説明

パルス波形生成器及び送信機

【課題】複数の周波数帯域に対応する複数のパルス波形を低消費電力で生成可能とする。
【解決手段】PLL回路102内のVCOの発振周波数を所定の値にすることにより、所定の遅延時間に調整が可能な遅延器を複数個直列に接続し、初段の遅延器に入力するデジタル信号TQをパルス波形生成を開始したいタイミングで反転させることにより、各遅延器が出力するデジタル信号TQを所定の遅延時間で順次遅延させた複数の遅延信号DLnを出力する遅延回路103と、前記遅延器から出力される所定の時間間隔となる2つの遅延信号を順次合成することにより、所定の時間間隔の幅を持つ方形波を発生させる方形波発生回路104と、前記方形波によって出力電圧を選択する出力電圧選択回路105とを備え、前記遅延器における所定の遅延時間と出力電圧選択回路105における出力電圧の選択内容とを変更することにより、複数の特定波形を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパルス波形を生成するパルス波形生成器とそれを用いたウルトラワイドバンド用送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
UWB−IR(Ultra Wide Band−Impulse Radio)方式に関する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、遅延回路を用いて、遅延回路1段分の遅延時間差に相当する方形波パルスを生成し、この方形波のパルス幅を持ち所定の振幅を持つインパルス列を出力することにより、所定の包落線形状を有するパルスを生成するパルス波形生成回路が開示されている。
【特許文献1】特開2006−229677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信に関して、各国の法令の改正により、新たに低い電力密度で広帯域を使用するUWB(Ultra Wide Band)通信に通信帯域が開放され注目を集めている。
【0005】
UWB通信を実現するためにいくつかの通信方式が提案されているが、その中でもインパルスUWB方式は、回路構成が簡単で消費電力が小さいため、バッテリーで駆動する小型デバイスとの通信への適用が検討されている。
【0006】
インパルスUWB方式は、数ナノ秒から数十ナノ秒オーダー長さのパルス列を通信ビットの伝達に使用する。送信装置は一定間隔でパルス波形生成器から、PSK(Phase Shift Keying)変調、OOK(On Off Keying)変調、PPM(Pulse Position Modulation)変調などにより変調を行ったパルスを発生させ、受信機に対して送信することによりデータ通信を行う。パルス波形生成器が発生するパルス波形は、各国の法令により空中への放射が許可されている通信帯域と最大放射電力の規定に収まるように、特定の波形を形成する。
【0007】
UWBにおいて電力放射が許可されている帯域は、各国により若干の違いがあるが、約3GHzから約10GHzの間にGHz単位で割り当てられている。UWBの電力放射は非常に低く制限されているが、複数のUWB通信をごく近くで使用する場合、UWB同士の干渉の影響は小さいとはいえ存在するため、同じ周波数帯を使用することは好ましくなく、複数の周波数帯域で使用できることが望ましい。
【0008】
既存のインパルスUWB方式のパルス波形生成器の多くは、所望の帯域幅を持つパルス包絡線波形を発生させ、利用する帯域の中心周波数のクロックを生成する発振器と乗算器を用いて乗算することにより、目的とする帯域にアップコンバートすることでパルスを生成しており、複数の周波数帯域への対応は発振器で生成するクロックの周波数を変更することで対応している。しかしながら、上記した帯域の中心周波数の発振器と乗算器を用いた構成では、発振器と乗算器を常時動作させておく必要があり、消費電力が高くなる問題があった。そのため、特許文献1で開示されているパルス波形生成器では、発振器と乗算器を用いない構成を採用し、送信にかかる消費電力を低減している。
【0009】
しかしながら、特許文献1で開示されているパルス波形生成器は、特定の周波数帯域のためのもので、複数の周波数帯域に対応するための構成については全く考慮されていない。そのため、低消費電力で、かつ、複数の周波数帯域に対応するインパルスUWB方式のパルス波形生成器の実現が望まれていた。
【0010】
