説明

パルプモウルド育苗用ポット及びその製造法

【課題】本発明は故紙等によるパルプモウルド育苗ポットを縦横に複数並べ(例えば4×6個、5×4個等)隣接部を接続して1個のトレイ状に1度に抄製、乾燥し、乾燥トレイを自動スタッキング機により、自動的に積重ねて出荷し、かつポットの隣接接続部を手動で容易に分離することができるパルプモウルド育苗ポットを得ることを目的とする。
【解決手段】パルプモウルドによる複数の逆截頭錐形ポット1の上端開口部1’にそれぞれフランジ2を形成し、該ポット1を縦横に並べ、隣接する上記ポットを接続してトレイを形成し、上記フランジの直下に隣接する上記ポットの対向面を接続するバリ部分を有し、上記フランジ2の中心線に沿って隣接ポットとの分離用ミシン目を形成し、上記ミシン目間に上記バリ部により隣接ポット間の接続架橋を形成してなるパルプモウルド育苗用ポット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は故紙等を原料とするパルプモウルドによる育苗ポット及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サトウキビ残滓、藁、葦等を含むパルプ状材料をプレス成形した育苗ポットに土を収容し、種子を撒いて潅水し、花、野菜又は果実等の苗を或程度発芽させ、育苗ポットのまま畝に埋める方法がある。
【0003】
上記育苗ポットは上述のようにパルプ状材料を金型で複数個をそれぞれ分離状態で同時プレス成形し、これを雄型内に支持した状態のまま熱風で乾燥成形してなるものであった。
【0004】
上述のプレス成形によると、育苗ポットが1個宛分離しているため1個宛積重ねる(スタッキング)ため労力を要し、かつ多量包装には適しない(例えば特許文献1)。
【0005】
そこでパルプモウルドによって複数の育苗ポットを1度に抄製又は抄造した後、常法により隣接ポットの対向面間に残留するバリ部をシャワーで洗浄分離し、これを乾燥させる方法が考えられたが、乾燥後複数縦横に並列したトレイ状育苗ポットをロボットアームで持上げると、隣接ポットのテーパ側面間の空間と、隣接ポットの自重による境界部の弯曲によりトレイ状育苗ポットの隣接ポットは対向側面が接し、必要以上に円弧状に弯曲するため、乾燥したトレイ状育苗ポットをロボットアーム等で機械的にスタッキング(積み重ね又は積層)することが困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−70364号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は故紙等によるパルプモウルド育苗ポットを縦横に複数並べ(例えば4×6個、5×4個等)隣接部に留るバリの量を増加し、該バリによって対向面を接続して1個のトレイ状に1度に抄製、乾燥し、乾燥トレイを自動スタッキング機により、自動的に積重ねて出荷し、かつポットの隣接接続部を手動で容易に分離することができるパルプモウルド育苗ポットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は
第1にパルプモウルドによる複数の逆截頭錐形ポットの上端開口部にそれぞれフランジを形成し、該ポットを縦横に並べ、隣接する上記ポットを接続してトレイを形成し、上記フランジの直下に隣接する上記ポットの対向面を接続するバリ部分を有し、上記フランジの中心線に沿って隣接ポットとの分離用ミシン目を形成し、上記ミシン目間に上記バリ部により隣接ポット間の接続架橋を形成してなるパルプモウルド育苗用ポット、
第2に上記ミシン目が上記フランジ及び上記バリ部に形成されてなる上記第1発明記載のパルプモウルド育苗用ポット、
第3にパルプモウルドによる複数の逆截頭錐形ポットの上端開口部にそれぞれフランジを形成し、該ポットを縦横に並べ、隣接する上記ポットの対向面を接続するバリ部を残してトレイを抄製乾燥する工程と、上記抄製工程と同時に上記フランジの中心線に沿ってミシン目を成形し、該ミシン目間に上記バリ部により上記対向面を接続する架橋部を形成するパルプモウルド育苗用ポット製造法、
によって構成される。
【0009】
従ってフランジの中心線に沿って隣接ポットの対向面間にミシン目刃が介在してバリが留り易くこれによって縦横に並べた複数の乾燥長方形トレイの中央部をロボットアームの自動挟み機によって把持し、上昇させてもトレイが上記乾燥バリによる架橋によって極度に弯曲することなく水平台上に既に載置した上記長方形トレイの直上に移送し、上記自動挟み機を開くと落下して水平台上の上記トレイに積み重ねられ(スタッキング)、複数積み重ねて包装出荷される。
【0010】
育苗農家又は試験場では上記トレイを1枚毎そのまま又はミシン目から各ポットを分離して、各ポット内に土壌を収容し、播種して潅水し、発芽、苗の育成を待って、畝にトレイ又はポットのまま植付け、そのまま花、果実、その他の園芸植物を育成する。
【0011】
畝内のトレイ又はポットは畝内で土壌と化して根の進長に影響はない。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成したので縦横に接続した複数のパルプモウルド育苗ポットを一度に抄製又は抄造し、かつスタッキング容易であるため量産容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
複数の逆截頭錐形ポット用雄網型aを縦横に水平に並べ、上端開口部を接続用フランジ用網型a’で接続して一体とし、
フランジ用網型a’にはその中心線に沿って図2(ハ)図に示すミシン目刃5’,5’を支持し、該刃5’,5’をフランジ用網型a’の下方に突出させる。ミシン目刃5’,5’の上部は図2(ハ)図のように直線刃5”とし、下部を波形刃5”とすることができる。
