン26は一般的には熱可塑性材料の製品28を製造し、その製品は、さらなる処理、梱包、または出荷のために、コンベヤなどのトランスポーター30によって別の位置へ移され得る。
【0013】
データ格納デバイス14は、射出成形プロセスデータを格納する。図1においては、データ格納デバイス14は射出成形マシン26から分離されて示されているが、データ格納デバイス14は、射出成形マシン26のコンポーネントとしてローカルに構成され得ることが分かる。代替案として、データ格納デバイス14は、集中データ格納データベースにさらに動作的に結合され得るネットワーク(ローカルまたはワイドエリアのネットワークなど)を介して分散され得る。実施形態においては、データ格納デバイス14は、射出成形プロセスデータを格納するために適用されるリトリーバブルファイルフォーマットを含む。リトリーバブルファイルフォーマットは、射出成形製造プロセス12、射出成形マシン26、および/または製造される製品に適合され得る。データはデータ格納デバイス14の中に手動でまたは自動的に入力され得る。
【0014】
実施形態においては、データ収集デバイス18は、複数の選ばれた射出成形プロセスパラメータ32に対する生の射出成形プロセスデータを自動的に収集するために、射出成形マシン26に動作的に結合され得る。データ収集デバイス18は、射出成形マシン26からのデジタルまたはアナログのプロセスデータ入力値を収集するために適合され得る。データ収集デバイス18は、その後、これらのデータ入力値を、データ格納デバイス14へのリトリーバブルデータポイントとして変換するか、またはそうでなければフォーマットする。これは、データ格納デバイス14に格納されたデータが将来のレビュー、および/または、解析のためにリトリーブされることを可能とする。
【0015】
プロセスパラメータ32は、任意の数の変数、パラメータ、データポイント、および/または、状態であり得、それらは、当該分野において周知であるように、一般的に射出成形プロセスの間にモニターされる。それらを限定するものではないが、データ収集デバイス18によって収集され得る適切なプロセスパラメータの例は、サイクルタイム、溶融温度、充填時間、溶融圧力、冷却時間、パックタイム、静止金型温度、移動金型温度、射出時間、保持時間、噴射速度、ショットクッション、充填圧力、パック圧力、保持圧力、バック圧力、マシン分解、移動油圧力、位置移動、バレル温度、ノズル温度、およびそれらの組み合わせを含む。
【0016】
モニターされるプロセスパラメータの数と具体的なタイプは、ユーザー設定可能であり得る。収集されるプロセスパラメータデータの数およびタイプは、射出成形プロセス全体を適切に表すために必要な数のパラメータを含むべきであることを、当業者は認識する。実施形態においては、収集された射出成形プロセスパラメータは、成形プロセスを最適化するために、格付け(qualification)評価を為し得る。この格付け解析は製品品質の観点と共に経済性の観点を含み得る。そのような評価は製造される製品の品質レベルを改善することを助け得る。
【0017】
データ解析モジュール16は、データ格納デバイス14に格納されたデータを、全体射出成形プロセスモデルを生成するために解析する。この解析は、データ間に存在する相関構造を決定するために、格納された射出成形プロセスパラメータデータをモデル化することを含む。この相関構造は、主成分分析(PCA)、ホテリングT統計、モデルへの距離(DModX)統計、および潜在構造への投射(PLS)などの多変量データ解析手法を使用して展開される。
【0018】
PCAは多変量データ解析の基礎を形成する。PCAは、当該分野において周知であるように、変数の数を減らすこと、および変数間の関係についての構造を見つけることによって変数を分類する。PCAは、データを最小二乗関係で最も良く近似する直線、平面、および多次元空間の超平面を決定する。これは、PCAがデータの自然クラスタを見つけることを可能にする。データクラスタは、データの相関構造によって、および相関構造において見られるシフトに基づく自然データグルーピングによって関係づけられる。
【0019】
ホテリングT統計は、k変数および/またはパラメータのスコアを、信頼領域としても知られる楕円体で囲まれた管理限界を有する低次元空間(たとえば、2次元空間)に要約するために使用される。信頼領域は6シグマ範囲内であり得るが、一般的には1シグマが当てられることはない。パラメータ(k)の値はモデル内の次元の数を決定する。ホテリングT統計は、ポイントをk次元空間から楕円体管理領域によって囲まれた低次元空間へ投射するための低減方法であると共に視覚的簡易化のためにも使用され得る。ホテリング関数はTで表され得、ここで、
