説明

パルス幅・デジタル変換回路

【課題】低消費電力で動作し、回路から発生するノイズも小さい、デジタル値とパルス幅との間で相互変換する回路技術を提供する。
【解決手段】クロックを計数してその計数値をデジタル信号として出力するカウンタ3と、外部からデジタル値として入力される入力値xとカウンタ3の計数値とを比較して、所定の時点から入力値xと計数値とが一致する時点までの時間幅の出力パルスPWMを生成するパルス生成手段2と、を備えており、パルス生成手段2を複数個有しているとともに、各パルス生成手段2は、各々に入力される入力値と一つのカウンタ3が出力する共通の計数値とを比較することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル値とパルス幅との間で相互変換する回路技術に関し、特に、低消費電力で複数の入力信号を並列的にデジタル値からパルス幅へ、又はパルス幅からデジタル値へ変換するデジタル・パルス幅変換回路及びパルス幅・デジタル変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デジタル入力値を、当該デジタル入力値に比例した時間幅のパルスに変換するデジタル・パルス幅変換回路としては、クロックによって動作するカウンタの出力する計数値とデジタル入力値とを比較して、両者が一致したタイミングでパルス出力を立ち下げるものが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、図13は従来のデジタル・パルス幅変換回路の一例を示す図である(特許文献1の図1参照)。図13に示した従来のデジタル・パルス幅変換回路は、ストローブ検出回路101、ラッチ回路102、カウンタ103、デジタル・コンパレータ104、及びJKフリップ・フロップ105を備えた構成からなる。
【0004】
ストローブ検出回路101は、ストローブ信号NOT(STB)が入力されると、その後の最初のクロックCLKの立ち上がりでタイミング・イネーブル信号E1,E2を出力する。タイミング・イネーブル信号E1は、更にその次のクロックの立ち上がりでLレベルとなる。一方、タイミング・イネーブル信号E2は、リセット信号NOT(reset)がHレベルの間は常時Hレベルとなっている。
【0005】
また、ラッチ回路102には、外部から入力される16ビットのデジタル・データD0〜D15をラッチし、ラッチデータQ0〜Q15として出力する。そして、16ビットのカウンタ103は、クロックCLKを計数して、その計数値C0〜C15を出力する。また、カウンタ103は、その計数値がFFFFになると、カウント・アウト信号C.O.を出力する。
【0006】
デジタル・コンパレータ104は、ラッチデータQ0〜Q15と計数値C0〜C15とを比較して、計数値C0〜C15がラッチデータQ0〜Q15を超えるまで、JKフリップ・フロップ105にHレベルを出力し、計数値C0〜C15がラッチデータQ0〜Q15を超えた時に、この出力値をLレベルに反転する。
【0007】
JKフリップ・フロップ105は、処理サイクルの最初では、デジタル・コンパレータ104の出力信号が入力端子Jに入力され、出力QにHレベルを保持する。また、デジタル・コンパレータ104の出力信号がLレベルに反転した後の最初のクロックCLKの立ち上がりタイミングで、JKフリップ・フロップ105は、出力QをLレベルに反転する。そして、カウント・アウト信号C.O.が入力されると、JKフリップ・フロップ105は出力QをHレベルに復帰させる。
【0008】
このような構成によって、JKフリップ・フロップ105の出力Qにはデジタル・データD0〜D15の値に比例した時間幅のパルスが出力される。
【0009】
一方、パルス幅・デジタル変換回路は、従来、積分型AD変換器において広く用いられている(例えば、特許文献2,3、非特許文献1参照)。
【0010】
図14は積分型AD変換器において用いられている従来のパルス幅・デジタル変換回路のブロック図である。
【0011】
従来のパルス幅・デジタル変換回路201は、ANDゲート回路202とカウンタ203とを有する簡単な構成からなる。ANDゲート回路202には、パルス幅変調された入力パルスPWとクロックCLKとが入力される。ANDゲート回路202は、この入力パルスPWとクロックCLKの論理積からなるゲート信号gをカウンタ203に出力する。カウンタ203は、入力されるゲート信号gの立ち上がりエッジを計数し、その計数値をmビットのデジタル出力D={D0,…,Dm-1}として出力する。
【0012】
この構成により、入力パルスPWがHレベルのときにANDゲート回路202が有効となり、入力パルスPWがLレベルのときにANDゲート回路202が無効となる。ANDゲート回路202が有効である間は、クロックCLKがゲート信号gとして出力される。そして、カウンタ203は、ゲート信号gとして出力されるクロックを計数する。これにより、入力パルスPWの幅に比例したカウント値がデジタル出力D={D0,…,Dm-1}として得られる。
【特許文献1】特開平4−2222号公報
【特許文献2】特開平8−204566号公報
【特許文献3】特開昭62−265820号公報
【非特許文献1】鈴木八十二,吉田正廣著,「パルス・デジタル回路入門」,初版,日本国,日刊工業新聞社,2001年7月26日,p.225〜p.232
【非特許文献2】森江隆,岩田穆,“脳機能に学ぶ画像認識集積システム”,社団法人電子情報通信学会,電子情報通信学会技術研究報告,CAS2002-37,VLD2002-51,DSP2002-77, 2002年6月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、本発明者らにより、パルス幅を用いて演算を行うパルス幅演算回路素子(以下、「PWMピクセル回路」という。)が考案されている(例えば、非特許文献2参照)。このような素子を使用して大規模集積回路を構成する場合、図15に示すように、PWMピクセル回路304をアレイ状に配列してPWMピクセル回路アレイ305を構成する。そして、各PWMピクセル回路アレイ305での演算により得られたデータは、パルス出力トリガXRSTに従って、列番号の小さい順に、1列ずつ並列にパルス幅データPW={PW0,…,PWn-1}として出力される。ここで、nはPWMピクセル回路アレイ305の行数を表し、図15の例では、n=16とされている。尚、通常は、より集積度を上げて、nは数十〜数百程度の大きさとなる。
【0014】
このようなPWMピクセル回路の入力部においては、外部からデジタル値で並列に入力される各デジタル入力信号をパルス幅PW={PWin0,…,PWinn-1}に変換するために、デジタル・パルス幅変換回路が使用される。また、PWMピクセル回路アレイ305からパルス幅データPW={PW0,…,PWn-1}として出力されたデータを、通常のデジタル回路に入力する場合に、パルス幅・デジタル変換回路が使用される。
【0015】
しかしながら、大規模なPWMピクセル回路アレイに対して、上記従来のデジタル・パルス幅変換回路やパルス幅・デジタル変換回路を使用した場合、各デジタル・パルス幅変換回路や各パルス幅・デジタル変換回路の消費電力の総和がかなり大きくなるという問題がある。