上記網型a,a’に真空吸引用多孔雄型bを嵌合してパルプ液収容槽内に挿入する。
パルプ液は新聞、雑誌等の故紙約3重量%、水約97重量%の撹拌混合液であって、上記故紙は繊維に分解する。
【0014】
このようにしたパルプ液には紙又は故紙重量に対し1〜5重量%(固形分換算)の撥水剤を添加する。撥水剤にはロジン乳化液等が用いられる。
【0015】
上記繊維は上記撥水剤によって被覆され、上記繊維重量の0.3重量%以下では水による繊維間の結合が少なく、潅水により速やかに崩解し、繊維重量の1.5重量%以上では繊維間の間隙が低減し、透水性が低下し、根の貫通が低下した。
【0016】
上記ポット用雄網型a及び上記フランジ用雄網型a’よりなる雄網型にバキューム吸引用多孔雄型bを嵌合させて、これを上記パルプ液内に浸漬し、上記雄型から上記パルプ液をバキュームにより吸引することによって上記ポット用及びフランジ用雄網型a,a’にパルプ液内の上記繊維を一定厚さに抄製することができる。
上記ミシン目刃5’,5’と隣接ポット用雄網型a,a間には図2(ロ)図に示すようにミシン目刃5’,5’を介在して幅又は空間が狭くなり、バリが溜り易く、ミシン目刃5’,5’の間には隣接ポット用網型a,a間に直接バリが生じ、このバリによって隣接ポット1,1間の架橋部4,4を形成する。
【0017】
その後上記雄網型a,a’及び上記多孔雄型bを空気中に上昇し、ベルトコンベア上に移動させて、上記多孔雄型bから空気を排出すると、上記雄網型a,a’の外周面に抄製又は抄造された一定厚の逆截頭錐形ポット1が上記ミシン目5’,5’の中間のフランジ2及び上記ミシン目5’,5’の中間のバリ架橋部(接続部4)によって縦横に接続され、トレイ3状となって、上記ベルトコンベア上に分離下降して載置され、該コンベアによって乾燥炉内に搬送される。
【0018】
乾燥炉から搬出された上記トレイ3状接続ポット1は中央部を挟持して持上げられ水平台上の既乾燥トレイ3上に図4仮想線で示すように水平に積み重ね(スタッキング)られるが、直立させた状態で横圧板で押圧してスタッキングされる。
【0019】
上記フランジ網型a’の下面中心部には図2(ロ)図に示すように一定間隔に複数の刃5’,5’を設けて、該刃5’,5’によってミシン目5,5が形成される。
【0020】
上記ミシン目5,5間には隣接するポット1,1の対向面1”,1”を一体に接続するバリによる架橋4によって、乾燥後ポット1,1の対向面1”,1”を該架橋4,4によって一体に接続し、乾燥状態において隣接ポット1,1をほぼ水平に保持することができる(図3はその状態を示す)。又上記バリはミシン目5,5の介在のため空間が狭くなってバリの量、高さが増加する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の上記トレイ3又は単一の上記ポット1内に土を収容し、これを恒温ビニルハウス内の台上に並列し、播種して潅水することにより発芽して苗を得ることができる。
この苗は上記トレイ3又は単一のポット1のまま畝等の土壌に埋込んで植付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のパルプモウルド育苗ポットのトレイを示す斜視図である。
【図2】(イ)図は単一の上記ポットの斜視図、(ロ)図はフランジ中心部に配置したミシン目形成用刃の側面図、(ハ)図は(ロ)図A−A線によるミシン目刃の縦断側面図である。
【図3】隣接ポット、フランジ及び接続部分の側面図である。
【図4】乾燥した上記トレイのスタッキング状態側面図である。
【図5】従来の乾燥トレイ持ち上げ状態の側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 逆截頭錐形ポット
1’ 上端開口部
2 フランジ
3 トレイ
4 架橋部分
5 分離用ミシン目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモウルドによる複数の逆截頭錐形ポットの上端開口部にそれぞれフランジを形成し、該ポットを縦横に並べ、隣接する上記ポットを接続してトレイを形成し、
上記フランジの直下に隣接する上記ポットの対向面を接続するバリ部分を有し、
上記フランジの中心線に沿って隣接ポットとの分離用ミシン目を形成し、
上記ミシン目間に上記バリ部により隣接ポット間の接続架橋を形成してなるパルプモウルド育苗用ポット。
【請求項2】
上記ミシン目が上記フランジ及び上記バリ部に形成されてなる請求項1記載のパルプモウルド育苗用ポット。
【請求項3】
パルプモウルドによる複数の逆截頭錐形ポットの上端開口部にそれぞれフランジを形成し、該ポットを縦横に並べ、隣接する上記ポットの対向面を接続するバリ部を残してトレイを抄製乾燥する工程と、
上記抄製工程と同時に上記フランジの中心線に沿ってミシン目を成形し、該ミシン目間に上記バリ部により上記対向面を接続する架橋部を形成するパルプモウルド育苗用ポット製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−89435(P2007−89435A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281155(P2005−281155)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000206392)大石産業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】