【0020】
【数1】

ここで、A=PCAモデルにおける成分の数、tia=観測iに対するa番目のスコア、そして、sta=a番目の成分に対するスコアの分散、である。
【0021】
DModX統計は、観測の残差標準偏差に等価である。DModXはプロセスモデル平面からの距離ともみなし得る。DModX統計はプロセスの不調の検出のために使用され得、より具体的には、それはプロセスの相関構造における変化の原因となる不調を検出する。DModX統計はsで表され得、ここで、
【0022】
【数2】

ここで、eik=観察iに対する変数Xについての残差、K=変数Xの数、そして、A=PCAモデルにおける成分の数、である。
【0023】
部分最小二乗(PLS)による潜在構造への投射は、2つのデータマトリックスXおよびYを、線型多変量モデルによって、互いに関係づける方法である。潜在構造への投射は、X、Y両方の、多数の、ノイズを含んだ、共線的、および不完全でさえある変数を解析する。観測に関するパラメータにとっては、PLSモデルの正確さは、関連した変数Xの数を増すことで改善する。
【0024】
データ解析モジュール16は、データ格納デバイス14から格納されたデータをリトリーブし、前述の統計解析ツールの任意の組み合わせを使用して、射出成形プロセスデータについて、多変量統計解析を実施する。多変量解析はプロセスの管理限界を確立する射出成形プロセスモデルを生成する。モデルの中へ入力されることができる履歴データが多いほど、プロセスモデルはいっそうロバストであることを、当業者は認識する。それ故に、材料ロットの変動、湿度変化など、正常なプロセス運転中に見られるばらつきをモデルに捕らえ込むことが望ましい。
【0025】
実施形態において、データ解析モジュール16は、射出成形プロセスデータを、手動で設定可能な変換アプリケーションを用いて、1つ以上の代理変数に変換する。変換アプリケーションは、一組のプロセスパラメータを選定し、1つ以上の低次元の代理変数を得るために統計解析を実施する。変換は、一般的には、ベクトル時刻級数をスカラデータのセットに低減することを含む。データ解析モジュール16は、その後、代理変数または変数に対してホテリングT値、および/または、DModX値を計算する。これらの値は管理限界を規定するために使用され得る。
【0026】
一たびデータ解析モジュール16が許容可能な射出成形プロセスモデルを生成したならば、システム10は射出成形プロセスのリアルタイム解析のために使用され得る。データ収集デバイス18は、それは予報モジュール20に動作的に結合されるが、リアルタイム射出成形プロセスデータを、射出成形プロセスの開始時におけるパラメータ32から収集する。データ収集デバイス18によって収集されたリアルタイム射出成形データは、その後、予報モジュール20に送られ、予報モジュールは、前述の統計ツ−ルの任意の組み合わせを使用してリアルタイム射出成形データについて多変量統計解析を実施する。予報モジュール20は、データ解析モジュール16とも動作的に結合され得、予報モジュール20がリアルタイム射出成形プロセスデータを射出成形モデルと比較することを可能とする。リアルタイムプロセスデータを射出成形プロセスモデルと比較することによって、予報モジュール20は、リアルタイム射出成形データが射出成形プロセスモデルの管理限界内か否かを決定することができる。
【0027】
実施形態においては、予報モジュール20は、リアルタイム射出成形データに対してホテリングT値およびDModX値を計算する。予報モジュール20は、その後、リアルタイムデータセットから計算されたホテリングT値およびDModX値を、代理変数に対して計算されたホテリングT値およびDModX値によって規定された管理限界と比較する。これは、射出成形製品の品質が代理変数に基づきリアルタイムベースで確認されることを可能とする。リアルタイム射出成形プロセスパラメータがプロセスモデルの規定値内であるときには、射出成形プロセスは管理された状態の下にあり、製品の品質は許容可能であると考えられる。リアルタイムデータに対して計算されたホテリングT値またはDModX値のいずれかが、代理変数に対して計算された対応する値を超えるならば、予報モジュール20は、リアルタイム射出成形プロセスデータは射出成形プロセスモデル内に適合しない、と決定する。これは、射出成形製造プロセスが管理されない状態にあることを示す。プロセスが管理されない状態のときに製造された全ての製品の品質は疑わしく、欠陥を含む可能性があり、従って、使用に適さない。