【0016】
すなわち、多数のデジタル入力値を並列的にパルス幅変調する場合には、図13に示した従来のデジタル・パルス幅変換回路を複数個並列に配置して、それぞれのデジタル・パルス幅変換回路に対して各デジタル入力値を入力させればよい。そして、各デジタル・パルス幅変換回路から出力されるパルスを取り出すことで、並列的なパルス幅変調が可能となる。
【0017】
しかしこの場合、各デジタル・パルス幅変換回路において、クロックによるスイッチング動作が頻繁に行われる。そのため、総てのデジタル・パルス幅変換回路の駆動電力を合計すると、かなり大きな電力が消費されることとなる。従って、携帯機器のような低消費電力を要求される装置において、多数のデジタル入力値を並列的にパルス幅変調する場合に使用することは困難である。
【0018】
また、各行のPWMピクセル回路から出力する多数のパルスのそれぞれに対して、図14に示したようなパルス幅・デジタル変換回路201を使用した場合、多数のカウンタ203が並列的にスイッチング動作を行うこととなる。そのため、例えば、カウンタ203をCMOSにより構成した場合でも、カウンタ203がスイッチング時の負荷容量を充放電する際の充放電電力消費が大きくなる。この充放電電力消費の増加は、PWMピクセル回路アレイの行数nが大きいほど顕著となる。
【0019】
また、多数のカウンタ203が並列的に動作することにより、カウンタ203のスイッチング・ノイズが大きくなる。従って、回路全体のノイズ対策が必要となってくる。
【0020】
そこで、本発明の目的は、低消費電力で動作し、回路から発生するノイズも小さい、デジタル値とパルス幅との間で相互変換する回路技術を提供することにある。すなわち、複数のデジタル入力値を並列的にパルス幅に変換するデジタル・パルス幅変換回路、及び、複数の入力パルスを並列的にデジタル値に変換するパルス幅・デジタル変換回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るデジタル・パルス幅変換回路の第1の構成は、クロックを計数してその計数値をデジタル信号として出力するカウンタと、外部からデジタル値として入力される入力値と前記計数値とを比較して、所定の時点から前記入力値と前記計数値とが一致する時点までの時間幅の出力パルス、又は所定の最大計数値から前記入力値を引いた値と前記計数値とが一致する時点から前記計数値が前記最大計数値に達する時点までの時間幅の出力パルスを生成するパルス生成手段と、を備えており、前記パルス生成手段を複数個有しているとともに、前記各パルス生成手段は、各々に入力される入力値と一つの前記カウンタが出力する共通の計数値とを比較することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、各パルス生成手段は、各々に入力される入力値と計数値とが一致する時点まで出力パルス、又は所定の最大計数値から前記入力値を引いた値と前記計数値とが一致する時点から前記計数値が前記最大計数値に達する時点までの時間幅の出力パルスを出力し、両者が一致した時点で、出力パルスを立ち下げる。これにより、入力値によって指定される時間幅の出力パルスを生成する。
【0023】
ここで、各パルス生成手段は、入力値と比較する計数値として、一つのカウンタによって生成された計数値を使用する。これにより、カウンタは、各パルス生成手段へカウント値を出力するための配線のみを駆動すればよい。そのため、各々のパルス生成手段に対してそれぞれカウンタを備えた場合に比べて、大幅に消費電力を低減させることが可能となる。
【0024】
また、カウンタを一つにすることで、各々のパルス生成手段に対してそれぞれカウンタを備えた場合に比べて、回路のレイアウト面積を小さくすることが可能となる。従って、回路の小型化が可能となる。
【0025】
本発明に係るデジタル・パルス幅変換回路の第2の構成は、前記第1の構成において、前記各パルス生成手段は、外部から入力される前記入力値をラッチするパルス幅レジスタと、前記パルス幅レジスタがラッチした前記入力値の各ビットと、前記カウンタが出力する計数値の各ビットとを比較して、両者が完全に一致したときにトリガを発生するタイミングトリガ発生回路と、前記タイミングトリガ発生回路がトリガを発生したときに、前記出力パルスの真理値を反転させる出力パルス反転回路と、を備えていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、最初に、外部から入力される入力値がパルス幅レジスタにラッチされる。そして、出力パルス反転回路は出力パルスの出力を開始する。パルス幅レジスタは、入力値をラッチしてタイミングトリガ発生回路に出力する。タイミングトリガ発生回路は、カウンタの出力する計数値と、パルス幅レジスタの出力値とを比較して、両者が完全に一致するタイミングでトリガを発生する。そして、出力パルス反転回路は、タイミングトリガ発生回路からトリガが出力された時点で出力パルスを反転させて立ち下げる。これにより、各パルス生成手段は、入力値で指定される値に比例した時間幅のパルスを生成することができる。
【0027】
本発明に係るデジタル・パルス幅変換回路の第3の構成は、前記第1の構成において、前記各パルス生成手段は、前記出力パルスの立ち上がりのタイミングを表すデジタル値である基準値をラッチする基準値レジスタと、前記基準値と外部から入力されるデジタル値である前記入力値との加算値を出力する加算回路と、前記加算回路の出力値をラッチするパルス幅レジスタと、前記基準値レジスタがラッチしたデジタル値又は前記パルス幅レジスタがラッチしたデジタル値の何れか一方を切り換えて出力する切換回路と、前記切換回路から出力されるデジタル値の各ビットと、前記カウンタが出力する計数値の各ビットとを比較して、両者が完全に一致したときにトリガを発生するタイミングトリガ発生回路と、前記タイミングトリガ発生回路がトリガを発生したときに、前記出力パルスの真理値を反転させる出力パルス反転回路と、を備え、前記切換回路は、前記出力パルス反転回路が出力する出力パルスが偽値のときは、前記基準値レジスタがラッチしたデジタル値を出力し、前記出力パルス反転回路が出力する出力パルスが真値のときは、前記パルス幅レジスタがラッチしたデジタル値を出力するように切り換えを行うことを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、最初に、出力パルスの立ち上がりのタイミングを表すデジタル値(以下、「初期値」という。)が基準値レジスタにラッチされる。そして、加算回路は、外部から入力される入力値と初期値とを加算し、この加算値はパルス幅レジスタにラッチされる。この状態では、出力パルス反転回路はパルスを出力していない。従って、切換回路は、基準値レジスタにラッチされた初期値をタイミングトリガ発生回路に出力する。
【0029】
タイミングトリガ発生回路は、カウンタの出力する計数値と、基準値レジスタの出力値とを比較して、両者が完全に一致するタイミングでトリガを発生する。そして、出力パルス反転回路は、タイミングトリガ発生回路からトリガが出力された時点で出力パルスを反転させて立ち上げる。出力パルスが立ち上がると、切換回路は、パルス幅レジスタにラッチされた加算値をタイミングトリガ発生回路に出力するように切り換える。