本発明はかかる実情に鑑みて創案されたもので、その目的は、複数の周波数帯域に対応する複数のパルス波形を低消費電力で生成可能なパルス波形生成器及びそれを用いた送信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のパルス波形生成器は、インパルス通信を行う送信機用のパルス波形生成器であって、所定の遅延時間に調整が可能な遅延器を複数個直列に接続し、初段の遅延器に入力するデジタル信号をパルス波形生成を開始したいタイミングで反転させることにより、前記各遅延器が出力する前記デジタル信号を前記所定の遅延時間で順次遅延させた複数の遅延信号を出力する遅延回路と、前記遅延器から出力される所定の時間間隔となる2つの遅延信号を順次合成することにより、前記所定の時間間隔の幅を持つ方形波を発生させる方形波発生回路と、前記方形波によって出力電圧を選択する出力電圧選択回路とを備え、前記遅延器における所定の遅延時間と前記出力電圧選択回路における出力電圧の選択内容とを変更することにより、複数の特定波形を出力することを特徴としている。
【0012】
図1は、このパルス波形生成器を搭載した送信機の構成例を示している。
【0013】
すなわち、この送信機は、送信ビット列とビットクロックとが入力されるトグルフリップフロップ(T−FF)101と、基準クロックが入力されるPLL回路102と、PLL回路102からのバイアス電圧が入力される遅延回路103と、方形波発生回路104と、出力電圧選択回路105と、バンドパスフィルタ(BPF)106と、アンテナ107とから構成されている。
【0014】
PLL回路102は、図2に示すように、遅延回路201と、2個のスイッチ203,204と、インバータ205と、分周回路206,207と、位相比較器208と、バイアス制御部209とから構成されている。遅延回路201は、複数個の遅延素子202の直列接続で構成されている。各遅延素子202は、バイアス制御部209から供給されるバイアス電圧により遅延時間が制御可能であり、2個のスイッチ203,204のON/OFF制御により、異なる段数の遅延素子202を通過した時点の信号をインバータ205に出力している。遅延回路201、スイッチ203または204、インバータ205からなるループは、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を構成しており、バイアス制御部209により制御されるバイアス電圧により、発信周波数がコントロールされる。スイッチ203をONにするか、スイッチ204をONにするかにより、同じ発信周波数でも遅延素子202一段当たりの遅延量を2種類作り出すことが可能である。
【0015】
また、PLL回路102の基準クロックの周波数を変更することにより、PLL回路102内のVCOの発振周波数を所定の値に変更することが可能である。さらに、PLL回路102内のVCOの発振周波数と基準クロックの分周比率とを変更することにより、VCOの発振周波数を所定の値に変更することも可能である。
【0016】
出力電圧選択回路105は、図3に示すように、方形波発生回路104から出力される所定の時間間隔となる各方形波SQ1〜SQ11が個別に入力される複数個の振幅制御器302と、振幅制御器302の数に対応した複数個のスイッチ303と、奇数段の振幅制御器302の各出力が各入力端子に入力された第1加算器304及び偶数段の振幅制御器302の出力が各入力端子に入力された第2加算器305と、1個の差動増幅器306とから構成されており、第1加算器304の出力が、差動増幅器306のマイナス入力端子に接続され、第2加算器305の出力が、差動増幅器306のプラス入力端子に接続された構成となっている。
【0017】
第1加算器304及び第2加算器305は、振幅制限器302及びスイッチ303を通じて各入力端子に入力された所望の振幅を持つ方形波を足し合わせるものであり、差動増幅器306は、第1加算器304と第2加算器305の出力差を増幅するものである。これにより、複数周波数帯域に対応する複数のパルス波形が生成可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の周波数帯域に対応する複数のパルス波形を低消費電力で生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るパルス波形生成器を具備した送信機のブロック構成図を示している。
【0020】
図1に示すように、送信機には、基準クロックとビットクロックと送信ビット列とが入力される。基準クロックは、送信パルスの周波数を決める際の基準となるクロックである。送信ビット列は、ビットクロックに同期している。同図においては、基準クロックとビットクロックは別のものとして記載しているが、基準クロックとビットクロックは同一であっても良い。
【0021】
なお、図1は、OOK(On Off Keying)変調を行う構成となっている。OOK変調は、具体的には、送信ビット列の値が“1”の場合にパルス波形を送信し、送信ビット列の値が“0”の場合は何も送信しない変調方式である。
【0022】
送信機は、送信ビット列とビットクロックとが入力されるトグルフリップフロップ(T−FF)101と、基準クロックが入力されるPLL回路102と、PLL回路102からのバイアス電圧が入力される遅延回路103と、方形波発生回路104と、出力電圧選択回路105と、バンドパスフィルタ(BPF)106と、アンテナ107とから構成されている。