【0028】
実施形態においては、予報モジュール20は、製造中にモニターされた具体的なプロセスパラメータに関する情報を提供する分類ライブラリを含む。分類ライブラリは、どのプロセスパラメータが、リアルタイムプロセスデータが管理限界を超える原因であるのかを正確に識別するために使用され得る。分類ライブラリからの情報は、リアルタイム製造プロセスデータを、管理された状態の下に戻すようにプロセスを調節するために、使用され得る。
【0029】
さらなる実施形態においては、システム10は視覚化モジュール34を含み得、視覚化モジュールは、データ解析モジュール16と予報モジュール20との間のインターフェイス、および、データ格納デバイス14に格納された任意のデータまたはデータ解析モデル16、データ収集モデル18そして予報モデル20に存在する任意のデータを、ディスプレイデバイス36でユーザーに対して視覚的に表現するロジックを含む。さらに、視覚化モジュール34は、分類ライブラリに格納されたデータ、プロセスモデル、および収集されたリアルタイムデータを表示し得る。さらに視覚化モジュール34は、データを異なる観点で選び得、またはシステム10にデータを入力し得るキーボード38を含む。生のプロセスデータと共に、データ解析モジュール16または予報モジュール20によって実施された解析の結果は、それはファイルへ出力され得、射出成形プロセス全体の視覚化を可能とする視覚化モジュール34を使用して、後に使用され得る。これは、ユーザーが個々のプロセスパラメータを視覚化すること、それらに対するCpおよびCpkなどの統計的インターフェースを作ること、管理チャートを生成すること、および管理されない状態の具体的原因を決定をすること、を可能とする。実施形態においては、データ解析モジュール16、予報モジュール20、および視覚化モジュール34は、例えば、コンピュータのような、統合処理デバイスのコンポーネントであり得る。
【0030】
別の実施形態においては、データ収集デバイス18によって収集されたリアルタイムデータは、予報モジュール20と共に、データ解析モジュール16に同時に送られ得る。この実施形態においては、データ解析モジュール16は、リアルタイムに収集されるデータと以前のプロセスデータを組み合わせ、組み合わされたデータに対して、射出成形プロセスモデルを更新するために、多変量統計解析を実施する。この適合性のあるモデリングは管理限界をもリアルタイムに調節する。適合性のあるモデリングは、プロセス内のやや長期のシフトに対して、責任をもつ、あるいはそうでなければ補正するためのメカニズムを提供するときに有用である。そのようなシフトは季節的影響(例えば、湿度、温度)または原材料特性の結果であり得る。
【0031】
コントローラ22、それは予報モジュール20と動作的に通信するが、予報モジュール20によって実行される多変量解析の結果をモニターし解析する。コントローラ22は、その後、パラメトリック射出成形プロセスを履行するに先立ち生じた初期プロセスの確認から得られた過去の履歴データおよび情報と共に予報モジュール20からの情報に基づいて、認容/拒絶の決定を下す。コントローラ22が予報モジュール20による管理されない状況下にあるとの決定を確認したときには、コントローラ22は信号を生成し、この信号を分岐デバイス24に伝送する。分岐デバイス24は、その後ゲート40をトランスポーター30に沿って移動する製品28の経路に移動させる。ゲート40は、管理されない状況の間(すなわち、リアルタイムデータに対するホテリングT値またはDModX値の一方が代理変数に対する対応する値を超えたとき)に製造された疑わしい製品42を、トランスポーター30を閉じ、リジェクトトランスポーター44へと転換させるか、またはそうでなければ取り除く。当業者は、分岐デバイスはトランスポーターの製品を取り除くことのできる任意の適切なデバイスまたはメカニズムであり得ることを認識する。それらを限定するものではないが、ゲートに代わる適切なメカニズムの例は、転換ゲート、リバーシングコンベヤベルト、およびドロップアウトメカニズムを含む。