【0030】
タイミングトリガ発生回路は、カウンタの出力する計数値と、パルス幅レジスタの出力値とを比較して、両者が完全に一致するタイミングでトリガを発生する。そして、出力パルス反転回路は、タイミングトリガ発生回路からトリガが出力された時点で出力パルスを反転させて立ち下げる。これにより、各パルス生成手段は、入力値で指定される値に比例した時間幅のパルスを生成することができる。
【0031】
このように、出力パルスの立ち上がりと立ち下がりとの切り換えを同じ回路を使用して行うことにより、回路遅延の影響を受けることなく、入力値に正比例する時間幅のパルスを生成することが可能となる。
【0032】
ここで、初期値としては、各パルス生成手段に対して共通の初期値を使用してもよく、また、パルス生成手段ごとに異なる初期値を使用してもよい。
【0033】
本発明に係るパルス幅・デジタル変換回路の第1の構成は、クロックを計数してその計数値をデジタル信号として出力するカウンタと、外部から入力される入力パルスの終端において前記カウンタが出力する計数値をラッチする終端ラッチ回路と、を備えており、前記終端ラッチ回路を複数個有しているとともに、前記各終端ラッチ回路は、一つの前記カウンタが出力する共通の計数値を、各々に入力される各入力パルスの終端においてラッチすることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、入力パルスが入力されている間、カウンタはクロックを計数し、その計数値をデジタル値として出力し続ける。そして、各入力パルスの終端において、当該入力パルスに対応する終端ラッチ回路は、カウンタの出力値をラッチする。従って、所定の時間が経過した後に各終端ラッチ回路の出力を参照することにより、各入力パルスのパルス幅に比例したデジタル値を得ることができる。
【0035】
ここで、各終端ラッチ回路は、入力パルスの終端においてラッチする計数値として、共通のカウンタが出力する計数値を使用する。カウンタは、それぞれの終端ラッチ回路に対して計数値を出力するための配線の寄生容量に抗して出力値の切り換えを行うだけであり、駆動時の消費電力は小さい。そのため、各々の終端ラッチ回路に対してカウンタを備えた構成とした場合に比べると、大幅に消費電力を低減させることが可能である。
【0036】
また、カウンタを1つにしたことによって、カウンタの出力のスイッチング時に発生するノイズを小さく抑えることができる。従って、パルス幅にジッタ・ノイズが加わることによりパルス幅デジタル変換時に生じる誤差を最小限に抑えることができる。
【0037】
また、各終端ラッチ回路は、共通のカウンタの出力値をラッチするので、各入力パルスに対する計数値の切り替わりのタイミングにばらつきが生じない。そのため、カウンタのスイッチング時のジッタによる各入力パルス間でのタイミング誤差がばらつくことを防止できる。
【0038】
本発明に係るパルス幅・デジタル変換回路の第2の構成は、前記第1の構成において、前記入力パルスの始端において前記カウンタが出力する計数値をラッチする始端ラッチ回路と、前記終端ラッチ回路のデジタル出力値と前記始端ラッチ回路のデジタル出力値との差を演算して出力する減算回路とを、各々の前記終端ラッチ回路に対応して備えていることを特徴とする。
【0039】
この構成によれば、減算回路は、始端ラッチ回路によって入力パルスの始端でラッチしたカウンタ値を、終端ラッチ回路によって入力パルスの終端でラッチしたカウンタ値から減算し、その減算値を出力する。従って、各入力パルスのパルス幅に正比例したデジタル値を、各減算回路の出力として得ることが可能となる。
【0040】
また、始端と終端でパルスのタイミングを測定するため、各入力パルス間で、始端にタイミングずれがある場合であっても、正しくパルス幅デジタル変換を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0041】
以上のように、本発明に係るデジタル・パルス幅変換回路の第1の構成によれば、各パルス生成手段が一つのカウンタによって生成された計数値を使用する構成としたことで、多数のパルスを並列的に生成させる場合でも消費電力の極めて低いデジタル・パルス幅変換回路を提供できる。また、同時に回路のレイアウト面積を小さくすることもでき、回路の小型化が実現できる。
【0042】
また、本発明に係るデジタル・パルス幅変換回路の第2の構成によれば、各パルス生成手段において、入力値で指定される値に比例した時間幅のパルスを生成することが可能なデジタル・パルス幅変換回路を提供することができる。
【0043】
また、本発明に係るデジタル・パルス幅変換回路の第3の構成によれば、各パルス生成手段は、回路遅延の影響を受けることなく、入力値に正比例する時間幅のパルスを生成することが可能となる。そのため、変換精度が高いデジタル・パルス幅変換回路を提供することができる。
【0044】
また、本発明に係るパルス幅・デジタル変換回路の第1の構成によれば、各終端回路が一つのカウンタによって生成された計数値を使用する構成としたことにより、入力パルスが多数入力され、これらに対して同時にパルス幅デジタル変換を行う場合であっても、消費電力を低く抑えることができる。特に、入力パルスの数が数十個以上となるパルス幅演算回路の出力インタフェースにおいて使用した場合、従来の回路を使用した場合に比べて顕著に消費電力を抑えることが可能となる。
【0045】
また、各終端回路が一つのカウンタによって生成された計数値を使用する構成としたことで、同時に、回路のレイアウト面積を小さくすることができ、回路の小型化が可能となる。このように、本発明に係る回路は、省電力性と省面積性を備えているため、携帯機器に使用されるLSIの内部回路等に使用するのに適する。
【0046】
更に、各終端回路が一つのカウンタによって生成された計数値を使用する構成としたことで、カウンタのスイッチング・ノイズの影響を最小限に抑えることが可能となる。従って、パルス幅デジタル変換時に生じるジッタ・ノイズの誤差を抑えることが可能となる。
【0047】
また、カウンタのスイッチング時のジッタによる各入力パルス間でのタイミング誤差がばらつくことを防止できる。従って、カウンタ製造時の公差により生じるカウンタに固有のジッタの補正も容易となる。
【0048】
本発明に係るパルス幅・デジタル変換回路の第2の構成によれば、各入力パルスのパルス幅に正比例したデジタル値を、各減算回路の出力として得ることが可能となる。従って、並列に入力される入力パルスのパルス幅に正比例するパルス幅デジタル変換を行うことが可能なパルス幅・デジタル変換回路が提供できる。また、各入力パルスの始端にばらつきがある場合であっても、正しくパルス幅デジタル変換を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0050】
図1は本発明の実施例1に係るデジタル・パルス幅変換回路の構成を表すブロック図である。本実施例に係るデジタル・パルス幅変換回路1は、並列配置された複数のパルス生成回路2−0〜2−(n-1)、及び一つのカウンタ3を有する。各パルス生成回路2−0〜2−(n-1)のデータ入力端子Dinには、mビットの各デジタル入力値x〜xn-1が入力される。そして、各パルス生成回路2−0〜2−(n-1)のパルス出力端子Poutからは、各デジタル入力値x〜xn-1に比例する時間幅のパルスPW0〜PWn-1が出力される。