【0023】
トグルフリップフロップ101は、図4に示すビットクロックと送信ビット列とTQとの関係のように、ビットクロックの立ち上がり時に送信ビット列の値が“1”の場合にTQの値が反転(“0”または“1”)するフリップフロップである。これにより、OOK変調を行う場合のパルス波形生成を開始したいタイミングである送信ビット列の値が“1”の場合に、TQの値を反転させている。
【0024】
図2は、PLL回路102と遅延回路103のより詳細な回路構成を示している。以下、この図2を参照してPLL回路102と遅延回路103の詳細を説明する。
【0025】
PLL回路102は、遅延回路201と、2個のスイッチ203,204と、インバータ205と、分周回路206,207と、位相比較器208と、バイアス制御部209とから構成されている。
【0026】
遅延回路201は、複数個(この例では7個)の遅延素子202の直列接続で構成されている。各遅延素子202は、バイアス制御部209から供給されるバイアス電圧により遅延時間が制御可能なインバータなどで構成されたもので、すべて同じ構造のものである。スイッチ203,204は、排他的にON状態になるスイッチであり、スイッチ203がONのときスイッチ204がOFF、スイッチ204がONのときスイッチ203がOFFとなり、異なる段数の遅延素子202を通過した時点の信号をインバータ205に出力している。この例では、5段目の遅延素子202の出力とインバータ205の入力との間にスイッチ203が配置されており、最終段の遅延素子202の出力とインバータ205の入力との間にスイッチ204が配置されている。インバータ205は、論理反転を行うインバータで、できるだけ高速に動作するものが望ましい。
【0027】
遅延回路201、スイッチ203または204、インバータ205からなるループは、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を構成しており、バイアス制御部209により制御されるバイアス電圧により、発信周波数がコントロールされる。スイッチ203をONにするか、スイッチ204をONにするかにより、同じ発信周波数でも遅延素子202一段当たりの遅延量を2種類作り出すことが可能である。
【0028】
分周回路206,207は、基準クロックとVCOの発信クロックの周波数比を決めるためのもので、例えば、基準クロックが100MHzで分周回路206の分周率が16倍、分周回路207の分周率が1倍に設定された場合、PLL回路102がロック後のVCOの発信クロックは、100MHz×16/1=1600MHz=1.6GHzとなる。ここで、スイッチ203がON、スイッチ204がOFFの場合、遅延回路201内の各遅延素子202一段当たりの遅延量は、1.6GHz×5=8.0GHzのクロック周期に相当する1/8.0GHz=125psec(ピコ秒)となる。一方、スイッチ203がOFF、スイッチ204がONの場合、遅延回路201内の各遅延素子202一段当たりの遅延量は、1.6GHz×7=11.2GHzのクロック周期に相当する1/11.2GHz≒89psec(ピコ秒)となる。
【0029】
このように、スイッチ203,204のON/OFFと分周回路206,207の分周率を制御することにより、遅延素子202一段当たりの遅延量を制御することが可能である。
【0030】
なお、本実施形態では、スイッチ203,204の2つのスイッチを使って説明しているが、スイッチを3つ以上にして、分周回路206,207の分周率が同じときに選択できる遅延素子202一段当たりの遅延量の選択肢を増やすように構成しても良い。また、スイッチを無くして固定の段数の遅延素子202を使ってVCOを構成し、分周回路206,207の分周率だけで、遅延素子202一段当たりの遅延量を制御するように構成しても良い。さらに、基準クロックの周波数を変更することにより、VCOの発振周波数を変更することで、遅延素子202一段当たりの遅延量を制御するように構成しても良い。
【0031】
位相比較器208は、分周回路206の出力と分周回路207の出力の位相差を検出し、位相差に応じた情報を電圧などでバイアス制御部209に出力する。
【0032】
バイアス制御部209は、位相比較器208からの位相差情報に基づき、VCOの発信周波数が遅れている場合はバイアス電圧を上げ、VCOの発信周波数が進んでいる場合はバイアス電圧を下げる制御を行うことにより、VCOの発信周波数を所望の値に合わせることが可能である。
【0033】
遅延回路103は、複数個の遅延素子202の直列接続で構成されている。本実施形態では、11個の遅延素子202により遅延回路103を構成している例を示している。これらの遅延素子202は、遅延回路201を構成している遅延素子202と同じ構造のものであり、また、バイアス電圧も共有しているため、上記のように遅延回路201内の遅延素子202一段当たりの遅延量を制御すると、遅延回路103内の遅延素子202一段当たりの遅延量も同様に制御できる。