【0032】
許容可能な製品46はさらなる処理のためにトランスポーター30に沿って移動する。コントローラ22によって生成された信号に応答して、分岐デバイス24は、それにより、全ての疑わしい製品をリアルタイムで許容可能な製品から分離する。射出成形プロセス12は、有用にも、疑わしい製品が許容可能な製品から分離されているときに止まらない。製品は、分岐デバイス34が許容不可な製品を許容可能な製品から分離または取り除くときにも製造され続ける。
【0033】
予報モジュール20が、コントローラ22に、リアルタイムプロセスデータは管理限界内であると示すときには、コントローラ22は分岐デバイス24への信号の生成を終了し、およびゲート34はトランスポーター30から引っ込んだ妨げにならない位置48(仮想線で示される)へ動く(矢印Aによって示されるように)。ゲート34が引っ込んだ位置48にあるときには、製品28は分岐させられることなく、製品28はさらなるプロセスのための許容可能な製品46として、コンベヤ30に沿って移動する。実施形態においては、視覚化モジュール34は、ユーザーが手動で分岐デバイス24の動作を制御することを可能とするコントローラ22に、動作的に結合され得る。管理されない状態が予報モデル20によって識別されたときには、製造プロセスは停止させられ得るということがさらに理解される。
【0034】
システム10は、従来のSPC方法論によってはしばしば検出されない特別な射出成形の欠陥を識別することに対して、特に適している。ダブルショットは、成形された一部分が型から取り出されず、型がその部分をふさぎ、成形プロセスを繰り返す欠陥である。ダブルショットは、さらなる組み立てを妨げる疑わしい製品を製造し、ステリリティバリア(sterility barrier)の裂け目を作る。システム10はダブルショット欠陥を識別し、射出成形プロセスから許容不可な製品を取り除く能力を有することが示された。
【0035】
本発明の有用性は、管理されない状態の決定および疑わしい製品の取り除きが、実質的に同時におよびリアルタイムで生じることである。システム10は、製品プロセスの変化の評価がリアルタイムに製品の品質の決定に寄与することを可能にする。。予報モジュール20、コントローラ22および分岐デバイス24の、リアルタイムかつ協調された動作は、システム10が、管理されない状態にある間、全体製造プロセスを停止することなく射出成形プロセスから疑わしい製品を選択的に分岐させ取り除くことを可能とする。管理されない状態は、自身で修正され得るか、または、視覚化モジュール34によってプロセスをユーザーがモニターすることによって修正され得、その場合には、許容可能な製品はさらなる処理へ継続することが可能である。これは、製造停止時間を著しく減らし、製造エコノミを改善する。
【0036】
さらに、本発明によって提供されるパラメトリックリリースおよびリアルタイム品質管理は、中間製品がすばやく下工程に送られること、および製品がより早く出荷され得ることを可能にする。さらに、本発明のシステムおよび方法は、プロセスの問題がより早く識別されることを可能とし、製造中の変動を減少させ、より一貫した製品品質をもたらす。これは、より深いプロセスへの理解、改善された準備、および意思決定能力をもたらす。
【0037】
本明細書に記述された好適な実施形態に対する様々な変更および修正は、当業者にとって明白あることが理解されるべきである。そのような変更および修正は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、および付随の利点を減らすことなく為され得る。従って、そのような変更および修正は、特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【公開番号】特開2012−176628(P2012−176628A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−136787(P2012−136787)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2007−522492(P2007−522492)の分割
【原出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(506362646)ウーメトリックス アーベー (2)
【Fターム(参考)】