【0051】
また、カウンタ3は、外部から入力されるクロックclockを計数し、mビットの計数値として出力する。また、各パルス生成回路2−0〜2−(n-1)のカウンタ値入力端子CNTには、カウンタ3から出力される計数値が共通に入力される。
【0052】
図2は図1の各パルス生成回路の構成を表すブロック図である。パルス生成回路2−i(i∈{0,1,…,n-1})は、パルス幅レジスタ12、タイミングトリガ発生回路14、及び出力パルス反転回路15を有している。
【0053】
パルス幅レジスタ12は、外部から入力されるmビットのデジタル値である入力値xを更新入力renewの立ち上がりにおいてラッチして、その値を出力ノードに出力する。タイミングトリガ発生回路14は、パルス幅レジスタ12から出力されるmビットのデジタル値の各ビットと、カウンタ3が出力するmビットの計数値の各ビットとを比較して、両者が完全に一致したときにトリガを発生する。
【0054】
このタイミングトリガ発生回路14は、m個のEXORゲート16−0〜16−(m−1)と1個のNORゲート17により構成されている。各EXORゲート16−0〜16−(m−1)の入力の一方には、パルス幅レジスタ12からの出力ビットがそれぞれ入力され、入力の他方には、カウンタ3からの出力ビットがそれぞれ入力される。そして、各EXORゲート16−0〜16−(m−1)の出力P0〜Pm-1はNORゲート17に入力される。NORゲート17は、各EXORゲート16−0〜16−(m−1)の出力P0〜Pm-1の論理和の反転出力を出力パルス反転回路15に対して出力する。
【0055】
すなわち、各デジタル入力値xi(i∈{0,1,…,n-1})、カウンタの出力値CNTを(数1),(数2)により表した場合、タイミングトリガ発生回路14の出力Tiは(数3)のように表される。但し、ここでxiは0ではないと仮定する。
【0056】
【数1】

【0057】
【数2】

【0058】
【数3】

(数3)より、タイミングトリガ発生回路14の出力Tiはデジタル入力値xiとカウンタの出力値CNTが、総てのビットにおいて一致したときに1となることが分かる。
【0059】
出力パルス反転回路15は、タイミングトリガ発生回路14がトリガを発生したときに、出力パルスPWiの真理値を反転させる。この出力パルス反転回路15は、Tフリップ・フロップ(以下、「T−FF」という。)により構成されている。出力パルス反転回路15のトリガ入力端子TにはNORゲート17からの出力値が入力される。また、出力パルス反転回路15の出力端子Qからは、パルスPWiが出力される。
【0060】
以上のように構成された本実施例に係るデジタル・パルス幅変換回路について、以下その動作を図3のタイミング・チャートを参照しながら説明する。
【0061】
まず、電源を入れた直後の初期状態では、カウンタ3の総ての計数値CNTはHレベルにあるものとし、入力値xは0であるとする。この状態で、時刻t0において、カウンタ3及びパルス幅レジスタ12に対して入力されているリセット入力resetを有効(Lレベル)とする。これにより、カウンタ3の計数値CNTは総て0リセットされる。また、パルス幅レジスタ12は、リセット信号resetがLレベルとされると、保持している記憶値を総て0にリセットする。そうすると、カウンタ3の計数値CNTとパルス幅レジスタ12の出力値とが一致し、タイミングトリガ発生回路14の出力TiはLレベルからHレベルに反転する。従って、出力パルス反転回路15の出力PoutiがHレベルに反転し、出力Poutiにパルスが出力され始める。
【0062】
次に、時刻t1において、各パルス生成回路2−iに対して、外部回路から入力値x(Xi≠(0,0,…,0))が入力される。このとき、パルス幅レジスタ12に入力されているリセット信号resetがLレベルなので、パルス幅レジスタ12の出力は総て0のままである。
【0063】
次いで、時刻t2において、リセット入力resetが無効(Hレベル)とされるとともに、更新信号renewがLレベルからHレベルに反転される。更新信号renewは、各パルス幅レジスタ12のクロックCLK入力ノードに入力されており、更新信号renewがHレベルに反転した時点で、パルス幅レジスタ12はその時点の入力値xの値をラッチする。これにより、パルス幅レジスタ12の出力値は入力値xとなる。一方、カウンタ3の計数値CNTは依然として0なので、パルス幅レジスタ12の出力とカウンタ3の計数値CNTとは一致しなくなり、タイミングトリガ発生回路14の出力TはHレベルからLレベルに反転する。また、カウンタ3は、リセット信号resetがLレベルからHレベルに反転することにより、クロックclockの計数を開始する。尚、このとき、パルス幅レジスタ12は、ラッチされた加算値xを出力し続ける。
【0064】
クロックclockとともにカウンタ3がカウントアップし、時刻t3においてカウンタ3の計数値CNTが切換回路13の出力値であるxiと一致する。このとき、タイミングトリガ発生回路14の出力値TはLレベルからHレベルに反転する。これにより、出力パルス反転回路15の出力PoutiはHレベルからLレベルに反転する。これにより、出力パルス反転回路15の出力PoutiのパルスPWiの幅が確定する。このパルス幅は、デジタル入力値xに比例することから、デジタル・パルス幅変換が行われたこととなる。
【0065】
更に、時刻t3から1クロック経過した時刻t4において、カウンタ3がカウントアップしてカウンタ3の計数値CNTが切換回路13の出力値xiと不一致となると、タイミングトリガ発生回路14の出力TiはHレベルからLレベルに反転する。
【0066】
そして、カウンタ3はカウントアップするまで計数を続ける。この間、カウンタ3の計数値CNTと入力値xiとが一致することはないので、タイミングトリガ発生回路14の出力TiはLレベルを保持し、出力パルス反転回路15の出力もLレベルに保持される。カウンタ3がカウントアップするとカウンタ3の計数値は総て0となり、1サイクルが終了する。そして、続けて同様のサイクルが繰り返される。
【0067】
以上のようにして、各パルス生成回路2−i(i=0,…,n−1)は、入力値xの値に比例した時間幅の出力パルスPWを出力する。(ただし、この時間幅は、厳密にはreset信号がLの期間の2クロック分のオフセットが入る。これは、xiからあらかじめ2を引いておくなどの処理で対処できる。)このとき、各パルス生成回路2−iは、共通のカウンタ3が出力する計数値CNTを用いて、デジタル入力値xとの比較を行う。従って、総てのパルス生成回路2−iにカウンタを備えた場合と比べると、消費電力が極めて小さくなる。
【0068】
すなわち、総てのパルス生成回路2−iにカウンタを備えた場合には、各カウンタ内のスイッチング素子はクロックごとに少なくとも一つの素子の切換が行われる。従って、例えば、スイッチング素子としてCMOSを使用した場合、切換に伴って貫通電流や負荷への充放電電流が流れる。そのため、デジタル・パルス幅変換回路全体としての消費電力は大きくなる。
【0069】