【0034】
遅延回路103からは、遅延素子202一段ごとに遅延させた信号DL0〜DL11が出力される。なお、DL0は遅延回路103への入力TQそのものである。入力TQと遅延させた信号の一部(DL0〜DL2とDL10〜DL11)の関係を図4に示している。なお、本実施形態では、遅延素子202一段ごとに遅延させた信号を出力しているが、一段ごとに限らず、二段ごと、三段ごとなど、複数段ごとに遅延させた信号を出力しても良い。
【0035】
図3は、方形波発生回路104と出力電圧選択回路105のより詳細な回路構成図、図4は、ビットクロックと送信ビット列とTQとのタイミングチャート、図5及び図6は、方形波発生回路104及び出力電圧選択回路105のタイミングチャートをそれぞれ示している。ただし、図5のタイミングチャートは、図2に示すVOCを構成するスイッチ203をOFFとし、スイッチ204をONとしたときのタイミングチャートであり、図6に示すタイミングチャートは、図2に示すVOCを構成するスイッチ203をONとし、スイッチ204をOFFとしたときのタイミングチャートである。
【0036】
以下、これら図3ないし図6を参照して方形波発生回路104と出力電圧選択回路105の詳細を説明する。
【0037】
方形波発生回路104は、複数個(この例では遅延素子202の数に対応した11個)のXOR(eXclusive OR:排他的論理和)回路301から構成されており、遅延回路103から出力される遅延させた信号のうち、遅延時間が隣り合うもの同士のXOR演算を行い、図4に示すように、DL0とDL1からSQ1、DL1とDL2からSQ2、…、DL10とDL11からSQ11を発生する。図4におけるTQの立ち上がりまたは立ち下がりが元になって生成されたSQ1〜SQ11を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、SQ1〜SQ11は同じ幅を持ち、その幅の分だけ時間的に遅れていく方形波となる。
【0038】
図5(a)から分かるように、遅延素子202の一段当たりの遅延量を大きくした場合、方形波発生回路104から出力される個々の方形波の幅も同じように大きくなる。
【0039】
出力電圧選択回路105は、複数個(この例では18個)の振幅制御器302と、複数個(この例では、振幅制御器302の数に対応した18個)のスイッチ303と、第1加算器304及び第2加算器305と、1個の差動増幅器306とから構成されている。なお、以下の説明において、振幅制御器302及びスイッチ303を区別する必要があるときは、各符号の横にハイフン付きの連続数字を付することとする。
【0040】
すなわち、第1加算器304には、方形波発生回路104の11個のXOR回路301のうち、奇数段のXOR回路301−1,301−3,301−5,301−7,301−9,301−11から出力された信号SQ1,SQ3,SQ5,SQ7,SQ9,SQ11が、それぞれに対応して設けられた振幅制限器302及びスイッチ303を介して入力され、第2加算器305には、方形波発生回路104の11個のXOR回路301のうち、偶数段のXOR回路301−2,301−4,301−6,301−8,301−10から出力された信号SQ2,SQ4,SQ6,SQ8,SQ10が、それぞれに対応して設けられた振幅制限器302及びスイッチ303を介して入力されている。
【0041】
より具体的に説明すると、1段目のXOR回路301−1から出力された信号SQ1は、振幅制限器302−1及びスイッチ303−1を介して第1加算器304の第1入力端子(1)に入力されるとともに、振幅制限器302−2及びスイッチ303−2を介して第1加算器304の第2入力端子(2)に入力されている。また、3段目のXOR回路301−3から出力された信号SQ3は、振幅制限器302−3及びスイッチ303−3を介して第1加算器304の第3入力端子(3)に入力されるとともに、振幅制限器302−4及びスイッチ303−4を介して第1加算器304の第4入力端子(4)に入力されている。また、5段目のXOR回路301−5から出力された信号SQ5は、振幅制限器302−5及びスイッチ303−5を介して第1加算器304の第5入力端子(5)に入力されるとともに、振幅制限器302−6及びスイッチ303−6を介して第1加算器304の第6入力端子(6)に入力されている。また、7段目のXOR回路301−7から出力された信号SQ7は、振幅制限器302−7及びスイッチ303−7を介して第1加算器304の第7入力端子(7)に入力されるとともに、振幅制限器302−8及びスイッチ303−8を介して第1加算器304の第8入力端子(8)に入力されている。また、9段目のXOR回路301−9から出力された信号SQ9は、振幅制限器302−9及びスイッチ303−9を介して第1加算器304の第9入力端子(9)に入力されている。また、11段目のXOR回路301−11から出力された信号SQ11は、振幅制限器302−10及びスイッチ303−10を介して第1加算器304の第10入力端子(10)に入力されている。