一方、本実施例のように、一つのカウンタ3を駆動し、各パルス生成回路2−iはこの共通のカウンタ3の出力値を参照してパルスの切り換えを行うようにすると、カウンタ3内のスイッチング素子の切換に伴って生じる貫通電流や負荷への充放電電流も少なく、消費電力も小さい。従って、デジタル・パルス幅変換回路1の低消費電力化が図られる。
【0070】
また、カウンタ3を共通化したことにより、回路のレイアウト面積が小さくなり、デジタル・パルス幅変換回路1の小型化が図られる。
【実施例2】
【0071】
図4は本発明の実施例2に係るデジタル・パルス幅変換回路の構成を表すブロック図である。
【0072】
図4において、実施例2に係るデジタル・パルス幅変換回路1’は、並列配置された複数のパルス生成回路2−0’〜2−(n-1)’、及び一つのカウンタ3を有する。各パルス生成回路2−0〜2−(n-1)のデータ入力端子Dinには、mビットの各デジタル入力値x〜xn-1が入力される。そして、各パルス生成回路2−0’〜2−(n-1)’のパルス出力端子Poutからは、各デジタル入力値x〜xn-1に比例するパルスPW0〜PWn-1が出力される。
【0073】
また、カウンタ3は、外部から入力されるクロックclockを計数し、mビットの計数値として出力する。このクロックclockは、各パルス生成回路2−0’〜2−(n-1)’のクロック入力端子clkにも共通に入力される。また、各パルス生成回路2−0’〜2−(n-1)’のカウンタ値入力端子CNTには、カウンタ3から出力される計数値が共通に入力される。
【0074】
更に、各パルス生成回路2−0’〜2−(n-1)’の基準値入力端子Dbには、mビットの基準値xが共通に入力される。この基準値xは、出力パルスPW0〜PWn-1の立ち上がりのタイミングを指定する値である。
【0075】
図5は図4の各パルス生成回路の構成を表すブロック図である。パルス生成回路2−i’(i∈{0,1,…,n-1})は、基準値レジスタ10、加減算回路11、パルス幅レジスタ12、切換回路13、タイミングトリガ発生回路14、及び出力パルス反転回路15’を有している。
【0076】
基準値レジスタ10は、基準値xをラッチして、そのラッチした基準値xの値を出力する。加減算回路11は、基準値xと外部から入力されるデジタル値である入力値xとの加算値x+xを出力する。パルス幅レジスタ12は、加減算回路11の出力値(加算値x+x)を更新入力renewの立ち上がりにおいてラッチする。
【0077】
切換回路13は、出力パルス反転回路15’が出力する出力パルスPWが偽値(Lレベル)のときは、基準値レジスタ10がラッチしたデジタル値xを出力し、出力パルス反転回路15’が出力する出力パルスPWが真値(Hレベル)のときは、パルス幅レジスタ12がラッチしたデジタル値x+xを出力するように切り換えを行う。
【0078】
タイミングトリガ発生回路14’は、切換回路13から出力されるデジタル値の各ビットと、カウンタ3が出力する計数値CNTの各ビットとを比較して、両者が完全に一致したときにトリガを発生する。このタイミングトリガ発生回路14’は、m個のEXORゲート16−0〜16−(m−1)、及び1個のNORゲート17により構成されている。各EXORゲート16−0〜16−(m−1)の入力の一方には、切換回路13からの出力ビットがそれぞれ入力され、他方の入力には、カウンタ3からの出力ビットがそれぞれ入力される。そして、各EXORゲート16−0〜16−(m−1)の出力P0〜Pm-1はNORゲート17に入力される。NORゲート17は、各EXORゲート16−0〜16−(m−1)の出力P0〜Pm-1の論理和の反転出力を出力パルス反転回路15’に対して出力する。
【0079】
すなわち、各デジタル入力値xi(i∈{0,1,…,n-1})、各基準値x、カウンタの出力値CNTを(数1),(数4),(数2)により表した場合、タイミングトリガ発生回路14の出力Tiは、出力パルス反転回路15’の出力値PoutがLレベルのときは(数5)、出力パルス反転回路15’の出力値PoutがHレベルのときは(数6)のように表される。
【0080】
【数4】

【0081】
【数5】

【0082】
【数6】

【0083】
出力パルス反転回路15’は、タイミングトリガ発生回路14’がトリガを発生したときに、出力パルスPWiの真理値を反転させる。この出力パルス反転回路15’は、T−FFにより構成されている。出力パルス反転回路15’のトリガ入力端子TにはNORゲート17からの出力値が入力される。また、出力パルス反転回路15’の出力端子Qからは、出力パルスPWiが出力される。
【0084】
以上のように構成された本実施例に係るデジタル・パルス幅変換回路について、以下その動作を図6のタイミング・チャートを参照しながら説明する。
【0085】
まず、時刻t1において、各パルス生成回路2−iに対して、外部回路から入力値x及び基準値xが入力される。次いで、時刻t2においてカウンタ3のリセット入力ノードR並びに各パルス生成回路2−iの基準値レジスタ10及びパルス幅レジスタ12のクロック入力ノードCLKに対して更新信号renewが入力される。基準値レジスタ10及びパルス幅レジスタ12は、更新信号renewが入力されると、その立ち上がり時点において、それぞれ、そのときの基準値x及び入力値xの値をラッチする。そして、基準値レジスタ10は、ラッチされた基準値xを出力し、パルス幅レジスタ12は、ラッチされた加算値x+xを出力する。一方、時刻tにおいては、出力パルス反転回路の出力はLレベルであるので、切換回路13は、基準値レジスタ10から入力される値xを出力する。また、カウンタ3は、更新信号renewの立ち上がりにおいて、計数値CNTを0にリセットするとともに、計数を開始する。
【0086】
次に、カウンタ3がカウントアップして、時刻t3においてカウンタ3の計数値CNTが切換回路13の出力値である基準値xと一致する。このとき、タイミングトリガ発生回路14’の出力TiはHレベルに反転する。これにより、出力パルス反転回路15’の出力PoutがLレベルからHレベルに反転し、出力パルスPWiの出力が開始される。
【0087】
時刻t4において、出力パルス反転回路15’の出力PoutがHレベルに反転すると、切換回路13の入力が切り換わって、パルス幅レジスタ12から入力される値x+xを出力するようになる。これに伴い各EXORゲート16−0〜16−(m−1)の出力値も変化するが、xi≠0であれば、EXORゲート16−0〜16−(m−1)の出力値が総て0となることはない。従って、タイミングトリガ発生回路14’の出力TiはLレベルに反転する。
【0088】
更にカウンタ3がカウントアップして、時刻t5において、カウンタ3の計数値CNTが切換回路13の出力値である加算値x+xと一致する。このとき、タイミングトリガ発生回路14’の出力TiはHレベルに反転する。これにより、出力パルス反転回路15’の出力PoutはHレベルからLレベルに反転し、出力パルスPWiの出力が停止される。このようにして、デジタル入力値xiに比例した時間幅の出力パルスPWiが生成され、デジタル・パルス幅変換が行われる。
【0089】