【0042】
一方、2段目のXOR回路301−2から出力された信号SQ2は、振幅制限器302−11及びスイッチ303−11を介して第2加算器305の第1入力端子(1)に入力されるとともに、振幅制限器302−12及びスイッチ303−12を介して第2加算器305の第2入力端子(2)に入力されている。また、4段目のXOR回路301−4から出力された信号SQ4は、振幅制限器302−13及びスイッチ303−13を介して第2加算器305の第3入力端子(3)に入力されるとともに、振幅制限器302−14及びスイッチ303−14を介して第2加算器305の第4入力端子(4)に入力されている。また、6段目のXOR回路301−6から出力された信号SQ6は、振幅制限器302−15及びスイッチ303−15を介して第2加算器305の第5入力端子(5)に入力されるとともに、振幅制限器302−16及びスイッチ303−16を介して第2加算器305の第6入力端子(6)に入力されている。また、8段目のXOR回路301−8から出力された信号SQ8は、振幅制限器302−17及びスイッチ303−17を介して第2加算器305の第7入力端子(7)に入力されている。また、10段目のXOR回路301−10から出力された信号SQ10は、振幅制限器302−18及びスイッチ303−18を介して第2加算器305の第8入力端子(8)に入力されている。
【0043】
そして、第1加算器304の出力が、差動増幅器306のマイナス入力端子に接続されており、第2加算器305の出力が、差動増幅器306のプラス入力端子に接続された構成となっている。
【0044】
上記構成において、図5(d)に示すパルス波形を発生させる場合について説明する。
【0045】
上記したように、方形波発生回路104の出力である方形波SQ1〜SQ11は、図5(a)に示すようになっている。SQ1〜SQ11は、図3に示すように、出力電圧選択回路105内の個々の振幅制御器302に入力されている。
【0046】
振幅制御器302は、方形波SQ1〜SQ11が入力されている期間、所望の振幅の方形波を出力するものである。図3において振幅制御器302の中に書かれているa〜jは出力される方形波の振幅の比を示しており、同じアルファベットは同じ振幅であることを示している。
【0047】
上記したように、スイッチ303−1〜303−10は、対応する個々の振幅制御器302−1〜302−10の出力を第1加算器304に伝えるかどうかを切り替えるためのスイッチである。同様に、スイッチ303−11〜303−18は、対応する個々の振幅制御器302−11〜302−18の出力を第2加算器305に伝えるかどうかを切り替えるためのスイッチである。図3では各々のスイッチに“1”または“2”の添え字を付けている。同じ添え字の付いたスイッチ303は、同時にON/OFF制御されることを示している。
【0048】
図5(d)に示すパルス波形を発生させる場合、添え字“1”が付いている11個のスイッチ303−1,303−3,303−5,303−7,303−9,303−10,303−11,303−13,303−15,303−17,303−18を全てONにし、添え字“2”が付いている残り7個のスイッチ303−2,303−4,303−6,303−8,303−12,303−14,303−16を全てOFFにする。
【0049】
第1加算器304及び第2加算器305は、振幅制限器302及びスイッチ303を通じて各入力端子(1)〜(10),(1)〜(8)に入力された所望の振幅を持つ方形波を足し合わせるものである。各振幅制御器302が出力する所望の振幅を持つ方形波は、すべて異なるタイミングで出力されるため、加算はワイヤードOR回路などの簡単な構成で実現できる。第1加算器304による加算結果を図5(b)に、第2加算器305による加算結果を図5(c)に示す。
【0050】
差動増幅器306は、第1加算器304と第2加算器305の出力差を増幅する差動増幅器であり、差動増幅した結果は、図5(d)に示す波形となる。なお、αはこの差動増幅器の増幅率である。
【0051】
一方、図6(a)に示す波形は、図2に示す遅延回路103の各遅延素子202の一段当たりの遅延量を大きくした場合のSQ1〜SQ7の波形を示している。すなわち、図6(a)に示す波形は、図5(a)に示す波形に比べて、遅延量を大きくした分だけパルス幅が広くなっている。なお、SQ8〜SQ11は方形波発生回路104からは出力されるが、以降で使用されないため図示を省略している。
【0052】
図6(d)に示すパルス波形を発生させる場合は、上記と同様、図6(a)に示す方形波SQ1〜SQ7が方形波発生回路104から出力されている状態で、添え字“1”が付いているスイッチ303を全てOFFにし、添え字“2”が付いているスイッチ303を全てONにすれば良い。このときの第1加算器304による加算結果を図6(b)に示し、第2加算器305による加算結果を図6(c)に示す。従って、差動増幅器306により差動増幅した結果は、図6(d)に示す波形となる。