時刻t6において、出力パルス反転回路15’の出力がLレベルに反転すると、切換回路13の入力が切り換わり、切換回路13は基準値レジスタ10から入力される値xを出力するようになる。これに伴い各EXORゲート16−0〜16−(m−1)の出力値も変化するが、xi≠0であれば、EXORゲート16−0〜16−(m−1)の出力値が総て0となることはない。従って、タイミングトリガ発生回路14’の出力TiはLレベルに反転する。
【0090】
そして、カウンタ3はカウントアップするまで計数を続ける。この間、カウンタ値と切換回路の出力値xとが一致することはないので、出力パルス反転回路15’の出力はLレベルに保持される。カウンタ3がカウントアップすると計数を停止し、1サイクルが終了する。カウンタ3はカウントアップした後は、リセット入力ノードRが再度Hレベルに反転するまでは、カウントアップした時の出力値(総てHレベル)を維持する。
【0091】
以上のようにして、各パルス生成回路2−iは、入力値xの値に比例した時間幅の出力パルスPWを出力する。このとき、各パルス生成回路2−iは、共通のカウンタ3が出力する計数値を用いて、基準値x又は加算値x+xとの比較を行う。従って、実施例1と同様、総てのパルス生成回路2−iにカウンタを備えた場合と比べると、消費電力が極めて小さくなるため、デジタル・パルス幅変換回路1の低消費電力化が図られる。
【0092】
また、カウンタ3を共通化したことにより、回路のレイアウト面積が小さくなり、デジタル・パルス幅変換回路1の小型化が図られる。
【0093】
また、本実施例においては、基準値レジスタ10、パルス幅レジスタ12、及び切換回路13を用いて、出力パルスPWiの立ち上がりと立ち下がりのタイミングを、共通のタイミングトリガ発生回路14’を用いて発生させる構成としたことにより、回路遅延の影響を受けることなく、出力パルスPWiのパルス幅を入力値xに正確に比例させることが可能となる。
【0094】
尚、本実施例においては、基準値xbにより、各パルス生成回路2−0’〜2−(n−1)’における出力パルスの立ち上がり時点を合わせる構成例を示したが、本発明に置いては、出力パルスの立ち下がり時点を合わせる構成としてもよい。この場合、加減算回路11は、基準値xから外部から入力されるデジタル値である入力値xを減算した減算値xb−xiを出力する構成とする。また、切換回路13は、出力パルス反転回路15’が出力する出力パルスPWが真値(Hレベル)のときは、基準値レジスタ10がラッチしたデジタル値xを出力し、出力パルス反転回路15’が出力する出力パルスPWが偽値(Lレベル)のときは、パルス幅レジスタ12がラッチしたデジタル値xb−xiを出力するように切り換えを行う構成とすればよい。
【0095】
尚、各パルス生成回路2−i内に加減算回路11を用意せずに、デジタル入力信号xiとして、元々の入力値を基準値xbから加算又は減算した結果を与えるようにしてもよい。
【実施例3】
【0096】
図7は本発明の実施例3に係るパルス幅・デジタル変換回路の構成を表すブロック図である。
【0097】
実施例3に係るパルス幅・デジタル変換回路21は、カウンタ22、及びn個(n>2)の終端ラッチ回路23−0〜23−(n-1)を有している。パルス幅・デジタル変換回路21には、外部からクロックCLK、パルス出力トリガXRST、及びn個の入力パルスPW0〜PWn-1が入力される。また、電源電圧VDD及び基板電圧VSSが印加されている。
【0098】
クロックCLKには、一定の周期のパルス列が入力される。入力パルスPW0〜PWn-1は、パルス幅情報としてデータを入力するためのパルスであり、例えば、図15に示したような、各PWMピクセル回路304から出力される。パルス出力トリガXRSTは、入力パルスPW0〜PWn-1の出力開始を指示するトリガである。このパルス出力トリガXRSTには、クロックCLKの周期のM倍(M≧2m)の周期で、クロック周期分の時間幅の反転パルスが出力される。
【0099】
カウンタ22は、外部から入力されるクロックCLKを計数してその計数値CNT0〜CNTm-1をmビットのデジタル信号として出力する。各終端ラッチ回路23−i(i∈{0,1,…,n-1})は、外部から入力される入力パルスPWiの終端においてカウンタ22が出力する計数値CNT0〜CNTm-1をラッチする。そして、各終端ラッチ回路23−iは、それぞれ、ラッチした計数値CNT0〜CNTm-1をmビットのデジタル出力Di,0〜Di,m-1として出力する。
【0100】
図8は図7の終端ラッチ回路の内部構成を表すブロック図である。
終端ラッチ回路23−i(i∈{0,1,…,n-1})は、m個のラッチ24−0〜24−(m-1)、及び1個のインバータ25により構成されている。
【0101】
終端ラッチ回路23−iに入力される入力パルスPWiは、インバータ25によりレベル反転され、各ラッチ24−0〜24−(m-1)のクロック入力端子clkに入力される。また、カウンタ22の各計数値CNT0〜CNTm-1は、それぞれ、ラッチ24−0〜24−(m-1)のデータ入力端子Dに入力される。パルス出力トリガXRSTは、各ラッチ24−0〜24−(m-1)のリセット入力端子NOT(R)に入力される。各ラッチ24−0〜24−(m-1)の出力端子Qから出力されるデータは、mビットのデジタル出力データDi={Di,0〜Di,m-1}として外部に出力される。
【0102】
尚、各ラッチ回路24−0〜24−(m-1)は、図9に示したような、非同期リセット入力付きの同期型Dフリップ・フロップが用いられる。
【0103】
以上のように構成された本実施例に係るパルス幅・デジタル変換回路について、以下その動作を説明する。
【0104】
図10は実施例3に係るパルス幅・デジタル変換回路の各信号レベルの変化を表すタイムチャートである。
【0105】
クロックCLKには、一定の周期Tで、幅T/2のパルスを連続的に入力されている。パルス出力トリガXRSTは、時刻t1において、幅Tの反転パルスを出力する。これにより、各ラッチ24−0〜24−(m-1)の出力はリセットされ、デジタル出力データDiは総て0リセットされる。
【0106】
そして、パルス出力トリガXRSTの立ち上がり時点(時刻t2)から、各入力パルスPWi(i∈{0,1,…,n-1})の出力が開始される。また、それと同時に、カウンタ22は、クロックCLKの計数を開始する。カウンタ22は、クロックCLKの立ち上がりエッジにおいて、その計数値を1ずつ増加させる。
【0107】
入力パルスPWiは、例えば、図15に示したようなPWMピクセル回路304によって生成される。このとき、各PWMピクセル回路304は、パルス出力トリガXRSTの立ち上がり時点(時刻t2)から、各入力パルスPWiの出力を開始することで、カウンタ22の計数開始と同期して入力パルスPWiを出力させることができる。
【0108】
時刻t3において、入力パルスPWiはHレベルからLレベルに反転する。これにより、インバータ25の出力NOT(PWi)のレベルはLレベルからHレベルに立ち上がる。各ラッチ24−j(j∈{0,1,…,m-1})は、このインバータ25の出力NOT(PWi)の立ち上がりエッジにおいて、データ入力端子Dに入力される計数値CNTjのレベルをラッチして、これをデータ出力端子Qから出力する。
【0109】
これにより、各終端ラッチ回路23−i(i∈{0,1,…,n-1})には、入力パルスPWiの立ち下がり時点におけるカウンタ22のカウント値CNT(i)={CNT(i)0, CNT(i)1,…, CNT(i)m-1}がラッチされる。このカウント値CNT(i)は、入力パルスPWiのパルス幅に比例した値となる。
【0110】
カウンタ22が計数を開始してから少なくとも時間2m・Tだけ経過した時点で、総ての終端ラッチ回路23−0〜23−(n-1)のデジタル出力値が確定する(勿論、それ以前に確定する場合もある)。従って、この確定時点後に、各終端ラッチ回路23−0〜23−(n-1)のデジタル出力値を取り出すことにより、各入力パルスPW0〜PWn-1のパルス幅に比例したデジタル値を得ることができる。すなわち、パルス幅デジタル変換が完了する。
【0111】
このように、各終端ラッチ回路23−i(i∈{0,1,…,n-1})は、入力パルスPWiの終端で、共通のカウンタ22が出力する計数値CNTをラッチする。従って、カウンタ22は、それぞれの終端ラッチ回路23−iに対して計数値CNTを出力するための配線の寄生容量に抗して出力値(計数値CNT)の切り換えを行うだけであり、スイッチング時の消費電力は小さい。従って、上記従来のパルス幅デジタル変換を使用した場合に比べると、大幅に消費電力を低減させることが可能である。
【0112】
実際に計算機シミュレーションにより評価した結果、80個の入力パルスPW0〜PW79を並列にパルス幅デジタル変換する場合、終端ラッチ回路として、図14に示したような従来のパルス幅・デジタル変換回路を使用すると、226mWの電力が消費されることが見積もられた。それに対して、本実施例に係るパルス幅・デジタル変換回路21を使用した場合、同じ入力パルスをパルス幅デジタル変換する場合の消費電力は6.6mWであった。従って、消費電力は約1/50に抑えることができることが分かった。
【0113】
また、カウンタ22を一つにしたことによって、カウンタ22のスイッチング時に発生するスイッチング・ノイズを小さく抑えることができる。従って、回路のSN比が向上する。従って、パルス幅にジッタ・ノイズが加わることによりパルス幅デジタル変換時に生じるジッタ誤差を最小限に抑えることができる。これにより、高速パルス幅デジタル変換にも使用することができる。
【0114】
また、各終端ラッチ回路23−0〜23−(n-1)は、共通のカウンタ22の出力値CNTをラッチするので、各入力パルスPW0〜PWn-1に対する計数値CNTの切り替わりのタイミングにばらつきが生じない。そのため、カウンタ22のスイッチング時のジッタによる各入力パルスPW0〜PWn-1間でのタイミング誤差がばらつくことを防止できる。
【実施例4】
【0115】
実施例4のパルス幅・デジタル変換回路は、図7に示した実施例3のパルス幅・デジタル変換回路21において、終端ラッチ回路23−0〜23−(n-1)の部分を、図11に示した回路に置き換える。
【0116】
図11において、終端ラッチ回路23−i(i∈{0,1,…,n-1})、ラッチ24−0〜24−(m-1)、及びインバータ25の構成は、図8と同様であるため説明は省略する。本実施例に係るパルス幅・デジタル変換回路は、これらに加えて、更に、始端ラッチ回路30−i(i∈{0,1,…,n-1})及び減算回路31−iを備えていることを特徴としている。
【0117】
始端ラッチ回路30−iは、入力パルスPWiの始端(立ち上がりエッジ)において、カウンタ22から出力される計数値CNTをラッチする。減算回路31−iは、終端ラッチ回路23−iのデジタル出力値Ei={Ei,0〜Ei,m-1}から始端ラッチ回路30−iのデジタル出力値Si={Si,0〜Si,m-1}を減算した減算値を演算して、デジタル出力値Di={Di,0〜Di,m-1}として出力する。
【0118】
始端ラッチ回路30−iは、終端ラッチ回路23−iと同様に、mビットの計数値の各ビットCNT0〜CNTm-1の各々に対応してラッチ32−0〜32−(m-1)を備えている。これらのラッチ32−0〜32−(m-1)は、ラッチ24−0〜24−(m-1)と同様、図9に示した非同期リセット入力付きの同期型Dフリップ・フロップにより構成されている。
【0119】
但し、始端ラッチ回路30−i内のラッチ32−0〜32−(m-1)のクロック端子clkには、インバータ25を通すことなく、入力パルスPWiが直接入力される。そのため、ラッチ32−0〜32−(m-1)は、入力パルスPWiの立ち上がりの時点におけるカウンタ22の計数値CNTをラッチする。
【0120】
以上のように構成された本実施例に係るパルス幅・デジタル変換回路について、以下その動作を説明する。
【0121】
図12は実施例4に係るパルス幅・デジタル変換回路の各信号レベルの変化を表すタイムチャートである。
【0122】
クロックCLKには、実施例3の場合と同様、一定の周期Tで、幅T/2のパルスが連続的に入力されている。パルス出力トリガXRSTは、時刻t1において、幅Tの反転パルスを出力する。これにより、各ラッチ24−0〜24−(m-1),32−0〜32−(m-1)の出力はリセットされ、デジタル出力データEi,Siは総て0リセットされる。
【0123】
そして、パルス出力トリガXRSTの立ち上がり時点(時刻t2)から、カウンタ22は、クロックCLKの計数を開始する。カウンタ22は、クロックCLKの立ち上がりエッジにおいて、その計数値を1ずつ増加させる。
【0124】
時刻t2以後の適当な時刻t4において、入力パルスPWi(i∈{0,1,…,n-1})の出力が開始される。この時刻t3における入力パルスPWiの立ち上がりにより、始端ラッチ回路30−iのラッチ32−j(j∈{0,1,…,m-1})は、カウンタ22の出力CNTjをラッチして、これをデータ出力端子Qからデジタル出力値Si={Si,0〜Si,m-1}として出力する。
【0125】
時刻t4において、入力パルスPWiはHレベルからLレベルに反転する。これにより、インバータ5の出力NOT(PWi)のレベルはLレベルからHレベルに立ち上がる。各ラッチ24−j(j∈{0,1,…,m-1})は、このインバータ25の出力NOT(PWi)の立ち上がりエッジにおいて、データ入力端子Dに入力される計数値CNTjのレベルをラッチして、これをデータ出力端子Qからデジタル出力値Ei={Ei,0〜Ei,m-1}として出力する。
【0126】
減算回路31−iは、終端ラッチ回路23−iのデジタル出力値Ei={Ei,0〜Ei,m-1}から始端ラッチ回路30−iのデジタル出力値Si={Si,0〜Si,m-1}を減算した減算値を演算して、デジタル出力値Di={Di,0〜Di,m-1}として出力する。従って、時刻t3以後において、このデジタル出力値Di={Di,0〜Di,m-1}は、入力パルスPWiのパルス幅に正比例した値となる。
【0127】
カウンタ22が計数を開始してから少なくとも時間2m・Tだけ経過した時点で、総ての終端ラッチ回路23−0〜23−(n-1)及び減算回路31−0〜31−(n-1)のデジタル出力値が確定する(勿論、それ以前に確定する場合もある)。従って、この確定時点後に、各減算回路31−0〜31−(n-1)のデジタル出力値を取り出すことにより、各入力パルスPW0〜PWn-1のパルス幅に比例したデジタル値Di={Di,0〜Di,m-1}を得ることができる。すなわち、パルス幅デジタル変換が完了する。