【0053】
バンドパスフィルタ(BPF)106は、方形波発生回路104が出力したパルス波形を、UWBに許可されている放射マスクに収まるように帯域制限するためのフィルタであり、その出力波形は放射マスクに適合したものとなる。バンドパスフィルタ106へ図7(a)に示す波形を入力したときの出力波形の例を図7(b)に示す。
【0054】
なお、本実施形態では、説明を簡単にするため、図5(d)と図6(d)の2種類のパルス波形を生成できるようにしているが、遅延素子202一段当たりの遅延量の選択肢、振幅制御器302の数、スイッチ303の(添え字の)種類を増やすことにより、より多くの種類のパルス波形を生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係るパルス波形生成器を具備した送信機のブロック構成図である。
【図2】本実施形態に係るPLL回路と遅延回路のより詳細な回路構成図である。
【図3】本実施形態に係る方形波発生回路と出力電圧選択回路のより詳細な回路構成図である。
【図4】本実施形態に係るトグルフリップフロップと遅延回路と方形波発生回路のタイミングチャートである。
【図5】本実施形態に係る方形波発生回路及び出力電圧選択回路のタイミングチャートである。
【図6】本実施形態に係る方形波発生回路及び出力電圧選択回路のタイミングチャートである。
【図7】本実施形態に係るバンドパスフィルタの動作説明図である。
【符号の説明】
【0056】
101 トグルフリップフロップ
102 PLL回路
103 遅延回路
104 方形波発生回路
105 出力電圧選択回路
106 バンドパスフィルタ(BPF)
107 アンテナ
201 遅延回路
202 遅延素子
203,204 スイッチ
205 インバータ
206,207 分周回路
208 位相比較器
209 バイアス制御部
301 XOR回路
302 振幅制御器
303 スイッチ
304 第1加算器
305 第2加算器
306 差動増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インパルス通信を行う送信機用のパルス波形生成器であって、
所定の遅延時間に調整が可能な遅延器を複数個直列に接続し、初段の遅延器に入力するデジタル信号をパルス波形生成を開始したいタイミングで反転させることにより、前記各遅延器が出力する前記デジタル信号を前記所定の遅延時間で順次遅延させた複数の遅延信号を出力する遅延回路と、
前記遅延器から出力される所定の時間間隔となる2つの遅延信号を順次合成することにより、前記所定の時間間隔の幅を持つ方形波を発生させる方形波発生回路と、
前記方形波によって出力電圧を選択する出力電圧選択回路とを備え、
前記遅延器における所定の遅延時間と前記出力電圧選択回路における出力電圧の選択内容とを変更することにより、複数の特定波形を出力することを特徴とするパルス波形生成器。
【請求項2】
前記遅延器と同じ構成の複数の遅延器により構成されたVCOを含むPLL回路を備え、このPLL回路内の遅延器と前記遅延回路内の遅延器とのバイアス電圧を共通に制御して、前記PLL回路内のVCOの発振周波数を所定の値にすることにより、各遅延器での遅延時間を所定の値に制御することを特徴とする請求項1に記載のパルス波形生成器。
【請求項3】
前記VCOを構成する遅延器の数を変更することにより、前記VCOの発振周波数を所定の値に変更することを特徴とする請求項2に記載のパルス波形生成器。
【請求項4】
前記遅延器の数の変更をスイッチの切り換え制御で行うことを特徴とする請求項3に記載のパルス波形生成器。
【請求項5】
前記PLL回路内のVCOの発振周波数と基準クロックの分周比率とを変更することにより、前記VCOの発振周波数を所定の値に変更することを特徴とする請求項2に記載のパルス波形生成器。
【請求項6】
前記PLL回路の基準クロックの周波数を変更することにより、前記PLL回路内のVCOの発振周波数を所定の値に変更することを特徴とする請求項2に記載のパルス波形生成器。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のパルス波形生成器を搭載することで、複数の周波数帯域向けのインパルス波形の送信を可能としたことを特徴とする送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−288888(P2008−288888A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131972(P2007−131972)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】