【0128】
このように、本実施例においては、各入力パルスの始端及び終端におけるカウンタ22の計数値をラッチして、両者の差を演算してデジタル出力値とすることで、各入力パルスPWiの立ち上がりを同期させる必要がなくなる。また、各入力パルスPWiの立ち上がりとカウンタ22の計数開始タイミングも同期させる必要がなくなる。
【0129】
従って、通信回路のように、非同期に変調パルスが入力されるような回路においても、本実施例に係るパルス幅・デジタル変換回路を使用することが可能である。
【0130】
尚、減算回路31−iを用意せずに、デジタル出力値Si及びEiをそのまま外部に出力し、外部に用意した減算器で減算を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の実施例1に係るデジタル・パルス幅変換回路の構成を表すブロック図である。
【図2】図1の各パルス生成回路の構成を表すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係るデジタル・パルス幅変換回路の動作を表すタイミング・チャートである。
【図4】本発明の実施例2に係るデジタル・パルス幅変換回路の構成を表すブロック図である。
【図5】図4の各パルス生成回路の構成を表すブロック図である。
【図6】本発明の実施例2に係るデジタル・パルス幅変換回路の動作を表すタイミング・チャートである。
【図7】本発明の実施例3に係るパルス幅・デジタル変換回路の構成を表すブロック図である。
【図8】図7の終端ラッチ回路の内部構成を表すブロック図である。
【図9】図8のラッチ回路の内部構成を表すブロック図である。
【図10】実施例3に係るパルス幅・デジタル変換回路の各信号レベルの変化を表すタイムチャートである。
【図11】本発明の実施例4に係るパルス幅・デジタル変換回路の終端ラッチ回路、始端ラッチ回路、及び減算回路の構成を表すブロック図である。
【図12】実施例4に係るパルス幅・デジタル変換回路の各信号レベルの変化を表すタイムチャートである。
【図13】従来のデジタル・パルス幅変換回路の一例を示す図である。
【図14】積分型AD変換器において用いられている従来のパルス幅・デジタル変換回路のブロック図である。
【図15】PWMピクセル回路アレイの構成を表す図である。
【符号の説明】
【0132】
1,1’ デジタル・パルス幅変換回路
2−0〜2−(n-1),2−0’〜2−(n-1)’ パルス生成回路
3 カウンタ
10 基準値レジスタ
11 加減算回路
12 パルス幅レジスタ
13 切換回路
14,14’ タイミングトリガ発生回路
15,15’ 出力パルス反転回路
16−0〜16−(m−1) EXORゲート
17 NORゲート
21 パルス幅・デジタル変換回路
22 カウンタ
23−0〜23−(n-1) 終端ラッチ回路
24−0〜24−(m-1) ラッチ
25 インバータ
30−0〜30−(n-1) 始端ラッチ回路
31−0〜31−(n-1) 減算回路
32−0〜32−(m-1) ラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロックを計数してその計数値をデジタル信号として出力するカウンタと、
外部からデジタル値として入力される入力値と前記計数値とを比較して、所定の時点から前記入力値と前記計数値とが一致する時点までの時間幅の出力パルス、又は所定の最大計数値から前記入力値を引いた値と前記計数値とが一致する時点から前記計数値が前記最大計数値に達する時点までの時間幅の出力パルスを生成するパルス生成手段と、
を備えており、
前記パルス生成手段を複数個有しているとともに、前記各パルス生成手段は、各々に入力される入力値と一つの前記カウンタが出力する共通の計数値とを比較すること
を特徴とするデジタル・パルス幅変換回路。
【請求項2】
前記各パルス生成手段は、
外部から入力される前記入力値をラッチするパルス幅レジスタと、
前記パルス幅レジスタがラッチした前記入力値の各ビットと、前記カウンタが出力する計数値の各ビットとを比較して、両者が完全に一致したときにトリガを発生するタイミングトリガ発生回路と、
前記タイミングトリガ発生回路がトリガを発生したときに、前記出力パルスの真理値を反転させる出力パルス反転回路と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載のデジタル・パルス幅変換回路。
【請求項3】
前記各パルス生成手段は、
前記出力パルスの立ち上がりのタイミングを表すデジタル値である基準値をラッチする基準値レジスタと、
前記基準値と外部から入力されるデジタル値である前記入力値との加算値を出力する加算回路と、
前記加算回路の出力値をラッチするパルス幅レジスタと、
前記基準値レジスタがラッチしたデジタル値又は前記パルス幅レジスタがラッチしたデジタル値の何れか一方を切り換えて出力する切換回路と、
前記切換回路から出力されるデジタル値の各ビットと、前記カウンタが出力する計数値の各ビットとを比較して、両者が完全に一致したときにトリガを発生するタイミングトリガ発生回路と、
前記タイミングトリガ発生回路がトリガを発生したときに、前記出力パルスの真理値を反転させる出力パルス反転回路と、
を備え、
前記切換回路は、前記出力パルス反転回路が出力する出力パルスが偽値のときは、前記基準値レジスタがラッチしたデジタル値を出力し、前記出力パルス反転回路が出力する出力パルスが真値のときは、前記パルス幅レジスタがラッチしたデジタル値を出力するように切り換えを行うこと
を特徴とする請求項1記載のデジタル・パルス幅変換回路。
【請求項4】
クロックを計数してその計数値をデジタル信号として出力するカウンタと、
外部から入力される入力パルスの終端において前記カウンタが出力する計数値をラッチする終端ラッチ回路と、
を備えており、
前記終端ラッチ回路を複数個有しているとともに、前記各終端ラッチ回路は、一つの前記カウンタが出力する共通の計数値を、各々に入力される各入力パルスの終端においてラッチすること
を特徴とするパルス幅・デジタル変換回路。
【請求項5】
前記入力パルスの始端において前記カウンタが出力する計数値をラッチする始端ラッチ回路と、
前記終端ラッチ回路のデジタル出力値と前記始端ラッチ回路のデジタル出力値との差を演算して出力する減算回路と、
を、各々の前記終端ラッチ回路に対応して備えていることを特徴とする請求項4記載のパルス幅・デジタル変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−61281(P2008−61281A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301734(P2007−301734)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【分割の表示】特願2003−355762(P2003−355762)の分割
【原出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【Fターム(参考)】